特許第6709691号(P6709691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709691
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】熱機器
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   F24H4/02 S
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-124853(P2016-124853)
(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-227402(P2017-227402A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 務
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−007952(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065496(WO,A1)
【文献】 特開2016−080248(JP,A)
【文献】 特開2013−032885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源、発電装置、または、蓄電池から電力を供給されて動作する熱機器であって、
熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備えるヒートポンプユニットと、
前記ヒートポンプ熱源で加熱された前記熱媒を貯留するタンクを備えるタンクユニットと、
燃料の燃焼によって前記熱媒を加熱する補助熱源と、
前記蓄電池の電力情報を入手可能な電力管理装置との間で通信可能な制御装置と、を備えており、
前記蓄電池は、前記発電装置が発電する電力を充電可能であり、
前記制御装置は、前記電力管理装置から前記蓄電池の前記電力情報を取得可能であり、
前記制御装置は、前記商用電源から供給される電力を用いて動作する第1のモードと、前記蓄電池から供給される電力を用いて動作する第2のモードと、を切り替え可能であり、
前記制御装置は、通常運転と、前記通常運転時の最大消費電力よりも低い抑制電力以下で動作する電力抑制運転と、を切り替え可能であり、
前記制御装置は、前記商用電源からの電力の供給が可能であって、前記第2のモードで動作中であり、かつ、前記蓄電池の前記電力情報に含まれる前記蓄電池の蓄電量が、第1の蓄電量を超えると判断される場合に、前記通常運転を実行し、
前記制御装置は、前記商用電源からの電力の供給が可能であって、前記第2のモードで動作中であり、かつ、前記蓄電量が、前記第1の蓄電量以下であると判断される場合に、前記電力抑制運転を実行し、
前記制御装置は、前記商用電源からの電力の供給が可能であって、前記第2のモードで動作中であり、かつ、前記蓄電量が、前記第1の蓄電量よりも小さい第2の蓄電量以下であると判断される場合に、前記ヒートポンプ熱源による前記熱媒の加熱を禁止する、熱機器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記商用電源からの電力の供給が停止されていて、前記第2のモードで動作中であり、かつ、前記蓄電量が前記第2の蓄電量よりも小さい第3の蓄電量を超えると判断される場合に、前記通常運転を実行し、
前記制御装置は、前記商用電源からの電力の供給が停止されていて、前記第2のモードで動作中であり、かつ、前記蓄電量が前記第3の蓄電量以下であると判断される場合に、前記電力抑制運転を実行する請求項1に記載の熱機器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記商用電源からの電力の供給が停止されていて、前記第2のモードで動作中であり、かつ、前記蓄電量が前記第3の蓄電量よりも小さい第4の蓄電量以下であると判断される場合に、前記ヒートポンプ熱源による前記熱媒の加熱を禁止する、請求項2に記載の熱機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、商用電源または蓄電池から電力を供給されて動作する熱機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−88060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱機器に電力を供給する蓄電池は、発電装置、例えば太陽光発電装置などが発電する電力を充電可能に構成されている場合がある。このような熱機器においては、発電装置によって発電され、蓄電池に蓄えられる電力を有効活用するために、商用電源からの電力の供給が可能な場合であっても、蓄電池から電力が供給されて熱機器が動作する場合がある。また、一般的な蓄電池では、例えば停電など、商用電源から電力が供給されなくなると、蓄電池が自立運転を行い、商用電源に代わって蓄電池が電力供給を行う。しかしながら、商用電源からの電力供給が停止したときの蓄電池の蓄電量が少ない場合、商用電源から電力の供給が再開されるまで蓄電池が自立運転を継続することが困難となってしまう。商用電源から電力が供給されなくなった場合でも、可能な限り蓄電池が自立運転を継続することが可能な技術が期待されている。
