特許第6709810号(P6709810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709810
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】低誘導性ハーフブリッジ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-20780(P2018-20780)
(22)【出願日】2018年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-130015(P2018-130015A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2018年4月11日
(31)【優先権主張番号】17155207.8
(32)【優先日】2017年2月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス フュルスト
(72)【発明者】
【氏名】マルヴィン タンハウザー
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−087252(JP,A)
【文献】 特表2016−503963(JP,A)
【文献】 特開2014−054103(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/113979(WO,A1)
【文献】 特開2015−226438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのスイッチ素子(T,T)と、中間回路コンデンサ素子(Cと、回路基板(8)とを有し、前記回路基板(8)により前記スイッチ素子(T,T)と前記中間回路コンデンサ素子(Cとが接続されてハーフブリッジを構成している、コンバータ用のハーフブリッジ装置であって、
前記回路基板(8)が、絶縁体(21)によって絶縁されて重ね合わされた少なくとも4つの導体路層(11,12,13,14)を有し、該導電路層(11,12,13,14)は、最上層の第1導体路層(11)が正電位(DC+)、その下の第2導体路層(12)が負電位(DC−)、その下の第3導体路層(13)が正電位(DC+)、最下層の第4導体路層(14)が負電位(DC−)にそれぞれ置かれ、
前記中間回路コンデンサ素子(C)を構成する2つのコンデンサ素子(C11,C12)が設けられ、
前記2つのスイッチ素子(T,T)のうちの第1スイッチ素子(T)及び前記2つのコンデンサ素子(C11,C12)のうちの第1コンデンサ素子(C11)が前記第1導体路層(11)上に配置されると共に、前記2つのスイッチ素子(T,T)のうちの第2スイッチ素子(T)及び前記2つのコンデンサ素子(C11,C12)のうちの第2コンデンサ素子(C12)が前記第4導体路層(14)上に配置され、
前記第1スイッチ素子(T)のソース(S)と前記第2スイッチ素子(T)のドレイン(D)とがコネクタ(6)により接続され、
前記第1〜第4導体路層(11,12,13,14)の間を適宜接続する別の複数のコネクタ(6)が設けられており、
転流事象中に前記回路基板(8)内に少なくとも2つの反対向きの双極子(δ,δが生じるように、前記第1導体路層(11)上の前記第1スイッチ素子(T)及び前記第1コンデンサ素子(C11)と、前記第4導体路層(14)上の前記第2スイッチ素子(T)及び前記第2コンデンサ素子(C12)とが配置されている、ハーフブリッジ装置。
【請求項2】
前記第1〜第4導体路層(11,12,13,14)を通じて転流事象中に少なくとも4つの並列の転流回路(KK,KK,KK,KK)が生じ、
そのうちの第1の転流回路(KK)において電流は、前記第1コンデンサ素子(C11)の負側の極から、前記第2導体路層(12)を経て前記第2スイッチ素子(T)のソース(S)へ向かい、そして該第2スイッチ素子(T)のドレイン(D)から前記第1スイッチ素子(T)のソース(S)へ向かい、該第1スイッチ素子(T)のドレイン(D)を経て前記第1コンデンサ素子(C11)の正側の極へ戻る、請求項1に記載のハーフブリッジ装置。
【請求項3】
