特許第6709654号(P6709654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6709654車両用灯具、および当該車両用灯具を備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709654
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】車両用灯具、および当該車両用灯具を備えた車両
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/143 20180101AFI20200608BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20200608BHJP
   F21S 41/40 20180101ALI20200608BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20200608BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20200608BHJP
   F21W 102/17 20180101ALN20200608BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20200608BHJP
   F21Y 105/14 20160101ALN20200608BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200608BHJP
【FI】
   F21S41/143
   F21S41/275
   F21S41/40
   F21S41/663
   F21W102:14
   F21W102:17
   F21W103:60
   F21Y105:14
   F21Y115:10
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-62064(P2016-62064)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-174736(P2017-174736A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−011039(JP,A)
【文献】 特開2007−227228(JP,A)
【文献】 特開2009−283408(JP,A)
【文献】 特開2008−262755(JP,A)
【文献】 特開2012−059409(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011087309(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0194816(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0226142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/143
F21S 41/275
F21S 41/40
F21S 41/663
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの発光素子を含む前方照射用の第一の光源群と、
前記少なくとも一つの発光素子とは別の少なくとも一つの発光素子を含む路面描画用の第二の光源群と、
前記第一の光源群および前記第二の光源群のそれぞれから出射された光を透過させる単一の投影レンズと、
前記第一の光源群からの光と前記第二の光源群からの光が前記投影レンズに入射する前に交差しないように、前記第一および第二の光源群と前記投影レンズとの間に配置された遮光部材と、を備え、
前記投影レンズは、前記第一の光源群からの光を透過する第一の領域と、前記第二の光源群からの光を透過する第二の領域とを備え
前記第一の光源群は、前記投影レンズの光軸よりも下側において、その発光面を灯具前方に向けて配置され、
前記第二の光源群は、前記投影レンズの光軸よりも上側において、その発光面を灯具前方に向けて配置されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記投影レンズには、前記第二の光源群の光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させる第一の拡散ステップと、前記第一の光源群の光源像を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく延伸させる第二の拡散ステップとが形成されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第一の拡散ステップは、前記第一の光源群の光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させるステップを含む、請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投影レンズの入射面に前記第一の拡散ステップが形成されており、
前記投影レンズの出射面において、前記第一の領域に、前記第二の拡散ステップが形成されている、請求項2または3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記遮光部材は、前記第一の光源群側の第一の面と前記第二の光源群側の第二の面とを備え、
前記第一の面および前記第二の面のいずれか一方あるいは両方に高反射処理が施されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記遮光部材は、前記第一の光源群側の第一の面と前記第二の光源群側の第二の面とを備え、
前記第一の面および前記第二の面のいずれか一方あるいは両方に低反射処理が施されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第一の光源群と前記投影レンズとの間で前記第一の光源群に近接して設けられた付加光学系をさらに備え、
前記付加光学系は、前記第一の光源群の光源像を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく延伸させ、
前記投影レンズには、前記第一の光源群および前記第二の光源群の各光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させる第一の拡散ステップが形成されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第一の光源群は、複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子は、灯具前後方向において前記投影レンズの後方焦点よりも後方に位置している、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項9】
