特許第6709611号(P6709611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6709611-化粧シートおよび化粧シートの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709611
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】化粧シートおよび化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20200608BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20200608BHJP
【FI】
   B32B27/18 A
   C09D7/63
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-245982(P2015-245982)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-117280(P2016-117280A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-257136(P2014-257136)
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508059487
【氏名又は名称】アクテイブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】古田 達彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚
(72)【発明者】
【氏名】工藤 麻美
(72)【発明者】
【氏名】長濱 正光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌利
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−119623(JP,A)
【文献】 特開2000−094610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートであって、
前記トップコート層および前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、
前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、リン脂質からなる単層膜状の外膜を備える無機系紫外線吸収剤内包リポソームであることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートであって、
前記トップコート層および/または前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、
前記無機系紫外線吸収剤は、前記トップコート層においては、前記トップコート層の主成分である樹脂材料100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で含有されており、前記透明樹脂層においては、前記透明樹脂層の主成分である樹脂材料に対して100〜50000ppmの割合で含有されている
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項3】
前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える無機系紫外線吸収剤内包リポソームであることを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記外膜が、単層膜であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記無機系紫外線吸収剤が、酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記透明樹脂層にはエンボス模様が形成されており、
少なくとも前記エンボス模様の凹部に前記トップコート層が埋め込まれて設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記透明樹脂層の下層には、光安定化剤を含有するインキ層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートの製造方法であって、
前記トップコート層および前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、
前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、リン脂質からなる単層膜状の外膜を備える無機系紫外線吸収剤内包リポソームである
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項9】
最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートの製造方法であって、
前記トップコート層および/または前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、
前記無機系紫外線吸収剤は、前記トップコート層においては、前記トップコート層の主成分である樹脂材料100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で含有されており、前記透明樹脂層においては、前記透明樹脂層の主成分である樹脂材料に対して100〜50000ppmの割合で含有されている
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築内装材、玄関ドアなどの建築外装部材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに関するもので、ベシクル化した無機系紫外線吸収剤を含有するトップコート層および/または透明樹脂層を備える化粧シートおよび化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塩化ビニル製化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが多く提案されている。また、一般的に化粧シートとして用いられるオレフィン系樹脂からなる軟質ポリオレフィンシートの耐傷性を向上させるために高結晶性かつアイソタクチシティの高い樹脂を用いると耐候性に劣るという問題点を有していた。
【0003】
そこで、特許文献1においては、ポリオレフィンシートの表面にトリアジン系の紫外線吸収剤を含む樹脂からなるトップコート層を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4032829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トリアジン系のような有機系の紫外線吸収剤は、基材樹脂の透明性は維持できるものの経時変化が避けられず長期間における紫外線吸収性能の持続性に課題を有していた。これを踏まえて、経年変化の少ない無機系の紫外線吸収剤を用いると、不透明な粒子が凝集して透明性が低下し、化粧シート自身の意匠性を損なうという問題点があった。