前記転流回路(KK,KK,KK,KK)のうちの第3の転流回路(KK)において電流は、前記第1スイッチ素子(T)のドレイン(D)からソース(S)を経て前記第2スイッチ素子(T)のドレイン(D)へ向かい、そして該第2スイッチ素子(T)のソース(S)から前記第2コンデンサ素子(C12)を通り、第1導体路層(11)を経て前記第1スイッチ素子(T)のドレイン(D)へ戻る、請求項2に記載のハーフブリッジ装置。
【請求項4】
ドライバ素子(TR,TR)を有し、該ドライバ素子(TR,TR)の主電流のドライバ電流方向(19)が転流事象中の主電流の転流電流方向(18)に対し交差するように、前記ドライバ素子(TR,TR)が配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハーフブリッジ装置。
【請求項5】
ハーフブリッジの中間タップが前記回路基板(8)の面積の5%よりも小さく形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハーフブリッジ装置。
【請求項6】
前記導体路層(11,12,13,14)の銅充填率を高めることにより放熱効果を向上させてある請求項1〜5のいずれか1項に記載のハーフブリッジ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハーフブリッジ装置を有するコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのスイッチ素子とコンデンサ素子と回路基板とを用いて構成され、回路基板によりスイッチ素子とコンデンサ素子とが接続されてハーフブリッジを形成しているコンバータ用ハーフブリッジ装置に関する。さらに、本発明はこのようなハーフブリッジ装置を有するコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
ハーフブリッジはパワーエレクトロニクスにおける基本構成要素である。ハーフブリッジは、例えば多くの場合に、アップ(昇圧)型、ダウン(降圧)型、そして電流型及び電圧型のコンバータ接続形態で使用される。図1に、従来技術に係る駆動部付きハーフブリッジ装置の回路図が示されている。このハーフブリッジ装置は、2つのスイッチ素子T,Tを有し、これらスイッチ素子は、いずれも並列のフリーホイールダイオードを有するMOSFETとして実現されている。両スイッチ素子は、接続点1において互いに接続されており、この接続点1に通常は出力電圧(一般的には交流電圧AC)が生じる。この例では、第1スイッチ素子TのソースSが第2スイッチ素子TのドレインDに接続点1を介して接続されている。第1スイッチ素子TのドレインDは、通常は正の直流電位DC+にあって、中間回路コンデンサ素子Cの一方の極に接続されている。同様にこの例では、第2スイッチ素子TのソースSが負の直流電位DC−にあって、中間回路コンデンサ素子Cの他方の極に接続されている。
【0003】
第1スイッチ素子TのゲートGは第1ドライバTRの出力端に接続されている。第1ドライバTRの電源端子には、第1電源電圧Vccを供給するコンデンサCが接続されている。第1ドライバTRは、基準電位を第1スイッチ素子TのソースSから得ている。
【0004】
同様に、第2スイッチ素子Tは第2ドライバTRと接続されている。第2ドライバTRの出力端は、第2スイッチ素子TのトランジスタのゲートGに接続されている。第2ドライバTRの電源端子は、第2電源電圧Vccを供給するコンデンサCに接続されている。第2ドライバTRの基準電位は、ここでも先と同様に、第2スイッチ素子TのソースSである。
【0005】
ハーフブリッジのスイッチング特性にとって転流回路内の寄生インダクタンスが重要である。転流回路とは、ある1つのスイッチング過程において電流が変化する電流回路のことである。この転流回路KKが図1に示されており、スイッチ素子T,T及びコンデンサ素子Cを通る回路である。寄生インダクタンスは、第1ドライバTRのある第1駆動回路AK及び第2ドライバTRのある第2駆動回路AKによって生じる。各駆動回路AK,AKは、ソースS及びゲートGを経て、それぞれのドライバTR,TRの出力端へ延び、且つそれぞれの電源端子を経てそれぞれのコンデンサC,Cへ延び、ソースSに戻る。
【0006】
