(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つまたは複数個の第1の官能基がチオールであり、前記1つまたは複数個の第2の官能基がチオールであり、および、前記2個以上の第3の官能基がチオールまたはジスルフィドである、請求項2に記載のヒドロゲル。
前記1つまたは複数個の第1の官能基および前記2個以上の第3の官能基、ならびに、前記1つまたは複数個の第2の官能基および前記2個以上の第3の官能基がクリックケミストリー反応対である、請求項2に記載のヒドロゲル。
前記1つまたは複数個の第1の官能基および前記2個以上の第3の官能基が、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される、請求項2に記載のヒドロゲル。
前記1つまたは複数個の第2の官能基および前記2個以上の第3の官能基が、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される、請求項2に記載のヒドロゲル。
前記細胞が、外分泌上皮細胞、ホルモン分泌細胞、角化上皮細胞、湿性重層バリア上皮細胞、感覚伝達細胞、自律神経細胞、感覚器官細胞、末梢神経支持細胞、ニューロン、グリア細胞、レンズ細胞、肝細胞、脂肪細胞、脂質細胞、バリア機能細胞、腎細胞、心臓細胞、細胞外基質細胞、収縮細胞、血液細胞、免疫系細胞、赤血球、単球、好中球、マスト細胞、T細胞、幹細胞、胚細胞、哺育細胞、間質細胞、前駆細胞および造血幹細胞を含む群から選択される、請求項19に記載のヒドロゲル。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、官能性双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマー、ポリマーおよびコポリマーの形成方法、官能性双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマーから調製されたヒドロゲル、ヒドロゲルの形成方法、インビトロおよびインビボ細胞培養のためのヒドロゲルの使用方法、ならびに、治療剤投与のための双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマーを提供する。
【0009】
官能性双性イオン性ポリマーおよび混合電荷コポリマー
一態様において、本発明は、官能性双性イオン性ポリマーおよびコポリマーおよび官能性混合電荷コポリマーを提供する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、核に共有結合して核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する核を含む官能性ポリマーを提供し、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される構成単位を含み、ならびに、2つ以上のポリマー側鎖の各々は、ポリマーと1個または複数個の官能性基との共有結合を形成可能な材料との共有結合に有効な1個または複数個の官能基を含む。
【0011】
特定の実施形態において、ポリマーは、3、4、5または6つのポリマー側鎖を含む。側鎖の数は様々であることが可能であり、核および側鎖自体の性質に応じる。いくつかの実施形態において、側鎖は分岐である。
【0012】
特定の実施形態において、構成単位は双性イオン性構成単位である。他の実施形態において、構成単位は混合電荷構成単位である。双性イオン性ポリマーおよび混合電荷コポリマーは、他の構成単位(例えば、双性イオン性ポリマーはコポリマーであることが可能である)をさらに含み得ることが認識されるであろう。好適な他の構成単位は、コポリマーに反応性を与える官能基、または、コポリマーに所望の特性を与える他の基(例えば、アニオン基、カチオン基、中性基、疎水性基、親水性基)を含む構成単位を含む。
【0013】
特定の実施形態において、官能基はポリマー側鎖の末端に位置する。他の実施形態において、官能基はポリマー側鎖の主鎖に沿って位置する。いくつかの実施形態において、構成単位の1つまたは複数は官能基を含む。ポリマーまたはポリマー側鎖中の官能基の数はポリマーまたは側鎖の所望される総合的な官能性を達成するために制御が可能であり、ポリマーの最終的な使用に応じることとなる。
【0014】
特定の実施形態において、官能基はチオールである。他の実施形態において、官能基は反応対の一方である。これらの実施形態において、官能基は、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される反応対の一方である。
【0015】
双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲル
本発明の他の態様においては、双性イオン性および混合電荷ヒドロゲルが提供されている。
【0016】
一実施形態において、ヒドロゲルは第2のポリマーに共有結合した第1のポリマーを含み、ここで、第1のポリマーは、第1の核に共有結合して第1の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第1の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第1の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第1のポリマーと第2のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第1の官能基を含み、第2のポリマーは、第2の核に共有結合して第2の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第2の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第2の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第2のポリマーと第1のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第2の官能基を含み;ならびに、ヒドロゲルは、第1の官能基と第2の官能基との反応によって形成された第1のポリマーおよび第2のポリマーを結合する共有結合を含む。
【0017】
他の実施形態において、ヒドロゲルは第2のポリマーに共有結合した第1のポリマーを含み、ここで、第1のポリマーは、第1の核に共有結合して第1の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第1の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第1の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第1のポリマーと第2のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第1の官能基を含み、第2のポリマーは、第2の核に共有結合して第2の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第2の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第2の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第2のポリマーと第1のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第2の官能基を含み;ならびに、ヒドロゲルは、2個以上の第3の官能基を有する架橋剤を介して第1のポリマーおよび第2のポリマーを結合する共有結合を含み、ここで、第1のポリマーおよび第2のポリマーを結合する共有結合は、第1の官能基と第3の官能基との反応、および、第2の官能基と第3の官能基との反応によって形成される。
【0018】
架橋剤によって形成された架橋を含む一定のヒドロゲル実施形態において、架橋の性質は様々であることが可能であることが認識されるであろう。特定の実施形態において、第1および第2のポリマーは異なると共に異なる官能基を有し、好適な反応性を有する官能基を備える架橋剤で架橋されている。他の実施形態において、第1および第2のポリマーは同一であり、同一の官能基を有し、好適な反応性を有する官能基を備える架橋剤で架橋されている。
【0019】
架橋剤によって形成された架橋を含む一定のヒドロゲル実施形態において、第1の官能基および第2の官能基は同一である。架橋剤によって形成された架橋を含む一定のヒドロゲル実施形態において、第1の官能基はチオールであり、第2の官能基はチオールであり、および、第3の官能基はチオールまたはジスルフィドである。架橋剤によって形成された架橋を含む他のヒドロゲル実施形態において、第1および第3の官能基、ならびに、第2および第3の官能基は、クリックケミストリー反応対である。一定のこれらの実施形態において、第1および第3の官能基は、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される。一定のこれらの実施形態において、第2および第3の官能基は、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される。
【0020】
上記の本発明のヒドロゲルに関し、特定の実施形態において、第1のポリマーは、3、4、5または6つのポリマー側鎖を含む。特定の実施形態において、第1の構成単位は双性イオン性構成単位である。他の実施形態において、第1の構成単位は混合電荷構成単位である。
【0021】
特定の実施形態において、第1の官能基はポリマー側鎖の末端に位置する。他の実施形態において、第1の官能基は、ポリマー側鎖の主鎖に沿って位置する。特定の実施形態において、第1の構成単位は第1の官能基を含む。
【0022】
特定の実施形態において、第2のポリマーは、3、4、5または6つのポリマー側鎖を含む。特定の実施形態において、第2の構成単位は双性イオン性構成単位である。他の実施形態において、第2の構成単位は混合電荷構成単位である。
【0023】
特定の実施形態において、第2の官能基はポリマー側鎖の末端に位置する。他の実施形態において、第2の官能基は、ポリマー側鎖の主鎖に沿って位置する。特定の実施形態において、第2の構成単位第2の官能基を含む。
【0024】
特定の実施形態において、第1の官能基および第2の官能基は同一である。特定の実施形態において、第1の官能基はチオールであり、および、第2の官能基はチオールである。他の実施形態において、第1および第2の官能基は異なる。特定の実施形態において、第1および第2の官能基はクリックケミストリー反応対である。代表的な対としては、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドが挙げられる。
【0025】
本発明のヒドロゲルは追加の成分を有利に含み得る。特定の実施形態において、ヒドロゲルは、細胞、ウイルス、細菌、および、これらの成分またはこれらの遺伝子組換え変異体をさらに含む。
【0026】
代表的な細胞としては、外分泌上皮細胞、ホルモン分泌細胞、角化上皮細胞、湿性重層バリア上皮細胞、感覚伝達細胞、自律神経細胞、感覚器官および末梢神経支持細胞、ニューロンおよびグリア細胞、レンズ細胞、肝細胞、脂肪細胞、脂質細胞、バリア機能細胞、腎細胞、心臓細胞、細胞外基質細胞、収縮細胞、ならびに、赤血球、単球、好中球、マスト細胞、T細胞、幹細胞、胚細胞、哺育細胞、間質細胞、前駆細胞、造血幹細胞などの血液および免疫系細胞などの天然の細胞およびその遺伝子組換え対応物が挙げられる。
【0027】
代表的なウイルスとしては、DNAウイルス、RNAウイルス、逆転写酵素ウイルス、レトロウイルスおよびアデノウイルスが挙げられる。
【0028】
代表的な細菌としては、病原性細菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌、シアノバクテリアが挙げられる。代表的な細菌種としては、クロストリジウム種、ネズミチフス菌(S. typhimurium)および大腸菌(E. coli)が挙げられる。
【0029】
特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルとしては、オリゴヌクレオチド(DNAおよびRNA)、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、無機粒子が挙げられる。
【0030】
他の実施形態において、本発明のヒドロゲルとしては、タンパク質、ペプチド、多糖類または小分子が挙げられる。
【0031】
特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルとしては治療剤または診断薬が挙げられる。
【0032】
他の実施形態において、本発明のヒドロゲルとしてはナノマテリアルが挙げられる。
【0033】
双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲルで処理された表面、ならびに、双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲルから形成されたデバイス
さらなる態様において、本発明は、本発明のヒドロゲルで処理された基材を提供する。一実施形態において、本発明は、表面を有する基材であって、表面の少なくとも一部がヒドロゲルでコーティングされた基材を提供する。特定の実施形態において、表面は全体がヒドロゲルでコーティングされている。
【0034】
関連する態様において、本発明は、少なくとも部分的に本発明のヒドロゲルから形成されたデバイス(例えば医療デバイス)、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれたデバイス(例えば医療デバイス)を提供する。一定のこれらの実施形態において、これらのデバイスは、完全にまたは部分的に本発明のヒドロゲルから形成されている。
【0035】
代表的な基材およびデバイスとしては、以下:移植可能なバイオセンサ、創傷ケアデバイス、シーラント、コンタクトレンズ、人工歯根、整形用デバイス(人工関節、人工骨、人工靱帯、人工腱)、心血管デバイス(カテーテル、人工弁、人工血管、人工ステント、LVAD、心調律管理デバイス)、胃腸病学的デバイス(栄養管、消化管クリップ、胃腸スリーブ、胃内バルーン)、OB/Gynデバイス(移植可能な受胎調節デバイス、膣スリング)、腎臓病学的デバイス(吻合コネクタ、皮下ポート)、脳神経外科デバイス(神経誘導管、脳脊髄液ドレナージまたはシャント)、皮膚病学的デバイス(皮膚再建デバイス)、眼用デバイス(シャント)、耳鼻咽喉科学的デバイス(ステント、人工内耳、管、シャント、スプレッダ)、眼内レンズ、審美インプラント(乳房インプラント、鼻インプラント、頬インプラント)、神経インプラント(神経刺激デバイス)、人工内耳、神経管、ホルモン制御用インプラント(血糖センサ、インスリンポンプ)、移植バイオセンサ、アクセスポートデバイス、組織足場材料肺動脈弁デバイス(COPD管理用の弁または人工肺)、放射線学的デバイス(放射線不透過または音響不透過マーカ)、または、泌尿器科学的デバイス(カテーテル、人工尿道)が挙げられる。
