(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者内に挿入可能な細長い一本の柔軟体の途中部分に挿入端となる結び目が設けられ、結び目部分で柔軟体を折り返して形成された美容整形用糸の結び目側に設けられ、患者内に留置される留置部材であって、
その先端側で開口し、前記結び目を収容する収容部と、
前記収容部と連通され、前記結び目の大きさよりも細径であり、前記美容整形用糸の結び目以外の部分が貫通する貫通部と、
を有することを特徴とする留置部材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
患者内に挿入可能な細長い一本の柔軟体の途中部分に挿入端となる結び目が設けられ、結び目部分で柔軟体を折り返して形成されたことを特徴とする美容整形用糸が明らかとなる。このような美容整形用糸によれば、皮下脂肪層に挿入された状態で力が加わっても結び目が解けることが無い。
【0011】
また、患者内に挿入可能な細長い一本の柔軟体の途中部分に挿入端となる結び目が設けられ、結び目部分で柔軟体を折り返して形成された美容整形用糸の結び目側に設けられ、患者内に留置される留置部材であって、その先端側で開口し、前記結び目を収容する収容部と、前記収容部と連通され、前記結び目の大きさよりも細径であり、前記美容整形用糸の結び目以外の部分が貫通する貫通部と、を有することを特徴とする留置部材が明らかとなる。このような留置部材によれば、結び目を抜け難くすることができる。
【0012】
また、患者内に挿入可能な細長い一本の柔軟体の途中部分に挿入端となる結び目が設けられ、結び目部分で柔軟体を折り返して形成された細長の美容整形用糸と、前記美容整形用糸の結び目側に設けられる留置部材と、を有し、前記留置部材は、その先端側で開口し、前記結び目を収容する収容部と、前記収容部と連通され、前記結び目の大きさよりも細径であり、前記柔軟体の結び目以外の部分が貫通する貫通部と、を有することを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このような美容整形用器具によれば、皮下脂肪層に挿入された状態で力が加わっても糸の結び目が解けることが無く、且つ留置部材から結び目が抜け難くなるため、十分なリフトアップの効果を得ることができる。
【0013】
また、前記留置部材は略円柱形状であり、その後端側の外側面には少なくとも一つの突出部が形成されていることを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このような突出部を設けることにより、皮下脂肪層への引っ掛かりをより強くできる。
【0014】
また、前記突出部の一部分は他の部分よりも肉薄に形成されていることを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このような突出部を設けることにより、美容整形用器具をカテーテル内に挿入し易くなる。
【0015】
また、前記留置部材は、その後端側で開口し、前記貫通部と連通される空洞部を有することを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このような空洞部を設けることにより、美容整形用器具をカテーテル内に挿入し易くなる。
【0016】
また、前記留置部材は略円錐形状であり、前記収容部は、狭端側で開口していることを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このように留置部材の形状が略円錐形状であっても、結び目を抜け難くすることができる。
【0017】
また、患者内に挿入可能な細長い一本の柔軟体の途中部分に挿入端となる結び目が設けられ、結び目部分で柔軟体を折り返して形成された美容整形用糸と、前記美容整形用糸の結び目側に設けられ、前記美容整形用糸の結び目以外の部分が貫通する貫通孔が形成されている留置部材とを有することを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このような美容整形用器具によれば、皮下脂肪層に挿入された状態で糸に力が加わっても結び目が解けることが無いため、十分なリフトアップの効果を得ることができる。