【0005】
本明細書では、商用電源から電力が供給されなくなった場合でも、可能な限り蓄電池が自立運転を継続することが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する熱機器は、商用電源、発電装置、または、蓄電池から電力を供給されて動作する。熱機器は、熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備えるヒートポンプユニットと、ヒートポンプ熱源で加熱された熱媒を貯留するタンクを備えるタンクユニットと、燃料の燃焼によって熱媒を加熱する補助熱源と、蓄電池の電力情報を入手可能な電力管理装置との間で通信可能な制御装置と、を備えている。蓄電池は、発電装置が発電する電力を充電可能である。制御装置は、電力管理装置から蓄電池の電力情報を取得可能である。また、制御装置は、商用電源から供給される電力を用いて動作する第1のモードと、蓄電池から供給される電力を用いて動作する第2のモードと、を切り替え可能である。制御装置は、通常運転と、通常運転時の最大消費電力よりも低い抑制電力以下で動作する電力抑制運転と、を切り替え可能である。制御装置は、商用電源からの電力の供給が可能であって、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電池の電力情報に含まれる蓄電池の蓄電量が、第1の蓄電量を超えると判断される場合に、通常運転を実行する。また、制御装置は、商用電源からの電力の供給が可能であって、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電量が、第1の蓄電量以下であると判断される場合に、電力抑制運転を実行する。また、制御装置は、商用電源からの電力の供給が可能であって、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電量が、第1の蓄電量よりも小さい第2の蓄電量以下であると判断される場合に、ヒートポンプ熱源による熱媒の加熱を禁止する。
【0007】
上記の構成では、制御装置は、商用電源からの電力の供給が可能であって、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電量が、第1の蓄電量以下であると判断される場合に、電力抑制運転を実行する。すなわち、熱機器による蓄電池に蓄えられている電力の消費が抑制される。また、上記の構成では、制御装置は、商用電源からの電力の供給が可能であって、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電池の蓄電量が第2の蓄電量以下であると判断される場合に、ヒートポンプ熱源による熱媒の加熱を禁止する。すなわち、熱機器による蓄電池に蓄えられている電力の消費が停止される。このような構成とすることによって、商用電源からの電力の供給が可能な期間において、常に蓄電池の蓄電量をある程度確保しておくことができる。これによって、商用電源からの電力供給が停止した時点での蓄電池の蓄電量を確保することができ、蓄電池に長時間にわたって自立運転を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】給湯システム2の構成を模式的に示す図。
図2】給湯システム2の電力系統を模式的に示す図。
図3】給湯システム2がPVモードで動作している場合の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(特徴1)制御装置は、商用電源からの電力の供給が停止されていて、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電量が第2の蓄電量よりも小さい第3の蓄電量を超えると判断される場合に、前記通常運転を実行してもよい。また、制御装置は、商用電源からの電力の供給が停止されていて、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電量が第3の蓄電量以下であると判断される場合に、電力抑制運転を実行する。
【0010】
上記の構成によると、商用電源からの電力供給がされなくなり、蓄電池が自立運転を行っている場合に、熱機器によって蓄電池の蓄電量を使い切ってしまうことを抑制することができる。これにより、蓄電池に長時間にわたって自立運転を継続させることができる。
【0011】