パワーエレクトロニクスでは、スイッチング周波数が高められる傾向にある。それによって、多くの回路において受動部品(インダクタンス及びキャパシタンス)を小形化することができる。しかし、受動部品において、(電流又は電圧が零でない、まさに「ハード」なスイッチングの場合には)大きなスイッチング損失が生じる。すなわち、周波数の上昇に伴って、より多くのスイッチング操作が行われるからである。スイッチング損失は、スイッチング電流と、スイッチング電圧と、スイッチング時間とに比例する。システムに対する要求が同じ場合(電流及び電圧が固定の場合)、スイッチング損失は、より急峻なスイッチングエッジによって低減することができる。電流及び電圧のより急峻な立ち上がりもしくは立ち下り時間は、回路内に過電圧を生じさせ、そしてノイズ耐性に関する追加的な負担を生じさせる。この場合に、図1に示した転流回路KK及び駆動回路AK,AKにおける漏れインダクタンス又は寄生インダクタンスは、非常に大きな影響を及ぼす。
【0007】
高出力(大電流)の場合には、通常の回路構造と比べて銅の層厚が明らかに高められている、いわゆる厚銅回路基板が使用される。大きな銅断面積と導電路縁部の自然の傾斜とに基づいて部品距離が長くなり、その結果、電流路のインダクタンスが大きくなる。したがって、高出力の場合と高周波数の場合とで相反する目標設定が生じる。
【0008】
さらに、パワー半導体の場合には、スイッチング損失及び導通状態損失が熱の態様で発生する。この熱を放散することは、半導体の熱放散によって半導体を十分に利用できるようにするために重要である。
【0009】
上述した問題は、様々なアプローチで最小化される。しかし、ほとんどの場合に各問題に対し個別に取り組みが行われることから、各問題が相反する結果を招く。例えば、放熱のために、図2及び図3に示すようないわゆるモジュールが使用される。この例では、パワー半導体、すなわちスイッチング素子T,Tが、DCB(Direct Copper Bonding:直接銅接合)基板2に実装されている。DCB基板2自体は、多くの場合アルミニウム基板3に固定される。アルミニウム基板3の反対側には冷却体(ヒートシンク)4が配置されている。スイッチング素子T,Tは絶縁体5中に封じ込められており、絶縁体を貫いてコネクタ6が突出する。したがって、アルミニウム基板3と、DCB基板2と、封止されたスイッチ素子T,Tと、コネクタ6を有する絶縁体層5とによって、モジュール7が構成される。冷却体4の反対側で、モジュール7は回路基板(プリント基板)8に実装される。コネクタ6が、スイッチ素子T,Tから回路基板8への電気接続部である。回路基板8の反対側には、中間回路コンデンサ素子CとドライバTR,TRとを配置することができる。
【0010】
図2では、駆動回路AK,AKが、主として内側にあるコネクタ6の間及びDCB基板2と回路基板8との間に生じることが示されている。これに対して図3では、外側にあるコネクタ6の間及びDCB基板2と回路基板8との間に転流回路KKが生じることが示されている。駆動回路AK,AK及び転流回路KKの漏れインダクタンスを最適化することが容易にはできない。これは、当該インダクタンスがモジュール7に支配されるからである。それ故、この構造は一般に高いスイッチング周波数用には適していない。
【0011】
他のアプローチでは、例えばTHT部品(THT=through-Hole-Technology:スルーホール実装技術)及びSMD部品(SMD=Surface Mounted Device:表面実装デバイス)のようなディスクリート部品を用いる構造がある。THT半導体の場合には、モジュール構造の場合と同様に低誘導性の接続が限られた範囲でしか可能とならない。この構造の場合にも冷却体への接合を条件とするとよい。しかし、それにより高い周波数は殆ど実現されず、したがってここではさらに詳しく述べることはしない。
【0012】
回路基板上のSMD構造は、高い周波数に関して多くの最適化可能性をもたらす。図4及び図5と関連させて、よく使用される2つの構造、すなわち片面実装と両面実装とを説明する。図4に片面実装の例が示されている。この例では全ての部品T,T,TR,TR,C,C,Cが1つの回路基板(図示されていない)の片側に配置されている。駆動回路AK,AK及び転流回路KKは一平面内にある。この場合、漏れインダクタンスに関する最大最適化はディスクリート部品のサイズ次第である。パワーエレクトロニクス装置における放熱は、この例の場合には実現困難である。
