(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロータでは、依然として、風水力機械の効率向上の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためにされたものであり、風水力機械の効率を向上できる、ロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の要旨構成は、次の通りである。
【0007】
本発明のロータは、
主軸に支持されるハブと、
該ハブに連結された翼と、
を備えた、風水力機械用のロータであって、
前記翼は、
本体翼部と、
前記本体翼部に対して翼端後縁側に位置する翼端後縁翼部と、
を有し、
前記本体翼部と前記翼端後縁翼部との間には、
該翼を翼厚方向に貫通するとともに、該翼の翼端から該翼の翼根側に向かって延在して該翼根に至る手前で終端する、翼長方向スリットと、
該翼を翼厚方向に貫通するとともに、前記翼長方向スリットの前記翼根側の端から該翼の後縁側に向かって延在して該後縁に至る手前で終端し、スリット幅がほぼ0である、翼弦方向スリットと、
が区画されており、
前記翼端後縁翼部の前縁は、前記本体翼部のうち前記翼端後縁翼部に対して前縁側に位置する部分を前記翼の後縁まで滑らかに延長させてなる、仮想翼端翼部の、翼型中心線よりも、ロータの正面側又は背面側に位置している。
本発明のロータによれば、風水力機械の効率を向上できる。
【0008】
本発明のロータにおいて、
前記翼長方向スリットは、ほぼ一定のスリット幅をもって直線状に延在していると、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【0009】
本発明のロータにおいて、
前記翼端後縁翼部の前縁は、前記仮想翼端翼部の翼型中心線よりも、ロータの正面側に位置しており、
前記仮想翼端翼部の翼型中心線と前記翼端後縁翼部の翼型中心線とは、それぞれロータの背面側で凸となるように湾曲しており、
前記仮想翼端翼部の翼弦線と前記翼端後縁翼部の翼弦線との小さいほうのなす角度θは、0°以上であると、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【0010】
本発明のロータにおいて、
前記仮想翼端翼部の翼型中心線と前記翼端後縁翼部の翼型中心線とは、それぞれ直線状に延在しており、
前記仮想翼端翼部の翼弦線と前記翼端後縁翼部の翼弦線との小さいほうのなす角度θは、0°よりも大きいと、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【0011】
本発明のロータにおいて、
前記翼端後縁翼部の前縁は、前記仮想翼端翼部の翼型中心線よりも、ロータの背面側に位置しており、
前記仮想翼端翼部の翼型中心線と前記翼端後縁翼部の翼型中心線とは、それぞれロータの正面側で凸となるように湾曲しており、
前記仮想翼端翼部の翼弦線と前記翼端後縁翼部の翼弦線との小さいほうのなす角度θは、0°以上であると、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【0012】
本発明のロータにおいて、
前記仮想翼端翼部の翼弦線と前記翼端後縁翼部の翼弦線との小さいほうのなす角度θは、5°未満であると、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【0013】
本発明のロータにおいて、
前記翼長方向スリットは、前記仮想翼端翼部の翼弦線の中心点どうしを結んだ翼弦中心線よりも、後縁側に位置していると、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【0014】
本発明のロータにおいて、
前記翼は、該翼の翼弦方向において互いに異なる位置に配置された複数の前記翼端後縁翼部を有していると、好適である。
これにより、効率をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、風水力機械の効率を向上できる、ロータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
本発明のロータは、風水力機械に用いられるものであり、特に水平軸型の風力発電機又は送風機に用いられると好適なものである。本発明でいう「風水力機械」とは、風力発電機(風車等)、送風機、水力発電機(水車等)、ポンプ、ヘリコプター、ドローン等の、風力又は水力により得られる動力を利用する機械を意味するものとする。
本発明のロータの直径は、任意の値でよいが、ロータが水平軸型の風力発電機に用いられる場合は例えば741〜1111mmであると好適であり、ロータが送風機に用いられる場合は例えば600〜900mmであると好適である。