(特徴2)制御装置は、商用電源からの電力の供給が停止されていて、第2のモードで動作中であり、かつ、蓄電量が第3の蓄電量よりも小さい第4の蓄電量以下であると判断される場合に、ヒートポンプ熱源による熱媒の加熱を禁止してもよい。
【0012】
上記の構成によると、商用電源からの電力供給がされなくなり、蓄電池が自立運転を行っている場合に、熱機器によって蓄電池の蓄電量を使い切ってしまうことを抑制することができる。これにより、蓄電池に長時間にわたって自立運転を継続させることができる。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、本実施例に係る給湯システム2は、HP(ヒートポンプ)ユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えている。
【0014】
HPユニット4は、外気から吸熱して水を加熱する熱源である。HPユニット4は、圧縮機10と、凝縮器12と、膨張弁14と、蒸発器16を備えている。HPユニット4は、冷媒(例えばフロン系冷媒)を、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に循環させることで、外気から吸熱して水を加熱する。圧縮機10は、冷媒を加圧して高温高圧にする。凝縮器12は、水との熱交換により冷媒を冷却する。凝縮器12の水流路の両端部には、それぞれ、HP往き経路19とHP戻り経路21が接続されている。膨張弁14は、冷媒を減圧して低温低圧にする。蒸発器16は、外気との熱交換により冷媒を加熱する。HPユニット4はさらに、凝縮器12に水を循環させる循環ポンプ18と、凝縮器12に流れ込む水の温度を検出する往きサーミスタ20と、凝縮器12から流れ出る水の温度を検出する戻りサーミスタ22と、外気温度を検出するHP外気温度サーミスタ23と、HPユニット4の各構成要素の動作を制御するHPコントローラ24を備えている。
【0015】
タンクユニット6は、タンク30と、混合弁32と、バイパス制御弁34と、を備えている。タンク30は、外側が断熱材で覆われており、内部に水を蓄える密閉型の容器である。本実施例のタンク30の容量は、例えば100リットルである。HPユニット4の循環ポンプ18が駆動すると、タンク30の底部の水が、タンク往き経路31およびHP往き経路19を介して、凝縮器12へ送られる。凝縮器12で加熱されて高温となった水は、HP戻り経路21およびタンク戻り経路33を介して、タンク30の頂部からタンク30内に戻される。HPユニット4によって加熱された水がタンク30に流れ込むと、タンク30の内部には、低温の水の層の上に高温の水の層が積み重なった温度成層が形成される。タンク30には、上部の水の温度を検出する上部サーミスタ36と、中間部の水の温度を検出する中間部サーミスタ37と、下部の水の温度を検出する下部サーミスタ38が取り付けられている。本実施例では、上部サーミスタ36はタンク30の頂部から6リットルの位置に配置されており、中間部サーミスタ37はタンク30の頂部から12リットルの位置に配置されており、下部サーミスタ38はタンク30の頂部から30リットルの位置に配置されている。
【0016】
タンクユニット6には、給水経路40を介して水道水が供給される。給水経路40には、給水圧力を減圧する減圧弁42と、給水温度を検出する入水サーミスタ44が取り付けられている。給水経路40は、タンク30の底部に連通するタンク給水経路46と、混合弁32に連通するタンクバイパス経路48に分岐している。タンク給水経路46とタンクバイパス経路48には、それぞれ逆止弁50、52が取り付けられている。また、タンクバイパス経路48には、混合弁32に流入する水道水の流量を検出する水側水量センサ54が取り付けられている。タンク30の頂部と混合弁32は、タンク出湯経路56を介して連通している。タンク出湯経路56には、逆止弁58と、混合弁32に流入するタンク30からの水の流量を検出する湯側水量センサ60が取り付けられている。
【0017】
混合弁32は、タンクバイパス経路48から流れ込む水道水と、タンク出湯経路56から流れ込むタンク30からの水を混合して、第1給湯経路62に送り出す。混合弁32は、ステッピングモータによって弁を駆動し、タンクバイパス経路48側の開度(水側の開度)と、タンク出湯経路56側の開度(湯側の開度)を調整する。第1給湯経路62には、混合弁32から送り出される水の温度を検出する混合サーミスタ64が取り付けられている。
【0018】
タンクユニット6からは、第2給湯経路66を介して、台所やシャワー、カラン等の給湯箇所への給湯が行われる。第2給湯経路66には、給湯箇所へ供給される水の温度を検出する給湯出口サーミスタ68と、逆止弁70が取り付けられている。第1給湯経路62と第2給湯経路66の間は、給湯バイパス経路72によって連通している。給湯バイパス経路72には、バイパス制御弁34が取り付けられている。
【0019】
