(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を有する給水装置または排水装置に取り付けられて、前記変位機構を作動させる圃場用電動アクチュエータであって、
筒状の側壁と前記側壁の上部を封止する天壁とを含み、前記側壁および前記天壁が気密構造を有し、下面側が気密構造となっていない本体ケース、
電力によって駆動されるモータ、
前記モータの駆動を制御する制御部、
前記モータからの駆動力によって回転するギア、および
前記ギアと共に回転する回転軸を備え、
少なくとも前記モータおよび前記制御部は、洪水時における前記本体ケース内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置よりも上方において、前記本体ケース内に配置される、圃場用電動アクチュエータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の排水装置では、水に浸かると故障してしまう制御部などの電気部品を内蔵したアクチュエータ本体が、洪水時に水没してしまうことを防止するため、支柱および操作ロッドの長さを1〜2mに設定して、アクチュエータ本体を高い位置に設置するようにしている。
【0005】
しかしながら、電動アクチュエータの背丈(高さ寸法)が大きくなると、電動アクチュエータが障害物となって農作業に支障をきたす恐れがある。また、電動アクチュエータのような重量物を高い位置に設置すると、不安定になって支柱が折れてしまう危険があるので、支柱の強度を大きくする必要が生じる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、圃場用電動アクチュエータを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、背丈を大きくすることなく、制御部などの電気部品が水に浸かってしまうことを防止できる、圃場用電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を有する給水装置または排水装置に取り付けられて、変位機構を作動させる圃場用電動アクチュエータであって、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含み、側壁および天壁が気密構造を有
し、下面側が気密構造となっていない本体ケース、電力によって駆動されるモータ、モータの駆動を制御する制御部、モータからの駆動力によって回転するギア、およびギアと共に回転する回転軸を備え、少なくとも蓄電池の接点部、モータおよび制御部は、洪水時における本体ケース内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置よりも上方において、本体ケース内に配置される、圃場用電動アクチュエータである。
【0009】
第1の発明では、圃場用電動アクチュエータは、本体ケース、モータ、制御部、ギアおよび回転軸などを備え、圃場に設置される給水バルブ等の給水装置または落水口などの排水装置に取り付けられて、給水装置または排水装置が有する変位機構を作動させる。本体ケースは、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含み、側壁および天壁が気密構造を有するように形成される。ただし、ここでいう「気密」とは、圃場の水位が洪水時に想定される最大水位に達して本体ケースが水没しても、耐用期間中はその部分から本体ケース内の空気が漏れない程度に気密性および水密性が保たれることを言う。
【0010】
このように、側壁および天壁が気密構造を有するように本体ケースを形成することで、本体ケースの下面側が気密構造となっていなくても、洪水時などに本体ケースが水没したときに、本体ケース内の空気は抜けなくなるので、本体ケース内への水の浸入を防ぐことができる。ただし、本体ケースの下面側が気密構造となっていない場合には、水没時の水位に応じて、下面側から本体ケース内への浸水が少し生じる。そこで、第1の発明では、少なくともモータおよび制御部については、洪水時における本体ケース内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置Xよりも上方において、本体ケース内に配置するようにしている。
【0011】
第1の発明によれば、仮に本体ケースが水没しても、本体ケース内に配置されるモータ等の部品が水に濡れてしまうことを防止できる。したがって、水没を避けるためにモータ等の部品を高い位置に設置する必要がなくなるので、圃場用電動アクチュエータを小型化(低背化)できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、下限高さ位置は、次の数1で求められる位置とされる。 [数1] ΔH=H+10−10V/(V−ΔV) ここで、ΔHは、本体ケースの下端から下限高さ位置までの距離
(m)であり、Hは、洪水時に想定される最大水位の水面から下限高さ位置までの距離
(m)であり、Vは、本体ケース内の隙間容積
(m3)であり、ΔVは、本体ケースの下端から下限高さ位置までの本体ケース内の隙間容積
(m3)である。ただし、ここでいう本体ケースの下端とは、本体ケースの気密構造を有する部分の下端を意味し、天壁または側壁に気密性を有さない状態の連結部または孔などがある場合には、連結部または孔などの上縁位置が本体ケースの下端となる。また、ここでいう隙間容積の隙間とは、本体ケースの下端から繋がっている、つまり空気が通る隙間を意味し、本体ケース内で閉じており、本体内気圧が変化しても体積が変わらない状態で存在する隙間は含まない。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明と同様に、仮に本体ケースが水没しても、本体ケース内に配置されるモータ等の部品が水に濡れてしまうことを防止でき、装置を小型化できる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、本体ケースの側壁および天壁は、連結部のない一体型とされる。
