特許第6709581号(P6709581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709581
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】ストレッチ用具
(51)【国際特許分類】
   A61H 15/00 20060101AFI20200608BHJP
   A61H 39/04 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   A61H15/00 320C
   A61H39/04 H
   A61H39/04 S
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-540529(P2018-540529)
(86)(22)【出願日】2016年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2016077810
(87)【国際公開番号】WO2018055690
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年6月15日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511184752
【氏名又は名称】株式会社ジュート
(74)【代理人】
【識別番号】100125933
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 晃
(72)【発明者】
【氏名】森平 茂生
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3202291(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0136474(US,A1)
【文献】 実開平03−078536(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
A61H 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内殻、及びその表面に密着して当該内殻よりも相対的に硬度が小さく弾性を備える外皮層の二重構造からなる2つの同サイズの球体と、前記内殻と同種又は異種の素材で形成され、前記2つの球体のそれぞれの中心を結ぶ線に軸心が合致するように前記内殻同士を連結する連結部とを備えており、
前記2つの球体のそれぞれの外皮層表面には、前記軸心に直交する方向の断面において幅の異なる2つの傾斜面がそれぞれ外側に向けて形成された同形の鋸刃状の山からなる複数の突条が前記2つの球体の周方向に繰り返され、
前記2つの傾斜面の幅はそれぞれ、前記各球体の最外側の端部から内側に連続的に大きくなる一方、前記連結部から前記2つの球体のそれぞれを見た場合に前記連結部に向けて連続的に小さくなるように形成されており、
前記軸心の延長線上外側から前記各球体を見た場合に、前記2つの球体のうちの一方の球体の複数の突条は前記一方の球体の最外側の端部から前記連結部に向けて時計方向に渦巻き状に湾曲しながら連続的に延び、他方の球体の複数の突条は反時計方向に渦巻き状に湾曲しながら連続的に延びている、
ことを特徴とするストレッチ用具。
【請求項2】
前記2つの球体のそれぞれの内殻の直径と外皮層の厚さとの比率は可変とされてなる請求項1に記載のストレッチ用具。
【請求項3】
前記連結部はさらに前記各球体の外皮層と連結される外皮層を備えてなる請求項1に記載のストレッチ用具。
【請求項4】
前記2つの球体のそれぞれの内殻の中心と前記連結部の軸心とを結ぶように中心に、当該内殻の素材と同種又は異種の素材からなる芯材が配置されてなる請求項1に記載のストレッチ用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚には優しく血行を促進し、より深部にある筋膜まで押圧できるストレッチ用具に関する。
【背景技術】
【0002】
図9A〜図9Bは、特許文献1に記載の従来のストレッチ用具を模式的に示してたものであり、前者は斜視図、後者は側面図である。これらの図に示すように、従来のストレッチ用具20は、2つの同サイズの平滑な球面を有する球体21、21と、これらを連結する連結部22とから構成されている。また、図10A及び図10Bは、従来の同様の形状のストレッチ用具の内部構造を示す断面図であり、前者はソリッドな内部構造を有し、後者は中空の内部構造を有している。
