(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る発電システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、波力によって所定の高さ位置まで上げられた流体の位置エネルギーを発電手段を介して電気に変換する発電システムに関するものである。
【0023】
ここで、「流体」とは、流動性を有するものである。この「流体」は、例えば、水、油等の液体と、高分子ゲル等の半固体ないし固体とを含む概念であるが、実施の形態では、水として説明する。また、「発電手段」とは、外力を電気に変換するものであり、例えばダイナモ等を含む概念である。また、発電システムの設置対象については任意であるが、例えば、沖、岸壁、流路等が該当する。以下、実施の形態1、2では、発電システムを沖に設けた場合について説明し、実施の形態3では、発電システムを流路に設けた場合について説明し、実施の形態4では、発電システムを岸壁に設けた場合について説明する。
【0024】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0025】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。この形態は、発電システムを沖に設けた形態である。
【0026】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る発電システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る発電システムを示す概要図である。なお、以下の説明では、
図1のX方向を発電システムの左右方向(+X方向を発電システムの左方向、−X方向を発電システムの右方向)、
図1のY方向を発電システムの上下方向(−Y方向を発電システムの上方向、+Y方向を発電システムの下方向)、X方向及びY方向に直交する方向又は後述する
図6のZ方向を前後方向(
図1紙面の手前側に至る方向又は+Z方向を発電システムの前方向、
図1紙面の奥側に至る方向又は−Z方向を発電システムの後方向)と称する。
図1に示すように、この発電システム1は、浮遊体10、運搬部20、送り部70、及び発電部110を備えている。
【0027】
(構成−浮遊体)
浮遊体10は、波力を受ける受け手段であって、当該浮遊体10の少なくとも一部が水面上に浮遊可能な浮遊手段である。この浮遊体10は、例えば樹脂材、ゴム材、防錆処理された金属材等にて形成された略箱状体(
図1では直方体等)であり、
図1に示すように、水面上に浮遊している。また、
図1に示すように、この浮遊体10には、挿通孔11が形成されている。挿通孔11は、後述する運搬部20の上昇流路50を挿通させるための貫通孔である。この挿通孔11は、後述する上昇流路50の流路径よりも若干大きい形状にて形成されており、浮遊体10の上面(又は下面)に配置されている。
【0028】
また、この浮遊体10の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、浮遊体10における波の進行方向に沿う方向の長さ(
図1では、浮遊体10の左右方向の長さ)については、波の波長よりも短く設定されている。このような長さにより、例えば、浮遊体10における波の進行方向に沿う方向の長さが波の波長よりも長い場合に比べて、流動部30を効果的に動作させることが可能となる。
【0029】
(構成−運搬部)
運搬部20は、浮遊体10が波力を受けた場合に、当該波力によって流体Fを所定の高さ位置まで運搬する運搬手段である。この運搬部20は、例えば樹脂材、防錆処理された金属材等にて形成されており、浮遊体10の近傍に設けられ、図示しない固定部材に対して固定具等によって固定されている。また、
図1に示すように、この運搬部20は、流動部30、送出流路40、上昇流路50、及び第1弁60を備えている。
【0030】
(構成−運搬部−流動部)
流動部30は、浮遊体10が波力を受けた場合に流体Fを流動させる流動手段である。この流動部30は、
図1に示すように、浮遊体10に接続されており、流動部本体31及び接続部32、33を備えている。
【0031】
流動部本体31は、流動部30の基本構造体であり、中空状体(例えば、中空の円柱状体等)にて形成されている。また、
図1に示すように、この流動部本体31は、当該流動部本体31の少なくとも一部が送出流路40に収容されており、当該流動部本体31の上面(又は下面)が左右方向及び前後方向に沿うように配置されている。
【0032】
また、この流動部本体31の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態1では、流動部本体31の体積については、流動部本体31の浮力(=海水の密度ρ×重力加速度g×流動部本体31の体積V/流動部本体31の面積A)が送出流路40内及び上昇流路50内の流体Fの重さ(=海水の密度ρ×重力加速度g×水面から後述する所定の高さ位置までの高さh)とつりあうことができるように設定されている(あるいは、流動部本体31の浮力が送出流路40内及び上昇流路50内の流体Fの重さよりも大きくなるように設定されてもよい)。例えば、水面から後述する所定の高さ位置までの高さh=10m、流動部本体31の面積A=3.4m
2である場合には、流動部本体31の体積V=水面から後述する所定の高さ位置までの高さh×流動部本体31の面積A=10m×3.4m
2=34m
3にて設定されている(いわゆる浮き型ピストンとなるように形成されている)。
【0033】
接続部32、33は、浮遊体10と流動部本体31とを接続するための接続手段である。これら接続部32、33は、略U字状にて形成された厚肉の棒状体(又は、板状体等)にて形成されており、
図1に示すように、接続部32、33の各々のいずれか一方の端部が浮遊体10(
図1では、浮遊体10の下端部)に固定具等によって接続されていると共に、接続部32、33の各々のいずれか他方の端部が流動部本体31(
図1では、流動部本体31の下端部)固定具等によって接続されている。
【0034】
(構成−運搬部−送出流路)
送出流路40は、流動部30によって流動された流体Fを送出する流路であり、例えば略直線状の管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。この送出流路40は、当該送出流路40内の流体Fが流動部30によって押圧可能な位置に設けられており、具体的には、
図1に示すように、浮遊体10の下端部から接続部32、33の下端部に至る間において、当該送出流路40の軸方向が上下方向に略沿うように設けられている。
【0035】
また、この送出流路40の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態1では、以下の通りとなる。すなわち、
