特許第6709685号(P6709685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709685
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】デファレンシャル装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/24 20060101AFI20200608BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   F16H48/24
   F16H48/08
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-110624(P2016-110624)
(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公開番号】特開2017-215015(P2017-215015A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 秀之
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−291777(JP,A)
【文献】 特開2011−185371(JP,A)
【文献】 特開2010−84930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/24
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配置されたデフケースと、このデフケースに一体回転可能に収容されたピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに自転可能に支持され前記デフケースの回転により公転するピニオンと、このピニオンと噛み合い相対回転可能に配置された一対のサイドギヤとを有する差動機構と、この差動機構の差動を断続する断続機構とを備えたデファレンシャル装置であって、
前記ピニオンシャフトと前記一対のサイドギヤとの間には、前記差動機構と前記断続機構とにイニシャルトルクを付与する皿バネが配置され
前記ピニオンシャフトの前記皿バネの荷重を受ける受面は、平面で形成され、
前記ピニオンシャフトは、2つの短尺のピニオンシャフトと、長尺の1つのピニオンシャフトからなり、
それぞれの前記ピニオンシャフトには、前記受面が形成され、
前記受面は、前記皿バネの周方向に均等に配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項2】
請求項1記載のデファレンシャル装置であって、
前記ピニオンシャフトと前記皿バネとの間には、ワッシャが配置されていることを特徴
とするデファレンシャル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるデファレンシャル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デファレンシャル装置としては、回転可能に配置されたデフケースと、このデフケースに一体回転可能に収容されたピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに自転可能に支持されデフケースの回転により公転するピニオンと、このピニオンと噛み合い相対回転可能に配置された一対のサイドギヤとを有する差動機構と、この差動機構の差動を断続する断続機構とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このデファレンシャル装置では、断続機構が、デフケースと一体回転可能で軸方向移動可能に配置された断続部材を有し、断続部材と一対のサイドギヤの一方との軸方向間に差動機構の差動を断続する断続部が設けられている。
【0004】
このようなデファレンシャル装置では、断続部材を軸方向に移動させ、断続部を接続させることにより、デフケースと一方のサイドギヤとが一体回転可能に接続され、差動機構の差動がロック状態とされる。
【0005】
この上記特許文献1のようなデフロック機能を有するデファレンシャル装置では、差動機構と断続機構とにイニシャルトルクが付与されておらず、差動機構と断続機構とにイニシャルトルクを付与することで、断続機構の断続特性を向上させることが考えられる。
【0006】
これに対して、差動機構の差動を制限する差動制限機構を有したデファレンシャル装置において、差動制限機構に対してイニシャルトルクを付与する皿バネを配置したものが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0007】
特許文献2のデファレンシャル装置では、ピニオンシャフトと一対のサイドギヤとの間にピニオンシャフトと一体回転可能に係合されたプレッシャプレートが配置され、ピニオンシャフトとプレッシャプレートとの間に皿バネが配置されている。
【0008】
特許文献3のデファレンシャル装置では、ピニオンシャフトがホルダに支持され、ホルダと一対のサイドギヤとの間に皿バネが配置されている。
【0009】
これら特許文献2,3のようなデファレンシャル装置では、皿バネが、内側に位置するピニオンシャフト側から一対のサイドギヤを外側に向けて押圧し、差動制限機構にイニシャルトルクを付与している。
【0010】
このように皿バネによって内側から外側に向けてイニシャルトルクを付与することにより、外側から内側に向けて差動制限機構にイニシャルトルクを付与する場合に比較して、デフケース内に皿バネを配置させるためのスペースを確保する必要がなく、デフケースの肉厚が減少したり、デフケースが大型化することがない。
