特許第6709814号(P6709814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709814
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】高分解能X線回折方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/207 20180101AFI20200608BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20200608BHJP
   G21K 1/06 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   G01N23/207
   G01N23/20008
   G21K1/06 G
   G21K1/06 B
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-41370(P2018-41370)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-173403(P2018-173403A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】62/469,244
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503310327
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ミレン ハテシキ
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ベッケルス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデル カルチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】ユージン リューヘカンプ
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−078835(JP,A)
【文献】 特開2003−014894(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/002037(WO,A1)
【文献】 特開2006−126150(JP,A)
【文献】 特開2004−117343(JP,A)
【文献】 特開2000−338060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
G21K 1/00− 7/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
J−STAGE
KAKEN
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折装置であって、
X線ビームを放射する原子番号Zが50未満のターゲットを有するX線源と、
エネルギー分解X線検出器と、
前記X線源からのX線ビームが試料に入射し、前記X線検出器上に回折するように前記試料を保持する試料ホルダーとを有し、
前記X線回折装置はさらに、前記X線源からのKベータ放射を選択し、前記Kベータ放射を前記試料上に反射するKベータ放射多層ミラーを有
前記X線検出器のエネルギー分解能は、Kアルファ放射に対する感度より少なくとも10倍のKベータ放射に対する感度を伴い、前記X線源からのKベータ放射を選択するのに十分である、
X線回折装置。
【請求項2】
前記試料ホルダーは、前記X線源からのX線ビームが前記試料を通り、前記X線検出器上に回折されるように、透過型ジオメトリで前記試料を保持するように構成される、
請求項1に記載のX線回折装置。
【請求項3】
前記試料ホルダーは粉末を保持する毛細管を前記試料として保持するように構成される、
請求項1または2に記載のX線回折装置。
【請求項4】
前記Kベータ放射多層ミラーは、回折ビームを前記エネルギー分解X線検出器上にフォーカスするように構成されたフォーカシング多層ミラーである、
請求項1ないし3いずれか一項に記載のX線回折装置。
【請求項5】
前記Kベータ放射多層ミラーとエネルギー分解X線検出器との組み合わせは、Kベータ放射に対するKアルファ放射の測定強度を少なくとも1/1000に減衰するのに十分である、
請求項1ないし4いずれか一項に記載のX線回折装置。
【請求項6】
前記Kベータ放射多層ミラーの後段のビーム経路にあるコンポーネントは、前記試料ホルダーの試料と、前記エネルギー分解X線検出器のみである、
請求項1ないしいずれか一項に記載のX線回折装置。
【請求項7】
前記Kベータ放射多層ミラーは単なるモノクロメータである、
請求項1ないし6いずれか一項に記載のX線回折装置。
【請求項8】
前記X線検出器はピクセル配列を有する、
請求項1ないし7いずれか一項に記載のX線回折装置。
【請求項9】
前記ターゲットの原子番号Zは30未満である、
請求項1ないしいずれか一項に記載のX線回折装置。
【請求項10】
X線回折の方法であって、
原子番号Zが50未満のターゲットを有するX線源からX線ビームを発生することと、