タンクユニット6はさらに、タンクコントローラ74を備えている。タンクコントローラ74は、タンクユニット6の各構成要素の動作を制御する。また、タンクコントローラ74は、不揮発性メモリ75を備えている。不揮発性メモリ75には、後述する加熱運転における給湯システム2の最大消費電力PCMAXが記憶されている。
【0020】
バーナユニット8は、バーナ80と、熱交換器82と、バイパスサーボ84と、水量サーボ86と、湯はり弁88と、を備えている。バーナ80は、燃料ガスの燃焼によって熱交換器82を流れる水を加熱する補助熱源機である。バーナ80には、ガス供給管81を介して燃料ガスが供給される。熱交換器82には、バーナ往路90を介して、タンクユニット6の第1給湯経路62からの水が流れ込む。熱交換器82を通過した水は、バーナ復路92を介して、タンクユニット6の第2給湯経路66へ流れ出る。バーナ往路90には、バーナ往路90を流れる水の流量を調整する水量サーボ86と、バーナ往路90を流れる水の流量を検出する水量センサ91が取り付けられている。バーナ往路90とバーナ復路92の間は、バーナバイパス経路94を介して連通している。バーナ往路90とバーナバイパス経路94の接続部に、バイパスサーボ84が取り付けられている。バイパスサーボ84は、バーナ往路90からバーナバイパス経路94へ流れる水の流量を調整する。バーナ復路92には、熱交換器82から流れ出る水の温度を検出するバーナ給湯サーミスタ96が取り付けられている。バーナ復路92からは、湯はり経路98が分岐している。バーナ復路92において、湯はり経路98には、湯はり弁88が取り付けられている。バーナユニット8からは、湯はり経路98を介して、給湯箇所である浴槽への湯はりが行われる。
【0021】
バーナユニット8はさらに、バーナユニット8の各構成要素の動作を制御するバーナコントローラ100と、リモコン102を備えている。リモコン102は、バーナコントローラ100と通信可能である。また、リモコン102は、バーナコントローラ100を介して、タンクコントローラ74と通信可能である。リモコン102は、スイッチやボタンなどを介して、ユーザからの各種の操作入力を受け入れる。各種の入力とは、例えば、後述する加熱運転の指示などである。また、リモコン102は、表示や音声によってユーザに給湯システム2の設定や動作に関する各種の情報を通知する。また、リモコン102は、Wi−Fiルータ190を介して、電力管理装置192と通信可能である。電力管理装置192は、例えば、HEMS(Home Energy Management System)コントローラである。電力管理装置192は、給湯システム2が設置されている家屋内に設けられている機器である。電力管理装置192は、給湯システム2が設置されている家屋における電力および燃料の供給量や消費量を管理している。また、電力管理装置192は、外部のネットワークと接続可能である。電力管理装置192は、給湯システム2が設置されている家屋における電力および燃料に関する様々な情報やメッセージを表示することができる。
【0022】
HPコントローラ24とタンクコントローラ74は、互いに通信可能である。タンクコントローラ74とバーナコントローラ100は、互いに通信可能である。従って、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100が協調して制御を行うことで、給湯システム2は加熱運転、給湯運転等の各種の動作を行うことができる。以下では、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100を総称して、単にコントローラとも呼ぶ。
【0023】
(給湯システム2の電力系統)
図2は、給湯システム2が設置される家屋の電力系統を示している。給湯システム2のHPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8には、分電盤112から電力が供給される。分電盤112には、商用電源110が接続されている。また、分電盤112には、DCACコンバータ(直流−交流変換器)118を介して、太陽光発電装置114および蓄電装置116が接続されている。太陽光発電装置114は、太陽光を受光することによって発電する装置である。蓄電装置116は、太陽光発電装置114が発電した電力のうち、給湯システム2および電気機器120(以下では、総称して電力消費機器と呼ぶ)で使われずに余った電力を蓄える。太陽光発電装置114が発電した直流電力、または、蓄電装置116の直流電力は、DCACコンバータ118によって、交流電力に変換され、分電盤112に供給される。DCACコンバータ118から供給される電力では、電力消費機器の消費電力を賄うのに不十分な場合、不足分の電力は商用電源110からの電力で補われる。また、太陽光発電装置114の発電電力が電力消費機器の消費電力を上回る場合、余剰の電力は蓄電装置116に蓄えられる。太陽光発電装置114、蓄電装置116、および、電気機器120は、Wi−Fiルータ190を介して、電力管理装置192と通信可能である。これにより、電力管理装置192は、蓄電装置116の電力情報、電気機器120の電力情報を管理することができる。