【0018】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態を、
図1〜
図8を参照して説明する。
図1〜
図3は、本発明の第1実施形態に係るロータの一例を示している。
図4〜
図5は、本実施形態に係るロータの第1変形例を示している。
図6は、本実施形態に係るロータの第2変形例を示している。
用いることができる。
図7〜
図8は、本実施形態に係るロータの第3変形例を示している。
本実施形態のロータ1は、水平軸型の風力発電機用のロータとして構成されているが、水力発電機(水車等)用のロータとして構成されても特に好適であり、また、送風機等の他の風水力機械用のロータとして構成されてもよい。
【0019】
図1〜
図3において、本実施形態のロータ1は、主軸(図示せず)に支持されるハブ10と、ハブ10に連結された複数(本例では3つ)の翼20とを、備えている。図示されない主軸は、
図1で見たときに、ハブ10の背面から後方へ向かって、例えばほぼ水平に、延在する。主軸の中心軸線が、ロータ1の回転中心軸線Oとなる。
なお、翼20の数は、3つに限られず、任意の数とすることができる。
また、ロータ1の各翼20は、本例では互いに同一形状を有しているが、一部の翼が他の翼とは異なる形状を有していてもよい。
【0020】
図2及び
図3に示すように、本例では、翼20のピッチ角(「ねじり角」とも呼ばれる。)が、翼20の翼長方向に沿って一定ではなく、翼長方向に沿って翼根21から翼端22に向かうにつれて徐々に減少している。
ここで、「ピッチ角」とは、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な仮想平面と、ブレード20の翼弦線(ブレード20の前縁23と後縁24とを結ぶ直線)との、なす角度である。
また、「翼長方向」とは、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において、翼20の翼根21の翼弦線の中心点21a(
図1)と翼20の翼端22の翼弦線の中心点22a(
図1)とを結ぶ直線に平行な方向を指す。
また、「ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面」は、
図1のようにロータ1を回転中心軸線Oの一方側から観たときの平面に相当する。
翼20のピッチ角の翼長方向での分布を、本例のようにすることによって、風力発電機の効率を向上できる。ただし、翼20のピッチ角の翼長方向での分布は、任意でよい。
【0021】
本例の翼20は、仮に翼20のピッチ角を翼20の全長にわたって0°にしたときに、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において略長方形状をなすような、略矩形翼である。本例における翼20の翼弦長(ブレード20の前縁23と後縁24とを結ぶ直線の長さ)は、翼20の全長にわたって一定である。
ただし、仮に翼20のピッチ角を翼20の全長にわたって0°にしたときに、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において翼20がなす形状は、任意でよい。また、本実施形態の翼20の翼弦長は、翼20の翼長方向に沿って、少なくとも一部分で変化してもよい。
【0022】
図1に示すように、翼20は、本体翼部50と、本体翼部50に対して翼端後縁側(翼端側かつ後縁側)に位置する翼端後縁翼部40と、を有している。本体翼部50と翼端後縁翼部40との間には、翼長方向スリット31と翼弦方向スリット32とが区画されている。翼長方向スリット31は、翼20を翼厚方向に貫通するとともに、翼20の翼端22に開口し、翼端22から翼根21側に向かって延在して、翼根21に至る手前で終端している。翼弦方向スリット32は、翼20を翼厚方向に貫通するとともに、翼長方向スリット31の翼根21側の端に連結し、そこから翼20の後縁24側に向かって延在して、後縁24に至る手前で終端している。いいかえれば、翼端後縁翼部40は、翼長方向スリット31と翼弦方向スリット32とによって、本体翼部50から分割(分離)されている。
本例において、翼端後縁翼部40は、翼弦方向スリット32よりも後縁24側で、本体翼部50と固定されるか又は一体的に構成されることにより、本体翼部50と連結されている。
ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において、翼弦方向スリット32のスリット幅は、ほぼ0である。
【0023】
