(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通行量決定手段は、移動開始位置範囲及び移動終了位置範囲の組毎に、当該組に係るODの数と、当該組に対応付けられた使用割合に係る情報とに基づいて、当該対象経路における当該組に係る通行量を算出し、算出された当該組に係る通行量を組について総計して、当該対象経路における通行量を決定することを特徴とする請求項1に記載の通行量推定装置。
前記使用割合決定手段は、移動開始位置範囲及び移動終了位置範囲の組毎に、当該移動開始位置範囲及び当該移動終了位置範囲を通る当該位置情報に係るログ群の数と、当該移動開始位置範囲及び当該移動終了位置範囲を通り且つ当該対象経路を通る当該位置情報に係るログ群の数とに基づいて、当該使用割合に係る情報を決定することを特徴とする請求項4に記載の通行量推定装置。
前記使用割合決定手段は、当該通行体における当該位置情報の不在又は不足に起因して使用割合に係る情報を算出できない移動開始位置範囲及び移動終了位置範囲の組に対し、該組に係る移動開始位置範囲又は移動終了位置範囲に隣接する若しくは近傍となる移動開始位置範囲又は移動終了位置範囲を含む組について決定された使用割合に係る情報に基づいて、使用割合に係る情報を決定することを特徴とする請求項4又は5に記載の通行量推定装置。
前記使用割合決定手段は、当該対象経路以外の経路についての使用割合に係る情報も決定し、前記通行量決定手段は、当該対象経路を含む経路毎の通行量を決定することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の通行量推定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、携帯端末の測位結果を用いて交通量を推定する技術には、上記の特許文献2の技術のように携帯端末と通信接続する基地局での通信履歴を用いるものと、端末に搭載されたGPS測位部等の別の測位手段によって生成された位置履歴を用いるものとが存在する。ここで、上記の特許文献1に記載の技術は、ユーザの位置情報が高精度に取得可能なことを前提としており、例えば、後者のGPS測位手段を利用して実施することも可能である。
【0008】
実際、道路や鉄道等の路線・経路における交通量を調査する場合、例えば特定の道路区間での交通規制による他区間への影響を調べる場合のように、広い地域範囲における各経路の交通量を把握しなければならないことが多い。さらに、交通量の絶対値を把握することを考えると、端末の位置測位データは大量に必要となる。
【0009】
しかしながら、携帯端末毎にアドオンするアプリを要するGPS測位結果は、通常、広い地域範囲において予め大量に取得することができない。従って、このようなGPS測位結果を利用して、例えば1つの地域に分布する各路線・経路における交通量の絶対値を推定することは非常に困難となる。また、位置測位データをできるだけ多く取得するために、携帯端末においてGPS測位手段及びそのアプリを常時又は定期的に起動させると、携帯端末の電池の消耗が早まるのみならず、各携帯端末からのパケットの送出量が増大し、通信の輻輳を招く恐れが生じる。
【0010】
一方、携帯端末と通信接続する基地局経由で取得される位置測位結果は、そのようなアプリを必要としないので、通信事業者にとっては広い地域範囲において大量に取得することが可能である。しかしながら、このような基地局を用いた位置測位結果は、一般に、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でないという特徴を有している。すなわち、空間的にも時間的にも低精度であるので測位結果誤差が比較的大きい傾向にある。そのため、例えば交通規制対象の道路区間と、鉄道等の隣接する公共交通路線との位置の識別が困難となるケースがしばしば発生する。その結果、対象経路における交通量の推定結果の精度も大きく低下する問題が生じてしまうのである。
【0011】
実際、上述した特許文献2に記載の技術では、基地局の通信範囲を複数含む広いエリア間での断面交通量は算出できるものの、通信範囲よりも狭いエリア間の交通量や通信範囲内に複数の道路が存在するとした場合の個々の道路における交通量は算出できない。
【0012】
そこで、本発明は、考慮すべき地域範囲における各経路での通行状況も勘案した上で、対象経路の通行量をより高い精度で推定することができる装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、通行体と同行する携帯端末の通信履歴から、対象経路における通行量を推定する通行量推定装置であって、
取得された当該通信履歴に基づいて、1つの移動の開始位置を含む移動開始位置範囲に係る情報Oと、該1つの移動の終了位置を含む移動終了位置範囲に係る情報Dとの組であるODを生成するOD生成手段と、
当該対象経路の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、情報Oに係る移動開始位置範囲及び情報Dに係る移動終了位置範囲が含まれるODの数を算出するOD計数手段と、
1つの移動開始位置範囲及び1つの移動終了位置範囲を通る当該通行体が当該対象経路を使用する割合である使用割合に係る情報
であって、当該通行体又は当該携帯端末についての実際の測定から導出された実際に係る情報としての使用割合に係る情報を、該移動開始位置範囲及び該移動終了位置範囲の組に対応付けて保存する使用割合保存手段と、
算出された当該ODの数と当該使用割合に係る情報とに基づいて、当該対象経路における
実際に係る通行量を決定する通行量決定手段と
を有する通行量推定装置が提供される。
【0014】
この本発明による通行量推定装置において、通行量決定手段は、移動開始位置範囲及び移動終了位置範囲の組毎に、当該組に係るODの数と、当該組に対応付けられた使用割合に係る情報とに基づいて、当該対象経路における当該組に係る通行量を算出し、算出された当該組に係る通行量を組について総計して、当該対象経路における通行量を決定することも好ましい。
【0015】
また、本発明
によれば、通行体と同行する携帯端末の通信履歴から、対象経路における通行量を推定する通行量推定装置であって、
取得された当該通信履歴に基づいて、1つの移動の開始位置を含む移動開始位置範囲に係る情報Oと、該1つの移動の終了位置を含む移動終了位置範囲に係る情報Dとの組であるODを生成するOD生成手段と、
当該対象経路の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、情報Oに係る移動開始位置範囲及び情報Dに係る移動終了位置範囲が含まれるODの数を算出するOD計数手段と、
当該携帯端末に搭載された測位手段、又は当該対象経路を含む地域に設置された当該通行体を検出可能な検出手段から取得される当該通行体における位置情報と、当該対象経路の所在位置情報とに基づいて、
1つの移動開始位置範囲及び1つの移動終了位置範囲を通る当該通行体が当該対象経路を使用する割合である使用割合に係る情報を決定する使用割合決定手段
と、
決定された使用割合に係る情報を、当該1つの移動開始位置範囲及び当該1つの移動終了位置範囲の組に対応付けて保存する使用割合保存手段と、
算出された当該ODの数と、保存された当該使用割合に係る情報とに基づいて、当該対象経路における通行量を決定する通行量決定手段と
を有する通行量推定装置が提供される。
【0016】
さらに、上記の使用割合決定手段を有する
本発明の通行量推定装置において、この使用割合決定手段は、移動開始位置範囲及び移動終了位置範囲の組毎に、当該移動開始位置範囲及び当該移動終了位置範囲を通る当該位置情報に係るログの数と、当該移動開始位置範囲及び当該移動終了位置範囲を通り且つ当該対象経路を通る当該位置情報に係るログの数とに基づいて、当該使用割合に係る情報を決定することも好ましい。
