【実施例】
【0175】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の作り方および使い方の例を当業者らに提供するために提示され、本発明の範囲を限定することを意図しない。用いられる数字(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するようにしているが、当業者に知られるように、一部の実験的偏差が予測されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、および、圧力は大気圧であり、または大気圧付近である。
【0176】
実施例1.RADA−16溶液
本発明者らは、外科的処置中に血液を調節および/または止血するために用いられる既存の物質とは全く異なるメカニズムによって、本明細書に記載のペプチド組成物が、外科的手順において止血することを決定した。典型的には、凝固因子が用いられる。しかしながら、生理学的条件下でのかなり迅速なゲル化を介して、本明細書に記載のペプチド組成物は、凝固因子を用いずに出血部位を阻止し、薬理学的作用を伴わずに止血することができる。本発明者らは、ヒトおよび非ヒト対象に対する様々な外科的手順において本明細書に記載のペプチド組成物を用いて、ペプチドゲルが、血管の表面部分の所定の出血部位で血液細胞と絡み合い、それにより、血液凝固がゲルの上層の下側で生じるのを可能にすることを見いだした。他の物質、例えば、フィブリン糊は、凝固因子を可動化して血液凝固系を活性化することにより作用し、それにより、所定の部位からの出血を阻止する。本明細書に記載のペプチド組成物の例示的な特性は、人工的な合成ペプチドの出発原料およびいかなる動物由来の物質も含まずに、注入するための水を含む。これは、外科的手順で本明細書に記載のペプチド組成物を用いることにより、感染のリスクを、完全には排除しないにしても、大幅に減らす。さらに、本明細書に記載のペプチド組成物は水溶液で提供されるので、プレフィルドシリンジ中で供給することができ、外科的部位上に、または、外科的部位内で、直接用いることができる。典型的にフィブリン糊などの他の物質で直面するような、適用前の特別な調製は必要ない。また、水溶液の主な成分は水であり、それは、他の物質(特に接着系の物質)とは異なり、ほぼ無制限の様式での繰り返し使用が可能である。
【0177】
本実施例は、本明細書に記載の様々な外科的方法で使用される、特定のペプチド組成物(本明細書において「組成物1」と呼ぶ)を記載する。組成物1は、水中に2〜2.5%のRADA−16を含む、生体吸収性水溶液である。
【0178】
組成物1は、固相合成を用いて化学合成アミノ酸からなるペプチドを調製し、ペプチドを注入用の水の中に溶解させ、細菌フィルター(0.2mm)を用いて溶液を濾過し、そして、生じる濾液を滅菌の様式でシリンジ中に満たすことにより製造される。したがって、製造は、いかなる動物由来の物質も用いずに完了し、生物学的物質による感染の任意のリスクを排除する。
【0179】
組成物1は、澄んだ無色の液体であり、外科的部位への適用の際に(その際、ペプチド溶液は、ヒドロゲルの形成によりゲル化状態を採択する)、この透明の性質を維持し、そして、外科的手順の実施中、止血する能力を有する。この透明の性質は、組成物1を、その使いやすさおよび澄んだ術野を維持する能力の観点から、他の物質に勝って、外科的手順での使用に比類なく適するようにさせる。組成物1は、プレフィルドシリンジで提供することができ、したがって、他の物質、例えば、フィブリン糊(別個の液体から調製および混合される必要がある)と比較して、独特である。組成物1は、ペプチドから作られ、洗浄により完全に分解することができるので、そのような必要がない。本発明者らは、外科的手順での組成物1の使用に多くの利点を認識している:実質的に無制限の適用頻度、より早くより効率的な血液の調節および止血、透明の性質に起因した澄んだ術野および出血部位の維持、灌漑により簡単に除去され、外科的処置中の、出血調節手段の時間(duration)を短縮する(shortens duration of bleeding control measures)、外科的手順を完了するのに必要な時間の全体的な短縮、および、外科的処置中の失血の全体的な減少に寄与することにより、患者回復の割合を改善し得る。
【0180】
細胞培養実験は、組成物1の主成分ペプチド(CH
3CO−(Arg−Ala−Asp−Ala)
4−NH
2、以下参照)は、生体のシグナル伝達系に対して作用することにより、生物活性を示さないということを示している(データ示さず)。欧州分子生物学研究所(EMBL)および全アミノ酸配列のタンパク質配列モチーフに関する京都大学のゲノムネットデータベースリソースの研究(主成分ペプチドは、切断により生産することができる)は、公知のモチーフと高度の相同性を示すいかなる配列も明らかにしなかった。組成物1がゲルを形成した時点で、ペプチドは、トリプシン、α−キモトリプシン、パパイン、プロテアーゼKおよびプロナーゼなどの消化酵素に曝されても、分解に耐える。
【0181】
【化1】
【0182】
外科的処置中に出血を調節および/または止血するための他の手段(例えば、血塊の形成により血流をせき止める酸化セルロースまたはスターチ系の吸収剤の局所製剤)とは異なり、組成物1の作用メカニズムは、pH変化の際に出血点を封鎖する物理的特性の修正により実現される。