【0018】
また、患者内に挿入可能な細長い一本の柔軟体の途中部分に結び目が設けられた細長の美容整形用糸と、先端側で開口し、前記結び目を収容する収容部、及び前記収容部と連通され、前記結び目の大きさよりも細径であり、前記柔軟体の結び目以外の部分が貫通する貫通部を有する留置部材とを有することを特徴とする美容整形用器具が明らかとなる。このような美容整形用器具によれば、皮下脂肪層に挿入された状態で力が加わっても糸の結び目が解けることが無く、且つ留置部材から結び目が抜け難くなるため、十分なリフトアップの効果を得ることができる。
【0019】
==カテーテルの構成==
図1〜
図3を参照して、実施形態に共通のカテーテル1の構成例について述べる。
図1は、カテーテル1の全体構成を示す図である。
図2は、穿刺部2の構成を示す図である。
図3は、外筒部3の構成を示す図である。
【0020】
カテーテル1は、本発明に係る美容整形用器具100(後述)等を患者の体内に挿入・留置する際に使用される医療器具である。
図1に示すように、カテーテル1は、穿刺部2と外筒部3とを有する。穿刺部2は、外筒部3に対して挿入・抜去が可能である。カテーテル1は、適用部位により様々な長さのものを使用することができる。
【0021】
図2に示すように、穿刺部2は、針部2Aと把持部2Bとを有する。穿刺部2は、たとえば、金属等の硬質の材料で形成されている。
【0022】
針部2Aは、把持部2Bと一体的に形成されている細長の部材である。針部2Aは、穿刺部2が外筒部3に挿入された状態において、先端側の一部が外筒部3の先端側から突出する長さを有する(
図1参照)。また、針部2Aの先端は鋭利に形成されている。よって、針部2Aは、患者の皮膚(及び皮下脂肪層)に美容整形用器具100(後述)等を挿入するための穴を空けることができる。
【0023】
把持部2Bは、穿刺部2を把持するための部分である。術者は、把持部2Bを把持して穿刺部2を操作することにより、外筒部3に対して穿刺部2を挿入・抜去したり、外筒部3内で穿刺部2を回転させることができる。
【0024】
図3に示すように、外筒部3は、筒部3Aと把持部3Bとを有する。外筒部3は、たとえば、穿刺部2と同様の材料で形成されている。
【0025】
筒部3Aは、円筒形状の部材である。筒部3Aの径(貫通孔)は、少なくとも針部2B及び美容整形用器具100等(後述)を挿入・抜去できる大きさとなっている。なお、針部2B及び美容整形用器具100(後述)等を挿入・抜去できる大きさの貫通孔を有する構成であれば、筒部3Aの形状は円筒に限られない。
【0026】
把持部3Bは、外筒部3を把持するための部分である。把持部3Bは、筒部3Aと同様、少なくとも針部2B及び美容整形用器具100(後述)等を挿入・抜去できる大きさの貫通孔が設けられている。この貫通孔は、筒部3Aの貫通孔と繋がっている。たとえば、穿刺部2を外筒部3に挿入・抜去する場合、術者は、把持部3Bを抑えたまま、穿刺部2を操作する。なお、手技の際には、穿刺部2及び外筒部3のいずれか一方の操作に加え、穿刺部2を外筒部3に挿入した状態(
図1参照)のまま、把持部2B及び把持部3Bを持ってカテーテル1を患者の皮下に挿入する場合もある(後述の
図9A参照)。
【0027】
==第1実施形態==
<美容整形用糸の構成>
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る美容整形用糸4(以下、「糸4」という場合がある)の構成について述べる。
図4は、糸4の外観図である。
図5は、糸4及び留置部材IMを含む美容整形用器具100を示す図である。
【0028】
糸4は、留置部材IMと共にカテーテル1を介して患者の体内(患者の皮下脂肪層内)に挿入・留置される。糸4は、細長い一本の柔軟体により形成されている。
【0029】