【0024】
商用電源110から電力が供給されている場合において、給湯システム2は、商用電源110および太陽光発電装置114から供給される電力を用いて動作する通常モードと、蓄電装置116および太陽光発電装置114から供給される電力を用いて動作するPV(Photovoltalicの略)モードと、を切り替えることができる。なお、各モードの切り替えは、例えば、ユーザがリモコン102を操作することで切り替えることができる。また、PVモードで動作している場合において、給湯システム2は、通常運転と、通常運転時の最大消費電力PCMAXよりも低い抑制電力PSで動作する電力抑制運転と、を切り替えることができる。なお、抑制電力PSは、例えば、ユーザがリモコン102を操作することで設定することができる。通常運転と電力抑制運転の切り替えについては、後で詳しく説明する。なお、通常モードで動作している場合、給湯システム2は、通常運転で動作する。
【0025】
また、例えば停電などによって、商用電源110から電力が供給されない状態になると、蓄電装置116は、自立運転を実行する。蓄電装置116が自立運転を実行すると、蓄電装置116からの電力は、DCACコンバータ118および分電盤112を介して、電気機器120、HPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8に供給される。また、蓄電装置116が自立運転を実行している場合において、給湯システム2は、上述の通常運転と電力抑制運転を切り替えることができる。なお、本実施例では、給湯システム2がPVモードで動作している場合の電力抑制運転と蓄電装置116が自立運転を実行している場合の電力抑制運転において、同じ抑制電力PSが設定されている。給湯システム2がPVモードで動作している場合の電力抑制運転と蓄電装置116が自立運転を実行している場合の電力抑制運転において、それぞれの抑制電力PSが異なっていてもよい。
【0026】
次いで、図1を参照しながら、給湯システム2の動作について説明する。給湯システム2は、加熱運転と、給湯運転と、を実行することができる。
【0027】
(加熱運転)
加熱運転では、給湯システム2は、HPユニット4を駆動して、タンク30内の水を沸かし上げる。加熱運転が開始されると、HPコントローラ24は、圧縮機10を駆動して、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で水を循環させる。これによって、タンク30の底部から吸い出された水は、凝縮器12において目標温度TA(例えば45℃)まで加熱されて、タンク30の頂部に戻される。タンク30内の水のうち目標加熱水量TWが、目標温度TAまで加熱された水で置き換えられると、HPコントローラ24は加熱運転を終了する。なお、目標加熱水量TWとは、加熱運転により目標温度TAまで加熱する水量である。
【0028】
(給湯運転)
給湯運転では、給湯設定温度の水を給湯箇所へ供給する。コントローラは、水側水量センサ54で検出される流量と、湯側水量センサ60で検出される流量を合算した流量(給湯流量ともいう)が最低動作流量(例えば2.4L/分)以上となると、給湯箇所の開栓や浴槽への湯張りなどにより給湯が開始されたものと判断する。そして、コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度に応じて、以下の非燃焼給湯運転または燃焼給湯運転を実行する。
【0029】
上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度以上である場合、コントローラは、非燃焼給湯運転を実行する。非燃焼給湯運転では、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を禁止するとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が給湯設定温度となるように、混合弁32の開度を調整する。これによって、給湯箇所に給湯設定温度に温度調整された水が供給される。
【0030】
上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度未満の場合、コントローラは、燃焼給湯運転を実行する。燃焼給湯運転では、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を許可するとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が、給湯設定温度よりもバーナ80の最小加熱能力の分だけ低い温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、タンク30の上部から供給される高温の水と、給水経路40から供給される低温の水が、混合弁32において混合された後、バーナ80によって給湯設定温度まで加熱されて、給湯箇所へ供給される。