図1に示すように、送出流路40の部分のうち流動部本体31が移動可能な部分の流路径を、流動部本体31の外径の大きさよりも大きな流路径となるように設定している。そして、送出流路40と流動部本体31との相互間の隙間には、当該隙間を埋めるための埋め込み部材34が取り付けられている。この埋め込み部材34の具体的な構成については任意であるが、例えば、縦断面形状がU字状となる薄膜のゴム材にて構成してもよい。これにより、埋め込み部材34が変形しやすいことから、流動部本体31の移動に追随して変形することにより埋め込み部材34が受ける抵抗を低減できる。また、流体Fが送出流路40から上昇流路50に送られる際に生じる摩擦抵抗(いわゆる縮小損失)を低減するために、送出流路40の部分のうち上昇流路50側の部分を、送出流路40の流路径が下方に向かうにしたがって大きくなるラッパ管状に設定している。
【0036】
また、この送出流路40の設置方法については任意であるが、実施の形態1では、
図1に示すように、送出流路40を水面の近傍位置に設置している。このような設置により、送出流路40に収容されている流動部本体31を波の長周期振動に伴って移動させやすくなる。よって、送出流路40を水面よりも比較的深い位置に設置した場合に比べて、送出流路40内及び上昇流路50内の流体Fを流動させやすくでき、運搬部20を効果的に動作させることが可能となる。
【0037】
また、
図1に示すように、送出流路40には、挿通口41及び第1接続口42が形成されている。挿通口41は、流動部本体31を送出流路40内に挿通するための開口であり、送出流路40の下端部に配置されている。第1接続口42は、送出流路40を上昇流路50に接続するための開口であり、送出流路40の上端部に配置されている。
【0038】
(構成−運搬部−上昇流路)
上昇流路50は、送出流路40から送出された流体Fを所定の高さ位置まで送る流路であり、例えば、逆L字形状(又は逆J字形状等)であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。ここで、「所定の高さ位置」の設定については、具体的には、流体Fが上昇流路50を流れる際に生じる摩擦抵抗(いわゆる摩擦損失)をできる限り小さくできる位置であって、上昇流路50によって上げられた流体Fの位置エネルギーによって発電部110が所望の発電量を行うことが可能な位置に設定しており、例えば、送出流路40の上端部から上方に10m〜100m程度離れた位置等に設定している。また、この上昇流路50は、送出流路40の上端部から所定の高さ位置に至る間に設けられており、具体的には、
図1に示すように、当該上昇流路50のL字状の縦棒部分が上下方向に沿うと共に、上昇流路50のL字状の横棒部分が送り部70側に向くように配置されており、上昇流路50のL字状の縦棒部分が第1接続口42を介して送出流路40と接続されている。
【0039】
また、上昇流路50の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態1では、
図1に示すように、上昇流路50の流路径の大きさを送出流路40の流路径の大きさよりも小さく設定しており、例えば、上昇流路50における流水の断面積の大きさが送出流路40における流水の断面積の大きさの1/10倍程度の大きさに設定している。ただし、これに限られず、流体Fの種類、上昇流路50の形状及び大きさ等に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定してもよい。このような設定により、上昇流路50の流路径の大きさを送出流路40の流路径の大きさと同一以上に設定した場合に比べて、送出流路40の流体Fの重さによる負荷を小さくできると共に、送出流路40を流れる流体Fの運動エネルギーを向上させることができる(例えば、1次元の非粘性流れに基づく理論の観点からすると、上昇流路50における流水の断面積の大きさが送出流路40における流水の断面積の大きさの1/10倍である場合には、上昇流路50を流れる流体Fの流速が送出流路40を流れる流体Fの流速の10倍となるので、上昇流路50を流れる流体Fの運動エネルギーが送出流路40を流れる流体Fの運動エネルギーの100倍となる)。よって、所定の高さ位置を比較的高く設定した場合でも、送出流路40から上昇流路50を介して所定の高さ位置まで流体Fを確実に送ることが可能となる。
【0040】
また、
図1に示すように、上昇流路50には、第2接続口51が形成されている。第2接続口51は、後述する戻し流路90を上昇流路50に接続するための開口であり、上昇流路50の部分のうち後述する戻し流路90の下流側の端部に対応する部分に配置されている。
【0041】
(構成−運搬部−第1弁)
第1弁60は、上昇流路50から送出流路40への流体Fの流入を制限する弁である。この第1弁60は、公知の弁体を用いて構成されており、上昇流路50の内部に設けられ、上昇流路50に対して固定具等によって固定されている。ここで、第1弁60の設置方法については任意であるが、実施の形態1では、
図1に示すように、第2接続口51よりも上方に設置しており、例えば、第2接続口51の近傍位置に設置している。これにより、上昇流路50の部分のうち第1弁60よりも下方側の部分において流体Fが重力によって下がることで空隙が生じた場合でも、後述する戻し流路90から送られた流体Fによって当該空隙をなくすことができ、上昇流路50の機能を維持することが可能となる。このような第1弁60により、上昇流路50から送出流路40への流体Fの流入を回避できるので、発電システム1を安定して動作させることが可能となる。
【0042】
(構成−送り部)
送り部70は、運搬部20にて運搬された流体Fを下方に向けて送る送り手段である。この送り部70は、例えば樹脂材、防錆処理された金属材等にて形成されており、運搬部20の近傍に設けられ、図示しない固定部材に対して固定具等によって固定されている。また、
図1に示すように、この送り部70は、下降流路80、戻し流路90、及び第2弁100を備えている。
【0043】
(構成−送り部−下降流路)
下降流路80は、運搬部20から送られた流体Fが下方に向けて流動することによって発電部110を駆動させる流路であり、
図1に示すように、第1貯め部81、第1下降流路82、第2貯め部83、第2下降流路84、及び収容部85を備えている。
【0044】
第1貯め部81は、運搬部20にて運搬された流体Fを一時的に貯めるための貯め手段であり、例えば、上面が開放された箱状体(又は中空の円柱状体等)にて形成されている(なお、第2貯め部83についても同様とする)。この第1貯め部81は、上昇流路50の下流側の端部よりも下方に設けられており、具体的には、
図1に示すように、上昇流路50の下流側の端部の直下であって、上昇流路50と所定間隔を隔てて配置されている。また、
図1に示すように、第1貯め部81には、第1接続口81aが形成されている。第1接続口81aは、第1下降流路82を第1貯め部81に接続するための開口であり、第1貯め部81の下端部に配置されている。
【0045】