糸4は、患者の体内に留置されることから、生体適合性のある材料により形成される。また、糸4は伸縮性に優れた材料で形成されていることが望ましい。更に、糸4は、生分解性ポリマーのような生体内で分解・吸収される材料により形成されていることが望ましい。この場合、糸4を体内から取り出す作業が不要となるため、患者負担が少ない。
【0030】
糸4は、柔軟体の途中部分に形成された結び目4aを有する。「途中部分」は、柔軟体の端部E1と端部E2の間に位置する部分である。結び目4aは、柔軟体を結ぶことによって形成される結節に相当する。
【0031】
そして、糸4は、結び目部分で柔軟体を折り返すことにより形成されている(
図4参照)。糸4において、結び目4aは糸4を患者内に挿入する際の挿入端IE(先端)に相当する。結び目4aは、糸4が留置部材IMから抜け落ちることを防止する。柔軟体の端部E1及び端部E2は、糸4の後端(基端)に相当する。
【0032】
また、糸4の結び目4a以外の部分は、一本の細長い柔軟体を結び目部分で折り返した2本の長尺部分(第1の部分P1、第2の部分P2)となっている。第1の部分P1及び第2の部分P2は、結び目4aから後方に延出する。ここでの「後方」は、糸4の挿入端側から後端側に向かう方向である。第1の部分P1及び第2の部分P2は、少なくともその一部が患者内に挿入される部分である。すなわち、糸4は、結び目部分で柔軟体を折り返して形成される挿入部(第1の部分P1及び第2の部分P2)を有するといえる。
【0033】
また、
図4に示すように、糸4の表面には複数の突起4bが形成されている。突起4bは、糸4の長手方向において所定の高さだけ突出している。患者内に糸4を留置する場合、突起4bは、皮下脂肪層に引っ掛かり、皮膚を引き上げる。また、留置した状態を保つことで、糸4の周囲にコラーゲン組織が生成され、皮膚の引き上げ効果が長期に渡って継続できる。突起4bの数、位置、形状、傾き角度、突出の方向等は任意に設計することが可能である。なお、本実施形態に係る糸4において、突起4bは必須の構成ではない。
【0034】
このように、柔軟体の途中部分に設けた結び目4aを挿入端とすることにより、皮下脂肪層に挿入された状態で糸4に力が加わっても結び目4aが解けることが無い。従って、十分なリフトアップの効果を得ることができる。また、柔軟体の端部を結んで結び目を形成する場合に比べ、結び目の大きさのバラつきを抑えることができる。
【0035】
なお、
図14に示したような従来の糸Lにおいて、結び目を解け難くするためにサイズを大きくしたり、複数の結び目を作ることも考えられる。しかし、大きい結び目や複数の結び目は、糸を患者に挿入した場合の異物感(結び目に起因する異物感)が大きくなる。一方、上述の通り、本実施形態に係る結び目4aは糸4を引っ張っても解けることがないため、サイズを小さくでき、且つその数も一つだけでよい。従って、本実施形態に係る糸4によれば、結び目による異物感を与えることが少ない。
【0036】
更に、本実施形態に係る糸4における結び目4aは、柔軟体の途中部分で結節を作るだけでよいため、
図14に示したような従来の糸Lのようにその端部を結んで結び目を作る場合に比べ、加工作業が容易となる。
【0037】
<美容整形用器具の構成>
図5に示すように、美容整形用器具100は、糸4、及び留置部材IMを有する。留置部材IMは、糸4の結び目4a側に設けられる。留置部材IMは、糸4と共に患者内に留置される。
【0038】
本実施形態に係る留置部材IMは、略円錐形状の部材である。留置部材IMは、糸4の結び目4a以外の部分が貫通する貫通孔PHが形成されている(
図5参照。
図5では、貫通している糸4を破線で示している)。留置部材IMの狭端側(先端側)と広端側(後端側)で貫通孔PHの径は異なっていてよいが、狭端側の孔径は、少なくとも結び目4aが抜けない大きさ(結び目よりも細径)に形成されている。なお、留置部材IMの形状は円錐形状に限られない。留置部材IMは、たとえば、円柱形状であってもよい。
【0039】
