特許第6709724号(P6709724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709724
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】火災感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   G08B17/107 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-231910(P2016-231910)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-88200(P2018-88200A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大矢 泰徳
【審査官】 山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−231484(JP,A)
【文献】 特開2004−227446(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202494631(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
21/17−21/61
G08B 17/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと該本体ケースの上側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、遮光壁からなるラビリンス構造を含む検煙領域および該検煙領域へ投光する発光素子と前記検煙領域で散乱された光を受光する受光素子を有する暗箱を備えた感知部と、該感知部からの信号に基づいて火災の発生を検出する電子回路が実装された回路基板と、が収納されてなる火災感知器において、
前記暗箱は、前記回路基板に結合される第1暗箱構成部材と、該第1暗箱構成部材と結合されて外部から前記ラビリンス構造の内側へ直接光が入らないようにする第2暗箱構成部材とを備え、
前記第1暗箱構成部材に、前記ラビリンス構造を構成する複数の遮光壁が設けられ、
前記複数の遮光壁のうち少なくとも1つの遮光壁の先端部に、外向きの爪を有する係止片が形成され、
前記第2暗箱構成部材の前記係止片が形成されている遮光壁に対応する部位に、前記係止片の先端の爪が係合可能な係合穴が形成され、
前記係止片の先端の爪と前記係合穴との係合により、前記第1暗箱構成部材と前記第2暗箱構成部材とが結合されるように構成されていることを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
前記複数の遮光壁のうち互いに対向する2つ遮光壁の先端部に、各々外向きの爪を有する係止片がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の火災感知器。
【請求項3】
前記係止片が形成されている遮光壁の厚みは、前記係止片が形成されていない遮光壁の厚みよりも薄くなるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の火災感知器。
【請求項4】
前記係止片が形成されている遮光壁の側面に高さ方向に沿った凹部が形成され、該凹部の両側にそれぞれリブが形成され、前記凹部の形成箇所の壁の厚みは前記係止片が形成されていない遮光壁の厚みよりも薄くなるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の火災感知器。
【請求項5】
前記発光素子および/または受光素子は前記ラビリンス構造を構成する前記複数の遮光壁の内側に配設され、前記第2暗箱構成部材には前記発光素子および/または受光素子の周囲の少なくとも一部を覆う遮光壁が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器、特に受光素子を使用した光電式火災感知器(煙感知器)や煙および熱あるいはガスを検出する複合型火災感知器に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器として、発光素子が発した光の散乱光を受光素子で受光することによって煙を感知する光電式煙感知器や、サーミスタのような感熱素子あるいはCOなどの有害ガスを検知するガスセンサをさらに備え、煙および熱あるいはガスを検出する複合型火災感知器が知られている。
煙感知器または熱煙複合型感知器には、外部から光が入らないようにするラビリンス構造の遮光壁(以下、単にラビリンスと称する)を周囲に有する暗箱内に、発光素子と受光素子を、互いの光軸をずらした状態で収納し、火災発生時に暗箱内に煙が流入すると、発光素子から照射された光が煙によって散乱され、その散乱光を受光素子が感知すると火災発生と判断して警報を発生するように構成されているものがある。
【0003】
そして、上記暗箱は、発光素子や受光素子と共に火災検出回路を構成する電子部品が実装されるプリント配線基板(回路基板)に結合されている。
