特許第6709816号(P6709816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709816
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】バスバーモジュール及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20200608BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20200608BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/20 A
   H01M2/34 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-46458(P2018-46458)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-160597(P2019-160597A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝則
(72)【発明者】
【氏名】市川 喜章
(72)【発明者】
【氏名】庄子 隆雄
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−056062(JP,A)
【文献】 特開2017−195077(JP,A)
【文献】 特開2017−112066(JP,A)
【文献】 特開2013−004186(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0063692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールを構成する多数の電池セルのうち隣り合う2つの電池セルの電極間をそれぞれ接続する複数のバスバーと、
移動規制体との干渉により移動が規制される移動限界の範囲内で移動可能に前記バスバーをそれぞれ保持する複数の保持部を、変形可能な連結部をそれぞれ介して連鎖状に連結して構成され、前記保持部及び前記連結部のいずれかに、前記保持部に保持された前記バスバーの隣り合う2つの前記電池セルの電極にそれぞれ接続される2つの接点部を外部に露出させる開口が設けられたバスバーホルダと、
を備えるバスバーモジュール。
【請求項2】
前記保持部は、前記バスバーの前記接点部を除く部分を支持する支持板と、該支持板から立設されて前記バスバーの両側に延出し互いに対向する一対の側壁とを有しており、前記移動規制体は、前記各側壁の対向面からそれぞれ突設された一対の突起を含んでおり、該一対の突起を乗り越えて前記支持板側に移動し前記保持部に保持された前記バスバーが、前記支持板及び前記突起の間でこれら支持板及び突起の間隔方向に移動可能に保持される請求項1記載のバスバーモジュール。
【請求項3】
前記連結部は前記支持板に接続されており、前記支持板及び前記連結部は、前記保持部に保持された前記バスバーの前記2つの接点部間の部分に対向する箇所に配置されている請求項2記載のバスバーモジュール。
【請求項4】
前記移動規制体は、前記支持板に対する前記バスバーの傾斜を許容する隙間を前記支持板上の前記バスバーとの間に有する位置に配置されている請求項2又は3記載のバスバーモジュール。
【請求項5】
前記保持部は、前記バスバーの前記接点部を除く部分を支持する支持板を有しており、前記移動規制体は、前記支持板から突設されて該支持板上の前記バスバーのガイド孔に遊挿された位置決めピンを含んでおり、該位置決めピンに前記ガイド孔が当接するまで、前記支持板に沿って前記バスバーが移動可能に保持される請求項1、2、3又は4記載のバスバーモジュール。
【請求項6】
多数の電池セルによって構成された電池モジュールと、
請求項1、2、3、4又は5記載のバスバーモジュールと、
を備える電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルの端子間をバスバーモジュールで接続した電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の電動車両に搭載されるバッテリは、内燃機関エンジンを推進源とする通常の車両の搭載バッテリよりも大きい容量を有している。
【0003】
この種のバッテリは、電池モジュールを構成する多数の電池セルの電極間をバスバーで接続した電池パックを用いることで、大容量を実現している。このバスバーには大電流が流れるので、バスバーにはある程度の板厚を持たせる必要がある。
【0004】
また、バスバーは、接触抵抗を抑えるために、電池モジュールの各電池セルの電極に十分に密着させる必要がある。ところが、各電池セルの電極の位置は、電池セルの公差内の寸法誤差によりばらつくことがある。そのため、バスバーには、どの電極にも密着できるだけの荷重を、電極に向けて加える必要がある。
【0005】