【0017】
また、同じく上記の使用割合決定手段を有する
本発明の通行量推定装置において、この使用割合決定手段は、当該通行体における当該位置情報の不在又は不足に起因して使用割合に係る情報を算出できない移動開始位置範囲及び移動終了位置範囲の組に対し、この組に係る移動開始位置範囲又は移動終了位置範囲に隣接する若しくは近傍となる移動開始位置範囲又は移動終了位置範囲を含む組について決定された使用割合に係る情報に基づいて、使用割合に係る情報を決定することも好ましい。
【0018】
さらに、同じく上記の使用割合決定手段を有する
本発明の通行量推定装置において、この使用割合決定手段は、当該対象経路以外の経路についての使用割合に係る情報も決定し、通行量決定手段は、当該対象経路を含む経路毎の通行量を決定することも好ましい。
【0019】
また、本発明による通行量推定装置の一実施形態として、本装置は、
予め取得された経路地図情報に基づいて、1つの経路についての迂回経路を検索する迂回経路検索手段と、
当該1つの経路における通行が制限された場合における、検索された迂回経路での通行量の変化を、当該1つの経路について決定された通行量と、当該迂回経路について決定された通行量とに基づいて推定する通行影響推定手段と
を更に有することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、また、通行体と同行する携帯端末の通信履歴から、対象経路における通行量を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
取得された当該通信履歴に基づいて、1つの移動の開始位置を含む移動開始位置範囲に係る情報Oと、該1つの移動の終了位置を含む移動終了位置範囲に係る情報Dとの組であるODを生成するOD生成手段と、
当該対象経路の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、情報Oに係る移動開始位置範囲及び情報Dに係る移動終了位置範囲が含まれるODの数を算出するOD計数手段と、
1つの移動開始位置範囲及び1つの移動終了位置範囲を通る当該通行体が当該対象経路を使用する割合である使用割合に係る情報
であって、当該通行体又は当該携帯端末についての実際の測定から導出された実際に係る情報としての使用割合に係る情報を、該移動開始位置範囲及び該移動終了位置範囲の組に対応付けて保存する使用割合保存手段と、
算出された当該ODの数と当該使用割合に係る情報とに基づいて、当該対象経路における
実際に係る通行量を決定する通行量決定手段と
してコンピュータを機能させる通行量推定プログラムが提供される。
【0021】
本発明によれば、さらに、通行体と同行する携帯端末の通信履歴から、対象経路における通行量を推定する装置に搭載されたコンピュータにおいて実施される通行量推定方法であって、
取得された当該通信履歴に基づいて、1つの移動の開始位置を含む移動開始位置範囲に係る情報Oと、該1つの移動の終了位置を含む移動終了位置範囲に係る情報Dとの組であるODを生成するステップと、
当該対象経路の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、情報Oに係る移動開始位置範囲及び情報Dに係る移動終了位置範囲が含まれるODの数を算出するステップと、
1つの移動開始位置範囲及び1つの移動終了位置範囲を通る当該通行体が当該対象経路を使用する割合である使用割合に係る情報
であって、当該通行体又は当該携帯端末についての実際の測定から導出された実際に係る情報としての使用割合に係る情報を、該移動開始位置範囲及び該移動終了位置範囲の組に対応付けて保存するステップと、
算出された当該ODの数と当該使用割合に係る情報とに基づいて、当該対象経路における
実際に係る通行量を決定するステップと
を有する通行量推定方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の装置、プログラム及び方法によれば、考慮すべき地域範囲における各経路での通行状況も勘案した上で、対象経路の通行量をより高い精度で推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1は、携帯端末における種々の経路を介した滞在及び移動の例を概略的に示す模式図である。
【0026】
図1によれば、携帯端末2を所持若しくは携帯した又は身近に設置したユーザが、自宅から勤務先の会社まで、経路A(鉄道)、経路B(高速道路)及び経路C(一般道)のうちのいずれかを介して通勤を行っている。
【0027】
携帯端末2は、ユーザと同行可能な通信端末であって、例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブル端末又は携帯電話機等とすることができる。本実施形態において、携帯端末2は、どの位置にあってもいずれかの基地局3の配下にあり、当該基地局3と無線での通信を行い続けている。なお、携帯端末2が例えば円滑なハンドオーバを目的として一時に複数の基地局と交信し、そのうち例えば最も信号強度の高い基地局と通信を行うことも好ましい。
【0028】
基地局3は、広域無線通信網(携帯電話網)に接続されており、自身の配下にある携帯端末2毎に、通信した際の日時刻(例えば通信を開始又は終了した日時刻)を含む情報を取得する。このような情報の取得は、通話、メールの送受信や、ウェブ(Web)ページの閲覧、さらには、携帯端末2にインストールされたアプリケーションとサーバとの間の通信や、アプリケーション若しくはコンテンツのダウンロードやアップロード等の際に実施される。
【0029】
また、
図1には示されていないが、これらの多数の基地局3と通信接続されていてこれらの局を統合する通信設備装置1(
図2)が設置されている。通信設備装置1は、基地局3と通信を行う携帯端末2毎に、通信した際の日時刻の情報と、通信対象となった基地局3の情報とを含む通信レコード(通信ログ)を常時収集することができる。この通信レコードを時系列でまとめたものが通信履歴となる。一般に、通信履歴は、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局の位置情報を含む。ここで、「空間的粒度が粗く」とは、位置情報の間の実空間での(地理的な)距離が比較的長いことを意味する。また、「時間間隔が一定でない」とは、位置情報に対応付けられた日時刻情報の間の時間間隔が通信タイミングに依存してばらついていることを意味する。
【0030】
ここで、(
図1では1人しか示されていないが、実際には)多数のユーザは、
図1に示すような通勤の間に、経路A〜Cのいずれを利用する場合であっても「滞在」及び「移動」を行うことになる。このような「滞在」及び「移動」についての場所及び時刻が、上記のような特徴を有する通信履歴を用いて推定可能となっている。例えば、後にその内容を説明するが、本出願人の出願による特開2014−116808公報や、特開2016−48529号公報に滞在移動判定技術が開示されている。
【0031】
本発明による通行量推定装置としての通信設備装置1(
図2)は、このような通信履歴から導出された多数のユーザについての「滞在」及び「移動」に係る情報から、経路A〜Cの各々を通行するユーザ(携帯端末2)の数、すなわち経路毎の通行量(交通量)を推定することを可能とする。具体的に、この通信設備装置1は、
(A)取得された通信履歴に基づいて、1つの移動の開始位置を含む「移動開始位置範囲(O位置範囲)」に係る「情報O」と、この1つの移動の終了位置を含む「移動終了位置範囲(D位置範囲)」に係る「情報D」との組である「OD(ODセット)」を生成し、