車両の前部の左右の一方に請求項1からのいずれか一項に記載の車両用灯具を搭載し、
前記左右の他方に前方照射用灯具を搭載している、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一のユニットで車両前方照射用の配光パターンに加えて路面描画用の配光パターンを照射可能な車両用灯具および当該車両用灯具を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両の進行軌跡を予測する軌跡予測部および歩行者等の低速移動体を検知する低速移動体検知部を備え、自車両の進行軌跡と低速移動体の移動軌跡の交差位置あるいは交差位置近傍を中心とする所定範囲に亘って所定の照射形状(例えば、縦長の線からなる停止線図形)となるように、レーザ投光器から出射されるレーザ光を路面に描画する車両用走行支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−161977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、レーザ光を用いて所定のマークを路面描画する装置は、通常の前方照射用の灯具とは別体として搭載されるため、前照灯などの灯具ユニット内のスペースの確保が必要であった。
【0005】
本発明の目的は、単一のユニットで車両前方照射用の配光パターンに加えて路面描画用の配光パターンを形成可能な車両用灯具および当該車両用灯具を備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用灯具は、
少なくとも一つの発光素子を含む前方照射用の第一の光源群と、
前記少なくとも一つの発光素子とは別の少なくとも一つの発光素子を含む路面描画用の第二の光源群と、
前記第一の光源群および前記第二の光源群のそれぞれから出射された光を透過させる単一の投影レンズと、
前記第一の光源群からの光と前記第二の光源群からの光が前記投影レンズに入射する前に交差しないように、前記第一および第二の光源群と前記投影レンズとの間に配置された遮光部材と、を備え、
前記投影レンズは、前記第一の光源群からの光が透過する第一の領域と、前記第二の光源群からの光が透過する第二の領域とを備えている。
【0007】
この構成によれば、単一のユニットで車両前方照射用の配光パターンに加えて路面描画用の配光パターンを形成できるため、前方照射と路面描画の機能を両立させながら省スペース化を図ることができる。
【0008】
前記投影レンズには、前記第二の光源群の光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させる第一の拡散ステップと、前記第一の光源群の光源像を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく延伸させる第二の拡散ステップとが形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、投影レンズに第一の拡散ステップおよび第二の拡散ステップを形成することで、路面描画用の配光パターンとして車両の左右方向よりも上下方向に大きく延伸された配光パターンを形成しつつ、前方照射用の配光パターンとして車両の上下方向よりも左右方向に大きく延伸された配光パターンを形成することができる。
【0010】
前記第一の拡散ステップは、前記第一の光源群の光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させるステップを含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、前方照射用の配光パターンとして車両の左右方向と上下方向とにほぼ等しい平行光となるように延伸された配光パターンを形成することができる。
【0012】
前記投影レンズの入射面に前記第一の拡散ステップが形成されており、
前記投影レンズの出射面において、前記第一の領域に、前記第二の拡散ステップが形成されていることが好ましい。
【0013】
投影レンズの領域ごとに光学特性を変えることで、簡便に所望の配光パターンを得ることができる。
【0014】
前記遮光部材は、前記第一の光源群側の第一の面と前記第二の光源群側の第二の面とを備え、
前記第一の面および前記第二の面のいずれか一方あるいは両方に高反射処理が施されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、遮光部材で反射された光も配光に利用することができるため、第一の光源群および第二の光源群の各光源像から形成される各配光パターンの照射範囲を広げることができる。
【0016】
前記遮光部材は、前記第一の光源群側の第一の面と前記第二の光源群側の第二の面とを備え、
前記第一の面および前記第二の面のいずれか一方あるいは両方に低反射処理が施されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第一の光源群からの光が投影レンズの第二の領域に入ってしまったり、第二の光源群からの光が投影レンズの第一の領域に入ってしまったりすることがなくなるため、意図しない配光を防止することができる。
【0018】
前記第一の光源群と前記投影レンズとの間で前記第一の光源群に近接して設けられた付加光学系をさらに備え、
前記付加光学系は、前記第一の光源群の光源像を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく延伸させ、
前記投影レンズには、前記第一の光源群および前記第二の光源群の各光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させる第一の拡散ステップが形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、付加光学系と、投影レンズのステップとの組み合わせにより、単一のユニットで前方照射用の配光パターンと路面描画用の配光パターンとを形成することができる。
【0020】
また、本発明に係る車両用灯具は、
少なくとも一つの発光素子を含む前方照射用の第一の光源群と、
前記少なくとも一つの発光素子とは別の少なくとも一つの発光素子を含む路面描画用の第二の光源群と、
前記第一の光源群および前記第二の光源群のそれぞれから出射された光を透過させる単一の投影レンズと、
前記第一の光源群と前記投影レンズとの間で前記第一の光源群に近接して設けられた第一の付加光学系と、を備え、