留置部材IMは、少なくとも生体適合性のある材料で形成されている。留置部材IMは、生分解性ポリマーのような生体内で分解・吸収される材料により形成されていることが望ましい。この場合、留置部材IMを体内から取り出す作業が不要となるため、患者負担が少ない。
【0040】
このような美容整形用器具100によれば、皮下脂肪層に挿入された状態で糸4に力が加わっても結び目4aが解けることが無い。よって、糸4は留置部材IMから抜け難くなっている。従って、十分なリフトアップの効果を得ることができる。
【0041】
==第2実施形態==
次に、
図6A〜
図8Dを参照して、第2実施形態に係る美容整形用器具200の構成について説明を行う。本実施形態では、より好ましい留置部材(シリンダ)の構成について説明を行う。なお、本実施形態において用いる糸4は第1実施形態と同様である。
【0042】
第1実施形態で述べたように、糸を患者に挿入した場合の異物感を減らすためには、結び目は小さい方が望ましい。しかし、結び目が小さい場合には留置部材から抜け落ち易くなる。また、第1実施形態の美容整形用器具100は、結び目4aと留置部材IMが別体となっているため、異物感が大きくなる場合がありうる。
【0043】
<シリンダの構成>
図6A〜
図6Gは、本実施形態に係るシリンダCy1の構成を示す図である。
図6Aは、シリンダCy1の斜視図である。
図6Bは、シリンダCy1の正面図である。
図6Cは、シリンダCy1の上面図である。
図6Dは、シリンダCy1の右側面図である。
図6Eは、シリンダCy1の背面図である。
図6Fは、
図6CのA−A断面を示す図である。
図6Gは、
図6DのB−B断面を示す図である。シリンダCy1は「留置部材」の一例である。
【0044】
シリンダCy1は、糸4の結び目4a側(挿入端側)に設けられる。シリンダCy1は、糸4と共に患者内に留置される。
【0045】
本実施形態に係るシリンダCy1は、略円柱形状の部材である。シリンダCy1は、少なくとも生体適合性のある材料で形成されている。シリンダCy1は、生分解性ポリマーのような生体内で分解・吸収される材料により形成されていることが望ましい。この場合、シリンダCy1を体内から取り出す作業が不要となるため、患者負担が少ない。
【0046】
また、
図6F及び
図6Gに示すように、シリンダCy1の内部には、シリンダCy1の先端側で開口(開口部10a)し、結び目4aを収容する収容部10が設けられている。収容部10は、その後端側で貫通部20(後述)と連通している。収容部10と貫通部20(後述)とが連通する箇所は、テーパ―状に形成されている。なお、収容した結び目4aが収容部10から抜けるのを防止するため、収容部10の幅は結び目4aの大きさよりも少し狭くなっていることが望ましい(結び目4aを押し込むことができる程度の幅)。この場合、結び目4aは収容部10に対して固定される(収容部10内で結び目4aが動かない)。
【0047】
また、シリンダCy1の内部には、収容部10と連通される貫通部20が設けられている。貫通部20は、収容部10よりも細径に形成されている。また、貫通部30の径は結び目4aの大きさよりも細径であり、且つ糸4の結び目4a以外の部分(第1の部分P1、第2の部分P2)が貫通できる大きさとなっている。
【0048】
更に、シリンダCy1の内部には、シリンダCy1の後端側で開口(開口部30a)し、貫通部20と連通される空洞部30が設けられている。空洞部30の幅は、本実施形態のように収容部10と同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、本発明において、空洞部30は必須の構成ではない。たとえば、貫通部20がシリンダCy1の後端側まで貫通している構成であってもよい。
【0049】
また、
図6A等に示すように、本実施形態に係るシリンダCy1は、その後端側の外側面に2つの突出部40が形成されている。突出部40は、空洞部30を挟んで対向する位置に設けられている(
図6B及び