【0015】
第3の発明によれば、本体ケースの側壁および天壁をより確実に気密構造とすることができる。
【0016】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、本体ケースに取り付けられる太陽電池パネル、および太陽電池パネルによって発電された電力を蓄電可能な蓄電池をさらに備え、太陽電池パネルと制御部とを接続する配線は、本体ケースの下端よりも低い位置を通るように当該本体ケースの外部に出て、太陽電池パネルに至る。
【0017】
第4の発明によれば、本体ケースの天壁および側壁に通線用の孔を形成する必要がないので、本体ケースの側壁および天壁をより確実に気密構造とすることができる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明に従属し、無線通信部およびアンテナをさらに備え、アンテナは、本体ケースの内部、または太陽電池パネルを本体ケースに取り付ける支柱の内部に配置される。
【0019】
第5の発明では、他の機器と無線通信を行うための無線通信部およびアンテナをさらに備える。また、太陽電池パネルは、本体ケースに対して支柱を介して取り付けられる。そして、アンテナは、本体ケースの内部または支柱の内部に配置される。
【0020】
第5の発明によれば、本体ケースまたは支柱によってアンテナが保護されるので、アンテナが破損したり、土などの汚れが付着して通信不良が生じたりすることを防止できる。
第6の発明は、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を有する給水装置または排水装置に取り付けられて、変位機構を作動させる圃場用電動アクチュエータの製造方法であって、圃場用電動アクチュエータは、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含み、側壁および天壁が気密構造を有する本体ケース、電力によって駆動されるモータ、モータの駆動を制御する制御部、モータからの駆動力によって回転するギア、およびギアと共に回転する回転軸を備え、少なくともモータおよび制御部を、次式(数1)で求められる下限高さ位置よりも上方において、本体ケース内に配置する、圃場用電動アクチュエータの製造方法。 [数1] ΔH=H+10−10V/(V−ΔV) ここで、ΔHは、本体ケースの下端から下限高さ位置までの距離(m)であり、Hは、洪水時に想定される最大水位の水面から本体ケースの下端までの距離(m)であり、Vは、本体ケース内の隙間容積(m3)であり、ΔVは、本体ケースの下端から下限高さ位置までの本体ケース内の隙間容積(m3)である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、仮に本体ケースが水没しても、本体ケース内に配置されるモータ等の部品が水に濡れてしまうことを防止できる。したがって、水没を避けるためにモータ等の部品を高い位置に設置する必要がなくなるので、圃場用電動アクチュエータを小型化(低背化)できる。
【0022】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1および
図3を参照して、この発明の一実施例である圃場用電動アクチュエータ10(以下、単に「アクチュエータ10」と言う。)は、制御盤32、蓄電池36およびモータ38などが収容される本体ケース20を含み、圃場102に設置される給水バルブ等の給水装置104または落水口などの排水装置106に取り付けられて、給水装置104または排水装置106が有する変位機構を作動させる。
【0025】
この実施例では、アクチュエータ10は、圃場用給排水システム100(以下、単に「システム100」と言う。)に用いられ、詳細は後述するように、給水装置104および排水装置106の双方に取り付けられる。すなわち、給水装置104が備える第1変位機構を作動させる第1電動アクチュエータ、および排水装置106が備える第2変位機構を作動させる第2電動アクチュエータとして、共にアクチュエータ10が用いられる。
【0026】
先ず、システム100について説明する。
図1に示すように、システム100は、圃場102の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行うための圃場用設備であり、給水装置104および排水装置106が設置される水田などの圃場102に適用される。なお、圃場102は、畦畔によって複数の耕作区に区画されており、給水装置104および排水装置106は、各耕作区に対して設置される。
【0027】
給水装置104は、耕作区(圃場102)への給水を制御するための装置であって、弁体または仕切体などを含む変位機構(第1変位機構)を有する。この実施例では、給水装置104として、一般的に広く普及しているR&R方式(軸回転に伴い軸が上下動する方式)のアルファルファ形の給水バルブを用いている。
【0028】
図1および
図7を参照して簡単に説明すると、給水装置104は、円筒状の弁箱120を備える。弁箱120の上半部は、ドーム状のキャップ122によって覆われており、弁箱120の側壁上部には、複数の出水窓124が周方向に並ぶように形成される。また、弁箱120の上端部には、内周面に雌ねじが形成された軸受126が設けられ、この軸受126には、キャップ122を貫通するように、外周面に雄ねじが形成された弁軸128が螺合されている。この弁軸128の下端には、下面に止水ゴム130aを有する円板状の弁体130が設けられる。また、弁箱120内の略中央部には、通水口132aを有する弁座132が設けられる。そして、弁軸128に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって弁軸128および弁体130が上下動し、弁座132の通水口132aが開閉される。すなわち、この実施例の給水装置104は、弁軸(支持棒)128の回転に伴い上下動する弁体130を含む第1変位機構を備える。