第1下降流路82は、第1貯め部81から送られた流体Fを第2貯め部83に送る流路であり、例えば、直線状であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。
図1に示すように、この第1下降流路82は、第1貯め部81よりも下方に設けられており、当該第1下降流路82の上流側の端部が第1接続口81aを介して第1貯め部81と接続されている。また、
図1に示すように、第1下降流路82には、第2接続口82aが形成されている。第2接続口82aは、収容部85を第1貯め部81に接続するための開口であり、第1下降流路82における収容部85と対応する部分(
図1では、第1下降流路82の下端部の近傍部分)に配置されている。
【0046】
第2貯め部83は、第1下降流路82から送られた流体Fを一時的に貯めるための貯め手段である。この第2貯め部83は、第1下降流路82の下流側の端部よりも下方に設けられており、具体的には、
図1に示すように、第1下降流路82の下流側の端部の直下であって、第1下降流路82と所定間隔を隔てて配置されている。また、
図1に示すように、第2貯め部83には、第3接続口83aが形成されている。第3接続口83aは、第2下降流路84を第2貯め部83に接続するための開口であり、第2貯め部83の下端部に配置されている。
【0047】
第2下降流路84は、第2貯め部83から送られた流体Fを戻し流路90に送る流路であり、例えば、L字形状であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。また、
図1に示すように、この第2下降流路84は、第2貯め部83よりも下方に設けられており、当該第2下降流路84の上流側の端部が第3接続口83aを介して第2貯め部83と接続されている。
【0048】
収容部85は、発電部110を収容するための収容手段であり、第1下降流路82側の側面が開放された中空状体であり、且つ、発電部110を収容することが可能な形状及び大きさを有する中空状体にて形成されている。また、
図1に示すように、この収容部85は、第1下降流路82に設けられており、第2接続口82aを介して第1下降流路82と接続されている。
【0049】
(構成−送り部−戻し流路)
戻し流路90は、下降流路80から送られた流体Fを上昇流路50に向けて送る流路であり、例えば、L字形状であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。この戻し流路90は、上昇流路50と下降流路80とに接続されており、具体的には、
図1に示すように、当該戻し流路90の上流側の端部が第2下降流路84の下流側の端部と接続されていると共に、当該戻し流路90の下流側の端部が運搬部20の第2接続口51を介して上昇流路50と接続されている。このような戻し流路90により、上昇流路50、下降流路80、及び戻し流路90によって流体Fを循環させる流路を形成でき、流体Fの再利用を図ることが可能となる。
【0050】
(構成−送り部−第2弁)
第2弁100は、
上昇流路50から戻し流路90への流体Fの流入を制限する弁である。この第2弁100は、公知の弁体を用いて構成されており、
図1に示すように、戻し流路90の内部に設けられ(例えば、当該戻し流路90の下流側の端部近傍に設けられ)、戻し流路90に対して固定具等によって固定されている。このような第2弁100により、
上昇流路50から戻し流路90への流体Fの流入を回避できるので、発電システム1を安定して動作させることが可能となる。
【0051】
(構成−発電部)
発電部110は、送り部70にて送られた流体Fの位置エネルギーによって駆動されることにより発電を行う発電手段であり、
図1に示すように、ダイナモ及び発電基板を備えている(いずれも図示省略)。
【0052】
ダイナモは、発電部110の基本構造体であり、例えば、発電可能な回転方向が一方向である回転子を有する公知のダイナモ等を用いて構成されており、収容部85に収容されており、収容部85に対して固定具等にて固定されている。
【0053】
発電基板は、発電部110の各種機能を実現するための電気回路(図示省略)が実装された基板であり、例えば、発電装置用の公知の基板等を用いて構成されており、収容部85の外部(又は内部)に設けられており、収容部85に対して固定具等にて固定されている。また、この発電基板には、電力変換部や電力出力部も実装されている(いずれも図示省略)。このうち、電力変換部は、ダイナモにて発電された電力を所定の電力に変換する電力変換手段であり、ダイナモと図示しない配線を介して電気的に接続されている。また、電力出力部は、電力変換部にて変換された電力を外部機器(図示省略)に出力するための電力出力手段であり、外部機器と図示しない配線を介して電気的に接続されている。
【0054】
以上のような発電システム1により、流体Fを所定の高さ位置まで運搬しながら発電を行うことができるので、従来技術に比べて発電量を向上させることが可能となる。また、流体Fを所定の高さ位置まで運搬する動力として波力を用いるので、従来技術のように上記動力として電力を用いる必要がないことから、電力コストを削減でき、ランニングコストを低減することが可能となる。
【0055】
(発電システムの作用)
このように構成された発電システム1の作用について説明する。
【0056】
まず、波が立っていない状態では、送出流路40内及び上昇流路50内の流体Fの重さと浮遊体10の浮力とがつりあっていることから、当該流体Fは流動しない(なお、後述する実施の形態2、3に係る発電システム1についても同様とする)。また、波の波高が高くなることよって浮遊体10の下面が波力を受けると、パスカルの原理に基づいて、送出流路40内の流体Fは、流動部30によって押圧されることで送出流路40から上昇流路50を介して所定の高さ位置まで送られた後、上昇流路50から下降流路80に下方に向けて送られる。これにより、下降流路80の収容部85に収容された発電部110のダイナモは、当該下降流路80に送られた流体Fの位置エネルギーによって駆動されることで発電を行うことができる。その後、上記下降流路80に送られた流体Fは、戻し流路90を介して上昇流路50に戻される。
【0057】
(効果)
このように実施の形態1によれば、浮遊体10が波力を受けた場合に、当該波力によって流体Fを所定の高さ位置まで運搬する運搬部20と、運搬部20にて運搬された流体Fを下方に向けて送る送り部70と、を備え、発電部110は、送り部70にて送られた流体Fの位置エネルギーによって当該発電部110が駆動されることにより発電を行うので、流体Fを所定の高さ位置まで運搬しながら発電を行うことができるので、従来技術に比べて発電量を向上させることが可能となる。また、流体Fを所定の高さ位置まで運搬する動力として波力を用いるので、従来技術のように上記動力として電力を用いる必要がないことから、電力コストを削減でき、ランニングコストを低減することが可能となる。
【0058】
