(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前身頃及び後身頃を構成する外装体と、この外装体の内面に固定された、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されてサイドシール部が形成されることにより、胴周り領域が環状に形成されるとともに、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成された、パンツタイプ使い捨ておむつであって、前記外装体に前記伸縮領域を有している、請求項1又は2記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、高い通気性と高い剥離強度とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した
吸収性物品は次のとおりである。
<
第1
の態様>
少なくとも一方向に伸縮可能な伸縮領域を備えた吸収性物品において、
前記伸縮領域は、不織布からなる第1シート層と、不織布からなる第2シート層との間に弾性フィルムが積層されてなるとともに、前記弾性フィルムが前記伸縮領域の伸縮方向に伸長された状態で、前記第1シート層及び第2シート層が、前記伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の接合部で、前記弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合されており、
前記接合部では、少なくとも、前記第1シート層及び第2シート層にわたる弾性フィルムの溶融固化物により前記第1シート層及び第2シート層が接合されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本
吸収性物品の伸縮領域では、弾性フィルムの自然長状態では、接合部間の第1シート層及び第2シート層が互いに離間する方向に膨らんで、伸縮方向と交差する方向に延びる収縮皺が形成される。この状態で弾性フィルムの貫通孔と接合部との間に隙間が形成されていればその隙間により、また、この状態で弾性フィルムの貫通孔と接合部との間に隙間が形成されていなくても、幅方向にある程度伸長した装着状態では、接合部が伸びないのに対して弾性フィルムの貫通孔が伸びるため、弾性フィルムにおける接合部の貫通孔と、接合部との間に隙間が形成され、弾性フィルムの素材が無孔のフィルムやシートであっても、この隙間により通気性が付加される。よって、本
吸収性物品の伸縮領域は通気性が高いものとなる。また、接合部では、少なくとも、前記第1シート層及び第2シート層にわたる弾性フィルムの溶融固化物により前記第1シート層及び第2シート層が接合されているため、後述する実施例からも分かるように、剥離強度が高いものとなる。したがって、本
吸収性物品によれば、高い通気性と高い剥離強度とを両立できるようになる。
【0010】
【0011】
【0012】
<
第2
の態様>
前記伸縮領域における前記接合部の面積は0.14〜3.5mm
2であり、
自然長状態における前記貫通孔の開口の面積は、前記接合部の面積の1〜1.5倍であり、
前記伸縮領域における前記接合部の面積率は1.8〜22.5%である、
第1
の態様の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
接合部の面積及び貫通孔の開口の面積、並びに接合部の面積率は適宜定めれば良いが、通常の場合、上記範囲内とすることが望ましい。ここで、「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域)における対象部分(例えば接合部、貫通孔の開口)の総面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に「接合部の面積率」とは、伸縮方向に弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。また、貫通孔の開口の面積は、当該伸縮構造が自然長の状態における値を意味し、貫通孔の開口の面積が、弾性フィルムの表と裏で異なる等、厚み方向に均一でない場合には最小値を意味する。
【0014】
<
第3
の態様>
前身頃及び後身頃を構成する外装体と、この外装体の内面に固定された、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されてサイドシール部が形成されることにより、胴周り領域が環状に形成されるとともに、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成された、パンツタイプ使い捨ておむつであって、前記外装体に前記伸縮領域を有している、
第1又は2
の態様の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
このような構造のパンツタイプ使い捨ておむつの外装体は、広範囲に伸縮性を有していること、及び通気性に優れることが要求されるため、
前述の吸収性物品に特に好適である。
【0016】
<
第4
の態様>
少なくとも一方向に伸縮可能な伸縮領域を備えた吸収性物品の製造方法において、
前記伸縮領域を形成するに際し、不織布からなる第1シート層と不織布からなる第2シート層との間に、弾性フィルムを前記伸縮領域の伸縮方向に伸長しつつ挟んだ状態で、それらを前記伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数箇所で溶着することにより、前記多数箇所で前記弾性フィルムを溶融して貫通孔を形成するとともに、その貫通孔の位置で少なくとも前記弾性フィルムの溶融物の固化により前記第1シート層及び第2シート層を接合する、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【0017】
(作用効果)