【0013】
図5に示す両面実装の例は、ほぼ図4の場合と同じ駆動部を使用するが、3つの主要部品T,T,Cのうちの1つが回路基板8の裏側にある点で異なる。転流回路KKは、図5から分かるように、回路基板8の厚さ(例えば、1.6mm)に依存する。しかし、この構造の場合にも上側スイッチ素子Tの放熱が非常に困難である。ほとんどのディスクリートのパワー半導体が放熱用パッドをソース電位に適用してあり、その放熱用パッドが、ノイズ耐性の理由から、できるだけ小さくされなければならないからである。
【0014】
場合によって生じ得る漏れインダクタンスLは、次の式により評価することができる。これにより構造の質的な改善を達成することができる。式[1]は、図6に示す通りの1つの導体9の場合に関係する。式[2]は、図7に示す通りの互いに反対の通電方向をもつ2つの導体9,10が向かい合っている場合に関係する。導体9,10の各幾何学的寸法t,w,l、そして間隔hは、図6及び図7中に記載されており、式[1]及び[2]において使用されている。
【数1】
【0015】
ハーフブリッジにおける損失への転流インダクタンスの影響は、図8において考察することができる。ここには、漏れインダクタンスLに対する電力損失PVの変化が示されている。漏れインダクタンスLが高まるに従って電力損失PVが増大する。スイッチング周波数及び電流が高くなると、この影響、すなわちハーフブリッジ構成における主損失成分が目立つ。当該事項に関しては、非特許文献1,2に詳しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Power Supply Design Seminar 2004/2005,T1[2016年6月改訂], http://www.ti.com/lit/ml/slup224/slup224.pdf で入手可能
【非特許文献2】Efficient Power Conversion Corporation “EPC2015-Enhancement-mode Power Transistor”,EPC2015 datasheet,March 2011[2016年6月改訂],http://www.epc-co.com/epc/DesignSupport/ApplicationNotes/AN003-UsingEnhancementMode.aspx で入手可能
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上の背景に鑑みて本発明の課題は、スイッチング事象の影響を受け難いハーフブリッジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、本発明によれば、請求項1に記載のハーフブリッジ装置によって解決される。本発明の有利な態様が引用形式請求項に記載されている。
【0019】
本発明によれば、2つのスイッチ素子と、コンデンサ素子と、回路基板とを用いて構成され、回路基板によりスイッチ素子とコンデンサ素子とが接続されてハーフブリッジを構成する、コンバータ用のハーフブリッジ装置が提供される。このハーフブリッジ装置は、基本的にはコンバータ以外の他の目的にも使用することができる。2つのスイッチ素子にはIGBTを使用可能である。ただし、他のパワースイッチも使用できる。コンデンサ素子は、エネルギ蓄積又はエネルギ中間蓄積のために使用されるものでおり、通常は中間回路(DC-link)コンデンサ素子として実現されている。2つのスイッチ素子は、通例の通り回路基板に配置されて、ハーフブリッジを構成するように相互接続されており、該ハーフブリッジがコンデンサ素子に接続されている。
【0020】
回路基板は少なくとも4つの導電路層を有する。これによって、転流事象中、回路基板の内部に、回路基板の主表面に対し垂直方向の電流ループが形成される可能性が開かれる。一方又は両方のスイッチ素子のスイッチング状態が変化する転流事象の際に少なくとも1つの転流回路が生じ、この転流回路の寄生インダクタンスがハーフブリッジ装置のスイッチング特性にとって重要である。有利な態様では、1つの転流事象に際して回路基板内に少なくとも2つの反対向きの双極子が生じるように、スイッチ素子とコンデンサ素子とが回路基板に配置されて、導電路層により接続される。この場合は2つの並列の転流回路が生じ、各転流回路の電流が反対向きの双極子を生じさせる。双極子が反対に向けられていることによって、その作用は互いに弱められ、その結果として、ハーフブリッジ装置のスイッチング特性が改善される。
