特許第6709610号(P6709610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6709610ガラス繊維織物複合シート材及びそれを用いた膜構造建築物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709610
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】ガラス繊維織物複合シート材及びそれを用いた膜構造建築物
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20200608BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200608BHJP
   C08J 5/08 20060101ALI20200608BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20200608BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20200608BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20200608BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20200608BHJP
【FI】
   B32B17/10
   B32B27/30 D
   C08J5/08CES
   C08J5/08CEU
   D03D1/00 A
   D06M15/248
   D06M15/256
   D06M101:00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-241761(P2015-241761)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-105950(P2017-105950A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113044
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 智子
(72)【発明者】
【氏名】須田 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】相馬 宏樹
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−171020(JP,A)
【文献】 特開平10−205244(JP,A)
【文献】 特開平10−044274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/04−5/10、5/24
B29B11/16、15/08−15/14
B32B1/00−43/00
D03D1/00−27/18
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維糸を経糸及び緯糸に用い、織り組織を畝織または斜子織とするガラス繊維織物であって、下記(1)式の経糸のカバー・ファクターと、下記(2)式の緯糸のカバー・ファクターの和による下記(3)式の前記ガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値が、600 < K < 1200の範囲にある前記ガラス繊維織物を基布に用い、この基布の両面または片面に、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴムから選ばれた1種以上の樹脂被覆層を設けたことを特徴とするガラス繊維織物複合シート材。
[但し上記式中
は経糸の織り密度(単位 本/cm)を表し、
は経糸の繊度(単位 dtex)を表し、
は緯糸の織り密度(単位 本/cm)を表し、
は緯糸の繊度(単位 dtex)を表す。]
【請求項2】
前記斜子織が、正則斜子織、または不規則斜子織である請求項1記載のガラス繊維織物複合シート材。
【請求項3】
前記ガラス繊維織物が、フッ素系撥水剤、またはフッ素系撥水剤とシランカップリング剤の併用によって吸水防止処理が施されている請求項1又は2記載のガラス繊維織物複合シート材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス繊維織物複合シート材を用いることを特徴とする膜構造建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜構造建築物に使用されるガラス繊維織物複合シート材であって、特にテント倉庫(シート倉庫・テントハウス・シートハウスとも言う)用の膜材料に好適なガラス繊維織物複合シート材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜材料またはテント倉庫用膜材料に用いられるシート材の補強基布は、ガラス繊維織物やポリアミド系、ポリアラミド系、ポリエステル系又はポリビニルアルコール系の合成繊維織物が使用されている。テント倉庫は主に工場敷地内に建設され、資材や原料、中間品や製品などを一時的に保管するための施設で、屋根部分、側壁部分ともシート材で構成されたテント構造物である。それ故、テント倉庫を出入りするフォークリフトの衝突や積荷の接触によるテント倉庫の穴開き破損が度々生じている。
【0003】