このため、1つで多くの電池セルの電極を接続する長尺のバスバーを使用すると、各電池セルの寸法誤差が重なって、バスバーを密着させる電極の位置のばらつきが大きくなり、バスバーに加える荷重を大きくしなければならなくなる場合が生じる。その場合、バスバーに近い位置の電極には、バスバーから離れた電極よりも大きい荷重が加わり、電池セルの損傷の要因となる可能性がある。
【0006】
そこで、隣り合う2つの電池セルの電極間を1つのバスバーで接続するようにして、バスバーの短尺化を図ることが提案されている(例えば、特許文献1)。この提案では、1つのバスバーを密着させる電極が、隣り合う2つの電池セルの電極だけとなる。
【0007】
このため、長尺のバスバーのように荷重をかけてバスバーを多くの電池セルの電極に密着させる必要がなくなる。また、隣り合う2つの電池セルの電極位置に合わせてバスバーの姿勢を変ることができるので、各電極にバスバーを密着させ易くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−129125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した提案のバスバーでは、各電池セルの電極にバスバーをそれぞれ取り付ける際に、各バスバーを隣り合う2つの電池セルの電極間にそれぞれ配置しなければならない。このような配置作業は、多くの電池セルの電極を一度に接続する長尺のバスバーの配置作業に比べて、非常に煩雑であり製造コストが高騰する要因となる。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、電池モジュールを構成する多数の電池セルの電極に対するバスバーの組付性を損ねずに、位置にばらつきがある各電池セルの電極に対するバスバーの密着性を確保することができるバスバーモジュールと、このバスバーモジュールを用いて好適な電池パックとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様によるバスバーモジュールは、
電池モジュールを構成する多数の電池セルのうち隣り合う2つの電池セルの電極間をそれぞれ接続する複数のバスバーと、
移動規制体との干渉により移動が規制される移動限界の範囲内で移動可能に前記バスバーをそれぞれ保持する複数の保持部を、変形可能な連結部をそれぞれ介して連鎖状に連結して構成され、前記保持部及び前記連結部のいずれかに、前記保持部に保持された前記バスバーの隣り合う2つの前記電池セルの電極にそれぞれ接続される2つの接点部を外部に露出させる開口が設けられたバスバーホルダと、
を備える。
【0012】
本発明の第1の態様によるバスバーモジュールによれば、バスバーホルダの各連結部がそれぞれ変形し、各保持部のバスバーが移動規制体との干渉による移動限界の範囲内で保持部内をそれぞれ移動することで、各バスバーが各保持部の中で、バスバーにより接続する隣り合う2つの電池セルの電極に接点部が接触する姿勢となる。
【0013】
このため、電池モジュールを構成する多数の電池セルの公差内の寸法誤差により、各電池セルの電極の位置にばらつきがあっても、バスバーホルダを電池モジュールの各電池セルの電極に近付けることで、バスバーホルダの各保持部に保持された各バスバーの接点部が、対応する各電池セルの電極に接触する位置に、一度にまとめて組み付けられる。
【0014】
よって、電池モジュールを構成する多数の電池セルの電極に対するバスバーの組付性を損ねずに、位置にばらつきがある各電池セルの電極に対するバスバーの密着性を確保することができる。
【0015】
なお、本発明の第2の態様によるバスバーモジュールのように、本発明の第1の態様によるバスバーモジュールにおいて、前記保持部は、前記バスバーの前記接点部を除く部分を支持する支持板と、該支持板から立設されて前記バスバーの両側に延出し互いに対向する一対の側壁とを有しており、前記移動規制体は、前記各側壁の対向面からそれぞれ突設された一対の突起を含んでおり、該一対の突起を乗り越えて前記支持板側に移動し前記保持部に保持された前記バスバーが、前記支持板及び前記突起の間でこれら支持板及び突起の間隔方向に移動可能に保持される構成としてもよい。
【0016】
また、本発明の第3の態様によるバスバーモジュールのように、本発明の第2の態様によるバスバーモジュールにおいて、前記連結部は前記支持板に接続されており、前記支持板及び前記連結部は、前記保持部に保持された前記バスバーの前記2つの接点部間の部分に対向する箇所に配置されている構成としてもよい。
【0017】
さらに、本発明の第4の態様によるバスバーモジュールは、本発明の第2又は第3の態様によるバスバーモジュールにおいて、前記移動規制体は、前記支持板に対する前記バスバーの傾斜を許容する隙間を前記支持板上の前記バスバーとの間に有する位置に配置されている。
【0018】
本発明の第4の態様によるバスバーモジュールによれば、本発明の第2又は第3の態様によるバスバーモジュールにおいて、支持板上のバスバーと移動規制体との隙間において、支持板に対してバスバーが傾斜した姿勢を取ることが可能となる。このため、保持部におけるバスバーの姿勢の自由度を拡げて、位置にばらつきがある各電池セルの電極に対するバスバーの密着性をより高めることができる。
【0019】