前記投影レンズは、前記第一の光源群および前記第二の光源群の各光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させ、
前記第一の付加光学系は、前記第一の光源群の光源像を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく延伸させる。
【0021】
また、本発明に係る車両用灯具は、
少なくとも一つの発光素子を含む前方照射用の第一の光源群と、
前記少なくとも一つの発光素子とは別の少なくとも一つの発光素子を含む路面描画用の第二の光源群と、
前記第一の光源群および前記第二の光源群のそれぞれから出射された光を透過させる単一の投影レンズと、
前記第一の光源群と前記投影レンズとの間で前記第一の光源群に近接して設けられた第一の付加光学系と、
前記第二の光源群と前記投影レンズとの間で前記第二の光源群に近接して設けられた第二の付加光学系と、を備え、
前記第一の付加光学系は、前記第一の光源群の光源像を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく延伸させ、
前記第二の付加光学系は、前記第二の光源群の光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させる。
【0022】
これらの構成によれば、単一のユニットで、上下方向および左右方向にほぼ等しい幅を有する前方照射用の配光パターンに加えて、左右方向よりも上下方向の幅がより大きい路面描画用の配光パターンを形成可能となるため、前方照射と路面描画の機能を両立させながら省スペース化を図ることができる。
【0023】
前記第一の付加光学系は、前記第一の光源群と対向する入射面と前記投影レンズと対向する出射面とを備えた付加レンズから構成され、前記出射面に前記第一の光源群の光源像を延伸させる第三の拡散ステップが形成されていることが好ましい。
【0024】
前記第二の付加光学系は、前記第二の光源群と対向する入射面と前記投影レンズと対向する出射面とを備えた付加レンズから構成され、前記出射面に前記第二の光源群の光源像を延伸させる第四の拡散ステップが形成されていることが好ましい。
【0025】
前記第一の付加光学系は、前記第一の光源群と対向する面と前記投影レンズと対向する面とにそれぞれ開口部を備えたリフレクタから構成され、
前記投影レンズと対向する面の開口部は、前記灯具左右方向の幅が前記灯具上下方向の幅よりも長いことが好ましい。
【0026】
前記第二の付加光学系は、前記第二の光源群と対向する面と前記投影レンズと対向する面とにそれぞれ開口部を備えたリフレクタから構成され、
前記投影レンズと対向する面の開口部は、前記灯具上下方向の幅が前記灯具左右方向の幅よりも長いことが好ましい。
【0027】
前記第一の付加光学系は、前記第一の光源群と対向する入射面および前記投影レンズと対向する出射面とを備えた導光体から構成され、
前記出射面は、前記灯具左右方向の幅が前記灯具上下方向の幅よりも長いことが好ましい。
【0028】
前記第二の付加光学系は、前記第二の光源群と対向する入射面および前記投影レンズと対向する出射面とを備えた導光体から構成され、
前記出射面は、前記灯具上下方向の幅が前記灯具左右方向の幅よりも長いことが好ましい。
【0029】
前記第一の付加光学系は、シリンドリカルレンズから構成され、
前記シリンドリカルレンズは、その焦線方向が前記灯具左右方向に平行に配置されていることが好ましい。
【0030】
前記第二の付加光学系は、シリンドリカルレンズから構成され、
前記シリンドリカルレンズは、その焦線方向が前記灯具上下方向に平行に配置されていることが好ましい。
【0031】
これらの構成によれば、簡便な構成で、前方照射用の配光パターンと路面描画用の配光パターンとを得ることができる。
【0032】
前記第一の光源群は、複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子は、灯具前後方向において前記投影レンズの後方焦点よりも後方に位置していることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、第一の光源群の各発光素子により形成される各配光パターンの一部が互いにオーバーラップして照射されるため、各配光パターン間の非照射領域の発生を抑えることができる。
【0034】
また、本発明に係る車両は、
車両前部の左右の一方に上記に記載の車両用灯具を搭載し、
前記車両前部の左右の他方に前方照射用灯具を搭載している。
【0035】
車両前方の左右に搭載された一対の灯具のうち、片方の灯具には前方照射用および路面描画用の2つの機能を備えた多機能型灯具ユニットを搭載し、他方の灯具には前方照射用の単機能型ユニットを搭載することで、前方照射と路面描画の両立を図りつつ、前方照射用の配光の光度を確保することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、単一のユニットで車両前方照射用の配光パターンに加えて路面描画用の配光パターンを形成可能な車両用灯具および当該車両用灯具を備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図2】第一実施形態に係る光源ユニットを投影レンズ側から見た正面図である。
図3】第一実施形態に係る投影レンズのA−A線断面図である。
図4】第一実施形態に係る投影レンズ、遮光部材および光源の配置例を示す斜視図である。
図5】第一実施形態に係る車両用灯具において光源から出射される光の光路を示す鉛直断面図である。
図6図5のB−B線断面図である。
図7図5のC−C線断面図である。
図8】第一実施形態の第一の光源から出射された光および第二の光源群から出射された光により形成される各配光パターンの一例を示す図である。
図9】第一実施形態に係る車両用灯具の車両への搭載例を示す図である。
図10】(a)は、遮光部材に高反射処理がなされていない場合の第一の光源からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図であり、(b)は、遮光部材に高反射処理がなされている場合の第一の光源からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図である。
図11】(a)は、遮光部材に高反射処理がなされていない場合の第二の光源からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図であり、(b)は、遮光部材に高反射処理がなされている場合の第二の光源からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図である。