【0029】
このような給水装置104は、たとえば給水桝108内に配置され、用水パイプライン110または用水路などから分岐する分岐管112の下流側端部に取り付けられる。そして、給水装置104には、後述する第1アダプタ60を介してアクチュエータ10が取り付けられ、このアクチュエータ10によって給水装置104の第1変位機構(弁軸128および弁体130)が作動される。
【0030】
一方、排水装置106は、圃場102からの排水を制御するための装置であって、弁体または仕切体などを含む変位機構(第2変位機構)を有する。この実施例では、排水装置106として、水位設定機能を有する落水口を用いている。
【0031】
図1および
図9を参照して簡単に説明すると、排水装置106は、短円筒状のゴム製の受枠部材140と、受枠部材140に嵌入されて、受枠部材140によって上下動可能に支持される円筒状の仕切体(堰体)142とを備える。この仕切体142の上端開口は、排水口として機能する。そして、仕切体142に対して上下方向(軸方向)に力が加えられると、仕切体142が上下動して、排水口が任意の高さに調整される。すなわち、この実施例の排水装置106は、上下動可能に設けられる仕切体142を含む第2変位機構を備える。
【0032】
このような排水装置106は、たとえば排水桝114内に配置され、排水路116まで延びる排水管118の上流側端部に取り付けられる。そして、排水装置106には、後述する第2アダプタ70を介してアクチュエータ10が取り付けられ、このアクチュエータ10によって排水装置106の第2変位機構(仕切体142)が作動される。
【0033】
なお、
図1では、給水装置104を圃場102の一端側に配置し、排水装置106をその反対側に配置しているが、給水装置104および排水装置106の配置位置は、適宜変更可能である。たとえば、給水装置104と排水装置106とは、近傍位置に配置されていてもよい。
【0034】
また、この実施例におけるシステム100は、複数の耕作区を含むシステムとなっており、各耕作区に設置される給水装置104および排水装置106のそれぞれに取り付けられるアクチュエータ10のうち、少なくとも1つのアクチュエータ10が親機とされ、残りのアクチュエータ10は子機とされる。親機となるアクチュエータ10は、インターネット等のネットワークを介して、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末、PDAおよびPCのような遠隔操作端末と無線通信可能に接続される。一方、子機となるアクチュエータ10は、特定小電力無線規格に従った無線通信方法によって、親機と直接、または他の子機を介して親機と無線通信可能に接続されており、親機を経由して、ユーザが所有する遠隔操作端末と無線通信可能に接続される。ただし、親機としては、アクチュエータ10以外の装置を別途設置してもよい。
【0035】
なお、この無線通信においては、クラウドコンピューティングを利用するとよい。たとえば、各アクチュエータ10で取得された情報(弁体の開閉度などの給水装置104または排水装置106の状態に関する情報、および圃場水位や気温などのセンサ情報など)をクラウドサーバに随時送信して記憶しておく。ユーザは、遠隔操作端末からクラウドサーバにアクセスすることで、各アクチュエータ10で取得された情報を確認し、遠隔操作端末を用いて各アクチュエータ10を遠隔操作することで、圃場102の水管理を行う。
【0036】
ただし、システム100は、必ずしも複数の耕作区に亘るシステムとする必要はなく、システム100が適用される圃場102は、少なくとも1つの給水装置104と1つの排水装置106とが設置される圃場であればよい。
【0037】
続いて、アクチュエータ10の構成について具合的に説明する。
図2−
図4に示すように、アクチュエータ10は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される本体ケース20を備える。この本体ケース20は、円筒状の側壁22と側壁22の上端部を封止する天壁24とを含む。側壁22の下端部は、段差状に縮径されており、この縮径部分が後述する第1アダプタ60または第2アダプタ70の上部開口に嵌入される嵌合部26となる。本体ケース20の高さ寸法は、たとえば300mmであり、本体ケース20の外径は、たとえば200mmである。
【0038】
本体ケース20の天壁24上面には、太陽電池パネル28が取り付けられる。太陽電池パネル28は、複数の太陽電池セルが強化ガラスおよび封止材などによって方形状にパッケージ化されたものであり、保持体30によって支持される。保持体30は、金属または樹脂などによって形成され、たとえば、太陽電池パネル28の周囲を覆うように設けられる方形枠状のフレーム30aと、フレーム30aの下面に設けられて、所定角度で屈曲する支持板30bとを備える。
【0039】
本体ケース20の内部には、制御盤32、アンテナ34、蓄電池36、モータ38およびメインギア40等が収容される。
【0040】
制御盤32には、図示は省略するが、CPUおよびメモリ等を含む制御部、他の機器と無線通信を行うための無線通信部、および主電源などのスイッチ等が配設される。制御部のCPUは、アクチュエータ10の全体制御を司り、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて、モータ38等の駆動を制御する。無線通信部は、アンテナ34を介して、上述のようにユーザが所有する遠隔操作端末および他のアクチュエータ10等の外部機器と無線通信を行う。
【0041】