また、本発明の第5の態様によるバスバーモジュールは、本発明の第1、第2、第3又は第4の態様によるバスバーモジュールにおいて、前記保持部は、前記バスバーの前記接点部を除く部分を支持する支持板を有しており、前記移動規制体は、前記支持板から突設されて該支持板上の前記バスバーのガイド孔に遊挿された位置決めピンを含んでおり、該位置決めピンに前記ガイド孔が当接するまで、前記支持板に沿って前記バスバーが移動可能に保持される。
【0020】
本発明の第5の態様によるバスバーモジュールによれば、本発明の第1、第2、第3又は第4の態様によるバスバーモジュールにおいて、支持板上の位置決めピンとバスバーのガイド孔との隙間の範囲で、バスバーが保持部に対して支持板の延在方向に移動可能となる。このため、保持部におけるバスバーの姿勢の自由度を拡げて、位置にばらつきがある各電池セルの電極に対するバスバーの密着性をより高めることができる。
【0021】
さらに、上記目的を達成するため、本発明の第6の態様による電池パックは、
多数の電池セルによって構成された電池モジュールと、
本発明の第1、第2、第3、第4又は第5の態様によるバスバーモジュールと、
を備える。
【0022】
本発明の第6の態様による電池パックによれば、本発明の第1、第2、第3、第4又は第5の態様によるバスバーモジュールにより得られる効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電池モジュールを構成する多数の電池セルの電極に対するバスバーの組付性を損ねずに、位置にばらつきがある各電池セルの電極に対するバスバーの密着性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る電池パックの概略構成を示す斜視図である。
図2図1の電池セルの寸法公差による電極位置のばらつきを隣り合う電池セルの電極間の接続に用いる短尺のバスバーにより吸収する場合のバスバーによる電極間の接続状態を示す説明図である。
図3図1の電池パックに用いる本発明の第1実施形態に係るバスバーモジュールを示す斜視図である。
図4図3のバスバーモジュールのI−I線断面図である。
図5図3のバスバーモジュールのII−II線断面図である。
図6図5の隣り合う2つの電池セルの電極間を接続するバスバーのバスバーホルダの保持部における姿勢を拡大して示す説明図である。
図7図1の電池パックに用いる本発明の第2実施形態に係るバスバーモジュールを示す斜視図である。
図8図7のバスバーモジュールのIII−III線断面図である。
図9図8の隣り合う2つの電池セルの電極間を接続するバスバーのバスバーホルダの保持部における姿勢を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係る電池パックの概略構成を示す斜視図である。図1に示す電池パック1は、電池モジュール3とバスバーモジュール5とを有している。
【0026】
電池モジュール3は、多数の電池セル33によって構成されている。各電池セル33は、矩形状を呈する上面の長手方向の両端に、正極及び負極の一対の電極35,35を有している。各電池セル33は、上面の長辺同士を接触させて並べられている。
【0027】
図1では、並列接続した4つの電池セル33により1つの単位セル31を構成し、複数の単位セル31を直列に接続して、大容量の電池モジュール3を構成した場合を示している。図1に示すバスバーモジュール5は、各電池セル33の上面の長手方向における一端側の電極35同士の接続と、他端側の電極35同士の接続とに、それぞれ用いられる。
【0028】
ところで、図1に示す電池モジュール3の各電池セル33は、公差内の寸法誤差を含んでいることがある。各電池セル33に寸法誤差があると、例えば、図2の説明図に示すように、各電池セル33の高さ方向における電極35の位置にばらつきが生じる。
【0029】
このため、複数の電池セル33,33,…の電極を1つのバスバーで接続すると、他の電池セル33よりも高さが低い電池セル33の電極35には、十分にバスバーを密着させて接触抵抗を抑えることができない。
【0030】
そこで、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35間を個別のバスバー51で接続する。具体的には、矩形状を呈するバスバー51の裏面の長手方向における両端付近にそれぞれ突設した半球状の接点部53,53,…を、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35にそれぞれ接触させて、両電極35間をバスバー51で電気的に接続する。
【0031】
このように、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35の接続に個別のバスバー51を用いることで、高さのばらついた複数の電池セル33,33,…の各電極35,35,…に、各バスバー51,51,…の接点部53,53,…を十分に密着させることができる。
【0032】
