(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体部に設けられたシリンダ内に往復動可能に収容されて流体の圧力によって押動されるピストンと、前記本体部の先端に連結されて前記ピストンの押動により所定動作を行う工具ヘッドとを備え、電気モータによって駆動される電動工具であって、
前記シリンダから前記流体を貯留する流体タンクへ連通して、前記流体を通流させるリターン流路と、
前記リターン流路から分岐する動作用流路に配設されて、前記リターン流路内の前記流体の圧力が所定値以上となったときに開き位置となる圧力規制弁と、
前記動作用流路に配設されて、流入する前記流体の圧力によって押動される動作ピンと、
前記リターン流路に配設されて、前記動作ピンの押動により開き位置となるリターン弁と、を備えること
を特徴とする電動工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に例示されるような従来の電動工具においては、圧着あるいは切断の作業が終了したときに、戻しレバーの操作によってピストンを元の位置まで戻し、次の作業の待機状態とする構成であった。したがって、作業者は一旦、起動スイッチノブから指を離して、戻しレバーを押しなおさなければならないため、動作が一工程増えることによる手間や時間の増加が問題となっていた。
【0006】
その解決策として、作業が終了したときに、自動的にピストンを起動位置まで戻す自動後退機能を備える電動工具も開発されている。しかしながら、自動後退機能を必要としない場合に当該機能を解除させることができないという問題や、自動後退機能の動作中において途中停止させることができないという問題があった。仮に、電気的に外部からピストンを戻す戻し弁を操作する構造とすれば当該機能の解除や途中停止も可能となるが、電気的に戻し弁を操作するソレノイドやモータ等が必要となるため、構造の複雑化、重量の増加、製造コストの増加等の問題が生じ得る。あるいは起動スイッチノブを押したときに戻し弁を閉じ、離したときに戻し弁を開く構造とする方法も考えられるものの、作業時に仮押さえができなくなるという別の問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、油圧機構を用いた簡素な構造によって、作業が終了したときに自動的にピストンを起動位置まで戻す自動後退機能を実現することができると共に、自動後退機能の解除や途中停止を行う機構の付加を容易に行うことができる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
開示の電動工具は、本体部に設けられたシリンダ内に往復動可能に収容されて流体の圧力によって押動されるピストンと、前記本体部の先端に連結されて前記ピストンの押動により所定動作を行う工具ヘッドとを備え、電気モータによって駆動される電動工具であって、前記シリンダから前記流体を貯留する流体タンクへ連通して、前記流体を通流させるリターン流路と、前記リターン流路から分岐する動作用流路に配設されて、前記リターン流路内の前記流体の圧力が所定値以上となったときに開き位置となる圧力規制弁と、前記動作用流路に配設されて、流入する前記流体の圧力によって押動される動作ピンと、前記リターン流路に配設されて、前記動作ピンの押動により開き位置となるリターン弁と、を備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気的に戻し弁を操作するソレノイドやモータ等を設けることなく、油圧機構を用いた簡素な機械的構造によって、所定作業が終了したときに自動的にピストンを起動位置まで戻す自動後退機能を実現することができる。また、自動後退機能の解除や途中停止を行う機構の付加を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は電動工具1の例を示す斜視図(概略図)であり、
図2は正面図(概略図)である。また、
図3は電動工具1の内部機構の例を示す概略図である。また、
図4は電動工具1のピストン36の押動機構に関連する部分を中心とする拡大図(概略図)。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
本実施形態に係る電動工具1は、
図1〜4に示すように、作業者が片手で把持して作業可能なコードレスタイプの電動工具である。先端部の工具ヘッドは交換可能に構成されている。例えば、先端部に圧着用の工具ヘッド14を設けることにより、ケーブル等と圧着端子をカシメにより圧着する圧着工具として用いることができる。一方、先端部に切断用のカッタを有する工具ヘッド(不図示)を設けることにより、ケーブル等を切断する切断工具として用いることもできる。以下、本実施形態に係る電動工具1として、圧着工具の場合を例に挙げて説明を行う。