【0031】
上記の非燃焼給湯運転または燃焼給湯運転を実行中に、給湯流量が最低動作流量を下回ると、コントローラは、給湯箇所の閉栓や浴槽への湯張りの終了などにより給湯が終了したものと判断して、給湯運転を終了する。
【0032】
(PVモード中の処理)
次に、図3を用いて、本実施例の特徴的な機能であるPVモードで給湯システム2が動作する場合の処理について説明する。PVモードで動作するように設定されているため、商用電源110から電力が供給されている場合において、給湯システム2は、太陽光発電装置114および蓄電装置116から供給される電力を利用して動作する。
【0033】
ステップS2において、コントローラは、電力管理装置192から蓄電装置116の電力情報を取得する。具体的には、コントローラは、リモコン102およびWi−Fiルータ190を介して、電力管理装置192に、蓄電装置116の電力情報の送信を要求する要求信号を送信する。電力管理装置192は、要求信号を受信したら、蓄電装置116の電力情報を、コントローラに送信する。なお、蓄電装置116の電力情報には、蓄電装置116の蓄電量EC、放電電力PD、および、後述する処理で用いられる第1の蓄電量EC1〜第4の蓄電量EC4が含まれる。第1の蓄電量EC1〜第4の蓄電量EC4は、ユーザが、電力管理装置192に入力することができる。なお、第1の蓄電量EC1〜第4の蓄電量EC4は、EC4<EC3<EC2<EC1の関係がある。本実施例において、第1の蓄電量EC1〜第4の蓄電量EC4は、電力管理装置192から給湯システム2に送信されるが、給湯システム2の不揮発性メモリ75に、予め記憶されていてもよい。
【0034】
ステップS4において、コントローラは、電気機器120の電力情報を取得する。具体的には、コントローラは、リモコン102およびWi−Fiルータ190を介して、電力管理装置192に、電気機器120の電力情報の送信を要求する要求信号を送信する。電力管理装置192は、要求信号を受信したら、電気機器120の電力情報をコントローラに送信する。電気機器120の電力情報には、電気機器120の消費電力PC1などが含まれる。
【0035】
ステップS6において、コントローラは、停電中か否かを判断する。具体的には、コントローラは、電力管理装置192から、商用電源110からの電力の供給が停止していることを示す信号を受信することで、停電中であると判断する。停電中でないと判断される場合(ステップS6でNO)、処理は、ステップS8に進む。一方、停電中であると判断される場合(ステップS6でYES)、処理は、ステップS20に進む。
【0036】
ステップS8において、コントローラは、蓄電装置116の蓄電量ECが第2の蓄電量EC2以下か否かを判断する。なお、第2の蓄電量EC2は、商用電源110から電力が供給されている場合であり、かつ、PVモードで動作している場合において、加熱運転の実行を許可するか否かを判断する閾値である。
【0037】
蓄電量ECが第2の蓄電量EC2以下と判断される場合(ステップS8でYES)、処理は、ステップS10に進む。ステップS10において、コントローラは、燃焼給湯優先運転を実行する。具体的には、コントローラは、給湯システム2の燃焼給湯運転を許可するとともに、給湯システム2の非燃焼給湯運転を禁止する。また、コントローラは、給湯システム2の加熱運転を禁止する。従って、給湯システム2により、蓄電装置116に蓄えられている電力が消費されることが停止される。これにより、商用電源110から電力が供給されている期間の蓄電装置116の蓄電量ECが、第2の蓄電量EC2を下回ることを抑制することができる。この結果、商用電源110からの電力の供給が停止したときの蓄電装置116の蓄電量ECが第2の蓄電量EC2を下回ることを抑制することができる。なお、タンク30に高温の水が貯湯されている場合、コントローラは、タンク30内の高温の水を使い切った後に、燃焼給湯優先運転を実行するとよい。これにより、加熱運転によって加熱された高温の水を効率的に使用することができるとともに、給湯の際に使用される燃料ガスの使用量を低減することができる。
【0038】
一方、蓄電装置116の蓄電量ECが第2の蓄電量EC2を超えていると判断される場合(ステップS8でNO)、処理は、ステップS12に進む。蓄電量ECが第2の蓄電量EC2を超えている場合とは、蓄電装置116から供給される電力を用いて、加熱運転を実行することが許可されている場合である。
【0039】
ステップS12において、コントローラは、蓄電装置116の蓄電量ECが第1の蓄電量EC1以下か否かを判断する。なお、第1の蓄電量EC1は、商用電源110から電力が供給されている場合であり、かつ、PVモードで動作している場合において、電力抑制運転を実行するか否かを判断するための閾値である。
【0040】