【0006】
また、耐候性を向上させるべく、紫外線吸収剤の配合量を増加させると、樹脂中において紫外線吸収剤が凝集してブリードアウトが発生し、シート表面のベタつきや密着性の低下の原因となる。
【0007】
また、化粧シートの意匠性を向上させるためにエンボス模様を形成すると、エンボス模様の凹部の部分が他の部分と比較して層厚が薄くなるために耐候性が特に低くなり、当該凹部から劣化が始まって白化や破断が生じるという問題点があった。
【0008】
本発明においては、無機系紫外線吸収剤を内包した無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有したトップコート層および/または透明樹脂層を具備し、意匠性および耐候性に優れた化粧シートおよび化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討の結果、無機系紫外線吸収剤をベシクルに内包した無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの状態で含有させることにより、樹脂材料中への無機系紫外線吸収剤の分散性を飛躍的に向上させることに成功し、これによって化粧シートに必要な透明性を達成できることを見出した。
【0010】
上記課題を達成するべく、本発明の第1の態様の化粧シートは、最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートであって、前記トップコート層および前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、リン脂質からなる単層膜状の外膜を備える無機系紫外線吸収剤内包リポソームであることを特徴とする。
本発明の第2の態様の化粧シートは、最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートであって、前記トップコート層および/または前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、前記無機系紫外線吸収剤は、前記トップコート層においては、前記トップコート層の主成分である樹脂材料100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で含有されており、前記透明樹脂層においては、前記透明樹脂層の主成分である樹脂材料に対して100〜50000ppmの割合で含有されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第の態様の化粧シートは、前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える無機系紫外線吸収剤内包リポソームであることを特徴とする。
【0012】
本発明の第の態様の化粧シートは、前記外膜が、単層膜であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第の態様の化粧シートは、前記無機系紫外線吸収剤が、酸化亜鉛であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第の態様の化粧シートは、前記透明樹脂層にはエンボス模様が形成されており、少なくとも前記エンボス模様の凹部に前記トップコート層が埋め込まれて設けられていることを特徴とする。本発明の第の態様の化粧シートは、前記透明樹脂層の下層には、光安定化剤を含有するインキ層が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の化粧シートの製造方法は、最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートの製造方法であって、
前記トップコート層および前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、リン脂質からなる単層膜状の外膜を備える無機系紫外線吸収剤内包リポソームであることを特徴とする。
本発明の第2の化粧シートの製造方法は、最表層にトップコート層を備え、前記トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートの製造方法であって、前記トップコート層および/または前記透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成するとともに、前記無機系紫外線吸収剤は、前記トップコート層においては、前記トップコート層の主成分である樹脂材料100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で含有されており、前記透明樹脂層においては、前記透明樹脂層の主成分である樹脂材料に対して100〜50000ppmの割合で含有されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧シートおよび化粧シートの製造方法によれば、前記無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有するトップコート層および/または透明樹脂層を具備することにより、優れた意匠性を備えているとともに、長期間に亘る耐候性を実現した化粧シート並びに化粧シートの製造方法を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の化粧シートの実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化粧シートは、最表層にトップコート層を備え、当該トップコート層の下面に透明樹脂層を備える化粧シートであって、当該トップコート層および/または透明樹脂層を超臨界逆相蒸発法によってベシクルに無機系紫外線吸収剤を内包させた無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを添加して形成することが重要である。
【0019】
このような、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞状のカプセル状のベシクル内に無機系紫外線吸収剤が内包された構造を有しているものである。この無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、互いのベシクルの外膜同士が反発し合う作用によって粒子が凝集することがなく、極めて高い分散性を有している。この作用によって、トップコート層および透明樹脂層を構成する樹脂組成物中に対して無機系紫外線吸収剤を均一に分散させることを可能とするものである。
【0020】
無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを得る手法(ベシクル化処理方法)としては、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などが挙げられる。このようなベシクル化処理方法について簡単に説明すると、Bangham法は、フラスコなどの容器にクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解する。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることよりベシクルを得る方法である。エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代わってフィルターを通過させることによりベシクルを得る方法である。水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌して分散させてベシクルを得る方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを作り、当該エマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、この冷却・加熱を繰り返すことによってベシクルを得る方法である。
