特許第6709564号(P6709564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709564
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20200608BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】10
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-211538(P2017-211538)
(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-86526(P2019-86526A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年3月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕二
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−071115(JP,A)
【文献】 米国特許第09417434(US,B1)
【文献】 特表2018−504647(JP,A)
【文献】 特開2016−206392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズから構成され、前記第2レンズは光軸近傍で負の屈折力を有し、前記第3レンズは光軸近傍で負の屈折力を有し、前記第4レンズは光軸近傍で正の屈折力を有し、前記第5レンズは光軸近傍で負の屈折力を有するとともに、以下の条件式(1)、(2)、および(7)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)-3.00<(D2/f2)×100<-0.05
(2)0.25<(T4/f)×100<1.00
(7)1<|f3|/f<20
ただし、
D2:第2レンズの光軸上の厚み
f2:第2レンズの焦点距離
T4:第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離
f :撮像レンズ全系の焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【請求項2】
前記第5レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凸面を向けていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記第6レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凸面を向けており、光軸上以外の位置に極点を有する非球面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(3)0.15<νd5/νd6<0.70
ただし、
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
【請求項5】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(5)0.4<(T3/f)×100<14.0
ただし、
T3:第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項6】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(6)-77.0<f2/f<-1.4
ただし、
f2:第2レンズの焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項7】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(8)0.1<r1/r2<0.6
ただし、
r1:第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の近軸曲率半径
【請求項8】
以下の条件式(9)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(9)0.5<r3/r4<3.0
ただし、
r3:第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径
r4:第2レンズの像側の面の近軸曲率半径
【請求項9】
以下の条件式(10)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(10)0.4<|r2|/f<2.6
ただし、
r2:第1レンズの像側の面の近軸曲率半径
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項10】
以下の条件式(11)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(11)0.25<r3/f<2.50
ただし、
r3:第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに係り、特に、小型化、高性能化が進むスマートフォンや携帯電話機、およびPDA(Personal Digital Assistant)やゲーム機、PC、ロボットなどの情報機器等、さらにはカメラ機能が付加された家電製品、および監視用カメラや自動車等に搭載される撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品や情報端末機器、自動車や公共交通機関にカメラ機能が搭載されることが一般的となった。また、カメラ機能を融合させた商品の需要はますます高まる状況にあり、様々な商品開発が進んでいる。
【0003】
このような機器に搭載される撮像レンズは、小型でありながらも高い解像性能が求められる。
【0004】
従来の高性能化を目指した撮像レンズとしては、例えば、以下の特許文献1のような撮像レンズが知られている。
【0005】
特許文献1には、物体側から順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する第6レンズとを備えた撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許9417434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のレンズ構成で、広角化と低背化、および低Fナンバー化を図ろうとした場合、周辺部における収差補正が非常に困難であり、良好な光学性能を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、広角化と低背化、および低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された高い解像力を備える撮像レンズを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明において使用する用語に関し、レンズの面の凸面、凹面、平面とは近軸(光軸近傍)における形状を指すものと定義する。屈折力とは、近軸(光軸近傍)における屈折力を指すものと定義する。極点とは接平面が光軸と垂直に交わる光軸上以外における非球面上の点として定義する。光学全長とは、最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から撮像面までの光軸上の距離として定義する。なお、光学全長やバックフォーカスは、撮像レンズと撮像面との間に配置されるIRカットフィルタやカバーガラス等の厚みを空気換算して得られる距離とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズから構成される。
【0011】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズは、屈折力を強めることで、広角化と低背化を図る。第2レンズは、光軸近傍で物体側に凸面を向けることにより、球面収差と非点収差を良好に補正する。第3レンズは、コマ収差、非点収差、歪曲収差を良好に補正する。第4レンズは、低背化を維持しながら、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。第5レンズは、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。第6レンズは、光軸近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有しているため、低背化を維持しながらバックフォーカスの確保とともに、色収差、歪曲収差、非点収差、像面湾曲を良好に補正する。