(B)対象経路の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、「情報O」に係る「O位置範囲」及び「情報D」に係る「D位置範囲」が含まれる「ODセット」の数を算出し、
(C)1つの「O位置範囲」及び1つの「D位置範囲」を通る通行体が対象経路を使用する割合である「使用割合」に係る情報を、この「O位置範囲」及びこの「D位置範囲」の組に対応付けて保存しており、
(D)算出された「ODセット」の数と「使用割合」に係る情報とに基づいて、対象経路における通行量を決定することを特徴としている。
【0032】
このように、通信設備装置1では、通常、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でないが広域において広く分布している(多数のユーザの)通信履歴を利用し、個別の移動単位を示す「情報O」と「情報D」との組である「ODセット」と、このODセットに対応付けられた「使用割合」に係る情報とを用いることによって、考慮すべき地域範囲における各経路での通行状況も勘案した上で、対象経路の通行量をより高い精度で推定することが可能となるのである。
【0033】
例えば、
図1において、経路B(高速道路)の通行量を推定する場合、携帯端末2の通信履歴から取得される情報だけでは、経路B(高速道路)における携帯端末2(を乗せた自動車)の通行を、経路A(鉄道)や経路C(一般道)における携帯端末2の通行と区別することは一般に困難である。すなわち、1つの地域から他の地域へ移動するための複数の経路は、通常、互いに隣接しているか少なくとも遠隔していない。従って、経路間の多くの部分は、通信履歴から算出される低精度の測位結果では分離して把握することが非常に困難となっている。
【0034】
これに対し、通信設備装置1では、他経路(経路Aや経路C)を通行する状況を反映している経路Bの「使用割合」を利用することによって、位置分解能の十分ではない通信履歴から取得されるODセットからでも、経路Bの通行量を推定することが可能となるのである。
【0035】
ここで、上記(A)〜(C)における「O位置範囲」及び「D位置範囲」の位置範囲として、通行量を推定する対象である対象経路を含む位置範囲群(位置範囲を互いに隣接させて配置したもの)を予め設定しておくことも好ましい。この場合、個々の位置範囲は、メッシュを構成する各メッシュ単位とすることもできる。ただし、当然これに限定されるものではなく、例えば、市町村等の行政区画や、その他の基準で分割された領域等とすることも可能である。
【0036】
さらに、通信設備装置1は、上記の「使用割合」として、例えば予めの簡易な交通量実地調査やアンケート調査等によって推測された値を使用することも可能である。また、当該地域での交通事情やその他の事情を勘案し、所定値を予め設定して使用してもよい。しかしながら、通信設備装置1は、より精度の高い有意な通行量を推定すべく、
(E)携帯端末2に搭載された例えばGPS測位部等の測位手段、又は対象経路を含む地域に設置された通行体(ユーザやユーザの使用する移動手段)を検出可能な検出手段(例えば道路に設置された車体検知センサシステム)から取得される測位情報ログ群に基づいて、上記の「使用割合」に係る情報を決定する
ことも好ましい。
【0037】
ここで、例えばGPS測位結果を利用する場合、このGPS測位結果は、通信履歴(基地局)による測位結果と比較して、より少量しか取得することができないが、一方でより高い位置精度を有している。このようなGPS測位結果から、各経路における通行量の絶対値を推定することは非常に困難であるが、一方で、1つの経路における又は各経路における「使用割合」ならば、GPS測位結果の高い位置精度によって十分に精度良く求めることができるのである。
【0038】
このように、上記構成(E)をも採用した通信設備装置1は、GPS測位結果のような高精度であるが比較的少量の測位結果と、基地局(通信履歴)に基づく測位結果のような低精度ではあるが比較的大量の測位結果とを複合的に利用することによって、対象経路又は各経路における通行量(交通量)を高い精度で推定することを可能するのである。
【0039】
図2は、本発明による通行量推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0040】
図2に示した通信設備装置1は、本発明による通行量推定装置の一実施形態であり、広域無線通信網(携帯電話網)に接続されて設置され、基地局3から通信履歴を適宜収集することができる。なお、本発明による通行量推定装置は、外部から取得した通信履歴を入力して対象経路の通行量を推定することが可能なコンピュータとすることも可能である。この場合、広域無線通信網(携帯電話網)に接続されていなくてもよい。
【0041】
図2によれば、通信設備装置(通行量推定装置)1は、通信インタフェース部101と、通信履歴蓄積部102と、測位履歴蓄積部103と、経路地図情報蓄積部104と、入出力部としてのディスプレイ・キーボード(DP・KB)105と、プロセッサ・メモリとを有する。ここで、プロセッサ・メモリは、装置1の主機能部であるコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって、通行量推定機能を実現させる。
【0042】
さらに、プロセッサ・メモリは、機能構成部として、位置情報履歴生成部111と、基地局位置情報管理部112と、滞在移動推定部113と、OD生成部114と、OD計数部115と、測位位置履歴生成部116と、使用割合決定・保存部117と、通行量決定部118と、迂回経路探索部121と、通行影響推定部122と、アプリケーション処理部123とを有する。なお、
図2における各機能構成部を矢印で接続した処理の流れは、本発明による通行量推定定方法の一実施形態としても理解される。
【0043】
通信履歴蓄積部102は、携帯端末2を配下に接続する基地局3から、携帯端末2(端末識別子(ID))毎に、通信に係る日時刻(時刻情報)と、通信に係る基地局3の基地局IDとを対応付けた、下記に示すような通信レコード(通信ログ)を、通信インタフェース部101を介して収集し、保存・管理する。
通信レコード(端末ID,日時刻,基地局ID)
【0044】
ここで、通信レコードを日時刻について時系列順に並べたものが通信履歴となる。なお、通信に係る日時刻は、通信の接続開始日時刻としてもよく、通信の切断日時刻としてもよい。また、通信に係る日時刻として、通信の接続開始日時刻と、当該通信の切断日時刻とを共に通信レコードに含めてもよい。さらに、通信レコードの変更態様として、端末ID毎に、通信に係る基地局からの電波信号強度RSSI(Received Signal Strength Indication)や往復遅延時間RTD(Round Trip Delay time)等の無線情報が更に対応付けられていることも好ましい。
【0045】
基地局位置情報管理部112は、基地局IDと、「基地局に係る位置情報」とを対応付けた基地局情報ファイルを記憶し管理する。ここで、「基地局に係る位置情報」は、
(a)基地局3の設置位置を示す基地局位置情報
としてもよく、
(b)基地局3の設置位置に基づいて導出される、携帯端末2の所在位置の測位結果を示す位置情報
とすることもできる。以下、上記(a)の基地局位置情報を用いて滞在移動判定の説明を行うが、代わりに上記(b)の位置情報を同様に用いて同判定を行うこともできる。
【0046】
ちなみに、上記の位置情報(b)は、例えば、基地局3の設置位置と、基地局3からの電波信号の放射方位(電波放射角)と、基地局3及び携帯端末2の間でのRSSI又はRTDとから導出可能である。