このように、第1シート層及び第2シート層間に弾性フィルムを挟んだ状態で、接合部の配列パターンでヒートシールや超音波シール等により溶着すると、弾性フィルムに貫通孔を形成するのと同時に、その貫通孔を介して弾性フィルムの溶融物の固化により第1シート層及び第2シート層を接合することができ、簡素かつ効率的に製造することができる。しかも製造される伸縮領域は、
第1
の態様のものと同様に、高い通気性と高い剥離強度とを両立したものとなる。
【0018】
【0019】
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い通気性と高い剥離強度とを両立できる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤等の接合手段を示している。
図1〜
図7はパンツタイプ使い捨ておむつを示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bをなす外装体20と、この外装体20の内面に固定され一体化された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性表面シート11と液不透過性裏面側シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装体20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤などの接合手段によって接合(
図7の斜線部分10B)された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である前後方向(縦方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合されてサイドシール部21が形成されることによって、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。
【0023】
(内装体の構造例)
内装体10は、
図4〜
図6に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、図示形態のようにほぼ長方形とすることが一般的である。
【0024】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0025】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0026】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。
吸収体13の形状は、股間部に前後両側よりも幅の狭い括れ部分13Nを有するほぼ砂時計状に形成されているが、長方形状等、適宜の意形状とすることができる。括れ部分13Nの寸法は適宜定めることができるが、括れ部分13Nの前後方向長さはおむつ全長の20〜50%程度とすることができ、その最も狭い部分の幅は吸収体13の全幅の40〜60%程度とすることができる。このような括れ部分13Nを有する場合において、内装体10の平面形状がほぼ長方形とされていると、内装体10における吸収体13の括れ部分13Nと対応する部分に、吸収体13を有しない余り部分が形成される。
【0027】
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されている。この立体ギャザーBSは、
図5及び
図6に示されるように、内装体の裏面の側部に固定された固定部と、この固定部から内装体の側方を経て内装体の表面の側部まで延在する本体部と、本体部の前後端部が倒伏状態で内装体の表面の側部に固定されて形成された倒伏部分と、この倒伏部分間が非固定とされて形成された自由部分とが、折り返しによって二重シートとしたギャザー不織布15により形成されている。
【0028】
また、二重シート間には、自由部分の先端部等に細長状ギャザー弾性部材16が配設されている。ギャザー弾性部材16は、製品状態において
図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により自由部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0029】
液不透過性裏面側シート12は、液透過性表面シート11とともに吸収体13の幅方向両側で裏側に折り返されている。この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0030】
ギャザー弾性部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材16としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0031】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0032】
(外装体の構造例)
外装体20は、
図4〜
図6にも示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの間に、弾性フィルム30及び幅方向に沿う細長状弾性部材24が配設され、幅方向の伸縮性が付与されている。外装体20の平面形状は、中間両側部にそれぞれ脚開口を形成するために形成された凹状の脚周りライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。外装体20は、前後に二分割し、両者が股間部で前後方向に離間するように配置しても良い。
【0033】