蓄電池36は、太陽電池パネル28によって発電された電力を蓄電するものである。モータ38は、蓄電池36に蓄えられた電力、つまり太陽電池パネル28によって発電された電力によって駆動される。このモータ38の出力軸38aの先端部には、小ギア42が設けられており、メインギア40は、この小ギア42と連結されることで、モータ38からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0042】
この実施例では、モータ38としてエンコーダ付きのモータが用いられる。モータ38のエンコーダは、出力軸38aの回転方向および回転数に応じたパルス信号を制御部のCPUに出力する。制御部のCPUは、エンコーダから入力されたパルス信号、つまり出力軸38aの回転方向および回転数に基づいて、給水装置104の弁体130または排水装置106の仕切体142などの位置を算出する。すなわち、エンコーダは、弁体130または仕切体142などの位置を検出する位置検出部として用いられる。ただし、位置検出部として機能するエンコーダは、必ずしもモータ38に設けられる必要はなく、エンコーダをメインギア40に設けて、メインギア40の回転方向および回転数に基づいて、弁体130または仕切体142などの位置を算出することもできる。さらに、制御盤32には、モータ電流値を検出する電流センサ(カレントトランス)等の電流値検出部が設けられており、電流値検出部における検出データは、制御部のCPUに入力される。
【0043】
メインギア40は、両ボス型のギアであり、上下方向に延びる円筒状の軸部(ボス部)40aと、外周面にギア歯が形成される円板状のギア部40bとを有する。本体ケース20の側壁22の下端部には、本体ケース20の底壁にもなる円板状の第1軸受44が設けられており、また、第1軸受44の上方には、複数の支持部46によって支持される円板状の第2軸受48が設けられている。そして、メインギア40の軸部40aの両端部は、これら第1軸受44および第2軸受48によって回転可能に保持される。
【0044】
メインギア40の軸部40aには、略円柱状の回転軸50が挿通される。つまり、回転軸50は、メインギア40の軸中心を貫通するように設けられる。この回転軸50の下端部には、給水装置104の弁軸128または後述する第2アダプタ70の連結軸80の上端部などと回転不可に連結されるカップリング部50aが形成される。また、メインギア40の軸部40aの内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝40cが形成され、回転軸50の外周面には、キー溝40cと嵌合される滑りキー50bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸50は、メインギア40が回転すると共に回転し、かつメインギア40の軸部40aに対して軸方向に摺動可能となる。さらに、メインギア40のギア部40bの上面と第2軸受48の下面との間、およびメインギア40のギア部40bの下面と第1軸受44の上面との間には、それぞれスラストベアリング52が設けられる。また、図示は省略するが、回転軸50の上端部には、抜け止め用の鍔部を形成しておくこともできる。
【0045】
また、図示は省略するが、圃場102には、圃場水位を検出する超音波センサ等の水位センサ、気温を検出する温度センサ、気圧を検出する圧力センサ、土壌水分を検出する土壌水分センサ等のセンサが適宜設けられる。各センサで検出された圃場水位や気温などのセンサ情報は、アクチュエータ10の制御部に入力される。
【0046】
そして、この実施例では、本体ケース20は、側壁22および天壁24が気密構造を有するように形成される。ただし、この発明における「気密」とは、圃場102の水位が洪水時に想定される最大水位に達して本体ケース20が水没しても、その部分から本体ケース20内の空気が漏れない(本体ケース20内に水が入り込まない)程度に、耐用期間中は気密性および水密性が保たれることを言う。
【0047】
具体的には、本体ケース20は、第1ケース部材20a、第2ケース部材20bおよび第3ケース部材20cを組み合わせることによって構成される。第1ケース部材20aは、本体ケース20の天壁24および側壁22の上部を構成し、第2ケース部材20bは、側壁22の下部を構成し、第3ケース部材20cは、側壁22の下端部および底壁(第1軸受44)を構成する。そして、第1ケース部材20a、第2ケース部材20bおよび第3ケース部材20cのそれぞれは、連結部(継ぎ目)のない一体型とされ、第1ケース部材20aと第2ケース部材20bとの連結部、および第2ケース部材20bと第3ケース部材20cとの連結部には、それぞれOリング54が設けられる。これによって、本体ケース20の側壁22および天壁24が気密構造を有するようになる。また、第1ケース部材20aと第2ケース部材20bとが着脱可能に連結されると共に、第2ケース部材20bと第3ケース部材20cとが着脱可能に連結される。本体ケース20内の部品を点検等するときには、第1ケース部材20aおよび第2ケース部材20bが適宜取り外される。
【0048】
ここで、本体ケース20内への水の浸入を防止するためには、本体ケース20の全体が気密構造となるように形成できればよい。しかし、アクチュエータ10は、給水装置104の弁軸128などと連結される回転軸50を備えており、回転軸50のような駆動部分が本体ケース20から突出する部分(貫通部分)を長期間に亘って気密構造とすることは困難である。そこで、この実施例では、本体ケース20の側壁22および天壁24が気密構造となるように構成し、回転軸50は本体ケース20の下面側(底壁側)から突出させるようにしている。これによって、本体ケース20の下面側が気密構造となっていなくても、洪水時などに本体ケース20が水没したときに、本体ケース20内の空気は抜けなくなるので、本体ケース20内への水の浸入を防ぐことができる。したがって、仮に本体ケース20が水没しても、本体ケース20内に配置される部品が水に濡れてしまうことを防止できる。