【0003】
図9Aに示すような従来のストレッチ用具は、図10Aに示すようなソリッドな素材で形成されている場合、主にポリウレタンやポリ塩化ビニル等の樹脂で形成され、表面硬度の点からは極端に柔らかいものと硬いものに分かれている。柔らかい硬度のものは、皮膚に優しく、筋肉や関節に負荷をかけ過ぎない点は良いが、柔らか過ぎることから、身体の重みで潰れ易く、筋膜のストレッチに効果を示す十分な押圧ができないという問題があった。また、硬度を高くしたものは、高いストレッチ効果を狙ったものではあるが、これを用いて使用者の身体に圧をかける場合、硬すぎることから、皮膚には刺激が強く、逆に十分効果的なストレッチが出来なかった。それだけでなく、これに使用者の身体を載せて体重で圧をかけ過ぎると筋肉や関節に負荷をかけ過ぎ、これらを痛める可能性があり危険である。
【0004】
また、図10Bに示すような内部が中空のストレッチ用具の場合、その外形形状を保つ為に硬い素材で形成されなくてはならず、結果として皮膚や筋肉や関節に負荷をかけ過ぎることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国意匠特許第492,791号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、従来のストレッチ用具は、それが柔らかい素材からなる場合、皮膚や筋肉や関節には負荷をかけないが、使用者の身体に対して十分な圧をかけることができないため、十分なストレッチ効果が得られないという問題がある。また、極端に硬い素材からなる場合には、これに体重をかけると皮膚や筋肉や関節を痛める可能性がある反面、体重をかけないで使用すると皮膚や筋肉や関節を痛めることはないが、十分な圧をかけられず十分なストレッチ効果を得にくいという問題がある。
【0007】
また、従来のストレッチ用具は、その表面が平滑な球面であるものであり、癒着やねじれがあり、ハリが生じた皮下脂肪の下にある表層筋膜に対して十分なほぐし効果は得られなかった。
【0008】
本発明は、前記の問題を解決しようとするものであり、皮膚や筋肉や関節への負荷をかけ過ぎない様にしながらも十分な深層筋膜にストレッチ効果をもたらすストレッチ用具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のストレッチ用具は、上記目的を達成するために、内殻、及びその表面に密着して当該内殻よりも相対的に硬度が小さく弾性を備える外皮層の二重構造からなる2つの同サイズの球体と、前記内殻と同種又は異種の素材で形成され、前記2つの球体のそれぞれの中心を結ぶ線に軸心が合致するように前記内殻同士を連結する連結部とを備えており、前記2つの球体のそれぞれの外皮層表面には、前記軸心に直交する方向の断面において幅の異なる2つの傾斜面がそれぞれ外側に向けて形成された同形の鋸刃状の山からなる複数の突条が前記2つの球体の周方向に繰り返され、前記2つの傾斜面の幅はそれぞれ、前記各球体の最外側の端部から連続的に大きくなる一方、前記連結部から前記2つの球体のそれぞれを見た場合に前記連結部に向けて連続的に小さくなるように形成されており、前記軸心の延長線上外側から前記各球体を見た場合に、前記2つの球体のうちの一方の球体の複数の突条は前記一方の球体の最外側の端部から前記連結部に向けて時計方向に渦巻き状に湾曲しながら連続的に延び、他方の球体の複数の突条は反時計方向に渦巻き状に湾曲しながら連続的に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のストレッチ用具は、2つの球体の外表面に複数の突条、特に渦巻き状の突条を設けることとしたので、使用者において表層筋膜や深層筋膜に十分な圧で優れたストレッチ効果を発揮できる。
【0011】
また、本発明のストレッチ用具は、2つの球体を上記のように二重構造に構成することとしたので、皮膚や筋肉や関節に負荷をかけ過ぎず、やさしく血行促進効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のストレッチ用具の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す実施形態の正面図である。
図3図1に示す実施形態の側面図である。
図4図1に示す実施形態の断面図である。
図5図1に示す実施形態の使用状態の一例を説明するための図である。
図6図1に示す実施形態の使用状態の別の例を説明するための図である。
