特許第6709664号(P6709664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709664
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】グリルプレート
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20200608BHJP
   F24C 15/16 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   A47J37/06 316
   F24C15/16 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-78674(P2016-78674)
(22)【出願日】2016年4月11日
(65)【公開番号】特開2017-189204(P2017-189204A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】志田 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宏治
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−235908(JP,A)
【文献】 特開2015−132430(JP,A)
【文献】 実開昭63−113814(JP,U)
【文献】 特開2015−198758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00−37/07
F24C 15/16−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側壁の下部域に奥行き方向に延在するように加熱手段がそれぞれ配設されているグリル庫内に収容させるグリルプレートにおいて、
食材を載置させる食材載置面と、前記食材載置面の周囲を囲む周面とから矩形浅皿状に形成され、
前記食材載置面は、短辺に平行に設けられている複数の凸条部と複数の凹溝部がグリル庫の奥行き方向に交互に並列する波型形状に形成され、
前記各凸条部は、上方に凸の断面円弧状の頂部とその両側の凹溝部に続く斜面からなると共に、その頂部による稜線は水平かつ前記周面に連通しないように設けられ、
前記各凹溝部の底部は、前記短辺の中央部を含む所定範囲を最も低く位置させて中央水平面部とすると共に、前記中央水平面部の両側方に、前記稜線よりも低い位置の前記凹溝部の両端部に向かって上昇する傾斜面部を連続させた形状としたグリルプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のグリルプレートにおいて、
少なくともグリル庫の奥行き方向の前後周辺の凹溝部は、隣接する凹溝部と前記凹溝部の両端部以外では連通しないように独立した形状としたグリルプレート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のグリルプレートにおいて、
前記食材載置面の略中央域にて、隣接する凹溝部相互が連通するように、前記隣接する凹溝部間に位置する凸条部に連通部が形成されているグリルプレート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のグリルプレートにおいて、
前記周面の上方開放端縁から、外側へ水平に張り出すフランジ片が延設されており、前記フランジ片のうち、前記食材載置面の長辺に沿って設けられているフランジ片の延長端からさらに外側上方へ向かって立ち上がり部が延設されているグリルプレート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のグリルプレートにおいて、
前記凸条部は断面略円弧状の頂部の両側から斜面が裾広がり状に連続する形状に形成されていると共に、隣接する凸条部間に形成される凹溝部は、前記斜面による断面略U字状に形成されているグリルプレート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のグリルプレートにおいて、
