【実施例】
【0075】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
【0076】
合成例1
アルコキシシリル基として3−アミノプロピルトリ
エトキシシラン(以下、APSと略す)を含む4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンのエステル体の合成について説明する。まず、以下のスキーム1は、そのエステル体(4)の合成スキームである。
【0077】
【化6】
【0078】
(1)ジケトン誘導体(2)の合成
500ml三口フラスコ中で4−メトキシアセトフェノン(1) 30.0g(0.25mol)、亜硝酸ナトリウム0.15gを酢酸100mlに溶解した。水浴中、硝酸100mlを酢酸100mlに溶解したものを1時間かけて滴下した。その後、室温で2日間撹拌した。反応混合物を500mlの水にゆっくりと入れ、沈殿を生成させた。沈殿物は濾過し、クロロホルムに溶解した。クロロホルム相を飽和重曹水で洗浄し、10%NaCl水溶液で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下、クロロホルムを留去し、オキサジアゾール−N−オキサイド(2)を得た(収量30.5g、収率82%)。
【0079】
(2)ジケトン誘導体(3)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾール−N−オキサイド(2) 14.7g(0.05mol)をアセトニトリル400mlに溶解した。それに金属亜鉛6.0g、酢酸7ml、無水酢酸20mlを添加した。水浴中で反応温度が35℃を超えないように冷却した。6時間撹拌して反応終点とした。反応混合物を濾過し、不溶分を除去した。アセトニトリルを減圧下留去して残渣を得た。残渣をクロロホルムで再結晶し、オキサジアゾールジベンゾイル体(3)を得た(収量9.6g、収率69%)。
【0080】
(3)ジフェニルオキサジアゾロピリジンエチルエステル体(4)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾールジベンゾイル体(3) 10.0g(0.035mol)をブタノール300mlに溶解した。そこへグリシンエチルエステル塩酸塩32.0g(0.23mol)を添加した。24時間加熱還流を行った。ブタノールを減圧下留去し、残渣を得た。残渣を200mlのクロロホルムに溶解し、10%塩酸、飽和重曹水、10%NaCl水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムで再結晶し、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンエチルエステル(4)(以下、エステル体(4)という。)を得た(収量7.6g、収率65%)。
【0081】
(4)活性エステル体(5)の合成
50ml三口フラスコで合成例1のエステル体(4) 1.0g(1.6mmol)を30mlのエタノールに溶解した。そこへKOH 0.11g(3.0mmol)を添加した。5時間加熱還流を行った後、反応混合物を50mlの水へ添加した。水溶液を塩酸でpH1に調整し沈殿を得た。沈殿物を水-エタノール(1:1)で再結晶し、カルボン酸体を得た(収量0.47g、収率81%)。
【0082】
50ml三口フラスコでカルボン酸体を70mg(0.17mmol)とN−ヒドロキシスクシンイミド21mg(0.18mmol)をDMF20mlに溶解した。これにDMF5mlに溶解したN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド37mg(0.17mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、室温で30時間撹拌した。減圧下、DMFを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、活性エステル体(5)を得た(収量90mg、収率78%)。
【0083】
(5)活性エステル体(5)とAPSとの反応
活性エステル体(5)とAPSとの反応を以下に示す。
【0084】
【化7】
【0085】
ナスフラスコに活性エステル体(5)を100mg(241μmol)入れ、ジクロロメタン10mLで溶解させた。APS 0.1mL(482μmol)を反応溶液に添加し、室温で反応を開始した。2時間反応後、セライト濾過を行い、反応溶液をエバポレーターで減圧留去した。生成物をカラムクロマト精製(CHCl
3:ACOAT=9.5:0.5)し、減圧留去後、真空ポンプで乾燥させ、APS含有体(6)を得た(収量45.7mg、収率36%)。
【0086】
APS含有体(6)について、
1H−NMRによる分析結果を示す。
1H−NMRより、8.670〜8.650ppmにベンゼン環の2H、7.649〜7.503ppmに8Hの水素が確認された。8.011ppmにアミド結合の水素1Hが確認された。3.849〜3.800ppmにトリエトキシシランの6H、1.233〜1.201ppmに9Hの水素が確認された。3.485〜3.434ppm、1.777〜1.701ppm、0.713〜0.671ppmにトリエトキシシランのアルキル鎖、各2Hずつ、合計6Hが確認された。
【0087】
合成例2
アルコキシシリル基としてAPSを含む4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンの窒素カチオン体の合成について説明する。
【0088】
(1)活性エステル体(9)の合成
【0089】
【化8】
【0090】