本例では、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において、翼長方向スリット31が、翼20の翼長方向に平行に延在している。この構成により、風力発電機の効率を向上できる。ただし、該投影面において、翼長方向スリット31は、翼20の翼長方向に対して交差する方向に延在してもよい。
また、本例では、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において、翼弦方向スリット32が、翼20の翼弦方向に平行に延在している。ここで、「翼弦方向」とは、翼弦線に平行な方向である。この構成により、風力発電機の効率を向上できる。ただし、該投影面において、翼弦方向スリット32は、翼20の翼弦方向に対して交差する方向に延在してもよい。
【0024】
図2及び
図3に示すように、翼端後縁翼部40は、その前縁43側の部分が本体翼部50に対してロータ1の正面側(本例では正圧側)に向かってめくれたような、形状を有している。より具体的に、翼端後縁翼部40の前縁43は、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりも、ロータの正面側(本例では正圧側)に位置している。
ここで、「翼端後縁翼部40の前縁43」は、翼端後縁翼部40における、翼20の前縁23側の端縁である。なお、「翼端後縁翼部40の後縁44」は、翼端後縁翼部40における、翼20の後縁24側の端縁であり、本例では、翼20の後縁24の一部を構成する。
また、「仮想翼端翼部53」は、本体翼部50のうち翼端後縁翼部40に対して翼20の前縁23側に位置する部分51(以下、翼端前縁翼部51ともいう。)を、翼20の後縁24(翼端後縁翼部40の後縁44)まで滑らかに延長させてなる部分であり、いいかえれば、翼端前縁翼部51と、翼端前縁翼部51の後縁51aから翼20の後縁24まで滑らかに延在する仮想翼端後縁翼部52とを、併せた部分である。「翼端前縁翼部51の後縁51a」は、翼端前縁翼部51における翼20の後縁24側の端縁である。
また、「翼型中心線」(「キャンバーライン」とも呼ばれる。)とは、翼型(翼の翼厚方向の断面)において、ロータ1の正面側(ロータ正面側)の表面とロータ1の背面側(ロータ背面側)の表面とから等距離にある点どうしを結んだ線である。
図3に示すように、本実施形態において、翼20の翼型中心線は、ロータ背面側で凸となるように湾曲している。また、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40とは、それぞれロータ背面側で凸となるように湾曲している。
翼弦方向スリット32があることで、本例のように、翼端後縁翼部40における翼根21側の端部を含む、翼端後縁翼部40の翼長方向の全長にわたって、翼端後縁翼部40の前縁43を、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータの正面側に位置させることができるようにされている。
なお、図の例では、本体翼部50及び翼端後縁翼部40の翼型が、それぞれの前縁及び後縁で丸まった形状であり、また、本体翼部50及び翼端後縁翼部40の翼厚が、それぞれの翼型中心線に沿って前縁側から後縁側に向かって徐々に薄くなっているが、この構成は必須ではない。例えば、本体翼部50及び翼端後縁翼部40の翼型は、それぞれの前縁及び後縁の少なくともいずれか一方で角張っていても構わない。また、本体翼部50及び翼端後縁翼部40の翼厚は、それぞれの翼型中心線に沿ってほぼ一定でもよい。
【0025】
以下、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータの正面側に位置していることによる効果について、説明する。
仮に、翼20が、一般的な翼のように翼長方向スリット31を有していない場合、翼20の後縁側の部分では、翼長方向のほぼ全長にわたって、ロータ正面側の表面とロータ背面側の表面において、気流の流れが剥離しやすく、正圧及び負圧をそれぞれ十分に生じさせることができない。そのため、十分な揚力が得られず、風力発電機の効率を良好にできない。
これに対し、本実施形態では、翼20に翼長方向スリット31が形成されており、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータ正面側に位置しているので、翼長方向スリット31に、すなわち翼端後縁翼部40の前縁43と本体翼部50の翼端前縁翼部51の後縁51aとの間に、風が通れるような隙間が区画される。
図14は、本発明の一実施例に係るロータ1のモデルを用いた解析により得られた、翼20の翼端付近の流線を示している。解析の詳細については後述する。
