特許第6709818号(P6709818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709818
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-63658(P2018-63658)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-175727(P2019-175727A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 準弥
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−053160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する導体部と前記導体部の外側を覆い絶縁性を有する絶縁被覆部とを含む電線と、
相手側端子に対して電気的に接続される端子接続部と、
前記絶縁被覆部から露出した前記導体部に加締められる導体加締部と、
前記導体加締部とは分断されて設けられ前記絶縁被覆部に加締められる被覆加締部と、を備え、
前記被覆加締部は、前記絶縁被覆部が載置される基部と、前記基部から延びて形成され前記基部との間に前記絶縁被覆部を包んで加締められるバレル片部とを含み、
前記絶縁被覆部は、前記被覆加締部が加締められた状態において、前記基部および前記バレル片部に接し、前記電線の延在方向に対して、前記バレル片部と接する側において前記導体加締部側の端部から前記導体加締部までの距離が相対的に短く、前記基部と接する側において前記導体加締部側の端部から前記導体加締部までの距離が相対的に長く、
前記基部と接する側に切欠き部を有し、
前記被覆加締部が前記絶縁被覆部に加締められた状態において、前記切欠き部が前記基部側に位置し、
スリットをさらに有し、
前記スリットは、前記絶縁被覆部において前記導体部を挟んで前記切欠き部の位置と反対側の位置に設けられ、かつ、前記電線の延在方向と交差する方向に延在し、前記絶縁被覆部の厚み未満の深さを有する
端子付き電線。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記電線の延在方向の前記導体加締部側の端面が前記延在方向に直交する面に対して傾斜する面に沿う
請求項に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に適用されるワイヤハーネスが備える従来の圧着端子として、例えば、特許文献1には、端子金具が被覆電線に固定されている電線固定部を備え、電線導体と端子金具との接触部が防食剤によって被覆され、電線固定部にシール剤が塗布された端子付き電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6131893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の端子付き電線は、製造コストを抑えつつ腐食を抑える点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができる端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、導電性を有する導体部と前記導体部の外側を覆い絶縁性を有する絶縁被覆部とを含む電線と、相手側端子に対して電気的に接続される端子接続部と、前記絶縁被覆部から露出した前記導体部に加締められる導体加締部と、前記導体加締部とは分断されて設けられ前記絶縁被覆部に加締められる被覆加締部と、を備え、前記被覆加締部は、前記絶縁被覆部が載置される基部と、前記基部から延びて形成され前記基部との間に前記絶縁被覆部を包んで加締められるバレル片部とを含み、前記絶縁被覆部は、前記被覆加締部が加締められた状態において、前記基部および前記バレル片部に接し、前記電線の延在方向に対して、前記バレル片部と接する側において前記導体加締部側の端部から前記導体加締部までの距離が相対的に短く、前記基部と接する側において前記導体加締部側の端部から前記導体加締部までの距離が相対的に長く、前記基部と接する側に切欠き部を有し、前記被覆加締部が前記絶縁被覆部に加締められた状態において、前記切欠き部が前記基部側に位置し、スリットをさらに有し、前記スリットは、前記絶縁被覆部において前記導体部を挟んで前記切欠き部の位置と反対側の位置に設けられ、かつ、前記電線の延在方向と交差する方向に延在し、前記絶縁被覆部の厚み未満の深さを有する
【0009】
また、上記端子付き電線では、前記切欠き部は、前記電線の延在方向の前記導体加締部側の端面が前記延在方向に直交する面に対して傾斜する面に沿うものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る端子付き電線は、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る端子付き電線の概略構成を表す部分斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る端子付き電線の圧着端子を展開した状態を表す部分平面図である。