【0021】
特に、単層膜からなる外膜を具備する無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを得る方法として、超臨界逆相蒸発法が挙げられる。超臨界逆相蒸発法とは、本発明者等が提案している特表2002/032564号公報、特開2003−119120号公報、特開2005−298407号公報および特開2008−063274号公報(以下、「超臨界逆相蒸発法公報類」と称する)に開示されているものであり、当該超臨界逆相蒸発法公報類に記載の方法および装置を用いて行うことができる。具体的には、超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または臨界点以上の温度条件下もしくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての無機系紫外線吸収剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての無機系紫外線吸収剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。特に、前記外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを無機系紫外線吸収剤内包リポソームと称する。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた二酸化炭素を意味するものである。この方法により、無機系紫外線吸収剤を内包する直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。
【0022】
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0023】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0024】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本発明の化粧シートにおいては、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備した無機系紫外線吸収剤内包リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、トップコート層および/または透明樹脂層の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
【0025】
無機系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリアなどが挙げられる。特に、酸化亜鉛は、トップコート層および透明樹脂層において主成分として用いられる樹脂材料と屈折率が近く、当該酸化亜鉛を添加しても高い透明性を維持することができるため好適である。なお、無機系紫外線吸収剤の粒径は1nm〜200nmの範囲内のものを用いることが好ましい。このような、無機系紫外線吸収剤は、トップコート層においては、トップコート層の主成分である樹脂材料100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で含有されていることが好ましく、より好ましくは、1〜10重量部の割合で含有されていることであり、さらに好ましくは、3〜5重量部の割合で含有されていることである。また、透明樹脂層においては、透明樹脂層の主成分である樹脂材料に対して100〜50000ppmの割合で含有されていることが好ましく、より好ましくは、2000〜30000ppmの割合で含有されていることである。無機系紫外線吸収剤を上記の含有量とすることにより、特に優れた耐候性と意匠性とを兼ね備えた化粧シートを実現することができる。
【0026】
本発明の化粧シートにおいては、透明樹脂層にエンボス模様が形成されており、少なくとも当該エンボス模様の凹部にトップコート層が埋め込まれて設けられていることが重要であり、トップコート層を透明樹脂層の表面に設ける際に、ワイピングによって凹部にトップコート層を埋め込むように形成することが好ましい。
【0027】
また、透明樹脂層の下層には、少なくとも光安定化剤を含有するインキ層が設けられていることが重要である。光安定化剤としては、ヒンダードアミン系の材料を用いることが好ましい。インキ層に対して光安定化剤を含有させることにより、インキ層を形成するバインダー樹脂自体や他層の樹脂劣化により発生したラジカルがインキ内の顔料の化学成分を還元することによる顔料の退色を抑制し、長期間に亘って色鮮やかな絵柄を保持することができる。
【0028】
以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施形態を図1を用いて説明する。
【0029】
本発明の化粧シートの実施形態においては、図1に示すように、インキ層5が施された原反層6としての原反樹脂シートに接着剤層4が形成されたものと、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層3に接着性樹脂層3bを共押ししたものとをドライラミネートまたは押出ラミネートなどで貼り合わせることによって得られる。本発明においては、図1に示すように、トップコート層2は、透明樹脂層3に形成されたエンボス模様3aの凹部に対して、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有する樹脂組成物を塗布し、塗液をスキージなどで掻き取ることで凹部のみに当該樹脂組成物を埋め込むワイピングによって埋め込まれて設けられている。各層の詳細を以下に説明する。
【0030】
化粧シート1の最表面には、表面の保護や艶の調整としての役割を果たすトップコート層2が設けられており、主成分の樹脂材料としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。本実施形態においては、前記樹脂材料100重量部に対して、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルが0.5〜20重量部の割合で含有されている。特に、本実施形態においては、当該無機系紫外線吸収剤内包ベシクルとして、超臨界逆相蒸発法により得たリン脂質からなる外膜を具備する無機系紫外線吸収剤内包リポソームを用いることが好ましい。
【0031】
そして、本実施形態においては、透明樹脂層3のエンボス模様3aの凹部のみにトップコート層2を設ける構成としているが、少なくともエンボス模様3aの凹部に埋め込まれて設けられていればよく、エンボス模様3aを形成することにより層厚が薄くなっている凹部においても高い耐候性を維持することができる。なお、トップコート層2は、透明樹脂層3の全面を覆うように設けてもよく、全面を覆うようにトップコート層2を設けることでより優れた耐候性を備えた化粧シート1を提供することができる。