【0014】
この電動工具1は、作業者が把持を行うガン状の本体部10と、その先端部に設けられた取付部12と、この取付部12に交換可能に装着された工具ヘッド14と、着脱可能な充電式のバッテリ16とを備えている。また、本体部10の内部には、バッテリ16の電源で駆動される電気モータ22、この電気モータ22により駆動されて流体(一例として、作動油)の加圧を行う流体ポンプ(一例として、油圧ポンプ)24、駆動等の制御を行う制御部(不図示)等が設けられている。
【0015】
上記の構成を備える電動工具1は、流体ポンプ24により加圧された流体の圧力によって工具ヘッド14が所定動作を行うものである。以下、工具ヘッド14が圧着動作を行う場合を例に挙げて、一連の動作を具体的に説明する。
【0016】
先ず、作業者が本体部10の起動スイッチノブ18を押すことによって、電気モータ22が駆動される。このとき、電気モータ22から減速機構26を介して回転力が伝達され、斜板カム28によって直動式の流体ポンプ24の駆動力に変換される。流体ポンプ24によって加圧された流体は、吐出流路32を通流し、本体部10に設けられたシリンダ34内へと流入する。この流体の圧力を受けて、シリンダ34内に往復動可能に収容されているピストン36が一方向(本体部10の先端部に向かう方向)に押動される。ここで、ピストン36の先端部には工具ヘッド14の動作アーム14aが連結されており、ピストン36と共に本体部10の先端部に向かって押動される。したがって、工具ヘッド14の固定アーム14bと、動作アーム14aとの間にケーブル等と圧着端子とを収納しておくことにより、これらを圧着する作用を得ることができる。
【0017】
なお、本実施形態においては、本体部10に設けられた起動スイッチノブ18が押動されている間のみ、バッテリ16から電源が供給されて電気モータ22が駆動される構成となっている。ただし、この構成に限定されるものではなく、起動スイッチノブ18が押動されたときに、電気モータ22の駆動が開始され、次に起動スイッチノブ18が押動されたときに、電気モータ22の駆動が停止される等の構成としてもよい。
【0018】
また、本実施形態に係る電動工具1は、作業が終了したときに自動的にピストン36を起動位置まで戻す自動後退機能を備えている。ここで、自動後退機能を実現する構成について詳しく説明する。
図5は当該自動後退機能を行う機構に関連する部分を中心とする平面視の拡大図(断面図)であり、
図6は当該自動後退機能を説明するための説明図である。
【0019】
図5に示すように、シリンダ34から流体を貯留する流体タンク(不図示)へ連通して、流体を通流させるリターン流路40を備えている。ここで、リターン流路40から分岐する動作用流路42が設けられると共に、動作用流路42の流路途中において当該動作用流路42の開閉を行う圧力規制弁44が設けられている。この圧力規制弁44は、リターン流路40内の流体の圧力が所定値以上となったときに開き位置となって動作用流路42を開通させる作用をなすものである。
【0020】
この構成によれば、工具ヘッド14による所定動作(一例として、圧着動作)が終了したとき、ピストン36の押動が停止した状態のシリンダ34内に流体ポンプ24によって加圧された流体が継続して流入することとなり、シリンダ34内および当該シリンダ34内と連通するリターン流路40内の流体の圧力があらかじめ設定された所定値以上となる。したがって、圧力規制弁44が開き位置となって動作用流路42が開通するため、リターン流路40内から動作用流路42内へ、加圧された流体が流入する作用が得られる。ちなみに、通常、作業者は工具ヘッド14による所定動作が終了したことを、圧力規制弁44が開き位置となる際に発生する音で確認できるため、起動スイッチノブ18を押す動作を停止させる。
【0021】
次に、動作用流路42には、圧力規制弁44よりも下流側(リターン流路40との分岐部から遠ざかる側)の位置において、先端部46aを動作用流路42よりも外に突出させた状態で動作用流路42内を往復動可能に設けられた動作ピン46を備えている。この動作ピン46は、常時は付勢部材によって先端部46aを動作用流路42内へ向かう方向に付勢されており、動作用流路42が開通してリターン流路40内から動作用流路42内へ加圧された流体が流入したときに、その流入した流体の圧力によって動作用流路42外へ向かう方向に押動される作用をなすものである。