【0021】
ハーフブリッジ装置は、好適には、回路基板に対称的に配置された2つのコンデンサ素子又はその他の偶数のコンデンサ素子を有する。この種の対称的な配置によって、1つの転流事象の際に、すなわち1つの転流時に、同じ大きさの反対向きの双極子が生成される。
【0022】
このコンデンサ素子とスイッチ素子とは、回路基板の両面に配置することができる。この態様は、例えば構成要素の点対称配置が達成できるという利点を有する。このような配置の場合には、同時に回路基板の両面において十分な冷却面を提供することができる。
【0023】
1つの転流事象の際に2つずつの反対向きの双極子が2つの異なる空間方向において生じるように、スイッチ素子とコンデンサ素子とが配置されて接続されているとよい。ハーフブリッジ装置の構造に関し、双極子のために、唯一の空間方向ではなくて、互いに異なっていて同一の方向ではない少なくとも2つの異なる空間方向が利用される。反対向きの双極子のそれぞれについて、一方の双極子が向けられた空間方向に対し、他方の双極子は反対の向きにされる。同じことが少なくとも1つの他の空間方向に対して当てはまる。
【0024】
具体的な態様では、回路基板が4つの導電路層を有し、転流事象の際に少なくとも4つの並列な転流回路が生じ得るようにする。ハーフブリッジ装置の全体の寄生インダクタンスをできるだけ僅かにすることが目標である。転流回路が互いに並列に接続されるので、転流回路の少なくとも1つが非常に僅かなインダクタンスを有することで利点を得られる。その場合に結果として生じる総インダクタンスは、最小の個別インダクタンスよりも小さい。この目標は、転流回路を多く使用できるほど、より簡単に達成することができる。したがって、4つよりも多い転流回路が生じ得るように4つよりも多い導電路層を有する回路基板をもったハーフブリッジ装置を実現することもできる。
【0025】
転流回路は互いに対称的に配置されていることが好ましい。この態様によれば、場合によっては転流電流が互いに打ち消し合い、ノイズ放射の低減という結果をもたらす。
【0026】
他の態様では、ハーフブリッジ装置がドライバ素子を有し、このドライバ素子は、ドライバ素子の主電流のドライバ電流方向が、転流事象の際の主電流の転流電流方向に対して交差するように配置されている。この態様によれば、駆動回路、具体的にはドライバ素子が、転流回路、具体的には転流回路のスイッチ素子に、簡単に結合してハーフブリッジ装置のスイッチング特性を変化させることを防止することができる。さらに詳しく言えば、ドライバ電流方向と転流電流方向とを交差配置とすることによって、当該回路の電流を互いにほとんど干渉させないことが達成される。
【0027】
他の有利な態様では、ハーフブリッジの中間タップが、できるだけ小さく、具体的には回路基板の面積の5%よりも小さく形成される。ハーフブリッジの中間タップは、通例は交流電圧を供給する。したがって、中間タップができるだけ小さく形成されていれば、他の要素への結合が減少することから、ハーフブリッジ装置全体のノイズ耐性が高められる。
【0028】
導電路層は、それぞれできるだけ高い銅充填率をもっているのがよい。これによりハーフブリッジ装置の放熱に関して利点がもたらされる。すなわち、絶縁体に加えて殊に銅が放熱に利用され、後者が非常に高い熱伝導率をもつ。
【0029】
有利な用途として、上述のハーフブリッジ装置を備えたコンバータが提供される。コンバータでは転流事象が絶えず発生する。したがって、スイッチング特性が寄生インダクタンスによってできるだけ影響されないようにすることがまさに必要である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に示す図面に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
図1】従来技術に係る駆動部付きハーフブリッジの回路図。