前記食材載置面の下面は、各凸条部の形成域が上方に凹となり、各凹溝部の形成域が下方に凸となるように、上面を転写させた形状を有しているグリルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに搭載されているグリル庫内にて、食材を載置させてグリル調理するために使用されるグリルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロに搭載されているグリル庫内に、従来からセットされている魚焼き用の焼き網に代えて、浅皿状のグリルプレートをセットし、このグリルプレート上に食材を載置させてグリル庫内で加熱調理するグリル調理がある。グリルプレート上の食材は、グリル庫内の上面に設置されている上火バーナによって上方から直火で加熱されると共に、グリル庫の両側壁に沿った下部域に前後に延びるように設置された一対の下火バーナによって、グリルプレートの両側下方からも加熱される。
【0003】
上記グリルプレートとして、周壁で囲まれた略矩形状の食材載置部に、凸条部と凹溝部が交互に形成されたものが公開されており(特許文献1及び2参照)、食材は複数の凸条部の頂部に架設されるように載置される。食材を凸条部の頂面に載置させることにより、調理中に食材から滴り落ちる焼き汁や油分は凹溝部へ落ちるので、食材への焼き汁や油分の再付着が防止できる。
これら文献1、2では、前記略矩形状の食材載置部の左右両側である長辺に沿って、最も深い溝部が形成されており、前記凹溝部に落ちた焼き汁や油分を溜める構成となっている。
【0004】
上記したようなグリル庫では、下火バーナから噴出される燃焼炎や燃焼排気によって、グリルプレートの両側下部域が集中的に加熱されてしまうため、上記したように、グリルプレートの長辺に沿った左右両側に最も深い溝部が形成されているものでは、前記溝部に溜まった焼き汁や油分が集中的に加熱されてしまい、油煙や臭いが発生し易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−200460号公報
【特許文献2】特開2011−139775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、グリルプレートの左右両側に焼き汁や油分を溜めることなく、中心部に溜めるように、底部の中心部が最も低くなるように凹ませた形状とすることが考えられる。このものでは、食材から出た焼き汁や油分はこの中心部に集められ、前記下火バーナで角皿の両側下部域が加熱されても、中心部に溜まった焼き汁や油分は集中的に加熱されることはないため、油煙や臭いの発生が抑えられる。
【0007】
しかしながら、食材から落下した焼き汁や油分が、すべて底部の中心部に集中して溜まる構成とした場合、魚の内が破ける等して食材から多量に焼き汁や油分が流れ出ると、前記中央部に多量の焼き汁や油分が流れ込み、中心部に溜まる焼き汁や油分による液面が上昇することにより、中心部近傍に位置する凸条部の頂部にまで液面が達してしまうおそれがある。このような場合、中心部近傍に位置する凸条部に載置させた食材に、焼き汁や油分が付着してしまう問題が生じる。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、両側壁下部域に沿って、奥行き方向に延びる下火バーナ等の加熱手段が備えられたグリル庫内で使用されるグリルプレートであって、食材から出る焼き汁や油分が集中的に加熱されることにより生じる油煙や臭いを抑制できるようにすると共に、グリルプレート上に流れ出た焼き汁や油分等が食材に付着しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、『両側壁の下部域に沿って、奥行き方向に延在するように加熱手段がそれぞれ配設されているグリル庫内に収容させるグリルプレートにおいて、
食材を載置させる食材載置面と、前記食材載置面の周囲を囲む周面とから矩形浅皿状に形成され、
前記食材載置面は、短辺に平行に設けられている複数の凸条部と複数の凹溝部がグリル庫の奥行き方向に交互に並列する波型形状に形成され、
前記各凸条部は、上方に凸の断面円弧状の頂部とその両側の凹溝部に続く斜面からなると共に、その頂部による稜線は水平かつ前記周面に連通しないように設けられ、
前記各凹溝部の底部は、前記短辺の中央部を含む所定範囲を最も低く位置させて中央水平面部とすると共に、前記中央水平面部の両側方に、前記稜線よりも低い位置の前記凹溝部の両端部に向かって上昇する傾斜面部を連続させた形状とした』ことである。
【0009】