また、上昇流路50の流路径を、送出流路40の流路径よりも小さくしたので、上昇流路50の流路径の大きさを送出流路40の流路径の大きさと同一以上に設定した場合に比べて、送出流路40の流体Fの重さによる負荷を小さくでき、所定の高さ位置を比較的高く設定した場合でも、送出流路40から上昇流路50を介して所定の高さ位置まで流体Fを確実に送ることが可能となる。
【0059】
また、送り部70が、上昇流路50と下降流路80とに接続された戻し流路90であって、当該下降流路80から送られた流体Fを当該上昇流路50に向けて送る戻し流路90を備えたので、上昇流路50、下降流路80、及び戻し流路90によって流体Fを循環させる流路を形成でき、流体Fの再利用を図ることが可能となる。
【0060】
また、上昇流路50から送出流路40への流体Fの流入を制限する第1弁60と、
上昇流路50から戻し流路90へ流体Fの流入を制限する第2弁100と、を備えたので、
上昇流路50から戻し流路90への流体Fの流入を回避できると共に、上昇流路50から送出流路40への流体Fの流入を回避できるので、発電システム1を安定して動作させることが可能となる。
【0061】
(構成)
最初に、実施の形態2に係る発電システムの構成について説明する。
図2は、実施の形態2に係る発電システムを示す概要図である。
図2に示すように、実施の形態2に係る発電システム101は、浮遊体10、運搬部20、送り部70、及び発電部110を備えている。
【0062】
(構成−運搬部)
運搬部20は、
図2に示すように、流動部30、送出流路40、ブリッジ流路120、及び上昇流路50を備えている。
【0063】
(構成−運搬部−送出流路)
送出流路40は、流動部30によって流動された流体Fをブリッジ流路120の後述する第2流路121b又は後述する第4流路121dに向けて送出する流路であり、
図2に示すように、収容流路43、第1連通流路44、及び第2連通流路45を備えている。
【0064】
収容流路43は、流動部本体31、接続部32の一部、及び接続部33の一部を収容する流路であり、例えば、略直線状であり、且つ、流動部本体31、接続部32の一部、及び接続部33の一部を収容可能な形状及び大きさを有する管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。
図2に示すように、この収容流路43は、浮遊体10の下端から接続部32、33の下端部に至る間において、収容流路43の軸方向が上下方向に略沿うように設けられている。また、
図2に示すように、収容流路43には、第1挿通口43a、第2挿通口43b、第1接続口43c、及び第2接続口43dが形成されている。第1挿通口43aは、接続部32を送出流路40内に挿通するための開口であり、第2挿通口43bは、接続部33を送出流路40内に挿通するための開口であり、送出流路40の下端部にそれぞれ配置されている。第1接続口43cは、第1連通流路44を収容流路43内に挿通するための開口であり、収容流路43の上端部に配置されている。第2接続口43dは、第2連通流路45を収容流路43内に挿通するための開口であり、収容流路43の下端部に配置されている。
【0065】
第1連通流路44は、収容流路43と後述するブリッジ流路120の第1接続部122aとを連通する流路であり、例えば、逆U字形状であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。この第1連通流路44は、収容流路43と後述する第1接続部122aと接続されており、具体的には、
図2に示すように、第1連通流路44の収容流路43側の端部が第1接続口43cを介して収容流路43と接続されていると共に、第1連通流路44のブリッジ流路120側の端部が後述する第1接続部122aと接続されている。また、この第1連通流路44の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態2では、
図2に示すように、第1連通流路44の流路径の大きさを収容流路43の流路径の大きさよりも小さく設定している(なお、第2連通流路45及びブリッジ流路120についても同様とする)。
【0066】
第2連通流路45は、収容流路43と後述するブリッジ流路120の第4接続部122dとを連通する流路であり、例えば、U字形状であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されている。この第2連通流路45は、収容流路43と後述する第4接続部122dと接続されており、具体的には、
図2に示すように、第2連通流路45の収容流路43側の端部が第2接続口43dを介して収容流路43と接続されていると共に、第2連通流路45のブリッジ流路120側の端部が後述する第4接続部122dと接続されている。
【0067】
(構成−運搬部−ブリッジ流路)
ブリッジ流路120は、送出流路40から上昇流路50に流れる流体Fの流動方向を調整するための流路であり、
図2に示すように、第1流路121a、第2流路121b、第3流路121c、第4流路121d、第1接続部122a、第2接続部122b、第3接続部122c、第4接続部122d、第1弁123a、第2弁123b、第3弁123c、及び第4弁123dを備えている。
【0068】
第1流路121aは、送出流路40の第1連通流路44と戻し流路90とを接続する流路である。第2流路121bは、第1連通流路44と上昇流路50とを接続する流路である。第3流路121cは、送出流路40の第2連通流路45と戻し流路90とを接続する流路である。第4流路121dは、第2連通流路45と上昇流路50とを接続する流路である。これら第1流路121aから第4の流路は、例えば、直線状であり、且つ軸方向の両端部の各々が開放端である管状体(一例として、円管状体等)にて形成されており、具体的には、流路径の大きさ及び軸方向の長さがそれぞれ同一となるように形成されている。
【0069】
第1接続部122aは、第1連通流路44のブリッジ流路120側の端部と、第1流路121aの一方の端部と、第2流路121bの一方の端部とを接続する接続部である。第2接続部122bは、戻し流路90の下流側の端部と、第1流路121aの他方の端部と、第3流路121cの一方の端部とを接続する接続部である。第3接続部122cは、上昇流路50の上流側の端部と、第2流路121bの他方の端部と、第4流路121dの一方の端部とを接続する接続部である。第4接続部122dは、第2連通流路45のブリッジ流路120側の端部と、第3流路121cの他方の端部と、第4流路121dの他方の端部とを接続する接続部である。これら第1接続部122aから第4接続部122dは、例えば公知のジョイント部材を用いてそれぞれ構成されている。
【0070】
第1弁123aは、第1接続部122aから第2接続部122bへの流体Fの流入を制限する弁であり、第1流路121a内に配置されている。第2弁123bは、第3接続部122cから第1接続部122aへの流体Fの流入を制限する弁であり、第2流路121b内に配置されている。第3弁123cは、第4接続部122dから第2接続部122bへの流体Fの流入を制限する弁であり、第3流路121c内に配置されている。第4弁123dは、第3接続部122cから第4接続部122dへの流体Fの流入を制限する弁であり、第4流路121d内に配置されている。これら第1弁123aから第4弁123dは、例えば公知の弁体を用いて構成されている。