図14から判るように、翼20の翼端付近において、翼20のロータ正面側かつ前縁23側から入射した風は、翼長方向スリット31を通って、翼20のロータ背面側かつ後縁24側へと流れる。これにより、翼端後縁翼部40におけるロータ正面側の表面とロータ背面側の表面において、流れの剥離が抑制され、大きな正圧及び負圧をそれぞれ生じさせることができる。すなわち、翼20の翼端付近における前縁側(翼端前縁翼部51)と後縁側(翼端後縁翼部40)との両方で、ロータ正面側の表面とロータ背面側の表面において、大きな正圧及び負圧をそれぞれ生じさせることができる。よって、揚力を向上でき、風力発電機の効率を向上できる。
なお、仮に、翼長方向スリット31に風が通れるような隙間が区画されていても、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53上にあったり、それよりもロータ背面側に位置している場合には、風が翼長方向スリット31を通過しにくくなり、剥離をさほど効果的に抑制できない。
なお、揚力の発生には、翼20の翼端近傍に生じる圧力差が最も寄与するため、本実施形態において翼長方向スリット31が翼端側にあることで、翼端側において剥離を抑制し圧力差を増大できるので、仮に翼長方向スリット31が翼根側にある場合に比べて、揚力ひいては効率を大きく向上できる。
【0026】
なお、風力発電機の効率は、風力発電機のパワー係数によって評価することができる。本実施形態のロータ1は、翼が翼長方向スリット31を有しないようなロータに比べて、主に周速比が比較的低い時と比較的高い時との少なくともいずれか一方で、パワー係数を増大できるものである。
ここで、「周速比」は、風速に対する翼端速度(翼の翼端の回転方向の速度)の比である。風速をU(m/s)、ロータの回転速度をω(rpm)、ロータの半径をR(mm)とすると、周速比λは、つぎの式(1)で表すことができる。
【数1】
また、「パワー係数」は、ロータ受風面積を単位時間に通過する自由空気流の運動エネルギーに対する風力発電機の正味出力の比である。空気の密度をρ(kg/m
3)、回転トルクをT(Nm)とすると、パワー係数C
pは、つぎの式(2)で表すことができる。
【数2】
【0027】
図1に示すように、本実施形態において、翼長方向スリット31は、ほぼ一定のスリット幅をもって直線状に延在している。より具体的に、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において、翼長方向スリット31のスリット幅dは翼長方向スリット31の全長にわたってほぼ一定であり、また、翼長方向スリット31は直線状に延在している。この構成により、翼端後縁翼部40の翼長方向の全長にわたって、翼端後縁翼部40の表面での剥離を効果的に抑制でき、ひいては効率を向上できる。
ただし、当該投影面において、翼長方向スリット31のスリット幅dは、翼長方向スリット31の延在方向に沿って、少なくとも一部分で変化してもよい。また、当該投影面において、翼長方向スリット31は、非直線状に延在してもよい。
【0028】
効率向上の観点から、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面における、翼長方向スリット31のスリット幅dは、0mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。また、効率向上の観点から、該投影面における翼長方向スリット31のスリット幅dは、10mm以下が好ましい。
同様に、翼20の翼端22での翼弦長CHL(すなわち、仮想翼端翼部53の翼端22での翼弦長)に対する、当該投影面における翼長方向スリット31のスリット幅dの割合、すなわち(d/CHL)×100(%)は、0.0%以上が好ましく、1.9%以上がより好ましく、4.8%以上がさらに好ましい。また、(d/CHL)×100(%)は、9.5%以下が好ましい。
図4及び
図5に示す第1変形例は、該投影面における翼長方向スリット31のスリット幅dが0mmである点のみで、
図1〜
図3に示す例とは異なる。
図5に示すように、該投影面における翼長方向スリット31のスリット幅dが0mmの場合でも、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータ正面側に位置していることで、翼長方向スリット31に、すなわち翼端後縁翼部40の前縁43と本体翼部50の翼端前縁翼部51の後縁51aとの間に、風が通れるような隙間が区画される。よって、上述した剥離抑制効果が得られる。
【0029】
翼20の翼長をLとしたとき、効率向上の観点から、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面における、翼長方向スリット31の翼長方向の長さlは、(1/8)L以上が好ましく、(2/8)L以上がより好ましく、(3/8)L以上がさらに好ましい。また、効率向上の観点から、当該投影面における翼長方向スリット31の翼長方向の長さlは、(5/8)L以下が好ましく、(4/8)L以下がさらに好ましい。