グリルプレートの食材載置面は、グリル庫の奥行き方向に、複数の凸条部と複数の凹溝部を交互に配された波型に形成されており、食材は、複数の凸条部の頂部に架設されるように載置される。
凸条部と凸条部との間に位置する凹溝部の底部の中央部には、中央水平面部が最も低く位置するように設けられており、中央水平面部の長手方向の両側方には、前記凹溝部の両端に向かって上昇する傾斜面が形成されている。よって、複数の凸条部のうち、中央部又はその近傍に食材を載置させた場合では、食材から流れ出る焼き汁や油分は、凸条部の頂部から斜面を流れ落ちて又は直接滴下されて、中央水平面部に溜まる。また、凸条部の両端寄りに食材を載置させた場合では、食材から流れ出る焼き汁や油分は、凸条部の斜面から、凹溝部の底部のうち、前記傾斜面部上に流れ落ちた後、前記傾斜面部上を中央に向かって流れ、中央水平面部に溜まる。凹溝部の底部のうち、中央水平面部が占める面積を大きくすれば、多くの焼き汁や油分を溜めることができる。
焼き汁や油分が複数の凹溝部各々の中央水平面部上に溜まった状態にて、グリル庫の左右の側壁の下部域に沿って設けられている加熱手段によって、グリルプレートの両側下部域が集中的に加熱されても、凹溝部の中央水平面部は、前記両側下部域に比べて高温になり難く、中央水平面部に溜められた焼き汁や油分は加熱されない。
なお、食材は複数の凸条部に架設されるように載置されるから、食材全体から出る焼き汁や油分を、複数の凹溝部の中央水平面部に分散させて溜めることができる上に、凸条部の頂部による稜線は水平に設けられているから、凹溝部の中央水平面部から凸条部の頂部までの高さが最も大きく、中央水平面部上に溜まった焼き汁や油分が凸条部の頂部に到達することはない。
また、凸条部の頂部は断面円弧状に形成されているから、頂部を平坦面としたものに比べて、食材が凸条部の頂部に付着しにくい。
【0010】
上記グリルプレートにおいて、望ましくは、『少なくともグリル庫の奥行き方向の前後周辺の凹溝部は、隣接する凹溝部と前記凹溝部の両端部以外では連通しないように独立した形状とした』ことである。
グリルプレートの奥行き方向の前後周辺部の凹溝部を、隣接するものどうし連通させずに独立する形状とすることにより、グリルプレートを傾斜させたとき、焼き汁や油分が、グリルプレートの前後周辺の凹溝部に流れ込んでくることがないから、グリルプレート上からの焼き汁や油分の横溢を防止することができる。
【0011】
上記グリルプレートにおいて、望ましくは、『前記食材載置面の略中央域にて、隣接する凹溝部相互が連通するように、前記隣接する凹溝部間に位置する凸条部に連通部が形成されている』ことである。
食材は、グリルプレートの食材載置面の略中央域に載置されることが多く、前記略中央域に位置する凹溝部の中央水平面部に、食材から流れ出る焼き汁や油分が溜まり易いが、前記略中央域に位置し且つ隣接する凹溝部相互は、その間に位置する凸条部に設けた連通部を介して連通する構成としたから、焼き汁や油分が一つの凹溝部の中央水平面部に集中的に溜まって水位が上昇することはない。
なお、前記略中央域に位置する複数の凸条部に設ける連通部を、グリルプレートの平面視にて、千鳥状に配列されるように形成しておけば、各凹溝部の中央水平面部を焼き汁や油分の溜まり部として十分機能させることができる上に、凸条部上に載置させる食材が連通部に落下する不都合もない。
また、グリルプレートを傾斜させると、焼き汁や油分が、凸条部の連通部を介して隣接する凹溝部に移動するが、前記連通部を千鳥状に設けておくことにより、焼き汁や油分を、隣接する凹溝部へ蛇行しながら移動させることができ、一つの凹溝部の中央水平面部に集中して溜まるのを抑えることができる。よって、グリルプレートを傾斜させても、最も低く位置する中央水平面部の水位が上昇して焼き汁や油分が食材の下面に再付着したり、横溢したりする不都合はない。
【0012】
上記グリルプレートにおいて、望ましくは、『前記周面の上方開放端縁から、外側へ水平に張り出すフランジ片が延設されており、前記フランジ片のうち、前記食材載置面の長辺に沿って設けられているフランジ片の延長端からさらに外側上方へ向かって立ち上がり部が延設されている』ことである。
グリルプレートの周面の上方開放端縁にフランジ片が連設されていると共に、両長辺に沿って位置するフランジ片の延長端からは立ち上がり部が外側上方に向かってさらに延設させている。これにより、前記加熱手段から噴出される燃焼炎による燃焼排気は、グリルプレートの両側の周壁の真横を上昇することなく、フランジ片と立ち上がり部によってグリルプレートの両側方に広がるように流れていく。これにより、グリルプレート上に大きな対流熱を生じさせることができ、食材をマイルドな対流熱で加熱することができるから、食材の焼き具合が良好となる。