20mlの二つ口フラスコでピリジン体(7)0.2g(2.85×10
−4mol)と、スクシンイミジルエステル体(8)0.734g(1.43×10
−3mol)とを混合した。その後、フラスコ内をアルゴンで置換し、脱気を行った。その後、シリンジを用いてトルエンを10ml加え、120℃で2日間撹拌した。冷却後、沈殿物をろ過し、活性エステル体(9)を得た(収率79%)。
【0091】
(2)活性エステル体(9)とAPSとの反応
活性エステル体(9)とAPSとの反応を以下に示す。
【0092】
【化9】
【0093】
5mLのナスフラスコに活性エステル体(9)を14mg(22.2μmol)入れ、モレキュラーシーブ4A入りDMF0.7mLで溶解させた。DMF0.7mL、APSを5.2μL(22.2μmol)添加した溶液をナスフラスコに加えて室温で反応を開始した。1時間反応後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去、真空ポンプで乾燥させAPS含有体(10)を得た(収量:7.6mg、収率:46%)。
【0094】
APS含有体(10)について、
1H−NMR(JEOL製型式JNM−LA400)による分析結果を示す。
1H−NMRより、9.365〜9.348ppm、8.177〜8.162ppmにピリジン環の水素が4H分認められた。8.740〜8.716ppm、7.674〜7.391ppmに左右のベンゼン環の水素が10H分、8.013ppmにアミド結合の水素1Hが認められた。5.045〜5.008ppm、2.470〜2.436ppm、2.163〜2.1285ppm、1.801〜1.767ppmピリジン環の横のアルキル鎖の水素が各2Hずつ、合計8H分認められた。3.822〜3.690ppmにトリエトキシシランの6H、1.252〜1.154ppmに9H分、3.222〜3.173ppm、1.662〜1.584ppm、0.647〜0.605ppmのアミド結合の横のアルキル鎖、各2Hずつ、合計6H分の水素が認められた。
【0095】
合成例3
アルコキシシリル基としてAPSを含む4,7−ジ(メチルフェニル)−1,2,5−チアジアゾロピリジンのエステル体の合成について説明する。以下に反応スキームを示す。
【0096】
【化10】
【0097】
(1)ジアミン体の合成
ナスフラスコにエチルエステル体(11)を338mg(905μmol)入れ、エタノール30mLで溶解させた。水素化ホウ素ナトリウムを249mg(6.60mmol)添加し、室温で反応を開始した。2時間反応後、反応溶液を水に入れ、クロロホルム溶媒で抽出した(30mLで2回)。クロロホルム層に硫酸マグネシウムを加え、吸引濾過後、減圧留去させた。生成物をカラムクロマト精製(関東化学製シリカゲル60N,CHCl
3=100)し、ジアミン体(12)を得た(収量:70mg、収率:21%)。
【0098】
(2)エチルエステル体の合成
ナスフラスコにジアミン体(12)を70mg(193μmol)入れ、クロロホルム2mLで溶解させた。SOCl
2を1mL(1.4mmol)とクロロホルム1mLの混合溶液を添加し、オイルバスで加熱還流させ、反応を開始した。2時間反応後、反応溶液を水に入れ、クロロホルム溶媒で抽出した(30mLで2回)。クロロホルム層に硫酸マグネシウムを加え、吸引濾過後、減圧留去させた。残渣をエタノールで洗浄して、エチルエステル体(13)を得た(収量:30mg、収率:40%)。
【0099】
(3)カルボン酸体の合成
ナスフラスコにエチルエステル体(13)を180mg(462μmol)入れ、エタノール20mL中、80℃に設定したオイルバスで溶解させた。水酸化カリウム64mg(1.15mmol)を水5mLに溶解させた水溶液を添加し、反応を開始した。4時間反応後、反応溶液を水に入れ、室温で撹拌しながらpH≦1になるまで、ゆっくりと塩酸を加えた。析出した固体を吸引濾過後、真空ポンプで乾燥させ、カルボン酸体(14)を得た(収量:106mg、収率:63%)。
【0100】
(4)活性エステル体の合成
ナスフラスコにカルボン酸体(14)を100mg(276μmol)とN -ヒドロキシスクシンイミドを34mg(303μmol)入れ、THF:CHCl
3=4:1(10mL)中、室温で溶解させた。WSCIをTHF:CHCl
3=1:4(10mL)で溶解させ、反応溶液にゆっくりと滴下し反応を開始した。滴下後、4時間反応させた。反応後、エバポレーターで減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶解させ、食塩水で2回洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え、濾過、減圧留去後、真空ポンプで乾燥させた。これを、カラムクロマト精製(関東化学シリカゲル60N,CHCl
3:ACOET=9:1)し活性エステル体(15)を得た(収量:89mg、収率:70%)。
【0101】
(5)APS含有体の合成
ナスフラスコに活性エステル体(15)を81mg(176μmol)入れ、ジクロロメタン10mLで溶解させた。 APS 0.044mL(193μmol)を反応溶液に添加し、室温で反応を開始した。2.5時間反応後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去した。生成物をカラムクロマト精製 (関東化学シリカゲル60N,CHCl
3:ACOET=9.8:0.2)し、減圧留去後、真空ポンプで乾燥させAPS含有体(16)を得た(収量:59mg、収率:59%)。
【0102】
APS含有体(16)について、
1H−NMRによる分析結果を示す。