【0047】
位置情報履歴生成部111は、基地局位置情報管理部112で管理されている基地局情報ファイルを用い、通信履歴において、通信レコード毎に基地局IDに対応する基地局に係る位置情報(基地局位置情報)を更に対応付け、「通信位置情報ログ群」を生成する。ここで、1つの「通信位置情報ログ群」は、1つの携帯端末2(端末ID)における所在位置の時系列データ(携帯端末2の位置シーケンスデータ)を含むものとなっている。
【0048】
滞在移動推定部113は、位置情報履歴生成部111で生成された「通信位置情報ログ群」に基づいて、各携帯端末2(各端末ID)における「滞在」及び「移動」の場所及び時刻を推定する。次に、この「滞在」及び「移動」情報の推定について説明する。
【0049】
図3は、滞在移動推定部113における滞在及び移動の推定処理を説明するためのテーブル及び模式図である。
【0050】
図3(A)には、位置情報履歴生成部111で生成された「通信位置情報ログ群」の一実施例が示されている。同図のテーブルによれば、例えば、携帯端末001は、2016年7月31日20時11分15秒に緯度37.21度及び経度139.31度の位置にある基地局0008と通信したことが理解される。ここで、本出願人の出願による特開2014−116808公報や、特開2016−48529号公報に開示された、このような通信位置情報ログ群を用いた滞在移動推定技術を以下に説明する。
【0051】
最初に、特開2014−116808公報に開示された滞在移動推定技術では、
(a)通信位置情報ログ群を、所定の時間窓(時間区間)に分割し、
(b)時間窓毎に、基地局位置情報に基づく位置の確率分布が、単峰性である場合には「滞在」と判定し、そうでない場合には「移動」と判定し、
(c)「滞在」と判定された時間窓の基地局位置情報を収集し、
(d)「滞在」と判定された各時間窓の複数の位置情報の重心を「滞在地」としている。
【0052】
一方、特開2016−48529号公報に開示された滞在移動推定技術では、
(a)通信位置情報ログ毎に、通信位置情報ログ群に含まれる日時刻に基づいて、当該通信位置情報ログについての比較対象となる比較対象通信位置情報ログを決定し、
(b)滞在判定対象の通信位置情報ログについて決定された比較対象通信位置情報ログに係る位置情報の示す位置が、当該滞在判定対象の通信位置情報ログに係る位置情報の示す位置を中心とした所定距離範囲に含まれる場合、当該滞在判定対象の通信位置情報ログに係る携帯端末のユーザの状態を「滞在」であると判定し、
(c)滞在判定対象の通信位置情報ログから順次、滞在と判定された通信位置情報ログを日時刻について遡って、滞在と判定された通信位置情報ログが自身の1つ前に存在しない最後の通信位置情報ログを求め、当該滞在判定対象の通信位置情報ログについて、当該最後の通信位置情報ログから、当該滞在判定対象の通信位置情報ログの1つ前に存在する通信位置情報ログまでの通信位置情報ログを、比較対象通信位置情報ログであると決定している。
【0053】
また、より単純な滞在移動判定方法としては、通信位置情報ログ群において、
(a)判定対象の通信位置情報ログから見て、所定時間範囲内に所定距離範囲内の通信位置情報ログが存在すれば、当該判定対象の通信位置情報ログに対して「滞在」との判定を行い、
(b)互いに当該所定距離範囲内にある通信位置情報ログに係る基地局位置情報から「滞在地」を決定し、
(c)「滞在」と判定されなかった通信位置情報ログに対して「移動」との判定を行う
ことも可能である。なお当然に、滞在移動推定部113では、その他の公知の滞在移動推定方法が採用されてもよい。
【0054】
以上に説明したような滞在移動推定(判定)を行うことによって、1つの携帯端末2(端末ID)について、例えば、
図3(B)に示すような滞在・移動に係る情報が取得される。
図3(B)の例では、この携帯端末2は、滞在1→移動1→滞在2→移動2→滞在3→移動3→滞在4→移動4→滞在5といった形で滞在と移動とを繰り返している。ここで、各「移動」における出発及び到着地点の位置情報も取得されている。具体的には、例えば「移動1」については、「移動1の出発地点」及び「移動1の到着地点」(=「移動2の出発地点」)の位置情報(例えば緯度及び経度)が決定されているのである。
【0055】
ここで、後に詳細に説明するが、OD生成部114(
図2)では、このような滞在移動推定結果を利用して、1つの移動の開始位置を含むO位置範囲(Oメッシュ)に係る「情報O」と、この1つの移動の終了位置を含むD位置範囲(Dメッシュ)に係る「情報D」とが生成されるのである。
【0056】
図2に戻って、経路地図情報蓄積部104は、道路、鉄道、航路等、携帯端末2のユーザが利用し得る移動経路の地理情報(位置情報)である経路地図情報を、例えば外部のサーバから通信インタフェース部101を介して収集し、保存・管理する。この経路地図情報は、例えば事業者が通信ネットワークを介して提供する公知の地図データ、例えばDRM(Digital Road Map)とすることができる。
【0057】
ちなみに、このような経路地図情報は、具体的に、所定の地域範囲、例えば日本国内に存在する高速道路、一般道、鉄道路線や、航路等の通行経路を地図上で構成する連続した位置データ群を、当該経路のIDに対応付けたデータを含むものとすることができる。または、当該経路に沿って伸長した所定の幅の位置範囲を、当該経路のIDに対応付けたデータを含むものであってもよい。いずれにしても、経路地図情報は、地図上での1つの位置又は位置範囲を指定すれば、当該位置を含む又は当該位置範囲を通る通行経路を特定することが可能となっていることも好ましい。
【0058】
同じく
図2において、OD生成部114は、通信履歴から生成された「通信位置情報ログ群」に基づいて、1つの移動の開始位置を含むO位置範囲(Oメッシュ)に係る「情報O」と、この1つの移動の終了位置を含むD位置範囲(Dメッシュ)に係る「情報D」との組である「ODセット」を生成する。
【0059】
ここで、使用される「通信位置情報ログ群」は、所定の通行量推定対象期間(例えば**年**月〜**年**月)における多数の携帯端末2(端末ID)についての「測位情報ログ群」とすることも好ましい。例えば、対象経路が高速道路であって交通規制期間が決まっている場合に、この交通規制期間における各経路での通行量の変化を推定することを考える。この場合、設定される通行量推定対象期間は、例えば、
(a)交通規制期間、及び
(b)この交通規制期間の前月での同期間又は前年での同期間
とすることができる。上記(a)及び(b)での通行量を比較することによって通行量の変化を推定することができるのである。いずれにしても通行量推定対象期間は、通行量推定の目的等に応じて適宜設定されるべき期間となる。
【0060】
また、OD生成部114で生成される「情報O」は、例えば、この1つの移動の主体である携帯端末2の端末IDと、この1つの移動の開始位置を含むメッシュ(位置範囲)に付与されたメッシュIDとが対応付けられたデータを含むものとすることができる。また、「情報D」は、例えば、この1つの移動の主体である携帯端末2の端末IDと、この1つの移動の終了位置を含むメッシュ(位置範囲)に付与されたメッシュIDとが対応付けられたデータを含んでいてもよい。
【0061】
次いで、OD計数部115は、通行量を推定すべき対象経路の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、「情報O」に係るO位置範囲(Oメッシュ)及び「情報D」に係るD位置範囲(Dメッシュ)が含まれる「ODセット」の数を算出する。
【0062】