【0071】
(構成−運搬部−上昇流路)
上昇流路50は、送出流路40からブリッジ流路120の第2流路121b又は第4流路121dを介して送出された流体Fを所定の高さ位置まで送る流路であり、ブリッジ流路120の第3接続部122cに接続されており、具体的には、
図2に示すように、上昇流路50の上流側の端部が第3接続部122cと接続されている。
【0072】
(構成−送り部)
送り部70は、
図2に示すように、下降流路80及び戻し流路90を備えている。このうち、戻し流路90は、下降流路80から送られた流体Fをブリッジ流路120の第2接続部122bに向けて送る流路であり、下降流路80と第2接続部122bとに接続されており、具体的には、
図2に示すように、当該戻し流路90の上流側の端部が第2下降流路84の下流側の端部と接続されていると共に、当該戻し流路90の下流側の端部が第2接続部122bと接続されている。
【0073】
以上のような発電システム101により、実施の形態1に係る発電システム1と同様に、流体Fを所定の高さ位置まで運搬しながら発電を行うことができる。特に、浮遊体10が波力によって上移動及び下移動した場合でも、流体Fを所定の高さ位置まで運搬することができるので、運搬部20及び送り部70の各々における流体Fの流動性を向上させることができる。よって、実施の形態1に係る発電システム1に比べて、発電量を高めることが可能となる。
【0074】
(発電システムの作用)
このように構成された発電システム101の作用について説明する。
図3は、波の波高が低い場合の発電システム101における流体Fの流動状態を示す図である。
図4は、波の波高が低い場合の発電システム101における流体Fの流動状態を示す図である。
【0075】
まず、波の波高が高くなることによって浮遊体10の下面が波力を受けると、
図3に示すように、収容流路43内の流体Fのうち流動部本体31よりも上方側の流体Fは、流動部30によって押圧されることで収容流路43から第1連通流路44を介してブリッジ流路120の第2流路121bに送出されて、当該第2流路121b及び上昇流路50を介して所定の高さ位置まで送られた後、上昇流路50から下降流路80に向けて下方に送られる。これにより、下降流路80の収容部85に収容された発電部110のダイナモは、当該下降流路80に送られた流体Fの位置エネルギーによって駆動されることで発電を行うことができる。一方、上記流動部本体31よりも上方側の流体Fは、第1連通流路44を介してブリッジ流路120の第1流路121aに送出されるものの、ブリッジ流路120の第1弁123aによって戻し流路90への流入が制限される。次に、上記下降流路80に送られた流体Fは、戻し流路90を介してブリッジ流路120の第3流路121cに送られた後、当該第3流路121c及びの第2連通流路45を介して収容流路43における流動部本体31よりも下方側の部分に送られる。一方、この上記下降流路80に送られた流体Fは、戻し流路90を介してブリッジ流路120の第1流路121aに送られるものの、第1連通流路44を介して第1流路121aに送出された流体Fによって第1弁123aが押圧されていることで第1連通流路44への流入が制限される。
【0076】
また、波の波高が低くなることによって浮遊体10の下面が波力を受けなくなると、
図4に示すように、収容流路43内の流体Fのうち流動部本体31よりも下方側の流体Fは、流動部30によって押圧されることで収容流路43から第2連通流路45を介してブリッジ流路120の第4流路121dに送出されて、当該第4流路121d及び上昇流路50を介して所定の高さ位置まで送られた後、上昇流路50から下降流路80に下方に向けて送られる。これにより、下降流路80の収容部85に収容された発電部110のダイナモは、当該下降流路80に送られた流体Fの位置エネルギーによって駆動されることで発電を行うことができる。一方、上記流動部本体31よりも下方側の流体Fは、第2連通流路45を介してブリッジ流路120の第3流路121cに送出されるものの、ブリッジ流路120の第3弁123cによって戻し流路90への流入が制限される。次に、上記下降流路80に送られた流体Fは、戻し流路90を介してブリッジ流路120の第1流路121aに送られた後、当該第1流路121a及びの第1連通流路44を介して収容流路43における流動部本体31よりも上方側の部分に送られる。一方、この上記下降流路80に送られた流体Fは、戻し流路90を介してブリッジ流路120の第3流路121cに送られるものの、第2連通流路45を介して第3流路121cに送出された流体Fによって第3弁123cが押圧されていることで第2連通流路45への流入が制限される。
【0077】
(効果)
このように実施の形態2によれば、運搬部20が、第1流路121aと、第2流路121bと、第3流路121cと、第4流路121dと、第1弁123aと、第2弁123bと、第3弁123cと、第4弁123dと、流動部30によって流動された流体Fを第2流路121b又は第4流路121dに向けて送出する送出流路40と、送出流路40から第2流路121b又は第4流路121dを介して送出された流体Fを所定の高さ位置まで送る上昇流路50と、を備え、送り部70が、運搬部20から送られた流体Fが下方に向けて流動することによって発電部110を駆動させる下降流路80と、下降流路80から送られた流体Fを第2接続部122bに向けて送る戻し流路90と、を備えたので、浮遊体10が波力によって上移動及び下移動した場合でも、流体Fを所定の高さ位置まで運搬することができる。よって、運搬部20及び送り部70の各々における流体Fの流動性を向上させることができ、発電量を高めることが可能となる。
【0078】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この形態は、発電システムを流路に設けた形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0079】
(構成)
最初に、実施の形態3に係る発電システムの構成について説明する。
図5は、実施の形態3に係る発電システムを示す概要図であり、(a)は後述する流出部132が回転していない状態を示す図であり、(b)は後述する流出部132が回転した状態を示す図である。
図5(a)に示すように、実施の形態3に係る発電システム201は、浮遊体10、運搬部20、送り部70、発電部110、及び貯水部130を備えている。なお、実施の形態3に係る発電システムにおいては、流動部本体31を略板状体にて形成していることから、浮遊体10の体積の設定は、実施の形態1に係る流動部本体31の体積の設定と略同様となるように設定されている。
【0080】
(構成−貯水部)
貯水部130は、流路135の上流側から流入した水を一時的に貯める貯水手段である。この貯水部130は、浮遊体10及び運搬部20の近傍に設けられており、