【0013】
上記グリルプレートにおいて、『前記凹溝部は、前記凸条部の斜面に連続し且つ下方に凸の断面略円弧状に形成されている』ものでは、凹溝部への食材のこびりつきを防止することができると共に、清掃も容易となる。
また、上記グリルプレートにおいて、『前記食材載置面の下面は、各凸条部の形成域が上方に凹となり、各凹溝部の形成域が下方に凸となるように、上面を転写させた形状を有している』ものでは、前記加熱手段からの燃焼炎による燃焼排気を、食材載置面の下面に形成されている凹み部分を通って、凸条部の中央部の下面に届けることができるから、凸条部の中央部の温度を速やかに上昇させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、グリルプレートの食材載置面における凸条部の頂に載置させた食材から流れ出る焼き汁や油分を、凹溝部の中央水平面に溜める構成としたから、加熱手段からの加熱によって、グリルプレートの両側下部域が集中的に加熱されても、中央水平面部に溜められた焼き汁や油分は加熱され難く高温になり難い。これにより、中央水平面部に溜められた焼き汁や油分から油煙や臭気が発生することはない。また、焼き汁や油分の加熱を抑えることにより、中央水平面部に汚れのこびりつきも防止できるので、清掃性が向上する。
また、食材から流れ出る焼き汁や油分は、複数の凹溝部各々の中央水平面部上に分散されて溜まる上に、凹溝部の中央水平面部から凸条部の頂部までの高さは他の部分に比べて最も高く設定されているから、食材から多量に焼き汁や油分が流れ出ても、一つの中央水平面部上に溜まった焼き汁や油分が凸条部の頂部に到達することはない。よって、凸条部の頂部に載置させた食材に焼き汁や油分等が付着する不都合はない。
また、グリル庫の左右の側壁の下部域に沿って設けられている加熱手段によって加熱されるグリルプレートの両側面部の上方端に、フランジ片と立ち上がり部を外側に延設させたものでは、食材載置面上に対流させる対流熱をマイルドにすることができるので、食材の調理性能を向上させることができる。
さらに、食材が載置される凸条部の頂部は断面円弧状としているから、頂部を平坦面としたものに比べて、食材との接触面積が小さくなり、食材のグリルプレートへのこびりつきや焦げ付きを防止することができる。また、凹溝部も下に凸の断面円弧状に形成しておくことにより、調理後のグリルプレートの清掃が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るグリルプレートが収容されるグリル庫を備えたビルトインコンロの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るグリルプレートをグリル庫内に収容した状態を示すガスコンロの側面視概略縦断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るグリルプレートをグリル庫内に収容した状態を示すグリル庫の前面視概略縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るグリルプレートの平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るグリルプレートの他の設置例を示す斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るグリルプレートの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記した本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係るグリル庫(2)を備えたビルトインコンロ(3)であり、コンロ本体(30)の上方を覆う天板(31)の上面に複数のコンロバーナ(32)を有していると共に、コンロ本体(30)の前面には、コンロバーナ(32)の点火や消火、火力調整を行うための複数のコンロ用スイッチ(36)や、後述するグリルバーナの点火や消火、火力調整を行うためのグリル用スイッチ(37)が設けられた前面パネル(33)と共に、グリル庫(2)のグリル扉(21)が位置している。