ここで、「翼20の翼長L」とは、
図1に示すように、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面において、翼20の翼根21の翼弦線の中心点21aと翼20の翼端22の翼弦線の中心点22aとを結ぶ直線の長さを指す。なお、ハブ10の半径rと翼20の翼長Lとの和が、ロータ1の半径Rである(R=r+L)。
【0030】
本実施形態のように、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40とが、それぞれロータ背面側で凸となるように湾曲している場合、効率向上の観点からは、仮想翼端翼部53の翼弦線(又はその延長線)と翼端後縁翼部40の翼弦線(又はその延長線)との小さいほうのなす角度θは、0°以上が好ましい。また、効率向上の観点から、仮想翼端翼部53の翼弦線(又はその延長線)と翼端後縁翼部40の翼弦線(又はその延長線)との小さいほうのなす角度θは、5°未満が好ましく、3°以下がさらに好ましい。
図1〜3の例では、角度θが0°であり、翼端後縁翼部40の翼弦線が仮想翼端翼部53の翼弦線上にある。一方、
図6に示す第2変形例は、角度θが0°よりも大きい点のみで、
図1〜
図3の例とは異なる。
図3に示すように、角度θが0°の場合でも、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータ正面側に位置していることで、翼長方向スリット31に、すなわち翼端後縁翼部40の前縁43と本体翼部50の翼端前縁翼部51の後縁51aとの間に、風が通れるような隙間が区画される。よって、上述した剥離抑制効果が得られる。
【0031】
図1〜
図3の例では、翼20が翼端後縁翼部40を1つのみ有しているが、
図7及び
図8に示す第3変形例のように、翼20は、翼端後縁翼部40を複数有してもよい。この場合、各翼端後縁翼部40は、それぞれ、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータ正面側に位置するようにされる。これにより、各翼端後縁翼部40にそれぞれ対応する各翼長方向スリット31に風が通ることで、各翼端後縁翼部40の表面での剥離を効果的に抑制できるので、効率を向上できる。
図7及び
図8の第3変形例は、翼20が、翼20の翼弦方向において互いに異なる位置に配置された複数(具体的には2つ)の翼端後縁翼部40を有している点のみで、
図1〜
図3に示す例とは異なる。第3変形例において、複数の翼端後縁翼部40のうち、最も前縁23側の翼端後縁翼部40は、本体翼部50との間で、翼長方向スリット31及び翼弦方向スリット32を区画している。それ以外の翼端後縁翼部40は、前縁側に隣接する翼端後縁翼部40との間で翼長方向スリット31を区画しているとともに、本体翼部50との間で翼弦方向スリット32を区画している。複数の翼端後縁翼部40のうち、最も後縁24側の翼端後縁翼部40は、その後縁44が、翼20の後縁24の一部を構成している。各翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40は、それぞれロータ背面側で凸となるように湾曲している。
各翼長方向スリット31の上記スリット幅d、上記翼長方向の長さlは、それぞれ上述した数値範囲内であると好適である。各翼長方向スリット31の上記スリット幅dどうし、各翼長方向スリット31の上記翼長方向の長さlどうしは、図の例のように互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
図8(b)は、便宜のため、
図8(a)の側面図における仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と各翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40のみを抜き出して示している。各翼端後縁翼部40の上記角度θは、それぞれ上述した数値範囲内であると好適である。各翼端後縁翼部40の上記角度θどうしは、
図8(b)の例のように互いに異なっていてもよいし、互いに同じでもよい。
図8(b)の例では、2つの翼端後縁翼部40のうち、前縁23側の翼端後縁翼部40の角度θのほうが、後縁24側の翼端後縁翼部40の角度θよりも、小さい。
【0032】