図12】第一実施形態の変形例に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図13】本発明の第二実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図14】第二実施形態に係る投影レンズの正面斜視図である。
図15図13のD−D線断面図である。
図16】(a)は、第二実施形態の別の変形例に係る車両用灯具の一部構成を示す鉛直方向断面図であり、(b)は、(a)に示すリフレクタの斜視図である。
図17】(a)は、第二実施形態のさらに別の変形例に係る車両用灯具の一部構成を示す鉛直方向断面図であり、(b)は、(a)に示す導光体の斜視図である。
図18】第二実施形態のさらに別の変形例に係る車両用灯具の一部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図であり、図2は、第一実施形態に係る光源ユニットを投影レンズ側から見た正面図である。
本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯の少なくとも一方に搭載された路面描画用の灯具ユニット(路面描画装置)である。図1には車両用灯具1として一方の前照灯に搭載された路面描画用灯具ユニットの構造を示す。
【0039】
図1に示すように、車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、光源ユニット10と、投影レンズ20と、遮光部材30と、が収容されている。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディ2に取り付けられる。
【0040】
図1および図2に示すように、光源ユニット10は、基板11と、基板11上に搭載された第一の光源群12および第二の光源群15とを備えている。第一の光源群12は、車両用灯具1の左右方向に沿って配列された複数(ここでは8個)のLEDチップ(発光素子の一例)から構成されている。また、第二の光源群15は、第一の光源群12の上部に配置された例えば1個のLEDチップ(発光素子の一例)から構成されている。なお、第一および第二の光源群12,15は、LEDチップ以外の半導体発光素子によって構成されていてもよい。また、第一および第二の光源群12,15を構成するLEDチップの数は、図示のものに限られない。図2に示すように、第一の光源群12および第二の光源群15を構成するLEDチップのそれぞれは、略正方形の発光面を有する。なお、各LEDチップが、例えば長方形など正方形以外の発光面を有していても良い。各LEDチップからの光によって形成される光源像は、車両左右方向の幅を1とすると、左右方向の幅に対する上下方向の幅のアスペクト比が例えば0.5以上1.5以下であることが好ましい。また、各LEDチップは、制御部40からの制御信号に応じて個別に点消灯が可能である。
【0041】
図1に示すように、投影レンズ20は、入射面20aと、凸状の出射面20bとを備えている。入射面20aは、第一の光源群12および第二の光源群15の発光面に対向して配置されており、出射面20bは、灯具前方に向けられている。投影レンズ20は、光軸Ax上の後方焦点fに直交する平面上に第一の光源群12および第二の光源群15を構成するLEDチップの発光面が位置するように配置される。なお、投影レンズ20の光軸Axは、投影レンズ20を透過した光が灯具前方の所定範囲の路面を照射するような方向に向けられていることが好ましい。
【0042】
投影レンズ20の入射面20aには、図1に示す鉛直方向断面視において、灯具上下方向に沿って並列されたシリンドリカル状の複数のステップS1(第一の拡散ステップの一例)が形成されている。一方、図3に示すように、投影レンズ20の出射面20bの下半部側には、水平方向断面視において、灯具左右方向に沿って並列されたシリンドリカル状の複数のステップS2(第二の拡散ステップの一例)が形成されている。なお、投影レンズ20に形成されるステップは、シリンドリカル状のものに限られず、接線連続形状のステップ(接線連続性を有する凹凸形状)や曲率連続形状のステップ(曲率連続性を有する凹凸形状)であってもよい。また、ステップは曲面に限定されず、三角形状等でもよい。
【0043】
図1および図4に示すように、遮光部材30は、光源ユニット10と投影レンズ20との間に配置された平板板状の部材である。遮光部材30は、第一の光源群12からの光と第二の光源群15からの光が投影レンズ20に入射する前に交差しないような位置に設けられている。すなわち、図1に示す鉛直方向断面視において、遮光部材30は、複数のLEDチップからなる第一の光源群12の並列幅よりも一定以上長い幅を有し、第一の光源群12と第二の光源群15との間の領域から、投影レンズ20の入射面20aの近傍まで延出するように配置されている。遮光部材30の下面31および上面32には、艶消しの黒色塗装などが行われて低反射処理が施されている。これにより、第一の光源群12および第二の光源群15からの光が遮光部材30の上下面31,32でそれぞれ吸収される。
【0044】
第一の光源群12および第二の光源群15を構成する各LEDチップの点消灯や、各LEDチップからの光の出射強度調節、点滅速度調節は、制御部40によりなされる。これにより、制御部40は、各LEDチップの個別点消灯や、各LEDチップの光度や点滅速度を変化させることができる。制御部40は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUや記憶部などの素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、制御部40は、図1では灯室3の外部に設けられているが、灯室3内に設けられてもよい。制御部40は、図示しないランプスイッチ等からの信号を受信し、受信した信号に応じて、各LEDチップに各種の制御信号を送信する。
【0045】
図5に示すように、第一の光源群12の各LEDチップから出射された光は、遮光部材30の下面31よりも下側の領域を通過して、投影レンズ20の入射面20aから入射され、出射面20bから出射される。このとき、第一の光源群12から光軸Axに平行あるいは光軸Axに対して下方へ向けて出射された光Lは、投影レンズ20の入射面20aの下半部の領域に入射する。投影レンズ20の入射面20aには、灯具上下方向に沿って並列されたシリンドリカルステップS1が形成されているため、第一の光源群12の光源像は、当該シリンドリカルステップS1により光軸Axに直交する灯具上下方向の平面内において、上下方向に延伸された像として出射面20bから灯具前方に照射される。一方、図6に示すように、投影レンズ20の出射面20bの下半部の領域には左右方向に沿って並列されたシリンドリカルステップS2が形成されているため、第一の光源群12の各LEDチップの光源像は、光軸Axを含む灯具左右方向の平面内において、左右方向に延伸された像として出射面20bから灯具前方に照射される。このように、第一の光源群12の各LEDチップの光源像は、投影レンズ20を透過することで、上下方向および左右方向のどちらにも延伸された光源像として灯具前方に照射される。なお、第一の光源群12から光軸Axに対して上方へ向けて出射された光Lは、遮光部材30の下面31により吸収されるため、投影レンズ20に入射することは殆どない。