1H−NMRより、8.528〜8.513ppmにベンゼン環の2H、7.410〜7.339ppmに8Hの水素が認められた。8.274ppmにアミド結合の水素1Hが認められた。3.832〜3.817ppmにトリエトキシシランの6H、1.220〜1.203ppmに9Hの水素が認められた。3.444ppm、1.738ppm1、0.698ppmにトリエトキシシランのアルキル鎖6Hが認められた。2.502〜2.448ppmに上下のベンゼン環のメチル基6Hが認められた。
【0103】
合成例4
アルコキシシリル基としてAPSを含む4,7−ジフェニル−1,2,5−チアジアゾロピリジンの窒素カチオン体(ビニル基含有)の合成について説明する。まず、窒素カチオン体(ビニル基含有)の合成について説明する。
【0104】
合成例1で合成したエステル体(4)をNaBH
4存在下、還元反応を行い、ジアミノアルコール体(5)を得、これと塩化チオニルを反応させチアジアゾロピリジンクロロメチル体(6)を得、これにトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩(7)を得、さらにウィティヒ反応によりビニル体(8)を得、そして活性エステルを含むピリジニウム塩(9)(−CH=CH−を含む)を合成した。以下に反応例を示す。
【0105】
【化11】
【0106】
(1)ジアミノアルコール体(17)の合成
エステル体(4)(1.73g、5mmol)とNaBH
4(1.30g、35mmol)のエタノール溶液(100ml)を12時間加熱還流後、反応液を水に注入し、一夜放置後に沈澱をろ過してジアミノアルコール体(17)を得た(収量1.17g、収率80%)。
【0107】
(2)クロロメチル体(18)の合成
室温下、ジアミノアルコール体(17)(1.17g)のクロロホルム溶液(60ml)に塩化チオニル(6ml)、ピリジン−NaBH
4(3ml)をこの順で滴下、その後3時間30分加熱還流後、反応液を水に注入し、飽和重曹水で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧留去して得た残渣をカラム(Kanto C−60、ヘキサン/クロロホルム=3/1(v/v)処理してクロロメチル体(18)を得た(収量1.11g、収率82%)。
【0108】
(3)ホスホニウム塩(19)の合成
クロロメチル体(18) 112.6mg(0.33mmol)とトリフェニルホスフィン(96mg、0.37mmol)のトルエン溶液(5ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過し、エーテルで洗浄してホスホニウム塩(19)を得た(収量108mg、収率55%)。
【0109】
(4)ビニル体(20)の合成
氷冷下、m−フォルミルピリジン(16μL,0.18mmol)と水酸化カリウム(純度85%、15mg)のエタノール溶液(1ml)にホスホニウム塩(19)(140.5mg,0.23mmol)を加え、その温度で1時間30分撹拌した。沈澱をろ過し、エタノール、水で洗浄後、乾燥して、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(20)という。)を得た(収量44mg、収率62%)。
【0110】
(5)活性エステルを含むピリジニウム塩(21)の合成
ビニル体(20)(40mg、0.10mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(32mg、0.11mmol)のトルエン溶液(2ml)を5日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含むピリジニウム塩(21)を得た。
【0111】
(6)APS含有体(22)の合成
以下に反応例を示す。
【0112】
【化12】
【0113】
ナスフラスコに活性エステルを含むピリジニウム塩(21)を14mg(20.8μmol)入れ、モレキュラーシーブ4A入りDMF1.4mLで溶解させた。APS 4.8μL(20.8μmol)を反応溶液に添加し、室温で反応を開始した。2時間反応後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去、真空ポンプで乾燥させAPS含有体(22)を得た(収量:10.3mg、収率:64%)。
【0114】
APS含有体(22)についても、
1H−NMRによりその構造を確認した。
【0115】
合成例5
アルコキシシリル基として、3−メルカプトプロピルトリ
エトキシシラン(以下、MPSと略す)を含む4,7−ジフェニル−1,2,5−チアジアゾロピリジンのチオエーテル体の合成について説明する。その反応を以下に示す。
【0116】
【化13】
【0117】
50mLの二つ口フラスコにクロロメチル体(18)0.2g(0.592mmol、モル比 1.0)、炭酸カリウム0.05g(0.355mmol、モル比 0.6)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(以下、MPSと略す)0.14mL(0.592mmol、モル比 1.0)、を入れ減圧しながらアルゴン置換を行った。これに、ガラスシリンジを使用してアセトニトリル20mLを加え、75℃に設定したオイルバスで24時間、反応させた。TLC(CHCl
3:Hexan=3:2)で反応が進行したのを確認後、室温まで冷却させ吸引濾過、減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:Hexan=3:2)を行った。