【0032】
トップコート層2の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアンート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアメート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制および密着性の向上を図ることができる。
【0033】
トップコート層2の下面には、透明樹脂層3が設けられている。当該透明樹脂層3の主成分として用いる樹脂材料はオレフィン系樹脂からなることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0034】
本実施形態においては、透明樹脂層3は、前記樹脂材料を主成分とし、超臨界逆相蒸発法により得た無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有する樹脂組成物から構成されている。無機系紫外線吸収剤内包ベシクルは、透明樹脂層3の主成分である樹脂材料に対して1000〜50000ppmの割合で含有されていることが好ましい。特に、本実施形態においては、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルとして、超臨界逆相蒸発法により得たリン脂質からなる外膜を具備する無機系紫外線吸収剤内包リポソームを用いている。
【0035】
なお、透明樹脂層3を構成する樹脂組成物には、必要に応じて熱安定化剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤などの各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
【0036】
また、透明樹脂層3の表面には、意匠性を向上させるためにエンボス模様3aが形成されている。エンボス模様3aは、トップコート層2を形成する前に、凹凸模様を有するエンボス版を用いて熱および圧力を付与することによってエンボス模様3aを形成する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いてシートの冷却と同時にエンボス模様3aを形成する方法などによって形成することができる。また、エンボス模様3aの凹部にインキなどを埋め込んでさらに意匠性を向上させることもできる。
【0037】
透明樹脂層3に対して非極性のポリプロピレンを用いた場合、当該透明樹脂層3と下面に配置される樹脂層との密着性が低い場合には、接着性樹脂層3bを設けることが好ましい。接着性樹脂層3bとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系などの樹脂に酸変性を施したものが好ましく、層厚は接着性や耐熱性の観点から2μm以上20μm以下が望ましい。また、当該接着性樹脂層3bは、接着強度向上の観点から、透明樹脂層3と共押出ラミネート法によって形成されることが好ましい。
【0038】
透明樹脂層3の下面側には、図1に示すように、さらに下面側のインキ層5と透明樹脂層3との密着性を向上させるための接着剤層4が設けられている。接着剤層4の材質は特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着剤の粘度になどに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、インキ層5が施された原反層6側にグラビアコートによって塗布された後、透明樹脂層3あるいは接着性樹脂層3bとラミネートするようにされている。なお、接着剤層4は、透明樹脂層3とインキ層5との接着強度が十分に得られる場合には、省略することができる。
【0039】
接着剤層4の下面側には、インキ層5が設けられている。インキ層5は、少なくとも光安定化剤を含有するインキからなる絵柄模様層5aを備えている。また、絵柄模様層5aの下面側にベタインキ層5bを設けることにより、隠蔽性をもたせることができる。インキには、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系などの単独もしくは各変性物から適宜選択して用いることができる。当該バインダーは、水性、溶剤系、エマルジョン系など特に限定されるものではなく、硬化方法についても、1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。さらに、紫外線や電子線などの活性エネルギー線照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。特に、一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが含まれている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母などのパール類が挙げられる。
【0040】
ベタインキ層5bにおいては、基本的には絵柄模様層5aに用いるインキと同じ材料を用いることができるが、当該インキが透明な材料の場合には、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄などを用いることができる。この他にも、金、銀、銅、アルミなどの金属を添加することで隠蔽性をもたせることも可能である。一般的には、フレーク状のアルミが用いられる。
【0041】
これらのインキ層5は、原反層6に対して直接、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷などにより形成することができる。また、金属によって隠蔽性を付与する場合には、コンマコーター、ナイフコーター、リップコーター、金属蒸着あるいはスパッタ法などを用いることが好ましい。
【0042】
なお、樹脂材料やインキが積層される界面に対しては、その接着性を考慮して、当該樹脂材料やインキを施す前に、積層される表面にコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理などの表面処理を施すことにより表面を活性化した後に積層工程を経ると層同士の接着性を向上させることができる。
【0043】
インキ層5の下面側には、原反層6が設けられている。原反層6は、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などから任意に選択することができる。
【0044】
また、原反層6としてオレフィン系の樹脂を用いる場合には、表面が不活性な状態とされていることが多いので、原反層6と化粧シートを1を貼り付ける基材との間にプライマー層を設けることが好ましい。この他にも、オレフィン系樹脂からなる原反層6と前記基材との接着性を向上させるために、原反層6に対して、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理または重クロム酸処理などが施されていることが好ましい。
【0045】