【0049】
ただし、本体ケース20の下面側が気密構造となっていない場合には、水没時の水位に応じて、下面側から本体ケース20内への浸水が少し生じる。
【0050】
そこで、
図5に示すように、この実施例では、水没すると故障してしまう制御盤(制御部)32、蓄電池36の接点部およびモータ38等の電気部品については、洪水時における本体ケース20内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置Xよりも上方において、本体ケース20内に配置するようにしている。すなわち、洪水時に想定される最大水位となったときの本体ケース20内への最大浸水水位を下限高さ位置Xとして設定し、少なくとも制御盤32、蓄電池36の接点部およびモータ38等の電気部品は、その下限高さ位置Xよりも上方に配置するようにしている。好ましくは、メインギア40およびスラストベアリング52等の駆動部品も下限高さ位置Xよりも上方に配置するとよい。
【0051】
具体的には、下限高さ位置Xは、次式(数1)で求められる位置とされる。
[数1]
ΔH=H+10−10V/(V−ΔV)
ここで、ΔHは、本体ケース20の下端Yから下限高さ位置(最大浸水水位)Xまでの距離[m]であり、Hは、洪水時に想定される最大水位の水面Zから本体ケース20の下端Yまでの距離[m]であり、Vは、本体ケース20内の隙間容積[m
3]であり、ΔVは、本体ケース20の下端Yから下限高さ位置Xまでの本体ケース20内の隙間容積[m
3]である。ただし、ここでいう本体ケース20の下端Yとは、本体ケース20の気密構造を有する部分の下端を意味し、天壁24または側壁22に気密性を有さない状態の連結部または孔などがある場合には、連結部または孔などの上縁位置が本体ケース20の下端Yとなる。また、ここでいう隙間容積の隙間とは、本体ケース20の下端Yから繋がっている、つまり空気が通る隙間を意味し、本体ケース20内で閉じており、本体内気圧が変化しても体積が変わらない状態で存在する隙間は含まない。
【0052】
なお、上記の数1は、ボイルの法則に基づく次の平衡式(数2)から求められた式である。
[数2]
V=((H−ΔH)/10+1)(V−ΔV)
上記の数1を満たす下限高さ位置Xよりも上方に電気部品および駆動部品を配置する、言い換えると、上記の数1を満たすように本体ケース20の形状および寸法を決めることで、電気部品および駆動部品が水没してしまうことを確実に防止できる。
【0053】
また、図示は省略するが、本体ケース20内に配置される制御部と本体ケース20外に配置される太陽電池パネル28とを接続する配線は、本体ケース20の下端Yよりも低い位置を通るように本体ケース20の外部に出て、太陽電池パネルに至るように設けられる。これによって、本体ケース20の天壁24および側壁22に通線用の孔を形成する必要がなくなるので、天壁24および側壁22の気密性を保ち易くなる。同様に、制御部と水位センサ等の各センサとを接続する配線も、本体ケース20の下端Yよりも低い位置を通るように本体ケース20の外部に出て、各センサに至るように設けるとよい。
【0054】
さらに、図示は省略するが、本体ケース20の外面、または本体ケース20内の下限高さ位置Xよりも上の位置には、手動(電動手動)でモータ38を駆動させるための操作パネルを設けるようにしてもよい。操作パネルには、上昇ボタン、下降ボタン、およびアクチュエータ10の動作モード(遠隔モード、自動モードまたは手動モード等)を切り替えるための選択ボタン等が設けられる。基本的には、アクチュエータ10は、遠隔操作または自動制御されるものであるが、この操作パネルは、アクチュエータ10の初期設定時やアクチュエータ10に異常が発生した場合など、ユーザがアクチュエータ10の近くにいるときに使用される。ただし、操作パネルを設ける代わりに、近距離用のリモートコントローラを用いて、アクチュエータ10を手動制御することもできる。
【0055】
次に、
図6を参照して、給水装置104にアクチュエータ10を取り付けるための第1アダプタ60の一例について説明する。
図6に示すように、第1アダプタ60は、円筒部62と、円筒部62の上端部から外方に突出する鍔状の第1接続部64と、円筒部62の下端部から内方に突出し、その中央部に通孔66aを有する円環板状の第2接続部66とを含む。第1接続部64には、周方向に並ぶ複数のボルト孔(図示せず)が形成される。また、第2接続部66にも、周方向に並ぶ複数のボルト孔(図示せず)が形成される。この第2接続部66のボルト孔は、周方向に長い長孔としてもよい。
【0056】
図7に示すように、第1アダプタ60を用いて給水装置104にアクチュエータ10を取り付けるときには、第1アダプタ60の円筒部62に対して本体ケース20の嵌合部26が嵌め込まれると共に、第1アダプタ60の第1接続部64とアクチュエータ10の本体ケース20の底壁とがボルト止めされる。また、第1アダプタ60の第2接続部66と給水装置104のキャップ122および軸受126とがボルト止めされる。この際、第2接続部66に形成されるボルト孔を周方向に長い長孔としておくことによって、第1アダプタ60およびアクチュエータ10は、給水装置104に対して周方向に角度調整可能となる。さらに、給水装置104の弁軸128の上端部は、第1アダプタ60の第2接続部66に形成される通孔66aから上方に突出されて、アクチュエータ10の回転軸50のカップリング部50aに対して回転不可に連結される。
【0057】