【0012】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズは、主に収差補正を担うレンズにすることが望ましく、光軸近傍における形状は種々選択が可能である。すなわち、第5レンズは、光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状や光軸近傍で物体側に凹面を向けた形状が望ましい。さらには、光軸近傍で物体側と像側がともに平面形状にしてもよい。
【0013】
第5レンズの物体側の形状を、光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状とした場合、非点収差と像面湾曲の補正に有利になる。光軸近傍で物体側に凹面を向けた形状とした場合、第5レンズの物体側の面への光線入射角を適切に抑制し、コマ収差や高次の球面収差の補正に有利になる。光軸近傍で物体側と像側がともに平面である場合、両面に適切な非球面を形成することで、像面湾曲、歪曲収差の補正に有利になる。
【0014】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第6レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凸面を向けており、光軸上以外の位置に極点を有する非球面が形成された形状、または、光軸近傍で物体側に凹面を向けており、光軸上以外の位置に極点を有する非球面が形成された形状であることが望ましい。
【0015】
第6レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凸面を向けるとともに、光軸上以外の位置に極点を有する非球面を形成することにより、像面湾曲と歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0016】
また、第6レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凹面を向けるとともに、光軸上以外の位置に極点を有する非球面を形成することにより、像面湾曲と歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0017】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)-3.00<(D2/f2)×100<-0.05
ただし、D2は第2レンズの光軸上の厚み、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0018】
条件式(1)は、第2レンズの光軸上の厚みを適切な範囲に規定するものである。条件式(1)の上限値を下回ることで、第2レンズの光軸上の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、レンズの成型性を良好にする。一方、条件式(1)の下限値を上回ることで、第2レンズの光軸上の厚さが厚くなり過ぎることを防ぎ、第2レンズの物体側、および像側の空気間隔の確保を容易にする。その結果、低背化を維持できる。
【0019】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)0.25<(T4/f)×100<1.00
ただし、T4は第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0020】
条件式(2)は、第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(2)の範囲を満足することで、光学全長を短くしながら、コマ収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0021】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)0.15<νd5/νd6<0.70
ただし、νd5は第5レンズのd線に対するアッベ数、νd6は第6レンズのd線に対するアッベ数である。
【0022】
条件式(3)は、第5レンズと第6レンズそれぞれの、d線に対するアッベ数を適切な範囲に規定するものである。条件式(3)を満足することで、色収差の良好な補正が可能になる。
【0023】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)-0.36<f1/f2<0.00
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0024】
条件式(4)は、第1レンズと第2レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(4)の上限値を下回ることで、非点収差と歪曲収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(4)の下限値を上回ることで、第1レンズの正の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。
【0025】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)0.4<(T3/f)×100<14.0
ただし、T3は第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0026】
条件式(5)は、第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(5)の範囲を満足することで、光学全長を短くしながら、像面湾曲と歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0027】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズの屈折力は、光軸近傍で負であることが望ましく、さらには以下の条件式(6)を満足することがより望ましい。
(6)-77.0<f2/f<-1.4
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0028】
第2レンズの屈折力を負にすることで、球面収差と色収差のより良好な補正が可能になる。また、条件式(6)は、第2レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(6)の上限値を下回ることで、第2レンズの負の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。一方、条件式(6)の下限値を上回ることで、色収差、球面収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0029】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)1<|f3|/f<20
ただし、f3は第3レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0030】
条件式(7)は、第3レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の上限値を下回ることで、色収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(7)の下限値を上回ることで、球面収差、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0031】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)0.1<r1/r2<0.6
ただし、r1は第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0032】
条件式(8)は、第1レンズの物体側、および像側の面の近軸曲率半径の関係について規定するものである。条件式(8)の範囲を満足することにより、球面収差と歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0033】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)0.5<r3/r4<3.0