【0183】
実施例2.組成物1を用いた、非ヒト動物での外科的手順
本実施例は、外科的処置中に出血を調節することに関する、承認された物質の有効性の検証試験の結果に基づく、特定の動物試験を示す。ビーグル犬での人工血管片の移植の、滲出針穴出血のモデルは、自己由来の血管での吻合部からの滲出針穴出血を模して設計された。
【0184】
全ての動物は、National Society for Medical Researchによって策定された
Principles of Laboratory Animal Care、および、Institute of Laboratory Animal Research(ILAR)により作成され、National Academies Pressにより出版(1996)された
Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従った人道的ケアを受けた。
【0185】
ウサギの腹部大動脈穿刺。開腹を行なって各ウサギの腹部大動脈をおよそ10cm露出させた。ヘパリンナトリウム(500 IU)を静脈内投与した。注射針(23〜26G)を用いて腹部大動脈を穿刺することにより出血モデルを確立した。出血が確認された後、末梢および中央の血流をクランプして、シリンジを用いて組成物1を創傷部位に直ちに適用した。血流を1〜2分後に再開させて、穿刺部位を出血について目視した。本試験で用いたウサギの腹部大動脈をホルマリン中で固定して、組成物1で処置された部位および処置されなかった部位(コントロール)の両方の血管横断面を用いて病理検体を作り、それから、顕微鏡下で観察した。
【0186】
結果は、≧2%のペプチド濃度の組成物1の投与後に、出血の全体的な停止が、2%のペプチド濃度の組成物1で処置された1動物を除いて全ての動物で見られることを示した。構造のない(structure−less)好酸性のゼラチン化組成物1は、血管穿刺の部位および表面で観察された。さらに、ゼラチン化組成物1は、穿刺を物理的に閉塞する組織表面上のコーティングを形成していることが観察された。
【0187】
ビーグルの腹部大動脈移植置換。体重が13.1kgおよび11.4kgの雄ビーグル(n=2)を、組成物1を使用した大動脈移植置換の外科的手順に用いた。腹部大動脈を、全身麻酔の下で開腹により露出させた。ヘパリンナトリウムを、1000 IUで静脈内注入した。活性化凝固時間(ACT)が200秒を超えたことを確認後、腹部大動脈をクランプして、端末間の(end−to−end)移植置換の手順を行なった。移植吻合および針穴からの滲出性出血(滲出型の出血)が観察された。組成物1を針穴に適用して、有効性および出血の停止を評価した。
【0188】
結果は、吻合部位からの滲出型の出血が止まり、およそ2mLの2.5%組成物1の適用後約1分で、吻合滲出の停止が観察されることを示した。さらに、針穴からの滲出型の出血も止まった。腹部大動脈の穿刺の出血モデルを、ウサギで用いたのと同じサイズの26−G注射針を用いて人工血管移植片に穴を開けることにより準備し(上述)、その結果として血液の噴出が確認された。末梢および中央の血流を止めて、およそ1mLの2.5%組成物1を適用した。約1分後に血流を再開させた。創傷部位での完全な止血が確認された。この手順を、移植片上の3つの別々の部位で、3回繰り返した。術後観察を3日まで行なった。
【0189】
マウス静脈内投与。組成物1は、出血部位からの血液と接触するとすぐ、ゲルを形成する。出血部位での適用を介して、ゼラチン化組成物1の一定量(an amount)が血流に入ることが可能である。本実施例では、組成物1の静脈内投与の安全性を、マウスを用いて示した。
【0190】
手短には、懸濁液中のゼラチン化組成物1を、生物学的悪効果を有すると考えられる濃度で投与した。結果は、マウス対象での死亡が、40倍希釈まで観察されることを示した。直接の原因は決定しなかったが、死亡は肺閉塞症に起因することが疑われた。マウスにおいて検死解剖は行わなかった。しかしながら、以下の異常な行動は、肺梗塞を示す:自発行動の減少、しゃがみこみ姿勢、および呼吸亢進。80倍希釈では死亡は観察されなかったが、異常な知見(無活動および呼吸速迫)が観察された。160倍希釈では、異常は観察されなかった。
【0191】
同様の実験では、モルモットに、160倍希釈懸濁液で0.2mLの組成物1を投与した。いかなる動物においても、異常な行動は観察されなかった。
【0192】
理論に拘束されることを望まずに、これらの結果は、以下の条件を仮定するヒトに対して推定し得る:対象は、全血液容量4.6Lを有する体重60kgの成人である。この基準を仮定して、および、マウス(約40gの体重で、約3mLの全血液容量)を用いて観察されたデータを使用して、マウスで観察されたのと同様の様式で死亡を引き起こす可能性のある、静脈内注射を介して投与される組成物1のゲルの予想量は、4〜40倍希釈の、およそ770mL、またはおよそ19.3〜193mLの組成物1である。そのような容量は、外科的手順で用いられる容量よりもずっと多い。本実施例により示されるように、組成物1は、様々な動物での外科的モデルにおいて、出血を調節するための安全かつ効果的な溶液である。
【0193】
本実施例に示されるように、組成物1の適用は、上述の例示的な動物の外科的手順での止血に有効性を示した。さらに、静脈内投与の実験から、シリンジによる5mLの組成物1の単回投与は、直接血管へ誤って投与した場合でさえ、肺閉塞症または死をもたらす他の有害事象を引き起こす可能性がない。