なお、プライマー層としては、インキ層5と同じ材料を適用することができるが、化粧シート1をウェブ状で巻き取ることを考慮すると、ブロッキングを避けるとともに、接着剤との密着性を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタンまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤を含有させることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態においては、トップコート層2および透明樹脂層3の両方の層に無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有させる構成としているが、いずれか一方の層に無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有させる構成としてもよい。
【0047】
本実施形態の化粧シート1においては、原反層6は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μm、接着剤層4は1μm〜20μm、透明樹脂層3は20μm〜200μm、トップコート層2は3μm〜20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm〜250μmの範囲内とすることが好適である。
【0048】
以上のように、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルを含有するトップコート層2および/または透明樹脂層3を具備する本発明の化粧シート1は、樹脂組成物中において無機系紫外線吸収剤が極めて均一に分散したトップコート層2および/または透明樹脂層3を実現しており、その結果、透明性が損なわれずに優れた意匠性を備えているとともに、少ない含有量であっても高い紫外線吸収性能を実現した、長期間に亘って優れた耐候性を得ることができる化粧シート1を提供することができる。
【0049】
この他にも、樹脂組成物中における無機系紫外線吸収剤の高い分散性を実現していることで、凝集した添加物に起因して発生するブリードアウトが生じることがなく、表面のベタつきの少ない化粧シート1を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態のように、無機系紫外線吸収剤を無機系紫外線吸収剤内包ベシクルとすることで、無機系紫外線吸収剤を多量に含有させたいという要望にも応えることができるので、より一層、耐候性能に優れた化粧シート1を提供することを可能とする。この他にも、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルとすることで、化粧シートに必要な可撓性、衝撃強度および平面平滑性を維持することができるという効果や、トップコート層2の原料樹脂が無機系紫外線吸収剤を添加することによって増粘することを抑制してエンボス模様3aの凹部の隅々にまで塗液を埋め込んで意匠性に優れた化粧シート1を得られるという効果を得ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態においては、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルとして、超臨界逆相蒸発法により得た無機系紫外線吸収剤内包リポソームを用いることで、トップコート層2および/または透明樹脂層3を構成する樹脂組成物中において、無機系紫外線吸収剤を極めて均一に分散させることを可能とし、より優れた透明性、紫外線吸収性能を実現することができる。
【0052】
以下に、本発明の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
【0053】
<無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製1>
まず、実施例1,2において用いる無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製方法について説明する。無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製は超臨界逆相蒸発法によって行われ、具体的には、60℃に保たれた高圧ステンレス容器に2−プロパノール100重量部と、無機系紫外線吸収剤としての酸化亜鉛70重量部と、リン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部とを入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入して温度と圧力とを保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことでリン脂質からなる単層膜の外膜を具備する酸化亜鉛リポソームを得た。
【0054】
<実施例1>
実施例1においては、上述の<無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製1>において調製した酸化亜鉛リポソームを含有する透明樹脂層3を具備した化粧シート1とした。
【0055】
具体的には、ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を500ppm、酸化亜鉛リポソームを500,1000,2000,30000,50000,150000ppm、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を2000ppm添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしてのシート状の透明樹脂層3を製膜し、得られた透明樹脂層3の両面にコロナ処理を施し、シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(原反層6)の表面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5重量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層5aを設け、また、該原反層6の裏面にプライマーコートを施した。しかる後、前記原反層6の絵柄模様層5aの面に、透明樹脂層3をドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m )を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。この貼り合わせたシートの透明樹脂層3の表面にエンボス模様3aを施した後、2液型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を塗布厚3g/m にて塗布してトップコート層2を形成し、総厚154μmの図1に示す本発明の化粧シート1を得た。
【0056】
<実施例2>
実施例2においては、上述の<無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製1>において調製した酸化亜鉛リポソームをそれぞれ含有するトップコート層2および透明樹脂層3を具備した化粧シート1とした。
【0057】