但し、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35の接続に個別のバスバー51を用いると、各バスバー51,51,…を隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35間にそれぞれ配置しなければならない。そうすると、複数の電池セル33,33,…の電極を1つのバスバーで接続するのに比べてバスバー51の配置作業に手間とコストがかかってしまう。
【0033】
このため、本発明では、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35間を接続する複数のバスバー51を、共通のバスバーホルダーで保持して、バスバーモジュール5を構成するようにした。これにより、各バスバー51を接続対象の電極35,35間に一度にまとめてそれぞれ配置することができる。以下、バスバーモジュール5の具体例について説明する。
【0034】
まず、本発明の第1実施形態に係るバスバーモジュール5を説明する。図3図1の電池パック1に用いる本発明の第1実施形態に係るバスバーモジュール5の斜視図である。
【0035】
本実施形態のバスバーモジュール5は、上述したように、各電池セル33の上面の長手方向における一端側の電極35同士の接続と、他端側の電極35同士の接続とに、それぞれ用いられる。各バスバーモジュール5は、複数のバスバー51,51,…を保持するバスバーホルダ6を有している。なお、バスバー51の中央には、図1及び図2で図示を省略したガイド孔55が貫設されている。
【0036】
バスバーホルダ6は、合成樹脂等の絶縁材料により形成されている。バスバーホルダ6は、複数のバスバー51,51,…を1つずつ保持する複数の保持部7と、各保持部7を連鎖状に連結する複数の連結部9とをそれぞれ有している。
【0037】
保持部7は、バスバー51を支持する支持板71と、支持板71からそれぞれ立設された一対の側壁73とを有している。
【0038】
支持板71は、バスバー51の長手方向における中央部分を支持する。バスバー51の支持板71により支持される部分は、バスバー51の接点部53を含んでおらず、ガイド孔55の周縁部を含んでいる。支持板71には位置決めピン75(請求項中の移動規制体に相当)が立設されている。位置決めピン75は、支持板71により支持されたバスバー51のガイド孔55に遊挿される。
【0039】
位置決めピン75がガイド孔55に遊挿されたバスバー51は、ガイド孔55と位置決めピン75との間に形成される隙間の範囲内(請求項中の移動限界に相当)で、支持板71に沿った方向に移動することができる。
【0040】
各側壁73は、支持板71に支持されたバスバー51の両長辺の外側にそれぞれ延出している。各側壁73の互いに対向する内側面には、図3のI−I線断面図である図4に示すように、係止突起77(請求項中の突起及び移動規制体に相当)がそれぞれ形成されている。
【0041】
各側壁73の係止突起77は、各側壁73の先端側から係止突起77を乗り越えて支持板71側に移動したバスバー51が、位置決めピン75の先端(請求項中の移動限界に相当)を超えて側壁73の先端側に移動するのを規制する。この規制により、ガイド孔55から位置決めピン75が抜け出て保持部7に対してバスバー51が長手方向に自由に移動できる状態となってしまうことが防止される。
【0042】
また、各側壁73の係止突起77は、支持板71に対するバスバー51の傾斜を許容する隙間が支持板71上のバスバー51との間にできる位置に形成されている。このため、支持板71上のバスバー51が、係止突起77との隙間において、支持板71に対して傾斜した姿勢を取ることができる。
【0043】
連結部9は、図3に示すように、隣り合う2つの保持部7,7で保持されたバスバー51,51にそれぞれ当接する一対の当接部91,91と、両当接部91,91を接続する一対の接続壁93,93と、連結部9を保持部7に接続する連結片95,95とを有している。
【0044】
各当接部91は、隣り合う2つのバスバー51の長手方向における接点部53とガイド孔55との間の部分にそれぞれ当接する。
【0045】
各接続壁93は、隣り合う2つのバスバー51にそれぞれ当接した各当接部91の、バスバー51の短辺方向における各側部同士を接続する。各接続壁93は、各当接部91が当接する各バスバー51の両長辺の外側にそれぞれ延出し、隣り合う2つの保持部7の各側壁73の間に配置されている。
【0046】
各連結片95は、各当接部91と、連結部9に隣り合う保持部7の支持板71とを接続する。各連結片95は、当接部91及び支持板71よりも薄肉に形成されており、当接部91と支持板71との相対角度(仰角又は俯角)が可変となるよう変形可能に構成されている。
【0047】
つまり、隣り合う2つの保持部7,7は、その間に配置された連結部9により、当接部91の両側の各連結片95,95の変形で隣の保持部7との相対角度(仰角又は俯角)を変更できる状態で、連鎖状に連結されている。
【0048】
そして、連結部9は、一対の当接部91,91と一対の接続壁93,93とで矩形枠状に構成されている。したがって、連結部9は、一対の当接部91,91と一対の接続壁93,93との内側に、矩形状の開口97を有している。この開口97の内側には、当接部91に当接したバスバー51の接点部53側の部分が配置される。