上述した各例では、翼長方向スリット31が、翼20における比較的後縁側に位置しており、いいかえれば、仮想翼端翼部53の翼弦線の中心点どうしを結んだ翼弦中心線よりも、後縁側に位置している。これにより、翼長方向スリット31が、特に剥離が生じやすい後縁側の領域に配置されるので、より効果的に、翼端後縁翼部40の表面での剥離を抑制できる。
【0033】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態を、
図9を参照して説明する。第2実施形態のロータ1は、翼20の翼型中心線が直線状に延在し、また、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40とが、それぞれ直線状に延在している点のみで、第1実施形態とは異なる。
本実施形態のロータ1は、水平軸型の風力発電機用のロータとして構成されているが、水力発電機(水車等)用のロータとして構成されても特に好適であり、また、送風機等の他の風水力機械用のロータとして構成されてもよい。
図9に示すように、仮想翼端翼部53の翼弦線(又はその延長線)と翼端後縁翼部40の翼弦線(又はその延長線)との小さいほうのなす角度θは、0°よりも大きい。これにより、翼端後縁翼部40の前縁43が仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりもロータ正面側(本例では正圧側)に位置するようにされている。第2実施形態によっても、翼長方向スリット31に風が通ることで、翼端後縁翼部40の表面での剥離を効果的に抑制でき、ひいては、効率を向上できる。
第2実施形態において、効率向上の観点からは、仮想翼端翼部64の翼弦線(又はその延長線)と翼端後縁翼部40の翼弦線(又はその延長線)との小さいほうのなす角度θは、5°未満が好ましく、3°以下がさらに好ましい。
その他の構成については、第1実施形態で述べたことと同様である。
例えば、第2実施形態において、翼長方向スリット31の上記スリット幅d、上記翼長方向の長さlは、それぞれ第1実施形態において上述した数値範囲内であると好適である。また、第2実施形態においても、
図7及び
図8に示す例のように、翼20は、翼端後縁翼部40を複数有してもよい。
【0034】
なお、上述した各例のロータが、送風機用のロータとして構成された場合は、送風機の効率を向上できる。ひいては、騒音の低下も可能となる。
【0035】
本発明のロータは、上述した各例のものに限られない。
例えば、第1実施形態や第2実施形態において、「ロータ正面側」と「ロータ背面側」とを逆にした構成にしてもよい。この構成は、本発明のロータが、送風機、ポンプ、ヘリコプター、又はドローン用のロータとして構成された場合に、特に好適なものである。
より具体的に、第1実施形態において「ロータ正面側」と「ロータ背面側」とを逆にした場合には、翼端後縁翼部40は、その前縁43側の部分が本体翼部50に対してロータ背面側(本例では正圧側)に向かってめくれたような、形状を有しており、翼端後縁翼部40の前縁43は、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりも、ロータ背面側(本例では正圧側)に位置する。そして、翼20の翼型中心線はロータ正面側で凸となるように湾曲し、また、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40とは、それぞれロータ正面側で凸となるように湾曲する。仮想翼端翼部53の翼弦線(又はその延長線)と翼端後縁翼部40の翼弦線(又はその延長線)との小さいほうのなす角度θは、0°以上である。その他の構成については、第1実施形態で述べたことと同様である。
また、第2実施形態において「ロータ正面側」と「ロータ背面側」とを逆にした場合には、翼端後縁翼部40は、その前縁43側の部分が本体翼部50に対してロータ背面側(本例では正圧側)に向かってめくれたような、形状を有しており、翼端後縁翼部40の前縁43は、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりも、ロータ背面側(本例では正圧側)に位置する。そして、翼20の翼型中心線は直線状に延在し、また、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40とは、それぞれ直線状に延在する。仮想翼端翼部53の翼弦線(又はその延長線)と翼端後縁翼部40の翼弦線(又はその延長線)との小さいほうのなす角度θは、0°よりも大きい。その他の構成については、第2実施形態で述べたことと同様である。