このようにアクチュエータ10が取り付けられた給水装置104では、たとえば、ユーザが遠隔操作端末を用いてアクチュエータ10に対して全閉、全開または任意の開度などを示す操作指示(制御信号)を送信すると、アクチュエータ10の制御部(CPU)は、操作指示に応じてモータ38を駆動させる。このモータ38の駆動力は、メインギア40に伝達されて、メインギア40が回転すると共に、回転軸50が回転する。これにより、回転軸50に固定的に連結された弁軸128に対して、回転力が付与される。回転力が加えられた弁軸128は、自身と軸受126との送りねじ機構によって上下動され、弁体130が全開位置および全閉位置などに移動される。また、回転軸50は、弁軸128の上下動に伴い、メインギア40の軸部40aを貫通するように上下動する。これによって、上下方向に大きなスペースを要することなく、弁軸128の上下動が吸収される。
【0058】
続いて、
図8を参照して、排水装置106にアクチュエータ10を取り付けるための第2アダプタ70の一例について説明する。上述のように、この実施例における排水装置106の仕切体142は、上下動可能に設けられているだけであり、それ自体は回転力を受けても上下動しない。このため、アクチュエータ10の回転軸50の回転力は、軸方向(上下方向)の力に変換して、排水装置106の仕切体142に伝達する必要がある。そこで、この第2アダプタ70については、ねじ機構によって上下動する可動部82を設けるようにし、この可動部82を介して回転軸50と仕切体142とを連結するようにしている。
【0059】
具体的には、
図8に示すように、第2アダプタ70は、第1アダプタ60と同様に、円筒部72と、円筒部72の上端部から外方に突出する鍔状の第1接続部74と、円筒部72の下端部から内方に突出し、その中央部に通孔76aを有する円環板状の第2接続部76とを備える。この第2接続部76に形成するボルト孔は、周方向に長い長孔にしておくとよい。
【0060】
また、第2接続部76の通孔76aには、円筒状の保持部78が設けられる。この保持部78には、アクチュエータ10の回転軸50と連結される連結軸80の上部が回転可能に挿通される。また、連結軸80の下部80aの外周面には、雄ねじが形成され、この連結軸80の下部80aには、内周面に雌ねじが形成された円筒状の可動部82が螺合されている。この可動部82には、可動部82に対して仕切体142を連結固定するための固定部84が設けられる。また、第2接続部76の下面側には、排水桝114の上端部にアクチュエータ10を載置するための台座86が設けられる。さらに、可動部82が連結軸80と共に回転(連れ回り)することを防止するための棒状の回り止め部88が、固定部84と台座86とを連結するように設けられる。このような第2アダプタ70において、連結軸80に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって可動部82および固定部84が上下動する。
【0061】
図9に示すように、第2アダプタ70を用いて排水装置106にアクチュエータ10を取り付けるときには、第2アダプタ70の円筒部72に対して本体ケース20の嵌合部26が嵌め込まれると共に、第2アダプタ70の第1接続部74とアクチュエータ10の本体ケース20の底壁とがボルト止めされる。また、排水桝114の上端部に台座86が取り付けられると共に、仕切体142に対して固定部84の端部がボルト止めされる。さらに、連結軸80の上端部は、アクチュエータ10の回転軸50のカップリング部50aに対して回転不可に連結される。
【0062】
このようにアクチュエータ10が取り付けられた排水装置106では、たとえば、ユーザが遠隔操作端末を用いてアクチュエータ10に対して排水口(仕切体142の上端開口)の高さ位置を変更する操作指示(制御信号)を送信すると、アクチュエータ10の制御部(CPU)は、操作指示に応じてモータ38を駆動させる。このモータ38の駆動力は、メインギア40に伝達されて、メインギア40が回転すると共に、回転軸50が回転する。これにより、回転軸50に固定的に連結された第2アダプタ70の連結軸80に対して、回転力が付与される。連結軸80に対して軸線回りの回転力が加えられると、連結軸80と可動部82との送りねじ機構によって可動部82が上下動し、これに伴い、可動部82に連結固定された仕切体142が所定の高さ位置に移動される。
【0063】
以上のように、この実施例によれば、本体ケース20の側壁22および天壁24が気密構造となるように構成し、本体ケース20内に設ける制御盤(制御部)32、蓄電池36およびモータ38等の電気部品については、洪水時における本体ケース20内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置Xよりも上方に配置するので、仮に本体ケース20が水没しても、これらの部品が水に濡れてしまうことを防止できる。したがって、水没を避けるために蓄電池36などの部品を高い位置に設置する必要がなくなるので、アクチュエータ10を小型化(低背化)することができ、アクチュエータ10が農作業の邪魔になることを防止できる。
【0064】
また、メインギア40の軸中心を貫通するように回転軸50を設けているので、アクチュエータ10をより小型化できる。
【0065】
さらに、取付アダプタ(第1アダプタ60および第2アダプタ70)のみ給水装置104および排水装置106に合わせたものを用意するだけで、給水装置104側と排水装置106側とには、同じ構造のアクチュエータ10を後付けで設置できるので、圃場内水管理の遠隔操作化または自動化を低コストで実現できる。
【0066】
なお、上述の実施例では、本体ケース20は、複数のケース部材20a,20b,20cを組み合わせることによって形成したが、これに限定されない。図示は省略するが、本体ケース20の側壁22および天壁24は、連結部のない一体型とすることもできる。これによって、Oリング54等を用いて気密構造とする場合と比較して、本体ケース20の側壁22および天壁24をより確実に気密構造とすることができる。また、本体ケース20に設ける連結部の位置および数などは、特に限定されず、たとえば、第1ケース部材20aと第2ケース部材20bとを連結部のない一体型とすることもできる。
【0067】