【0046】
図5に示すように、第二の光源群15から出射された光Lは、遮光部材30の上面32よりも上側の領域を通過して、投影レンズ20の入射面20aから入射され、出射面20bから出射される。このとき、第二の光源群15から光軸Axに平行あるいは光軸Axに対して上方へ向けて出射された光Lは、投影レンズ20の入射面20aの上半部の領域に入射する。第二の光源群15の光源像は、投影レンズ20の入射面20aに形成されたシリンドリカルステップS1により、光軸Axに直交する灯具上下方向の平面内において、上下方向に延伸された像として出射面20bから灯具前方に照射される。一方、図7に示すように、投影レンズ20の出射面20bの上半部の領域にはシリンドリカルステップ等は形成されていないため、第二の光源群15の光源像は、光軸Axを含む灯具左右方向の平面内において延伸されることなく、略平行光として出射面20bから灯具前方に照射される。このように、第二の光源群15からの光源像は、左右方向には延伸されず上下方向のみに延伸された光源像として灯具前方に照射される。なお、第二の光源群15から光軸Axに対して下方へ向けて出射された光Lは、遮光部材30の上面32により吸収されるため、投影レンズ20に入射することは殆どない。
【0047】
このように、投影レンズ20は、第一の光源群12から出射されて入射面20aの下半部から入射した光Lを透過する第一の領域20Aと、第二の光源群15から出射されて入射面20aの上半部から入射した光Lを透過する第二の領域20Bとを備えている。投影レンズ20の下半部である第一の領域20Aにおいては、入射面20aに上下方向に並列されたシリンドリカルステップS1が形成され、出射面20bに左右方向に並列されたシリンドリカルステップS2が形成されている。一方、投影レンズ20の上半部である第二の領域20Bにおいては、入射面20aには上下方向に並列されたシリンドリカルステップS1が形成されているが、出射面20bにはステップは形成されていない。
【0048】
図8は、第一の光源群から出射された光および第二の光源群から出射された光により形成される各配光パターンの一例を示す図である。
上述の通り、第一の光源群12の各LEDチップからの光Lは、上下方向および左右方向のどちらにも拡散された光として灯具前方に照射される。すなわち、第一の光源群12の各LEDチップの光源像は、車両前方の仮想スクリーン上において略四角形の配光パターンPを形成する。第一の光源群12の各LEDチップは、車両用灯具1の左右方向に沿って複数配列されているため、すべてのLEDチップを点灯させることで、略四角形の配光パターンPが左右方向に複数並列された横長の配光パターンPh(例えば、ハイビーム配光パターン)を形成することができる。また、制御部40からの制御信号により第一の光源群12の各LEDチップを個別点消灯することで、図8に示すように、対向車VAが存在する領域のみを消灯させ、対向車VAに対するグレアを防止することができる。
【0049】
図5および図7に示すように、第二の光源群15からの光Lは、上下方向のみに拡散された光として灯具前方に照射される。すなわち、図8に示すように、第二の光源群15の光源像は、左右方向よりも上下方向により大きく延伸された長方形(線状)の配光パターンPrを形成可能である。線状配光パターンPrは、例えば、車両左右方向の幅を1とすると、左右方向の幅に対する前後方向の幅のアスペクト比が5以上である。線状配光パターンPrのアスペクト比は、左右方向の幅に対する前後方向の幅のアスペクト比が1:10以上であることが特に好ましい。これにより、例えば、線状配光パターンPrは、車両の10m前方から100m前方の範囲を照射可能である。上記の例よりもアスペクト比のより大きい縦長の線状配光パターンが必要な場合は、投影レンズ20による光源像の拡大率を変更させる方法の他に、光源像自体のアスペクト比を大きくすることでも対応可能である。例えば、第二の光源群15を構成するLEDチップからの光によって形成される光源像のアスペクト比を、車両左右方向の幅を1とした場合に、左右方向の幅に対する上下方向の幅のアスペクト比が例えば1.5〜5とすることも可能である。光源像自体のアスペクト比を変更させる方法としては、第二の光源群15のLEDチップの形状そのものが当該アスペクト比を実現するように変更しても良く、LEDチップを複数並列させて当該アスペクト比を実現してもよい。
なお、第二の光源群15を2つのLEDチップから構成し、2つのLEDチップにより2本の線状配光パターンPrを形成することで、図8に示すように、路面上に車両の車幅に沿った平行な2本のラインを描画することができる。また、車両の左右前照灯にそれぞれ車両用灯具1を搭載し、各灯具1により線状配光パターンPrを形成することで2本のラインを描画してもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態においては、車両用灯具1は、前方照射用の第一の光源群12と、路面描画用の第二の光源群15と、第一の光源群12および第二の光源群15のそれぞれから出射された光を透過させる単一の投影レンズ20と、第一の光源群12からの光Lと第二の光源群15からの光Lが投影レンズ20に入射する前に交差しないように、第一の光源群12および第二の光源群15と投影レンズ20との間に配置された遮光部材30と、を備えている。投影レンズ20は、第一の光源群12からの光Lが透過する第一の領域20Aと、第二の光源群15からの光Lが透過する第二の領域20Bとを備えている。そして、投影レンズ20の入射面20aには、第一の光源群12および第二の光源群15の各光源像(光L,L)を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸するように拡散させるシリンドリカルステップS1が形成されている。また、投影レンズ20の出射面20bにおいて、第一の領域20Aには、第一の光源群12の光源像(光L)を灯具上下方向よりも灯具左右方向により大きく拡散させるシリンドリカルステップS2が形成されている。この構成によれば、単一のユニットで前方照射用の配光パターンPhに加えて路面描画用の配光パターンPrを形成しているため、前方照射と路面描画の機能を両立させながらも省スペース化を図ることができる。また、第一の光源群12からの光Lと第二の光源群15からの光Lが投影レンズ20に入射する前に交差しないように、光源ユニット10と投影レンズ20との間に遮光部材30を配置しているため、第一の光源群12からの光が投影レンズ20の第二の領域20Bに入ってしまったり、第二の光源群15からの光が投影レンズ20の第一の領域20Aに入ってしまったりすることによる意図しない配光を防止することができる。