【0036】
双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲルの使用
他の態様においては、本発明は、双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲルの使用を提供する。
【0037】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む、細胞の保護、保存または増殖用の培地を提供する。培地は、1種もしくは複数種の栄養分または増殖因子をさらに含むことが可能である。培地は、インビトロまたはインビボで用いられることが可能である。
【0038】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む外科用シーラントを提供する。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む外科用付着防止コーティングを提供する。
【0040】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む外科用充填材を提供する。
【0041】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む創傷被覆材を提供する。
【0042】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む審美充填材を提供する。
【0043】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む特定の形状に予め形成された審美充填材を提供する。
【0044】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む整形外科用軟組織置換材(例えば、軟骨または脊椎円板用)を提供する。
【0045】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを含む組織成長足場材料を提供する。足場材料はインビトロまたはインビボで用いられることが可能である。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的にヒドロゲルから形成される医療デバイスを提供する。
【0047】
特定の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを組み込んだ医療デバイスを提供する。
【0048】
双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲルの形成方法
さらなる態様において、本発明は、双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲルの形成方法を提供する。
【0049】
第1の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルを提供するために第1のポリマーと第2のポリマーとを反応させる工程を含むヒドロゲルの形成方法を提供するものであり、ここで、第1のポリマーは、第1の核に共有結合して第1の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第1の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第1の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第1のポリマーと第2のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第1の官能基を含み、第2のポリマーは、第2の核に共有結合して第2の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第2の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第2の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第2のポリマーと第1のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第2の官能基を含み;ならびに、ヒドロゲルは第1の官能基と第2の官能基との間の共有結合の形成によって形成される。
【0050】
特定の実施形態において、ヒドロゲルはインサイチュ(例えば、インビボ)で形成される。他の実施形態において、ヒドロゲルは容器中において形成される。いずれかの実施形態において、ヒドロゲルは細胞培養に用いられることが可能である。
【0051】
第2の実施形態において、本発明は:
(a)第1のポリマーをインビボで、ある部位に配置する工程;および
(b)第2のポリマーを部位に配置する工程であって、それにより前記部位で前記第2のポリマーが前記第1のポリマーと接触してヒドロゲルを提供する、工程
を含むインビボでのヒドロゲル形成方法を提供するものであり、
ここで、第1のポリマーは、第1の核に共有結合して第1の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第1の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第1の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第1のポリマーと第2のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第1の官能基を含み、
第2のポリマーは、第2の核に共有結合して第2の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第2の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第2の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第2のポリマーと第1のポリマーとの共有結合に有効な1つまたは複数個の第2の官能基を含み;ならびに
ヒドロゲルは第1の官能基と第2の官能基との間の共有結合の形成によって形成される。
【0052】
特定の実施形態において、第1のポリマーおよび第2のポリマーは、部位に、注射、噴霧、注入および浸漬によって配置される。
【0053】
第3の態様において、本発明は、ヒドロゲルを提供するために、第1のポリマーと、第2のポリマーと、架橋剤とを反応る工程を含む、ヒドロゲルの形成方法を提供するものであり、ここで、第1のポリマーは、第1の核に共有結合して第1の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第1の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第1の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第1のポリマーと架橋剤との共有結合に有効な1つまたは複数個の第1の官能基を含み、第2のポリマーは、第2の核に共有結合して第2の核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する第2の核を含み、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される第2の構成単位を含み、ここで、2つ以上のポリマー側鎖は各々、第2のポリマーと架橋剤との共有結合に有効な1つまたは複数個の第2の官能基を含み;架橋剤は、第1のポリマーおよび第2のポリマーの間に架橋を形成することにより、第1のポリマーと第2のポリマーとの共有結合に有効な2個以上の第3の官能基を含み;ならびに、ヒドロゲルは、第1の官能基と第3の官能基との間、および、第2の官能基と第3の官能基との間に共有結合が形成されることにより形成される。
【0054】
第3の態様において、第1の官能基および第2の官能基は同一であり;第1の官能基はチオールであり、第2の官能基はチオールであり、および、第3の官能基はチオールまたはジスルフィドであり;ならびに、第1および第3の官能基、ならびに、第2および第3の官能基はクリックケミストリー反応対である。特定の実施形態において、第1および第3の官能基は、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される。特定の実施形態において、第2および第3の官能基は、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される。
【0055】
上記の方法(第1、第2および/または第3の態様)において、第1のポリマーは、3、4、5または6つのポリマー側鎖を含む。
【0056】
一定のこれらの実施形態において、第1の構成単位は双性イオン性構成単位である。これらの実施形態の他のものにおいて、第1の構成単位は混合電荷構成単位である。
【0057】
特定の実施形態において、第1の官能基はポリマー側鎖の末端に位置する。他の実施形態において、第1の官能基は、ポリマー側鎖の主鎖に沿って位置する。特定の実施形態において、第1の構成単位の1つまたは複数は、第1の官能基を含む。
【0058】
上記の方法(第1、第2および/または第3の態様)において、第2のポリマーは、3、4、5または6つのポリマー側鎖を含む。
【0059】
一定のこれらの実施形態において、第2の構成単位は双性イオン性構成単位である。これらの実施形態の他のものにおいて、第2の構成単位は混合電荷構成単位である。
【0060】
特定の実施形態において、第2の官能基はポリマー側鎖の末端に位置する。他の実施形態において、第2の官能基は、ポリマー側鎖の主鎖に沿って位置する。特定の実施形態において、第2の構成単位の1つまたは複数は第2の官能基を含む。
【0061】
特定の実施形態において、第1の官能基および第2の官能基は同一である。特定の実施形態において、第1の官能基はチオールであり、および、第2の官能基はチオールである。
【0062】
他の実施形態において、第1および第2の官能基は異なる。特定の実施形態において、第1および第2の官能基はクリックケミストリー反応対である。特定の実施形態において、第1および第2の官能基は、アジドおよびアルキン、アジドおよびアルケン、チオールおよびマレイミド、または、チオールおよびジスルフィドから選択される。
【0063】
双性イオン性および混合電荷星形ポリマー治療剤複合体
他の態様においては、本発明は、双性イオン性および混合電荷星形ポリマー治療剤複合体を提供する。
【0064】
一実施形態において、本発明は、核に共有結合して核から伸びる2つ以上のポリマー側鎖を有する核を含むポリマーを提供するものであり、ここで、ポリマー側鎖は双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位からなる群から選択される構成単位を含み、ならびに、双性イオン性構成単位および混合電荷構成単位は、これらに共有結合した治療剤を含む。
【0065】
特定の実施形態において、治療剤は、加水分解性結合により構成単位に共有結合している。
【0066】
特定の実施形態において、ポリマーは、3、4、5または6つのポリマー側鎖を含む。特定の実施形態において、構成単位は双性イオン性構成単位である。他の実施形態において、構成単位は混合電荷構成単位である。
【0067】
関連する態様においては、対象に治療剤を投与する方法が提供される。この方法においては、共有結合している治療剤を有する本発明のポリマーが、それを必要とする対象(例えばヒトなどの温血動物)に治療的有効量で投与される。
【0068】
特定の実施形態において、ポリマーの投与は、全身投与、局所投与または局部投与を含む。特定の実施形態において、ポリマーの投与、吸入、経口および経皮投与を含む。特定の実施形態において、ポリマーの投与は、静脈注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射または局部注射を含む。
【0069】
図面の説明
前述の態様および本発明の付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の発明を実施するための形態を参照することでより良く理解されることに伴って、より容易に評価されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明の詳細な説明
本発明は、双性イオン性および混合電荷星形ポリマーおよびコポリマー、治療剤の送達およびヒドロゲルの形成に有用な官能性双性イオン性および混合電荷星形ポリマーおよびコポリマー、治療剤の送達のための、共有結合された治療剤を有する双性イオン性および混合電荷星形ポリマーおよびコポリマー、ならびに、官能性双性イオン性および混合電荷星形ポリマーから調製されるヒドロゲルを提供する。
【0072】
本明細書において、「双性イオン性ポリマーまたはコポリマー」という用語は、双性イオン性構成単位を有するポリマーまたはコポリマーを指す。双性イオン性構成単位は、双性イオン基を含むペンダント基(すなわち、ポリマー主鎖からぶら下がる基)を有する。代表的な双性イオンペンダント基としては、カルボキシベタイン基(例えば、−R
a−N
+(R
b)(R
c)−R
d−CO
2−(式中、R
aは、ポリマー主鎖をカルボキシベタイン基のカチオン窒素中心に共有結合するリンカー基であり、R
bおよびR
cは窒素置換基であり、R
dは、カチオン窒素中心をカルボキシベタイン基のカルボキシ基に共有結合するリンカー基である))が挙げられる。
【0073】
「混合電荷コポリマー」という用語は、実質的に等しい数の正電荷構成単位と負電荷構成単位とを有して実質的に電子的に中性である、コポリマーを指す。特定の実施形態において、混合電荷コポリマーは、ポリマー主鎖に沿って正に荷電または負に荷電されている広い領域を有さない(すなわち、正電荷および負電荷構成単位はポリマー主鎖に沿って比較的均一に分布している)ランダムコポリマーである。代表的な混合電荷ペンダント基としては、カルボキシ基(例えば、−R
a−CO
2−(式中、R