【0011】
加えて、差動制限機構にイニシャルトルクを付与する部材を皿バネとすることにより、複数のピニオンシャフトに対して複数のコイルバネを配置するときのような組付性の低下や配置位置の制限などを引き起こすがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−331030号公報
【特許文献2】特開2000−283263号公報
【特許文献3】特開平11−22809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記特許文献2,3のような皿バネの配置構造では、ピニオンシャフトと一体回転可能に係合されたプレッシャプレートやピニオンシャフトを支持するホルダを介して皿バネが差動制限機構にイニシャルトルクを付与している。
【0014】
このような構成では、皿バネの付勢力がピニオンシャフトとの係合部や支持部を有する別部材を介して差動制限機構に伝達されるので、係合部や支持部などでのがたつきによって皿バネの付勢力が不均一に伝達される恐れがあった。
【0015】
このため、上記特許文献1のようなデファレンシャル装置に、上記特許文献2,3のような皿バネの配置構造に適用した場合には、皿バネが差動機構と断続機構とに安定してイニシャルトルクを付与することができず、断続機構の断続特性が不安定になる恐れがあった。
【0016】
そこで、この発明は、差動機構と断続機構とに安定してイニシャルトルクを付与することができ、断続機構の断続特性を向上することができるデファレンシャル装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、回転可能に配置されたデフケースと、このデフケースに一体回転可能に収容されたピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに自転可能に支持され前記デフケースの回転により公転するピニオンと、このピニオンと噛み合い相対回転可能に配置された一対のサイドギヤとを有する差動機構と、この差動機構の差動を断続する断続機構とを備えたデファレンシャル装置であって、前記ピニオンシャフトと前記一対のサイドギヤとの間には、前記差動機構と前記断続機構とにイニシャルトルクを付与する皿バネが配置され、前記ピニオンシャフトの前記皿バネの荷重を受ける受面は、平面で形成され、前記ピニオンシャフトは、2つの短尺のピニオンシャフトと、長尺の1つのピニオンシャフトからなり、それぞれの前記ピニオンシャフトには、前記受面が形成され、前記受面は、前記皿バネの周方向に均等に配置されていることを特徴とする。
【0018】
このデファレンシャル装置では、ピニオンシャフトと一対のサイドギヤとの間に、差動機構と断続機構とにイニシャルトルクを付与する皿バネが配置されているので、係合部や支持部を有する別部材を介さずに、皿バネによってピニオンシャフトとサイドギヤとを直接的に付勢することができ、差動機構と断続機構とに均一にイニシャルトルクを付与することができる。
【0019】
従って、このようなデファレンシャル装置では、差動機構と断続機構とに安定してイニシャルトルクを付与することができ、断続機構の断続特性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、差動機構と断続機構とに安定してイニシャルトルクを付与することができ、断続機構の断続特性を向上することができるデファレンシャル装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置のピニオンシャフトと皿バネとワッシャの斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置のピニオンシャフトと皿バネとワッシャの側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置のピニオンシャフトと皿バネとワッシャの正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置のピニオンシャフトと皿バネとワッシャの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図5を用いて本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置について説明する。
【0023】
本実施の形態に係るデファレンシャル装置1は、回転可能に配置されたデフケース3と、このデフケース3に一体回転可能に収容されたピニオンシャフト5,7と、このピニオンシャフト5,7に自転可能に支持されデフケース3の回転により公転するピニオン9と、このピニオン9と噛み合い相対回転可能に配置された一対のサイドギヤ11,13とを有する差動機構15と、この差動機構15の差動を断続する断続機構17とを備えている。
【0024】
そして、ピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13との間には、差動機構15と断続機構17とにイニシャルトルクを付与する皿バネ19,19が配置されている。
【0025】
また、ピニオンシャフト5,7の皿バネ19の荷重を受ける受面21は、平面で形成されている。
【0026】
さらに、ピニオンシャフト5,7と皿バネ19との間には、ワッシャ23が配置されている。
【0027】
図1図5に示すように、差動機構15は、デフケース3と、ピニオンシャフト5,7と、ピニオン9と、一対のサイドギヤ11,13とを備えている。