蓄電量ECが第1の蓄電量EC1以下であると判断される場合(ステップS12でYES)、処理は、ステップS14に進む。ステップS14において、コントローラは、非燃焼給湯優先運転、および、電力抑制運転を実行する。従って、ステップS12でYESと判断された後に、ユーザにより加熱運転の実行を指示する旨の指示があった場合、コントローラは、抑制電力PSに基づいて、加熱運転を実行する。これにより、給湯システム2の消費電力PC2が抑制される。この結果、蓄電量ECが第2の蓄電量EC2に低下するまでの時間を長くすることができる。また、給湯箇所へ水の供給が必要となった場合、コントローラは、まず、非燃焼給湯運転を実行する。次いで、コントローラは、非燃焼給湯運転を実行中に、上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度未満であると判断される場合に、燃焼給湯運転を非燃焼給湯運転に切り替える。これにより、給湯システム2の消費電力を抑制するとともに、給湯箇所に給湯設定温度に温度調整された水を供給することができる。
【0041】
一方、蓄電量ECが第1の蓄電量EC1を超えていると判断される場合(ステップS12でNO)、処理は、ステップS16に進む。蓄電量ECが第1の蓄電量EC1を超えているとは、蓄電量ECに比較的に余裕がある状態である。このため、ステップS16において、コントローラは、非燃焼給湯優先運転および通常運転を実行する。従って、ステップS12でNOと判断された後に、ユーザにより加熱運転の実行を指示する旨の指示があった場合、コントローラは、給湯システム2の消費電力PC2を抑制することなく加熱運転を実行する。なお、非燃焼給湯優先運転については、ステップS14の場合と同様である。
【0042】
ステップS20において、コントローラは、電気機器120の消費電力PC1が、上限電力PU未満か否かを判断する。コントローラは、ステップS2で取得した蓄電装置116の放電電力PD、および、不揮発性メモリ75に記憶されている最大消費電力PCMAXに基づいて、上限電力PUを特定する。コントローラは、放電電力PDから最大消費電力PCMAXを減算することで、上限電力PUを特定する。上述のように、停電中は、蓄電装置116から電力が給湯システム2および電気機器120に供給される。しかしながら、蓄電装置116から放電される電力が放電電力PDを超える場合、蓄電装置116から供給される電力が遮断される。このため、コントローラは、合計消費電力PC3が、放電電力PDを超えることがないように、給湯システム2を制御する。なお、商用電源110から電力が供給されている場合であり、かつ、PVモードで動作している場合に、合計消費電力PC3が放電電力PDを超える場合、放電電力PDを超える分の電力は、商用電源110から供給される。従って、商用電源110から電力が供給されている場合であり、かつ、PVモードで動作している場合に、蓄電装置116から放電される電力は、放電電力PDを超えない。
【0043】
電気機器120の消費電力PC1が上限電力PU以上であると判断される場合(ステップS20でNO)、処理は、ステップS10に進む。電気機器120の消費電力PC1が上限電力PU以上である場合、加熱運転を実行すると、給湯システム2の消費電力PC2と電気機器120の消費電力PC1の合計消費電力PC3が、放電電力PDを超える可能性がある。従って、コントローラは、ステップS10において、給湯システム2の加熱運転を禁止することで、合計消費電力PC3が、放電電力PDを超えることを回避する。
【0044】
一方、電気機器120の消費電力PC1が上限電力PU未満であると判断される場合(ステップS20でYES)、処理は、ステップS22に進む。ステップS22において、コントローラは、蓄電装置116の蓄電量ECが第4の蓄電量EC4以下か否かを判断する。なお、第4の蓄電量EC4は、商用電源110からの電力の供給が停止している場合において、加熱運転の実行を許可するか否かを判断する閾値である。
【0045】
蓄電量ECが第4の蓄電量EC4以下であると判断される場合(ステップS22でYES)の場合、処理は、ステップS10に進み、コントローラは、燃焼給湯優先運転を実行する。ステップS10において、コントローラが非燃焼給湯優先運転を実行することで、給湯システム2による蓄電装置116に蓄えられている電力の消費が停止される。これにより、蓄電装置116に蓄えられている電力の消費を抑制することができる。
【0046】
一方、蓄電量ECが第4の蓄電量EC4を超えていると判断される場合(ステップS22でNO)、処理は、ステップS24に進む。ステップS24において、コントローラは、蓄電量ECが第3の蓄電量EC3以下か否かを判断する。第3の蓄電量EC3は、商用電源110からの電力の供給が停止している場合において、電力抑制運転を実行するか否かを判断するための閾値である。
【0047】