図5(a)に示すように、貯水部本体131及び流出部132を備えている。
【0081】
(構成−貯水部−貯水部本体)
貯水部本体131は、貯水部130の基本構造体である。この貯水部本体131は、上面が開放された箱状体(又は中空の円柱状体等)であり、例えば樹脂材、防錆処理された金属材、木材、コンクリート材等にて形成されている。また、この貯水部本体131は、浮遊体10及び運搬部20を収容するように設けられており、設置面に対して固定具等によって固定されている。
【0082】
(構成−貯水部−流出部)
流出部132は、貯水部本体131の内部水位が所定値以上となった場合に、当該貯水部本体131にて貯められた水を流路135の下流側に流出させる流出手段である。ここで「所定値」とは、例えば、貯水部本体131の内部水位の最高水位の値、又は最高水位よりも若干低い水位の値等が該当する。この流出部132は、例えば樹脂材、防錆処理された金属材、木材等にて形成された厚肉の板状体であり、貯水部本体131の下流側の側部の上端(
図5(a)では、貯水部本体131の左側部の上端)に設けられており、具体的には、
図5(a)に示すように、前後方向及び上下方向に沿うように配置され、図示しない支持部材に対して固定具等によって回転可能に固定されている。
【0083】
このように構成された貯水部130の作用は、以下の通りとなる。すなわち、貯水部本体131の内部水位が所定値未満の場合には、
図5(a)に示すように、流出部132が回転することなく、流路135の上流側から流入した水が貯水部130に貯め続けられる。また、貯水部本体131の内部水位が所定値以上となった場合には、
図5(b)に示すように、流出部132が回転することで、貯水部130に貯められた水が流路135の下流側に流出される。これにより、流出部132を設けない場合に比べて、貯水部本体131内で波が立ちやすくなるため、流動部30を効果的に動作させることが可能となる。
【0084】
(効果)
このように実施の形態3によれば、貯水部130が、当該貯水部130の内部水位が所定値以上となった場合に、当該貯水部130にて貯められた水を流路135の下流側に流出させる流出部132を備えたので、流出部132を設けない場合に比べて、貯水部130内で波が立ちやすくなるため、流動部30を効果的に動作させることが可能となる。
【0085】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4について説明する。この形態は、発電システムを岸壁に設けた形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0086】
(構成)
最初に、実施の形態4に係る発電システムの構成について説明する。
図6は、実施の形態4に係る発電システムを示す概要図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
図6(a)、(b)に示すように、実施の形態4に係る発電システム301は、浮遊体10、収集部140、運搬部(図示省略)、送り部(図示省略)、及び発電部(図示省略)を備えている。
【0087】
(構成−浮遊体)
浮遊体10は、例えば樹脂材、ゴム材、防錆処理された金属材等にて形成されており、
図6(a)、(b)に示すように、浮遊体本体12及び伝達部13を備えている。
【0088】
浮遊体本体12は、浮遊体10の基本構造体であり、略箱状体にて形成されており、
図6(a)、(b)に示すように、水面上に浮遊している。
【0089】
伝達部13は、浮遊体本体12が波力を受けた場合に、当該波力を後述する運搬部の回転力変換部に伝達する伝達手段である。この伝達部13は、
図6(a)、(b)に示すように、長尺な略棒状体であり、浮遊体本体12の上面に複数立設されており、浮遊体本体12に対して固定具等によって固定されている。
【0090】
(構成−収集部)
収集部140は、当該収集部140に流入した波の波力を収集する収集手段である。この収集部140は、例えば樹脂材、防錆処理された金属材、木材、コンクリート材等にて形成されており、
図6(a)、(b)に示すように、収集部本体141、収容空間部(収容部分)142、押し上げ部143、及び波除部144を備えて構成されている。
【0091】
収集部本体141は、収集部140の基本構造体であり、
図6(a)、(b)に示すように、平面形状が略C字状である直方体にて形成されており、当該収集部本体141の凹部分に波が流入出可能な位置に設けられ、設置面に対して固定具等によって固定されている。
【0092】
収容空間部142は、浮遊体10を収容する空間部であり、平面形状が浮遊体10の平面形状よりも大きい形状となる直方体にて形成されており、
図6(a)に示すように、当該収集部本体141の凹部分の最底部及びその近傍部分に設けられている。
【0093】
押し上げ部143は、収容空間部142に流入した波を上げるものであり、上面が傾斜状となる中実体又は中空体(
図6(b)では、中空の三角柱状体等)にて形成されており、
図6(b)に示すように、収容空間部142の下端部又はその近傍に設けられており、収集部本体141に対して接続されている。また、この押し上げ部143の上面の具体的な形状については、実施の形態4においては、収容空間部142の奥側(
図6(b)の左側)に向かうにしたがって上方に向けて傾斜する形状(例えば、サイクロイド曲線状、クロソイド曲線状、カブナリー曲線状等)にて形成している。このような形状により、押し上げ部143が平坦状に形成された場合に比べて、収集部本体141の凹部分によって収集された波の波力を後述する回転力変換部に対して効果的に伝達することが可能となる。なお、押し上げ部143によって上げられた波によって収容空間部142内の水面が傾斜しやすくなることから、これを回避するために、例えば、収容空間部142の平面形状の大きさを、当該水面を平坦状にすることが可能な大きさに設定することが好ましい。
【0094】
波除部144は、浮遊体10に波がかかることを抑制するための波除手段であり、厚肉の板状体にて形成されている。また、この波除部144は、浮遊体10よりも波が流入する側(
図6(a)、(b)の右側)に設けられており、具体的には、
図6(a)、(b)に示すように、上下方向及び前後方向に沿うように配置され、収集部本体141に対して固定具等によって接続されている。
【0095】
(構成−運搬部)
運搬部は、回転力変換部及び汲み上げ部を備えている(いずれも図示省略)。
【0096】
(構成−運搬部−回転力変換部)
回転力変換部は、浮遊体10が収集部140にて収集された波力を受けた場合に、当該波力を回転力に変換する回転力変換手段であり、例えばモータ等の公知の駆動装置を用いて構成されている。また、この回転力変換部は、伝達部13と接触可能な位置に設けられており、図示しない固定部材に対して回転可能に固定されている。
【0097】
(構成−運搬部−汲み上げ部)