図4は、OD生成部114及びOD計数部115におけるODセット生成・計数処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【0063】
図4(A)によれば、地点Aを出発地点(O)とし、地点Bを到着地点(D)とする移動、すなわち、地点Aから地点Bへの移動の際に取り得る経路として、経路1と、この経路1に隣接して並行している経路2とが存在している。以下、このうち経路1の通行量(交通量)を推定することを考える。
【0064】
ここで、「通信位置情報ログ群」から取得される位置情報は、通信履歴から生成されるのであるから、一般に空間的粒度が粗くなっている。本実施形態においても、このような位置情報における測位誤差範囲は、
図4(A)に示すように、互いに隣接する経路1及び2に跨って広がっており、経路1上の位置と経路2上の位置とを区別できるほど小さくなっていない。従って、「通信位置情報ログ群」に係る位置情報を用いても、経路1及び経路2のどちらを通行したのかが分からない場合が少なくない。
【0065】
さらに、「通信位置情報ログ群」から取得される位置情報は、通信履歴から生成されるのであるから、通常その時間間隔が一定になっていない。従って、例えば通行量を推定する対象である経路1を携帯端末2が通行している間、通信ログが発生しておらず位置情報が存在しない場合もあり得る。このような場合当然に、地点Aから地点Bへ移動した通信端末2(のユーザ)が経路1及び経路2のいずれを通行したのかを区別することはできない。
【0066】
そこで、本実施形態では
図4(B)に示すように、OD計数部115は、OD生成部114で生成された「ODセット」のうち、通行量を推定すべき経路1の両端位置に応じて予め設定された移動開始地域及び移動終了地域のそれぞれに、「情報O」に係るO位置範囲(Oメッシュ)及び「情報D」に係るD位置範囲(Dメッシュ)が含まれる「ODセット」の数を算出する。
【0067】
ここで、移動開始地域及び移動終了地域は、それぞれ経路1の一端及び他端を含む領域とすることができる。例えば、経路1を含む広い地域範囲をメッシュ状に区切り、経路1の一端を含むメッシュ単位(メッシュ)を中ほどに含むメッシュ群を移動開始地域とし、経路1の他端を含むメッシュ単位(メッシュ)を中ほどに含むメッシュ群を移動終了地域としてもよい。いずれにしても、移動開始地域及び移動終了地域はそれぞれ、移動の際に経路1を利用する可能性のある移動端末2(のユーザ)の出発地点及び到着地点を概ね含み得るような十分に広い範囲に設定されることも好ましい。ちなみに、1つのメッシュは、例えば1辺が数百メートル程度の四角形状とすることもできる。
【0068】
このような処理によって算出された「ODセット」の数は、
図4(A)のような経路配置状況の場合、経路1及び経路2のいずれかを通行した携帯端末2(のユーザ)の総通行量となる。すなわち、低精度であるが十分な数を取得し得る「通信位置情報ログ群」の位置情報を用いることによって、経路1を通行した可能性のある移動体(端末ユーザ)の集団について、その総通行量を算出することができるのである。次いで後述するように、経路1の使用割合(選択割合)を、この総通行量に例えば乗算することによって、経路1の通行量を決定することが可能となる。
【0069】
図2に戻って、測位履歴蓄積部103は、GPS測位部を備えておりGPS測位結果をGPS測位レコード(ログ)として取りまとめるアプリを搭載した携帯端末2から、当該レコード(ログ)を、通信インタフェース部101を介して収集し、保存・管理する。GPS測位レコードは、例えば、携帯端末2(端末ID)毎に、測位した日時刻(時刻情報)と、測位結果情報(例えば緯度経度情報)とを対応付けた、下記のようなログとすることができる。
GPS測位レコード(端末ID,日時刻,緯度経度情報)
【0070】
測位位置履歴生成部116は、測位履歴蓄積部103に蓄積されたGPS測位レコードを日時刻について時系列順に並べて「測位情報ログ群」を生成する。ここで、1つの「測位情報ログ群」は、1つの携帯端末2(端末ID)についての刻々の測位結果(所在位置)の時系列データ(携帯端末2の位置シーケンスデータ)を含むものとなっている。
【0071】
使用割合決定・保存部117は、生成された「測位情報ログ群」に係る位置情報と、通行量を推定すべき対象経路の所在位置情報とに基づいて、「使用割合」に係る情報を決定する。ここで、対象経路の所在位置情報は、経路地図情報蓄積部104に保存された経路地図情報から取得することができる。
【0072】
使用割合決定・保存部117は具体的に、O位置範囲及びD位置範囲の組毎に、
(a)当該O位置範囲及び当該D位置範囲を通る位置情報に係る測位情報ログ群の数(当該ログ群の発生元端末の数)と、
(b)当該O位置範囲及び当該D位置範囲を通り且つ対象経路を通る位置情報に係る測位情報ログ群の数(当該ログ群の発生元端末の数)と
に基づいて、「使用割合」に係る情報を決定することも好ましい。例えば、上記(b)におけるログ群(端末)の数を、上記(a)におけるログ群(端末)の数で割り算した値を、対象経路を通行する割合である「使用割合」とすることができる。
【0073】
また、使用割合決定・保存部117は、対象経路以外の経路についての「使用割合」に係る情報も決定しておくことも好ましい。この場合、後に詳細に説明する通行量決定部118は、対象経路を含む経路毎の通行量を決定することも可能となる。
【0074】
さらに、使用割合決定・保存部117は、1つのO位置範囲及び1つのD位置範囲を通る通行体が対象経路を使用する割合である「使用割合」に係る情報を、このO位置範囲及びこのD位置範囲の組に対応付けて保存することも好ましい。以下、
図5を用いて、以上に述べた「使用割合」の決定処理について詳細に説明する。
【0075】
図5は、使用割合決定・保存部117における使用割合決定処理の一実施形態を説明するための模式図及びテーブルである。
【0076】
図5(A)には、通行量推定対象である経路1の両端地点をそれぞれ含むO位置範囲001及びD位置範囲011が示されている。ここで、本実施形態では、経路1の両端地点のそれぞれを含む移動開始地域及び移動終了地域がメッシュ状に区分されていて、O位置範囲001及びD位置範囲011は、それぞれ移動開始地域及び移動終了地域における1つのメッシュ(単位)となっている。なお、O位置範囲及びD位置範囲ともにメッシュに限定されるものではなく、例えば、県や市町村等の行政区画や、その他の基準によって人為的に取り決められた領域であってもよい。
【0077】
同じく
図5(A)において、取得された測位情報ログ群の中から、O位置範囲001及びD位置範囲011を通る位置情報を示す測位情報ログ群を抽出した結果が、白丸及び黒丸で示されている。同図では、白丸及び黒丸の(経路1の両端に渡る)ペアが計10個表されているが、これは、抽出された測位情報ログ群が10個存在することを示している。
【0078】
ここで、本実施形態において、「O位置範囲001及びD位置範囲011」を通るとは、その測位情報ログ群が、O位置範囲001内の位置(緯度経度)を示すログ(位置情報)を有し、且つD位置範囲011内の位置(緯度経度)を示すログ(位置情報)を有することを意味する。なお、この「通る」との条件を別の形、例えばO(D)位置範囲内の位置を示すログを所定数n(n≧2)以上有すること等、に変更することも可能である。
【0079】
さらに、測位情報ログ群において、例えば「直前の(又は所定数前までの)ログ(レコード)の位置との差が閾値以下」といった条件を満たすログを「滞在(状態)」とした上で、上記の「通る」条件として、O(D)位置範囲内の位置を示すログが滞在状態であることも付け加えることも好ましい。すなわち、この場合、「O位置範囲001及びD位置範囲011」を通るとは、その測位情報ログ群が、O位置範囲001内の位置(緯度経度)を示し滞在状態であるログ(位置情報)を有し、且つD位置範囲011内の位置(緯度経度)を示し滞在状態であるログ(位置情報)を有することに相当する。