【0051】
図9は、本実施形態に係る車両用灯具の車両への搭載例を示す図である。
図9に示すように、車両Vは、その前方の左右に配置される一対の前照灯50L,50Rを備えている。そして、例えば、左側の前照灯50Lには、本実施形態に係るハイビーム配光用および路面描画用の両機能を備えた車両用灯具1と、ロービーム配光を形成するロービーム用灯具55とが搭載されている。一方、右側の前照灯50Rには、ロービーム用灯具55と、ハイビーム配光を形成するハイビーム用灯具57とが搭載されている。このように、左右の前照灯50L,50Rのいずれか一方にハイビーム用および路面描画用の機能を備えた多機能型の車両用灯具1を搭載することで、ハイビーム用灯具と路面描画用灯具を別個で設けていた従来例と比べて、前照灯50L,50Rの小型化を図ることができる。また、車両用灯具1が搭載されていない側の前照灯(本例では、右側前照灯50R)には、ロービーム用灯具55およびハイビーム用灯具57を搭載することで、ハイビーム配光の要求光度を満たすことができる。
【0052】
なお、車両用灯具1の配光方向を左右に旋回させるスイブル機構を備え、スイブル機構が車両用灯具1を機械的に旋回させることで、配光方向(投影レンズ20の光軸Axの向き)を左右に移動させる構成としても良い。これにより、ハイビーム用配光パターンPhや線状配光パターンPrを形成する光の照射方向を任意に変更することができる。そのため、例えば歩行者等の対象物を検知して検知された対象物がいる方向に向けて線状配光パターンPrを路面描画することができる。
【0053】
図10および図11は、車両用灯具1の前方に設けた仮想スクリーンに投影した車両用灯具1が形成する配光パターン(の照度分布)を示す図である。図10(a)は、遮光部材に高反射処理がなされていない場合の第一の光源群からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図であり、図10(b)は、遮光部材に高反射処理がなされている場合の第一の光源群からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図である。図11(a)は、遮光部材に高反射処理がなされていない場合の第二の光源群からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図であり、図11(b)は、遮光部材に高反射処理がなされている場合の第二の光源群からの光による配光パターンの仮想スクリーン上での照度分布を示す図である。
上記の実施形態においては、遮光部材30の下面31および上面32に低反射処理が施されている構成としているが、この例に限られない。例えば、遮光部材30の下面31および上面32に、金属蒸着などが行われて高反射処理が施されていても良い。この場合、第一の光源群12から出射されて遮光部材30の下面31で反射された光は投影レンズ20の入射面20aにおける第一の領域20Aに入射される。これにより、図10(b)に示す高反射処理が施されていた場合のハイビーム用配光パターンは、図10(a)に示す高反射処理が施されていない場合のハイビーム用配光パターンと比べて、配光の範囲を下方向に広げることができる。また、第二の光源群15から出射されて遮光部材30の上面32で反射された光は投影レンズ20の入射面20aにおける第二の領域20Bに入射される。これにより、図11(b)に示す高反射処理が施されていた場合の路面描画用配光パターンは、図11(a)に示す高反射処理が施されていない場合の路面描画用配光パターンと比べて、配光の範囲を下方向に広げることができる。
なお、遮光部材30の下面31には、高反射処理を施す一方、上面32には低反射処理を施しても良く、その逆の構成としても良い。
【0054】
図12は、本実施形態の変形例に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図12に示すように、本変形例に係る車両用灯具1Aは、その光源ユニット10Aが、基板11Aと、第一の光源群12と、第二の光源群15とを備えている。そして、基板11Aは、灯具上下方向において、階段状に屈曲して形成されており、第一の面11A1と、第一の面11A1から灯具後方に屈曲するように連続的に設けられた第二の面11A2とを備えている。第一の面11A1には、第二の光源群15が搭載されており、第二の面11A2には第一の光源群12が搭載されている。このような車両用灯具1Aでは、第二の光源群15の発光面が投影レンズ20の光軸Axと後方焦点fとが直交する方向に沿って配置されている。そして、第一の光源群12の発光面は後方焦点fよりも後方に位置している。
【0055】
上記の第一実施形態においては、図8に示すように、左右方向に複数配列された第一の光源群12の各LEDチップからの光Lにより略四角形の配光パターンPを形成し、当該略四角形の配光パターンPが左右方向に複数並列されることでハイビーム用配光パターンPhが形成されている。そのため、各配光パターンPの境界に輝度の低い部分(いわゆる、暗すじ)が生じてしまうことがある。
これに対して、図12に示す本変形例のように、第一の光源群12を投影レンズ20の後方焦点fよりも後方に位置するように配置する構成によれば、焦点ずれによるぼかし効果により、略四角形の配光パターンPの外縁部が拡がり、各配光パターンPの境界を目立たせなくすることができる。
【0056】
上記の第一実施形態においては、投影レンズ20の入射面20aに、第一の光源群12および第二の光源群15の各光源像を灯具左右方向よりも灯具上下方向により大きく延伸させるシリンドリカルステップS1が形成されているが、この例に限られない。例えば、投影レンズ20の入射面20aには拡散ステップを設けず、投影レンズ20の出射面20bの第二の領域20Bにおいて、上下方向に並列されたシリンドリカルステップを形成しても良い。これにより、投影レンズ20の出射面20bは、第二の領域20Bである上半部に上下方向に並列されたシリンドリカルステップが形成され、第一の領域20Aである下半部に左右方向に並列されたステップS2が形成されることとなる。この場合、第二の光源群15の光源像は、第一実施形態と同様に、左右方向よりも上下方向により大きく延伸された配光パターンを形成する一方、第一の光源群12の各LEDチップの光源像は、第一の実施形態とは異なり、上下方向よりも左右方向により大きく延伸された配光パターンを形成する。
【0057】
(第二実施形態)
図13は、本発明の第二実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