aは、カルボキシ基をポリマー主鎖に共有結合するリンカー基である))およびアミノ基(例えば、−R
a−N
+(R
b)(R
c)(R
d)(式中、R
aは、カチオン窒素中心をポリマー主鎖に共有結合するリンカー基であり、ならびに、R
b、R
cおよびR
dは窒素置換基である))が挙げられる。
【0074】
「星形ポリマーまたはコポリマー」という用語は、2つ以上のポリマーまたはコポリマー側鎖が核から伸びる分岐ポリマーまたはコポリマーを指す。代表的な本発明の星形ポリマーおよびコポリマーは、核から伸びる2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の側鎖を含む。核は、重合により側鎖が伸長可能である2つ以上の官能基を有する一群の原子である。代表的な核は、側鎖が伸長可能である2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の官能基を有する。特定の実施形態において、側鎖は、双性イオン性ポリマーまたはコポリマー側鎖である。他の実施形態において、側鎖は混合電荷コポリマー側鎖である。
【0075】
「官能性ポリマーまたはコポリマー」という用語は、同様に官能性ポリマーまたはコポリマーである他のポリマーまたはコポリマーに対して共有結合する反応性をポリマーまたはコポリマーに付与する官能基を含むポリマーまたはコポリマーを指す。本発明の実施において、本発明の官能性星形ポリマーおよびコポリマーは、その官能基を介して反応して、ポリマーおよびコポリマーを共有結合(例えば、ポリマーおよびコポリマーを架橋)する共有結合を形成する。第1の官能性ポリマーまたはコポリマーを第2の官能性ポリマーまたはコポリマーに共有結合するために、第1および第2のポリマーまたはコポリマーの官能基(すなわち、それぞれ、第1および第2の官能基)は相補的な反応性を有する。第1および第2の官能基は反応対である。特定の実施形態において、第1および第2の官能基は、室温〜生理的温度の温度で混合されることで反応して(例えば外部刺激を伴わずに)結合を形成する。好適なこのような反応対は技術分野において公知である。代表的な有用な反応対としては、チオール/マレイミドおよびクリックケミストリー反応対(例えば、アジド/アルキンおよびアジド/アルケン)が挙げられる。
【0076】
ポリマー定義
「構成単位」という用語は、存在する場合にはそのペンダントな原子または原子群を伴うポリマー鎖の一部を含む、ポリマー中の原子または原子群を指す。構成単位は繰り返し単位を指すことが可能である。構成単位はまた、ポリマー鎖上の末端基を指すことが可能である。例えば、ポリエチレングリコールの構成単位は、繰り返し単位に相当する−CH
2CH
2O−、または、末端基に相当する−CH
2CH
2OHであることが可能である。
【0077】
「繰り返し単位」という用語は、反復によって規則的な巨大分子(またはオリゴマー分子もしくはブロック)を構成する最小の構成単位に相当する。
【0078】
「末端基」という用語は、ポリマーの末端に位置された、ポリマー鎖への結合が1つのみである構成単位を指す。例えば、末端基は、モノマー単位が重合された後に、ポリマーの末端に存在するモノマー単位から誘導されることが可能である。他の例としては、末端基は、ポリマーの合成に用いられた連鎖移動剤または開始剤の一部であることが可能である。
【0079】
「モノマー」という用語は、重合に際して、ポリマー構造中の1つまたは複数の構成単位に寄与する重合性化合物である。
【0080】
「ポリマー」という用語は、単一種のモノマー重合によりもたらされる生成物を指す。
【0081】
「コポリマー」という用語は、2種以上の異なるモノマーの重合によりもたらされるポリマーを指す。各構成単位の数および性質は、コポリマーにおいて個別に制御することが可能である。構成単位は、別途の明確な記載がない限り、純粋にランダムな配置、交互にランダムな配置、規則的な交互の配置、規則的なブロック配置またはランダムブロック配置で配置されることが可能である。純粋にランダムな配置は、例えば、:x−x−y−z−x−y−y−z−y−z−z−z…、または、y−z−x−y−z−y−z−x−x…であることが可能である。交互にランダムな配置は:x−y−x−z−y−x−y−z−y−x−z…であることが可能であり、および、規則的な交互の配置は:x−y−z−x−y−z−x−y−z…であることが可能である。
【0082】
官能性双性イオン性ポリマーおよび混合電荷コポリマー
一態様において、本発明は、官能性双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマーを提供する。特定の実施形態において、本発明の官能性双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマーは、官能性双性イオン性星型および混合電荷星形ポリマーおよびコポリマーである。
【0083】
上述されているとおり、本発明の星形ポリマーおよびコポリマーについて、側鎖は、いずれかの双性イオン性または混合電荷ポリマー、および、加水分解、紫外線の照射または加熱により双性イオン性または混合電荷ポリマーに転換可能であるその前駆体であることが可能である。双性イオン性または混合電荷ポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)を含む不飽和モノマーの重合に有効であるいずれかの重合法、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、光重合、開環重合(ROP)、縮合、マイケル付加、側鎖生成/生長反応または他の反応により得ることが可能である。特定の実施形態において、末端官能基を有するポリマーは、結合パートナーに特異的に結合することが可能であると共に、同時に、非特異的な生物付着を防ぐことが可能であり、これは、双性イオン性または混合電荷構造によりポリマーに付与される。官能性末端のために、本発明のポリマーは、相補的カップリングケミストリー(例えば、クリックケミストリー、チオール交換反応、還元性反応および技術分野において公知である他のケミストリー)による本発明のヒドロゲルの形成に有用なさらなる官能性ポリマーに転換が可能である。これらの官能性末端基は、側鎖が形成された後に、前変性および後変性されることが可能である。
【0084】
双性イオン性モノマー
特定の実施形態において、本発明の官能性ポリマーおよびコポリマーは、好適な重合性双性イオン性モノマーの重合から調製されるポリマーである。一定のこれらの実施形態において、ポリマーまたはコポリマーは、式(I):
【化1】
(式中、
R
4は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基から選択され;
R
5およびR
6は、アルキルおよびアリールから独立して選択されるか、または、これらが結合している窒素と一緒になって、カチオン中心を形成し;
L
4は、カチオン中心[N
+(R
5)(R
6)]とポリマー主鎖[−(CH
2−CR
4)
n−]とを共有結合するリンカーであり;
L
5は、アニオン中心[A
2(=O)O
−]とカチオン中心とを共有結合するリンカーであり;
A
2は、C、SO、SO
2、P、またはPOであり;
nは5〜約10,000の整数であり;ならびに
*は、繰返し単位が隣接する繰返し単位またはヒドロゲルの形成に有用な官能基に共有結合する点を表す)
を有する繰返し単位を有する。
【0085】
ポリマーにおいて、ペンダントな双性イオン基は分子内塩であり、M
+およびX
−は存在しない。
【0086】
一実施形態において、R
4はC1〜C3アルキルである。
【0087】
R
5およびR
6は、アルキルおよびアリールから独立して選択されるか、または、これらが結合している窒素と一緒になって、カチオン中心を形成する。一実施形態において、R
5およびR
6はC1〜C3アルキルである。
【0088】
特定の実施形態において、L
4は、−C(=O)O−(CH
2)
n−および−C(=O)NH−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20の整数である)からなる群から選択される。特定の実施形態において、L
4は、−C(=O)O−(CH
2)
n−(式中、nは1〜6である)である。
【0089】
特定の実施形態において、L
5は−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20の整数である)である。
【0090】
特定の実施形態において、A
2はCまたはSOである。
【0091】
特定の実施形態において、nは5〜約5,000の整数である。
【0092】
一実施形態において、R
4、R
5およびR
6はメチルであり、L
4は−C(=O)O−(CH
2)
2−であり、L
5は−(CH
2)−であり、A
1はCであり、nは10〜約1,000の整数である。
【0093】
本発明の双性イオン性ポリマーおよびコポリマーは、式(II):
CH
2=C(R
4)−L
4−N
+(R
5)(R
6)−L
5−A
2(=O)O
− (II)
(式中、R
4、R
5、R
6、L
4、L
5およびA
2は、式(I)の繰返し単位について上述されているとおりである)
を有するモノマーの重合により調製可能である。
【0094】
代表的な本発明の双性イオン性ポリマー側鎖は、式(III):
PB−(L
4−N
+(R
5)(R
6)−L
5−A
2(=O)O
−)
n (III)
(式中、R
5、R
6、L
4、L
5、A
2およびnは式(I)の繰返し単位について上述されているとおりであり、ならびに、PBは繰返し単位[式(I)]を含むポリマー主鎖である)
を有する。
【0095】
混合電荷コモノマー
他の態様においては、本発明は、イオン対コモノマーの共重合から調製される混合電荷コポリマーを提供する。上述されているとおり、混合電荷コポリマーは、ポリマー主鎖、複数の正電荷繰返し単位、および、複数の負電荷繰返し単位を有する。本発明の実施において、これらのコポリマーは、イオン対コモノマーの重合により調製され得る。
【0096】
混合電荷コポリマーは、複数の正電荷繰返し単位および複数の負電荷繰返し単位を含む。一実施形態において、混合電荷コポリマーは実質的に電子的に中性である。本明細書において、「実質的に電子的に中性」という用語は、有利な非汚損特性をコポリマーに付与するコポリマーを指す。一実施形態において、実質的に電子的に中性なコポリマーは、実質的にゼロである実効電荷を有するコポリマー(すなわち、正電荷繰返し単位および負電荷繰返し単位の数が略同じであるコポリマー)である。一実施形態において、正電荷繰返し単位の数対負電荷繰返し単位の数の比は、約1:1.1〜約1:0.5である。一実施形態において、正電荷繰返し単位の数対負電荷繰返し単位の数の比は、約1:1.1〜約1:0.7である。一実施形態において、正電荷繰返し単位の数対負電荷繰返し単位の数の比は、約1:1.1〜約1:0.9である。
【0097】
一実施形態において、混合電荷コポリマーは、好適な重合性イオン対コモノマーの共重合により調製される。
【0098】
本発明において有用な代表的なイオン対コモノマーは、式(IV)および(V):
CH
2=C(R
7)−L
6−N
+(R
9)(R
10)(R
11)X
− (IV)
CH
2=C(R
8)−L
7−A
3(=O)−O
−M
+ (V)
を有する。
【0099】
本実施形態において、混合電荷コポリマーは、式(VI):
【化2】
(式中、
R
7およびR
8は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基から独立して選択され;
R
9、R
10およびR
11は、アルキルおよびアリールから独立して選択されるか、または、これらが結合している窒素と一緒になって、カチオン中心を形成し;
A
3(=O)OM)はアニオン中心(式中、A
3は、C、SO、SO
2、PまたはPOであり、および、Mは金属または有機対イオンである)であり;
L
6は、カチオン中心[N
+(R
9)(R
10)(R
11)]とポリマー主鎖とを共有結合するリンカーであり;
L
7は、アニオン中心[A(=O)OM]とポリマー主鎖とを共有結合するリンカーであり;
X
−はカチオン中心に付随する対イオンであり;
nは5〜約10,000の整数であり;
pは5〜約10,000の整数であり;ならびに
*は、繰返し単位が隣接する繰返し単位またはヒドロゲルの形成に有用な官能基に共有結合する点を表す)
を有する繰返し単位を有する。
【0100】
一実施形態において、R
7およびR
8はC1〜C3アルキルである。
【0101】
R
9、R
10およびR
11は、アルキルおよびアリールから独立して選択されるか、または、これらが結合している窒素と一緒になって、カチオン中心を形成する。一実施形態において、R
9、R
10およびR
11はC1〜C3アルキルである。
【0102】
特定の実施形態において、L
6は、−C(=O)O−(CH
2)
n−および−C(=O)NH−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20の整数である)からなる群から選択される。特定の実施形態において、L
6は、−C(=O)O−(CH
2)
n−(式中、nは1〜6である)である。
【0103】
特定の実施形態において、L
7はC1〜C20アルキレン鎖である。代表的なL
7基は−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20(例えば、1、3または5)である)を含む。
【0104】
特定の実施形態において、A
3は、C、S、SO、PまたはPOである。
【0105】
特定の実施形態において、nは5〜約5,000の整数である。
【0106】
一実施形態において、R
7、R
8、R
9、R
10およびR
11はメチルであり、L
6およびL
7は−C(=O)O−(CH
2)
2−であり、A
1はCであり、ならびに、nは10〜約1,000の整数である。
【0107】
代表的な混合電荷コポリマー側鎖は、式(VII):
PB−[L
6−N
+(R
9)(R
10)(R
11)]
n[L
7−A
3(=O)−O
−M
+)]
p(X
−)
n (VII)
(式中、L
6、N
+(R
9)(R
10)(R
11)、L
7、A
3(=O)O
−M
+、X
−、nおよびpは上述されているとおりであり、PBは、繰返し単位[式(VI)]を含むポリマー主鎖である)
を有する。
【0108】
以下は、架橋剤、モノマー、コモノマー、ポリマー、コポリマーおよび上記の式(I)〜(VI)の架橋の説明である。
【0109】