ところで、暗箱を備えた従来の煙感知器には、回路基板側にラビリンスを有する暗箱本体(光学台)が設けられ反対側にカバー(蓋)が設けられているもの(例えば特許文献1)と、回路基板側に暗箱基台(蓋)が設けられ反対側にラビリンスを有する暗箱ケースが設けられているもの(例えば特許文献2)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−303697号公報
【特許文献2】特開2012−242867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、煙感知器の製造ラインにおいては、感知器のカバーを本体ケースに組み付ける前に、感知器を設置時の姿勢すなわち逆さにした状態(感知ヘッドが下向きの状態)で、煙感度試験を実施したいことがある。
しかしながら、従来の煙感知器は、回路基板側にラビリンスを有する暗箱本体が設けられている特許文献1のタイプも、回路基板側に暗箱基台(蓋)が設けられ反対側にラビリンスを有する暗箱ケースが設けられている特許文献2のタイプも、暗箱本体(暗箱ケース)とカバー(蓋)とを結合する手段がないため、感知器を逆さにすると、カバー(蓋)が自重で落下してしまい、上述の煙感度試験を実施できないという課題がある。
【0006】
そこで、蓋側に先端に爪を有する一対の係止片を設け、暗箱本体(基台)側に係合穴を形成して、係止片の爪と係合穴とを係合させることで暗箱本体(基台)と蓋とを結合することを考えた。しかし、そのような構成を、回路基板側にラビリンスを有する暗箱本体が設けられている特許文献1のタイプに適用すると、係止片の先端が回路基板側に位置することになるため、暗箱を分割する際に係止片の爪を外しにくい構造になってしまう。
【0007】
また、特許文献1のタイプのものにおいて、暗箱本体の周壁端部側に鉤爪を設けるとともに、蓋側に鉤爪と係合可能な長穴を形成し、蓋を回すことによって暗箱本体(基台)と蓋とを結合したり分離したりできるようにする構造も考えられる。しかし、かかる構造は、蓋が単に円板状のものであればなんら問題ないが、蓋にラビリンスの構成する遮光壁の一部を設けた場合、暗箱本体側の遮光壁との位置関係では蓋を回すことができなくなるので、採用できない、あるいは設計が非常に面倒になるという不具合があることが分かった。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、感知器のカバーを本体ケースから外した状態で感知器を逆さにしても煙感知部としての暗箱を構成するカバー(蓋)が自重で落下しないように暗箱本体(基台)と蓋とを結合することができる上、暗箱本体(基台)と蓋とを容易に結合したり分離したりすることができる火災感知器を提供することにある。
本発明の他の目的は、暗箱の回路基板と反対側の蓋にラビリンスの一部を構成する遮光壁を設けた場合にも、蓋を回すことなく容易に暗箱本体(基台)から外すことができる火災感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、
本体ケースと該本体ケースの上側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、遮光壁からなるラビリンス構造を含む検煙領域および該検煙領域へ投光する発光素子と前記検煙領域で散乱された光を受光する受光素子を有する暗箱を備えた感知部と、該感知部からの信号に基づいて火災の発生を検出する電子回路が実装された回路基板と、が収納されてなる火災感知器において、
前記暗箱は、前記回路基板に結合される第1暗箱構成部材と、該第1暗箱構成部材と結合されて外部から前記ラビリンス構造の内側へ直接光が入らないようにする第2暗箱構成部材とを備え、
前記第1暗箱構成部材に、前記ラビリンス構造を構成する複数の遮光壁が設けられ、
前記複数の遮光壁のうち少なくとも1つの遮光壁の先端部に、外向きの爪を有する係止片が形成され、
前記第2暗箱構成部材の前記係止片が形成されている遮光壁に対応する部位に、前記係止片の先端の爪が係合可能な係合穴が形成され、
前記係止片の先端の爪と前記係合穴との係合により、前記第1暗箱構成部材と前記第2暗箱構成部材とが結合されるように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する火災感知器によれば、感知器のカバーを本体ケースから外した状態で感知器を逆さにしても煙感知部としての暗箱を構成する部材(暗箱ケース:蓋)が自重で落下しないように第1暗箱構成部材(暗箱基台)と第2暗箱構成部材(暗箱ケース)とを結合することができる。また、ラビリンスを構成する遮光壁を利用して係止手段としての爪を設けるので、新たに係止片を設ける必要がなく、大幅な設計変更やコストアップを招くことがない。さらに、先端に係止片が設けられている遮光壁を外側から内側へ押圧することで、簡単に係止片の爪と係合穴との係合を外して、第1暗箱構成部材としての暗箱基台と第2暗箱構成部材としての暗箱ケースとを分離することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記複数の遮光壁のうち互いに対向する2つ遮光壁の先端部に、各々外向きの爪を有する係止片がそれぞれ形成されているようにする。