図3図3は、電線の端部の例を示す部分斜視図である。
図4図4は、図3に示す電線に圧着端子が加締められた状態を示す断面図である。
図5図5は、参考例による電線の端部の例を示す部分斜視図である。
図6図6は、図5に示す電線に圧着端子が加締められた状態の例を示す断面図である。
図7図7は、図5に示す電線に圧着端子が加締められた状態の例を示す断面図である。
図8図8は、他の電線の端部の例を示す部分斜視図である。
図9図9は、図8に示す電線に圧着端子が加締められた状態を示す断面図である。
図10図10は、電線の端部の例を示す部分斜視図である。
図11図11は、電線の端部の他の例を示す部分斜視図である。
図12図12は、図11に示す電線に圧着端子が加締められた状態を示す断面図である。
図13図13は、オーバーラップ圧着方式の一例を示す図である。
図14図14は、ラップアラウンド圧着方式の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態に係る端子付き電線の概略構成を表す部分斜視図である。図2は、実施形態に係る端子付き電線の圧着端子を展開した状態を表す部分平面図であり、言い換えれば、圧着端子のプレス成形前の板金を展開した状態を表す部分平面図に相当する。図1図2に示す本実施形態の端子付き電線100は、例えば、車両等に使用されるワイヤハーネスWH等に適用される端子金具である。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを一度に各装置に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、電線Wと、当該電線Wの端末に設けられた当該圧着端子1とを備える。電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆い絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。本実施形態の導体部W1は、導電性の金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の素線を複数束ねた芯線であるが、複数の素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。電線Wは、少なくとも導体部W1の一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、当該導体部W1の一方の端末が絶縁被覆部W2から露出しており、当該露出している導体部W1の端末に圧着端子1が設けられる。ここでは、電線Wは、線状に延びる延在方向に対してほぼ同じ径で延びるように形成され、導体部W1の断面形状(延在方向と交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、グロメット、プロテクタ、固定具等を含んで構成されてもよい。以下、各図を参照して圧着端子1の構成について詳細に説明する。
【0015】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸方向Xは、典型的には、圧着端子1が設けられる電線Wの延在方向に相当し、圧着端子1の端子接続部2と導体加締部3と被覆加締部4とが並ぶ方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0016】
圧着端子1は、端子接続部2と、導体加締部3と、被覆加締部4と、第1連結部5と、第2連結部6とを備え、全体が一体で導電性の金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等によって構成される。圧着端子1は、例えば、端子接続部2、導体加締部3、被覆加締部4、第1連結部5、第2連結部6等の各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス及び折り曲げ成形することより各部が立体的に一体で形成される。圧着端子1は、軸方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、端子接続部2、第1連結部5、導体加締部3、第2連結部6、被覆加締部4の順で並んで相互に連結される。すなわち、第1連結部5は、端子接続部2と導体加締部3とを連結する。第2連結部6は、導体加締部3と被覆加締部4とを連結する。導体加締部3は、軸方向Xの両側に第1連結部5、第2連結部6を介して端子接続部2、及び、被覆加締部4と間隔をあけて連結される。ここでは、導体加締部3、被覆加締部4、及び、第2連結部6は、当該圧着端子1と電線Wの端末とを電気的に接続する電線接続部7を構成する。本実施形態の電線接続部7は、第2連結部6を介して導体加締部3と被覆加締部4とが分断されたいわゆる別体バレル型の圧着部を構成する。そして、圧着端子1は、端子接続部2と電線接続部7とが第1連結部5を介して電気的に接続され、当該電線接続部7を介して端子接続部2と電線Wの導体部W1とが電気的に接続され導通される。
【0017】
端子接続部2は、相手側端子(不図示)に対して電気的に接続される部分である。端子接続部2は、雄型の端子形状であってもよいし、雌型の端子形状であってもよい。本実施形態の端子接続部2は、雌型の端子形状として図示しており、雄型の端子形状の相手側端子と電気的に接続される。