また、上述の実施例では、給水装置104として、R&R方式のアルファルファ形の給水バルブを例示し、排水装置106として、円筒状の仕切体142を備える落水口を例示しているが、これに限定されない。アクチュエータ10は、玉形弁、仕切弁および水門などの各種の給水装置104または排水装置106に取り付けることができる。
【0068】
一例として、
図10には、給水装置104として内ねじ弁棒非上昇式の仕切弁を用い、この仕切弁にアクチュエータ10を取り付けた様子を示す。簡単に説明すると、
図10に示す給水装置(仕切弁)104は、本管部と立上部とからなる弁箱150を備え、この弁箱150内には、弁棒(支持棒)152の回転によって上下動する弁体(仕切体)154が設けられる。
【0069】
このような給水装置104にアクチュエータ10を取り付けるための第1アダプタ200としては、上述の第1アダプタ60と同様のもの、すなわち、円筒部202と、円筒部202の上端部から外方に突出する鍔状の第1接続部204と、円筒部202の下端部から内方に突出し、その中央部に通孔する円環板状の第2接続部206とを含むものが用いられる。そして、給水装置104の弁棒152の上端部に対して、アクチュエータ10の回転軸50が回転不可に連結される。アクチュエータ10の回転軸50から弁棒152に対して回転力が加えられると、弁棒152と弁体154との送りねじ機構によって弁体154が上下動して、弁箱150の本管部が開閉される。
【0070】
なお、
図10では、弁棒152が回転しても上下動しないタイプの仕切弁を示しているが、給水装置104は、弁棒の回転に伴って弁棒自体も上下動するタイプ(弁棒上昇式)の仕切弁であってもよい。
【0071】
また、他の一例として、
図11には、排水装置106として圃場の地下水位を設定可能な水位制御器を用い、この水位制御器にアクチュエータ10を取り付けた様子を示す。簡単に説明すると、
図11に示す排水装置(水位制御器)106は、外筒160と、外筒160内に設けられ、下端部が地下給水管に接続される内筒(図示せず)とを備える。この内筒には、上下動可能に設けられるスライド管(仕切体)162が設けられる。
【0072】
このような排水装置106にアクチュエータ10を取り付けるための第2アダプタ210としては、上述の第2アダプタ70と同様のもの、すなわち、円筒部212、第1接続部214、第2接続部216、保持部218、連結軸220、可動部222、固定部224、外筒160の上端部にアクチュエータ10を載置するための台座226、および内管とスライド管162とを摺動可能に連結する回り止め部228等を備えるものが用いられる。そして、連結軸220および可動部222を介して、排水装置106のスライド管162とアクチュエータ10の回転軸50とが連結される。アクチュエータ10の回転軸50から連結軸220に対して回転力が加えられると、連結軸220と可動部222との送りねじ機構によって可動部222が上下動し、これに伴い、可動部222に連結固定されたスライド管162が所定の高さ位置に移動される。
【0073】
以上のように、アクチュエータ10は、既存の様々な給水装置104および排水装置106に後付けで設置することが可能である。
【0074】
なお、上述の
図8に示す第2アダプタにおいては、取付アダプタに送りねじ機構を設けるに際して、雌ねじ側を可動部として上下動させるようにしたが、雄ねじ側(連結軸側)を可動部として上下動させるようにして、この連結軸(可動部)によって回転軸50と仕切体142等とを連結することもできる。これは、第1アダプタに送りねじ機構を設ける場合も同様である。
【0075】
また、上述の実施例では、本体ケース20の天壁24上面に、フレーム30aと支持板30bとを備える保持体30を介して、太陽電池パネル28を取り付けるようにしたが、本体ケース20に太陽電池パネル28を取り付けるための保持体30の形状ないし構成は適宜変更可能である。
【0076】
また、
図12に示すように、本体ケース20の天壁24に方形枠状のフレーム部90を形成して、天壁24に埋め込むように、気密性を有する状態で太陽電池パネル28を取り付けることもできる。
【0077】
さらに、太陽電池パネル28は、本体ケース20に対して着脱可能および回転可能に設けることもできる。たとえば、
図13に示すように、本体ケース20の側壁22の下端部に対して、上方に向かって延びる円筒状の取付部92を一体的に形成する。また、太陽電池パネル28を保持する保持体30として、たとえば、太陽電池パネル28の周囲を覆うように設けられる方形枠状のフレーム30aと、所定角度で屈曲する支持板30bと、支柱94が嵌め込まれる取付部30cとを備えるものを用いる。そして、保持体30の取付部30cに対して円筒状の支柱94を気密性を有する状態で連結すると共に、この支柱94の下端部を本体ケース20に形成した取付部92に嵌め込むようにして連結する。この際、支柱94と本体ケース20の取付部92との連結部には、Oリング54を設けておく。これによって、支柱94と本体ケース20の取付部92とが気密的に連結されると共に、取付部92に対して支柱94(延いては太陽電池パネル28)が着脱可能であってかつ回転可能に連結される。なお、支柱94と保持体30とを着脱可能および回転可能に接続しておいてもよい。
【0078】
図13に示すアクチュエータ10のように、太陽電池パネル28を本体ケース20に対して着脱可能としておくことで、太陽電池パネル28を本体ケース20から取り外して別位置に設置できるようになる。また、太陽電池パネル28を本体ケース20に対して回転可能としておくことで、太陽電池パネル28の向きを任意の方向に設定できるようになる。これによって、圃場102の状況(障害物の有無など)に柔軟に対応できるようになり、良好な日射確保が可能となる。
【0079】
また、
図13に示すアクチュエータ10では、長さ調整用の支柱を継ぎ足す等して支柱94の長さを変えることによって、太陽電池パネル28の設置高さを任意に設定できるので、より柔軟に圃場102の状況に対応できる。