図2】従来技術に係る駆動回路を有するハーフブリッジモジュールの基本的断面図。
図3】転流回路を備えた図2相当の断面図。
図4】従来技術に係る片面実装の場合の駆動回路及び転流回路の概略図。
図5】従来技術に係る転流回路を有する両面実装ボードの断面図。
図6】漏れインダクタンスを算定するための個別導電体の概略図。
図7】漏れインダクタンスを算定するための2つの平行な導電体の概略図。
図8】従来技術に係る転流インダクタンスの損失への影響を示す図。
図9】本発明に係るハーフブリッジ装置用の回路基板の複数の導電路層を示す図。
図10】駆動回路の断面図。
図11】第1転流回路を有するスイッチ素子に沿った回路基板の断面図。
図12】第2転流回路を有する図11相当の断面図。
図13】第3転流回路を有する図11相当の断面図。
図14】第4転流回路を有する図11相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下において詳細に説明する例は、本発明の好ましい実施形態である。個々の特徴は、説明されている組み合わせに限らず、単独の状態でも又は技術的に有意義な他の組み合わせでも実現できることは、当然理解される。
【0032】
ここに示す例は、とりわけコンバータにおいて使用されるハーフブリッジ装置に関する。個々の要素は所望の出力に応じて設計される。
【0033】
要素の配置とボードつまり回路基板8の構造が特に注目に値する。構成要素は、ここでは特に、複数のドライバ要素とコンデンサ素子の1つ又は複数の要素とを含んだハーフブリッジ自体の要素である。
【0034】
図9には、最適な回路基板の4つの導電路層11,12,13,14が示されている。各層は、相応の導体層又は銅層である。一例として、第1層11及び第3層13が正電位DC+に置かれ、第2層12及び第4層14が負電位DC−に置かれる。図9には導電路層11〜14に加えて、これら導電路層に直接的に付随する構成要素と、コネクタ(加圧接触部、ビアホール)6とが示されている。個々の層11〜14を互いに積み重ねることによって、図10及び図11に示す断面をもった回路基板装置、すなわちハーフブリッジ装置がもたらされる。
【0035】
4つの層11,12,13,14はそれぞれ、この例では矩形に示されている主要部分15を有し、該主要部分の長手方向16が、スイッチ素子T,Tの直列配置の方向に対して平行に延びている。そして注目すべきは、スイッチ素子T,Tが回路基板8の異なる側にあることである。この例では中間回路コンデンサ素子が2つのコンデンサ素子C11,C12によって構成されている。これら2つのコンデンサ素子も回路基板8の異なる側にある(図11参照)。当該配置では、2つのコンデンサ素子C11,C12がスイッチ素子T,Tの直列接続と同一の線上に、すなわち長手方向16に対して平行に存在する。図11図14に示した回路基板装置の断面は、長手方向16に対して平行に延びている。
【0036】
各導電路層11〜14における各主要部分15の長手側面にはドライバ部分17がある。このドライバ部分17は、各駆動回路、すなわち駆動回路AK,AKの構成要素(図1参照)の電気接触のために使用される。例えば、第1層11及び第2層12のドライバ部分17が、ドライバTR及びコンデンサCを、付属のスイッチ素子Tに接続する。同様にして、第3層13及び第4層14のドライバ部分17が、ドライバTR及びコンデンサCを第2スイッチ素子Tに接続する。さらに個々の層について、スイッチ素子T,Tの接触のためのいわゆるパッドを確認できる。特にスイッチ素子T,TのドレインD、ソースS及びゲートGのためのパッドが示されている。
【0037】
第3層13については、長手方向16に対して平行に延びている転流電流方向18が示されている。この転流電流方向18に沿って、転流電流が構成要素T,T,C11,C12を通って流れる。転流電流方向18の双方向矢印によって、転流電流が長手方向16の逆にも流れ得ることが示されている。
【0038】
長手方向16に対して交差する方向にドライバ電流方向19が生じる。つまり、ドライバ電流の主電流方向はドライバ電流方向19に相当する。ここでも双方向矢印で示すように、ドライバ電流は互いに逆向きの双方向に流れ得る。ドライバ電流方向19と転流電流方向18とが互いに直交するという、すなわち駆動経路が転流経路に対して交差方向にあるという特徴は、強調されるべき特徴である。これによって両電流は、したがってそれらの磁場(Hフィールド)も、ほぼ互いに直交する方向に向くので、これらは互いにほとんど干渉しない。その結果、ハーフブリッジ装置のノイズ耐性が増大する。