特に、補強基布にガラス繊維織物を使用したガラス繊維織物複合シート材はガラス繊維糸が不燃性能に優れるという防災上の安全性を活かし、テント倉庫などの膜構造建築物用の膜材料に広く使われるようになってきている。
【0004】
ガラス繊維糸を経糸及び緯糸に用いたガラス繊維織物を基布としたガラス繊維織物複合シート材は、ガラス繊維糸が高い引張強さ持つためガラス繊維織物複合シート材も高い引張強さを持つ。しかし、ガラス繊維糸は折り曲げに弱いが故にガラス繊維織物複合シート材の引裂強さに劣る欠点があり、そのためフォークリフトや積荷の衝突で、テント倉庫の破損が鍵裂き状に伝播して、その補修を大掛かりなものとしている。現在テント倉庫用のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物の織り組織は、経糸と緯糸が1本ごとに交差した、もっとも基本的で一般的な平織しか使用されておらず、このような破損事故に対するガラス繊維織物による対応は、ガラス繊維糸は折り曲げに弱いという固定観念によって何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−86641号公報
【特許文献2】特開2005−169655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は膜構造建築物に使用されるガラス繊維織物複合シート材であって、特にガラス繊維糸が不燃性能に優れるという特徴を活かしテント倉庫用膜材料に用いる際に、フォークリフトや積荷がテント倉庫に接触しても、その損傷ダメージをより小さいものとする効果を有するような、高い引張強さと高い引裂き強さを併せもつガラス繊維織物複合シート材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ガラス繊維糸を経糸及び緯糸に用い、織り組織が変化平織である畝織または斜子織としたガラス繊維織物のカバー・ファクターを調整することで、高い引張強さと高い引裂き強さを併せもつガラス繊維織物複合シート材が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
(1)ガラス繊維糸を経糸及び緯糸に用い、織り組織を畝織または斜子織とするガラス繊維織物であって、下記(1)式の経糸のカバー・ファクターと、下記(2)式の緯糸のカバー・ファクターの和による下記(3)式の前記ガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値が、600 < K < 1200の範囲にある前記ガラス機繊維織物を基布に用い、この基布の両面または片面に樹脂被覆層を設けたことを特徴とするガラス繊維織物複合シート材。
[但し上記式中
は経糸の織り密度(単位 本/cm)を表し、
は経糸の繊度(単位 dtex)を表し、
は緯糸の織り密度(単位 本/cm)を表し、
は緯糸の繊度(単位 dtex)を表す。]
(2)前記樹脂被覆層が、四ふっ化エチレン樹脂、ふっ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴムから選ばれた1種以上である上記(1)記載のガラス繊維織物複合シート材。
(3)前記ガラス繊維織物の織り組織が正則斜子織、または不規則斜子織である上記(1)〜(2)に記載いずれかのガラス繊維織物複合シート材。
(4)前記ガラス繊維織物が、フッ素系撥水剤、またはフッ素系撥水剤とシランカップリング剤の併用によって吸水防止処理が施されている上記(1)〜(3)に記載いずれかのガラス繊維織物複合シート材。
(5)上記(1)〜(4)に記載いずれかのガラス繊維織物複合シート材を用いることを特徴とする膜構造建築物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建築物に使用されるガラス繊維織物複合シート材であって、特にガラス繊維糸が不燃性能に優れるという特徴を活かして膜構造建築物の膜材料に用いた場合、高い引張強さと高い引裂き強さを併せもつ、特にテント倉庫に好適なガラス繊維織物複合シート材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】2×2 正則斜子織 完全組織図
図2】4×4 正則斜子織 完全組織図
図3】5×3 不規則斜子織 完全組織図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布は、ガラス繊維糸を使用し、そのフィラメント径は3〜13μmでガラスフィラメントは50〜2000本集束した無撚糸、または必要に応じて撚りを掛けた弱撚糸や強撚糸、及び合撚糸などを適宜用いる。ガラス繊維糸の組成は特に限定されず、Eガラス、Sガラス、Rガラス、Tガラス、NEガラス、Lガラス等のガラス組成のガラス繊維糸を用いることができる。
【0012】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維糸の番手は、30〜5000dtexの無撚糸、または必要に応じて撚りを掛けた弱撚糸や強撚糸、及び合撚糸などを適宜用いるが、600〜2200dtexの弱撚糸、または合撚糸を用いるのが好ましい。ガラス繊維糸の番手が600dtexより少ない場合、ガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値が、600 < K < 1200を満足させるためには、ガラス繊維織物の織り密度を極端に大きくしなければならず、ガラス繊維織物の製織効率が悪くなり、コストアップに繋がる。一方で2200dtexより大きい場合、ガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値が、600 < K < 1200を満足させると、ガラス繊維織物の単位面積当たりの質量が重くなり、得られたガラス繊維織物複合シート材の質量も重くなり、かつガラス繊維織物複合シート材の可撓性が損なわれ、施工性が悪くなるので好ましくない。