【0018】
導体加締部3は、電線Wの導体部W1に加締められ圧着される部分であり、当該導体部W1と電気的に接続される部分である。導体加締部3は、導体加締部基部としての第1基部31、及び、導体加締部バレル片部としての一対の第1バレル片部32を含んで構成される。第1基部31は、電線Wの導体部W1の端部が載置される板状の部分である。第1基部31は、軸方向Xの一方側に第1連結部5を介して端子接続部2が連結され、他方側に第2連結部6を介して被覆加締部4が連結される。ここでは、第1基部31は、第2連結部6を介して後述する被覆加締部4の第2基部41と連結される。第1連結部5、第1基部31、第2連結部6、及び、第2基部41は、相互に連結され、軸方向Xに連なって延在する底板部8を構成する。一対の第1バレル片部32は、第1基部31から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第1基部31との間に導体部W1を包んで加締められ圧着される部分である。一対の第1バレル片部32は、軸方向Xに対して端子接続部2、被覆加締部4と間隔をあけて分断して設けられる。一対の第1バレル片部32は、導体部W1に対して加締められる前の状態では、第1基部31に対して曲げ加工が施され当該第1基部31とあわせて略U字状に成形されている。本実施形態の一対の第1バレル片部32は、導体部W1に対して加締められた状態で、互いにオーバーラップしないように第1基部31側の根元から先端までの距離がほぼ同等に形成されている。また、一対の第1バレル片部32は、それぞれ被覆加締部4側の端部にベルマウス部33を有する。ベルマウス部33は、一対の第1バレル片部32によって第1基部31との間に導体部W1を包んで加締める際に、導体部W1に対して当該一対の第1バレル片部32の端部内面側の角縁部(エッジ)により傷を付けないようにするための部分である。ベルマウス部33は、軸方向Xに沿って基端33aから被覆加締部4側の端に向かって導体部W1から徐々に離れるように広がる部分である。つまり、ベルマウス部33は、軸方向Xに沿って基端33aから被覆加締部4側の端に向かって導体部W1の外周から逃げるように外側に斜めに広がる。
【0019】
被覆加締部4は、電線Wの絶縁被覆部W2に加締められ圧着される部分である。被覆加締部4は、被覆加締部基部としての第2基部41、及び、被覆加締部バレル片部としての一対の第2バレル片部42を含んで構成される。第2基部41は、電線Wの絶縁被覆部W2の端部が載置される板状の部分である。第2基部41は、上述したように軸方向Xの一方側に第2連結部6を介して導体加締部3の第1基部31が連結される。上述したように、第2基部41は、第1連結部5、第1基部31、第2連結部6と共に底板部8を構成する。一対の第2バレル片部42は、第2基部41から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第2基部41との間に絶縁被覆部W2を包んで加締められ圧着される部分である。一対の第2バレル片部42は、軸方向Xに対して被覆加締部4と間隔をあけて分断して設けられ、すなわち、一対の第1バレル片部32とは分断され別体で設けられる。一対の第2バレル片部42は、絶縁被覆部W2に対して加締められる前の状態では、第2基部41に対して曲げ加工が施され当該第2基部41とあわせて略U字状に成形されている。本実施形態の一対の第2バレル片部42は、絶縁被覆部W2に対して加締められた状態で、互いにオーバーラップしないように第2基部41側の根元から先端までの距離がほぼ同等に形成されている。
【0020】
上記のように構成される圧着端子1は、いわゆる下型としてのアンビル、上型としてのクリンパと呼ばれる型を用いて導体加締部3、被覆加締部4を変形させながら、電線Wに加締られ圧着される。すなわち、圧着端子1は、アンビルの載置面上に導体加締部3の第1基部31、被覆加締部4の第2基部41が載置された状態で、一対の第1バレル片部32の間に電線Wの導体部W1が位置するように当該第1基部31上に当該導体部W1が載置され、一対の第2バレル片部42の間に電線Wの絶縁被覆部W2が位置するように当該第2基部41上に当該絶縁被覆部W2が載置される。そして、圧着端子1は、アンビルと高さ方向Zに対向する位置に配置されたクリンパが高さ方向Zに沿ってアンビル側に相対的に接近しながら、一対の第1バレル片部32、及び、一対の第2バレル片部42をそれぞれ第1基部31、第2基部41側に押圧し徐々に内側に倒し変形させる。これにより、圧着端子1は、導体加締部3が一対の第1バレル片部32と第1基部31との間に導体部W1を包んで加締められ当該導体部W1に圧着されると共に、被覆加締部4が一対の第2バレル片部42と第2基部41との間に絶縁被覆部W2を包んで加締められ絶縁被覆部W2に圧着される。
【0021】