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0034】
条件式(9)は、第2レンズの物体側、および像側の面の近軸曲率半径の関係について規定するものである。条件式(9)の範囲を満足することにより、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0035】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)0.4<|r2|/f<2.6
ただし、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0036】
条件式(10)は、第1レンズの像側の面の近軸曲率半径を適切な範囲に規定するものである。条件式(10)の上限値を下回ることで、非点収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(10)の下限値を上回ることで、第1レンズの像側の面の屈折力を維持しながら、この面で発生する球面収差を抑制し、製造誤差に対する感度も低減することが容易となる。
【0037】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)0.25<r3/f<2.50
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0038】
条件式(11)は、第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径を適切な範囲に規定するものである。条件式(11)の上限値を下回ることで、像面湾曲の良好な補正が可能になる。一方、条件式(11)の下限値を上回ることで、球面収差の良好な補正が可能になる。
【0039】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第3レンズと第4レンズと第5レンズと第6レンズの合成屈折力は、光軸近傍で負であることが望ましく、さらには以下の条件式(12)を満足することがより望ましい。
(12)f3456/f<-1.5
ただし、f3456は第3レンズと第4レンズと第5レンズと第6レンズの合成焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0040】
第3レンズと第4レンズと第5レンズと第6レンズの合成屈折力を負にすることで、色収差の良好な補正が可能になる。また、条件式(12)は、第3レンズと第4レンズと第5レンズと第6レンズの合成屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(12)の上限値を下回ることで、第3レンズと第4レンズと第5レンズと第6レンズの負の合成屈折力が適切なものとなり、低背化と色収差の良好な補正が可能になる。
【0041】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)0.4<f1/f4<2.1
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f4は第4レンズの焦点距離である。
【0042】
条件式(13)は、第1レンズと第4レンズの屈折力の関係について規定するものである。条件式(13)の上限値を下回ることで、第4レンズの焦点距離が短くなり過ぎることを防ぎ、主点位置を物体側に移動させることができる。その結果、低背化が可能となる。また、像面湾曲と歪曲収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(13)の下限値を上回ることで、第1レンズの焦点距離が短くなり過ぎることを防ぎ、球面収差とコマ収差の良好な補正が可能になる。
【0043】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズの屈折力は、光軸近傍で正であることが望ましく、さらには以下の条件式(14)を満足することがより望ましい。
(14)0.4<f4/f<2.0
ただし、f4は第4レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0044】
第4レンズを正の屈折力にすることで、低背化が可能となる。また、条件式(14)は、第4レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(14)の上限値を下回ることで、第4レンズの正の屈折力が適切なものとなり、低背化が可能となる。また、色収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(14)の下限値を上回ることで、球面収差、コマ収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0045】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(15)を満足することが望ましい。
(15)10<T2/T4<38
ただし、T2は第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離、T4は第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【0046】
条件式(15)は、第2レンズと第3レンズとの間隔、および第4レンズと第5レンズとの間隔を適切な範囲に規定するものである。条件式(15)を満足することにより、第2レンズと第3レンズとの間隔、および第4レンズと第5レンズとの間隔の差が大きくなることを抑制し、低背化が図られる。また、条件式(15)の範囲を満足することで、第3レンズと第4レンズは最適な位置に配置され、当該レンズによる諸収差補正機能をより効果的なものとする。
【発明の効果】
【0047】
本発明により、広角化、低背化、低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された解像力の高い撮像レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】本発明の実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】本発明の実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】本発明の実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】本発明の実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】本発明の実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】本発明の実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図9】本発明の実施例5の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図10】本発明の実施例5の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図11】本発明の実施例6の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図12】本発明の実施例6の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図13】本発明の実施例7の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図14】本発明の実施例7の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図15】本発明の実施例8の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図16】本発明の実施例8の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図17】本発明の実施例9の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図18】本発明の実施例9の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図19】本発明の実施例10の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図20】本発明の実施例10の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図21】本発明の実施例11の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図22】本発明の実施例11の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図23】本発明の実施例12の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図24】本発明の実施例12の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