蓄電量ECが第3の蓄電量EC3以下であると判断される場合(ステップS24でYES)、処理は、ステップS14に進む。ステップS14において、コントローラは、非燃焼給湯優先運転、および、電力抑制運転を実行する。ステップS14において、コントローラが、電力抑制運転を実行することで、給湯システム2が消費する電力が抑制される。これにより、蓄電装置116に蓄えられている電力の消費を抑制することができる。
【0048】
一方、蓄電量ECが第3の蓄電量EC3を超えていると判断される場合(ステップS24でNO)、処理は、ステップS16に進む。蓄電量ECが第3の蓄電量EC3を超えている場合、蓄電量ECは、比較的に余裕がある状態である。このため、ステップS16において、コントローラは、非燃焼給湯優先運転および通常運転を実行する。すなわち、給湯システム2は、給湯システム2の消費電力PC2を抑制することなく加熱運転を実行する。
【0049】
上述のように、商用電源110から電力が供給されている場合であり、PVモードで動作中であり、かつ、蓄電装置116の蓄電量ECが第1の蓄電量EC1以下の場合(図3のステップS12でYES)、コントローラは、電力抑制運転を実行する。これにより、給湯システム2による蓄電装置116に蓄えられている電力の消費が抑制される。また、商用電源110から電力が供給されている場合であり、PVモードで動作中であり、かつ、蓄電装置116の蓄電量ECが第2の蓄電量EC2以下の場合(ステップS8でYES)、コントローラは、加熱運転を禁止する。これにより、給湯システム2による蓄電装置116に蓄えられている電力の消費が停止される。このような構成にすることによって、商用電源110からの電力の供給が可能な期間において、常に蓄電装置116の蓄電量ECをある程度確保しておくことができる。これによって、商用電源110からの電力供給が停止した時点での蓄電装置116の蓄電量ECを確保することができる。また、蓄電装置116に長時間にわたって自立運転を継続させることができる。
【0050】
また、蓄電装置116が自立運転中であり、かつ、蓄電装置116の蓄電量ECが第3の蓄電量EC3以下の場合(図3のステップS24でYES)、コントローラは、電力抑制運転を実行する。これにより、給湯システム2によって蓄電装置116の蓄電量ECを使い切ってしまうことを抑制することができる。これにより、蓄電装置116に長時間にわたって自立運転を継続させることができる。
【0051】
また、蓄電装置116が自立運転中であり、かつ、蓄電装置116の蓄電量ECが第4の蓄電量EC4以下の場合(図3のステップS22でYES)、コントローラは、加熱運転を禁止する。これにより、給湯システム2によって蓄電装置116の蓄電量ECを使い切ってしまうことを抑制することができる。これにより、蓄電装置116に長時間にわたって自立運転を継続させることができる。
【0052】
(対応関係)
水が、「熱媒」の一例である。給湯システム2が、「熱機器」の一例である。圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16から構成されるヒートポンプサイクルが、「ヒートポンプ熱源」の一例である。太陽光発電装置114、蓄電装置116のそれぞれが、「発電装置」、「蓄電池」の一例である。通常モード、PVモードのそれぞれが、「第1のモード」、「第2のモード」の一例である。コントローラが、「制御装置」の一例である。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
2 :給湯システム
4 :HPユニット
6 :タンクユニット
8 :バーナユニット
10 :圧縮機
12 :凝縮器
14 :膨張弁
16 :蒸発器
18 :循環ポンプ
19 :HP往き経路
20 :往きサーミスタ
21 :HP戻り経路
22 :戻りサーミスタ
23 :HP外気温度サーミスタ
24 :HPコントローラ
30 :タンク
31 :タンク往き経路
32 :混合弁
33 :タンク戻り経路
34 :バイパス制御弁
36 :上部サーミスタ
37 :中間部サーミスタ
38 :下部サーミスタ
40 :給水経路
42 :減圧弁
44 :入水サーミスタ
46 :タンク給水経路
48 :タンクバイパス経路
50 :逆止弁
52 :逆止弁
54 :水側水量センサ
56 :タンク出湯経路
58 :逆止弁
60 :湯側水量センサ
62 :第1給湯経路
64 :混合サーミスタ
66 :第2給湯経路
68 :給湯出口サーミスタ
70 :逆止弁
72 :給湯バイパス経路
74 :タンクコントローラ
75 :不揮発性メモリ
80 :バーナ
81 :ガス供給管
82 :熱交換器
84 :バイパスサーボ
86 :水量サーボ
88 :湯はり弁
90 :バーナ往路
91 :水量センサ
92 :バーナ復路
94 :バーナバイパス経路
96 :バーナ給湯サーミスタ
98 :湯はり経路
100 :バーナコントローラ
102 :リモコン
110 :商用電源
112 :分電盤
114 :太陽光発電装置
116 :蓄電装置
118 :DCACコンバータ
120 :電気機器
190 :Wi−Fiルータ
192 :電力管理装置
図1
図2
図3