【0022】
この構成によれば、圧力規制弁44が開き位置となって動作用流路42が開通したときに、リターン流路40内から動作用流路42内へ流入した流体の圧力によって動作ピン46の先端部46aが動作用流路42外へ向かう方向に押動される作用が得られる。
【0023】
次に、リターン流路40には、動作用流路42との分岐部よりも下流側(分岐部から遠ざかる側)の位置において、当該リターン流路40の開閉を行うリターン弁48が設けられている。このリターン弁48は、球状の弁体48aを有しており、常時は付勢部材によって弁体48aを閉じ位置となる一方向(ここでは、動作用流路42内へ向かう方向)に付勢されており、動作ピン46の先端部46aによって弁体48aを逆方向(ここでは、動作用流路42外へ向かう方向)に押動されたときに開き位置となってリターン流路40を開通させる作用をなすものである。
【0024】
この構成によれば、リターン流路40内から動作用流路42内へ流入した流体の圧力によって動作ピン46の先端部46aが動作用流路42外へ向かう方向に押動されたときに、リターン弁48が開き位置となってリターン流路40が開通する。したがって、シリンダ34内の流体がリターン流路40を通流して、流体タンクへと流出する作用が得られる。このとき、起動スイッチノブ18を押す動作は停止されているため、ピストン36が一方向(本体部10の先端部に向かう方向)に押動される作用は生じない。したがって、シリンダ34内の流体が流体タンクへと流出することでシリンダ34内の流体の圧力が低下するため、シリンダ34内に設けられた付勢部材38の付勢力が当該圧力を上回る状態となり、ピストン36は逆方向(本体部10の先端部から離れる方向)に押動される作用が生じる。すなわち、ピストン36を起動位置まで戻す後退機能が得られる。ちなみに、作業が終了したときに、起動スイッチノブ18を押す動作を継続したままとすると、吐出流路32からシリンダ34内へ流体が流入しつつ、シリンダ34内からリターン流路40へ流体が流出する状態となるため、ピストン36はどちらの方向にも移動しない状態となる。
【0025】
以上のように、作業者が本体部10の起動スイッチノブ18を押すことで、工具ヘッド14を動作させて所定の作業(圧着等)を行った場合、当該作業が終了したときに、工具ヘッド14の可動部(一例として、固定アーム14b)の動きが停止する(
図6(a)参照)。このとき、ピストン36の押動も停止されるため、シリンダ34内および当該シリンダ34内と連通するリターン流路40内の流体の圧力が所定値以上となる。これにより、圧力規制弁44が開き位置となって動作用流路42が開通して、リターン流路40内から動作用流路42内へ加圧された流体が流入する(
図6(b)参照)。その結果、動作用流路42内へ流入した流体の圧力によって動作ピン46の先端部46aが動作用流路42外へ向かう方向に押動されて、リターン弁48が開き位置となる(
図6(c)参照)。したがって、リターン流路40が開通して、シリンダ34内の流体がリターン流路40を通流して流体タンクへと流出するため、シリンダ34内の流体の圧力が低下して、付勢部材38の付勢力によってピストン36は起動位置まで戻される。すなわち、作業の終了に伴って自動的にピストン36を起動位置まで戻す自動後退機能が実現される。
【0026】
上記の構成によれば、簡素な機械的構造、具体的には動作用流路や開閉弁等を用いた簡素な油圧機構によって、ピストン36の自動後退機能を実現可能としている。したがって、電気的に戻し弁を操作するソレノイドやモータ等を設ける必要が無いため、構造の複雑化、重量の増加、製造コストの増加等の問題を解決することが可能となる。
【0027】
さらに、簡素な油圧機構を用いて自動後退機能を実現しているため、当該自動後退機能を解除する機構や途中停止する機構の付加を容易に行うことが可能となる。以下、それらの機構について詳しく説明する。
図7は当該自動後退機能の解除および途中停止を行う機構に関連する部分を中心とする正面視の拡大図(断面図)である。
【0028】
図7に示すように、動作用流路42から分岐する開放用流路52を備えている。当該分岐部は圧力規制弁44の配設位置と動作ピン46の配設位置との間の位置に設けられる。ここで、開放用流路52の流路途中において当該開放用流路52の開閉を行う圧力開放弁54が設けられている。この圧力開放弁54は、球状の弁体54aを有しており、常時は付勢部材によって弁体54aが閉じ位置となる一方向に付勢されており、開放ピン56の先端部56aによって弁体54aが逆方向に押動されたときに開き位置となって開放用流路52を開通させる作用をなすものである。