図6E参照)。突出部40の後端は、シリンダCy1の後端よりも後方に延出している。ここでの「後方」は、シリンダCy1の先端側からシリンダCy1の後端側に向かう方向である。シリンダCy1の本体部分と突出部40とは一体成型で作製してもよいし、別体で作製したものを接着材等で接着することでもよい。
【0050】
図6C等に示すように、本実施形態に係る突出部40は、その一部分が他の部分よりも肉薄に形成されている。具体例として、突出部40の中央部分の厚みを両端側の厚みよりも肉薄に形成する。
【0051】
なお、突出部40の形状は、皮下脂肪層に引っ掛かる形状であれば本実施形態の例に限られない。たとえば、突出部40に肉薄部分を設けなくともよい。また、突出部40は少なくとも一つあればよい。
【0052】
<美容整形用器具の構成>
次に、
図7〜
図8Dを参照して本実施形態に係る美容整形用器具200の例を示す。
図7は、糸4をシリンダCy1に挿入する途中の状態を示した図である。
図8Aは、美容整形用器具200の斜視図である。
図8Bは、美容整形用器具200の背面斜視図である。
図8Cは、美容整形器具の正面図である。
図8Dは、
図8CのC−C断面を示す図である。なお、
図7、
図8A、
図8B及び
図8Dでは、突起4b及び糸4の後端側の一部の記載を省略している。
【0053】
本実施形態に係る美容整形用器具200は、
図7に示すように、糸4の後端側をシリンダCy1の先端側(開口部10a)から挿入することにより作製される(
図7において挿入方向を矢印で示す)。
【0054】
上述の通り、貫通部20の径は結び目4aの大きさよりも細径であるため、結び目4aは貫通部20を通過できない。従って、
図8A等に示すように結び目4aは収容部10内に収まる。
【0055】
収容部10内に結び目4aを収めることで患者に美容整形用器具200を挿入する際、糸4とシリンダCy1を一体として挿入することができる。また、結び目4aは収容部10内に収められているため、患者内に美容整形用器具200を留置した場合であっても結び目4aによる異物感を与えることは無い。
【0056】
ところで、シリンダのサイズを大きくすることにより、皮下脂肪層に対する引っ掛かりを強めることができる。一方で、シリンダを挿入する際には上述のカテーテルを用いるところ、サイズが大きいシリンダを通すためには、太径のカテーテルを用いなければならない。従って、カテーテルを患者の皮下脂肪層に挿入する際の患者の苦痛が大きくなる。
【0057】
ここで、本実施形態のようにシリンダCy1が突出部40を有する場合、通常はカテーテル1の径を突出部40も含めたサイズで設定しなければならない。一方、本実施形態に係るシリンダCy1には、空洞部30が形成されている。よって、突出部40に外側(たとえば、
図6Aの上下方向)から力を加えた場合、突出部40は空洞部30側に変形することが可能となる。つまり、シリンダCy1がカテーテル1内に押し込まれる際には、突出部40は空洞部30側に変形してシリンダCy1とほぼ同等の径となる。よって、カテーテル1の径はシリンダCy1の本体部分のサイズに合わせて設定すればよい。また、シリンダCy1の突出部40は、皮下脂肪層に留置された状態では元の形に戻るため、皮下脂肪層に対して引っ掛かりを強めることができる。
【0058】
なお、突出部40に肉薄部分を設けることにより、外力によってより変形し易くなる。たとえば、本実施形態に係る突出部40の場合、その中央部分が肉薄となっているため、左右方向からの力が加わった場合に変形し易くなる。従って、シリンダCy1のカテーテル1への挿入がより容易となる。
【0059】
このように美容整形用器具200によれば、皮下脂肪層に挿入された状態で力が加わっても糸4の結び目4aが解けることが無い。また、シリンダCy1内部に収容部10及び貫通部20を設けることにより、結び目4aが抜け難くなる。すなわち、本実施形態に係る美容整形用器具200によれば、十分なリフトアップの効果を得ることができる。また、シリンダCy1の収容部10に結び目4aを収容することで結び目4aをシリンダCy1と一体にできる。従って美容整形用器具200を患者に挿入する際や留置する場合、患者に与える異物感を少なくすることができる。