【0028】
デフケース3は、軸方向の両側に設けられたボス部25,27の外周でそれぞれベアリング(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回転可能に支持されている。
【0029】
このデフケース3には、リングギヤ(不図示)が固定されるフランジ部29が設けられ、リングギヤが入力側の機構からの駆動力を伝達する伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、デフケース3に駆動力が伝達される。
【0030】
このようなデフケース3には、ピニオンシャフト5,7と、ピニオン9と、一対のサイドギヤ11,13とが収容され、デフケース3に入力された駆動力が伝達される。
【0031】
ピニオンシャフト5,7は、2つの短尺のピニオンシャフト5と長尺の1つのピニオンシャフト7とからなる。
【0032】
2つの短尺のピニオンシャフト5は、外端部をデフケース3に係合してピン31で抜け止め及び回り止めされ、デフケース3と一体に回転駆動される。
【0033】
長尺の1つのピニオンシャフト7は、中間に設けられた孔に2つの短尺のピニオンシャフト5の内端部が係合されて抜け止め及び回り止めがなされ、デフケース3と一体に回転駆動される。
【0034】
このようなピニオンシャフト5,7のそれぞれの外端側には、複数のピニオン9がそれぞれ支承されている。
【0035】
複数のピニオン9は、デフケース3の周方向等間隔に4つ配置される4ピニオンタイプとなっており、それぞれ短尺の2つのピニオンシャフト5の外端側と長尺のピニオンシャフト7の両端側に支承されてデフケース3の回転によって公転する。
【0036】
このピニオン9の背面側とデフケース3との径方向間には、ピニオン9の公転時に発生する径方向への移動を受ける球面ワッシャ33が配置されている。
【0037】
このようなピニオン9は、一対のサイドギヤ11,13に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ11,13に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト5,7に自転可能に支持されている。
【0038】
一対のサイドギヤ11,13は、それぞれに形成されたボス部でデフケース3に相対回転可能に支持され、ピニオン9と噛み合っている。
【0039】
この一対のサイドギヤ11,13とデフケース3との軸方向間には、ピニオン9との噛み合い反力によるサイドギヤ11,13の軸方向への移動を受けるスラストワッシャ35,37がそれぞれ配置されている。
【0040】
このような一対のサイドギヤ11,13は、内周側にスプライン形状の連結部39,41がそれぞれ設けられ、出力側の機構に一体回転可能に連結された駆動軸(不図示)がそれぞれサイドギヤ11,13と一体回転可能に連結され、デフケース3に入力された駆動力を駆動軸を介して出力側の機構に出力する。
【0041】
このような差動機構15における一対のサイドギヤ11,13の差動は、断続機構17の接続によってロック状態とされ、一対のサイドギヤ11,13に伝達された駆動力が左右の出力側の機構に均一に出力される。
【0042】
このように差動機構15の差動を断続する断続機構17を有するデファレンシャル装置1は、いわゆるデフロック機能を有するデファレンシャル装置となっている。
【0043】
この断続機構17は、断続部材43と、断続部45と、可動部材47と、電磁石49とを備えている。
【0044】
断続部材43は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部51がデフケース3の壁部53とサイドギヤ13の背面側との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。
【0045】
この断続部材43のデフケース3の壁部53側には、デフケース3と一体回転可能に係合する係合部55が設けられ、断続部材43のサイドギヤ13の背面側には、断続部45が設けられている。
【0046】
係合部55は、断続部材43の基部51に周方向等間隔に設けられた複数の凸部57と、デフケース3の壁部53に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔部59とからなる。
【0047】
この凸部57と孔部59とが回転方向に係合することにより、断続部材43がデフケース3に回り止めされ、断続部材43とデフケース3とが一体回転可能となる。
【0048】
この係合部55には、断続部材43を断続部45の接続方向に移動させるカムが設けられている。詳細には、凸部57と孔部59との周方向両側の対向面には、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成されている。
【0049】
このため、断続部材43が断続部45の接続方向に移動され、断続部45に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、デフケース3の回転によってそれぞれのカム面が係合することにより、断続部材43をさらに断続部45の噛み合い方向に移動させ、断続部45の接続を強化させる。
【0050】
断続部45は、断続部材43の基部51の係合部55と軸方向反対側の側面で断続部材43とサイドギヤ13の背面側との軸方向間に設けられ、断続部材43とサイドギヤ13とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
【0051】