【0039】
上述のごとく、一方のスイッチ素子Tはドライバ素子TR,Cと共に回路基板8の一方の面、例えば上面にあり、他方のスイッチ素子Tはドライバ素子TR,Cと共に回路基板8の他方の面、例えば下面にある。その結果、スイッチ素子と対応するドライバ素子とは熱的に減結合されている。放熱は、それぞれ空きエリア20を介して行われる(図10及び図11参照)。当該エリアを介した放熱は、各銅層の厚さ及び内層の銅充填率によって増大させることができる。この種の放熱は、一般に回路基板8の絶縁体21を介する放熱よりも効率的である。この場合には、ドレイン接続部に「サーマルパッド」を有するスイッチ素子を使用することが好ましい。この「サーマルパッド」は、ゲートG及びソースSのための他の接続部に比べて大きく形成される。さらに、例えばDC+、DC−、DC+、DC−というように、個々の層11〜14の電位が交互に現れるのが好ましい。
【0040】
図10には、完成した導電路装置、つまりハーフブリッジ装置のドライバ電流方向に沿った断面図が示されている。個々の導電路層11〜14は、重ね合わされて配置されており、絶縁体21によって絶縁されて、本例では4層の回路基板8を形成している。第1導電路層11の直ぐ上に構成要素T,TR,Cがあり、第4導電路層14の直ぐ下に構成要素T,TR,Cがある。コネクタ(スルーホール接続部)6が、スイッチ素子TのソースSをスイッチ素子TのドレインDに接続する。別のコネクタ6が、第1導電路層11と第2導電路層12との間、及び、第3導電路層13と第4導電路層14との間に示されている。
【0041】
図10から、スイッチ素子T,Tの駆動回路の具体的構造を理解することができる。それぞれの側の最外層にゲートGが接続され、その下にある層が、各スイッチ素子T,Tの平面状の無負荷ソース接続部に戻される。この形態によって駆動回路インダクタンスが低減されると共に、付加的にノイズ耐性も高められる。
【0042】
図11図14には、回路基板装置、すなわちハーフブリッジ装置の転流方向18、すなわち長手方向16に平行な断面図が概略的に示されている。ここでは、特に個々の構成要素T,T,C11,C12の点対称配置を確認できる。この点対称によって、各転流回路に関して特別な条件が生じる。これらの転流回路が図11図14に例示されている。これら転流回路は、1つの転流事象の際に、すなわちスイッチ素子T及びスイッチ素子Tの一方又は両方のスイッチング状態の変化の際に、同時に発生する。
【0043】
図11には第1の転流回路KKが示されている。当該転流回路は、第1導電路層11においてコンデンサ素子C11(中間回路コンデンサ素子Cの一部)から出発し、第2導電路層12とコネクタ6とを経てスイッチ素子TのソースS(第4導電路層14)に向かい、それからスイッチ素子TのドレインDに向かい、さらにコネクタ6を経てスイッチ素子TのソースSからドレインD(第1導電路層11)に向かい、そしてコンデンサ素子C11の他方の極に戻る。この場合の電流経過に関して、反対方向に向いた2つのループが生じる。この結果として、「右手の法則」に従って双極子δと反対向きの双極子δとが生じる。したがって、第1の転流回路KKの2つの双極子の作用は、それらの正反対の方向に基づいて減少する。
【0044】
これに対して対称的な、同様の転流回路KKが、図12に示されているように、対称的に配置された第2スイッチ素子Tと中間回路コンデンサ素子Cをなす対応コンデンサ素子C12とによって生じる。同様にしてこの場合にも正反対の双極子δ及びδが生じる。
【0045】
図13に示されているように第3の転流回路KKが生じる。この転流回路は、ここではスイッチ素子T(第1導電路層11)のドレインDからソースSを経てさらにスイッチ素子T(第4導電路層14)のドレインD及びソースSに向かい、続いてコンデンサ素子C12(第4導電路層14)を通って第1導電路層11を介し、スイッチ素子TのドレインDに戻る。相応のループ循環によってここでも2つの正反対の双極子δ及びδが生じる。
【0046】