具体的には、ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を500ppm、酸化亜鉛リポソームを2000ppm、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を2000ppm添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしてのシート状の透明樹脂層3を製膜し、得られた透明樹脂層3の両面にコロナ処理を施し、シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(原反層6)の表面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5重量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層5aを設け、また、該原反層6の裏面にプライマーコートを施した。しかる後、前記原反層6の絵柄模様層5aの面に、透明樹脂層3をドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m )を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。この貼り合わせたシートの透明樹脂層3の表面にエンボス模様3aを施した後、2液型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、酸化亜鉛0.1重量部の酸化亜鉛リポソームを添加したトップコート塗液を塗布厚3g/m にて塗布してトップコート層2を設け、さらにエンボス模様3aの凹部へワイピングにより前記トップコート塗液を埋め込み、総厚150μmの本発明の化粧シートを得た。
【0058】
<比較例1>
比較例1においては、ベシクル化していない無機系紫外線吸収剤として酸化亜鉛を含有する透明樹脂層3を具備した化粧シートとした。
【0059】
具体的には、ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を500ppm、酸化亜鉛を2000ppm、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を2000ppm添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしてのシート状の透明樹脂層3を製膜した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを得た。
【0060】
<比較例2>
比較例2においては、固相法によりナノ化処理を施した無機系紫外線吸収剤を含有する透明樹脂層3を具備した化粧シートとした。
【0061】
具体的には、無機系紫外線吸収剤として、固相法によりナノ化処理を施した酸化亜鉛を用いた。具体的には、イソプロピルアルコール100gと酸化亜鉛50gをビーズミルで60分間、30μmの安定化ジルコニアビースを用いて、平均粒子径1nm〜150nm程度のナノ化処理を施した酸化亜鉛を得る。ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を500ppm、前述の固相法により得られたナノ化処理を施した酸化亜鉛を2000ppm、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を2000ppm添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしてのシート状の透明樹脂層3を製膜した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを得た。
【0062】
<比較例3>
比較例3においては、ベシクル化していない紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系材料を含有する透明樹脂層3を具備した化粧シートとした。
【0063】
具体的には、ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を500ppm、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製)を2000ppm、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を2000ppm添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしてのシート状の透明樹脂層3を製膜した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを得た。
【0064】
実施例1,2および比較例1〜3の各化粧シート1に対して、耐候性試験機(サンシャインウエザーメーター:スガ試験機(株)製)を用いて、JIS B 7753に準じたカーボンアーク耐候性試験を行い紫外線吸収能を算出した。なお、試験条件は耐候経時4000時間として行った。紫外線吸収能については、各化粧シート1のトップコート層2と透明樹脂層3とからなる透明層について、340nmと500nmとの紫外線吸収率の比(340nm/500nm)の耐候性試験前後における差を算出した(表1においては、紫外線吸収能として記載している。)。また、耐候性試験後のヘイズ値を評価した。さらに、耐候性試験前後における各化粧シート1の色差(ΔE)、および耐候性試験後の外観変化について評価した。なお、外観変化の記号の内容は下記の通りである。得られた評価結果を表1に示す。
<外観変化の記号>
〇:全く変化なし
△:若干の白化あり
×:激しい白化および一部が破壊・破断
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1における化粧シート1においては、表1に示すように、酸化亜鉛リポソームの含有量が1000〜50000ppmとされた透明樹脂層3を具備する化粧シート1については、極めて小さい紫外線吸収能の値を示していることから、耐候性試験前後において殆ど変わらない紫外線吸収性能を維持しており、耐候性試験後のヘイズ値の値から、高い透明性を維持していることが分かる。さらに、耐候性試験前後の色差(ΔE)の値からも、殆ど色の変化は認められず、目視による外観変化評価においても、良好な結果が得られていることから、長期間に亘って高い耐候性および優れた意匠性を実現することが可能な化粧シート1であることが明らかとなった。
【0067】
しかしながら、実施例1における酸化亜鉛リポソームの含有量が500ppmとされた透明樹脂層3を具備する化粧シート1については、ヘイズ値は小さく、紫外線吸収能の値および耐候性試験前後の色差(ΔE)の値は大きい値を示している。これは、酸化亜鉛リポソームの含有量が極めて少ないために、添加物に起因する樹脂組成物の白濁化は小さいが、十分な紫外線吸収性能が得られずに樹種材料の劣化や脱色が生じたためである。よって、酸化亜鉛リポソームを500ppmの割合で含有する透明樹脂層3を具備する化粧シート1は、極めて意匠性に優れており、屋外用途と比較して高い耐候性能を要求されない室内用途への適用が考えられる。
【0068】
また、実施例1における酸化亜鉛リポソームの含有量が150000ppmとされた透明樹脂層3を具備する化粧シート1については、ヘイズ値は大きく、紫外線吸収能の値および耐候性試験前後の色差(ΔE)の値は小さい値を示している。これは、酸化亜鉛リポソームの含有量が多すぎるために、添加物に起因する樹脂組成物の白濁化が大きいものの、高い紫外線吸収性能が得られており、樹脂材料の劣化が抑制されているためである。よって、酸化亜鉛リポソームを150000ppmの割合で含有する透明樹脂層3を具備する化粧シート1は、透明樹脂層3に高い透明性を要求されない用途への適用が考えられる。