この断続部45は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、断続部材43とサイドギヤ13とが一体可能に接続、すなわちデフケース3とサイドギヤ13とが一体回転可能に接続され、差動機構15の差動がロック状態となる。
【0052】
一方、断続部材43とサイドギヤ13の背面側との軸方向間で断続部45の径方向内側には、付勢部材61が設けられ、断続部材43を断続部45の接続解除方向に付勢している。
【0053】
この付勢部材61によって、断続部材43が断続部45の接続解除方向に移動され、断続部45の接続が解除され、差動機構15の差動がアンロック状態となる。
【0054】
この断続部45の断続状態は、可動部材47と電磁石49とからなるアクチュエータによって制御される。
【0055】
可動部材47は、電磁石49の内径側でデフケース3のボス部27の外周に軸方向移動可能に配置され、環状のプランジャ63と、リング部材65とを備えている。
【0056】
プランジャ63は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石49の内径側に配置されている。
【0057】
リング部材65は、非磁性材料から形成され、プランジャ63の内径側に一体に固定され、プランジャ63の内周側からデフケース3側へ磁束が漏れることを防止している。
【0058】
このリング部材65は、デフケース3のボス部27の外周に軸方向移動可能に配置され、デフケース3のボス部27の外周に圧入固定された非磁性材料からなる規制部材67によって軸方向外側への移動規制がなされている。
【0059】
このようなリング部材65は、断続部材43側の軸方向の端面に、断続部材43の凸部57と当接可能な押圧部69が設けられ、電磁石49によって作動される可動部材47による軸方向の移動操作力を押圧部69を介して断続部材43に伝達し、断続部材43を断続部45の接続方向に押圧操作する。
【0060】
電磁石49は、デフケース3のボス部27の外周側でデフケース3の壁部53に対して軸方向に隣接配置されると共に、キャリアなどの静止系部材に回り止めされ、電磁コイル71と、コア73とを備えている。
【0061】
電磁コイル71は、環状に所定巻き数巻回されて樹脂でモールド成形されている。
【0062】
この電磁コイル71には、外部に引き出されるリード線(不図示)が接続され、このリード線を介して通電を制御するコントローラ(不図示)に接続されている。
【0063】
コア73は、電磁コイル71への通電により磁界が形成されるように磁性材料から形成され、所定の磁路断面積を有している。
【0064】
このコア73は、電磁コイル71の内外周面及び電磁コイル71のデフケース3の壁部53と反対側に位置する軸方向一側端面を環状に覆っている。
【0065】
このようなコア73の外径側には、デフケース3の壁部53から軸方向に延設された延設部75が磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって覆うように配置されていると共に、延設部75の軸方向端面によって電磁石49の軸方向内側への位置決めがなされている。
【0066】
一方、コア73の軸方向外側の端面は、可動部材47の軸方向外側への移動を規制する規制部材67によって、可動部材47と共に電磁石49の軸方向外側への位置決めがなされている。
【0067】
このように構成されたデファレンシャル装置1では、電磁石49の励磁によりコア73とプランジャ63とデフケース3の壁部53とを透過する磁束で形成される最短の磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ63が断続部材43側に移動操作され、リング部材65が押圧部69を介して断続部材43を押圧する。
【0068】
この可動部材47による断続部材43の押圧操作により、断続部材43が付勢部材61の付勢力に抗して断続部45の接続方向に移動され、断続部45が接続される。
【0069】
この断続部45の接続により、サイドギヤ13と断続部材43とが一体回転可能に接続され、サイドギヤ13とデフケース3とが接続されて差動機構15がロック状態となる。
【0070】
一方、断続部45の接続解除では、電磁石49への通電を停止することにより、断続部材43が付勢部材61の付勢力によって断続部45の接続解除方向に移動され、断続部45の接続が解除される。
【0071】
この断続部45の接続解除により、サイドギヤ13と断続部材43とが相対回転可能となり、サイドギヤ13とデフケース3とが相対回転可能となって差動機構15のロック状態が解除される。
【0072】
ここで、断続部材43の凸部57の軸方向の端面には、ボルトを介して断続部材43と軸方向に一体移動可能に連動部材77が固定されている。
【0073】
この連動部材77は、デフケース3の壁部53に設けられた孔部59に対して径方向に貫通して設けられた径方向孔79に配置され、径方向の端部がデフケース3の外周面から露出して配置される操作部81となっている。
【0074】
このような連動部材77の操作部81は、キャリアなどの静止系部材に固定されたポジションスイッチ(不図示)のスイッチ部に係合され、断続部材43の軸方向移動によってスイッチ部を断続操作する。
【0075】
この連動部材77によるポジションスイッチの断続を検出することにより、断続部材43の位置、すなわち断続機構17が接続状態であるか否かを検出することができ、デファレンシャル装置1がロック状態であるか否かを検出することができる。
【0076】
このようなデファレンシャル装置1において、差動機構15と断続機構17とにイニシャルトルクを付与することにより、差動機構15と断続機構17との初期位置が安定して保持され、断続機構17の断続特性を向上することができる。