かかる構成によれば、先端に係止片が設けられている2つの遮光壁を2本の指で挟んで外側から内側へ押圧することによって、簡単に係止片の爪と係合穴との係合を外して、第1暗箱構成部材としての暗箱基台と第2暗箱構成部材としての暗箱ケースとを分離することができるため、暗箱内部の点検や部品の交換作業を短時間に行うことができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記係止片が形成されている遮光壁の厚みは、前記係止片が形成されていない遮光壁の厚みよりも薄くなるように設定する。
かかる構成によれば、先端に係止片が設けられている遮光壁を比較的小さな力で変形させて、第1暗箱構成部材としての暗箱基台と第2暗箱構成部材としての暗箱ケースとを分離することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記係止片が形成されている遮光壁の側面に高さ方向に沿った凹部が形成され、該凹部の両側にそれぞれリブが形成され、前記凹部の形成箇所の壁の厚みは前記係止片が形成されていない遮光壁の厚みよりも薄くなるように設定する。
かかる構成によれば、係止片が設けられている遮光壁を薄くすることができるため、比較的小さな力で先端に係止片が設けられている遮光壁を変形させることができるとともに、リブによって遮光壁の強度が低下するのを回避し、耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記発光素子および/または受光素子は前記ラビリンス構造を構成する前記複数の遮光壁の内側に配設し、前記第2暗箱構成部材には前記発光素子および/または受光素子の周囲の少なくとも一部を覆う遮光壁を形成する。
かかる構成によれば、第2暗箱構成部材(暗箱ケース)を第1暗箱構成部材(暗箱基台)に対して回転できるように構成あるいは設計することが難しいラビリンス構造を適用した場合にも、係止片の爪と係合穴との係脱で第1暗箱構成部材と第2暗箱構成部材とを結合したり分離したりすることができるため、設計が容易になる。また、第2暗箱構成部材(暗箱ケース)に発光素子および/または受光素子の周囲の少なくとも一部を覆う遮光壁を形成しているため、第1暗箱構成部材(暗箱基台)に発光素子および/または受光素子の周囲全体を覆う遮光壁を形成しておく必要がなくなるので、第1暗箱構成部材に対して第2暗箱構成部材を結合する前における第1暗箱構成部材への発光素子や受光素子の組付け作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、感知器のカバーを本体ケースから外した状態で感知器を逆さにしても煙感知部としての暗箱を構成するカバー(蓋)が自重で落下しないように暗箱本体(基台)と蓋とを結合することができる上、暗箱本体(基台)と蓋とを容易に結合したり分離したりすることができる火災感知器を実現することができる。また、回路基板と反対側の蓋にラビリンスの一部を構成する遮光壁を設けた場合にも、蓋を回すことなく容易に暗箱本体(基台)から外すことができる火災感知器を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る火災感知器の一例としての光電式火災感知器の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】(A)は本体ケースの収容凹部内に回路基板および暗箱基台を収納した状態を斜め上から見た斜視図、(B)は要部である係止片を設けた遮光壁の拡大斜視図である。
図3図2の感知器の暗箱基台に暗箱カバーを被せた状態を、中心を通る鉛直な面で切断して示した中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を適用した光電式火災感知器(煙感知器)の一実施形態について説明する。
本実施形態の光電式火災感知器(以下、単に感知器と記す)10は、火災に伴い発生した煙を感知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。なお、以下の説明では、感知器10を建造物の天井面に設置した状態で上になる側を下側、下になる側を上側とする。
【0018】
本実施形態の感知器10は、図1に示すように、感知部を収容するための収容凹部11Aを有し建造物の天井面に取り付けるための円筒状の本体ケース11と、ドーム状をなし前記本体ケース11の上側全体を覆う感知器カバー12とを備え、本体ケース11と感知器カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
また、感知器10は、前記本体ケース11の収容凹部11A内に収容され固定される回路基板13と、ラビリンス構造の遮光壁41を有し前記回路基板13に搭載される暗箱基台14と、該暗箱基台14の縁部の内側に係合し載置される円筒状の防虫網15と、該防虫網15を挟んで前記暗箱基台14に係合し暗箱を形成する有底円筒状の暗箱カバー16とを備え、これらの構成部材が、上記筐体内に収納され本体ケース11と感知器カバー12とが結合されることで感知器が構成される。