前記X線源からのKベータ放射を選択し、前記Kベータ放射を試料上に反射するKベータ放射多層ミラー上にX線ビームを向けることと、
X線が前記試料上に回折するように前記Kベータ放射を試料に向けることと、
エネルギー分解X線検出器を用いて回折X線を測定することとを含
前記エネルギー分解X線検出器によりKアルファ放射に対してKベータ放射を選択することをさらに含み、前記エネルギー分解X線検出器は、Kアルファ放射に対する感度より少なくとも10倍高いKベータ放射に対する感度を有する、
X線回折の方法。
【請求項11】
前記試料は、前記X線源からのX線ビームが前記試料を通り、前記X線検出器上に回折されるように、透過型ジオメトリで保持される、
請求項10に記載のX線回折の方法。
【請求項12】
前記試料は粉末試料である、
請求項10ないし11いずれか一項に記載のX線回折の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、K−ベータ放射ミラーおよび高エネルギー分解能検出器を使用するX線回折(XRD)のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線回折による試料、特に粉末試料の分析は、試料の組成を決定する非常に有用な技術である。
【0003】
X線回折は、典型的には、所定の単一元素のターゲットを使用するX線源から放出される放射線を使用する。ターゲットには、コバルト、クロム、銅、モリブデン、および銀が含まれる。
【0004】
かかるターゲットにより放射されるX線は、完全に単色ではなく、各ターゲットは連続的な制動放射スペクトルに加え、多数のラインの放射線を放射する可能性がある。特に、複数のターゲットは、Kラインの放射線を放射することができる。KラインはKアルファラインとKベータラインとに分割できる。
【0005】
一般的には、KベータラインよりKアルファラインでより大きなエネルギーが放射され、X線は多くの場合、Kアルファラインを選択するモノクロメータまたはベータ放射フィルタを通り、KアルファラインがX線回折測定に利用される。
【0006】
十分なエネルギー分解能があると、Kアルファラインは実際には二重線であり、2つのラインすなわちKアルファ1ラインとKアルファ2ラインに分解され、強度比は約2:1である。したがって、高分解能X線回折測定の場合には、これらのラインの1つを選択して、利用されるX線が十分に単色であるようにするモノクロメータを利用する必要がある。ブラッグ反射が用いられ得る。
【0007】
X線回折測定に必要な非常に高いアライメント精度を考慮すると、アライメントされる必要があるコンポーネント数のため、X線回折装置の設定および維持で大きな困難が生じる。さらに、X線強度は、十分な単色性を実現するために、かかる構成において低減されてしまう。従来の構成では、高分解能モノクロメータは、X線源から放射される非常に狭いとぎれない角度範囲のX線のみを選択するからである。
【0008】
かかる問題を解決する装置が特許文献1に開示されている。これは、エネルギー帯域が非常に狭い仮想放射源を作る複雑な構成を有する、すなわち十分に精密なモノクロメータを有し、Kアルファ1ラインとKアルファ2ラインとを分離して、これらのラインの1つのみを用いることができる、粉末試料のX線回折測定に適した装置を記載している。
【0009】
Kアルファ1ラインをKアルファ2ラインから選択できるかかる正確なモノクロメータを必要とせずに、同じ精度と分解能を実現できるX線回折の方法と装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0268252号
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様では、請求項1に記載のX線回折装置を提供する。
【0012】
実施形態で提供される高分解測定用のX線回折装置は、原子番号Zが50未満(好ましくは30未満)のターゲットを有するX線源の利用を、X線源からKベータ放射を選択し、Kベータ放射を試料上に反射するベータ放射多層ミラーと組み合わせる。X線ビームは、ピクセル配列を有するエネルギー分解X線検出器上に試料内で回折され得る。
【0013】
本発明の実施形態は、X線回折の方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1】本発明の第1の実施形態を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態を示す図である。
図3】エネルギー感度検出器を使用するまたはしないkベータミラーを用いて得た結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者は、原子数が小さいX線源からのKベータ放射は、基本的に、一般的な粉末回折実験の目的では、基本的に単色であることに気づいた。例えば、銅の放射源(Z=29)では、Kベータ1ラインは8.905keVにあり、Kベータ3ラインは8.903keVにあり、総強度はKアルファ1ラインの20%である。これは実際的には単色(monochromatic)として扱える。さらに、かかる低原子数放射源の場合、kベータ2放射の量は非常に低い。銅の場合、kベータ2放射の強度は、Kアルファ1ラインの強度の約0.1%であり、それゆえ、Kベータ1ラインとKベータ3ラインの約0.5のみである。原子数がより小さいターゲットの場合、Kベータ2はもっと小さく、実質的にゼロである。