【0077】
そこで、ピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13との間には、差動機構15と断続機構17とにイニシャルトルクを付与する皿バネ19,19が配置されている。
【0078】
皿バネ19,19は、環状に形成され、所定の付勢力を有し、ピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13との軸方向間に配置されている。
【0079】
この皿バネ19,19は、内側のピニオンシャフト5,7側から一対のサイドギヤ11,13を軸方向外側に向けて付勢し、差動機構15と断続機構17との初期位置を規定するように差動機構15と断続機構17とにイニシャルトルクを付与する。
【0080】
このように皿バネ19によって直接的にピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13とを付勢することにより、ピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13とを周方向に均一に付勢することができ、差動機構15と断続機構17とに安定してイニシャルトルクを付与することができる。
【0081】
ここで、ピニオンシャフト5,7の皿バネ19の荷重を受ける受面21,21は、平面で形成されている。
【0082】
このピニオンシャフト5,7の受面21,21は、ピニオンシャフト5,7の軸方向の両端部より内側で、ピニオンシャフト5,7に対して皿バネ19,19の配置位置に対応するように対称に2箇所設けられている。
【0083】
このように受面21,21をピニオンシャフト5,7に設けることにより、ピニオンシャフト5,7のデフケース3に対する係合を安定することができると共に、ピニオン9の支持を安定することができ、差動機構15の動力伝達を安定化することができる。
【0084】
このようなピニオンシャフト5,7の受面21,21を平面で形成することにより、皿バネ19の荷重を点ではなく、面(線)で受けることができ、皿バネ19の荷重を受ける面積を増大させ、より安定して皿バネ19の荷重をピニオンシャフト5,7に付与することができる。
【0085】
ここで、ピニオンシャフト5,7と皿バネ19,19との軸方向間には、それぞれワッシャ23,23が配置されている。
【0086】
このワッシャ23,23は、ピニオンシャフト5,7に対して一体回転可能に係合する係合部などを介して支持されておらず、皿バネ19,19の付勢力によって軸方向位置が保持され、ピニオンシャフト5,7に支持された4つのピニオン9によって径方向の移動が規制されている。
【0087】
このようにピニオンシャフト5,7と皿バネ19,19との間にワッシャ23,23を配置することにより、ワッシャ23,23を介してピニオンシャフト5,7の周方向により均一に皿バネ19,19の付勢力を付与することができる。
【0088】
加えて、ワッシャ23,23は、ピニオンシャフト5,7との間に係合部を有していないので、係合部におけるがたつきなどがなく、皿バネ19,19による差動機構15と断続機構17へのイニシャルトルクの付与を安定化することができる。
【0089】
なお、皿バネ19は、ピニオンシャフト5,7に受面21を平面で形成させたときの削り代以上の残存撓み代をもって配置されており、ピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13とに十分な付勢力を付与することができる。
【0090】
このようなデファレンシャル装置1では、ピニオンシャフト5,7と一対のサイドギヤ11,13との間に、差動機構15と断続機構17とにイニシャルトルクを付与する皿バネ19,19が配置されているので、係合部や支持部を有する別部材を介さずに、皿バネ19,19によってピニオンシャフト5,7とサイドギヤ11,13とを直接的に付勢することができ、差動機構15と断続機構17とに均一にイニシャルトルクを付与することができる。
【0091】
従って、このようなデファレンシャル装置1では、差動機構15と断続機構17とに安定してイニシャルトルクを付与することができ、断続機構17の断続特性を向上することができる。
【0092】
また、ピニオンシャフト5,7の皿バネ19の荷重を受ける受面21は、平面で形成されているので、皿バネ19の荷重を面で受けることができ、皿バネ19の荷重を受ける面積を増大させ、より安定して皿バネ19の荷重をピニオンシャフト5,7に付与することができる。
【0093】
さらに、ピニオンシャフト5,7と皿バネ19との間には、ワッシャ23が配置されているので、ワッシャ23を介してピニオンシャフト5,7の周方向に均一に皿バネ19の付勢力を付与することができる。
【0094】
なお、本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置では、断続機構のアクチュエータが、電磁式アクチュエータとなっているが、これに限らず、モータ・ギヤ・カム機構、油圧シリンダ・ピストン機構、モータ・シフトロッド機構、エアダイアフラムなど、種々のアクチュエータを利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…デファレンシャル装置
3…デフケース
5,7…ピニオンシャフト
9…ピニオン
11,13…サイドギヤ
15…差動機構
17…断続機構
19…皿バネ
21…受面
23…ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5