【0069】
実施例1の結果から、透明樹脂層3に対しては、酸化亜鉛リポソームを1000〜50000ppmの範囲内にて含有させることが好ましいことが明らかとなった。
【0070】
実施例2における化粧シート1においては、表1に示すように、酸化亜鉛リポソームを含有させたトップコート層2および透明樹脂層3を具備する化粧シート1とされたものであり、紫外線吸収能の値が極めて小さく、耐候性試験前後において殆ど変わらない紫外線吸収性能を維持していることが分かる。また、耐候性試験後のヘイズ値から高い透明性を維持していた。さらに、耐候性試験前後の色差(ΔE)の値からも、殆ど色の変化は認められず、目視による外観変化評価においても、良好な結果が得られた。この評価結果から、トップコート層2と透明樹脂層3とからなる透明層は、長期に亘って優れた紫外線吸収性能を発現し続けることが可能であり、この優れた紫外線吸収性能によって樹脂の退色や白化を防止し、優れた透明性を長期間に亘って維持できることが明らかとなった。
【0071】
比較例1〜3における化粧シート1においては、紫外線吸収能の値が大きく、耐候性試験前後において紫外線吸収性能に差が現れた。また、ヘイズ値についても、有機系紫外線吸収剤を用いた比較例3以外は値が大きく、透明性が損なわれていた。耐候性試験前後の色差(ΔE)および耐候性試験後の目視による外観変化の評価結果からも、白化や亀裂が認められ、比較例1〜3の化粧シート1は耐候性に劣っていることが明らかとなった。
【0072】
以上の結果から、実施例1,2の化粧シートは、優れた耐候性と化粧シートに必要な透明性を備えた化粧シート1であることが明らかとなった。
【0073】
以上の実施例1,2および比較例1〜3における化粧シート1の評価結果から、無機系紫外線吸収剤ベシクルとしての酸化亜鉛リポソームを含有するトップコート層2および/または透明樹脂層3を具備した化粧シート1とすることにより、長期間に亘る耐候性に優れた化粧シートを提供することができることが明らかとなった。
【0074】
<無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製2>
実施例3,4において用いる無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製方法について説明する。無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製は超臨界逆相蒸発法によって行われ、具体的には、60℃に保たれた高圧ステンレス容器に対して、ヘキサン100重量部と、無機系紫外線吸収剤としての酸化亜鉛(平均粒径20nm)70重量部と、リン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部とを入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながら酢酸エチルを100重量部注入して温度と圧力とを保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことでリン脂質からなる単層膜の外膜を具備する酸化亜鉛リポソームを得た。
【0075】
<実施例3>
実施例3においては、上述の<無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製2>において調製した酸化亜鉛リポソームを含有するトップコート層2を具備した化粧シート1とした。なお、酸化亜鉛リポソームの含有量は、トップコート層2の主成分である樹脂材料100重量部に対して、0.05,0.54,1.07,5.35,10.70,21.40,48.20重量部(このうち、酸化亜鉛の含有量は0.05,0.5,1.0,5.0,10.0,20.0,40.0重量部である。)とした。
【0076】
具体的には、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を500ppm、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を2000ppm添加した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしてのシート状の透明樹脂層3を製膜し、得られた透明樹脂層3の両面にコロナ処理を施し、シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(原反層6)の表面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して3μmの絵柄模様層5aを設け、また、該原反層6の裏面に1μmのプライマーコートを施した。しかる後、前記原反層6の絵柄模様層5aの面に、透明樹脂層3を厚さ3μmのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m )を介してドライラミネート法にて貼り合わせて、原反層6、絵柄模様層5a、トライラミネート用接着剤、プライマーコートおよび透明樹脂層3からなる厚さ157μmの積層樹脂シートを得た。この積層樹脂シートの透明樹脂層3の表面にエンボス模様3aを施した後、2液型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、上述の超臨界逆相蒸発法により得た酸化亜鉛リポソームを0.05,0.54,1.07,5.35,10.70,21.40または48.20重量部の割合で添加したものを塗布厚3g/m にて塗布してトップコート層2を形成し、総厚160μmの図1に示す本発明の化粧シート1を得た。
【0077】
<実施例4>
実施例4においては、上述の<無機系紫外線吸収剤内包ベシクルの調製2>において調製した酸化亜鉛リポソームを含有するトップコート層2と、光安定化剤を含有する絵柄模様層5aとを具備した化粧シート1とした。なお、酸化亜鉛リポソームの含有量は、トップコート層2の主成分である樹脂材料100重量部に対して、1.07,5.35,10.70重量部(このうち、酸化亜鉛の含有量は1.0,5.0,10.0重量部である。)とした。
【0078】
具体的には、2液ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)からなるバインダー樹脂分に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5重量%添加したインキを用いて絵柄模様層5aを形成する以外は、実施例3と同様の方法によって化粧シート1を得た。
【0079】
<比較例4>
比較例4においては、ベシクル化していない酸化亜鉛を含有するトップコート層2を具備した化粧シート1とした。なお、酸化亜鉛の含有量は、トップコート層2の主成分である樹脂材料100重量部に対して、0.5または1.0重量部とした。トップコート層2について上記の構成とする以外は、実施例3に記載の化粧シート1と同様の構成である。
【0080】
<比較例5>
比較例5においては、固相法によりナノ化処理を施したナノ化酸化亜鉛を含有するトップコート層2を具備した化粧シート1とした。なお、ナノ化酸化亜鉛の含有量は、トップコート層2の主成分である樹脂材料100重量部に対して、0.5または1.0重量部とした。トップコート層2について上記の構成とする以外は、実施例3に記載の化粧シート1と同様の構成である。
【0081】
<比較例6>