1H−NMRによりその構造を確認した結果、不純であったため再度、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:Hexan=3:2)を行い目的物であるMPS含有体(23)を得た(収量:0.1795g、収率56%)。
【0118】
1H−NMRにより、8.696〜8.680ppmにオキサジアゾロピリジン骨格の窒素の影響によってフェニル基の2H、7.616〜7.570ppmにフェニル基の残りの8Hの水素が確認された。4.000ppmにチアジアゾロピリジン骨格とチオエーテル基の間の2H、3.806〜3.763ppmにトリエトキシシランのエトキシ基の6H、1.205〜1.181ppmに9H、2.735〜2.710ppm、1.736〜1.684ppm、0.723〜0.710ppmにアルキル鎖の各2H分の水素が確認された。
【0119】
合成例6
活性エステル体(5)とMPSとの反応を以下に示す。
【0120】
【化14】
【0121】
50mLのナス型フラスコに炭酸カリウム0.1g(0.725mmol、モル比 1.5)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン0.12mL(0.483mmol、モル比 1.1)を入れ、1,4−ジオキサン10mL中でアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。これに、1,4−ジオキサン15mLに溶解させた活性エステル体(5)0.2g(0.483mmol、モル比 1.1)を30分かけてゆっくりと滴下した。滴下後、80℃に設定したオイルバスで24時間、反応させた(アルゴン雰囲気下)。TLC(CHCl
3=100)で反応が進行したのを確認後、室温まで冷却させ吸引濾過、減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3=100)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物であるMPS含有体(24)を得た(収量0.16g、収率62%)。
【0122】
1H−NMRにより、8.817〜8.801ppmにオキサジアゾロピリジン骨格の窒素の影響によってフェニル基の2H、7.656〜7.511ppmにフェニル基の残りの8H分の水素が確認された。3.835〜3.800ppmにトリエトキシシランのエトキシ基の6H、1.234〜1.210ppmに9H、3.021〜2.996ppm、1.800〜1.748ppm、0.776〜0.748ppmにアルキル鎖の各2H分の水素が確認された。
【0123】
合成例7
アルコキシシリル基としてAPSを含む4,7−ジ[(1−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)について説明する。まず、4,7−ジ[(1−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成について説明する。
【0124】
【化15】
【0125】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(26)の合成
アルゴン置換したナスフラスコ中でピリジル体(25) 200mg(0.38mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム溶液2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。1−ナフチルボロン酸144mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で6時間加熱還流した。反応液に水を20ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(26)を収量190mg、収率55%で得た。
【0126】
(2)活性エステル体(27)の合成
ピリジル体(26) 300mg(0.58mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル170mg(0.58mmol)をトルエン8mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(27)を得た。
【0127】
活性エステル体(27)とAPSとの反応を以下に示す。
【0128】
【化16】
【0129】
50mLのナス型フラスコに化合物(27)を0.2g(0.224mmol、モル比 1.0)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.053mL(0.224mmol、モル比 1.0)を入れ、DMF15mL中でアルゴン雰囲気下、室温で5時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:メタノール=8:2)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物であるAPS含有体(28)を得た(収量0.11g、収率49%)。
【0130】
合成例8
アルコキシシリル基としてAPSを含む4,7−ジ[(2−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)について説明する。まず、4,7−ジ[(2−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0131】
【化17】