【0194】
実施例3.冠動脈バイパス移植(CABG)
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた冠動脈バイパス移植の外科的処置、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は、組成物1(上述)である。
【0195】
冠動脈バイパス移植(またはCABG)は、内胸動脈の剥脱または大伏在静脈の採取で始まり、それらは移植片として用いられる。内胸動脈は、阻止された冠動脈から離れた心臓の外側領域に吻合される。採取された大伏在静脈は、冠動脈の基部および病巣の(阻止された)冠動脈から離れた心臓の外側領域に吻合される。
【0196】
典型的に、CABG外科的処置では、移植片としての内胸動脈は、過去の成功率を理由に、最初の選択肢である。場合により、より多くの移植片が必要な場合は、大伏在静脈を用いることができる。出血は、CABG外科的処置の複数のステージ中、例えば、内胸動脈の剥脱または大伏在静脈の採取で起きる可能性があり、それらは、移植片として使用され、ヘパリン化、様々な心臓動脈および移植片の吻合部位、および、心臓および酸素供給器のカニューレ(チューブ)の連結部位に起因して、上記領域で再出血する(
図3)。
【0197】
剥脱または移植片採取部位での出血。剥脱または移植片の採取は、標準的な外科的器具または電気メスを用いて行われる。採取部位からの出血は、通常、電気メスを使用した結果であり、この外科的処置を受ける患者は、酸素供給器の連結に備えて、血液が凝固するのを防ぐために、この手順の後にヘパリン化される。ヘパリン化の後に、滲出型の再出血が採取部位から頻繁に生じ、その際に電気メスが、そのような再出血を止めるために通常用いられる。これは、CABGの手順を長引かせる余計な時間をとる可能性があり、そして、組織に損傷を生じさせる。これは、治癒の工程を長引かせ、手順後の回復をより遅らせる。外科的処置の標的は移植片の採取ではなくバイパスなので、外科医は、外科的処置中の出血を最小限にするために、外科的処置を行なうのに必要な全体的な外科的処置時間およびステップを最小限にすることを望む。出血を調節する既存の外科的方法は不十分であり、この手順中の出血を調節するのに、典型的に、および、幅広く用いられない。その代わりに、電気メスが用いられ、任意の出血を止めるために組織が焼かれる。
【0198】
CABG外科的処置では、組成物1は、出血を調節するための手順中の複数のステップで適用することができ、外科的処置を完了するのに必要とされる全体的な時間を減らす。組成物1を採取部位に適用して、効果的に出血を防ぐことができる。その使いやすさに起因して、組成物1は、採取手順前および採取手順中に適用することができる。さらに、ヘパリン化の前に適用することもできる。手順中の出血およびヘパリン化の後の再出血を防止することにより、外科医は、出血の合計量を減らして、外科的処置を完了するのに必要とされる全体的な時間を短くすることができる。さらに、この時間節約は、麻酔に必要な時間において同様に考えられる。
【0199】
そのような外科的処置が必要な患者における1つのCABG外科的処置の手順では、成功的なバイパスを行なうために4つの移植が必要である。移植あたりの時間は5〜20分に減少し、外科的処置を行なうための全体的な時間は20〜80分に減少する。この時間減少は、部分的に、手順における電気メスの必要性の排除または低減に起因する。さらに、感染リスクの低減が観察される。CABG手順の実施のための減少した時間の結果として、合計入院期間が減ることが期待される(例えば、1つの24時間の期間(one 24 hour period))。ある場合には、外科医が、手順中に困難な再出血に直面する場合は、追加の2または3日の入院が必要とされる。
【0200】
組成物1のようなペプチド組成物は、剥脱または移植片採取の間、およびその後に、標的出血部位周辺の広範な領域で出血部位に適用され、そのまま領域に留まるのを可能にする。これは、溶液が標的部位上でゲル化状態に形成するのを可能にする。ペプチド組成物の手操作(例えば、人の指で擦り込むことによる)は、ゲルの崩壊をもたらすので勧められない。ペプチド組成物は、溶液からゲルに状態が変化するにもかかわらず、透明のままである。この独特の特性は、澄んだ術野の維持、および、手順中の複数部位からの出血の、改善されかつ優れた調節を可能にする。溶液を含むプレフィルドシリンジおよびそのような手順での使用に適した特殊なノズルの使用は、手順の様々なステップおよび手順全体を行なうための時間の減少に寄与する。ペプチド組成物は、CABGの手順の最後に、その領域から洗浄することができる。
【0201】
SURGICEL(登録商標)は、低pHの酸化セルロースポリマーから作られ、血液の凝固を誘導することにより、外科的処置後の出血を調節するために用いられる。それは、神経毒性のインシデント(incident)と関連している。例えば、SURGICEL(登録商標)は、下歯槽動脈からの体内動脈出血を調節するために、口および顎顔面の外科的処置において広く用いられる。下歯槽神経を露出して下顎管に置いた場合に、神経毒性効果の報告がされている。
【0202】