【0080】
さらに、
図13に示すアクチュエータ10では、支柱94内にアンテナ34が配置される。
図3等に示すアクチュエータ10では、製造コストを低減できる点、およびアンテナ34を本体ケース20内に配置して保護できる点などを考慮して、本体ケース20を樹脂製としたが、
図13に示すアクチュエータ10では、支柱94のみを樹脂製としておけば、本体ケース20は、耐久性(耐候性)に優れる金属製とすることもできる。もちろん、
図13に示すアクチュエータ10においても、支柱94によってアンテナ34が保護されるので、アンテナ34が破損したり、土などの汚れが付着して通信不良が生じたりすることを防止できる。
【0081】
ただし、アンテナ34の配置位置は、適宜変更可能であり、本体ケース20の外部にアンテナ34を配置する態様であれば、本体ケース20は金属製にしてもよい。
【0082】
さらにまた、
図13に示すアクチュエータ10の変形例として、
図14に示すように、本体ケース20の側壁22に対して内方に窪む凹部を形成して、その凹部内を通るように取付部92および支柱94を設けることもできる。これによって、アクチュエータ10をより小型化できる。また、図示は省略するが、支柱94の取付部92は、天壁24に形成してもよい。
【0083】
また、上述の実施例では、制御部と太陽電池パネル28および各センサ等とを接続する配線は、本体ケース20の下端Yよりも低い位置を通すようにしたが、これに限定されない。これら配線は、本体ケース20の側壁22または天壁24に形成した孔を通すようにしてもよい。この場合には、孔と配線との隙間をコーキング材(シーリング材)で埋めることによって、配線を通す部分の気密構造を確保するとよい。或いは、隙間部よりもやや大きめに作製したゴム等の弾性体を圧縮挿入して隙間を埋めたり、粘着性のあるブチルゴムを充填したりすることによって、配線を通す部分の気密構造を確保するとよい。
【0084】
さらに、上述の実施例では、回転軸50がメインギア40と共に回転し、かつメインギア40に対して軸方向に摺動可能とするために、メインギア40の軸部40aの内周面にキー溝40cを形成し、回転軸50の外周面に滑りキー50bを形成したが、この配置は逆であってもよい。つまり、メインギア40の軸部40aの内周面に滑りキーを形成し、回転軸50の外周面にキー溝を形成してもよい。また、複数の滑りキーおよびキー溝が形成されてもよい。さらに、回転軸50は、スプラインおよびセレーション等であってもよい。
【0085】
また、上述の実施例では、小型化を図りつつ、様々な形式の給水装置104および排水装置106に適用できるように、メインギア40と共に回転しかつメインギア40の軸部40aに対して軸方向に摺動可能な回転軸50を、メインギア40を貫通するように配置したが、これに限定されない。回転軸50は、メインギア40と共に回転可能であれば、必ずしもメインギア40を貫通するように設けられる必要はない。また、
図9−
図11に示す給水装置104または排水装置106に取り付けられる場合のように、回転軸50が上下方向の動きを吸収する必要がない場合は、回転軸50は、必ずしもメインギア40の軸方向に摺動可能である必要はない。
【0086】
さらに、上述の実施例では、給水装置(給水バルブ)104の弁軸128に対して回転軸50を直接連結するようにしているが、弁軸と回転軸とは、軸アダプタ(図示せず)を介して連結することもできる。給水装置または排水装置の弁軸の先端(上端)形状は、製造メーカおよび装置サイズによって異なるので、弁軸の先端形状に合った接続部をその下端部に有する軸アダプタを製作しておき、この軸アダプタを介して弁軸にアクチュエータ10の回転軸を取り付けるのである。この際、軸アダプタと回転軸との連結形状は共通とされる。つまり、回転軸の接続部の形状は、1種類でよい。
【0087】
また、軸アダプタを介して弁軸と回転軸とを連結する場合には、取付アダプタの側面(たとえば第1アダプタ60の円筒部62)には、軸アダプタの取り付けまたは取り外しのために用いる開口を設けておくとよい。この開口は、蓋によって開閉自在にしておくとよい。
【0088】
さらに、上述のような本体ケースを気密構造とする技術(発明)は、電動アクチュエータ10に適用することのみに限定されず、たとえば、搭載されたセンサによって圃場の状態を計測する環境データ計測器に適用することもできる。図示は省略するが、環境データ計測器は、たとえば、水位センサ、温度センサ、圧力センサおよび土壌水分センサ等の少なくとも1つが設けられた本体ケースを備える。この本体ケースは、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含み、側壁および天壁が気密構造を有するものである。そして、水没すると故障してしまう制御部およびセンサ等の電気部品は、洪水時における本体ケース内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置よりも上方において、本体ケース内に配置される。このように、本体ケースを気密構造とする技術を環境データ計測器に適用した場合でも、電動アクチュエータ10に適用した場合と同様の作用効果を奏する。
【0089】
また、上述の実施例では、商用電源が確保し難い圃場102においてもアクチュエータ10を適用できるように、太陽電池パネル28および蓄電池36を備えるようにしたが、商用電源などの他の電源を使用できる環境に設置される場合には、必ずしも太陽電池パネル28および蓄電池36を備える必要はない。本体ケース20とは別の場所に設けられる他の電源を利用する場合には、他の電源とアクチュエータ10とを接続するためのケーブルは、本体ケース20の下端Yよりも低い位置を通って本体ケース20内に導かれるようにするとよい。
【0090】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。