また、圧着端子1は、押圧され加締められる際、ベルマウス部33に相当する部分が加圧されない非加圧部として加締められることで、当該ベルマウス部33が形成される。そしてこのとき、圧着端子1は、一対の第1バレル片部32と第1基部31との間に導体部W1を包んで加締められる際に、当該ベルマウス部33によって、一対の第1バレル片部32の端部内面側の角縁部(エッジ)により導体部W1に対して傷を付けないようにすることができる。これにより、圧着端子1は、導体部W1において比較的に応力が作用しやすいベルマウス部33の基端33a近傍の部位に作用する応力を低減することができる。この結果、圧着端子1は、導体部W1の損傷をより確実に抑制することができる。なお、圧着端子1は、ベルマウス部33を有していなくてもよい。
【0022】
図3は、電線Wの端部の例を示す部分斜視図である。図3は、圧着端子1が加締められる前の電線Wを示す。図3に示すように、電線Wの絶縁被覆部W2は、切欠き部13を有する。切欠き部13は、軸方向Xすなわち電線Wの延在方向に沿って絶縁被覆部W2が剥かれて形成されている。ここで、導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の切欠き部13以外の端面T2までの距離をL1とする。導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の切欠き部13の端面T3までの距離をL2とする。このとき、距離L1よりも距離L2の方が長い。切欠き部13は、例えば、絶縁被覆部W2に刃を当てて被覆を剥ぐ装置や絶縁被覆部W2にレーザ光を照射して被覆を除去する装置を用いることによって実現できる。
【0023】
図4は、図3に示す電線Wに圧着端子1が加締められた状態を示す断面図である。図4は、図1中のA−A部の断面を示す。図4に示すように、被覆加締部4が絶縁被覆部W2に加締められた状態において、切欠き部13が第2基部41側に位置する。この状態において、絶縁被覆部W2は、図1を参照して説明したように、第2基部41および第2バレル片部42に接する。図4に示す状態において、絶縁被覆部W2は、電線Wの延在方向に対して、第2バレル片部42と接する側において導体加締部3側の端部T4から導体加締部3までの距離すなわち間隔Rが相対的に短く、第2基部41と接する側において導体加締部3側の端部T5から導体加締部3までの距離L10が相対的に長い。このため、電線Wの延在方向に対して、第2バレル片部42と接する側の導体加締部3側の端面、すなわち端部T4側の端面が、第2基部41と接する側の導体加締部3側の端面、すなわち、端部T5側の端面より導体加締部3側に位置する。このことは、絶縁被覆部W2は、電線Wの延在方向に対して、第2バレル片部42に接する側の導体加締部側3の端部T4が第2基部41に接する側の導体加締部3側の端部T5より導体加締部3側まで延在していることも意味する。また、露出した導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の端部までの距離L11よりも、第2基部41に接する部分において、露出した導体部W1の先端Tから絶縁被覆部W2の切欠き部13の最も遠い部分までの距離L12の方が長い。図4に示す状態では、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とが近接し、両者の間隔Rは小さい。このように、絶縁被覆部W2の第2バレル片部42側の部分で導体加締部3と被覆加締部4との間の部分を覆うことで導体部W1の露出面積を抑えることができる。なお、図4に示すように、導体加締部3を構成する板金は、母材11と、母材11の両面に設けられためっき部12とを含む。以降の各図においても同様である。
【0024】
図5は、参考例による電線Wの端部の例を示す部分斜視図である。図5は、圧着端子1が加締められる前の電線Wを示す。図5に示すように、参考例の電線Wは、上記の切欠き部13を有していない。図6及び図7は、図5に示す電線Wに圧着端子1が加締められた状態の例を示す断面図である。図6及び図7は、図1中のA−A部の断面に相当する断面を示す。図6に示す例では、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とが離れており、両者の間隔R1は図4に示す間隔Rよりも大きい。ここで、母材11のイオン化傾向と導体部W1のイオン化傾向とは異なる場合を考える。例えば、母材11の材料が銅、導体部W1の材料がアルミニウムである場合を考える。この場合、母材11と導体部W1との間に水が浸入するとイオン化傾向の違いによって導体部W1が腐食(ガルバニック腐食)してしまうおそれがある。間隔R1が大きい場合、腐食の可能性が高い。
【0025】
そこで、図7に示すように、加締めの際に、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とを近づけると、間隔R2を間隔R1よりも小さくすることができる。間隔R2を小さくすれば、腐食の可能性を低くすることができる。しかしながら、図7に示すように、加締めの際に、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とを近づけると、第2基部41と第1バレル片部32との間において、導体部W1に急な段差Qが生じる。段差Qが生じると、導体部W1に相対的に大きなせん断力が作用するおそれがある。特に、絶縁被覆部W2の厚さが大きい場合は、段差Qの影響が大きく、導体部W1にかかる負荷が大きい。
【0026】