【0016】
モリブデンや銀などの原子数がより大きい放射源の場合、Kベータ2放射の量は、Kアルファ1ラインの強度の3%で、Kベータ1ラインは15%、Kベータ3ラインは8%であり、Agでは割合はより高い。原子数が30より大きい放射源では、Kベータ1ラインとKベータ3ラインとがエネルギー的に離れ始めるが、X線回折実験の目的としてはまだ単色であると見なせる。
【0017】
したがって、発明者は、原子数Zが50未満(特に30未満)のX線源で、X線回折測定用にKベータ放射を用いる利益があり、それはかかる組み合わせにより、有効な単色放射を使用でき、原子数が30未満の場合にはKアルファラインから、原子数が30ないし50の場合にはKベータ2から、Kベータ1、3ラインを選択すればよいからである。かかるエネルギー分解能はX線検出器で可能であり、モノクロメータを追加する必要はない。これにより、かかる追加的コンポーネントの正確なアライメントを設定及び維持する困難さが低減される。
【0018】
測定にKアルファ放射を用いるとき、選択ミラーを用いてKアルファ放射のみを選択することができる。かかるミラーは、約100分の1にKベータを減衰することがあり、これはグレーデッド多層ミラー(graded multilayer mirror)の場合に一般的である。選択ミラーに入射するKアルファ放射の強度がKベータ放射の強度より5倍大きいことを考慮すると、かかる構成により、Kベータ放射の強度がKアルファ放射の強度の0.2%まで減衰し、これはほとんどのアプリケーションにとって十分である。
【0019】
対照的に、発明者は、有用な許容角を実現するため、Kベータ反射に最適化された多層ミラーが、十分なKアルファ放射を反射し、Kアルファ放射の強度はKベータ放射の強度の1%ないし5%であることに気づいた。かかる強度は、X線回折を行うとき、放射線を基本的に単色として扱うには十分に小さくない。
【0020】
発明者は、Kベータ多層ミラーはそれ自体では十分ではないかも知れないが、原子数が30未満のKアルファ放射及びKベータ放射の間を弁別する能力、または原子数が30と50の間のKベータ1、3放射及びKベータ2放射の間を弁別する能力がより低いエネルギー分解X線検出器の使用を可能にする。
【0021】
原子数が小さく、50未満(好ましくは30未満)のターゲットのX線源を用いる場合、Kベータ1,3放射のみを選択することにより、特に良い結果が得られる。放射の単色性が非常に高く、この放射はKベータ1放射とKベータ3放射のみを含み、低原子数では、Kベータ1放射とKベータ3放射の波長は非常に近いからである。
【0022】
かかる単純な装置で、米国特許出願公開第2011/0268252号で得られたのと同様な、非常に高い単色性を得ることができる。特に、米国特許出願公開第2011/0268252号では、入射面にHohansson結晶を用いてKアルファ放射が選択されている。かかるJohansson結晶は設定が複雑であり、X線強度を低下させる。
【0023】
実施形態では、X線が検出器に届く前に、すなわち反射モードとは逆に透過モードにおいて、試料を通過するように、試料ホルダーが試料をホールドする。これは、試料が毛細管中の粉末試料である可能性も含む。(毛細管を含む)かかる透過型ジオメトリでは、複数のコンポーネント及び/又は長い測定時間のジオメトリを受け入れずに、検出器のみで十分なエネルギー分解を実現することは困難であるが、Kベータ多層ミラーを用いることにより、検出器に求められるエネルギー分解性能をより容易に実現できる。
【0024】
具体的な実施形態では、Kベータ放射多層ミラーは、回折ビームをエネルギー分解X線検出器上にフォーカスするように構成されたフォーカシング多層ミラーである。こうして、コンポーネントを追加する必要無しに、比較的高強度のX線が実現でき、Kベータ放射多層ミラーは、フォーカシングと波長選択との両方を行う。
【0025】
フォーカシング多層ミラーはグレーデッドフォーカシング多層ミラーであってもよい。
【0026】
特に、透過型ジオメトリにおいて、または毛細管を用いるとき、ビームパスを決定するためにスリットを用いる場合、十分な角分解能を得るには非常に狭いスリット開口が必要となるだろう。これによりX線強度が大きく低下し、測定時間が長くなる。替わりにフォーカシングミラーを用いると、X線強度と角分解能とのよい組み合わせを実現できる。
【0027】
フォーカシングと単色化との両方のためにKベータ放射多層ミラーを用いると、最小数のコンポーネントでよく、生産及び利用の両面でコスト効率の高い装置となる。ミラー自体では十分な単色性を提供できないが、エネルギー分解X線検出器と組み合わせると、高分解X線回折測定を行える。エネルギー分解X線検出器自体は、非常に高分解である必要はない。選択の一部はKベータ放射多層ミラーにより行われるからである。
【0028】
別の実施形態では、Kベータ放射多層ミラーはパラボラミラーであってもよい。
【0029】