CABG外科的処置では、SURGICEL(登録商標)を出血部位に適用することができるが、外科医は典型的に電気メスを好む。好ましい電気外科的な使用は、部分的に、SURGICEL(登録商標)を使用するために必要とされる時間に起因し(それは綿毛またはシートタイプの特性を有するため)、そして、外科医は、ピンセットを用いてそれを切断して、続いて、血液を除去した後にそれを出血部位に適用しなければならない。SURGICEL(登録商標)がピンセットに張り付きやすいため、これは困難なタスクである。SURGICEL(登録商標)は、粘着性になるためには血液を吸収する必要があり、それによって、出血を調節する。さらに、加圧力、または、そのための時間が、血液の吸収を可能にするために所定の位置に留まるために必要であり得る。この場合、移植領域はこの外科的処置の主な標的ではないので、外科医は典型的に、外科的処置が終了するまで適用されたままにしておく。SURGICEL(登録商標)は黒色に変わり、結果として、標的部位内の動脈を黒くさせる。これは外科的部位の可視性を低下させる。接着特性を多少有するので、SURGICEL(登録商標)は、適用後にピンセットで除去されなければならない。このステップは、手順を完了するための時間を増やし、時折、除去するときに周辺組織への損傷が再出血を引き起こし得る。さらに、外科医は、SURGICEL(登録商標)が除去されるまで、出血が調節され全ての領域から止まっていることを、確認することはできない。
【0203】
フィブリン糊は、SURGICEL(登録商標)と同様の様式で適用され得るが、上述のとおり、外科医は、電気メスを使用することを好む。フィブリン糊をCABG外科的処置において適用する場合、典型的に、スプレーノズルを取り付けることにより噴霧される。標的領域上の血液を除去した後に、より大きな加圧力によって、または圧縮空気を使って、噴霧される。フィブリン糊は、その位置に留まるのに十分粘着性になって任意の出血を止めるためには、5〜10分を要する。時折、フィブリン糊は、ガーゼなどを用いた圧力を要する。フィブリン糊は、ヘパリン化した血液に対する有効性はなく、出血に対して前もって適用することはできない。それが適用され、出血を十分に調節しない場合は、再適用するために除去されなければならない。このことは、フィブリン糊を適用しようとする際の手順およびステップにさらに時間を招く。これは再出血をもたらす可能性もある。SURGICEL(登録商標)の使用と同様に、外科医は、フィブリン糊が除去されるまで、出血が調節され全ての領域から止まっていることを、確認することはできない。
【0204】
体循環後およびの冠動脈から出血。内胸動脈を剥脱後、片方の末端を、阻止した冠動脈の末梢末端に吻合する。これを達成するために、標的とされる冠動脈は、心臓の表面から特定される必要がある。しかしながら、心臓は脂肪組織で覆われていて、外科医は、冠動脈を見つけるために、脂肪組織の中を掘らなければならない。これは出血をもたらす可能性がある。出血点を特定することができれば、止血クリップを適用し、特定できなければ、出血は、ガーゼによって広範囲にわたって圧迫止血され、それは約1分間圧迫しなければならず、そして、出血は調節される。この時間中、手順を休止しなければならない。その代わり、本明細書に記載のペプチド組成物は、透明であり、適用領域は外科的器具によってオペレートすることができるので、冠動脈の領域に、出血を防ぐために前もって、または、任意の出血がその領域に見られる場合に、適用することができる。SURGICEL(登録商標)およびフィブリン糊は、一度適用した領域にさらなる外科的手順を受け入れないので、前もって適用することができない。出血の発見後にSURGICEL(登録商標)およびフィブリン糊を適用する場合、適用のための手順を止める必要があるため、さらなる時間を要する。
【0205】
吻合された動脈からの出血。大伏在静脈が冠動脈に吻合される場合、糸と針によって、または自動吻合装置によって行われ、典型的に出血を伴う。焼け焦がしは吻合動脈に損傷を生じさせるため、電気メスを用いてこのタイプの出血を調節することはできない。出血が本質的に噴出性である場合、適切な領域に対して追加の縫合がなされる。必要であれば、フィブリン糊、SURGICEL(登録商標)、または、ガーゼによる圧迫止血が適用される。SURGICEL(登録商標)は典型的に、フィブリン糊よりも小さな出血部位に適用される。この場合、動脈は丸い形状なので、適用は最初、動脈の片側にされて、それから、動脈が回転されて、他方に適用される。フィブリン糊に圧力をかけることにより、有効性を高めることができる。しかしながら、フィブリン糊のメカニズムは、血液自体の凝固に依存し、圧力下でさえ、10分を超える時間を要し得る。
【0206】
本明細書に記載のペプチド組成物は、吻合動脈に容易に適用される。それは、指またはガーゼに一旦適用し、それから、吻合動脈の見えない領域に貼り付けることができる。この場合、フィブリン糊とは異なり即時の圧迫止血が可能であり、適用後の血圧による再出血が防がれる。このことは、圧迫止血下で時間を最小限(2〜5分)にして、出血を調節するプロセスを高める。
【0207】