本実施形態に係る車両用灯具100は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯の少なくとも一方に搭載された路面描画用の灯具ユニット(路面描画装置)である。図13には車両用灯具100として一方の前照灯に搭載された路面描画用灯具ユニットの構造を示し、ランプボディや透光カバーの図示は省略している。
【0058】
図13に示すように、車両用灯具100は、光源ユニット110と、投影レンズ120と、複数の付加レンズ130(第一の付加光学系の一例)とを備えている。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディに取り付けられる。光源ユニット110の構成は、第一実施形態の光源ユニット10の構成と同一のため、その詳細な説明は省略する。
【0059】
投影レンズ120は、入射面120aと、出射面120bとを備えている。投影レンズ120の入射面120aは、第一の光源群112および第二の光源群115を構成するLEDチップの発光面に対向して配置されており、出射面120bは、灯具前方に向けられている。投影レンズ120は、光軸Ax上の後方焦点fに直交する平面上に第一の光源群112および第二の光源群115のLEDチップの発光面が位置するように配置される。図14に示すように、投影レンズ120は、出射面120bが略楕円球面状に形成されている。すなわち、出射面120bの水平断面形状は、鉛直断面形状よりも曲率半径が小さい略楕円弧状の曲線で構成されている。
【0060】
図13および図15に示すように、複数の付加レンズ130は、第一の光源群112の各LEDチップと近接するように、左右方向に並列された平凸型の小型レンズである。付加レンズ130は、第一の光源群112の各LEDチップと対向して各LEDチップから出射される光が入射する入射面130aと、投影レンズ120の入射面12aと対向する出射面130bとを備えている。付加レンズ130の出射面130bには、図15に示す左右方向断面において、拡散ステップS3(第三の拡散ステップの一例)が形成されている。この拡散ステップS3は、図示は省略するが、例えば、左右方向に並列された複数のシリンドリカルステップである。
【0061】
図13に示すように、第二の光源群115から出射された光Lは、投影レンズ120の入射面120aに直接入射され、略楕円球面状の出射面120bから外部に出射される。このとき、投影レンズ120の出射面120bの水平断面形状は、鉛直断面形状よりも曲率半径が小さい略楕円弧状の曲線で構成されているため、投影レンズ120を透過した光Lは、当該光Lによる光源像が左右方向よりも上下方向により大きく延伸するように拡散される。すなわち、第二の光源群115の光源像は、略楕円状の投影レンズ120を透過することで、左右方向よりも上下方向により大きい配光パターン(例えば、図8の線状配光パターンPr)として灯具前方に照射される。
【0062】
一方、第一の光源群112の各LEDチップから出射された光Lは、付加レンズ130を透過して、投影レンズ120の入射面120aに入射される。このとき、付加レンズ130の鉛直方向断面においては、入射面130aにも出射面130bにも拡散ステップなどが無いため、第一の光源群112の各LEDチップから出射された光Lによって形成される光源像は、上下方向に延伸されることはない。一方、付加レンズ130の水平方向断面においては、出射面130bに左右方向に沿って並列されたシリンドリカルステップS3が形成されているため、付加レンズ130に入射した光Lは、その光Lによる光源像が出射面130bでシリンドリカルステップS3により左右方向に延伸するように拡散して出射される。すなわち、付加レンズ130を透過した光Lは、上下方向よりも左右方向により大きい光源像として、投影レンズ120の入射面120aに入射する。このとき、上述の通り、投影レンズ120の出射面120bは、縦長の楕円球面状を有しているため、投影レンズ120を透過した光Lは、左右方向よりも上下方向に拡散されて出射される。このように、第一の光源群112からの光Lは、付加レンズ130において左右方向に拡散された後に、略楕円状の投影レンズ120において上下方向に拡散されることで、左右上下いずれにも延伸された配光パターン(例えば、図8のハイビーム用配光パターンPh)として灯具前方に照射される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態においては、車両用灯具100は、前方照射用の第一の光源群112と、路面描画用の第二の光源群115と、第一の光源群112および第二の光源群115のそれぞれから出射された光を透過させる単一の投影レンズ120と、第一の光源群112と投影レンズ120との間で第一の光源群112に近接して設けられた付加レンズ130と、を備えている。そして、投影レンズ120は、第一の光源群112および第二の光源群115の各光源像を左右方向よりも上下方向により大きく延伸させ、付加レンズ130は、第一の光源群112の光源像を上下方向よりも左右方向により大きく延伸させる。この構成によれば、第一の実施形態と同様に、単一のユニットで、第一の光源群112からの光Lにより左右上下方向にほぼ等しく延伸された前方照射用の配光パターンPhを形成することができるとともに、第二の光源群115からの光Lにより左右方向よりも上下方向により大きく延伸された路面描画用の配光パターンPrを形成することができる。
【0064】
なお、上記の第二実施形態においては、投影レンズ120はその出射面120bが略楕円球面状に形成されているものを用いているが、これに限られない。例えば、入射面あるいは出射面のいずれかに上下方向に配列されたシリンドリカルステップが形成された投影レンズを用いても良い。この場合も、第一の光源群112や第二の光源群115からの光が投影レンズによって上下方向に拡散されるため、付加レンズ130との組み合わせにより所望の配光パターンを得ることができる。
【0065】
また、複数の付加レンズ130に加えて、第二の光源群115と近接するように、平凸型の付加レンズ(第二の付加光学系の一例)を配置しても良い。第二の光源群115に対して設けられる付加レンズは、その出射面に、例えば、上下方向に並列された複数のシリンドリカルステップが形成されていることが好ましい。これにより、投影レンズを縦長楕円形状となるように形成したり、投影レンズに所定のステップを形成したりすることなく、単一のユニットで、前方照射用の配光パターンPhと路面描画用の配光パターンPrを形成することができる。
【0066】
さらに、第一実施形態の構成と第二実施形態の構成とを組み合わせても良い。すなわち、第二実施形態においても、光源ユニット110と投影レンズ120との間に、第一実施形態の遮光部材30を配置する構成としても良い。これにより、第一の光源群112からの光と第二の光源群115からの光が交差することによる意図しない配光を防止することができる。