上記の式において、PBはポリマー主鎖である。代表的なポリマー主鎖は、ビニルモノマー(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン)から誘導されるビニル主鎖(例えば、−C(R’)(R’’)−C(R’’’)(R’’’’)−(式中、R’、R’’、R’’’およびR’’’は、水素、アルキルおよびアリールから独立して選択される)を含む。他の好適な主鎖は、ペンダント基を提供するポリマー主鎖を含む。他の代表的なポリマー主鎖としては、ペプチド(ポリペプチド)、ウレタン(ポリウレタン)およびエポキシ主鎖が挙げられる。
【0110】
同様に、上記の式において、CH
2=C(R)−は重合性基である。上記のものを含む他の重合性基は、本発明のモノマーおよびポリマーを提供するために用いられることが可能であることが認識されるであろう。
【0111】
上記の式において、N
+はカチオン中心である。特定の実施形態において、カチオン中心は、第4級アンモニウム(例えば、L
4、R
5、R
6およびL
5に結合するN)である。アンモニウムに追加して、他の有用なカチオン中心(Nと一緒にされたR
5およびR
6)としては、イミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウムおよびピロリジニウムが挙げられる。
【0112】
R
4、R
5、R
6、R
9、R
10およびR
11は、水素、アルキルおよびアリール基から独立して選択される。代表的なアルキル基としては、C1〜C10直鎖および分岐アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、アルキル基は、例えばアリール基(例えば、−CH
2C
6H
5、ベンジル)を含む1個または複数個の置換基でさらに置換されている。代表的なアリール基としては、例えばフェニルを含むC6〜C12アリール基が挙げられる。上記の式の特定の実施形態について、R
5およびR
6、または、R
9、R
10およびR
11はN
+と一緒になってカチオン中心を形成する。
【0113】
L
4(またはL
6)は、カチオン中心とポリマー主鎖とを共有結合するリンカーである。特定の実施形態において、L
4は、L
4の残部とポリマー主鎖(または、モノマーに対する重合性部分)とを結合する官能基(例えば、エステルまたはアミド)を含む。この官能基に追加して、L
4は、C1〜C20アルキレン鎖を含んでいることが可能である。代表的なL
4基としては、−C(=O)O−(CH
2)
n−および−C(=O)NH−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20(例えば、3)である)が挙げられる。
【0114】
、
L
5は、カチオン中心とアニオン基(すなわち、(A=O)O
−)とを共有結合するリンカーである。L
5は、C1〜C20アルキレン鎖であることが可能である。代表的なL
5基は−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20(例えば、1、3または5)である)を含む。
【0115】
L
7は、ポリマー主鎖とアニオン基とを共有結合するリンカーである。L
7はC1〜C20アルキレン鎖であることが可能である。代表的なL
7基は−(CH
2)
n−(式中、nは1〜20(例えば、1、3または5)である)を含む。
【0116】
A(=O)−O
−はアニオン中心である。アニオン中心は、カルボン酸エステル(AはCである)、スルフィン酸(AはSOである)、スルホン酸(AはSO
2である)、ホスフィン酸(AはPである)またはホスホン酸(AはPOである)であることが可能である。
【0117】
上記の式において、代表的なアルキル基は、C1〜C30直鎖および分岐アルキル基を含む。特定の実施形態において、アルキル基は、例えばアリール基(例えば、−CH
2C
6H
5、ベンジル)を含む1個または複数個の置換基でさらに置換されている。
【0118】
代表的なアリール基としては、例えば置換フェニル基(例えば安息香酸)を含むフェニルを含む、C6〜C12アリール基が挙げられる。
【0119】
X
−はカチオン中心に付随する対イオンである。対イオンは、カチオン性ポリマーまたはモノマーの合成からもたらされる対イオンであることが可能である(例えば、Cl
−、Br
−、I
−)。カチオン中心の合成から最初に生成される対イオンはまた、他の好適な対イオンと交換されて、制御可能な加水分解特性および他の生物学的特性を有するポリマーをもたらすことが可能である。代表的な疎水性対イオンとしては、安息香酸および脂肪酸アニオンなどのカルボキシレート(例えば、CH
3(CH
2)
nCO
2−(式中、n=1〜19である));スルホン酸アルキル(例えば、CH
3(CH
2)
nSO
3−(式中、n=1〜19である));サリチレート;乳酸塩;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(N
−(SO
2CF
3)
2);ならびに、これらの誘導体が挙げられる。他の対イオンは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン;硝酸イオン;過塩素酸イオン(ClO
4);テトラフルオロボレートイオン(BF
4);ヘキサフルオロリン酸イオン(PF
6);トリフルオロメチルスルホネートイオン(SO
3CF
3);および、これらの誘導体からも選択されることが可能である。他の好適な対イオンとしては、疎水性対イオンおよび治療活性を有する対イオン(例えば、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、安息香酸塩、乳酸塩などの抗菌剤)が挙げられる。
【0120】
モノマーに関して、R
1およびR
2は、水素、フッ化物、トリフルオロメチルおよびC1〜C6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)から選択される。一実施形態において、R
1、R
2およびR
4は水素である。一実施形態において、R
1、R
2およびR
4はメチルである。
【0121】
代表的な本発明の双性イオン性星形ポリマーは
図1および
図2に図示されている。
【0122】
図1は、双性イオン性(ポリカルボキシベタイン)側鎖を有する代表的な本発明の星形ポリマーの合成の概略図である。この星形ポリマーにおいて、側鎖は、継続される重合(例えば、原子移動ラジカル重合、ATRP)に係るラジカル開始基であるブロモメチル基で末端封止されていることが示されている。星形ポリマーは、図示のラジカル開始基(−O(C=O)−C(CH
3)
2−Br)を有する四官能性核とカルボキシベタインメタクリレート(CH
2=C(CH
3)−C(=O)−CH
2CH
2−N(CH
3)
2+−CH
2CH
2−CO
2−、CBMA)モノマーとから、ATRPにより調製した。
【0123】
図2は、チオール基(−CH
2−SH)で末端封止された双性イオン性(ポリカルボキシベタイン)側鎖を有する代表的な本発明の星形ポリマーの合成の概略図である。この星形ポリマーは、
図1に図示されている星形ポリマーからクリックケミストリー(星形ポリマーとアジ化ナトリウムおよび3−チオアセチレンとの反応)により調製した。
【0124】
本発明の双性イオン性および混合電荷ポリマーに係る代表的な官能基としては、OH、NH、NH
2、SH、N
3、CH=CH
2、C≡CH、COOH、CHO、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン−2−チオン、ピリジルジスルフィド、二フッ素化シクロオクチン、シュタウディンガー試薬対、イソシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホ−NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド、5H−ジベンズ[b,f]アゼピン、および、それらの誘導体が挙げられる。
【0125】
特定の実施形態において、官能性双性イオン性ポリマーは、式(A):
【化3】
(式中、
(C)は、核(例えば、C1〜C50アルキレン、アリーレン、アクリレート、アミン、アミドまたは他の巨大分子核)であり;
R
1、R
4、R
5、R
8およびMは、C−C6アルキレンおよびC6〜C12アリーレンからなる群から独立して選択される。
R
2およびR
3は、C1〜C6アルキレン、C6〜C12アリーレン、−O(CH
2)
m−、−S(CH
2)
m−、−C(=O)(CH
2)
m−、−C(=S)(CH
2)
m−、−C(=NH)(CH
2)
m−および−NH(CH
2)
m−、−(CH
2)
mC(=O)−、−(CH
2)
mOC(=O)−、−(CH
2)
mNHC(=O)−、−(CH
2)
mNHC(=S)−、−(CH
2)
mSC(=O)−、−(CH
2)
mSC(=S)−、−(CH
2)
mNHC(=NH)−および−(CH
2)
mC(=O)NHNH−(式中、mは1〜20の整数である)からなる群から独立して選択され;
Kは、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、ならびに、アンモニオホスフィネート、アンモニオ(アルコキシ)ジシアノエテノレート、アンモニオボロネート、スルホニオカルボキシレートおよびオキシピリジンベタインなどの他の窒素系、スルフィド系、リン酸塩系カチオンからなる群から選択されるカチオン中心であり;
R
6およびR
7は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群から独立して選択されるか、または、Kと一緒になって、アンモニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、ピリジニウム、モルホリニウム、ならびに、アンモニオホスフィネート、アンモニオ(アルコキシ)ジシアノエテノレート、アンモニオボロネート、スルホニオカルボキシレートおよびオキシピリジンベタインなどの他の窒素系、スルフィド系、リン酸塩系カチオンからなる群から選択されるカチオン中心を形成し;
A
1は、C、SO、SO
2、PまたはPO
−であり;
nは5〜約10,000の整数であり;
N
cは核多重度であり、1〜1000の整数であり;ならびに
Xは、OH、NH、NH
2、SH、N
3、CH=CH
2、C≡CH、COOH、CHO、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン−2−チオン、ピリジルジスルフィド、二フッ素化シクロオクチン、シュタウディンガー試薬対の一方、イソシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホ−NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド、5H−ジベンズ[b,f]アゼピン、および、それらの誘導体からなる群から選択される官能基である)
を有する。
【0126】
核多重度(N
c)は、ポリマー中の側鎖の総数である。特定の実施形態において、側鎖の数は2〜500、3〜100、3〜10、3〜6である。
【0127】
特定の実施形態において、Xは、チオール、ジスルフィド、マレイミドまたはクリックケミストリー反応対の一方である。
【0128】
他の実施形態において、官能性双性イオン性ポリマーは、式(B):
【化4】
(式中、
(C)、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、M、K、nおよびN
cは、(A)について上述されているとおりであり;
Q
−は、Cl
−、Br
−、I
−、SO
42−、NO
3−、ClO
4−、BF
4−、PF
6−、N(SO
2CF
3)
2−、SO
3CF
3−もしくはRCOO
−(式中、RはC1〜C20アルキル基である)、または、乳酸塩、安息香酸塩、サリチレートおよび誘導体から選択される対イオンであり;ならびに
R
9は、水素、トリフルオロメチル、C1〜C6アルキル、C6〜C12アリール、−(CH
2)
nOH、−(CH
2)
nNH
2、−(CH
2)
nSH、−(CH
2)
nN
3、−(CH
2)
nCH=CH
2、−(CH
2)
nC≡CH、−(CH
2)
nCOOH、−(CH
2)
nCHO(式中、nは1〜6である)、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン−2−チオン、ピリジルジスルフィド、二フッ素化シクロオクチン、シュタウディンガー試薬対の一方、イソシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホ−NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド、5H−ジベンズ[b,f]アゼピンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される官能基である)
を有する。
【0129】
さらなる実施形態において、官能性双性イオン性ポリマーは、式(C):
【化5】
(式中、
(C)、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、M、K、Q、X、nおよびN
cは、(A)および(B)について上述されているとおりである)
を有する。
【0130】
他の実施形態において、官能性双性イオン性ポリマーは、式(D):
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、Q、A
1、N
cおよびXは、(A)、(B)および(C)について上述されているとおりであり、
M
1、M
2およびM
3は独立して選択され、(A)、(B)および(C)について、Mに関して上述されているとおりであり;
K
1およびK
2は独立して選択され、(A)、(B)および(C)について、Kに関して上述されているとおりであり;
P
2およびP
3は、R
2およびR
3について上述されているとおりであり;
P
4、P
5およびP
8は、それぞれ、R
4、R
5およびR
8について上述されているとおりであり;
P
6およびP
7は、R
6およびR
7について上述されているとおりであり;
Q
2およびQ
3は、R
2およびR
3について上述されているとおりであり;
Q
4およびQ
5は、R
4およびR
5について上述されているとおりであり;
R
9、FおよびXは、−(CH
2)
nOH、−(CH
2)
nNH
2、−(CH
2)
nSH、−(CH
2)
nN
3、−(CH
2)
nCH=CH
2、−(CH
2)
nC≡CH、−(CH
2)
nCOOH、−(CH
2)