心臓および酸素供給器のカニューレ/チューブの連結部位での出血。CABG外科的処置では、心臓が鼓動するのを防止する必要がある場合、患者の体の残りの部分に血液を循環させるために、酸素供給器がカニューレ/チューブを通して動脈および心臓に連結される。カニューレは直接挿入されて縫合により固定される。循環中に縫合部位上に、または、カニューレが取り外された後にその除去部位上に、出血が特定されることがある。フィブリン糊は典型的に、領域を固定してカニューレの取り外しを困難にするので、適用されない。さらに、SURGICEL(登録商標)は、そのシート様の特徴のせいで適用するのが困難である。典型的に、ガーゼを出血点の上に圧迫して置く。出血が残る、または、より強くなる場合は、追加の吻合が行われる。本明細書に記載のペプチド組成物の、独特の非糊/非シートの特性は、この状況および外科的処置中に直面する出血のこれらのタイプに特に適用可能にさせることができる。
【0208】
ヒトの心臓血管の外科的処置での、組成物1の臨床試験。試験プロトコルは、東邦大学医療センター佐倉病院および大森病院の治験審査委員会によって承認された。インフォームド・コンセントは全ての患者から得られた。この臨床試験では、25名の患者(男性22名、女性3名)の33の適用部位が、組成物1の適用の標的とされた。特定の基準を満たした患者は、2010年1月から2011年4月の間に、CABG、腹部大動脈瘤(AAA)または閉塞性動脈硬化症(ASO)の血管の外科的処置を受けた。
【0209】
以下の除外基準を用いた:(1)ペプチド薬またはタンパク質製剤に対して過敏性の過去の病歴を有する個体、(2)試験の妨げとなり得る、外科的処置に適応される疾患以外の重大な合併症を有する個体、(3)外科的手順における組成物1の使用に影響し得る薬剤(例えば、血液凝固薬(血液凝固促進剤;すなわち、ヘモコアグラーゼ)および抗線溶剤(例えば抗線維素溶解性作用を有する薬剤;εアミノカプロン酸、トラネキサム酸、アプロチニン製剤など))を中断することができない個体、(4)子どものBまたはCの分類(child’s classification of B or C)を有する個体、および(5)試験員により、それ以外の理由で試験に不適切であると見なされた個体。
【0210】
全ての手順は、患者が全身麻酔されている間に行なった。CABGは、心肺バイパスをせずに行なった。手順中に、ヘパリンナトリウムを200 IU/kgで投与し、手順後に、200秒の標的ACTを達成するために、プロタミンサルフェートを投与した。AAAを治療するための、人工血管移植片の置換の外科的処置を、ウーブンダクロン移植片(J−graft;Japan Lifeline、東京、日本)を用いて行なった。ASOを治療するための、移植バイパス外科的処置または自家の静脈パッチ形成を、それぞれ、ePTFEリング付きGore−Tex血管移植片(WL Gore&Associates;Flagstaff,AZ,USA)および伏在静脈を用いて行なった。外科的手順中、ヘパリンナトリウムを5000 IUで投与したが、外科的手順後、プロタミンサルフェートは典型的に用いなかった。
【0211】
CABGの手順では、組成物1の適用を指定された標的部位は、血管間の吻合部位であった。AAAおよびASOを治療するための外科的手順に関して、組成物1の適用に関する標的部位は、移植片吻合部位および自家の静脈パッチ形成部位を含んだ。適用の標的とされる出血タイプは、(1)フィブリン糊およびコラーゲン物質により典型的に止まる血液滲出、および(2)結紮、クリップ、および凝固のような他の方法論を用いた典型的な処置では効果がない、または実行的ではない血液滲出であった。噴出または湧出する出血の多量の血液に直面した場合は、結紮、クリップ、または凝固を含む他の処置の方法論を典型的に行なった。組成物1は、これらの状況では適用しなかった。
【0212】
吻合血液がガーゼにより除去された後、組成物1を、ゲル化組成物1を破壊せずに穏やかに均一に適用し、そして、プロタミンサルフェートの投与前に、各標的部位に塗り付けた。具体的には、およそ1mLの2.5%組成物1を冠動脈吻合部位に適用し、およそ2mLを大動脈吻合部位に適用し、およそ1mLを他の末梢血管の吻合部位に適用した。
【0213】
評価される組成物1の一次エンドポイントは、術中の出血であった。それは以下のように決定した:完全な応答(CR)、標的部位での出血の全体的阻止;部分的な応答(PR)、一時的な出血の全体的阻止が確認されるが、永続的な止血が、処置を必要とする術中の二次的出血に起因して、適用部位に組成物1を再適用した後にのみ見られる;わずかな応答(MR)、一時的な止血が確認されるが、永続的な止血が、処置を必要とする適用部位からの術中の二次的出血に起因して、組成物1以外の手順を用いた後にのみ見られる;応答なし(NR)、標的部位からの出血は減少されず、止血が達成されない。
【0214】
術後出血の二次エンドポイントを記録して、以下のように決定した:CR、術後検査において術後出血は見られない;PR、組成物1適用部位からの術後出血が術後検査から推測され、再度のオペレーションは必要ない;および、NR、術後検査において組成物1適用部位に由来する術後出血が見られ、再度のオペレーションを要する。
【0215】
任意の異常な発見または副作用を含む有害事象は、症状、重症度、持続時間、処置、経過および転帰、および試験薬との関連性(および任意の関連性の決定理由)に関して記録された。
【0216】
結果。対象は、54〜80歳の範囲の年齢の25名の患者(男性23名、女性2名)で構成された。これらの患者のうち、9名がCABG外科的処置を受け、4名がAAA外科的処置を受け、12名がASOに関する外科的処置を受けた。組成物1を33の部位、具体的には、内胸動脈−冠動脈吻合の領域(n=1)、伏在静脈−冠動脈吻合(n=4)、上行大動脈−伏在静脈吻合(n=4)、移植片吻合(n=15)、および、自家の静脈パッチ形成(n=9)に用いた。適用の平均面積は3.03cm