【0080】
同じく
図5(A)において、O位置範囲001及びD位置範囲011を通り且つ経路1を通る位置情報を示す測位情報ログ群が、黒丸で示されている。ここで、「経路1を通る」とは、その測位情報ログ群が、経路地図情報において経路1に割り当てられた位置範囲内の位置(緯度経度)を示すログ(位置情報)を有することを意味する。なお、この「通る」との条件を別の形、例えば経路1に割り当てられた位置範囲内の位置を示すログを所定数n(n≧2)以上有すること等、に変更することも可能である。
【0081】
いずれにしても、GPS測位結果に基づく測位情報ログ群を採用するならば、その測位誤差範囲(例えば数十メートル)は、通信位置情報ログ群の測位誤差範囲(例えば数百メートル)と比較して格段に小さくなっている。その結果、経路1と隣接する経路2とのいずれを通ったかを区別することが可能となるのである。
【0082】
ここで、
図5(A)に示した例では、O位置範囲001及びD位置範囲011を通る位置情報を示す10個の測位情報ログ群のうち、経路1を通るもの(黒丸)は6つとなっている。この場合、使用割合決定・保存部117(
図2)は、次式
(1) (対象経路の使用割合)=
(対象経路の通行数)/(対象O位置範囲及びD位置範囲を通る総通行数)
を用いて、経路1の使用割合を0.6(=6/10)、すなわち60%に決定する。
【0083】
また、変更態様として、経路1以外の経路を使用する使用割合rを算出し、経路1の使用割合を例えば(1−r)に決定してもよい。
図5(A)に示した例において、経路1以外の経路が経路2のみであって、白丸が経路2を通った測位情報ログ群を表しているとすると、経路1以外の経路、すなわち経路2の使用割合は0.4(=4/10)となり、これより経路1の使用割合は0.6(=1-0.4)と算出される。
【0084】
図5(B)に、使用した経路を特定した(使用経路情報の付加された)測位情報ログ群の実施例を示す。同図の上側のテーブルにおいては、携帯端末2(端末ID)毎に、GPS測位情報ログ群(測位履歴)と、対応するO位置範囲(ID)及びD位置範囲(ID)と、使用経路(ID)とが対応付けて記録されている。この使用経路情報付測位情報ログ群から、O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の組毎に、使用経路(ID)情報を取り出してまとめることにより、
図5(B)の下側のテーブルで表された各経路の使用割合情報が生成される。
【0085】
この各経路の使用割合情報では、O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の組毎に、当該組に係る出発位置及び到着位置を有する移動を行った携帯端末2(のユーザ)における経路1、経路2、・・・の使用割合の算出結果が記録されている。ここで、例えば、経路1の使用割合は、
図5(B)上側の使用経路情報付測位情報ログ群テーブルにおける当該O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の組を有するレコードのうち、使用経路(ID)が経路1であるものの割合とすることができる。
【0086】
なお、以上に説明した使用割合決定処理では、O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の1つの組について、対応する測位情報ログ群を抽出する際、移動の向きがO位置範囲(Oメッシュ)からD位置範囲(Dメッシュ)への向きのログ群を選択している。この場合、通行体が経路を通った際の向き(O→Dの向き)までを考慮した使用割合が導出される。例えば、対象路線が高速道路である場合、上り車線(路線)の使用割合と、下り車線(路線)の使用割合とを区別して導出可能となる。
【0087】
これに対し、変更態様として、O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の1つの組について、移動の向きがD位置範囲(Dメッシュ)からO位置範囲(Oメッシュ)への向きの測位情報ログ群をも含めて抽出することも可能である。この場合、使用割合を導出するに当たり、通行体が経路を通った際の向き(O→Dの向き)を考慮せずに処理を進めることになる。
【0088】
さらに、以上に説明した使用割合決定処理において、使用する測位情報ログ群は、O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の組を決定するのに使用される通信位置情報ログ群に係る期間と同様の期間に属するものとすることも好ましい。また、変更態様として、使用割合を決定する際に使用する測位情報ログ群について、異なる条件下のものを選択し、各条件下における複数の経路使用割合を予め算出しておくことも好ましい。
【0089】
例えば、平日の測位情報ログ群及び休日の測位情報ログ群からそれぞれ、平日での使用割合及び休日での使用割合を決定しておいてもよい。さらに、平日(休日)における朝の時間帯、昼(日中)の時間帯、夕方の時間帯、及び夜の時間帯の測位情報ログ群から、平日(休日)におけるそれぞれの時間帯での使用割合を予め決定しておくことも好ましい。このように種々の条件下での使用割合を準備しておくことによって、対象経路の通行量を決定する際、推定対象期間・時間に合わせてより実情に合った使用割合を採用することができるのである。
【0090】
さらに、変更態様として、複数の経路使用割合から、通行量算出時の通行量に近い通行量を示す測位情報ログ群から算出された使用割合を選択することも好ましい。例えば、交通量算出時のODセットの分布と経路使用割合算出時のODセットの分布との相関を計算し、この相関の最も高い使用割合を選択してもよい。
【0091】
図2に戻って、通行量決定部118は、
(a)OD計数部115で算出されたODセットの数と、
(b)使用割合決定・保存部117で決定された使用割合に係る情報と
に基づいて、対象経路における通行量を決定する。具体的には、O位置範囲(Oメッシュ)及びD位置範囲(Dメッシュ)の組毎に、当該組に係るODの数と、当該組に対応付けられた使用割合に係る情報とに基づいて、対象経路における当該組に係る通行量を算出し、算出された当該組に係る通行量を組について総計して、対象経路における通行量を決定する。
【0092】
例えば、簡略化した例ではあるが、通行量推定対象の経路1について、3つのO位置範囲及びD位置範囲の組が存在し、それぞれの組において、所定の推定対象期間におけるODセットの数が300、500及び400であって、経路1の使用割合が0.3、0.7及び0.5である場合、この推定対象期間での経路1の通行量は640(=300×0.3+500×0.7+400×0.5)であると算出される。
【0093】
また、通行量決定部118は、当然ではあるが使用割合決定・保存部117が推定対象経路以外の経路についての使用割合に係る情報も決定している場合、推定対象経路を含む経路毎の通行量を決定することも可能となる。
【0094】
次に、使用割合決定・保存部117において、上述したような方法で使用割合を算出することができない場合の対処方法について、以下、
図6を用いて説明する。その前に、その対処方法の概略であるが、使用割合決定・保存部117は、通行体(ユーザやユーザの使用する移動手段)における位置情報の不在又は不足に起因して使用割合に係る情報を算出できないO位置範囲及びD位置範囲の組が存在する場合、当該組に対しては、当該組に係るO位置範囲又はD位置範囲に隣接する若しくは近傍となるO位置範囲又はD位置範囲を含む組について決定された使用割合に係る情報に基づいて、使用割合に係る情報を決定するのである。