nCHO(式中、nは1〜6である)、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン−2−チオン、ピリジルジスルフィド、二フッ素化シクロオクチン、シュタウディンガー試薬対の一方、イソシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホ−NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド、5H−ジベンズ[b,f]アゼピン、およびそれらの誘導体からなる群から独立して選択される官能基である。
mは5〜約10,000の整数であり;
nは5〜約10,000の整数であり;および
qは5〜約10,000の整数である)
を有する。
【0131】
特定の実施形態において、官能性混合電荷コポリマーは、式(E):
【化7】
(式中、
(C)、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、M、K、A
1、n、N
cおよびXは、(A)について上述されているとおりであり、ならびに
Nは、Mについて上述されているとおりであり;
R
8は、R
6およびR
7について上述されているとおりである。
R
9は、R
2およびR
3について上述されているとおりである。
R
10は、R
5について上述されているとおりである)
を有する。
【0132】
他の実施形態において、官能性混合電荷コポリマーは、式(F):
【化8】
(式中、
(C)、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、M、K、N、A
1、nおよびN
cは(E)について上述されているとおりであり、Q
−は(B)について上述されているとおりであり、ならびに、R
11は、−(CH
2)
nOH、−(CH
2)
nNH
2、−(CH
2)
nSH、−(CH
2)
nN
3、−(CH
2)
nCH=CH
2、−(CH
2)
nC≡CH、−(CH
2)
nCOOH、−(CH
2)
nCHO(式中、nは1〜6である)、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン−2−チオン、ピリジルジスルフィド、二フッ素化シクロオクチン、シュタウディンガー試薬対の一方、イソシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホ−NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド、5H−ジベンズ[b,f]アゼピン、および、それらの誘導体からなる群から選択される)
を有する。
【0133】
さらなる実施形態において、官能性混合電荷コポリマーは、式(G):
【化9】
(式中、
(C)、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、M、K、N、A
1、n、N
cおよびXは、(E)および(F)について上述されているとおりである)
を有する。
【0134】
他の実施形態において、官能性混合電荷コポリマーは、式(H):
【化10】
(式中、
(C)、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、A
1、N
c、Q
−およびXは、(G)について上述されているとおりであり;
M
1、M
2およびM
3は独立して、(G)について上記に定義されているとおりMであり;
N
1およびN
2は独立して、(G)について上記に定義されているとおりNであり;
K
1およびK
2は独立して、(G)について上記に定義されているとおりKであり;
P
2、P
3およびP
9はそれぞれ、R
2、R
3およびR
9と同様であり;
P
4はR
4と同様であり;
P
5およびP
10はそれぞれ、R
5およびR
10と同様であり;
P
6、P
7およびP
8はそれぞれ、R
6、R
7およびR
8と同様であり;
Q
2、Q
3およびQ
4はそれぞれ、R
2、R
3およびR
4と同様であり;
Fは、(D)について上述されているとおりであり;ならびに
m、nおよびqは、(D)について上述されているとおりである)
を有する。
【0135】
双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲル
さらなる態様において、本発明は、官能性双性イオン性および混合電荷星形ポリマーから調製されるヒドロゲルを提供する。官能性双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマーを用いて、同一のポリマー(例えば、チオール末端ポリマーのジスルフィドリンケージを介して)、2種以上のポリマー(例えば、クリックケミストリーを介して)を用いることで、または、他の多官能性分子、オリゴマーおよびポリマーを伴って、ホモポリマーまたはコポリマー(例えばヒドロゲル)を形成することが可能である。
【0136】
ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)ポリマーは、ポリマー中にカルボン酸基(COOH)が大量に存在(すなわち、各構成単位中に存在)していることにより、高度に官能化が可能である。このような官能基は、単純なケミストリーによるさらなる官能化のために、ポリマーを多機能とする。このようなケミストリーの一種は、COOH基とアミン官能性化合物とのカップリングである。このケミストリーは、カップリング剤(例えば、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド/N−ヒドロキシスクシンイミド(EDC/NHS))が高効率であることにより簡単に実施できる。カップリングケミストリーを用いて、多様な異なるアミンによりpCBポリマーを官能化することが可能である。クリックケミストリーに対して相補的な基を含有するアミンを選択した場合、クリック−反応性pCBポリマーの対を得ることが可能である。本発明のヒドロゲルは、相補的官能基を有する2種のポリマーを単に混合することにより調製可能である。他の実施形態において、好適な二官能性架橋剤または他の相補的官能性化合物を反応性pCBポリマーと混合してヒドロゲルを得ることが可能である。これらのコンセプトはスキーム1〜3に例示されている。
【0137】
一実施形態においては、スキーム1に示されているとおり、相補的にクリック可能な基(RおよびR*)で官能化された第1および第2の双性イオン性ポリマー(例えば、pCB)を組み合わせて、ヒドロゲルが得られる。
【0138】
スキーム1.相補的にクリック可能な基RおよびR*で官能化されたポリ(カルボキシベタイン)ポリマー(ステップ1aおよび1b)、ならびに、これらの混合により形成されて得られるヒドロゲル。
【化11】
【0139】
スキーム1を参照すると、ペンダントな第1の反応性基(R)を有する第1のポリマーおよびペンダントな第2の反応性基(R*)を有する第2のポリマーを組み合わせて、代表的な本発明のヒドロゲルが得られる。第1および第2のポリマーは、スキーム1に示されているとおり、同一のポリマーから調製可能である(例えば、本発明の双性イオン性ポリマーまたは混合電荷コポリマー)。ヒドロゲルは、相補的な第1および第2の反応性基(例えば、相補的な第1および第2のクリック基)を介して第1のポリマーおよび第2のポリマーを架橋することにより形成される。
【0140】
他の実施形態において、第1および第2の相補的な反応性(例えば、クリック−反応性)ポリマーは、双性イオン性モノマー(例えば、CBMA)と、それぞれ、第1のコモノマーおよび第2のコモノマーとの共重合により調製可能である。第1のコモノマーは、第1の反応性基(例えば、クリック−反応性基などの第1の反応性基をさらに含む双性イオン性モノマー)を含む。第2のコモノマーは、第2の反応性基(例えば、クリック−反応性基などの第2の反応性基をさらに含む双性イオン性モノマー)を含む。この共重合ストラテジーは、軟骨または他の組織を模倣するよう高強度の注射可能なヒドロゲルを調製する場合などの高レベルの官能化が必要とされる場合に用いられ得る。これらの方法により、ポリマーの官能性および総合的な双性イオン性特性が維持される。このストラテジーはスキーム2に示されている。
【0141】
スキーム2.共重合により相補的にクリック可能な基RおよびR*で官能化されたポリ(カルボキシベタイン)コポリマー(ステップ2aおよび2b)、ならびに、これらの混合により形成されて得られるヒドロゲル。
【化12】
【0142】
スキーム2の経路2aを参照すると、第1の双性イオン性コポリマーは、双性イオン性モノマー(CBモノマーと表記)(例えば、CBMA)と、第1の反応性基(すなわち、第1の反応性(例えば第1のクリック−反応性)基をさらに含む双性イオン性コモノマー)を含む第1のコモノマー(CB−クリックモノマーと表記)との共重合により調製される。スキーム2の経路2bを参照すると、第2の双性イオン性コポリマーは、双性イオン性モノマー(CBモノマーと表記)(例えば、CBMA)と、第2の反応性基(例えば、第2の反応性(例えば第2のクリック−反応性)基をさらに含む双性イオン性モノマー)を含む第2のコモノマー(CB−クリックモノマーと表記)との共重合により調製される(2aに示されているとおり)。ヒドロゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとを、相補的な第1および第2の反応性基(例えば、相補的な第1および第2のクリック反応性基)を介して架橋することにより形成される。
【0143】
さらなる実施形態において、双性イオン性ポリマーは、相補的な反応性(例えば、クリック−反応性)基で官能化された末端基であり得る。スキーム3を参照のこと。これらの末端基官能性ポリマーは、スキーム1および2において図示されているポリマーおよびコポリマーと共に用いられることが可能である。末端基官能性ポリマーおよびこれらの混合によって形成されるヒドロゲルの調製がスキーム3に示されている。
【0144】
スキーム3.末端基官能性ポリマーおよびこのポリマーから形成されるヒドロゲル。
【化13】
【0145】
スキーム3の経路3aを参照すると、第1の双性イオン性ポリマーは、第1の反応性基(例えば、第1のクリック−反応性基)で末端基官能化されている。スキーム3の経路3bを参照すると、第2の双性イオン性ポリマーは、第2の反応性基(例えば、第2のクリック−反応性基)で末端基官能化されている。ヒドロゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとを、相補的な第1および第2の反応性基(例えば、相補的な第1および第2のクリック反応性基)を介して架橋することにより形成される。
【0146】
上記の架橋(ヒドロゲル形成)ケミストリーは、相補的な反応性基(すなわち、第1および第2の反応性基)間の反応として記載されている。相補的な反応性基は、結合の形成について好適な反応性、好ましくは室温〜生理的温度の温度での結合の形成について好適な反応性を有する反応性基の任意の対であることが可能であることが認識されるであろう。特定の実施形態において、相補的な反応性基は、技術分野において周知であるクリック基(クリック−反応対)である。
【0147】
上記のストラテジーを用いて形成される代表的な双性イオン性クリックヒドロゲルが実施例1〜6に記載されている。
【0148】
ヒドロゲルは、生物的化合物を伴って、または、伴うことなく、足場材料、注射可能なヒドロゲルもしくはナノゲルの形態とされることが可能である。特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルは、内包された小分子、ナノマテリアル、核酸、多糖類、タンパク質および細胞をさらに含む。このようなヒドロゲルは、医学的および薬学的センシング、整形外科、心血管系、内部眼用、審美的、眼球用および薬物/タンパク質/薬物送達における用途を有する。ヒドロゲルは、医学的および工学的用途に係る表面に付着させることが可能である。ヒドロゲルの形成に追加して、官能性双性イオン性ポリマーは、生物的または非生物的分子および基材に付着させることも可能である。さらに、官能化可能なポリカルボキシベタイン(PCB)ポリマーに関して、ポリマーは、分解性または非分解性の方法で直接的に複合化されることが可能であり、一方で、側鎖は、アクリルアミド、オキサゾリンおよびビニルピロリドンとして置き換えられることが可能である。
【0149】
本発明のヒドロゲルは、移植可能なバイオセンサ;創傷ケアデバイス、接着剤およびシーラント、コンタクトレンズ;人工歯根;人工関節、人工骨、人工靱帯および人工腱などの整形用デバイス;カテーテル、人工弁、人工血管、人工ステント、LVADまたは心調律管理デバイスなどの心血管デバイス;栄養管、消化管クリップ、胃腸スリーブまたは胃内バルーンなどの胃腸病学的デバイス;移植可能な受胎調節デバイスまたは膣スリングなどのOB/Gynデバイス;吻合コネクタまたは皮下ポートなどの腎臓病学的デバイス;神経誘導管、脳脊髄液ドレナージまたはシャントなどの脳神経外科デバイス、皮膚再建デバイスなどの皮膚病学的デバイス、シャントなどの眼用デバイス、ステント、人工内耳、管、シャントまたはスプレッダなどの耳鼻咽喉科学的デバイス、眼内レンズ;乳房インプラント、鼻インプラントおよび頬インプラントなどの審美インプラント;神経刺激デバイス、人工内耳および神経管などの神経インプラント;血糖センサおよびインスリンポンプなどのホルモン制御用インプラント;移植バイオセンサ;アクセスポートデバイス;および、COPD管理用の弁または人工肺などの組織足場材料肺動脈弁デバイス;放射線不透過または音響不透過マーカなどの放射線学的デバイス;または、カテーテルもしくは人工尿道などの泌尿器科学的デバイスなどの物品、デバイスおよびコンポーネントに用いられることが可能である。
【0150】
以下は、代表的な本発明のヒドロゲルならびに細胞培養物および組織足場材料用のその使用に関する説明である。
【0151】
ランゲルハンス島内包化用の官能性双性イオン性ポリマー系ヒドロゲル
CBMAの重合により調製した官能性星型ポリ(カルボキシベタイン)ポリマー(pCB)を、ATRPおよびクリックケミストリーの併用により合成した。チオール基−末端pCBポリマーを合成し、pCBヒドロゲルを、生理学的条件下においてチオール−末端pCBと1,2−ビス(マレイミド)エタンとを一緒に混合することにより形成した。
【0152】
ATRPを介した星型pCBポリマーの合成を
図1に示されているとおり実施した。簡潔には、CBMA、2,2’−ビピリジン(bpy)、触媒および四官能性開始剤、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)を10mLの反応管に入れ、混合物を3回の凍結脱気サイクルに供した。混合物を室温で20分間保持し、水およびメタノールを1:1の比で添加した。この反応を攪拌下に室温で8時間継続させた。ポリマー生成物を、アルミナにより処理し、最後に、アセトン中に2回沈殿させることにより精製した後に回収した。ポリマーの分子量は、モノマーと開始剤との化学量論比に合わせることが可能である。5000、20,000および50,000の分子量を有する星形ポリマーを合成した。RAFTなどの他のリビング重合方法もまた、ポリマーの合成に適用することが可能である。官能性星型pCBポリマーはクリックケミストリーにより調製した。