【0029】
この構成によれば、前述の圧力規制弁44が開き位置となって動作用流路42が開通して、リターン流路40内から動作用流路42内へ流体が流入したときに、圧力開放弁54が開き位置となって開放用流路52を開通させた状態となっている場合には、当該流体は、動作用流路42から開放用流路52へと流出するため、動作用流路42内の圧力は上昇せず、動作ピン46を押動させる作用が生じない。したがって、リターン弁48が開き位置とはならず、リターン流路40も開通しないため、前述のピストン36を起動位置まで戻す後退機能は作用しないこととなる。逆に、リターン流路40内から動作用流路42内へ流体が流入したときに、圧力開放弁54が閉じ位置となって開放用流路52を開通させない状態となっている場合には、前述のピストン36を起動位置まで戻す後退機能が作用することとなる。
【0030】
本実施形態においては、開放用流路52の開閉動作(ここでは、開き位置とする動作)、すなわち、圧力開放弁54を開き位置まで押動する開放ピン56の動作(押動)を行うカム60を備えている。このカム60は、回動可能に配設されていると共に、常時は一方向に向けて付勢されており、逆方向(矢印A方向)に向けて所定位置まで回動されることによって開放ピン56を押動する作用、すなわち圧力開放弁54を開き位置とする作用をなすものである。
【0031】
ここで、カム60を所定位置まで動作(回動)させる動作部として以下の二通りの構成を備えている。
【0032】
上記動作部の第1の構成として、起動スイッチノブ18に連結されて起動スイッチノブ18の移動をカム60の回動に変換するリンク部62を備えている。これによれば、工具ヘッド14による所定の作業が終了し、前述の自動後退機能が開始された状態で、且つ、作業者が起動スイッチノブ18の押動を停止した状態において、再度、作業者が起動スイッチノブ18を押動することによって(押動を続ける必要はなく、一回押動すればよい)、当該起動スイッチノブ18に連結されたリンク部62の先端部62aがカム60を所定位置まで動作(回動)させる作用が生じる。したがって、圧力開放弁54が開き位置となって、ピストン36の自動後退機能を動作途中で停止することが可能となる。このように、自動後退機能の途中停止機構を、きわめて簡素な構成の付加によって実現することが可能となる。
【0033】
上記動作部の第2の構成として、大小二つの作用寸法を有してカム60と当接するレバー部64を備えている。一例として、レバー部64には、カム60の回動軸Cと並行する方向に移動可能に配設されて、二つの作用半径でカム60と当接可能な円柱状部材が用いられる。これによれば、レバー部64の大きな作用寸法の部分をカム60と当接させることによって、カム60を動作(回動)させる作用が生じる。なお、レバー部64の小さな作用寸法の部分に関しては、カム60と当接させない構成としてもよく、あるいは、カム60を所定位置まで動作(回動)させない程度に当接させる構成としてもよい。
【0034】
この構成によれば、作業開始前すなわち起動スイッチノブ18を押動する前に、レバー部64を一方の位置まで移動させて、小さな作用寸法の部分がカム60と非当接(もしくは所定位置まで回動させない当接)の状態とすれば、当該カム60を所定位置まで動作(回動)させないため、自動後退機能が作用する状態とすることができる。逆に、起動スイッチノブ18を押動する前に、レバー部64を他方の位置まで移動させて、大きな作用寸法の部分がカム60と当接する状態とすれば、当該カム60を所定位置まで動作(回動)させる作用が生じる。したがって、圧力開放弁54が開き位置となって、ピストン36の自動後退機能を解除することが可能となる。このように、自動後退機能の解除機構を、きわめて簡素な構成の付加によって実現することが可能となる。
【0035】
以上、説明した通り、本発明に係る電動工具によれば、電気的に戻し弁を操作するソレノイドやモータ等を設けることなく、油圧機構を用いた簡素な機械的構造によって、所定作業が終了したときに自動的にピストンを起動位置まで戻す自動後退機能を実現することができる。また、自動後退機能の解除や途中停止を行う機構の付加を容易に行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。特に、本電動工具として、圧着工具を例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、切断工具等においても好適に適用することができる。