【0095】
図6は、使用割合決定・保存部117における使用割合決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
【0096】
図6(A)に示す実施例によれば、
(a)Oメッシュ(O位置範囲)001とDメッシュ(D位置範囲)011との組、及び
(b)Oメッシュ003とDメッシュ011との組
には、それぞれ経路1の使用割合として60%及び50%が決定されている。しかしながら、
(c)Oメッシュ002とDメッシュ011との組
には、測位情報ログ群の不在又は不足によって使用割合が算出できていない。
【0097】
この場合、使用割合決定・保存部117は、上記(c)のOメッシュ002に係る組における使用割合を、Oメッシュ002に隣接するOメッシュ001に係る組(上記(a))における使用割合(60%)と、同じくOメッシュ002に隣接するOメッシュ003に係る組(上記(a))における使用割合(50%)との平均、すなわち55(=(60+50)/2)%に決定することができる。
【0098】
また、
図6(B)に示す実施例によれば、
(d)Oメッシュ001とDメッシュ011との組、及び
(e)Oメッシュ001とDメッシュ013との組
には、それぞれ経路1の使用割合として60%及び40%が決定されている。しかしながら、
(f)Oメッシュ001とDメッシュ012との組
には、測位情報ログ群の不在又は不足によって使用割合が算出できていない。
【0099】
この場合、使用割合決定・保存部117は、上記(f)のDメッシュ012に係る組における使用割合を、Dメッシュ012に隣接するDメッシュ011に係る組(上記(d))における使用割合(60%)と、同じくDメッシュ012に隣接するDメッシュ013に係る組(上記(e))における使用割合(40%)との平均、すなわち50(=(60+40)/2)%に決定することができる。
【0100】
さらに、
図6(C)に示す実施例によれば、Oメッシュ002とDメッシュ012との組における経路1の使用割合が算出できていない。しかしながら、Oメッシュ002を挟んで隣接するOメッシュ001及び003と、Dメッシュ012を挟んで隣接するDメッシュ011及び013との間に形成される2つの組について、それぞれ経路1の使用割合として60%及び30%が決定されている。
【0101】
この場合、使用割合決定・保存部117は、Oメッシュ002とDメッシュ012との組における使用割合を、隣接する組に係るこれらの使用割合の平均、すなわち45(=(60+30)/2)%に決定することができる。
【0102】
図7は、使用割合決定・保存部117における使用割合決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【0103】
図7(A)に示した実施例によれば、正方格子状にメッシュがとられていて、使用割合の算出できていないOメッシュ111の周囲には、経路1の使用割合が決定された計8個のOメッシュが隣接して存在している。この場合、Oメッシュ111に係る組における経路1の使用割合を、これらの隣接するOメッシュでの使用割合の平均、すなわち26((=10+10+15+15+25+40+50+45)/8)%とすることができる。
【0104】
しかしながら、各Oメッシュにおける経路1の使用割合の値には、一般に、当該Oメッシュと経路1との間の地理的・人為的条件、例えば間に大きな川が流れていて橋の数が限定されている等、が大きく反映されている。
図7(A)に示した本実施例においても、8個のOメッシュのうち、最下の3つにおける使用割合の値は他の5個からかけ離れており、これらの最下の3つのOメッシュをもって何らかの地理的・人為的条件で共通する1つのグループをつくることも可能である。具体的には、グルーピングのための閾値を30%とし、使用割合が30%以上のグループとして、最下の3つのOメッシュを含むグループをつくり、一方、使用割合が30%未満のグループとして他の5個を含むグループをつくることができる。
【0105】
次いで、これらの2つのグループのうち、使用割合を算出すべきOメッシュ111と接しているOメッシュをより多く含むグループ、本実施例では上側の5個のグループを使用割合決定用のグループとし、Oメッシュ111における経路1の使用割合を、このグループに含まれる5個の使用割合の平均、すなわち15(=(10+10+15+15+25)/5)%とすることができる。
【0106】
ここで、分類されるグループは当然2つに限定されるものではない。例えばグルーピングのための閾値として15%及び30%の2つを設定すれば、本実施例の場合、
図7(B)に示すように3つのグループ、すなわち最上左寄りの2つのOメッシュを含むグループと、最下の3つを含むOグループと、中央付近の残りの3つを含むグループとに分類される。この場合、Oメッシュ111と接しているOメッシュを最も多く含むグループは、中央付近の3つを含むグループであり、Oメッシュ111における経路1の使用割合は、これら3個の使用割合の平均、すなわち18(=(15+15+25)/3)%とすることができる。ちなみに、
図7(A)及び(B)を用いて以上に説明した使用割合決定方法は、対象のメッシュ群がDメッシュ群の場合でも同様に実施することが可能である。
【0107】
また、上記の閾値における数及び値については、該当地域の地理的・人為的条件を勘案し、使用割合の分布・偏り具合を見て適宜実施されることも好ましい。さらに、
図6及び
図7に示した実施例において、使用割合は隣接するメッシュの使用割合の相加平均を用いて算出されているが、他の平均、例えば重み付け平均や相乗平均を用いて算出することもできる。ここで、重み付け平均を用いる場合、重み付け係数はメッシュ(の中心)間の距離(の逆数)に応じた値としてもよい。いずれにしても、以上に説明した使用割合決定方法を採用することによって、測位情報ログ群の不在・不足から算出できなかった使用割合を、周囲の状況を勘案した相当の確度をもって決定することができるのである。
【0108】
図2に戻って、迂回経路探索部121は、経路地図蓄積部104に予め保存されている経路地図情報に基づいて、1つの経路についての迂回経路を検索する。具体的に、本実施形態においては、1つの経路について決定されたO位置範囲(Oメッシュ)とD位置範囲(Dメッシュ)との組毎に、迂回経路を検索することも好ましい。
【0109】
なお、迂回経路探索部121における迂回経路探索の方法としては、公知の実施可能な種々の方法を採用することができる。例えば、特開2013−73492号公報には、模擬道路網内の起点から終点までの経路を探索し、模擬車両を走行させることによって実施される交通評価方法が開示されている。具体的には、
(a)起点から模擬車両の位置までの経路の走行距離又は旅行時間の実績値を算出し、
(b)模擬車両の位置から終点までの経路の走行距離又は旅行時間の予測値を算出し、
(c)上記起点までの経路を通行不可に設定した場合に、実績値と予測値との合計値に対する実績値の割合が所定の閾値より大きいときは、上記終点に近い地点までの通行可能な経路を探索し、当該閾値より小さいときは、上記起点までの経路を探索している。
【0110】
さらに、特開2009−210467号公報に開示された経路探索方法では、
(a)道路の車線規制に関する車線規制情報を受信し、
(b)受信された車線規制情報に基づき、目的地までの経路の候補となる道路に対しその道路において通行規制されている車線数に応じた重みを与え、