尚、本実施の形態では、グリル庫(2)の奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0017】
グリル庫(2)は、ビルトインコンロ(3)のコンロ本体(30)内に設置される前方開放の矩形箱体であり、グリル庫(2)内には、図2図3に示すように、加熱手段としての上火バーナ(23)及び下火バーナ(24)が配設され、グリル庫(2)の前方開口部(20)はグリル扉(21)によって閉塞される。
グリル扉(21)は、引き出し式に前後にスライドさせることにより、グリル庫(2)の前方開口部(20)を開閉できる。
また、グリル扉(21)の後面には、金属製の丸棒材を略矩形状に折り曲げ形成した支持枠(22)が、連結部材を介して連結されており、支持枠(22)の前後辺は、それぞれ側面視略凸字状に上方に突出するように折り曲げられて、焼き網を支持させる台座部(26)が形成されている。
グリルプレート(1)を用いて調理を行う場合は、グリル扉(21)を手前に引き出し、焼き網に代えてグリルプレート(1)を前後の台座部(26)に架設させる。
【0018】
グリルプレート(1)は、図1及び図4に示すように、アルミニウム製の板体を皿状にプレス成形されたものであり、平面視略矩形の食材載置面(10)と、食材載置面(10)の周囲全域を囲む周面(11)とからなり、表面には、ショットブラスト処理の後、フッ素樹脂加工が施されている。
このグリルプレート(1)では、周面(11)の上端から外方へフランジ片(12)が張り出しており、フランジ片(12)のうち、食材載置面(10)の両短辺側に張り出しているフランジ片(12)の端縁中央部に、所定幅の切欠部(12a)(12b)がそれぞれ形成されている。切欠部(12a)(12b)は、支持枠(22)の前後辺の台座部(26)の中央突出部(26a)がちょうど嵌まり込み可能な大きさに設定されており、グリルプレート(1)は、中央突出部(26a)の両側の段部(図示せず)の上に、切欠部(12a)(12b)の両側に位置するフランジ片(12)が載置されて支持される。これにより、グリルプレート(1)は、グリル扉(21)の後方にて位置決め状態で配設される。
また、グリルプレート(1)の両長辺に沿ったフランジ片(12)の端縁からは、立ち上がり片(15)がさらに外側上方へ向かって延設されている。
【0019】
下火バーナ(24)は、図3に示すように、ステンレス製の二つの樋状体を上下に重ね合わせて構成されてあり、グリル庫(2)の左右の側壁(25)に沿って前後に延設されている。グリルプレート(1)を、上記したように、支持枠(22)の前後に設けられている段部に支持させた状態でグリル庫(2)内に収容すると、グリルプレート(1)は、下火バーナ(24)の配置高さより上方に位置するようにその支持位置が設定されている。
下火バーナ(24)に設けられている複数の炎孔(24a)からはガスの燃焼炎が形成され、その燃焼排気や輻射熱によって、グリルプレート(1)の、特に、左右両側下部域が集中的に加熱される。
【0020】
グリルプレート(1)の食材載置面(10)には、短辺に平行な凸条部(13)を前後方向に等間隔で複数並設させて、図2に示すように、凸条部(13)と、隣接する凸条部(13)間に形成される凹溝部(14)とからなる波型が、グリル庫(2)の奥行き方向となるグリルプレート(1)の長辺方向に形成されている。
なお、各凸条部(13)の頂部(13a)は、上方に凸の断面円弧状に形成されており、その稜線は、図3に示すように、左右方向に水平に維持されている。
凸条部(13)の頂部(13a)の前後方向両側には斜面(13b)が連続しており、隣り合う凸条部(13)と凸条部(13)との間には、向かい合う一対の斜面(13b)と断面円弧状の底部からなる上方に向かって広がる略U字状の凹溝部(14)が形成される。
凹溝部(14)の底部による谷線は、図3に示すように、中央部を含む所定範囲が水平に形成された中央水平面部(14a)と、中央水平面部(14a)の両側方に連続し且つ凹溝部(14)の両端部に向かって上昇する傾斜面部(14b)とからなる形状に形成されている。
なお、一つの凹溝部(14)にて、最も低く位置する中央水平面部(14a)は、凹溝部(14)の長手方向の長さの約4分の1〜2分の1を占めるように形成される。
【0021】