より詳細に説明すると、図示形態の外装体20においては、前身頃Fと後身頃Bとが接合されたサイドシール部21の縦方向範囲として定まる胴周り領域Tの内、ウエスト部23にウエスト部弾性部材24が設けられている。図示形態のウエスト部弾性部材24は、縦方向に間隔をおいて配置された複数の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、身体の胴周りを締め付けるように伸縮力を与えるものである。ウエスト部弾性部材24は、間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3〜8mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは5本以上配置される。ウエスト部弾性部材24の固定時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合230〜320%程度とすることができる。ウエスト部弾性部材24としては、一本又は複数本の帯状弾性部材を用いることもできる。
【0034】
ウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いても良く、またこれに代えて、後述の弾性フィルムをウエスト部23まで延在させてもよい。図示形態のウエスト部弾性部材24は、第2シート層20Bの構成材をウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cに挟持されているが、第1シート層20Aの構成材と第2シート層20Bの構成材との間に挟持しても良い。
【0035】
第1シート層20A及び第2シート層20Bの構成材は、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、通気性及び柔軟性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜25g/m
2程度とするのが好ましい。また、第1シート層20A及び第2シート層20Bは、その一部又は全部が一枚の資材を折り返して対向させた一対の層であっても良い。
【0036】
本実施形態では、
図2に示すように、外装体20における前身頃Fの胴周り領域T、後身頃Bの胴周り領域T、及びそれらの間の中間領域Lに、弾性フィルム伸縮構造20Xが形成されている。すなわち、この外装体20の伸縮構造20Xでは、吸収体13と重なる部分を含む幅方向中間部分(重なる部分の一部でも全部でも良く、内装体固定部10Bのほぼ全体を含むことが望ましい)に非伸縮領域70が設けられるとともに、その幅方向両側におけるサイドシール部21までの部分が伸縮領域80とされている。そして、これら伸縮領域80及び非伸縮領域70の全体にわたり、
図3に示すように、第1シート層20Aと、第2シート層20Bとの間に弾性フィルム30が積層されてなるとともに、弾性フィルム30が幅方向に伸長された状態で、第1シート層20A及び第2シート層20Bが、伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の接合部40で、弾性フィルム30に形成された貫通孔31を通じて接合されている。この場合、第1シート層20A及び第2シート層20Bと弾性フィルム30(後述の溶融固化物除く)とは接合されていないことが望ましいが、接合することも可能である。
【0037】
このような弾性フィルム伸縮構造20Xでは、基本的に、接合部40の面積率が高くなるほど第1シート層20A及び第2シート層20Bが弾性フィルム30により収縮する部分が少なくなるため、弾性限界伸びが低下する傾向があり、またそれに伴い、弾性フィルム30における貫通孔31の開口の面積率も高くなり、伸縮方向と直交する方向に占める弾性フィルム30の伸縮方向連続部分の割合が減るため、伸長時に発生する収縮力が小さくなるとともに弾性フィルム30が断裂しやすくなる傾向がある。このような特性を利用して、非伸縮領域70では、接合部40の面積率が伸縮領域80よりも高いことにより、伸縮方向の弾性限界伸びが130%以下(好ましくは120%以下、より好ましくは100%)とする一方、伸縮領域80では、接合部40の面積率が非伸縮領域70よりも低いことにより、伸縮方向の弾性限界伸びが200%以上(好ましくは265〜295%)とすることができる。ここで、「弾性限界伸び」とは、弾性限界(換言すれば第1シート層及び第2シート層が完全に展開した状態)における伸びを意味し、弾性限界時の長さを自然長を100%としたときの百分率で表すものである。
【0038】
伸縮領域80では、
図3(d)に示すように、弾性フィルム30の自然長状態では、接合部間の第1シート層20A及び第2シート層20Bが互いに離間する方向に膨らんで、伸縮方向と交差する方向に延びる収縮皺25が形成され、
図3(c)に示すように、幅方向にある程度伸長した装着状態でも、収縮皺25は伸ばされるものの、残るようになっている。また、図示形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bは、少なくとも接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では弾性フィルム30と接合されていないと、装着状態を想定した
図3(c)及び第1シート層20A及び第2シート層20Bの完全展開状態を想定した
図3(a)(b)からも分かるように、これらの状態では、弾性フィルム30における接合部の貫通孔31と、接合部40との間に隙間が形成され、弾性フィルム30の素材が無孔のフィルムやシートであっても、この隙間により通気性が付加される。なお、装着状態及び自然長状態の収縮皺25の状態は、
図12〜
図14のサンプル写真にも現れている。
【0039】
非伸縮領域70では、
図12〜
図14のサンプル写真からも分かるように、接合部40間に筋状に盛り上がった部分あるいは極めて微小な皺が形成されるが、接合部40の面積率が非常に高いために伸縮性は実質的に殺されることになる。
【0040】
また、本実施形態では、
図2及び
図9(a)に示されるように、伸縮領域80における非伸縮領域70側の端部が、当該端部を除いた主伸縮部分81よりも接合部40の面積率が低い緩衝伸縮部分82とされる。この緩衝伸縮部分により伸長時に次のような変化が起きると考えられる。すなわち、いま自然長状態から徐々に力を加えて伸長していくことを考えると、緩衝伸縮部分82及び主伸縮部分81がともに伸びるものの、緩衝伸縮部分82が主伸縮部分81よりも先に弾性限界まで伸び切って完全展開状態(