【0132】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(29)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにピリジル体(25) 200mg(0.38mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム溶液2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。2−ナフチルボロン酸 144mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で5時間加熱還流した。反応液に水を15ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(29)を収量220mg、収率64%で得た。
【0133】
(2)活性エステル体(30)の合成
ピリジル体(29)300mg(0.58mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル170mg(0.58mmol)をトルエン8mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(30)を得た。
【0134】
活性エステル体(30)とAPSとの反応を以下に示す。
【0135】
【化18】
【0136】
50mLのナス型フラスコに活性エステル体(30)を0.2g(0.224mmol、モル比 1.0)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.053mL(0.224mmol、モル比 1.0)を入れ、DMF15mL中でアルゴン雰囲気下、室温で5時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:メタノール=8:2)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物である
APS含有体(
31)を得た(収量0.13g、収率58%)。
【0137】
合成例9
アルコキシシリル基としてAPSを含む4,7−ジ[(2−ビフェニル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)について説明する。まず、4,7−ジ[(2−ビフェニル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0138】
【化19】
【0139】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(32)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにピリジル体(25) 200mg(0.38mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム溶液2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。ビフェニルボロン酸164mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で5時間加熱還流した。反応液に水を20ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(32)を収量155mg、収率61%で得た。
【0140】
(2)活性エステル体(33)の合成
ピリジル体(32)(300mg,0.45mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル145mg(0.49mmol)をトルエン8mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(33)を得た。
【0141】
活性エステル体(33)とAPSとの反応を以下に示す。
【0142】
【化20】
【0143】
50mLのナス型フラスコに活性エステル体(33)を0.2g(0.213mmol、モル比 1.0)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.05mL(0.213mmol、モル比 1.0)を入れ、DMF15mL中でアルゴン雰囲気下、室温で7時間反応させた。反応終了後、反応溶液をエバポレーターで減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:メタノール=8:2)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物であるAPS含有体(34)を得た(収量0.092g、収率41%)。
【0144】
合成例10
アルコキシシリル基としてMPSを含むチオエーテル体(36)について説明する。
【0145】
【化21】
【0146】
50mLの二つ口フラスコに、クロル体35を0.2g(0.529mmol、モル比 1.0)、炭酸カリウム0.073g(0.529mmol、モル比 1.0)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン0.13mL(0.529mmol、モル比 1.0)、を入れ減圧しながらアルゴン置換を行った。これに、ガラスシリンジを使用してアセトニトリル20mLを加え、75℃に設定したオイルバスで24時間、反応させた。TLC(CHCl
3:ヘキサン=3:2)で反応が進行したのを確認後、室温まで冷却させ吸引濾過、減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:ヘキサン=3:2)を行った。