汲み上げ部は、回転力変換部にて変換された回転力を利用して、流体を所定の高さ位置まで汲み上げる汲み上げ手段であり、例えば、公知の汲み上げ装置(一例として、流体が収容可能な容器をベルトコンベア(又は滑車等)を用いて上方に向けて搬送する装置等)を用いて構成されている。また、この汲み上げ部は、当該汲み上げ部における流体を運搬する部分(例えば、ベルトコンベア等)が回転力変換部に取り付けられた状態で、下降流路に汲み上げ部にて汲み上げられた流体を送ることが可能な位置に設けられている。
【0098】
以上のような発電システム301により、収集部140を設けない場合に比べて、浮遊体10が受ける波力の大きさを高めることができる。よって、回転力変換部に対して大きな波力を伝達できるので、汲み上げ部を効果的に動作させることが可能となる。
【0099】
(効果)
このように実施の形態4によれば、運搬部が、浮遊体10が収集部140にて収集された波力を受けた場合に、当該波力を回転力に変換する回転力変換部と、回転力変換部にて変換された回転力を利用して、流体を所定の高さ位置まで汲み上げる汲み上げ部と、を備えたので、収集部140を設けない場合に比べて、浮遊体10が受ける波力の大きさを高めることができる。よって、回転力変換部に対して大きな波力を伝達できるので、汲み上げ部を効果的に動作させることが可能となる。
【0100】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0101】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0102】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0103】
(流体について)
上記実施の形態1から4では、流体が水であると説明したが、これに限られず、例えば、流体が各種の流路を流れる際に生じる摩擦抵抗を低減させることが可能な添加剤(いわゆるトムズ効果が生じるような添加剤)を含む混合物(一例として、鎖状高分子を含む混合水、石鹸水等)であってもよい。これにより、流体が水である場合に比べて、上記摩擦抵抗を低減することができ、発電システムを効率良く動作させることが可能となる。
【0104】
(運搬部について)
上記実施の形態1から3では、運搬部20の送出流路40の流路径の大きさを、流動部本体31の外径の大きさよりも大きく設定していると説明したが、これに限られず、例えば、送出流路40の流路径の大きさを、流動部本体31の外径の大きさと略同一に設定してもよい。
【0105】
(送り部について)
上記実施の形態1から4では、送り部が、戻し流路を備えていると説明したが、これに限られず、例えば、戻し流路を省略してもよい。また、上記実施の形態1から4では、送り部が、収容部を備えていると説明したが、これに限られず、例えば、第1下降流路内又は第2下降流路内に発電部が設けることができる場合には、収容部を省略してもよい。
【0106】
また、上記実施の形態1から4では、送り部には、2つの貯め部が設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、1つ貯め部のみが設けられてもよく、あるいは、3つ以上の貯め部が設けられてもよい。なお、この貯め部は、例えば、水平方向に向けて複数並設して、それぞれ連結してもよい。この場合には、隣接する貯め部間で流体の移動が可能となるように、各貯め部に連通口が設けられてもよい。
【0107】
(第1弁、第2弁について)
上記実施の形態1、3では、発電システムに、第1弁60及び第2弁100が設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、第1弁60又は第2弁100の少なくともいずれか一方を省略してもよい。
【0108】
また、上記実施の形態1、3では、第1弁60が、第2接続口51よりも上方に配置されていると説明したが、これに限られず、例えば、第2接続口51よりも下方に配置されてもよい。
【0109】
(発電部について)
上記実施の形態1から3では、発電部110が、送り部70の第1下降流路82のみに設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、送り部70の第2下降流路84、運搬部20の上昇流路50、又は送り部70の戻し流路90等に設けられてもよい。
【0110】
(貯水部について)
上記実施の形態3では、貯水部130が、流出部132を備えていると説明したが、これに限られず、例えば、流出部132を省略してもよい。
【0111】
(収集部について)
上記実施の形態4では、収集部140は、波除部144を備えていると説明したが、これに限られない。
図7、
図8は、実施の形態4に係る発電システム301の変形例を示す図であり、
図6(a)に対応する領域を示す図である。例えば、
図7に示すように、波除部144を省略してもよい。あるいは、
図8に示すように、波除部144に代えて、反射部150を備えてもよい。反射部150は、収集部本体141にて反射された波を反射するための反射手段であり、例えば中空又は中実の方形状体(一例として中空の三角柱状体)にて形成されており、反射部150の浮遊体10側の側部が収集部本体141の凹部分と対向するように(より具体的には、反射部150の浮遊体10側の側部の焦点が凹部分の焦点と一致するように)、相互に間隔を隔てて設けられている。このような反射部150により、収集部本体141と反射部150との相互間の水位を増幅させることができ、浮遊体10が受ける波力の大きさを一層高めることができる。
【0112】
(波除部について)
上記実施の形態4では、発電システム301に、波除部144が設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、実施の形態に係る発電システム1に波除部144が設けられてもよい。この場合には、波の高さが通常の高さである場合に波除部144の下端部に波が当たらない位置に、波除部144を設置することが望ましい。
【0113】
(付記)
付記1の発電システムは、波力によって所定の高さ位置まで上げられた流体の位置エネルギーを発電手段を介して電気に変換する発電システムであって、浮遊体と、前記浮遊体が波力を受けた場合に、当該波力によって前記流体を前記所定の高さ位置まで運搬する運搬手段と、前記運搬手段にて運搬された前記流体を下方に向けて送る送り手段と、を備え、前記発電手段は、前記送り手段にて送られた前記流体の位置エネルギーによって当該発電手段が駆動されることにより発電を行う。
【0114】
また、付記2の発電システムは、付記1に記載の発電システムにおいて、前記運搬手段は、前記浮遊体に接続された流動手段であって、前記浮遊体が波力を受けた場合に前記流体を流動させる流動手段と、前記流動手段によって流動された前記流体を送出する送出流路と、前記送出流路から送出された前記流体を前記所定の高さ位置まで送る上昇流路と、を備え、前記上昇流路の流路径を、前記送出流路の流路径よりも小さくした。
【0115】