【0019】
本体ケース11は感知器10の下側筐体壁を構成するもので、本体ケース11の下面には、予め天井面に設置された取付基台(図示省略)と連結し、当該感知器10を天井面に固定するための連結金具17が3個設けられている(図1ではこのうち1個が見えている)。また、本体ケース11には、収容凹部11A内に収容された回路基板13および暗箱基台14を固定するネジ18が挿通されるボス部11bが3個設けられている(図1ではこのうち1個が見えている)。
【0020】
暗箱基台14には、LED(発光ダイオード)のような発光素子19Aを収納する収納部14aと、フォトダイオードのような受光素子19Bを収納する収納部14bが設けられるとともに、収納部14a,14bの底壁には、発光素子19Aと受光素子19Bのリード端子19aと19bが挿通可能な細孔(図示省略)がそれぞれ形成されており、暗箱基台14の下面より突出した各素子のリード端子の先端が回路基板13を貫通し、フロー半田付け等によって接続される。
【0021】
さらに、暗箱基台14には、回路基板13側(図では下方)へ向かって突出する2本の係止片(フック)14cが設けられ、これらの係止片14cの先端が回路基板13に形成されている係合穴13cに係合することで、暗箱基台14と回路基板13とが一体化されるように構成されている。回路基板13は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、該基板にはネジ挿通穴13aが3箇所形成されており、連結金具17のネジ穴および本体ケース11の底壁のボス部11bを貫通して回路基板13のネジ挿通穴13aに挿通されたネジ18によって本体ケース11の収容凹部11A内に固定される(図3参照)。
【0022】
なお、受光素子19Bは導電性材料で形成された電磁シールドケース20に収納された状態で収納部14bに挿入されるように構成されている。また、暗箱カバー16には、暗箱基台14の収納部14a,14bに対応して、内側の素子を囲むように形成された遮光壁16a,16bが設けられている。
一方、感知器カバー12には、その中央に、暗箱の上部が突出可能な円形状の開口部12Aが形成されるとともに、該開口部12Aより突出した暗箱カバー16の円板状の蓋部16cの縁部に係合されるヘッドカバー21が設けられ、該ヘッドカバー21と感知器カバー12の上壁との間に、上記開口部12Aに連通する開口が円周方向に沿って複数個形成され、該開口が外部の煙をケース内部に流入可能にする煙流入口22として機能するように構成されている。
【0023】
また、感知器カバー12の中央の上記開口部12Aの縁には、リング状に形成された透明部材からなる光放出部材23が嵌合されるように構成されている。そして、この光放出部材23には、下方へ向かって垂下するように形成された一対の棒状の光ガイド部23aが結合されており、該光ガイド部23aのうち一方の先端(下端)の光入射部(端面)が、回路基板13上に実装される図示しない動作状態報知用の発光ダイオード(LED)と対向するように構成されている。
【0024】
次に、図2および図3を用いて、煙感知部としての暗箱を構成する暗箱基台14と暗箱カバー16とを結合する構造について説明する。このうち、図2(A)は本体ケース11の収容凹部11A内に回路基板13および暗箱基台14を収納した状態を斜め上から見た斜視図、図2(B)は要部である係止片を設けた遮光壁の拡大斜視図、図3図2の感知器の暗箱基台14に暗箱カバー16を被せた状態を、中心を通る鉛直な面で切断して示した中央断面図である。
【0025】
暗箱基台14に設けられているラビリンス40は、図1に示すように、互いに分離した複数の遮光壁41が円状に並んで配設されることで外形が円筒形をなすように形成されている。また、図2(A)に示すように、ラビリンス40を構成する各遮光壁41は、最も外側にあって外壁を構成する外壁部41aと半径方向に対して斜めに設けられた遮光壁部41bと折返し壁部41cなどから構成され、隣接する遮光壁の一部(外壁部41aと折返し壁部41c)が半径方向に重なるように配置されることによって、外部光がラビリンス41の内側へ直接入らないようになっている。
【0026】
本実施形態の感知器においては、上記のように構成された複数の遮光壁41のうち、ほぼ180°離れ対向する位置にある一対の遮光壁41Aと41Bの上端に、外向きの爪を有する係止片42a,42bがそれぞれ形成されている。一方、暗箱カバー16の蓋部16cの遮光壁41A,41Bに対応する部位(2箇所)には、図3に示すように、係止片42a,42bの先端が係合可能な係合穴16dが形成されている。そのため、回転方向の位置合わせをした後に、暗箱基台14に暗箱カバー16を嵌合させながら押し込むと、係止片42a,42bの先端が内側へ移動するように変形し、先端の爪が係合穴16dに合致すると弾性力で復元して爪が係合穴16dに入って縁に係止されることによって、暗箱基台14と暗箱カバー16とが一体化されるように構成されている。
【0027】