図1図3図5図7図9図11図13図15図17図19図21、および図23はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1から12に係る撮像レンズの概略構成図を示している。
【0051】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズL1と、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けた第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズL6から構成される。
【0052】
また、第6レンズL6と撮像面IMG(すなわち、撮像素子の撮像面)との間には赤外線カットフィルタやカバーガラス等のフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0053】
開口絞りSTは、第1レンズL1の物体側に配置しているため、諸収差の補正を容易にするとともに、高像高の光線が撮像素子に入射する際の角度の制御を容易にしている。
【0054】
第1レンズL1は、正の屈折力を有するレンズであり、屈折力を強めることで、広角化と低背化が図られている。第1レンズL1の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状に形成しているため、球面収差と歪曲収差の良好な補正が図られている。
【0055】
第2レンズL2は、負の屈折力を有するレンズであり、第1レンズL1で発生する球面収差と色収差の良好な補正が図られている。第2レンズL2の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状に形成しているため、色収差、球面収差、非点収差、コマ収差、像面湾曲の良好な補正が図られている。
【0056】
第3レンズL3は、負の屈折力を有するレンズであり、コマ収差、非点収差、歪曲収差の良好な補正が図られている。第3レンズL3の形状は、光軸Xの近傍で物体側、および像側が凹面の両凹形状に形成しているため、色収差の良好な補正が図られている。なお、第3レンズL3の屈折力は、図17図19図21、および図23に示す実施例9、実施例10、実施例11、および実施例12のように、正であってもよい。この場合、低背化をより容易なものとする。また、第3レンズL3の形状は、図9図13図15図17、および図23に示す実施例5、実施例7、実施例8、実施例9、および実施例12のように、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状を採用してもよい。この場合、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の補正に有利になる。また、図19、および図21に示す実施例10、および実施例11のように、光軸Xの近傍で物体側、および像側が凸面の両凸形状を採用してもよい。この場合、両面の正の屈折力によって、低背化が有利になる。
【0057】
第4レンズL4は、正の屈折力を有するレンズであり、低背化を維持しながら、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が図られている。第4レンズL4の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状に形成しているため、第4レンズL4への光線入射角を適切に抑制し、色収差、球面収差、歪曲収差、非点収差の良好な補正が図られている。
【0058】
第5レンズL5は、負の屈折力を有するレンズであり、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が図られている。第5レンズL5の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状に形成しているため、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が図られている。なお、第5レンズL5の形状は、図17、および図19に示す実施例9、および実施例10のように、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状を採用してもよい。この場合、第5レンズL5への光線入射角を適切に抑制し、コマ収差や高次の球面収差の良好な補正が図られる。また、図21、および図23に示す実施例11、および実施例12のように、光軸Xの近傍で物体側、および像側ともに平面に形成され、光軸Xの近傍で実質的に屈折力を有しない形状を採用してもよい。この場合、全系の焦点距離や他のレンズの屈折力配分に影響を与えることなく、両面に形成された非球面によって、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が図られる。
【0059】
第6レンズL6は、負の屈折力を有するレンズであり、色収差、歪曲収差、非点収差、像面湾曲の良好な補正が図られている。第6レンズL6の形状は、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状に形成しているため、低背化とバックフォーカスの確保の両立が図られている。また、第6レンズL6の形状は、図17図19、および図21に示す実施例9、実施例10、および実施例11のように、光軸Xの近傍で物体側、および像側が凹面の両凹形状を採用してもよい。この場合、両面の負の屈折力によって、色収差の補正が有利になる。
【0060】
第6レンズL6の物体側の面は、光軸X上以外の位置に極点を形成しているため、像面湾曲と歪曲収差の良好な補正が図られている。また、第6レンズL6の像側の面は、光軸Xから離れた位置で凸面に変化する非球面が形成されている。そのため、光軸Xの近傍では負の屈折力によってバックフォーカスを確保しつつ、周辺部における光線の角度を適切に制御している。これにより、像面湾曲の補正と撮像素子への光線入射角が適切なものとなっている。
【0061】
本実施の形態に係る撮像レンズは、第1レンズL1から第6レンズL6のすべてが、それぞれ単レンズで構成されていることが好ましい。単レンズのみの構成は、非球面を多用することができる。本実施形態においては、すべてのレンズ面に適切な非球面を形成し、良好な諸収差の補正を行っている。また、接合レンズを採用する場合に比較して工数を削減できるため、低コストで製作することが可能となる。
【0062】
本実施形態における撮像レンズは、以下の条件式(1)から(15)を満足することにより、好ましい効果を奏するものである。
(1)-3.00<(D2/f2)×100<-0.05
(2)0.25<(T4/f)×100<1.00
(3)0.15<νd5/νd6<0.70
(4)-0.36<f1/f2<0.00
(5)0.4<(T3/f)×100<14.0
(6)-77.0<f2/f<-1.4
(7)1<|f3|/f<20
(8)0.1<r1/r2<0.6
(9)0.5<r3/r4<3.0
(10)0.4<|r2|/f<2.6
(11)0.25<r3/f<2.50
(12)f3456/f<-1.5
(13)0.4<f1/f4<2.1
(14)0.4<f4/f<2.0
(15)10<T2/T4<38
ただし、
νd5:第5レンズL5のd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズL6のd線に対するアッベ数
D2:第2レンズL2の光軸X上の厚み
T2:第2レンズL2の像側の面から第3レンズL3の物体側の面までの光軸X上の距離
T3:第3レンズL3の像側の面から第4レンズL4の物体側の面までの光軸X上の距離