【0013】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布は、織り組織を変化平織である畝織または斜子織とするガラス繊維織物、または吸水防止処理が施されたガラス繊維織物であって、経糸のカバー・ファクターと、緯糸のカバー・ファクターの和とするカバー・ファクターのK値が、600 < K < 1200の範囲にあることが必要である。さらには、カバー・ファクターのK値が、700 < K < 1200の範囲であればより好ましい。このカバー・ファクターのKが600より少ない場合は、例えば2×2正則斜子織の場合、経糸、緯糸とも2本並んだ配列の隣り合う糸が離間してしまい、この離間は経糸より緯糸の方が顕著となり、高い引裂強さは得られなくなる。さらには、ガラス繊維織物の経糸と緯糸の交錯が弱くなり、経糸と緯糸の織り目がずれて、製織工程以降の工程で容易に布目曲がりを発生するので、好ましくない。一方でカバー・ファクターのK値が1200を超える場合は、ガラス繊維織物複合シート材の質量が重くなり、かつガラス繊維織物複合シート材の可撓性が損なわれ、施工性が悪くなるので好ましくない。
【0014】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布の織り組織は、変化平織である畝織または斜子織が好適であるが、斜子織が特に好ましく、斜子織としては、1).経糸、緯糸ともに2本以上を引揃えて平織のように組織したもので、特に平織から経糸、緯糸の引き揃え糸数を同数ずつ拡大した正則斜子織(例えば2×2斜子織、3×3斜子織、4×4斜子織など)、2).飾斜子織の1種で、大きさが異なる斜子を組み合わせて組織する不規則斜子織(例えば3×2斜子織、4×2斜子織、4×3斜子織、5×3斜子織、2×3斜子織、2×4斜子織、3×4斜子織、3×5斜子織など)が挙げられる。これらの斜子織は、織物の組織を表す最小の単位である完全組織図で、経糸、緯糸とも4本以上かつ8本以下であることが好ましい。本数を9本以上にすると、得られるガラス繊維織物の経糸と緯糸の交錯が弱くなり、経糸と緯糸の織り目がずれ易く、製織工程以降の工程で容易に布目曲がりを発生するなど、取り扱い性を悪くすることがある。
【0015】
本発明のガラス繊維織物複合シート材は、上記のガラス繊維織物を基布に用い、両面または片面に樹脂被覆層が設けられるが、使用される樹脂層については、建築物に使用される用途によって、適宜、選択すれば良いが、特に、テント倉庫などの膜構造建築物用膜材料に使用する場合は、四ふっ化エチレン樹脂、ふっ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム等の耐候性と難燃性を兼ね備えたハロゲン含有樹脂及びゴムの単独使用、または併用が好ましい。本発明のガラス繊維織物複合シート材において、加工性やシート材の風合い、耐久性などを調整する必要があれば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂(共重合体を包含する)を適宜併用することができる。
【0016】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物に四ふっ化エチレン樹脂層を設ける場合は、ガラス繊維織物複合シート材の耐水性を向上させる観点より、四ふっ化エチレン樹脂を被覆する前に、基布のガラス繊維織物にシリコーンオイル、シリコーン樹脂等の撥水性物質を含浸し乾燥させた後に、四ふっ化エチレン樹脂粉末(粒径0.1〜0.4μm)を含有するディスパージョンを塗布し、得られた塗膜を乾燥、焼成する工程を、適宜、繰り返し行い、その後、四ふっ化エチレン樹脂粉末(粒径0.1〜0.4μm)を含有するディスパージョンにガラスビーズを混合分散したものを塗布し、得られた塗膜を乾燥、焼成する工程を繰り返し行う等の方法で、四ふっ化エチレン樹脂の被覆層が設けられる。
【0017】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物にふっ素系樹脂層を設ける場合は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)、二フッ化エチレンとフッ素ゴムとの共重合体を始めとする軟質ふっ素樹脂、熱可塑性ふっ素樹脂等のふっ素系樹脂を、公知の樹脂被覆方法で被覆が行われる。
【0018】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物に塩化ビニル樹脂層を設ける場合は、ガラス繊維織物に予めフッ素系撥水剤の処理を施して、雨水などの浸透を防止する吸水防止処理が施されていることが好ましい。また、基布と、ガラス繊維織物に被覆する塩化ビニル樹脂層との接着性向上を図る目的のため、フッ素系撥水剤にシランカップリング剤を添加した吸水防止処理が更には好ましい。フッ素系撥水剤は、炭素数8未満のパーフルオロアルキル基または炭素数8未満のパーフルオロアルケニル基を有するフッ素元素含有エチレン性不飽和単量体を用いてなる重合体が好ましく、シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。これらによる吸水防止処理を施したガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値は、600 < K < 1200の範囲にあることが必要である。また、基布のガラス繊維織物に予め接着剤等を塗布し、塩化ビニル樹脂層との接着性を高める処理を施しておいてもよく、この接着剤としては塩化ビニル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系などの接着剤の使用が好ましい。