比較例6においては、有機系紫外線吸収剤であるトリアジン系紫外線吸収剤を含有するトップコート層2を具備した化粧シート1とした。トリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、トップコート層2の主成分である樹脂材料100重量部に対して、0.5重量部とした。トップコート層2について上記の構成とする以外は、実施例3に記載の化粧シート1と同様の構成である。
【0082】
<比較例7>
比較例7においては、無機系紫外線吸収剤を含有しないトップコート層2および透明樹脂層3を具備した化粧シート1とした。その他の構成については、実施例3に記載の化粧シート1と同様の構成である。
【0083】
実施例3,4および比較例4〜7の各化粧シート1に対して、実施例1,2および比較例1〜3と同様に、紫外線吸収能の算出、耐候性試験後のヘイズ値の測定、耐候性試験前後における各化粧シート1の色差(ΔE)の算出、および耐候性試験後の外観変化について評価した。なお、外観変化の記号の内容は下記の通りである。得られた評価結果を表2に示す。
<外観変化の記号>
◎:全く変化なし
○:わずかな変化あり
△:若干の白化や亀裂あり
×:激しい白化および一部が破壊・破断
【0084】
【表2】
【0085】
実施例3における化粧シート1においては、表2に示すように、酸化亜鉛リポソームの含有量が0.54〜21.40重量部(このうち酸化亜鉛は0.50〜20.00重量部)とされたトップコート層2を具備する化粧シート1については、紫外線吸収能の値および耐候性試験前後の色差(ΔE)の値が小さく、耐候性試験後においても15%以下のヘイズ値を実現しており、優れた透明性を長期間に亘って維持することが可能な化粧シート1であることが明らかとなった。
【0086】
しかしながら、実施例3における酸化亜鉛リポソームの含有量が0.05重量部(このうち酸化亜鉛は0.05重量部。その他の含有成分については非常に微量であり、有効数字範囲外であった。)とされたトップコート層2を具備する化粧シート1については、ヘイズ値は小さく、紫外線吸収能の値および耐候性試験前後の色差(ΔE)の値は大きい値を示している。これは、酸化亜鉛リポソームの含有量が極めて少ないために、添加物に起因する樹脂組成物の白濁化は小さいが、十分な紫外線吸収性能が得られずに樹脂材料の劣化や脱色が生じたためである。よって、主成分である樹脂材料100重量部に対して酸化亜鉛リポソームを0.05重量部の割合で含有するトップコート層2を具備する化粧シート1は、極めて意匠性に優れており、屋外用途と比較して高い耐候性能を要求されない屋内用途への適用が考えられる。
【0087】
また、実施例3における酸化亜鉛リポソームの含有量が45.20重量部(このうち酸化亜鉛は40.00重量部)とされたトップコート層2を具備する化粧シート1については、ヘイズ値は大きく、紫外線吸収能の値および耐候性試験前後の色差(ΔE)の値は小さい値を示している。これは、酸化亜鉛リポソームの含有量が多すぎるために、添加物に起因する樹脂組成物の白濁化が大きいものの、高い紫外線吸収性能が得られており、樹脂材料の劣化が抑制されているためである。よって、主成分である樹脂材料100重量部に対して酸化亜鉛リポソームを45.20重量部の割合で含有するトップコート層2を具備する化粧シート1は、トップコート層2に高い透明性を要求されない用途への適用が考えられる。
【0088】
実施例3の結果から、トップコート層2に対しては、酸化亜鉛リポソームを0.54〜21.40重量部(このうち酸化亜鉛は0.5〜20.00重量部)の範囲内にて含有させることが好ましいことが明らかとなった。
【0089】
実施例4における化粧シート1においては、表2に示すように、酸化亜鉛リポソームを含有させたトップコート層2および光安定化剤を含有させた絵柄模様層5aを具備する化粧シート1とされたものであり、紫外線吸収能の値については、酸化亜鉛リポソームの含有量が増加するほど小さい値を示した。また、全ての含有量の場合において耐候性試験後のヘイズ値の値は小さく、高い透明性を維持していた。さらに、耐候性試験前後の色差(ΔE)の値からも、殆ど色の変化は認められず、目視による外観変化評価においても、良好な結果が得られた。この評価結果から、実施例3,4の化粧シート1においては、酸化亜鉛リポソームの含有量を増加させるほど、長期に亘って優れた紫外線吸収性能を発現し続けることが可能であり、この優れた紫外線吸収性能によって樹脂の退色や白化を防止し、優れた透明性を長期間に亘って維持できることが明らかとなった。さらに、実施例4における化粧シート1は、光安定化剤を含有する絵柄模様層5aとされていることにより、実施例3における酸化亜鉛リポソームの含有量が1.00〜10.00重量部とされたトップコート層2を具備する化粧シート1と比較すると、耐候性試験前後の色差(ΔE)の値が極めて小さい値を示しており、光安定化剤によって絵柄模様層5aの脱色を抑制して、色鮮やかな意匠を、より一層、長期間に亘って実現することが可能な化粧シートが得られることが明らかとなった。
【0090】
比較例4,5における化粧シート1においては、表2に示すように、紫外線吸収能の値は小さく試験時間内においては変わらない紫外線吸収性能を有していることが分かる。しかし、耐候性試験後のヘイズ値は大きく、透明層の透明性に劣っていることが分かる。また、耐候性試験後の色差(ΔE)および耐候性試験後の目視による外観変化の評価結果から、白化や亀裂が認められた。この評価結果から、比較例4,5の化粧シート1においては、意匠性および耐候性に劣っていることが明らかとなった。
【0091】
また、比較例6における化粧シート1においては、表2に示すように、紫外線吸収能の値が大きく、耐候性試験後の色差(ΔE)および目視による外観変化の評価結果から、耐候性に劣っていることが分かる。ヘイズ値については、小さい値を示しており、優れた透明性を有していることが分かる。この評価結果から、有機系紫外線吸収剤は、透明層の高い透明性を維持することができるものの、長期間に亘る紫外線吸収性能に劣ることが明らかとなった。
【0092】
比較例7における化粧シート1においては、表2に示すように、耐候性試験後のヘイズ値については低い値を示しており、トップコート層2および透明樹脂層3からなる透明層については優れた透明性を維持していることが分かる。しかしながら、紫外線吸収能の値が非常に大きく、耐候性試験後の色差(ΔE)および目視による外観変化の評価結果から、透明層の下層に設けられた絵柄模様層5aなどに著しい退色が認められた。この評価結果から、トップコート層2および透明樹脂層3に対して、紫外線吸収剤を添加していない化粧シート1は耐候性に劣ることが明らかとなった。
【0093】
以上の実施例3,4および比較例4〜7における化粧シート1の評価結果から、特に、無機系紫外線吸収剤内包ベシクルとしての酸化亜鉛リポソームを主成分である樹脂材料100重量部に対して、0.54〜21.40重量部の割合で含有させたトップコート層2を具備した化粧シート1とすることにより、よりいっそう長期間に亘る耐候性に優れ、意匠性にも優れた化粧シートを提供することができることが分かる。
【0094】
本発明の化粧シート1および化粧シート1の製造方法は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 化粧シート
2 トップコート層
3 透明樹脂層
3a エンボス模様
3b 接着性樹脂層
4 接着剤層
5 インキ層
5a 絵柄模様層
5b ベタインキ層
6 原反層
図1