【0067】
図16は、本実施形態の変形例に係る車両用灯具の一部構成を示す鉛直断面図である。
本変形例においては、第二実施形態の付加レンズ130の代わりに、第一の光源群112の近傍に、リフレクタ140(第一の付加光学系の一例)が配置されている。リフレクタ140は、第一の光源群112と対向する面および投影レンズ(不図示)と対向する面にそれぞれ開口部140a,140bを備えた矩形箱型状に成形されている。開口部140aは、第一の光源群112の各LEDチップの発光面よりも大きく、開口部140bは、横長の(上下方向よりも左右方向の幅が広い)矩形状に形成されている。第一の光源群112側の開口部140aからリフレクタ140に入射された光Lは、リフレクタ140の反射面140cで反射されて、開口部140bから出射される。このとき、出射面側の開口部140bが横長の矩形状を有しているため、第一の光源群112からの光Lは、当該開口部140bにおいて上下方向よりも左右方向により大きく延伸された光源像を形成する。
【0068】
図示は省略するが、本変形例においても、第二実施形態で用いられた略楕円球面状の投影レンズ120や、入射面あるいは出射面のいずれかに上下方向に複数配列されたシリンドリカルステップが形成された投影レンズを用いることで、第一の光源群112および第二の光源群115の各光源像が左右方向よりも上下方向により大きく延伸される。このように、リフレクタ140と投影レンズ120とを組み合わせることにより前方照射および路面描画用の所望の配光パターンを得ることができる。
【0069】
また、第二の光源群115の近傍に、リフレクタ140を投影レンズの光軸に平行な軸を中心に90度回転させて配置することにより、縦長矩形の開口部を備えたリフレクタ(第二の付加光学系の一例)を別途設けても良い。この構成によっても、上下方向よりも左右方向により大きく延伸された配光パターンPhを形成しつつ、左右方向よりも上下方向により大きく延伸された配光パターンPrを形成することができる。
【0070】
図17は、第二実施形態の別の変形例に係る車両用灯具の一部構成を示す鉛直断面図である。
本変形例においては、第二実施形態の付加レンズ130の代わりに、第一の光源群112の近傍に、導光体150が配置されている。導光体150は、略台形錐形状に成形されており、第一の光源群112と対向する入射面150aと、投影レンズ(不図示)と対向する出射面150bとを備えている。入射面150aは、第一の光源群112の各LEDチップの発光面よりも大きく、出射面150bは、横長の(上下方向よりも左右方向の幅が広い)矩形状に形成されている。第一の光源群112から出射され導光体150の入射面150aから入射された光は、導光体150内を透過し、出射面150bから出射される。このとき、出射面150bが横長の矩形状を有しているため、第一の光源群112からの光は、当該出射面150bにおいて上下方向よりも左右方向により大きく延伸された光源像を形成する。
【0071】
また、第二の光源群115の近傍には、導光体160が配置されている。導光体160は、略台形錐形状に成形されており、第二の光源群115と対向する入射面160aと、投影レンズ(不図示)と対向する出射面160bとを備えている。入射面160aは、第二の光源群115のLEDチップの発光面よりも大きく、出射面160bは、縦長の(左右方向よりも上下方向の幅が広い)矩形状に形成されている。第二の光源群115から出射され導光体160の入射面160aから入射された光は、導光体160内を透過し、出射面160bから出射される。このとき、出射面160bが縦長の矩形状を有しているため、第二の光源群115からの光は、当該出射面160bにおいて左右方向よりも上下方向により大きく延伸された光源像を形成する。
【0072】
この構成によれば、第一の光源群112からの光を上下方向よりも左右方向により大きく延伸された光源像として投影レンズに入射させるとともに、第二の光源群115からの光を左右方向よりも上下方向により大きく延伸された光源像として投影レンズに入射させることができる。投影レンズについては、所定の拡散ステップが形成されていても良く、縦長あるいは横長の楕円形状を有していても良い。
【0073】
なお、導光体150,160の入射面150a,160aおよび出射面150b,160b以外の側面に反射面処理を施してもよい。これにより、第一の光源群112または第二の光源群115からの光を導光体150,160の反射面処理された側面で全反射させることで、出射面150a,160aから出射される光の光度を高めることができる。
【0074】
図18は、第二実施形態のさらに別の変形例に係る車両用灯具の一部構成を示す斜視図である。
図18に示すシリンドリカルレンズ170は、円筒状平凸レンズであって、その焦線方向Dが、鉛直方向となるように配置されている。シリンドリカルレンズ170は、水平方向には凸レンズの曲率を持ち、鉛直方向には曲率のないレンズとして構成され、これにより、シリンドリカルレンズ170の水平方向のみが平凸レンズとして作用し、光が集束される方向に屈折される。このシリンドリカルレンズ170を例えば第二の光源群115の近傍に配置することにより、第二の光源群115からの光は左右方向に集光作用をうけ、シリンドリカルレンズ170を透過した段階で左右方向よりも上下方向により大きな光源像を形成することができる。また、シリンドリカルレンズ170の向きを灯具の光軸を中心に90度回転させたものを第一の光源群112の各LEDチップの近傍に配置することで、シリンドリカルレンズを透過した段階で上下方向よりも左右方向により大きく延伸された光源像を形成することができる。そのため、当該シリンドリカルレンズと、上述の投影レンズとを組み合わせることにより、前方照射および路面描画用の所望の配光パターンを得ることができる。
なお、シリンドリカルレンズに代えてトーリックレンズを用いることもできる。
【0075】
以上において本発明の実施形態の例を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、必要に応じて他の構成を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:車両用灯具、2:ランプボディ、3:灯室、4:透光カバー、10:光源ユニット、11:基板、12:第一の光源群、15:第二の光源群、20:投影レンズ、20a:入射面、20b:出射面、30:遮光部材、40:制御部、S1〜S3:シリンドリカルステップ(第一の拡散ステップ〜第三の拡散ステップの一例)、Ph:前方照射(ハイビーム)用配光パターン、Pr:路面描画用配光パターン、VA:対向車
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