図3(b)の状態)となり、主伸縮部分81は不完全展開状態(
図3(c)の状態)にある第1段階と、その後に主伸縮部分81が弾性限界まで伸び切って完全展開状態(
図3(b)の状態)となる第2段階とが存在する。第1段階では、緩衝伸縮部分82は伸ばされるもののその弾性限界伸びは少なく、それゆえその際に弾性フィルム30における緩衝伸縮部分82及び非伸縮領域70の境界に加わる張力も小さいから、緩衝伸縮部分82及び非伸縮領域70の境界における弾性フィルム30の断裂は発生し難くなる。第2段階では、主伸縮部分81が完全展開状態まで伸びる過程で、その伸びに応じた張力が主伸縮部分81、緩衝伸縮部分82及び非伸縮領域70に加わる。しかし、緩衝伸縮部分82は第1段階以上に伸びることができず、非伸縮領域70及び緩衝伸縮部分82に加わる張力は、非伸縮領域70及び緩衝伸縮部分82の全体にわたり第1シート層20A及び第2シート層20Bが支えることになり、結果として、弾性フィルム30における緩衝伸縮部分82及び非伸縮領域70の境界に加わる張力は第1段階の弾性限界伸び以上にならないから、第1段階と同様に、緩衝伸縮部分82及び非伸縮領域70の境界における弾性フィルム30の断裂は発生しにくくなるのである。
【0041】
これに対して、
図9(b)に示すように、緩衝伸縮部分82を有しない形態とすることもできるが、その場合、伸縮領域80の弾性限界伸びが大きく、弾性限界まで伸び切って完全展開状態となるまで、弾性フィルム30における伸縮領域80及び非伸縮領域70の境界に加わる張力が増加し続けて大きくなるため、
図14に示すような伸縮領域80及び非伸縮領域70の境界に沿う弾性フィルム30の断裂(図中の二点鎖線が断裂後の弾性フィルムの縁を示している)が発生しやすくなる。
【0042】
以上の原理を考慮すると、非伸縮領域70における伸縮方向と直交する方向の弾性フィルム30の貫通孔31間の間隔と同じ幅での弾性フィルム30の伸縮方向の引張伸度より、緩衝伸縮部分82の弾性限界伸びが小さいと、伸縮領域80及び非伸縮領域70の境界における弾性フィルム30の断裂を確実に防止できるようになるため好ましい。
【0043】
個々の接合部40及び貫通孔31の自然長状態での形状は、真円形、楕円形、長方形等の多角形(線状や角丸のものを含む)、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々の接合部40の大きさは、適宜定めれば良いが、大きすぎると接合部40の硬さが感触に及ぼす影響が大きくなり、小さすぎると接合面積が少なく資材同士が十分に接着できなくなるため、通常の場合、個々の接合部40の面積は0.14〜3.5mm
2程度とすることが好ましい。個々の貫通孔31の開口の面積は、貫通孔31を介して接合部が形成されるため接合部以上であれば良いが、接合部の面積の1〜1.5倍程度とすることが好ましい。
【0044】
また、各領域における個々の接合部40の面積及び面積率は、通常の場合次のようにするのが好ましい。
(非伸縮領域70)
接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.25〜1.0mm
2)
接合部40の面積率:16〜45%(特に25〜45%)
(主伸縮部分81)
接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.14〜1.0mm
2)
接合部40の面積率:1.8〜19.1%(特に1.8〜10.6%)
(緩衝伸縮部分82)
接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.25〜1.0mm
2)
接合部40の面積率:8〜22.5%(特に12.5〜22.5%)
【0045】
このように三箇所(非伸縮領域70、主伸縮部分81及び緩衝伸縮部分82)の接合部40の面積率を異なるものとするには、
図10(a)に示すように単位面積当たりの接合部40の数を変えたり、
図10(b)に示すように個々の接合部40の面積を変えたりすればよい。前者の場合、接合部40の面積を、非伸縮領域70、主伸縮部分81及び緩衝伸縮部分82のうちの二箇所以上で同じとする他、全箇所で異なるものとすることができ、後者の場合、単位面積当たりの接合部40の数を、非伸縮領域70、主伸縮部分81及び緩衝伸縮部分82うちの二箇所以上で同じとする他、全箇所で異なるものとすることができる。
【0046】
接合部40及び貫通孔31の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、
図19(a)に示すような斜方格子状や、
図19(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、
図19(c)に示すような正方格子状、
図19(d)に示すような矩形格子状、
図19(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、接合部40の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。接合部40及び貫通孔31の配列形態は、主伸縮部分81、緩衝伸縮部分82、及び非伸縮領域70において同じものとする他、異なるものとすることもできる。
【0047】
図11に示すように、吸収体13と重なる部分以外にも、例えば接合部40を表示71状に配置する等した非伸縮領域70を設けることができ、この場合にも非伸縮領域70から続く伸縮領域80において、緩衝伸縮部分を設けることができる。なお、表示71としては、吸収性物品の分野で公知の表示、例えば装飾のための模様(ワンポイントの絵やキャラクターを含む)、使用方法や使用補助、サイズ等の機能表示、あるいは製造者や製品名、特徴的機能等の標章表示等とすることができる。なお、図示形態では、植物模様である花模様の表示71が付加されているが、抽象模様や動物模様、自然現象模様等、各種の模様を使用できることはいうまでもない。