また、上記係止片42aが形成されている遮光壁41Aの外壁部41aの側面には、図2(B)に示すように、縦方向に沿って凹部41dが形成されることによって、該凹部41dの両側に沿ってリブ41eが設けられた構成となっている。図示しないが、遮光壁41Bも同様である。このように、遮光壁41A,41Bに凹部41dが形成されることで遮光壁の厚みが薄くなり、これによって、遮光壁41A,41Bを弾性変形させ易くなるとともに、凹部41dの両側にリブ41eが設けられていることによって、遮光壁41A,41Bの強度が大きく低下しないように工夫された構造となっている。なお、図3においては、防虫網15の図示を省略している。
【0028】
遮光壁41A,41Bが上記のように構成されているため、図示しない防虫網15の外側から、図3に矢印A1,A2で示すように、遮光壁41A,41Bの先端側を内側方向へ押し込むような力を与えながら、他方の手の指で暗箱カバー16の蓋部16cを挟んで上方へ引っ張ると係止片42a,42bの爪と係合穴16dとの係合が外れ、暗箱カバー16を暗箱基台14から分離することができるようになっている。なお、ラビリンスの外側に防虫網15があったとしても、係合穴16dの位置から係止片42a,42bの位置を把握することができる。
【0029】
上記とは逆に、先端に爪を有する一対の係止片(42a,42b)を暗箱カバー16側に設け、暗箱基台14側に係合穴を設ける構成も考えられるが、そのような構成にすると、係止片(42a,42b)の先端の爪が、暗箱基台14内に入り込むことになるため、暗箱基台14の上面に形成されている嵌合用のリブ14eが邪魔になって、係合を外す方向の力を作用させるのが困難となる。また、暗箱基台14の裏面が見えないため、係止片42a,42bの位置も分かりにくいという不具合が生じるのに対し、本実施形態の感知器にはそのような不具合がない。
【0030】
さらに、本実施形態の感知器においては、図1に示されているように、暗箱基台14の素子収納部14a,14bに対応して、暗箱カバー16に発光素子19Aと受光素子19Bの側方を覆って遮光する遮光壁16a,16bが設けられているため、暗箱カバー16を回すことで係合を外して暗箱基台14と暗箱カバー16を分離する構造を採用することが困難である。発光素子19Aと受光素子19Bの側方を覆う遮光壁16a,16bを、暗箱基台14側に設けて素子の周囲を完全に覆うようにする構成も考えられるが、そのような構成にすると、素子収納部14a,14bの周囲に空きスペースがなくなって、発光素子19Aと受光素子19Bを暗箱基台14に取り付ける作業が行いにくくなるという不具合が生じるが、本実施形態の感知器はそのような不具合を招くことがないという利点がある。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の火災感知器においては、暗箱カバー16と暗箱基台14とを一体化させることができるため、感知器を逆さにしても暗箱カバー16が自重で落下することがないので、製造ラインにおいては、感知器のカバーを本体ケースに組み付ける前に、感知器を設置時の姿勢にした状態(感知ヘッドが下向きの状態)で、煙感度試験を実施することができる。
また、上記の説明から、上記実施形態における係止片42a,42bと係合穴16dとの係合により暗箱カバー16と暗箱基台14とを一体化させる構成は、暗箱基台14にラビリンスが設けられていて、暗箱カバー16側にも発光素子19Aや受光素子19Bを囲む遮光壁16a,16bが設けられているものに適用すると、発光素子19Aと受光素子19Bを取り付ける作業が容易となり、有効な技術であることが分かる。
【0032】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、暗箱基台14に暗箱カバー16を結合させるための係止片を2箇所に設けているが、1箇所あるいは3箇所以上に設けても良い。
また、上記実施形態の火災感知器においては、係止片が形成されている遮光壁の側面に高さ方向に沿った凹部41dを形成し、該凹部の両側にそれぞれリブ41eを形成するようにしたものについて説明したが、遮光壁の側面に凹部を形成せずに、単に係止片が形成されている遮光壁の厚みを係止片が形成されていない遮光壁の厚みよりも薄くするように設計しても良い。
【0033】
また、上記実施形態では、本発明を、発光素子と受光素子を有する煙感知器に適用したものについて説明したが、本発明はそれに限定されず、赤外線を検知する焦電素子、サーミスタのような感熱素子あるいはCOなどの有害ガスを検知するガスセンサ等の素子およびこれらの素子からの信号に基づいて火災を検出する感知部としての暗箱を内蔵した火災感知器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 火災感知器(光電式煙感知器)
11 本体ケース
12 感知器カバー
13 回路基板
14 暗箱基台
14a 発光素子収納部
14b 受光素子収納部
16 暗箱カバー
16a 発光素子の遮光壁
16b 受光素子の遮光壁
16d 係止片の係合穴
19A 発光素子
19B 受光素子
41 遮光壁
42a,42b 係止片
図1
図2
図3