【0049】
次に、上述のように構成された本実施形態のバスバーモジュール5により、電池モジュール3の各電池セル33の電極35同士を電気的に接続する場合の組み付け作業について説明する。
【0050】
まず、バスバーホルダ6の各保持部7の一対の側壁73間にバスバー51を嵌め込んで、バスバー51を保持部7により保持させる。このとき、各バスバー51のガイド孔55に支持板71の位置決めピン75を挿入させつつ、各側壁73の係止突起77をバスバー51に乗り越えさせて、バスバー51を支持板71に支持させる。
【0051】
次に、各保持部7にバスバー51を保持させたバスバーホルダ6を、各電池セル33の上面の長手方向における一端側及び他端側の各電極35上に載置する。すると、各保持部7のバスバー51が自重により電池セル33の上面側に移動する。
【0052】
バスバー51及び保持部7が電池セル33側に移動することで、各電池セル33の電極35の高さのばらつきに合わせて各連結部9の連結片95が変形する。すると、連結部9により接続された隣り合う2つの保持部7の相対角度(仰角又は俯角)が調整される。
【0053】
また、各保持部7に保持されたバスバー51が、ガイド孔55と位置決めピン75との隙間の範囲内で支持板71に沿う方向に移動し、さらに、支持板71と係止突起77との間で位置決めピン75に双方向に移動して、隣り合う2つの電池セル33の電極35に対応する接点部53が接触する姿勢の位置に移動する。
【0054】
すると、各連結部9の開口97の内側に配置された隣り合う2つのバスバー51,51の接点部53,53が、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35にそれぞれ接触し密着する。
【0055】
なお、バスバー51及び保持部7が自重により電池セル33側に移動しない場合は、各電池セル33の電極35上に載置したバスバーホルダ6の各保持部7のバスバー51を、電池セル33の上面側に押し付ければよい。
【0056】
これにより、図3のII−II線断面図である図5に示すように、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35が、各電極35に密着した接点部53,53を有するバスバー51により、適切な低さの接触抵抗で電気的に接続された状態となる。
【0057】
そして、図5の隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35をバスバー51で接続した状態を拡大して示す図6の説明図に示すように、各側壁73の係止突起77は、支持板71に対するバスバー51の傾斜を許容する隙間が支持板71上のバスバー51との間にできる位置に形成されている。このため、支持板71上のバスバー51が、係止突起77との隙間において、支持板71に対して傾斜した姿勢を取ることができる。
【0058】
なお、電極35に密着したバスバー51の接点部53は、電極35に溶接したり、不図示のボルト等の締結部品により各バスバー51に電極35側への押圧力を付与することで、電極35に密着した状態に固定することができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態のバスバーモジュール5は、バスバー51を保持した複数の保持部7を薄肉の連結部9により連鎖的に連結したバスバーホルダ6を、電池セル33の電極35に近付けて、各電池セル33の電極35の高さのばらつきに合わせて各連結部9の連結片95を変形させるようにした。
【0060】
また、各保持部7のバスバー51を、ガイド孔55と位置決めピン75との隙間の範囲内で支持板71に沿う方向に移動させ、さらに、支持板71と係止突起77との間で位置決めピン75に沿う方向に移動させて、隣り合う2つの電池セル33の電極35に接点部53が接触する姿勢の位置にバスバー51を移動させるようにした。
【0061】
このため、隣り合う2つの連結部9の開口97の内側に配置されたバスバー51の接点部53が、隣り合う2つの電池セル33の電極35にそれぞれ接触し密着する。
【0062】
よって、電池セル33の電極35の高さに公差内のばらつきがあっても、バスバーホルダ6を電池モジュール3の各電池セル33の電極35に近付けることで、各バスバー51の接点部53を対応する各電池セル33の電極35に接触する位置に、一度にまとめて配置することができる。
【0063】
これにより、隣り合う2つの電池セル33の電極35同士を接続する短尺のバスバー51を用いても、多数の電池セル33の電極35に対するバスバー51の組付性を損ねずに、位置にばらつきがある各電池セル33の電極35に対するバスバー51の密着性を確保することができる。
【0064】
また、支持板71上のバスバー51と係止突起77との間に、支持板71に対してバスバー51が傾斜した姿勢を取れるだけの隙間が形成される。このため、保持部7におけるバスバー51の姿勢の自由度を拡げて、位置にばらつきがある2つの電池セル33,33の電極35,35に対するバスバー51の密着性をより高めることができる。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態に係るバスバーモジュール5を説明する。図7図1の電池パック1に用いる本発明の第2実施形態に係るバスバーモジュール5の斜視図である。