図7図1に示す実施形態の使用状態のさらに別の例を説明するための図である。
図8図1に示す実施形態の使用状態のさらに別の例を説明するための図である。
図9A】従来のストレッチ用具の外形形状を示す斜視図である。
図9B図9Aに示すストレッチ用具の側面図である。
図10A】従来のストレッチ用具の一例の内部構造を示す断面図である。
図10B】従来のストレッチ用具の別の例の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図1図4を参照しながら、本発明のストレッチ用具の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明のストレッチ用具の一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す実施形態の正面図であり、図3は、図1に示す実施形態の側面図である。さらに、図4は、図1に示す実施形態の内部構造を示す断面図である。
【0014】
本実施形態のストレッチ用具1は、2つの同サイズの球体2、2と、連結部3とから構成されている。2つの球体2,2のサイズには特に制限はないが、例えば直径70〜90mm、さらには直径75〜85mmの範囲で適宜設定できる。それぞれの球体2の外表面には、その周方向に山谷が繰り返される鋸刃状の断面を有し、前記軸心の延長線上各球体2、2の最外側の端部7、8から連結部3に向けて連続的に延びる複数の突条4、4、4、・・・が形成されている。本実施形態においては、図3に示すように、それぞれの球体2の外表面に12本の突条4、4、・・・を配置するが、この本数に限定されず、例えば10〜20本の範囲内で適宜設定できる。また、それぞれの突条4の山の高さは、前記した突条4の本数と外皮層(図4、符号12参照)の硬さに応じて、2〜6mmの範囲内で適宜設定できる。
【0015】
複数の突条4、4、・・・は、前記軸心の延長線上外側から端部7を有する球体2を見た場合に、時計方向に渦巻き状に湾曲しながら連結部3に向けて連続的に延びている。また、端部8を有する球体2の場合、複数の突条4、4、・・・は、反時計方向に渦巻き状に湾曲しながら連結部3に向けて連続的に延びている。なお、2つの球体2、2の外表面に設けられる突条4の湾曲方向はそれぞれ、図3に示す態様に限定されず、例えば端部8を有する球体で突条4を時計方向に湾曲させてもよい。つまり、2つの球体2、2における突条4はそれぞれ反対方向に湾曲させてもよく、同一方向に湾曲させてもよい。
【0016】
2つの球体2,2のそれぞれの外表面に設けられている突条4のそれぞれは、各球体2の周方向に山谷が繰り返される鋸刃状の断面において、山を形成する2つの傾斜面の幅を異ならせている。即ち、各突条4は、前記した軸線の延長線上外側からそれぞれの球体2を見た場合に、その延びる方向に向けて右側の傾斜面5の幅が左側の傾斜面6のそれよりも大きく設定されている。このような構成とすることで、使用者が傾斜面5に圧をかけると、傾斜面6よりも相対的に外皮層12は沈み柔らかく感じ、傾斜面6に圧をかけると相対的に外皮層12が沈まず、その反発する力で身体の表面部分にめり込んでくる。このように傾斜面の幅を異ならせることで、使用者が身体の一部を載せ前後に転がした時に前に転がした時と後ろに転がした時に圧の違いが発生し、強弱のほぐし効果を得ることができる。
【0017】
また、2つの球体2,2はそれぞれ、内殻10、10と、その表面に密着して設けられ、内殻10、10よりも相対的に硬度が小さく弾性を備える外皮層12、12との二重構造をなしている。このような二重構造とすることで、皮膚や筋肉や関節に負荷をかけ過ぎず、やさしく血行促進効果をもたらすという有利な効果を得ることができる。
【0018】
内殻10に用いられる素材の具体例としては、ABS樹脂などが挙げられる。また、外皮層12に用いられる素材の具体例としては、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びエチレン酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。
【0019】
内殻10の直径Rと外皮層12の厚さTとの長さ比率は可変とされ、適宜両者を設定できる。この長さ比率をR/Tの値で示すことすると、この値を例えば5〜7程度に設定できる。R/Tを5に近づけると、内殻10の直径Rに対して柔らかい外皮層12の厚さTの長さ比率が大きくなり、刺激が少ない方が良い使用者に受け入れやすく、また使用者は表層を中心とした筋膜を中心に高いストレッチ効果を得ることができる。また、R/Tを7に近づけると、内殻10の直径Rに対して柔らかい外皮層12の厚さTは小さくなり、使用者がこのようなR、Tの長さ比率を持つストレッチ用具1を用いた場合、深層筋膜への刺激がより強くなるため深層筋膜をしっかりとほぐしたい使用者向けとして好適となる。