これら図6及び図7の参考例に対し、上記した図4の構成によれば、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とが近接し、両者の間隔Rは小さい。このため、導体部W1の露出面積を抑え、腐食の可能性を低くすることができる。しかも、例えば、絶縁性の樹脂材料によるシール剤を用いることなく腐食の可能性を低くすることができ、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができる。さらに、図4の構成によれば、導体部W1に急な段差が生じないため、急な段差により導体部W1に相対的に大きなせん断力が作用することを抑制することができる。
【0027】
また、切欠き部13を設けることにより、導体部W1の先端T1からの距離を、上記した図4に示す関係に容易に設定することができる。このため、導体部W1の露出面積を抑え、腐食の可能性を低くすることができる。しかも、例えば、絶縁性の樹脂材料によるシール剤を用いることなく腐食の可能性を低くすることができ、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができる。さらに、導体部W1に急な段差が生じないため、急な段差により導体部W1に相対的に大きなせん断力が作用することを抑制することができる。
【0028】
図8は、他の電線Waの端部の例を示す部分斜視図である。図8は、圧着端子1が加締められる前の電線Waを示す。図8に示す電線Waは、図3に示す電線Wにスリット14を追加した構成である。スリット14は、絶縁被覆部W2において導体部W1を挟んで切欠き部13の位置と反対側の位置に設けられている。スリット14は、軸方向Xすなわち電線Wの延在方向と交差する方向、例えばY方向に延在する。スリット14は、絶縁被覆部W2の厚みD1未満の深さD2を有する。スリット14は、例えば、絶縁被覆部W2に刃を当てて被覆を剥ぐ装置や絶縁被覆部W2にレーザ光を照射して被覆を除去する装置を用いることによって実現できる。
【0029】
図9は、図8に示す電線Waに圧着端子1が加締められた状態を示す断面図である。図9は、図1中のA−A部の断面に相当する断面を示す。図9に示すように、被覆加締部4が絶縁被覆部W2に加締められた状態において、切欠き部13が第2基部41側に位置する。このとき、スリット14の間隔Sが拡がる。このため、絶縁被覆部W2は導体部W1に追従しやすく、導体部W1の表面に沿って高さ方向Zの位置が変化する。この状態において、露出した導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の端部までの距離L11よりも、第2基部41に接する部分において、露出した導体部W1の先端Tから絶縁被覆部W2の切欠き部13の最も遠い部分までの距離L12の方が長い。図9に示す状態では、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とが近接し、両者の間隔Rは小さい。このため、導体部W1の露出面積を抑え、腐食の可能性を低くすることができる。しかも、例えば、絶縁性の樹脂材料によるシール剤を用いることなく腐食の可能性を低くすることができ、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができる。さらに、図9の構成によれば、導体部W1に急な段差が生じないため、急な段差により導体部W1に相対的に大きなせん断力が作用することを抑制することができる。
【0030】
[変形例]
なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付き電線100は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0031】
第2基部41に接する部分において、露出した導体部W1の先端Tから絶縁被覆部W2の端部までの距離を長くするために、絶縁被覆部W2の切欠き部を他の形状に変更してもよい。図10は、電線Wbの端部の例を示す部分斜視図である。図10は、圧着端子1が加締められる前の電線Wbを示す。図10に示すように、電線Wbの絶縁被覆部W2は、切欠き部13Aを有する。切欠き部13Aは、X軸方向すなわち電線Wの延在方向の導体加締部3側の端面M0が、電線Wの延在方向に直交する面M1に対して傾斜する面M2に沿って絶縁被覆部W2が剥かれて形成されている。つまり、絶縁被覆部W2の電線Wの延在方向の導体加締部3側の端面M0は面M2に沿っており、面M2は電線Wの延在方向に直交する面M1に対して傾斜している。ここで、導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の最も近い部分までの距離をL1とする。導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の切欠き部13Aの最も遠い部分までの距離をL3とする。このとき、距離L1よりも距離L3の方が長い。切欠き部13Aは、例えば、絶縁被覆部W2に刃を当てて被覆を剥ぐ装置や絶縁被覆部W2にレーザ光を照射して被覆を除去する装置を用いることによって実現できる。
【0032】