これらの場合、翼20の翼端付近において、翼20のロータ背面側かつ前縁23側から入射した風は、翼長方向スリット31を通って、翼20のロータ正面側かつ後縁24側へと流れる。これにより、翼端後縁翼部40におけるロータ背面側の表面とロータ正面側の表面において、流れの剥離が抑制され、大きな正圧及び負圧をそれぞれ生じさせることができる。すなわち、翼20の翼端付近における前縁側(翼端前縁翼部51)と後縁側(翼端後縁翼部40)との両方で、ロータ背面側の表面とロータ正面側の表面において、大きな正圧及び負圧をそれぞれ生じさせることができる。よって、揚力を向上でき、風水力機械の効率を向上できる。
ただし、これらの構成は、本発明のロータが、風力発電機(風車等)又は水力発電機(水車等)用のロータとして構成された場合に用いられてもよい。
【実施例】
【0036】
本発明の比較例1及び実施例1〜10のロータの性能を、解析により評価したので、説明する。この解析では、各比較例及び実施例のロータを、それぞれ風力発電機に用いた場合を想定して、周速比λ=0.926、2.778、4.630、6.482のそれぞれにおけるパワー係数C
pを求めた。周速比λ、パワー係数C
pの算出には、上述の式(1)、(2)をそれぞれ用いた。そして、周速比λの値ごとに、各実施例のパワー係数C
pを、比較例1のパワー係数C
pを100%としたときのパーセンテージで表した。その結果を、「パワー係数比率(%)」として、表1〜表3、
図11〜
図13に示す。
図11〜
図13は、それぞれ表1〜表3に対応する。
【0037】
なお、解析には、アンシス社製の数値流体計算ソフトウェアANSYS-CFXを用いた。ロータのモデルには、一定の風速U = 4m/s及び回転速度ωを与えることによって、定常解析を行った。乱流モデルはSST k -ωを使用した。
図10は、解析に用いたモデル60を示している。各比較例及び実施例のロータのモデルは、3枚翼のロータを想定したが、計算時間短縮のために計算領域を軸周りに3分割したもので構成し、その1つの分割面に周期境界条件を与えた。なお、
図14は、この解析においてλ=0.926としたときに得られた、実施例のロータの翼の翼端付近の流線を示すものである。
【0038】
各比較例及び実施例のロータは、互いに翼の形状のみを異ならせたものとし、いずれも、ロータの半径Rを463mm、翼の翼長Lを349.25mm、翼の翼弦長CHL(翼の全長にわたって一定)を104.8mmとし、また、翼のピッチ角の翼長方向での分布は
図1〜
図3の例と同じとした。
比較例1のロータの翼は、翼長方向スリット31のない通常の矩形翼とし、その翼型中心線は、ロータ背面側で凸となるように湾曲するものとした。
実施例1〜10のロータの翼は、いずれも、
図1〜
図6を参照して説明した構造、すなわち、翼長方向スリット31を1つ(ひいては翼端後縁翼部40を1つ)有し、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53と翼端後縁翼部40の翼型中心線CAL40とがそれぞれロータ背面側で凸となるように湾曲しているものとした。各実施例のロータの翼は、いずれも、翼端後縁翼部40の前縁43が、仮想翼端翼部53の翼型中心線CAL53よりも、ロータの正面側に位置しているものであった。各実施例のロータの翼は、翼長方向スリット31の前縁側の端(すなわち翼端前縁翼部51の後縁51a)が、翼の後縁から翼弦方向に翼弦長CHLの38%の長さ(40mm)だけ離れた位置に配置されていた。各実施例のロータの翼は、ロータ1の回転中心軸線Oに対して垂直な投影面における、翼長方向スリット31のスリット幅d、該投影面における翼長方向スリット31の翼長方向の長さl、仮想翼端翼部53の翼弦線と翼端後縁翼部40の翼弦線との小さいほうのなす角度θの、3つのパラメータの値のみで異なるものとした。その詳細を表1〜表3に示す。
【0039】
表1及び
図11は、比較例1、実施例1〜4の解析結果を示している。実施例1〜4は、いずれもl=(2/8)L、θ=0°とし、dをそれぞれ0〜8mmの範囲で異ならせた。
表2及び
図12は、比較例1、実施例5、3、6〜8の解析結果を示している。実施例5、3、6〜8は、いずれもd=5mm、θ=0°とし、lを(1/8)L〜(5/8)Lの範囲で異ならせた。
表3及び
図13は、比較例1、実施例3、9、10の解析結果を示している。実施例3、9、10は、いずれもd=5mm、l=(2/8)Lとし、θを0°〜10°の範囲で異ならせた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表1〜表3、
図11〜
図13から判るように、実施例1〜10のロータは、比較例1のロータに比べて、主に周速比が比較的低い時(λ=0.926)と比較的高い時(λ=6.482)との少なくともいずれか一方で、パワー係数C
pひいては効率を増大できた。よって、本発明のロータは、従来のロータに比べて、性能が全体的に向上することを確認できた。