【0060】
==手技==
次に、
図9A〜
図9Eを参照して、カテーテル1を用いて美容整形用器具200を患者内に留置する手技について説明する。なお、美容整形用器具100も同様の手法により患者内に留置することができる。
図9A〜
図9Eは患者の顔面及びカテーテル1等を模式的に示したものであり、患者の顔面に対するカテーテル1等の実際の大きさは必ずしもこのサイズではない。
図9A〜
図9Eにおいて、カテーテル1等のうち、患者の皮下にある部分は破線で示す。また、
図9A〜
図9Eでは突起4bの記載を省略している。
【0061】
まず、術者は、患者の皮下脂肪層にカテーテル1を挿入する(
図9A)。カテーテル1を挿入する位置や方向は予め施されたマーキングに基づいて決定される。
【0062】
美容整形用器具200の先端(シリンダCy1)を留置する位置までカテーテル1を押し込んだ後、術者は、穿刺部2のみを引き抜く(
図9B)。この場合、外筒部3のみ(筒部3Aのみ)が皮下に残ることになる。
【0063】
次に、術者はプッシュバー5を用い、外筒部3内に美容整形用器具200を挿入し、美容整形用器具200の先端(シリンダCy1)を留置する位置まで押し込む(
図9C)。プッシュバー5は、シリンダCy1を押し込むようにして、美容整形用器具200を挿入する。美容整形用器具200は、その先端に引っ掛かりが強い部分(シリンダCy1)が設けられているため、目的の位置に留置できる。
【0064】
次に、術者は、カテーテル1を抜く(
図9D)。このとき、美容整形用器具200の先端(シリンダCy1)は皮下脂肪層に留置されているため、美容整形用器具200のみが皮下に残る。一方、糸4の後端は皮膚から外側に出ている。
【0065】
その後、術者は外側に出ている糸4を引っ張る。これにより、糸4の表面にある突起4bが周りの皮下脂肪層に引っ掛かり、リフトアップの効果を更に高める。
【0066】
最後に、術者は皮膚から出ている糸4をカットする(
図9E)。留置された美容整形用器具200は、シリンダCy1及び糸4の突起4bが皮下脂肪層に引っ掛かった状態となっているため、確実にリフトアップを行うことができる。
【0067】
このように、本発明に係る美容整形用器具を用いた新たな手技では、患者の所望の部位に美容整形用器具を留置させることができるため、しわやたるみを解消できる。また、この手技では、一つの美容整形用器具200を皮下に挿入するために一つの穴を設けるだけでよい。
【0068】
なお、生分解性の材料で形成された美容整形用器具は、約1年程度で体内から消滅するが、それまでにシリンダCy1や糸4の周辺に集積したコラーゲン組織によって、皮膚のリフトアップが継続される。
【0069】
また、上記では、患者の頬に美容整形用器具200を一本入れる例を説明したが、美容整形用器具200を挿入する部分は頬に限られない。また、美容整形用器具200を数本入れても構わない。
【0070】
==第3実施形態==
次に、
図10〜11Bを参照して、第3実施形態に係る美容整形用器具300の構成について説明を行う。本実施形態では、柔軟体を折り返さない糸を用いた美容整形用器具の構成について説明を行う。なお、他の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0071】
<美容整形用糸の構成>
図10を参照して、本実施形態に係る美容整形用糸5(以下、「糸5」という場合がある)の構成について述べる。
図10は、糸5の外観図である。
【0072】
糸5は、留置部材と共にカテーテル1を介して患者の体内(患者の皮下脂肪層内)に挿入・留置される。糸5は、細長い一本の柔軟体により形成されている。糸5を形成する材料は糸4と同様である。
【0073】
糸5は、柔軟体の途中部分に形成された結び目5aを有する。「途中部分」は、柔軟体の端部E1と端部E2の間に位置する部分である。結び目5aは、柔軟体を結ぶことによって形成される結節に相当する。結び目5aは、糸5が留置部材から抜け落ちることを防止する。また、糸5が体内に挿入される場合には、端部E1側から挿入される。すなわち、柔軟体の端部E1は「先端」に相当し、端部E2は「後端」に相当する。