2(0.25〜10cm
2の範囲)であった。適用した組成物1の平均量は、1.5mL(0.5〜3mLの範囲)であった。観察された有効率は、一次エンドポイント(術中の出血)に関して87.9%であり、二次エンドポイントに関して100%であった(出血後の術後の発生;表4)。ヘパリン処置に関しては、観察された有効率は85.2%(23/27)であり、止血のための時間は153.6±38.7秒(平均±S.E.)であった。プロタミン処置に関しては、有効率は100%(6/6)であり、止血のための時間は195.0±130.1秒(平均±SE)であった。組成物1の適用に対する因果関係を有する有害事象(重大な有害事象を含む)は見られなかった。
【0217】
【表4】
【0218】
上述の臨床試験における組成物1の有効性の評価は、Starkら(Stark Jetal.1984,Ann Thorac Surg 38:411−413)により示されるとおりに実施した。以前に、ラットでの滲出出血の全体的な止血は23.1%〜100%と報告されている。本実施例に示すように、組成物1は、この範囲の上端を演ずる。さらに、この数値中に評価されていないものは、動物由来の産物またはヒトの血液成分を含まない感染フリーの物質の使用による利益の追加である。組成物1は完全に合成なので、感染リスクを引き起こさない代替物質を提供する。
【0219】
本実施例に示すように、組成物1は、25名の患者において33の部位に適用され、87.9%(29/33;表1)の有効性および安全率を示した。ヘパリン−およびプロタミン−処置の個体における、組成物1の有効性に違いは見られなかった(データ示さず)。術後出血または任意の種類の他の有害事象は見られなかった。これらの知見に基づき、組成物1は、心臓血管の外科的処置中の滲出出血に対して優れた局所止血を示す、安全かつ便利な代替物質を提供する。
【0220】
実施例4.胸部大動脈置換
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた全体的な置換の外科的処置によって、大動脈瘤の領域を、弓(arch)から大動脈瘤の遠位領域へ置換する外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は組成物1(上述)である。
【0221】
手短には、外科的手順は5つのステップ(1)大動脈のクロスクランピングおよび心肺バイパスの確立(脳を保護する還流を含む)、(2)下行大動脈の吻合(末梢側)、(3)上行大動脈の吻合(中央側)、(4)左鎖骨下動脈、左総頸動脈、および腕頭動脈の吻合、および(5)心肺バイパスの離脱、を含む。
【0222】
大動脈遮断および人工心肺装置の確立(脳を保護する還流を含む)。胸骨正中切開および心膜切開を行ない、その後に、上行大動脈と心臓の摘出を行なう。それからヘパリンを投与する。人工心肺装置と患者との間に血液を還流させるために、右腋窩動脈、腕頭動脈、左総動脈、左鎖骨下動脈、および下行大動脈にチューブを挿入する。その後、各血管の遮断中に、人工心肺措置による血液還流を始める。心筋保護液を注入して心臓を止める。
【0223】
下行大動脈吻合(末梢側)。下行大動脈を電気メスで切断して、3−0または4−0プロリン糸を用いて血管移植片と吻合する。深い領域での視野が制限されるので吻合の確実性が必要であり、還流を始めた後に止血するのは困難である。
【0224】
上行大動脈吻合(中央側)。上行大動脈を電気メスで切断して、3−0または4−0プロリン糸を用いて血管移植片と吻合する。血液還流の再開前に気泡を取り除くために、通気管を血管移植片に挿入する。クランプを外す前に吻合の領域全体へのフィブリン糊を適用することは、滲出および湧出する出血のリスクを減らすが、この手順は、フィブリン糊と吻合領域との間からの出血をもたらし得る。この場合、出血が増加するリスクがあるため、フィブリン糊を剥がす代わりにフィブリン糊の再適用が必要である。吻合領域および以前に糊を適用した領域の間にフィブリン糊を適用するのは困難である。この場合、SURGICEL(登録商標)の繰り返し適用は、止血するのに十分でない可能性があり、最終ステップは長期間の圧迫止血である。長い時間。液状フィブリン糊が止血できない場合は、シートタイプのフィブリン糊を適用する。さらに出血がある場合は、フィブリン糊を剥がしてから、針と糸を用いて第二の吻合を行なう。外科的手順におけるこれらのステップは、フィブリン糊が除去される吻合領域の攪乱に起因して出血量を増やすだけでなく、残っているフィブリン糊によって吻合が複雑なので、外科的処置の時間をさらに増やす(約20〜90分)。
【0225】
その代わり、本明細書に記載のペプチド組成物(例えば、組成物1)は、フィブリン糊で出血が止まらなかった領域および吻合の特定部位に、綿棒および/または注入によって、適用することができる。クランプする前の組成物1などの適用は、組成物1を吻合部位上の血管の浅層に混ぜ込むことを可能にする。適量の組成物1を適用し、重力のせいで剥がれ落ちたりクランプを外した後に血圧のせいで部位から押しのけられたりしないように、その部位に保つ。クランプを外している間、鉗子をゆっくり取り外して、約30〜60秒待って組成物1が血液とゼラチン化するのを可能にする。組成物1が溶液およびゼラチン化した時点の両方で透明の物質であるので、内側からの血管の流れは目に見ることができる。血圧のせいで組成物1が洗浄または押し出される場合は、クランプを維持しながら、出血が止まるまで繰り返して再適用することができる。出血が完全に止まった時点で、クランプを外す。