【0048】
弾性フィルム30は特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する樹脂フィルムであれば特に限定なく用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上のブレンド物を、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形によりフィルム状に加工したものを用いることができる。また、弾性フィルム30としては、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、伸縮方向における引張強度が8〜25N/35mm、伸縮方向と直交する方向における引張強度が5〜20N/35mm、伸縮方向における引張伸度が450〜1050%、及び伸縮方向と直交する方向における引張伸度が450〜1400%の弾性フィルム30であると好ましい。なお、引張強度及び引張伸度(破断伸び)は、引張試験機(例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS−G100N)を用い、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とした以外は、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。弾性フィルム30の厚みは特に限定されないが、20〜40μm程度であるのが好ましい。また、弾性フィルム30の目付は特に限定されないが、30〜45g/m
2程度であるのが好ましく、特に30〜35g/m
2程度であるのが好ましい。
【0049】
特徴的には、
図8(a)に示すように、接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合が、少なくとも、第1シート層20A及び第2シート層20Bにわたる弾性フィルム30の溶融固化物30mによりなされている。このように弾性フィルム30の溶融固化物30mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合すると、後述する実施例からも分かるように、剥離強度が高いものとなり、高い通気性と高い剥離強度とを両立できるようになる。
【0050】
このような接合構造は、例えば
図15に示すように、第1シート層20Aと第2シート層20Bとの間に、弾性フィルム30を伸縮方向に伸長しつつ挟んだ状態で、所定の接合部40のパターンで溶着することにより、多数箇所で弾性フィルム30を溶融して貫通孔31を形成するとともに、その貫通孔31の位置で少なくとも弾性フィルム30の溶融物の固化により第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する手法を用いて簡素かつ効率的に製造することができる。この場合、自然長状態では、個々の接合部40の形状・面積と個々の貫通孔31の形状・面積とがほぼ等しくなる。なお、
図15は、ヒートシール装置を用いた例を示しており、前述の接合部40のパターンに配列された多数の加圧凸部60pを外周面に備えたシールロール60と、これに対向配置された表面平滑なアンビルロール61とにより、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟んだ状態の加工対象を挟み、加圧凸部60pを加熱することにより、加圧凸部60pとアンビルロール61の外周面との間で厚み方向に加圧される部位のみ、弾性フィルム30を溶融して貫通孔31を形成するとともに、その貫通孔31の位置で少なくとも弾性フィルム30の溶融物の固化により第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合しているが、所望のパターンで弾性フィルム30を溶融して貫通孔31を形成するとともに、その貫通孔31の位置で少なくとも弾性フィルム30の溶融物の固化により第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合しうるものであれば、超音波シール等の他の装置を用いることもできる。
【0051】
弾性フィルム30の融点、並びに第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点、溶着箇所における加工温度の高低の関係は適宜定めることができるが、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点が弾性フィルム30の融点以下とされ、溶着箇所において第1シート層20A及び第2シート層20Bの全体及び弾性フィルム30の全体が溶融・混合し、接合部40が形成されるよりも、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点が弾性フィルム30の融点よりも高く、溶着箇所で弾性フィルム30が溶融するとともに、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部又は全部が溶融しない方が好ましい。すなわち、後者の場合、
図16及び
図17からも分かるように、接合部40の周囲から連続する第1シート層20A及び第2シート層20Bの繊維20fが残っており、第1シート層20A及び第2シート層20Bにわたり浸透し固化した弾性フィルム30の溶融固化物30mにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合された構造となり、第1シート層20A及び第2シート層20Bに対する弾性フィルム30の溶融固化物30mの食い付きが良好となるだけでなく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの強度が低下しにくくなるため、より一層剥離強度に優れたものとなる。なお、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部が溶融しないことには、接合部の全繊維について芯(複合繊維における芯だけでなく単成分繊維の中心部分を含む)は残るがその周囲部分(複合繊維における鞘だけでなく単成分繊維の表層側の部分を含む)は溶融する形態や、一部の繊維は全く溶融しないが、残りの繊維は全部が溶融する又は芯は残るがその周囲部分は溶融する形態を含む。