【0066】
本実施形態のバスバーモジュール5のバスバーホルダ6は、各保持部7の一対の側壁73,73が、支持板71で支持したバスバー51の長手方向において、バスバー51の長辺以上の寸法をそれぞれ有している。そして、各保持部7の両側壁73と支持板71との内側に開口79が形成されている。この開口79の内側には、バスバー51の支持板71で支持された部分を除く、長手方向における各端部側の部分(接点部53を含む)が配置される。
【0067】
また、本実施形態のバスバーホルダ6は、各保持部7を連鎖状に連結する各連結部9を、隣り合う2つの保持部7の側壁73間を接続する可撓性の湾曲片98のみで構成している。この湾曲片98は、隣り合う2つの保持部7を、2つの保持部7の相対角度(仰角又は俯角)を変える方向に変形可能に構成されている。
【0068】
これらの点で、本実施形態のバスバーモジュール5のバスバーホルダ6は、第1実施形態のバスバーモジュール5のバスバーホルダ6と構成が異なっている。
【0069】
上述のように構成された本実施形態のバスバーモジュール5は、第1実施形態のバスバーモジュール5と同様に、各保持部7にバスバー51を保持させたバスバーホルダ6を、各電池セル33の上面の長手方向における一端側及び他端側の各電極35上に載置する。
【0070】
そして、バスバー51及び保持部7の自重により、あるいは、各保持部7のバスバー51を電池セル33の上面側に押し付けて、各バスバー51の接点部53を対応する電池セル33の電極35にそれぞれ接触させる。
【0071】
これにより、図7のIII−III線断面図である図8に示すように、隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35が、各電極35に接点部53を接触させたバスバー51により、電気的に接続された状態となる。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態のバスバーモジュール5は、バスバー51を保持した複数の保持部7を連結部9、即ち、薄肉の湾曲片98により連鎖的に連結したバスバーホルダ6を、電池セル33の電極35に近付けて、各電池セル33の電極35の高さのばらつきに合わせて各連結部9の湾曲片98を変形させるようにした。
【0073】
そして、図8の隣り合う2つの電池セル33,33の電極35,35をバスバー51で接続した状態を拡大して示す図9の説明図に示すように、各側壁73の係止突起77は、支持板71に対するバスバー51の傾斜を許容する隙間が支持板71上のバスバー51との間にできる位置に形成されている。このため、支持板71上のバスバー51が、係止突起77との隙間において、支持板71に対して傾斜した姿勢を取ることができる。
【0074】
また、各保持部7のバスバー51を、ガイド孔55と位置決めピン75との隙間の範囲内で支持板71に沿う方向に移動させ、さらに、支持板71と係止突起77との間で位置決めピン75に沿う方向に移動させて、隣り合う2つの電池セル33の電極35に接点部53が接触する姿勢の位置にバスバー51を移動させるようにした。
【0075】
このため、支持板71に支持されたバスバー51の長手方向における支持板71の両側に位置する開口79の内側にそれぞれ配置されたバスバー51の接点部53が、隣り合う2つの電池セル33の電極35にそれぞれ接触し密着する。
【0076】
このように構成された本実施形態のバスバーモジュール5でも、第1実施形態のバスバーモジュール5と同様の効果を得ることができる。
【0077】
なお、上述した各実施形態のバスバーホルダ6のように、バスバー51の接点部53を電池セル33の電極35側に露出させる開口は、保持部7と連結部9とのどちらに設けてもよい。
【0078】
また、保持部7に対するバスバー51の移動範囲を規制するための構成、即ち、移動規制体は、上述した各実施形態のバスバーホルダ6のような、保持部7の支持板71の位置決めピン75と側壁73の係止突起77との組合わせに限らず、どちらか一方のみであってもよい。あるいは、位置決めピン75及び係止突起77に代えて任意の構成を、移動規制体として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、複数の電池セルの端子間をバスバーモジュールで接続した電池パックに用いて、極めて有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 電池パック
3 電池モジュール
5 バスバーモジュール
6 バスバーホルダ
7 保持部
9 連結部
31 単位セル
33 電池セル
35 電極
51 バスバー
53 接点部
55 ガイド孔
71 支持板(保持部の底部の中央部分)
73 側壁
75 位置決めピン(移動規制体)
77 係止突起(突起、移動規制体)
79,97 開口
91 当接部
93 接続壁
95 連結片
98 湾曲片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9