また、付記3の発電システムは、付記2に記載の発電システムにおいて、前記送り手段は、前記発電手段が設けられた下降流路であって、前記運搬手段から送られた前記流体が下方に向けて流動することによって当該発電手段を駆動させる下降流路と、前記上昇流路と前記下降流路とに接続された戻し流路であって、当該下降流路から送られた前記流体を当該上昇流路に向けて送る戻し流路と、を備えた。
【0116】
また、付記4の発電システムは、付記3に記載の発電システムにおいて、前記上昇流路から前記送出流路への前記流体の流入を制限する第1弁と、前記戻し流路から前記上昇流路への前記流体の流入を制限する第2弁と、を備えた。
【0117】
また、付記5の発電システムは、付記1に記載の発電システムにおいて、前記運搬手段は、前記浮遊体に接続された流動手段であって、前記流体を流動させる流動手段と、第1流路と、前記第1流路の一方の端部に接続された第2流路と、前記第1流路の他方の端部に接続された第3流路と、前記第2流路における前記第1流路側とは反対側の端部と、前記第3流路における前記第1流路側とは反対側の端部とに接続された第4流路と、前記第1流路内に配置された第1の弁であって、前記第1流路と前記第2流路とを接続する第1接続部から、前記第1流路と前記第3流路とを接続する第2接続部への前記流体の流入を制限する第1弁と、前記第2流路内に配置された第2弁であって、前記第2流路と前記第4流路とを接続する第3接続部から、前記第1接続部への前記流体の流入を制限する第2弁と、前記第3流路内に配置された第3弁であって、前記第3流路と前記第4流路とを接続する第4接続部から、前記第2接続部への前記流体の流入を制限する第3弁と、前記第4流路内に配置された第4弁であって、前記第3接続部から前記第4接続部への前記流体の流入を制限する第4弁と、前記第1接続部と、前記第4接続部とに接続された送出流路であって、前記流動手段によって流動された前記流体を前記第2流路又は前記第4流路に向けて送出する送出流路と、前記第3接続部に接続された上昇流路であって、前記送出流路から前記第2流路又は前記第4流路を介して送出された前記流体を前記所定の高さ位置まで送る上昇流路と、を備え、前記送り手段は、前記発電手段が設けられた下降流路であって、前記運搬手段から送られた前記流体が下方に向けて流動することによって当該発電手段を駆動させる下降流路と、前記下降流路と前記第2接続部とに接続された戻し流路であって、当該下降流路から送られた前記流体を当該第2接続部に向けて送る戻し流路と、を備えた。
【0118】
また、付記6の発電システムは、付記2から5のいずれか一項に記載の発電システムにおいて、水が流れる流路に設けられた当該発電システムであって、前記浮遊体及び前記運搬手段を収容するように設けられた貯水手段であって、前記流路の上流側から流入した前記水を一時的に貯める貯水手段を備え、前記貯水手段は、当該貯水手段の内部水位が所定値以上となった場合に、当該貯水手段にて貯められた前記水を前記流路の下流側に流出させる流出手段を備えた。
【0119】
また、付記7の発電システムは、付記1に記載の発電システムにおいて、前記浮遊体を収容するように設けられた収集手段であって、当該収集手段に流入した波の波力を収集する収集手段を備え、前記運搬手段は、前記浮遊体が前記収集手段にて収集された波力を受けた場合に、当該波力を回転力に変換する回転力変換手段と、前記回転力変換手段にて変換された前記回転力を利用して、前記流体を前記所定の高さ位置まで汲み上げる汲み上げ手段と、を備えた。
【0120】
(付記の効果)
付記1に記載の発電システムによれば、浮遊体が波力を受けた場合に、当該波力によって流体を所定の高さ位置まで運搬する運搬手段と、運搬手段にて運搬された流体を下方に向けて送る送り手段と、を備え、発電手段は、送り手段にて送られた流体の位置エネルギーによって当該発電手段が駆動されることにより発電を行うので、流体を所定の高さ位置まで運搬しながら発電を行うことができるので、従来技術に比べて発電量を向上させることが可能となる。また、流体を所定の高さ位置まで運搬する動力として波力を用いるので、従来技術のように上記動力として電力を用いる必要がないことから、電力コストを削減でき、ランニングコストを低減することが可能となる。
【0121】
付記2に記載の発電システムによれば、上昇流路の流路径を、送出流路の流路径よりも小さくしたので、上昇流路の流路径の大きさを送出流路の流路径の大きさと同一以上に設定した場合に比べて、送出流路の流体の重さによる負荷を小さくでき、所定の高さ位置を比較的高く設定した場合でも、送出流路から上昇流路を介して所定の高さ位置まで流体を確実に送ることが可能となる。
【0122】
付記3に記載の発電システムによれば、送り手段が、上昇流路と下降流路とに接続された戻し流路であって、当該下降流路から送られた流体を当該上昇流路に向けて送る戻し流路を備えたので、上昇流路、下降流路、及び戻し流路によって流体を循環させる流路を形成でき、流体の再利用を図ることが可能となる。
【0123】
付記4に記載の発電システムによれば、上昇流路から送出流路への流体の流入を制限する第1弁と、戻し流路から上昇流路への流体の流入を制限する第2弁と、を備えたので、下降流路から上昇流路への流体の流入を回避できると共に、上昇流路から送出流路への流体の流入を回避できるので、発電システムを安定して動作させることが可能となる。
【0124】
付記5に記載の発電システムによれば、運搬手段が、第1流路と、第2流路と、第3流路と、第4流路と、第1弁と、第2弁と、第3弁と、第4弁と、流動手段によって流動された流体を第2流路又は第4流路に向けて送出する送出流路と、送出流路から第2流路又は第4流路を介して送出された流体を所定の高さ位置まで送る上昇流路と、を備え、送り手段が、運搬手段から送られた流体が下方に向けて流動することによって発電手段を駆動させる下降流路と、下降流路から送られた流体を第2接続部に向けて送る戻し流路と、を備えたので、浮遊体が波力によって上移動及び下移動した場合でも、流体を所定の高さ位置まで運搬することができる。よって、運搬手段及び送り手段の各々における流体の流動性を向上させることができ、発電量を高めることが可能となる。
【0125】
付記6に記載の発電システムによれば、貯水手段が、当該貯水手段の内部水位が所定値以上となった場合に、当該貯水手段にて貯められた水を流路の下流側に流出させる流出手段を備えたので、流出手段を設けない場合に比べて、貯水手段内で波が立ちやすくなるため、流動手段を効果的に動作させることが可能となる。
【0126】
付記7に記載の発電システムによれば、運搬手段が、浮遊体が収集手段にて収集された波力を受けた場合に、当該波力を回転力に変換する回転力変換手段と、回転力変換手段にて変換された回転力を利用して、流体を所定の高さ位置まで汲み上げる汲み上げ手段と、を備えたので、収集手段を設けない場合に比べて、浮遊体が受ける波力の大きさを高めることができる。よって、回転力変換手段に対して大きな波力を伝達できるので、汲み上げ部を効果的に動作させることが可能となる。