【0226】
腕頭動脈、左総動脈、および左鎖骨下動脈の吻合。腕頭動脈、左総動脈、および左鎖骨下動脈を、電気メスで切断して5−0プロリン糸により血管移植片に吻合し、その後にプロタミンを投与する。上述のとおり、この手順中、組成物1を用いてよい。
【0227】
人工心肺装置からの離脱(心拍による循環の再開)。人工心肺装置と患者を連結するチューブの挿入部位を6−0プロリン糸で閉じる。腕頭動脈、左総動脈、および左鎖骨下動脈の血液循環を再開し、体循環を再開する。
【0228】
実施例5.リンパ節郭清
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いたリンパ節郭清、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することのできる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は、組成物1(上述)である。
【0229】
肺門および縦隔のリンパ節郭清は、肺癌の標準的な処置であることが知られ、リンパ節および解剖学的部位内の周辺組織の切離を要する。
【0230】
左大動脈周囲リンパ節郭清。左主肺動脈の部位上で縦隔胸膜を、電気メスによって大動脈弓の上部へ切開する。電気メス、ハサミおよびガーゼボール付きの鉗子を用いて縦隔胸膜を周辺組織とともに剥がす。リンパ節を、大動脈の裂孔の上部から切離する。内側で、肺動脈を外面化しながら、組織周辺のリンパ節を切離する。リンパ節全体をアリス鉗子で包んで引き出す。次に、周辺の血管および結合組織を、電気メス、ハサミおよびガーゼボール付きの鉗子で剥がす。それから、リンパ節を切開して電気メスにより摘出する。リンパ節が血管壁に付着している、または、血管壁に観血的に組み込まれている場合は、標準的な切離の手順を続けることは困難性が残る。したがって、リンパ節は、5〜15分間の圧迫止血および結紮縫合の後に、滲出および湧出の出血がある状況下で切り離さなければならない。それ以外の方法では、血管をクランプしてリンパ節を摘出し、それは血管の再建が必要である。最悪の場合には、外科的処置の手順を、肺の全摘出のようなケースに変換しなければならない。これらの外科的手順の変換は、外科的処置の時間をfするが、術後出血のリスクも高める。したがって、切離の標準的な手順を後に続けることが理想的である。
【0231】
本明細書に記載のペプチド組成物(例えば、組成物1)を、剥離表面上の出血を予防するために適用することが可能である。組成物1は、重力がゆっくりそれを下へ引っ張るという物理的特異性を有するので、組成物1を、剥離表面上だけでなく、特異的にリンパ節全体に適用することも可能である。必要に応じて、大量使ってよい。凝固するフィブリン糊を使うことは適切でない。同様に、SURGICEL(登録商標)(切離に先立って剥離表面全体を覆う)は最適でない。
【0232】
事前に出血の処置をしない切離の場合、組成物1の適用直後に切離を始めることができる。フィブリン糊を領域に適用する場合、切り離すことが困難であり、剥がすときに出血を促進する可能性がある。SURGICEL(登録商標)は、適用部位を隠し、したがって、切り離すことができないので、この場合使うことができない。さらにSURGICEL(登録商標)は、完全に止血する長期間を要する。
【0233】
十分な期間後、および、SURGICEL(登録商標)を除去しても、出血が止まらない可能性がある。これは、SURGICEL(登録商標)を適用する場合、止血を確実にすることができないという事実のせいである。この場合、再適用が必要である。出血は軽度であり得るが、広範囲の出血が再度始まる可能性があり、したがって、外科的処置の時間が延びる。
【0234】
実施例6.整形外科的な外科的処置での本明細書に記載のペプチド組成物の適用
以下の実施例は、転子間股関節骨折を修復するための外科的処置での、本明細書に記載のペプチド組成物(例えば組成物1)の適用を示す(
図4)。3〜5倍の重量に耐えることのできる金属ネイルプレートまたはガンマネイルにより、骨折部位を固定する。近年では、外科的技術および金属固定器具の近代化により、骨折部位に対する圧縮力は、平面上の骨折部位が滑るのを防ぐために、骨折した骨へ導入されるスクリューとプレート(または三翼固定釘)により作られる。
【0235】
組成物1の適用を伴う、転子間骨折のためのガンマネイル。最初に、骨折部位で皮膚を切開する。大腿筋膜を通って小さな切開を深くして、標的の大腿骨に到達するために外転筋を裂く。切開中に出血に直面したら、通常、ガーゼによる圧迫止血を行なう。出血を止めるのに5〜10分必要であり、手順を停滞させなければならない。また、高周波電子装置によるさらなる凝固を介した出血の調節は、頻繁に適用するのに相当な手順時間を要する。その代わり、組成物1は、多数の出血点を含み得る出血の幅広い領域にわたって、適用によって出血をより迅速に調節する利点を示す。さらに、組成物1の透明な性質に起因して、術野内に妨害または障害はなく、したがって、いかなる遅れも伴わずに手順を通常どおりに進めることができる。