図2に示されているとおり、精製後、最初に形成した星型pCBの末端臭素基を、水中のアジ化ナトリウムを伴う求核置換反応によってアジド基に転換した。生成物を透析により精製した。凍結乾燥を用いて水を除去した。次いで、pCB−N
3(pCB−アジド)鎖を、触媒としてのCuBr/PMDETAと共に、メタノール中のアルキン−SHと反応させて、4本のアームを有する星型pCBポリマーを生成した。
図2に図示されているとおり、チオール−末端星型pCBを透析および凍結乾燥による精製後に得た。
【0153】
図3Aおよび3Bは、本発明の好適に官能化された星形ポリマーから調製された代表的な本発明のヒドロゲルの調製を概略的に示す。
図3Aは、2種の代表的な本発明の星形ポリマーの合成を示す:(a)pCB−Aで表されたチオール基(−CH
2−SH)で末端封止された双性イオン性(ポリカルボキシベタイン)側鎖を有する星形ポリマー;および、(b)pCB−Bで表されたピリジルジスルフィド基(−CH
2−S−S−C
5H
4N)で末端封止された双性イオン性(ポリカルボキシベタイン)側鎖を有する星形ポリマー。これらの星形ポリマーは、
図1に図示されている星形ポリマーからクリックケミストリー(星形ポリマーとアジ化ナトリウムおよび(a)3−チオアセチレンまたは(b)3−ピリジルジスルフィドアセチレンとの反応)により調製した。
図3Bは、
図3Aに図示されている星形ポリマー(pCB−AおよびpCB−B)の反応により調製される代表的な本発明のヒドロゲルの調製を例示する。ヒドロゲルは、単にpCB−AとpCB−Bとを細胞の存在下で混合することにより形成可能である。
【0154】
インビトロランゲルハンス島内包化およびpCBヒドロゲル中での分析を評価した。ラットのランゲルハンス島を、RPMI−1640培地中において、5%チオール−末端pCB−A(MW=15000)と混合した。次いで、1,2−ビス(マレイミド)エタンを混合物に添加し、この系を37℃で5分間硬化させた。ヒドロゲル−内包ランゲルハンス島および対照ランゲルハンス島を、10%FBSを補ったRPMI−1640培地において、37℃で、培地を2日毎に交換しながら培養した。
図4Aに示されているとおり、内包ランゲルハンス島は18日間のインビトロ培養後にきわめて高い生存率を示していた。培養培地におけるグルコース消費を用いて、培養中に維持していたヒドロゲル−内包ランゲルハンス島の代謝活性を計測した。グルコース新陳代謝は主に培養しているランゲルハンス島による培地中のグルコースの利用によって計測し、これをランゲルハンス島の生存率だけではなく、細胞活動の指標としても示した。培地中のグルコースの摂取を18日間にわたって48時間毎に計測して、ランゲルハンス島品質を評価した。内包ランゲルハンス島におけるグルコース摂取は、1日目のレベルの略100%が18日目まで維持された(
図4B)。対照ランゲルハンス島においては、グルコース消費は7日目までに72%に低減し、時間の経過と共にさらに低減した。14日目および18日目には、それぞれわずかに59%および38%のグルコースが利用された。全体として、内包ランゲルハンス島は、対照ランゲルハンス島と比較してかなり高い代謝活性を維持していた(p<0.01)。インスリンの生合成能を定量化するために、0日目および18日目に、培養したランゲルハンス島を、低(3mM)または高(17mM)グルコース培地で18時間インキュベートした(
図4B)。ヒドロゲル−内包ランゲルハンス島は、高−および低−グルコース露出の両方において、新たに単離されたランゲルハンス島(0日目)のインスリン分泌レベルを維持した(p=0.13〜0.40)。対照的に、グルコース応答性は、18日目にテストした対照培養ランゲルハンス島においては保持されなかった(p<0.05、0日目の対照および18日目の内包ランゲルハンス島に対して)。対照ランゲルハンス島に係るインスリン保管/分泌能の低減は、18日目におけるジチゾン(DTZ)によるインスリン染色の低減によっても示されていた(
図4C)。β細胞機能をさらに評価するために、動的グルコース刺激インスリン放出を、ヒドロゲル内包化を伴って、または、ヒドロゲル内包化を伴わずに18日間培養したランゲルハンス島を用いて、洗い流し系においてテストした。0日目には内包サンプルおよび対照サンプルの両方において同数のランゲルハンス島が存在していたが、対照群中のランゲルハンス島は経時的に崩壊し、刺激インスリン分泌を示さなかった。対照的に、内包ランゲルハンス島はグルコース刺激に対して良好な応答を示した(
図4D)。
【0155】
ヒドロゲルは、2種の異なるポリマーを混合することによっても形成可能である。例えば、
図3Aに示されているとおり、チオール−末端pCB−Aおよびピリジルジスルフィド−末端pCB−Bを、ATRPおよびクリックケミストリーの併用により合成した。ヒドロゲルは、pCB−AとpCB−Bとを生理学的条件下で混合することにより形成が可能である(
図3Bを参照のこと)。ヒドロゲルは生理学的条件下で形成が可能であるため、幹細胞、免疫細胞、神経細胞、ホルモン−分泌細胞および心臓細胞などの細胞を、ヒドロゲル中に内包させるためにゲル化プロセスに加えることが可能である。加えて、ヒドロゲルはジスルフィド結合で架橋されるため、ヒドロゲルは、システインなどの生物学的剤により分解されることが可能である。
【0156】
末梢血幹細胞(PBSC)細胞内包化用の官能性双性イオン性ポリマー系ヒドロゲル
ラットのランゲルハンス島細胞について上述したとおり、末梢血幹細胞(PBSC)細胞もまた代表的な本発明のヒドロゲル中に内包した。
【0157】
図5Aおよび5Bは、代表的な本発明のヒドロゲル(pCBヒドロゲル)中で培養した内包された末梢血幹細胞(PBSC)細胞のデータを表す。
図5Aは、経時的なヒドロゲル係数(ヒドロゲル分解)を表す。
図5Bは、7日間のインビトロ培養後のpCBヒドロゲル中に内包されたPBSC細胞で行ったLIVE/DEADアッセイの結果を表す画像である。
【0158】
本発明のヒドロゲルは、本発明の方法により有利に投与される成分または添加剤をさらに含むことが可能である。
【0159】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは細胞をさらに含む。これらの実施形態において、細胞は、ヒドロゲル中に含有されるか、または、ヒドロゲル中に内包される。ヒドロゲル中に内包されている細胞の性質は限定されない(天然の細胞および遺伝子組換え細胞、ならびに、その粉砕物)。ヒドロゲル中に有利に内包される代表的な細胞としては、外分泌上皮細胞、ホルモン分泌細胞、角化上皮細胞、湿性重層バリア上皮細胞、感覚伝達細胞、自律神経細胞、感覚器官および末梢神経支持細胞、ニューロンおよびグリア細胞、レンズ細胞、肝細胞、脂肪細胞、脂質細胞、バリア機能細胞、腎細胞、心臓細胞、細胞外基質細胞、収縮細胞、ならびに、赤血球、単球、好中球、マスト細胞、T細胞、幹細胞、胚細胞、哺育細胞、間質細胞、前駆細胞および造血幹細胞などの血液および免疫系細胞が挙げられる。
【0160】
特定の実施形態において、ヒドロゲルはウイルスをさらに含む。これらの実施形態において、ウイルスは、ヒドロゲル中に含有されるか、または、ヒドロゲル中に内包されている。代表的なウイルスとしてはレトロウイルスおよびアデノウイルスが挙げられる。
【0161】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは細菌をさらに含む。これらの実施形態において、細菌は、ヒドロゲル中に含有されるか、または、ヒドロゲル中に内包されている。代表的な細菌としては、クロストリジウム種、ネズミチフス菌(S. typhimurium)および大腸菌(E.coli)が挙げられる。
【0162】
ヒドロゲル中に有利に内包される他の材料としては、タンパク質、ペプチド、核酸(オリゴヌクレオチド)、多糖類、小分子(すなわち、約800g/モル未満の分子量を有する有機、無機および有機金属化合物)およびナノマテリアルが挙げられる。代表的なタンパク質としては、抗体、抗体フラグメント、酵素(例えば、治療用酵素および防御酵素)およびペプチドが挙げられる。代表的な核酸としては、DNA(例えばcDNA)およびRNA(例えば、siRNA、mRNA)が挙げられる。代表的な小分子としては、治療薬剤および診断薬(例えば、蛍光および磁気共鳴造影剤)が挙げられる。代表的なナノマテリアルとしては、カーボンナノ構造(例えば、カーボンナノチューブおよびグラフェン)および量子ドットが挙げられる。
【0163】
ヒドロゲル中に有利に内包される他の材料としては、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマーおよび無機粒子が挙げられる。
【0164】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは分解性架橋剤で架橋されている。代表的な分解性架橋剤としては、ペプチド、多糖類、無水物架橋剤、ジスルフィド架橋剤およびポリエステル架橋剤が挙げられる。これらの実施形態において、ヒドロゲルは、加水分解または酵素による消化などによって、特定の状況(例えば、生理学的条件)下で分解するよう設計可能である。
【0165】
特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルは官能性双性イオン性ポリマーから調製され、式(J):
【化14】
(式中、
(C1)および(C2)は核であり、アクリレート官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;アミン官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;アミド官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;エポキシ官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;または、他の巨大分子核から独立して選択され;
Y
1およびY
2は連接基であり、−O(CH
2)
n−、−S(CH
2)
n−、−C(=O)(CH
2)
n−、−C(=S)(CH
2)
n−、−C(=NH)(CH
2)
n−、−NH(CH
2)
n−、−(CH
2)
nC(=O)−、−(CH
2)
nOC(=O)−、−(CH
2)
nNHC(=O)−、−(CH
2)
nNHC(=S)−、−(CH
2)
n−C(=O)−、−(CH
2)
nSC(=S)−、−(CH
2)
nNH−C(=NH)−、−(CH
2)
nC(=O)NHNH−(式中、nは1〜20の整数である)、および、上記に定義されている官能基Xから形成可能である他のリンケージから独立して選択され;
R
1〜R
8は(A)について上述されているとおりであり;
R
9〜R
16はそれぞれR
1〜R
8と同様であり;
Mは、(A)について上述されているとおりであり;
NはMであり;
K
1およびK
2は独立して、(A)についてKに関して上述されているとおりであり;
A
1は、C、SO、SO
2、PまたはPO
−であり;
A
2は、C、SO、SO
2、PまたはPO
−であり;
mは5〜約10,000の整数であり;
nは5〜約10,000の整数であり;
N
c1およびN
c2は核多重度であり、2〜1000から独立して選択される整数であり;ならびに
qはN
c1およびN
c2の中間の整数である)
を有する。
【0166】
他の実施形態において、本発明のヒドロゲルは官能性双性イオン性ポリマーから調製され、式(K):
【化15】
(式中、置換基の定義は(J)について上述されているとおりであり、P
−は、(B)についてQ
−に関して記載されているとおりであり、R
17およびR
18は官能基であり、(B)についてR
9によって定義されている群から独立して選択される)
を有する。
【0167】
特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルは官能性混合電荷コポリマーから調製され、式(L):
【化16】
(式中、
(C1)および(C2)は核であり、アクリレート官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;アミン官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;アミド官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;エポキシ官能性C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;C1〜C6アルキルおよびC6〜C12アリール基;または、他の巨大分子核から独立して選択され;
Y
1およびY
2は連接基であり、−O(CH
2)
n−、−S(CH
2)
n−、−C(=O)(CH
2)
n−、−C(=S)(CH
2)
n−、−C(=NH)(CH
2)
n−、−NH(CH
2)
n−、−(CH
2)
nC(=O)−、−(CH
2)
nOC(=O)−、−(CH
2)
nNHC(=O)−、−(CH
2)
nNHC(=S)−、−(CH
2)
n−C(=O)−、−(CH
2)
nSC(=S)−、−(CH
2)
nNH−C(=NH)−、−(CH
2)
nC(=O)NHNH−(式中、nは1〜20の整数である)、および、上記に定義されている官能基Xから形成可能である他のリンケージから独立して選択され;
R
1〜R
10は(E)について上述されているとおりであり;
R
11〜R
20はカウンターパートR
1〜R
10と同様であり;
M
1およびM
2は独立して、(K)についてMに関して上述されているとおりであり;
N
1およびN
2は独立して、(K)についてNに関して上述されているとおりであり;
K
1およびK
2は独立して、(K)についてKに関して上述されているとおりであり;
A
1は、C、SO、SO
2、PまたはPO
−であり;
A
2は、C、SO、SO
2、PまたはPO
−であり;
mは5〜約10,000の整数であり;
nは5〜約10,000の整数であり;
N
c1およびN
c2は核多重度であり、2〜1000から独立して選択される整数であり;ならびに
qはN
c1およびN
c2の中間の整数である)
を有する。
【0168】
他の実施形態において、本発明のヒドロゲルは官能性混合電荷コポリマーから調製され、式(M):