1H−NMRで確認した結果、不純であったため再度、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3=100)を行い目的物であるチオエーテル体(36)(crude)を得た(収量0.075g、収率25%)。
【0147】
合成例11
アルコキシシリル基としてMPSを含むチオエステル体(38)について説明する。
【0148】
【化22】
【0149】
50mLのナス型フラスコに炭酸カリウム0.09g(0.66mmol、モル比 1.5)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン0.12mL(0.484mmol、モル比 1.1)を入れ、1,4−ジオキサン10mL中でアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。これに、1,4−ジオキサン15mLに溶解させた活性エステル体37の0.2g(0.44mmol、モル比 1.0)を30分かけてゆっくりと滴下した。滴下後、80℃に設定したオイルバスで24時間、反応させた(アルゴン雰囲気下)。TLC(CHCl
3=100)で反応が進行したのを確認後、室温まで冷却させ吸引濾過、減圧留去、真空乾燥を行った。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3=100)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物であるチオエステル体(38)を得た(収量0.1g、収率39%)。
【0150】
合成例12
アルコキシシリル基として3−ヨードプロピルトリ
エトキシシランを含むピリジニウム塩(40)について説明する。
【0151】
【化23】
【0152】
30mLのナス型フラスコにピリジル体39を0.2g(0.512mmol、モル比 1.0)、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン0.85g(2.56mmol、モル比 5.0)、トルエン10mLを入れ、室温で撹拌しながら減圧、アルゴン置換を行った。その後、110℃設定したオイルバスで2日間反応させた。TLC(CHCl
3=100)で反応が進行したのを確認後、室温まで冷却させてエバポレーターで減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄し、吸引濾過、真空乾燥させた。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:メタノール=8:2)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物であるピリジニウム塩(40)を得た(収量0.11g、収率30%)。
【0153】
合成例13
アルコキシシリル基として3−ヨードプロピルトリ
エトキシシランを含むピリジニウム塩(42)について説明する。
【0154】
【化24】
【0155】
30mLのナス型フラスコにピリジル体41を0.2g(0.492mmol、モル比 1.0)、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン0.82g(2.46mmol、モル比 5.0)、トルエン10mLを入れ、室温で撹拌しながら減圧、アルゴン置換を行った。その後、110℃に設定したオイルバスで2日間反応させた。TLC(CHCl
3=100)で反応が進行したのを確認後、室温まで冷却させてエバポレーターで減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄し、吸引濾過、真空乾燥させた。これを、シリカゲルカラムクロマト精製(Kanto 60N,CHCl
3:メタノール=8:2)を行った。
1H−NMRで確認を行い、目的物であるピリジニウム塩(42)を得た(収量0.12g、収率33%)。
【0156】
(退光性の評価)
実験1
合成例1〜13で製造したアルコキシ
シリル基含有有機EL色素をクロロホルムに溶解させ、スライドガラス上に垂らし、乾燥させ膜状のサンプルを作製した。作製したサンプルに紫外線ランプ(アズワンSLUV−4:照射波長 365nm)を用いて紫外線を照射し、所定時間経過後、以下の蛍光顕微鏡による観察を行った。なお、紫外線照射前後の蛍光強度の変化は、撮影した写真を目視観察することで評価した。
顕微鏡:OlYMPUS BX50
励起フィルター:ET405/40X
ダイクロイックミラー:T470pxr
吸収フィルター:ET545/70m
【0157】
(結果)
表1に、吸収波長、蛍光波長、そして紫外線照射6時間後の蛍光強度の変化の結果を示す。紫外線照射後でも、UV照射前と同様の蛍光強度が得られた。なお、
図1に、合成例2で製造したAPS含有体(10)について、UV試験前とUV照射300時間後のサンプルの蛍光顕微鏡写真を示す。UV照射300時間後でも、UV照射前と同様の蛍光強度が得られた。
【0158】
【表1】
【0159】
合成例1〜13で製造したアルコキシ
シリル基含有有機EL色素は、すべて100nm以上のストークスシフトを有しており、特に、R
2およびR
3に置換チエニル基を有する合成例7〜13は、170nm以上のストークスシフトが得られた。これにより、励起光の影響を受けることなく高感度の検出が可能となる。また、合成例7〜13は、640nm以上の近赤外光域に蛍光波長を有していることから、生体組織の形態学的変化や機能的変化を検出する有効なツールとなり、高感度の生体イメージング用蛍光試薬としても期待できる。