【0020】
上記のように、2つの球体2、2の外表面に鋸刃状の突条を渦巻き状に設けることで、使用者が身体の一部を載せて転がした場合、と外皮層12を適度な柔らかさを持たせやさしく皮膚に食い込むように転がす事で血行を促進させ、表層筋膜をそれぞれの突条でストレッチする事ができる。また、手に持って皮膚の上ここすりながら手首の回転で転がすと渦巻き形状が皮下脂肪の下の筋膜を内側へ寄せたり外側へ解放することで更に筋膜の癒着やよじれを解放する作用が働くという有利な効果も備えている。さらに、本実施形態のストレッチ用具1を使用者の身体にあてがい、これを回転させるように身体を前後させることで、一方向への回転では皮下脂肪下の筋膜を寄せ、また逆方向への回転では当該筋膜を外側へ移動させ、更に筋膜の癒着やよじれを解放する作用が働くという有利な効果もある。
【0021】
連結部3は、本実施形態の場合、その軸心を2つの球体2、2のそれぞれの中心を結ぶ線に合致させて、これら2つの球体2、2の内殻10、10をそれぞれ連結するように構成されている。また、本実施形態では、図4に示すように、連結部3は、2つの球体2、2と同様、内部軸体11と外皮層13との二重構造に形成されており、内部軸体11が2つの球体2、2の内殻10、10と、また外皮層13が外皮層12、12とそれぞれ連結されている。このような連結部3の内部軸体11は、2つの球体2,2の内殻10、10を構成する素材と同種または異種の素材で形成できる。また、連結部3の外皮層13も、2つの球体2,2の外皮層12、12を構成する素材と同種または異種の素材で形成できる。
【0022】
2つの球体2、2の内殻10、10と連結部3との内部には、これらの中心(内殻10、10の中心と連結部3の軸心とを結ぶ中心)を貫くように、内殻10と同種又は異種の素材からなる芯材を配置することができる。ここで、用語「異質」には、同一の素材であっても、密度などの物性が異なる場合も含まれる。この芯材は、種々の断面形状をとり得るが、例えば、棒状体や管状体(断面形状が円形でない環状体も含むこととする。)を用いることができる。管状体(又は環状体)を用いる場合、内部に空洞が生じるが、そのように空洞が設けられていてもよい。このように中心に芯材を内蔵させることで、二つの球体2、2(内殻10、10)を連結して一体化している為、使用者の身体に対して本実施形態のストレッチ用具1を垂直に立てた状態で保持しながら身体を圧迫した場合に、本実施形態のストレッチ用具1全体の形状が崩れず、身体のより内側の筋膜(深層筋膜)まで食い込み、高いストレッチの効果をもたらすことができる。また、身体の部位の中でも脇の下、鼠蹊部(そけいぶ)等に圧をかけて食い込ませてストレッチするのに好適である。
【0023】
次に、図5図8を参照しながら、本実施形態のストレッチ用具の使用方法について説明する。使用者Uは、本実施形態のストレッチ用具1を床や身体と壁の間に置き、身体の一部にあてて自体重をかけ身体を圧迫し、もしくは手で持ったまま身体の一部にあてがい圧力をかける。自体重をかけながらコロコロとストレッチ用具1を前後に転がす事で(図5参照)、球体2、2の外表面の突条における傾斜面の幅の相違する山が身体に食い込み回転しながら筋膜を圧迫する事でストレッチを行う。
【0024】
また、本実施形態のストレッチ用具1は、使用者Uの脇の下、肩と胸の間、鼠蹊部(そけいぶ)などの部位に対しても使用できる図6〜8参照)。この場合、使用者Uは、本実施形態のストレッチ用具1を立てた状態で保持しながらこれらの箇所にあてがう事で、より深層部の筋膜を圧迫しながらストレッチをすることが可能になる。球体2の二重構造における内殻10、10が存在することでストレッチ用具本体1の形状を保持しつつ潰れることがなく、しかも外皮層12があることで、その小さい硬度及び弾性で皮膚にやさしく触れる事で、使用者は痛みを覚える事無く使用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 本実施形態のストレッチ用具
2 球体
3 連結部
4 突条
5 傾斜面
6 傾斜面
7、8 端部
10 内殻
11 内部軸体
12、13 外皮層
U 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B