【化17】
(式中、置換基の定義は(L)について上述されているとおりであり、P
−は、(F)についてQ
−に関して記載されているとおりであり、R
21およびR
22は官能基であり、(F)についてR
8によって定義されている群から独立して選択される)
を有する。
【0169】
双性イオン性または混合電荷ポリマーヒドロゲルで処理した表面
他の態様において、本発明は、本発明の双性イオン性または混合電荷ヒドロゲルで処理された表面を提供する。特定の実施形態において双性イオン性ポリマーまたは混合電荷コポリマーに加水分解可能である本発明のヒドロゲルは、例えば医療デバイスを含む多様なデバイスの表面用のコーティングとして有利に用いられることが可能である。
【0170】
本発明のヒドロゲルは、表面をコーティングして、生体適合性、抗菌性および非汚損性表面を提供するために有利に用いられる。従って、他の態様においては、本発明は、本発明の架橋双性イオン性ヒドロゲルの1種または複数種が適用(例えば、コーティング、共有結合、イオン会合、疎水的に会合)された表面(すなわち、1つまたは複数の表面)を有するデバイスおよび材料を提供する。本発明のヒドロゲルで有利に処理し得、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され得るか、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれる代表的なデバイスおよびキャリアとしては、以下が挙げられる:
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する粒子(例えば、ナノ粒子);
本発明の材料で処理され、本発明の材料を含むよう変性され、または、本発明の材料が組み込まれた表面を有する薬物キャリア;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する非ウイルス性遺伝子送達系;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有するバイオセンサ;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する、微生物懸濁液用メンブラン、ホルモンの分離、タンパク質の分別、細胞の分離、廃水処理、オリゴ糖バイオリアクタ、タンパク質限外ろ過、および、日々の処理などのバイオプロセスまたはバイオ分離用デバイス;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する移植可能なセンサ;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する皮下センサ;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する、乳房インプラント、人工内耳および人工歯根などのインプラント;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有するコンタクトレンズ;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する組織足場材料;
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左心補助装置(LVAD)、動脈グラフトおよびステントなどの移植可能な医療デバイス;ならびに
本発明のヒドロゲルで処理され、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれた表面を有する、耳用ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症用シャント、人工角膜、神経誘導管、尿管カテーテル、組織接着剤およびX線ガイドなどの医療デバイス。
【0171】
本発明のヒドロゲルで有利に処理され得、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され得、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれる他の代表的な基材および表面としては、布、ならびに、衣服(例えば、病院および軍における従事者が着るものなどを含む、コート、シャツ、パンツ、下着)、寝具(例えば、ブランケット、シート、枕カバー、マットレスおよび枕)、タオル、および、拭布などにおけるものが挙げられる。
【0172】
本発明のヒドロゲルで有利に処理され得、本発明のヒドロゲルを含むよう変性され得、または、本発明のヒドロゲルが組み込まれる他の代表的な基材および表面としては、卓上面、机およびカウンター甲板などの作業面が挙げられる。
【0173】
本発明のヒドロゲルは、移植可能なバイオセンサ;創傷ケアデバイス、接着剤およびシーラント、コンタクトレンズ;人工歯根;人工関節、人工骨、人工靱帯および人工腱などの整形用デバイス;カテーテル、人工弁、人工血管、人工ステント、LVADまたは/および心調律管理デバイスなどの心血管デバイス;栄養管、消化管クリップ、胃腸スリーブまたは胃内バルーンなどの胃腸病学的デバイス;移植可能な受胎調節デバイスまたは膣スリングなどのOB/Gynデバイス;吻合コネクタまたは皮下ポートなどの腎臓病学的デバイス;神経誘導管、脳脊髄液ドレナージまたはシャントなどの脳神経外科デバイス、皮膚再建デバイスなどの皮膚病学的デバイス、シャントなどの眼用デバイス、ステント、人工内耳、管、シャントまたはスプレッダなどの耳鼻咽喉科学的デバイス、眼内レンズ;乳房インプラント、鼻インプラントおよび頬インプラントなどの審美インプラント;神経刺激デバイス、人工内耳および神経管などの神経インプラント;血糖センサおよびインスリンポンプなどのホルモン制御用インプラント;移植バイオセンサ;アクセスポートデバイス;および、COPD管理用の弁または人工肺などの組織足場材料肺動脈弁デバイス;放射線不透過または音響不透過マーカなどの放射線学的デバイス;または、カテーテルもしくは人工尿道などの泌尿器科学的デバイスなどの物品、デバイスおよびコンポーネントの表面を含む多様な表面にコーティングされることが可能である。
【0174】
インサイチュ双性イオン性および混合電荷ポリマーヒドロゲル
さらなる態様において、本発明は、双性イオン性または混合電荷ポリマーヒドロゲルを形成する方法を提供する。特定の実施形態において、この方法は、ヒドロゲルが望ましく位置されている環境に、好適に官能化された双性イオン性星形ポリマーまたは好適に官能化された混合電荷星型コポリマーを導入する、インビボ方法などのインサイチュ方法である。官能性双性イオン性星形ポリマーまたは官能性混合電荷星型コポリマーの相補的官能基により、これらのポリマーまたはコポリマーは架橋されて、ヒドロゲルがインサイチュで得られる。
【0175】
環境がインビボ位置である場合、官能性双性イオン性星形ポリマーまたは官能性混合電荷星型コポリマーは例えば注射によって所望の部位に導入可能である。
【0176】
この方法により、ヒドロゲルおよびその追加されるカーゴは、所望されるインビボの、ある部位で有利に形成されることが可能である。
【0177】
特定の実施形態において、反応対の官能基(例えば、第1の官能基を有する第1のポリマーおよび第2の官能基を有する第2のポリマーであって、第1の官能基および第2の官能基は、第1のポリマーと第2のポリマーとを結合する共有結合に対して互いに反応性である)を各々有する本発明の2種の好適な官能性双性イオン性ポリマーは、組み合わされるか、または、インサイチュで相互に接触された場合(例えば、所望の部位への注射後にインビボで)に、これらの2種のポリマーが反応してヒドロゲルが形成されるよう投与される。
【0178】
他の実施形態において、反応対の官能基の一方(例えば、第1の官能基を有する第1のポリマーおよび第2の官能基を有する第2のポリマーであって、第1の官能基および第2の官能基は、第1のポリマーと第2のポリマーとを結合する共有結合に対して互いに反応性である)を各々有する本発明の2種の官能性混合電荷コポリマーは、組み合わされるか、または、インサイチュで相互に接触された場合(例えば、所望の部位への注射後にインビボで)に、これらの2種のポリマーが反応してヒドロゲルが形成されるよう投与される。
【0179】
双性イオン性および混合電荷星形ポリマー治療剤複合体
他の態様においては、本発明は、共有結合された治療剤を有する双性イオン性および混合電荷ポリマーおよびコポリマーを提供する。これらの複合体は、治療剤の送達に有用である。加水分解により本発明のポリマーから治療剤が徐放される。
【0180】
以下は、代表的な本発明の複合体および複合体からの治療剤の放出の説明である。
【0181】
図6は、双性イオン性(ポリカルボキシベタイン)側鎖を有する代表的な本発明の星形ポリマーからの代表的な治療剤の放出の概略図である。星形ポリマーは、ラジカル開始基を有する四官能性核およびカルボキシベタインメタクリレート−治療剤モノマー(CH
2=C(CH
3)−C(=O)−CH
2CH
2−N(CH
3)
2+−CH
2CH
2−CO
2−治療剤)からATRPにより調製した。図示されている代表的な星形ポリマーにおいて、側鎖は、CBMAを伴う伸長重合によってさらに伸長されて、治療剤を伴う構成単位に加えて、双性イオン性である構成単位を有する側鎖が得られる。
図6に図示されている星形ポリマーはブロックコポリマーである。特定の実施形態において、星形ポリマーは、双性イオン性モノマー(例えばCBMA)および双性イオン性−治療剤モノマー(例えばCBMA−治療剤)の共重合により調製されるランダムコポリマーであることが認識されるであろう。星形ポリマーの加水分解で治療剤が放出される。星形ポリマーの加水分解および治療剤の放出によって、星形ポリマー中に双性イオン性構成単位が再生成される。
図6に示されているとおり、治療剤はイブプロフェンであり、イブプロフェンを放出可能である星形ポリマーを合成するためのモノマーはCBMAとイブプロフェンの縮合により調製される。
【0182】
図6に示されるとおり、ジクロロメタン(DCM)中においてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と一緒に攪拌することにより、無水物形成反応を介して、イブプロフェンをカルボキシベタインメタクリレート(CBMA)に組み込んで重合性モノマーを得た。4本のアームを有する星型双性イオン性ポリマーをこのモノマーから調製して、ポリマー治療剤複合体を得た。
図6に示されるとおり、治療剤は加水分解により放出される。加水分解後に得られるポリマーはそのカウンターパート双性イオン性ポリマーに転換される。
【0183】
別段の定めがある場合を除き、本明細書および特許請求の範囲において用いられている、処方成分の量、分子量などの特性、反応条件等を表す数はすべて、すべての場合において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。従って、反する記載がない限りにおいて、本明細書および添付の特許請求の範囲中において規定されている数値パラメータは、本発明によって達成することが想定されている所望の特性に応じて様々であり得る近似値である。少なくとも、また、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告されている有効桁数の観点から、および、通常の丸め技法の適用により解釈されるべきである。さらなる明確さが必要とされる場合、「約」という用語は、記載された数値または範囲(すなわち、未満記載されている値よりいくらか大きいか小さい、または、記載されている値の±20%;記載されている値の±19%;記載されている値の±18%;記載されている値の±17%;記載されている値の±16%;記載されている値の±15%;記載されている値の±14%;記載されている値の±13%;記載されている値の±12%;記載されている値の±11%;記載されている値の±10%;記載されている値の±9%;記載されている値の±8%;記載されている値の±7%;記載されている値の±6%;記載されている値の±5%;記載されている値の±4%;記載されている値の±3%;記載されている値の±2%;または、記載されている値の±1%の範囲内の範囲を表す)と併せて用いられる場合に当業者によって合理的に与えられた意味を有する。
【0184】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中において記載されているこれらの数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれかの数値が、対応するテスト計測値に見いだされる標準偏差から必然的にもたらされる一定の誤差を内在的に包含する。
【0185】
以下の実施例は例示のために記載されており、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0186】
実施例1
代表的なヒドロゲル:第1および第2の双性イオン性
ポリマーシクロオクチン/アジドケミストリー
この実施例において、代表的な本発明のヒドロゲルは、第1および第2の双性イオン性ポリマーから調製される。第1のポリマーはペンダントな第1の反応性基(すなわち、シクロオクチン)を含み、第2のポリマーはペンダントな第2の反応性基(すなわち、アジド)を含む。
【0187】
外部から如何なる刺激も与えずにこの2種のポリマーを混合することでヒドロゲルが得られる。
【0188】
第1および第2のポリカルボキシベタインポリマーの形成、および、このポリマーから形成されるヒドロゲルが以下に示されている。
【化18】
【0189】
ポリカルボキシベタイン(pCB)ポリマーは、既知のEDC/NHSカップリングを用いて、2種の異なる反応において、それぞれ、シクロオクチンアミンおよびアジドアミンで官能化される。pCBポリマーを先ずEDC/NHSケミストリーにより活性化し、次いで、ポリマーをTHF中への沈殿により精製する。次いで、活性化したポリマーを対応するアミンと反応させる。ポリマーを再度THF中への沈殿により精製する。精製したポリマーを減圧下で乾燥させる。官能化度は、
1Hおよび
13C NMRにより特徴付けられる。これらの2種の官能性pCBポリマーを混合し、次いで、クリック反応に供してヒドロゲルを形成する。官能化度、従って、架橋度は、反応性アミンの量を変更することによって容易に変えることが可能である。
【0190】
実施例2
官能性双性イオン性コポリマー
この実施例においては、代表的な本発明の官能性双性イオン性コポリマーの調製が記載されている。代表的な官能性コポリマーはペンダント基(すなわち、N−ヒドロキシスクシンイミド基)を含み、これにより、さらなる活性化基(相補的な反応性基)の共有結合を可能として、本発明のヒドロゲルの形成に有用な架橋性ポリマーがもたらされる。