T4:第4レンズL4の像側の面から第5レンズL5の物体側の面までの光軸X上の距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
f4:第4レンズL4の焦点距離
f3456:第3レンズL3と第4レンズL4と第5レンズL5と第6レンズL6の合成焦点距離
r1:第1レンズL1の物体側の面の近軸曲率半径
r2:第1レンズL1の像側の面の近軸曲率半径
r3:第2レンズL2の物体側の面の近軸曲率半径
r4:第2レンズL2の像側の面の近軸曲率半径
なお、上記の各条件式をすべて満足する必要はなく、それぞれの条件式を単独に満たすことで、各条件式に対応した作用効果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態における撮像レンズは、以下の条件式(1a)から(15a)を満足することにより、より好ましい効果を奏するものである。
(1a)-2.50<(D2/f2)×100<-0.10
(2a)0.38<(T4/f)×100<0.94
(3a)0.25<νd5/νd6<0.60
(4a)-0.32<f1/f2<-0.01
(5a)0.6<(T3/f)×100<12.0
(6a)-64.0<f2/f<-2.1
(7a)1.8<|f3|/f<17.0
(8a)0.17<r1/r2<0.50
(9a)0.8<r3/r4<2.5
(10a)0.6<|r2|/f<2.2
(11a)0.4<r3/f<2.1
(12a)−80.0<f3456/f<-2.3
(13a)0.6<f1/f4<1.7
(14a)0.55<f4/f<1.65
(15a)11<T2/T4<32
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。
【0064】
本実施形態において、レンズ面の非球面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、近軸曲率半径をR、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき数式1により表わされる。
【0065】
【数1】
【0066】
次に、本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLは光学全長をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0067】
(実施例1)
【0068】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0071】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面Sにおけるd線の収差量(実線)、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量(破線)をそれぞれ示している(図4図6図8図10図12図14図16図18図20図22図24においても同じ)。
【0072】
(実施例2)
【0073】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例2の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0076】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0077】
(実施例3)
【0078】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例3の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0081】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0082】
(実施例4)
【0083】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
実施例4の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0086】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0087】
(実施例5)
【0088】
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。
【0089】
【表5】
【0090】
実施例5の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0091】
図10は実施例5の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0092】
(実施例6)
【0093】
基本的なレンズデータを以下の表6に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
実施例6の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0096】
図12は実施例6の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0097】
(実施例7)
【0098】
基本的なレンズデータを以下の表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
実施例7の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0101】
図14は実施例7の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0102】
(実施例8)
【0103】
基本的なレンズデータを以下の表8に示す。
【0104】
【表8】
【0105】
実施例8の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0106】
図16は実施例8の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0107】
(実施例9)
【0108】
基本的なレンズデータを以下の表9に示す。
【0109】
【表9】
【0110】
実施例9の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0111】
図18は実施例9の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0112】
(実施例10)
【0113】
基本的なレンズデータを以下の表10に示す。
【0114】
【表10】
【0115】
実施例10の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0116】
図20は実施例10の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0117】
(実施例11)
【0118】
基本的なレンズデータを以下の表11に示す。
【0119】
【表11】
【0120】
実施例11の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0121】
図22は実施例11の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0122】
(実施例12)
【0123】
基本的なレンズデータを以下の表12に示す。
【0124】
【表12】
【0125】
実施例12の撮像レンズは、表13に示すように条件式(1)から(15)を満たしている。
【0126】
図24は実施例12の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
【0127】
表13に実施例1から実施例12に係る条件式(1)から(15)の値を示す。
【0128】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係る撮像レンズを、カメラ機能を備える製品へ適用した場合、当該カメラの広角化、低背化、および低Fナンバー化への寄与とともに、高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0130】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
ih 最大像高
IR フィルタ
IMG 撮像面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24