【0019】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物に塩化ビニル樹脂層を設ける場合の塩化ビニル樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を主成分として含み、さらに可塑剤と無機系難燃剤とを含むものである。すなわち、塩化ビニル系樹脂に可塑剤又は可塑化作用を有する重合体と、無機系難燃剤とを含み、さらに必要により無機充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、防カビ剤、及び/又は接着剤などを配合した軟質塩化ビニル系樹脂を使用することが好ましい。軟質塩化ビニル系樹脂は、防水性、屈曲性、耐候性、耐寒性、及び着色性に優れ、また所望の意匠を容易に付与することができる。
【0020】
この主成分の塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル重合体、並びに塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・アクリル酸エステル共重合体、及び塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体などを包含し、これらを単独に、或いは2種類以上を混合したものなどが用いられる。
【0021】
また、可塑剤について特に制限は無いが、フタル酸エステル系可塑剤としてジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジヘブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジ−n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、及びブチルベンジルフタレートなどが使用され、また、ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸を2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチルヘキサノール、及びn−オクタノールなどのグリコール類の1種以上によりエステル化した生成物などを用いることができ、更にトリメリット酸系可塑剤としては、トリ2−エチルヘキシルトリメリレート、及びトリイソデシルトリメリレートなどを用いることができ、その他の可塑剤として、2−エチルヘキシルピロメリレートなどのピロメリット酸系可塑剤なども使用できる。又、可塑化作用を有する重合体としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体、及び/又はエチレン−アクリル酸エステル共重合体に一酸化炭素を導入した重合体が使用できる。この様な重合体には、三井デュポンケミカル社製のエルバロイ742(商標)が包含される。
【0022】
塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して30〜160重量部であることが好ましく、35〜120重量部であることがより好ましい。可塑剤の添加量が30重量部を下回ると、得られる塩化ビニル樹脂被覆層が過度に硬くなり、屈曲等の動きに追従できなくなり、亀裂が発生しやすくなることがある。また、可塑剤の添加量が160重量部を超えると、得られる塩化ビニル樹脂被覆層の樹脂強度が低下や、可塑剤が塩化ビニル樹脂被覆層の表面に移行して、表面に汚れが付着しやすくなるなどの問題を発生することがある。
【0023】
塩化ビニル樹脂被覆層には無機系難燃剤が含まれており、無機系難燃剤の配合量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.5〜170重量部であることが好ましく、1〜130重量部であることが更に好ましい。無機系難燃剤の配合量が0.5重量部未満の場合は、塩化ビニル樹脂被覆層の難燃性が不十分となり、また、170重量部を越える場合には、塩化ビニル樹脂被覆層の柔軟性及び樹脂強度が低下し、被膜の耐屈曲性の低下や、基布のガラス繊維織物と塩化ビニル樹脂被覆層との間の剥離強度の低下がある。
【0024】
塩化ビニル樹脂被覆層に使用される無機系難燃剤としてはアンチモン化合物、モリブデン化合物、ほう酸亜鉛、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモン、赤リンなどを単独で或いは2種類以上の混合物として使用できる。これらの中で特に、無機系難燃剤として好ましいものは三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどのアンチモン化合物及びモリブデン化合物である。アンチモン化合物は、塩化ビニル系樹脂に高い難燃性を付与し、燃え広がりを防止する作用が強く、またモリブデン化合物は燃焼熱を低く抑え、発煙量を抑え有害燃焼ガスを低減する。モリブデン化合物としては、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸炭酸カルシウム、モリブデン酸アンモン等が挙げられる。また、無機系難燃剤には、あらかじめシランカップリング処理を施し塩化ビニル樹脂被覆層との密着性を高めておいても良い。また他の難燃剤、例えばブロム系防炎剤、リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、塩素化パラフィンなども適宜使用できる。ブロム系防炎剤としてはデカブロモジフェニルエーテル、ペンタブロモメチルベンゼン、ヘキサブロモベンゼンなどが使用できる。リン酸エステルとしてはトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等が使用できる。