図10に示す電線Wbを用いた場合においても、被覆加締部4が絶縁被覆部W2に加締められた状態において、切欠き部13Aが第2基部41側に位置する。切欠き部13Aが第2基部41側に位置することにより、露出した導体部W1の先端T1から絶縁被覆部W2の切欠き部13A以外の端部までの距離よりも、第2基部41に接する部分において、露出した導体部W1の先端から絶縁被覆部W2の切欠き部13Aの最も遠い部分までの距離の方が長い。
【0033】
したがって、図4に示す場合と同様に、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とが近接し、両者の間隔Rは小さくなる。このため、導体部W1の露出面積を抑え、腐食の可能性を低くすることができる。しかも、例えば、絶縁性の樹脂材料によるシール剤を用いることなく腐食の可能性を低くすることができ、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができる。さらに、図4に示す場合と同様に、導体部W1に急な段差が生じないため、急な段差により導体部W1に相対的に大きなせん断力が作用することを抑制することができる。なお、図8及び図9を参照して説明したスリットを追加してもよい。スリット14の間隔が拡がることにより、絶縁被覆部W2は導体部W1に追従しやすくなる。
【0034】
[実施形態2]
図11は、電線Wcの端部の他の例を示す部分斜視図である。図11は、圧着端子1が加締められる前の電線Wcを示す。図11に示すように、電線Wcの絶縁被覆部W2は、テーパ部15を有する。テーパ部15は、導体部W1の先端T1に向かって、絶縁被覆部W2の外径が徐々に細くなる部分である。ここで、絶縁被覆部W2の外径をP1とし、導体部W1の外径をP2とする。絶縁被覆部W2が、外径P1から外径P1まで変化する部分がテーパ部15となる。外径が徐々に細くなるように絶縁被覆部W2を剥ぐことによって、テーパ部15を実現することができる。テーパ部15は、例えば、絶縁被覆部W2に刃を当てて被覆を剥ぐ装置や絶縁被覆部W2にレーザ光を照射して被覆を除去する装置を用いることによって実現できる。
【0035】
図12は、図11に示す電線Wcに圧着端子1が加締められた状態を示す断面図である。図12は、図1中のA−A部の断面に相当する断面を示す。図12に示すように、被覆加締部4が絶縁被覆部W2に加締められた状態において、テーパ部15が第2基部41及び第2連結部6に接する。すなわち、被覆加締部4が絶縁被覆部W2に加締められた状態において、テーパ部15の一部は第2基部41に接する。また、被覆加締部4が絶縁被覆部W2に加締められた状態において、テーパ部15の一部は、導体加締部3と被覆加締部4とを連結する第2連結部6に接する。テーパ部15は、電線Wcの延在方向の導体加締部3と被覆加締部4との間において、露出した導体部W1の先端T1に向かって、外径が徐々に細くなる。このとき、テーパ部15によって、絶縁被覆部W2は導体部W1に追従しやすく、導体部W1の表面に沿って高さ方向Zの位置が変化する。図12に示す状態では、絶縁被覆部W2とベルマウス部33とが近接し、両者の間隔Rは小さい。このため、導体部W1の露出面積を抑え、腐食の可能性を低くすることができる。しかも、例えば、絶縁性の樹脂材料によるシール剤を用いることなく腐食の可能性を低くすることができ、製造コストを抑えつつ腐食を抑えることができる。さらに、図12の構成によれば、導体部W1に急な段差が生じないため、急な段差により導体部W1に相対的に大きなせん断力が作用することを抑制することができる。
【0036】
以上で説明した一対の第1バレル片部32、一対の第2バレル片部42は、それぞれ、導体部W1に対して加締められた状態で、互いにオーバーラップするように形成されていてもよいし、第1基部31、第2基部41側の根元から先端までの距離が一方に対して他方が長くなるように形成されていてもよい。
【0037】
図1は、一対の第1バレル片部32、一対の第2バレル片部42それぞれが中央部に向かって湾曲し、先端部を電線に食い込ませてB型状に圧着する、いわゆるB型圧着方式にて圧着する場合を示す。この場合に限らず、圧着方式は他の方式であってもよい。すなわち、圧着方式は、例えば、図13に示すように、一対のバレル片部50の先端部同士が、重なり合って圧着される、オーバーラップ圧着方式であってもよい。また、圧着方式は、例えば、図14に示すように、一対のバレル片部60の斜めになっている先端部同士が接近した状態で圧着される、ラップアラウンド圧着方式であってもよい。なお、図13および図14では、一対のバレル片部を示し、電線の図示を省略している。
【符号の説明】
【0038】
1 圧着端子
2 端子接続部
3 導体加締部
4 被覆加締部
5、6 連結部
7 電線接続部
8 底板部
11 母材
12 めっき部
13、13A 切欠き部
14 スリット
15 テーパ部
31 第1基部
32 第1バレル片部
33 ベルマウス部
33a 基端
41 第2基部
42 第2バレル片部
100 端子付き電線
T1 先端
T2、T3 端面
T4、T5 端部
W、Wa、Wb、Wc 電線
W1 導体部
W2 絶縁被覆部
WH ワイヤハーネス
X 軸方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14