(c)設定された重みを加味して目的地までの経路を探索し、
(d)全車線が通行規制されている道路は回避するように経路を探索している。
【0111】
同じく
図2において、通行影響推定部122は、1つの経路における通行が制限された場合における、検索された迂回経路での通行量の変化を、この1つの経路について決定された通行量と、迂回経路について決定された通行量とに基づいて推定する。具体的に、本実施形態においては、決定されたO位置範囲(Oメッシュ)とD位置範囲(Dメッシュ)との組(ODセット)毎に、当該組に係る決定された通行量と、当該組について決定された迂回経路とに基づいて、迂回経路での通行量の変化を推定する。
【0112】
図8は、通行量決定部118、迂回経路探索部121及び通行影響推定部122における処理を示す模式図である。
【0113】
図8に示したように、本実施形態では、道路区間である経路Xと、経路Xの迂回道路区間である迂回経路Yとにおいて、経路Xにつき道路工事による全面交通規制(通行止め)が行われた際の迂回経路Yでの交通量の変化を予測(推定)する。この予測(推定)処理においては、最初に、通行量決定部118によって、経路Xの通行量が推定される。この通行量を推定する期間は、適宜設定可能であるが、例えば予定されている交通規制期間がある月の一か月間である場合、この期間の前年同月の期間とすることも好ましい。
【0114】
ここで、経路Xの通行量を推定する際に使用される経路Xの使用割合は、道路区間である経路X以外に使用される道路区間が通常存在しない場合(例えば迂回経路Y及びその他の経路が鉄道路線である場合)、自動車で移動する割合である自動車移動割合と捉えることもできる。ちなみに、本実施形態では、出発地や目的地と、その場所に至る移動手段との間には相関関係があることを利用して、このような移動手段を特定することも好ましい。例えば、駅を発着地とする移動区間の場合、電車(鉄道)を移動手段とする確率が高く、駅から離れた施設(例えば、卸売市場や物流センター)を発着地とする移動区間の場合、自動車を移動手段とする確率が高いという特性を利用してもよい。
【0115】
次いで、迂回経路探索部121によって、経路Xの迂回道路区間である迂回経路Yが検索される。その後、通行影響推定部122は、経路Xの通行が全面規制された場合における迂回経路Yでの通行量を、迂回経路Yについて決定された通行量に対し、経路Xについて決定された通行量を加算した量に決定するのである。
【0116】
例えば、経路XについてのOメッシュ及びDメッシュの組が20個決定されており、これらの組のいずれにおいても迂回経路Yが検索され、さらに、これら20個の組において、交通規制期間における前年の同期間における通行量がNi(i=1, 2, ・・・, 20)と算出された場合を考える。また、同期間における迂回経路Yの通行量は総計としてN
Yと算出されているとする。この場合、通行量決定部118は、交通規制期間における迂回経路Yでの通行量N
Y (規制)を、例えば次式
(2) N
Y (規制)=N
Y+Σ
iN
i
を用いて決定(推定)することができる。ここで、Σ
iはiについての総和(summation)である。
【0117】
以上に説明したような処理を行うことによって、規制経路Xを通行する多数の携帯端末2(のユーザ)が同区間の交通規制の場合に取り得る迂回経路Yでの通行量の変化を、正確に推定することが可能となる。ちなみに、このような通行影響推定結果は、通信インタフェース部101を介して外部の情報処理装置、例えば各携帯端末2等に送信されて利用されることも好ましい。また、この装置1のディスプレイ105に表示されてもよい。
【0118】
図2に戻って、アプリケーション処理部123は、通行量決定部118で決定された対象経路における推定対象期間での通行量の情報を利用して、交通規制時の他経路での通行影響調査以外の用途についての処理を実行する。例えば、キーボード105を介して指定された1つの地域における高速道路区間、一般道区間、及び種々の交通機関の路線区間について、同じくキーボード105を介して指定された過去の一期間における刻々の通行量を、ディスプレイ105に表示された経路地図上に提示して、地域における交通状況を「見える化」してもよい。
【0119】
また、表示された経路地図に、実測された現在の通行量を、過去の対応する期間(例えば前年同月の期間)での通行量と対比しながら表示することも可能である。例えば、実際に交通規制が行われている状況において、各通行経路における通行量の変化を刻々と提示してもよい。さらに、過去の対応する期間(例えば前年同月の期間)での通行量と対比することによって、交通規制を行うべき最適な期間(例えば懸案の道路区間での通行量の増加分が最小となる期間)を決定し、工事計画に資することもできる。さらに、新たな道路の設置を含む都市計画の参考データとして、過去に新設された道路による各通行経路での通行量の変化の情報を提示することも可能となる。
【0120】
さらにまた、アプリケーション処理部123は、1つの経路における通行が制限された場合、当該1つの経路において算出された通行量を、使用割合の決定されている他の複数の経路の各々に、
(a)当該経路の使用割合、及び
(b)当該経路と(通行の制限された)当該1つの経路との距離(例えば互いに対応する複数地点間の距離の平均値)
のいずれか一方又は両方に応じた分だけ割り振って、当該経路における通行量の増加分とすることも好ましい。例えば、使用割合の高い経路ほど、及び/又は当該1つの経路との距離が近い経路ほどより大きな分を割り振ることができる。簡単な1つの例としては、各経路に対し、(使用割合)/(距離)の値に比例した割り振り分を決定してもよい。これにより、迂回経路探索部121による迂回経路の検索を待たずに、通行制限による通行影響の推定を行うことも可能となる。
【0121】
以上、詳細に説明したように、本発明による装置、プログラム及び方法によれば、通常、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でないが広域において広く分布している通信履歴を利用し、さらに、考慮すべき地域範囲における各経路での通行状況にも関係する使用割合に係る情報を用いることによって、対象経路の通行量をより高い精度で推定することが可能となる。
【0122】
また、携帯端末に搭載された例えばGPS測位部等の測位手段、又は対象経路を含む地域に設置された通行体を検出可能な検出手段から取得される測位情報ログ群に基づいて、上記の使用割合に係る情報を決定することも可能である。例えば、GPS測位結果は、通信履歴(基地局)による測位結果と比較して、より少量しか取得することができないが、一方でより高い位置精度を有している。従って、十分に精度の良い使用割合に係る情報を決定することができるのである。
【0123】
このように、測位精度と取得ログ数とに関して互いに相違する複数種の測位手段による位置情報ログを用い、それぞれの測位手段の長所を利用することによって、例えば広範な地域範囲内に存在する各通行経路の通行量(交通量)を高い精度で推定(予測)することができるのである。例えば、広範なエリアの道路区間を対象とした高精度の交通規制シミュレーションが可能となり、都市計画や、工事計画等を適切に進めることも可能となる。
【0124】
以上に述べた本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲内での種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。以上に述べた説明はあくまで例示であって、何ら制約を意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ制約される。