【0025】
塩化ビニル樹脂被覆層に含まれる安定剤としては、カルシウム・亜鉛系、バリウム・亜鉛系、カドミウム・バリウム系、鉛系、有機錫ラウレート系、及び有機錫メルカプタイト系、及びエポキシ系などの安定剤を単独或いはその2種以上を混合して使用できる。
【0026】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物に塩化ビニル樹脂層設ける場合、それを予めフィルム化し、これを基布のガラス繊維織物に熱ラミネートする方法、基布のガラス繊維織物上に樹脂を溶融コーティングする方法、基布のガラス繊維織物上に液状樹脂をコーティングする方法、及び基布を液状樹脂中にディッピングする方法などを用いて行われる。また、その最外層に熱可塑性樹脂を主成分として含む、汚れ防止層を形成することができる。この目的に用いられる熱可塑性樹脂としてはアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂などが使用できる。
【0027】
本発明のガラス繊維織物複合シート材の基布のガラス繊維織物にクロロプレンゴム、若しくはクロロスルフォン化エチレンゴムの樹脂被覆層を設ける場合は、公知の樹脂被覆方法で、被覆が行われる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
ガラス繊維糸のECDE75 1/2 3.8S(1350dtex)を経糸及び緯糸に用い、経糸の織り密度11.2本/cm、緯糸の織り密度11.8本/cmで、織り組織を2×2正則斜子織とした、ガラス繊維織物を製織した。このガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値は846であった。次に上記ガラス繊維織物を、フッ素系撥水剤3%、シランカップリング剤2%を含む水系処理浴中にディッピングし、ピックアップ率45%になるようゴムマングルで絞り、これを180℃の乾燥機中で2分間乾燥し、カバー・ファクターのK値が846の吸水防止処理が施されたガラス繊維織物を得た。
これに下記組成:
塩化ビニル樹脂 100.0重量部
ジ−2−エチルヘキシルフタレート 85.0重量部
三酸化アンチモン 50.0重量部
Ba−Zn系安定剤 3.0重量部
紫外線吸収剤 0.5重量部
イソシアネート系接着剤 5.0重量部
顔料(酸化チタン) 3.0重量部
を有する塩化ビニル樹脂ペーストゾルを、両面にコーティングし、185℃の乾燥機中で2分間ゲル化熱処理し樹脂被覆層を形成した。
次に、下記組成:
アクリル樹脂(MMA) 12重量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 45重量部
トルエン(希釈溶剤) 43重量部
を有するアクリル樹脂溶液を80メッシュグラビアコーターにて表面にコーティングし、100℃で1分間乾燥し、アクリル樹脂塗膜による防汚層が形成されたガラス繊維織物複合シート材を得た。
【0030】
[比較例1]
ガラス繊維糸のECDE75 1/2 3.8S(1350dtex)を経糸及び緯糸に用い、経糸の織り密度7.9本/cm、緯糸の織り密度7.9本/cmで、織り組織を2×2正則斜子織とした、ガラス繊維織物を製織した。このガラス繊維織物のカバー・ファクターのK値は579であった。
上記ガラス繊維織物を用いた以外は実施例1と同様にしてガラス繊維織物複合シート材を得た。
【0031】
[比較例2]
織り組織を平織とした以外は、実施例1と同様にしてガラス繊維織物複合シート材を得た。
【0032】
上記、実施例1、及び比較例1、2で得られたガラス繊維織物複合シート材の結果を表1に示す。尚、質量、厚さ、引張強さ、伸び率、引裂強さは以下の方法で測定を行った。
【0033】
[質量]
JIS L1096(2010年)に従い、ガラス繊維織物複合シート材の質量を測定した。
[厚さ]
JIS L1096(2010年)に従い、ガラス繊維織物複合シート材の厚さを測定した。
[引張強さ]
JIS L1096(2010年)のA法(ストリップ法)に従い、ガラス繊維織物複合シート材の経糸方向と緯度糸方向の引張強さを測定した。
[伸び率]
JIS L1096(2010年)のA法(ストリップ法)に従い、ガラス繊維織物複合シート材の経糸方向と緯度糸方向の伸び率を測定した。
[引裂強さ]
JIS L1096(2010年)のA法(シングルタング法)に従い、ガラス繊維織物複合シート材の経糸方向と緯度糸方向の引裂強さを測定した。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のガラス繊維織物複合シート材を、特にガラス繊維糸が不燃性能に優れるという特徴を活かして膜構造建築物の膜材料に用いた場合、高い引張強さと高い引裂き強さを併せもつので、特にテント倉庫用膜材料に好適に用いることができる。
図1
図2
図3