これと同様に図14に従って、第4の転流回路KKが対称配置に基づいて生じ、この転流回路は、スイッチ素子TのソースSから出発し、ドレインDを経てさらに先へと経路を辿る。
【0047】
内層の利用によって、上記転流経路は平面状態で互いにそばを通り過ぎ、このことが当該転流経路のインダクタンスを最小限にする。さらに、図11図14に示されているように、並列の転流回路KK〜KKが形成され、このことが各インダクタンスの並列接続をもたらし、したがって総インダクタンスの更なる低減をもたらす。この構想は、任意にさらに別の内層によって拡張することができ、したがって転流経路におけるインダクタンスの一層の低減をもたらす。
【0048】
ここに示す例における注目点は転流回路の対称性にある。これによって、転流電流が付加的に互いに打ち消し合い、回路全体の少ないノイズ放射がもたらされる。
【0049】
ハーフブリッジの中間タップ(図9の第3導電路層13に「AC」で示されている)の遮蔽に関して、他の特徴がもたらされる。この中間タップは「固定」の中間回路電位に対して振動する。したがって、この中間タップはできるだけ小さくされ、このことが小さい寄生キャパシタンスをもたらし、したがって少ないノイズをもたらす。この場合に、次のことを強調することができる。すなわち、その完成した接続部が、当該形態によってEMC(電磁両立性)の観点から最適に遮蔽されているということである(その上の第2導電路層12及びその下の第4導電路層14参照)。
【0050】
本例の回路の受動的な放熱のための好ましい配置として、垂直実装形態が推奨される。これによると、回路基板8の両面で放熱することができる。
【0051】
本例に示された構造は、1つのドライバを備えた並列の数個のスイッチ素子の(特にSi基板のGaN系スイッチ素子の)接続のためにも使用することができる。これらスイッチ間の熱結合は非常に重要である。すなわち、スイッチ間の対称的な電流分配が達成される。
【0052】
上述のハーフブリッジ装置の長所は、ハーフブリッジ構成要素の特殊な幾何学的配置にある。多層回路基板の使用と対称性の考慮とにより、非常に低いインダクタンスの構造がもたらされる。付加的に回路基板での受動的な放熱のための解決策が示されており、これによって追加的な冷却は必要としない。他の好ましい特徴は、最適化されたEMC特性(電磁両立性)にあり、この特性は高速スイッチング素子(Si基板−GaN系又はSi−C系)にとって非常に重要である。
【0053】
並列の転流経路に基づく低インダクタンス構造により特別な利点がもたらされる。その結果は、開閉サージ電圧及びスイッチング損失の低減をもたらす。さらにスイッチング周波数の増大が可能であり、より多くの内層によってさらにインダクタンスを低減することができる。
【0054】
ノイズ耐性に関して言及すると、有利なことに、必要とする外部接続回路が少なく、高いスイッチング速度及びスイッチング周波数が可能であり、EMC負担が少ない。EMC負担が少ないことは、特に中間タップの遮蔽と、転流回路及び駆動回路の磁場打ち消し(交差配置)と、並列の転流回路の磁場が互いに打ち消し合うという事実(対称構造)とからもたらされる。
【0055】
他の利点は、インダクタンスが基板の厚さに関係しないことにある。特に、銅縁部における傾斜形状に起因して構成要素を互い離さなければならない厚い層厚の場合にも、低いインダクタンスがもたらされる。結局、上述のハーフブリッジ装置においては、最適化された放熱が可能となる。したがって、回路基板に関する改善された放熱と両面放熱を達成することができる。
【符号の説明】
【0056】
6 コネクタ
8 回路基板(プリント基板)
11 第1導電路層
12 第2導電路層
13 第3導電路層
14 第4導電路層
15 主要部分
16 長手方向
17 ドライバ部分
18 転流電流方向
19 ドライバ電流方向
20 空きエリア
21 絶縁体
AK,AK 駆動回路
,C11,C12 中間回路コンデンサ素子
,C コンデンサ
KK 転流回路
KK〜KK 転流回路
,T スイッチ素子
TR,TR ドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11
図12
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図14