【0074】
また、
図10に示すように、糸5の表面には複数の突起5bが形成されている。突起5bの詳細は、突起4bと同様である。なお、本実施形態に係る糸5において、突起5bは必須の構成ではない。
【0075】
このように、柔軟体の途中部分に結び目5aを設けることにより、皮下脂肪層に挿入された状態で糸5に力が加わっても結び目5aが解けることが無い。従って、十分なリフトアップの効果を得ることができる。また、柔軟体の端部を結んで結び目を形成する場合に比べ、結び目の大きさのバラつきを抑えることができる。
【0076】
<美容整形用器具の構成>
図11Aは、美容整形用器具300の斜視図である。
図11Bは、
図11AのD−D断面を示す図である。なお、
図11A及び
図11Bでは、突起5b、糸5の先端側及び後端側の記載を省略している。
【0077】
本実施形態に係る留置部材としては、第2実施形態で説明したシリンダCy1を用いることができる。すなわち、シリンダCy1の内部には、シリンダCy1の先端側で開口(開口部10a)し、結び目5aを収容する収容部10が設けられている。収容部10は、その後端側で貫通部20(後述)と連通している。収容部10と貫通部20(後述)とが連通する箇所は、テーパ―状に形成されている。なお、収容した結び目5aが収容部10から抜けるのを防止するため、収容部10の幅は結び目5aの大きさよりも少し狭くなっていることが望ましい(結び目5aを押し込むことができる程度の幅)。この場合、結び目5aは収容部10に対して固定される(収容部10内で結び目5aが動かない)。
【0078】
また、シリンダCy1の内部には、収容部10と連通される貫通部20が設けられている。貫通部20は、収容部10よりも細径に形成されている。また、貫通部30の径は結び目5aの大きさよりも細径であり、且つ糸5の結び目5a以外の部分が貫通できる大きさとなっている。すなわち、結び目5aは貫通部20を通過できない。従って、
図11A等に示すように結び目5aは収容部10内に収まる。
【0079】
収容部10内に結び目5aを収めることで患者に美容整形用器具300を挿入する際、糸5とシリンダCy1を一体として挿入することができる。また、結び目5aは収容部10内に収められているため、患者内に美容整形用器具300を留置した場合であっても結び目5aによる異物感を与えることは無い。更に、糸4と糸5で同じ長さの柔軟体を用いる場合、糸5の方が長くなるため、より広範囲でリフトップの効果を得ることができる。なお、上記実施形態では、結び目5a及び留置部材が1つずつの例について述べたがこれに限られない。たとえば、結び目5a及び留置部材を複数設けることでもよい。
【0080】
==シリンダの変形例==
図12Aは本変形例に係るシリンダCy2の斜視図であり、
図12Bは本変形例に係るシリンダCy2の背面図である。本変形例に係るシリンダCy2において、突出部40は、空洞部30を挟んで対向する位置に4つ設けられている。このように複数の突出部40を設けることにより皮下脂肪層への引っ掛かりをより強くすることができる。シリンダCy2は「留置部材」の一例である。
【0081】
また、シリンダの形状は円柱形状に限られない。
図13Aは本変形例に係るシリンダCy3の斜視図であり、
図13Bは本変形例に係るシリンダCy3の断面図(
図13AのE−E断面)である。本変形例に係るシリンダCy3は、第1実施形態の留置部材IMと同様、略円錐形状に形成されている。またその内部には収容部10が形成されている。収容部10は、シリンダCy3の狭端側で開口している。また、シリンダCy3の内部には、貫通部20及び空洞部30が形成されている。シリンダCy3は「留置部材」の一例である。
【0082】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。それらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。