このグリルプレート(1)を使用して、グリル庫(2)により調理を行う場合、グリル扉(21)をグリル庫(2)から引き出すことにより、グリルプレート(1)を支持枠(22)と共に手前へ引き出し、食材載置面(10)の複数の凸条部(13)の頂部(13a)上に架設されるように食材(4)を載置させ、グリル扉(21)をグリル庫(2)内に押し込んで、前面開放部(20)を閉塞させる。
グリルプレート(1)のグリル庫(2)への収容状態では、下火バーナ(24)はグリルプレート(1)より下方に配置され、グリルプレート(1)の食材載置面(10)の左右両側部は、下火バーナ(24)の炎孔(24a)に接近して配置されているから、グリルプレート(1)の左右両側部が、下火バーナ(24)によって下方から集中的に加熱され、グリルプレート(1)の左右両側下部域が集中的に加熱され、中央部に比べて高温になり易い。
【0022】
下火バーナ(24) の炎孔(24a)から噴出される燃焼炎による燃焼排気は、グリルプレート(1)の両側に張り出させたフランジ片(12)と立ち上がり片(15)によって、グリル庫(2)の両側壁(25)側へ流れたあと、食材載置面(10)上へ大きく対流することとなり、食材(4)をマイルドな対流熱によって加熱することができ、調理性能が向上する。
【0023】
食材(4)は、図2に示すように、複数の凸条部(13)の頂部(13a)上に架設されるように載置された状態で加熱され、凸条部(13)の長手方向の中央付近に載置させた食材(4)から滴り落ちる焼き汁や油分等は、凹溝部(14)の中央水平面部(14a)に直接滴下され、また、凸条部(13)の両側寄りに載置させた食材(4)からの焼き汁や油分は、凹溝部(14)の傾斜面部(14b)に滴下された後、傾斜面部(14b)を流れていき、中央水平面部(14a)に溜まる。
中央水平面部(14a)は、食材載置面(10)上に複数設けられている凹溝部(14)の各々に形成されているから、食材(4)からの焼き汁や油分は、複数の中央水平面部(14a)に分散されて溜まる。
また、凸条部(13)の頂部(13a)は水平な稜線を形成しているから、最も低く位置する中央水平面部(14a)の底部と頂部(13a)との距離が最も大きくなる。
このように、食材(4)からの焼き汁や油分は、一つの凹溝部(14)の中央水平面部(14a)に集中的に溜まることがない上に、中央水平面部(14a)の底部から凸条部(13)までの高さは、相対的に高くなっているから、一つの凹溝部(14)の中央水平面部(14a)に溜まった焼き汁や油分が凸条部(13)の頂部(13a)にまで到達し、食材(4)に付着するようなことはない。
【0024】
グリルプレート(1)は、上記したように、食材載置面(10)の中央部と左右両側部とで温度差が生じるが、高温になり易い食材載置面(10)の左右両側部には、焼き汁や油分が溜まることはないから、焼き汁や油分が加熱されることにより、油煙が発生したり、臭いが生じたりすることもない。
また、中央水平面部(14a)に溜まった焼き汁や油分は、左右両側部ほど加熱されることはないから、中央水平面部(14a)に焼き汁や油分による汚れがこびりつくこともない。
【0025】
また、グリルプレート(1)は、全体に略同一厚さに設定されていると共に、食材載置面(10)の下面は、上面を転写させた形状を有しているため、各凸条部(13)の下面は、上に凸の凹み部が形成される態様となる。これにより、下火バーナ(24)の炎孔(24a)からグリル庫(2)の中央に向かって噴出される燃焼炎による燃焼排気が、前記凹み部を通って、凸条部(13)の中央部の下面にまで届き易くため、凸条部(13)の頂部(13a)の温度を全域的に速やかに上昇させることができる。
【0026】
また、凸条部(13)は、断面円弧状の頂部(13a)からその両側に斜面(13b)が裾広がり状に連続する形状としているから、平坦な頂部を並列させたものに比べて、食材(4)が頂部(13a)に付着しにくい。
また、隣接する頂部(13a)相互間に形成される凹溝部(14)は、一対の斜面(13b)と断面円弧状の底部とから、上方に向かって広がる略U字状に形成されていると共に、中央水平面部(14a)に溜まる焼き汁や油分は加熱され難く、こびりつき難くなっているから、調理後のグリルプレート(1)の清掃が容易となる。
【0027】
上記実施の形態では、下火バーナ(23)は、グリル庫(2)の両側壁(25)の下部域に設けられて、グリル庫(2)の中央に向かって燃焼炎が噴出する形式のものを採用したが、図5の他の例に示すもののように、グリル庫(2)の底板に取り付けられる下方開放の箱状の底板カバー(27)内の両側寄りに、炎孔(34a)を外側に向けて設置される下火バーナ(34)を採用してもよい。