【0191】
カルボキシベタインメタクリレートモノマー(CBMA)は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS−CBMA)で官能化される。このモノマーをカルボキシベタインメタクリレートモノマー(CBMA)と共重合する(スキーム3を参照のこと)。得られるポリマーは、CBMAおよびNHS−CBMAのランダムポリマーである。共重合を以下に示す。
【化19】
【0192】
2種のモノマーの供給比を変更して、異なる官能化度を有する官能性ポリマーを得ることが可能である。活性化したポリマーを好適なアミンでさらに官能化して、スキーム1中のステップ1aおよび1bを促進することが容易に可能である。
【0193】
NHS活性化カルボキシベタインモノマーを最初に合成する。このモノマーを、異なる供給比で、カルボキシベタインメタクリレートと一緒に重合する。得られるポリマーは既に活性化されているものである。このポリマーをTHF中で沈殿させて、すべての小さい分子不純物(例えば、未反応モノマー、開始剤)を除去することにより精製し、次いで、減圧乾燥する。ポリマーは、
1Hおよび
13C NMRを用いて特徴付けられる。
【0194】
実施例3
代表的なヒドロゲル:第1および第2の双性イオン性ポリマー
チオール/マレイミドケミストリー
この実施例において、代表的な本発明のヒドロゲルは第1および第2の双性イオン性ポリマーから調製される。第1のポリマーはペンダントな第1の反応性基(すなわち、チオール)を含み、および、第2のポリマーはペンダントな第2の反応性基(すなわち、マレイミド)を含む。
【0195】
第1および第2のポリカルボキシベタインポリマーの形成を以下に示す。
【0196】
カルボキシベタインメタクリレートとマレイミド官能性CBMAモノマーとのランダムコポリマーの合成を以下に示す。
【化20】
【0197】
カルボキシベタインメタクリレートとエタンチオール官能性CBMAモノマーとのランダムコポリマーの合成を以下に示す。
【化21】
【0198】
外部から如何なる刺激も与えずにこの2種のポリマーを混合することでヒドロゲルが得られる。
【0199】
先ず、官能性カルボキシベタインモノマーを相補的にクリック可能な基と共に合成する。この官能性モノマーをCBMAモノマーとランダム重合する。代表例として、マレイミドおよびチオール官能性CBMAモノマーを、アミンを用い、マレイミドおよびチオールに基づいて合成する。ポリマーをTHF中への沈殿により精製して未反応のモノマーを除去する。ポリマーの組成はNMR(
1Hおよび
13C)により確認する。ポリマー中の官能性単位の量は供給比を調節することにより変更する。このようにして、相補的クリック可能なポリマーを合成する。これらのポリマーを5〜10重量%で水中にて混合してヒドロゲルを形成する。
【0200】
実施例4
代表的な双性イオン性コポリマー:チオールペンダント基
この実施例において、変性カルボキシベタインモノマーを、カルボキシレート上の負の電荷を有するアンモニウム部分を修飾してチオール−官能性双性イオン性モノマーをもたらすことにより、合成する。
【0201】
官能性双性イオン性コポリマーをもたらすCBMAと変性CBMAモノマーとの共重合を以下に示す。
【化22】
【0202】
このようなモノマーは、架橋性速度が速いという利点を有する。同様のモノマーおよびコポリマーを対応するクリック基カウンターパートについて得て、スキーム2に示されている手順を完了することが可能である。
【0203】
実施例5
代表的な双性イオン性コポリマーヒドロゲル:ランゲルハンス島内包化
この実施例においては、代表的な双性イオン性ポリマーを用いるランゲルハンス島内包化が記載されている。
【0204】
官能性星型pCBポリマーをATRPおよび「クリック」反応の併用により合成した。分子量が異なるマレイミドおよびチオール基−末端pCBポリマーを合成した。pCBヒドロゲルを、マレイミド−末端pCB(pCB−A)とチオール−末端pCB(pCB−B)とを生理学的条件下で混合することにより形成した。機械特性、平衡含水量(EWC)およびヒドロゲルの孔径は、ポリマーの分子量およびポリマーの使用量を調節することにより合わせることが可能である。
【0205】
ATRPによる星型pCBポリマーの合成
CBMA、2,2’−ビピリジン(bpy)、触媒、四官能性開始剤、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)を10mLの反応管に入れ、混合物を3回の凍結脱気サイクルに供した。この混合物を室温下に20分間静置させ、水およびメタノールを1:1の比で添加した。この反応を攪拌下に室温で8時間継続させた。ポリマー生成物を、アルミナにより処理し、最後に、アセトン中に2回沈殿させることにより精製した後に回収した。ポリマーの分子量は、モノマーと開始剤との化学量論比に合わせることが可能である。5000、20000および50000の重量平均分子量を有する星形ポリマーを合成した。可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)などの他のリビング重合方法もまた、ポリマーの合成に適用することが可能である。
【0206】
クリックケミストリーを介した官能性星型pCBポリマーの合成
精製後、星型pCBの末端臭素基を、水中のアジ化ナトリウムを伴う求核置換反応によってアジド基に転換した。生成物を透析により精製した。凍結乾燥を用いて水を除去した。次いで、pCB−N
3鎖を、触媒としてのCuBr/PMDETAと共に、メタノール中のアルキン−含有化合物と反応させて、4本のアームを有する星型pCBポリマーを生成した。チオール末端星型pCB(pCB−A)およびマレイミド末端星型pCB(pCB−B)を透析および凍結乾燥による精製後に得た。
【0207】
ゲル化特性のランゲルハンス島フリーアセスメント
37℃で、PBS中のpCB−Bの溶液であって、ポリマーを種々の重量割合で含む溶液にpCB−Aを添加することによりpCBゲルを形成した。例えば、
図3を参照のこと。得られたヒドロゲルを蒸留水で完全に洗浄して未反応のポリマーを除去した。ヒドロゲルのEWCを重量法を用いて37℃で計測した。温度は恒温水浴により±0.1℃の精度で制御した。サンプルを0.1MのPBS緩衝剤溶液(pH7.4)に少なくとも24時間浸漬し、次いで、取り出し、濡れたろ紙で吸い取ることにより表面の水を除去し、微量天秤で計量した。架橋の後、ヒドロゲルをPBS中において24時間制限することなく膨潤させた。
【0208】
pCBヒドロゲル中におけるインビトロランゲルハンス島機能アセスメント
pCBヒドロゲルの生体適合性をインビトロでテストした。pCBヒドロゲル中に内包されたブタ由来のランゲルハンス島の生存率および機能をテストした。加えて、補体系の活性化、リンパ球、単球、血小板およびPMNおよびサイトカイン産生に対するpCBヒドロゲルの阻害効果をテストした。
【0209】
ランゲルハンス島生存率アセスメント
ブタ由来のランゲルハンス島の生存率を、蛍光強度により定量的にモニタリングした。ヒドロゲル−内包ランゲルハンス島またはブタから単離した対照ランゲルハンス島(100のランゲルハンス島/ウェル)を最大で28日間培養し、0.75mg/mLのD−ルシフェリンをランゲルハンス島培地に添加することにより、Xenogenイメージングシステム(Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)を用いて蛍光強度を計測した。ランゲルハンス島生存率はまた、所望の時点でLive/Dead染色を用いて定性的に評価した。Live/Dead染色は、細胞を培養したヒドロゲルを、0.24mMのフルオレセイン二酢酸および7.5mMのヨウ化プロピジウムを含有するPBS中において10分間インキュベートすることにより行った。次いで、ヒドロゲルをPBS中においてすすぎ、蛍光顕微鏡により画像化した(Olympus IX50, Olympus America, Central Valley, PA)。
【0210】
ランゲルハンス島培養中のグルコース消費
培地の交換中に培養培地を48時間毎に回収し、One Touchグルコースメータ(LifeScan, Milpitas, CA)でグルコースレベルを反復してモニタリングし、平均化した。ランゲルハンス島を伴わない対照培地(Ct)を各時点に対する対照として用いた。最初の48時間における、ランゲルハンス島を伴う培地グルコースレベル(I0)およびランゲルハンス島を伴わない培地グルコースレベル(C0)での差(C0−I0)を、各サンプルに係る細胞グルコース消費のベースラインと設定する。ランゲルハンス島を伴うサンプル中のグルコースレベル(It)のその後の変化を以下のとおり算出する:グルコース摂取割合=(Ct−It)*100/(C0−I0)。
【0211】
グルコース刺激インスリンおよびC−ペプチド放出に対する長期応答
上記に定義されているヒドロゲルと一緒に、または、ヒドロゲルを伴わずに培養したランゲルハンス島を培養14日間後に選別し、マイクロチューブ中に収集し(単一のランゲルハンス島/チューブ、6回反復)、3mMのグルコース(低−グルコース培地)を含有し、5%FBSで補足したRPMI−1640培地で3回洗浄した。ランゲルハンス島を、非組織培養コーティングされた96ウェルプレート中において、低−グルコースまたは高−グルコース(17mMグルコース)培地で、16時間培養し、この時点で、上澄培地中のインスリンおよびC−ペプチドの濃度を、ブタインスリンおよびブタC−ペプチドELISAキット(Mercodia, Winston Salem, NC)を用い、製造業者の説明書に従って計測した。
【0212】
洗い流しアッセイによるグルコース刺激インスリン放出に対する短時間応答
ランゲルハンス島を、既述のヒドロゲルと一緒に、または、ヒドロゲルを伴わずに培養した(0日目に200のランゲルハンス島/サンプル)。28日目に、ランゲルハンス島を回収し、ミニカラム中において2層のミクロビーズ(Biorad, Hercules, CA)の間に挟んで保持し、37℃で、クレブスリンゲル緩衝剤により45分間洗い流し、続いて、低−グルコース緩衝剤(3mMグルコース)により10分間、高−グルコース(17mMグルコース)緩衝剤により15分間、最後に、低−グルコース緩衝剤により洗い流した。溶出液を、最初の3mM培地から開始して2分間毎に回収した。実験において回収した培地サンプルまたは溶出液を、ブタインスリン用の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(Mercodia, Winston Salem, NC)を用い、製造業者によるプロトコルに従ってインスリン濃度について分析した。
【0213】
実施例6
代表的な双性イオン性コポリマーヒドロゲル:T細胞内包化
官能性星型pCBポリマーを、ATRP、「クリック」反応および複合化の併用により合成した。この合成は
図7に概略的に図示されている。
【0214】
分子量が異なる二フッ素化シクロオクチン部分(DIFO3)−末端pCBポリマーを合成した。pCBヒドロゲルを、二フッ素化シクロオクチン部分−末端pCB(pCB−A)と生分解性アジド−GG−(KE)
20−GPQGIWGQ−(KE)
20−GG−アジドとを生理学的条件下で混合することにより形成した。機械特性、平衡含水量(EWC)およびヒドロゲルの孔径は、ポリマーの分子量およびポリマーの使用量を調節することにより合わせることが可能である。
【0215】
ATRPを介した星型pCBポリマーの合成
CBMA、2,2’−ビピリジン(bpy)、触媒、四官能性開始剤、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)を10mLの反応管に入れ、混合物を3回の凍結脱気サイクルに供した。この混合物を室温下に20分間静置させ、水およびメタノールを1:1の比で添加した。この反応を攪拌下に室温で8時間継続させた。ポリマー生成物を、アルミナにより処理し、最後に、アセトン中に2回沈殿させることにより精製した後に回収した。ポリマーの分子量は、モノマーと開始剤との化学量論比に合わせることが可能である。5000、20000および50000の重量平均分子量を有する星形ポリマーを合成した。可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)などの他のリビング重合方法もまた、ポリマーの合成に適用することが可能である。
【0216】
クリックケミストリーを介した官能性星型pCBポリマーの合成
精製後、星型pCBの末端臭素基を、水中のアジ化ナトリウムを伴う求核置換反応によってアジド基に転換した。生成物を透析により精製した。凍結乾燥を用いて水を除去した。次いで、pCB−N
3鎖を、触媒としてのCuBr/PMDETAと共に、メタノール中のアルキン−NH
2化合物と反応させて、4本のアームを有する星型pCBポリマーを生成した。アミン−末端星型pCBを透析および凍結乾燥による精製後に得た。入手したポリマーを、EDC/NHS反応を介してDIFO3とさらに反応させ、得られるポリマーを透析および凍結乾燥による精製後に得た。
【0217】
ヒドロゲルゲル化特性のアセスメント
37℃で、PBS中の前述のペプチドの溶液であって、ポリマーを種々の重量割合で含む溶液にDIFO3−末端pCBを添加することによりpCBゲルを形成した。得られたヒドロゲルを蒸留水で完全に洗浄して未反応のポリマーを除去した。ヒドロゲルのEWCを重量法を用いて37℃で計測した。温度は恒温水浴により±0.1℃の精度で制御した。サンプルを0.1MのPBS緩衝剤溶液(pH7.4)に少なくとも24時間浸漬し、次いで、取り出し、濡れたろ紙で吸い取ることにより表面の水を除去し、微量天秤で計量した。架橋の後、ヒドロゲルをPBS中において24時間制限することなく膨潤させた。
【0218】
pCBヒドロゲルにおけるインビトロT細胞内包化および生存率テスト
pCBヒドロゲルの生体適合性をインビトロでテストした。ヒト末梢血CD4
+CD45RA
+T細胞を、ゲル化プロセスにおいて混合溶液中に添加した。T細胞内包ヒドロゲルを入れ、RPMI−1640培地+10%ウシ胎児血清中で培養した。7日間の培養後、ヒドロゲルをMMPタンパク質により溶解し、細胞を遠心分離により収集した。pCBヒドロゲル中に内包されたT細胞の生存率をトリパンブルーによりテストした。略100%の生存率が全培養プロセスにおいて見いだされた(
図8を参照のこと)。
【0219】
例示的実施形態を例示し記載したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことが可能であることが認識されるであろう。
【0220】
排他的な特性または特権が特許請求される本発明の実施形態を特許請求の範囲に定義する。