【0052】
このような観点から、弾性フィルム30の融点は80〜145℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点は85〜190℃程度、特に150〜190℃程度のものが好ましく、また、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点と弾性フィルム30の融点との差は60〜80℃程度であるのが好ましい。
【0053】
図示例は、外装体20のウエスト部23以外の伸縮構造に弾性フィルム伸縮構造20Xを適用した例であるが、ウエスト部23も含めて適用したり、前身頃Fの胴周り領域Tと後身頃Bの胴周り領域Tとの間の中間領域Lには弾性フィルム伸縮構造20Xを設けない形態としたりする等、適宜の変更が可能である。また、上述の伸縮構造20Xは、パンツタイプ使い捨ておむつだけでなく、テープタイプ使い捨ておむつの胴周りやファスニングテープ、吸収性物品全般に汎用されている立体ギャザー、平面ギャザー等、他の伸縮部等にも適用することができる。また、本実施形態は非伸縮領域を有するものであるが、弾性フィルム伸縮構造の全体を伸縮領域とし、非伸縮領域を有しない形態とすることも可能である。さらにまた、図示例は伸縮方向が幅方向とされているが、前後方向としたり、幅方向及び前後方向の両方向としたりすることも可能である。
【0054】
(前後押さえシート)
図1及び
図4にも示されるように、外装体20の内面上に取り付けられた内装体10の前後端部をカバーし、且つ内装体10の前後縁からの漏れを防ぐために、前後押さえシート50,60が設けられていても良い。図示形態について更に詳細に説明すると、前押さえシート50は、前身頃F内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の前端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在しており、後押さえシート60は、後身頃B内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の後端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在している。前後押さえシート50,60の股間側の縁部に幅方向の全体にわたり(中央部のみでも良い)若干の非接着部分を設けると、接着剤がはみ出ないだけでなく、この部分を表面シートから若干浮かせて防漏壁として機能させることができる。
【0055】
図示形態のように、前後押さえシート50,60を別体として取り付けると、素材選択の自由度が高くなる利点があるものの、資材や製造工程が増加する等のデメリットもある。そのため、外装体20をおむつ内面に折り返してなる折り返し部分20Cを、内装体10と重なる部分まで延在させて、前述の押さえシート50,60と同等の部分を形成することもできる。
【0056】
<剥離試験>
第1シート層及び第2シート層として、PE/PP複合繊維(芯:ポリプロピレン(融点165℃)、鞘:ポリエチレン(融点130℃))を原料とする目付17g/m
2のスパンボンド不織布を、また弾性フィルムとして目付け35g/m
2、厚み:35μm、融点:110〜120℃のものを使用した。MD方向が揃うように第1シート層及び第2シート層間に弾性フィルムを自然長状態(剥離強度の相対的な比較では自然長であるか伸長状態であるかは無関係)で挟み、ステープラー型超音波シール装置(スズキ社製「はるるSUH−30」)を使用して、
図18(a)に示すように、MD方向に沿う長辺を有する長方形接合部40(短辺1.0mm、長辺1.5mm)を、MD方向と直交するCD方向に1mm間隔、及びMD方向に17mm間隔で矩形格子状に形成し、CD方向の長さ100y80mm、MD方向長さ100xが50mmの弾性フィルムありサンプル100を作製した(実施例)。超音波シールは加圧時間を約3秒とし、同一人が同一圧力となるように、また
図16に示す写真と同様の接合状態となるように実施した。なお、不織布のMD方向は不織布の繊維配向の方向(不織布の繊維が沿う方向)であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
また、弾性フィルムを除いて二層構造とした以外は実施例1と同様にして弾性フィルム無しサンプルを作製した(比較例)。この弾性フィルム無しサンプルは、剥離強度という点では、弾性フィルムを介さずに第1シート層及び第2シート層が接合された特許文献1の構造と同様になると考えられたものである。
そして、これらの弾性フィルム伸縮構造のサンプルを用い、
図18(b)に示すように、サンプル100のCD方向の一端から101z:30mmだけ第1シート層及び第2シート層を手で引き剥がし、この剥離部分101をそれぞれ引張試験機のチャックでつかみ、チャック間50mm、引張速度300mm/minの条件で、前述の引き剥がし口から伸縮方向に残りの50mmの長さを剥離し、測定される引張応力の最大値を剥離強度とした。引張試験にとしては、ORIENTEC社製テンシロン万能試験機RTC−1210Aを使用した。
その結果、比較例サンプルの剥離強度が2.7Nであったのに対して、実施例サンプルの剥離強度は10.2Nと、顕著に高い値を示した。
【0057】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。