一例では、検出器のエネルギー分解DE/Eは、0.2FWHM(半値全幅)よりよく、DE/E=0.01ないし0.1であってもよく、好ましくは0.05ないし0.075FWHMである。ここで、Eは検出されるラインのエネルギーであり、ΔEはエネルギー分解である。具体的な例では、このエネルギー分解(ΔE)は、CuKベータ放射の場合は440eVないし660eVであり、CoKベータ放射の場合は380eVないし570eVである。
【0030】
好ましい実施形態では、X線検出器は、Kアルファ放射に対する感度より少なくとも10倍、好ましくは25倍のKベータ放射に対する感度を有する、Kアルファ放射からKベータ放射を効果的に選択するのに十分なエネルギー分解能を有する。 X線検出器は、エネルギーの関数としてX線を検出してもよく、Kアルファに対するKベータ放射の選択処理を行うことができる。
【0031】
実施形態では、エネルギー分解検出器は、高分解能ストリップ検出器など、ピクセル配列を有する検出器であってもよい。
【0032】
この種のX線回折装置は、非常に高い測定分解能を実現できる。X線強度を大きく低下させる非常に精密なモノクロメータを必要とせずに、放射の単色性は非常に高いからである。従って、本発明による装置は、高速測定を実現し、これは粉末試料において特に重要である。
【0033】
さらに、本装置は比較的簡単な方法で構成でき、装置のアライメントにかかる時間が削減され、コストが低下する。
【0034】
本発明の第1の実施形態を図1に示す。
【0035】
X線源2は低原子量ターゲット4を有し、これはx線ビーム6を放射し、これは単一スリット8を通る。X線ビームは、アルファ放射に対してkベータ放射を選択するミラー10に入射する。
【0036】
好適な多層ミラーが、Michaelsen et al著「Advances in X−ray Analysis」(Volume 42, page 308 to 320, presented at the Denver X−ray Conference on Applications of X−ray Analysis, International Centre for Diffraction Data, 2000)で提案されている。特に、ミラーは曲面ゲーベルミラーであり得る。
【0037】
別の構成では、ミラーはパラボラ型多層ミラーであってもよい。
【0038】
ミラー10からの放射線は試料台14上の試料12に向けられる。放射線は、エネルギー分解X線検出器20上に、この場合には高分解能ストリップ検出器上に、すなわち単一方向における空間的分解が可能な検出器上に回折される。
【0039】
図1の構成では、ミラー10はフォーカシングミラーであり、回折ビーム6をX線検出器20の位置にフォーカスする。ビームは試料を通る時に少し回折することに留意されたい。
【0040】
図1の装置は、小数のコンポーネントでできた簡単な装置で、非常に単色性の高いビームにより高分解能を実現できる。
【0041】
特に、ビーム経路において、ミラー10の後段のコンポーネントは、試料ホルダーにより保持された試料と、エネルギー分解型X線検出器20とだけである。かかる装置は、製造と設定のコストが低い。
【0042】
図2は、本発明の別の実施形態を示し、試料12は、例えば粉末などの検査物質を保持する毛細管26により保持されている。この装置は、コンポーネントが比較的少数である単純性にかかわらず、粉末試料の測定に非常に適している。図2に示した具体的な実施形態では、Kアルファ放射よりKベータ放射を選択し、X線ビーム6をフォーカスするように機能する単一ミラー10の利用により、コンポーネント数が最小の装置ができる。
【0043】
図2には、幾つかの必須ではないコンポーネント、特に入射側のSollerスリット22と測定側のSollerスリット24とが含まれている点に留意されたい。かかるスリットは必須ではなく、必要に応じて小角のX線ビームを選択するのに用いられ得る。
【0044】
図3は、図1を参照して上で説明した透過測定におけるLaB6の測定値を示す。両方の場合において、放射源は、8.04keVのKアルファ放射と、8.90keVのKベータ放射とを放射するCu源であった。フォーカシングベータミラーを用いてkベータ放射を選択した、すなわちkアルファラインをフィルタリング除去した。
【0045】
2つのグラフを示す。グラフAは、従来の固体ライン検出器を用いて測定され、比較試料を表す。グラフBは、エネルギー分解固体ライン検出器を用いる、本発明の一実施形態である。両方のグラフは、LaB[110]反射のKベータラインに対応する角度2θ=27.4°にピークを示す。
【0046】
グラフAに対するグラフBの改善点は、角度2θ=30.4°に見られる。グラフAは小さなピークを示していることに留意されたい。このピークは、LaB[110]のKアルファラインによりできたピークであり、kベータ選択多層ミラーによるそのKアルファ放射の抑制が不完全である結果である。結果として、グラフAは、エネルギー分解検出器を用いずに単にkベータミラーを用いると、高エネルギー解像度出力が得られないことを示す。30.4°にある付加的ピークは基本的にアーティファクトである。
【0047】
対照的に、グラフBは30.4°にピークが無く、唯一のピークは27.4°にある十分に分解されたピークである。これは、原子数が小さいX線源と、Kベータ放射を選択するKベータ放射多層ミラーと、エネルギー分解X線検出器との組み合わせを用いて、高分解能が得られる可能性があることを示している。
図1
図2
図3