底板カバー(27)は、窓部(28)が形成された左右両側壁(27a)と、グリル庫(2)の底板に平行に位置する頂面(27b)とから、下方及び前後方に開放する断面略コ字状の台座であり、左右両側壁(27a)の下端部がグリル庫(2)の底板にネジ止めにより固定される。
【0028】
また、底板カバー(27)の前方を閉塞するように、前板(29)が配設されており、この前板(29)はグリル扉(21)に接続されると共に、左右両側辺には、底板カバー(27)の後端にまで延びる前支持棒(16)が接続されている。
底板カバー(27)の頂面(27b)の後端近傍には、水平な後ろ板(39)を固定させる後支持棒(17)が、底板カバー(27)に上から外嵌するように配設されており、この後支持棒(17)の左右両端は、前支持棒(16)の後端近傍に係止されて同時に移動可能となっている。
グリルプレート(1)は、前板(29)と後板(39)の上端に載置させてグリル庫(2)内に収容される。
そして、グリル扉(21)を引き出すと、前板(29)、前支持棒(16)、後支持棒(17)、後板(39)と共に、グリルプレート(1)が引き出される。
【0029】
この実施の形態の下火バーナ(34)(34)の炎孔(34a)(34a)は、外側を向いており、炎孔(34a)から噴き出される燃焼炎による燃焼排気は、底板カバー(27)の側壁(27a)に設けられている窓部(28)から、グリル庫(2)の両側壁(25)に向かって吹き出されて、グリル庫(2)内を対流する構成となっている。
【0030】
図6に示すものは、グリルプレート(1)の他の例であり、食材載置面(10)のうち、最も食材が載置され易い中央域に位置する複数の凸条部(13)に、連通部(18)を、平面視にて千鳥に配列されるように形成したものである。
このものでは、中央に載置された食材の一部から焼き汁や油分が多量に流れ出ても、一つの凹溝部(14)の中央平面部(14a)に集中して溜まることなく、連通部(18)を介して、隣接する凹溝部(14)の中央平面部(14a)に流れていく。これにより、食材載置面(10)の中央域にて、焼き汁や油分が集中的に多量に流れ出ても、一つの凹溝部(14)でのみ中央平面部(14a)に溜まる焼き汁や油分の水位が上昇することはなく、複数の凹溝部(14)の中央平面部(14a)に均等に溜まっていく。
【0031】
なお、連通部(18)は、グリルプレート(1)の略中央域に位置する凸条部(13)に限定して形成する構成としたから、焼き汁や油分はグリルプレート(1)の前後端に流れることはなく、前後端から、さらに、両側部に流れ込んで、下火バーナによって不用意に加熱される不都合はない。また、グリルプレート(1)を前後に傾斜させても、前後端から焼き汁や油分がグリルプレート(1)から横溢することもない。
また、連通部(18)は、グリルプレート(1)の長辺に沿った一直線上に設けずに、千鳥状に設ける構成とすることで、各凹溝部(14)の中央平面部(14a)を、焼き汁や油分の溜まり部として十分に機能させることができると共に、凸条部(13)に載置させた食材の一部又は全部が連通部(18)に落下する不都合も防止できる。さらに、グリルプレート(1)を傾斜させたとき、最も低く位置する凹溝部(14)の中央水平面部(14a)に焼き汁や油分が集中して溜まってその水位が上昇することもないから、焼き汁や油分が、食材の下面に再付着したり、横溢したりする不都合もない。
【0032】
本発明のグリルプレート(1)はアルミニウム製としたが、鉄、銅などの他の金属やセラミック製、陶器製のものでも使用可能である。
また、グリルプレート(1)は、焼き網の上に載置させた状態でグリル庫(2)内に収容する構成としてもよい。
さらに、本発明は、ガスバーナに代えて、電気ヒーターなど他の加熱手段を備えたグリル庫でも使用できる。
【符号の説明】
【0033】
(1) ・・・・・・・グリルプレート
(10)・・・・・・・食材載置面
(11)・・・・・・・周面
(13)・・・・・・・凸条部
(13a) ・・・・・・頂部
(13b) ・・・・・・斜面
(14)・・・・・・・凹溝部
(14a) ・・・・・・中央水平面部
(14b) ・・・・・・傾斜面部
(2) ・・・・・・・グリル庫
(24)・・・・・・・下火バーナ(加熱手段)
(25)・・・・・・・側壁
(4) ・・・・・・・食材
図1
図2
図3
図4
図5
図6