【0236】
筋肉の切開により大腿骨を露出後、ガンマネイルを適切な位置に導入する前に、大転子の上部から大腿骨の管へガイドワイヤーを導入する。それから、ガイドワイヤーに沿って、釘の導入に適切な直径で穴をリーマーで作る。手順のこの時点で、大腿管からの任意の出血を調節するために、骨ろうを典型的に用いる。骨ろうは、使用前に混練および/または加温が必要な粘度様物質である。典型的にこれは、外科医の指により手作業で達成することができる。あるいは、骨ろうの代わりに組成物1を用いることができる。骨ろうのような適用前の調製は、組成物1には必要なく、より迅速な出血の調節が達成される。特に、組成物1は、骨折または骨にされる修復のタイプに応じて、骨内の穴または骨折に適したノズル付きのプレフィルドシリンジにより適用することができる。さらに、組成物1は、澄んだ術野を維持するその透明な性質のため手順が阻止されず、および、灌漑により簡単に除去されるという、追加の利益を提供する。
【0237】
骨ろうおよび組成物1の両方の適用は、所定の骨または骨折部位に対するそれらの適用に関して同様であるが、骨ろうは骨癒合を遅延させる傾向があり、一方で、組成物1は骨癒合を促進し、骨ろうよりも治癒の有効性が高いことが期待される。さらに、骨ろうは炎症を引き起こす可能性があり、一方で、組成物1はそのようなことはなく、それは、その高い生体適合性に部分的に起因する。
【0238】
リーマーによって開かれた大腿管に、ガンマネイルを導入する。この手順中に管から出血した場合は、骨ろうを用いる。その代わりに、この時点で組成物1を適用し、外科的手順の停止を招かない。さらに、出血の調節は、導入前に、ガンマネイルの表面上へ組成物1を適用して達成される。
【0239】
大腿骨骨頭へのラグスクリュー導入前に、外側大腿骨の入口点を専用の器具により決定する。それから、大腿筋膜を通って入口点で皮膚を切開して、標的の骨に到達するために外転筋を裂く。出血が生じる場合は、典型的に、ガーゼによる圧迫止血、または凝固を出血部位に対して行う。あるいは、より迅速な血液の調節および止血を達成するために組成物1を適用する。この適用は、標的の適用に用いることのできるプレフィルドシリンジに適切である。これは、外科的手順を完了するための全体的な時間を減らし、より迅速な回復を患者にもたらす。
【0240】
ラグスクリューは、骨のサイズおよび骨折部位の位置を考慮して選択される。それから、穴にラグスクリューを受け入れるのに適切な直径および長さを決定し、ラグスクリューのための穴を、大腿骨の外側から大腿骨骨頭の中央の真下に向かって、リーマーを使って作る。次に、この穴の中にラグスクリューを挿入して、釘およびラグスクリューを固定する。これは、転子間部の骨折と大腿骨のコアとの間の固定をもたらす。リーマーで骨の穴を広げた後にラグスクリューの穴から出血が生じる場合は、典型的に、骨ろうを手作業で穴の中に置き、出血を調節する。その代わりに、骨ろうと同様の様式で組成物1を置くことができ、または、注入することができ、より効果的な骨癒合を提供する。
【0241】
導入された釘を大腿骨に固定するために、釘の穴および大腿骨のコアに、スクリューを垂直に挿入する。大腿筋膜を通る入口点で皮膚を切開する。外転筋を切り開いて標的の大腿骨を露出し、リーマーで大腿骨に穴を作った後にスクリューを釘に挿入する。この手順の間、大腿管への釘の導入での手順と同様に、皮膚、外転筋および骨髄からの出血に対して、ガーゼによる圧迫止血、または凝固を行なう。その代わりに、組成物1を、ガーゼによる圧迫止血に置き換えることができ、そして、必要に応じて、所望の位置上への流れをコントロールするための特殊なノズルを備えるプレフィルドシリンジなどを用いて、標的の様式で適用することができる。標準的な技術は、部位(例えば、皮膚、筋肉および骨)に応じて出血を別々に調節するための方法を用いる。反対に、組成物1は、単一の手順または方法論で、組織にかかわらず異なる部位に適用することができ、複雑な手順を排除し、外科的処置に要する全体的な時間を減らすことができる。
【0242】
外科的処置は、外転筋、大腿筋膜および皮膚を縫合により閉じることにより完了する。この手順では、切開部位から出血が生じる場合、ガーゼによる圧迫止血または多くの縫合が増える。その代わり、組成物1は、シリンジによる切開部位上への直接適用によって、手順におけるこの時点で効果的に用いることができ、手順時間を短くして必要な縫合数を減らすことができる。組成物1の透明な性質のため、縫合がされる術野は隠されない。本出願は、手順に対して追加の時間を少しも追加せず、外科的部位を閉じることを適切に促進することができる。
【0243】
実施例7.肝臓の外科的切除(肝切除)
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた肝臓の外科的切除、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は、組成物1(上述)である。
【0244】
肝切除は典型的に、超音波の外科的処置の吸引ユニット、超音波凝固切開装置および電気メスを用いて行われる。肝臓内の血液循環系および索状物を、超音波の外科的処置の吸引ユニットにより露出する。胆管門脈または厚脈(thick vein)からの出血は、通常、結紮され(litigated)、および、3−0糸よりも細い索状物からの出血は、超音波凝固切開装置により止められる。また、肝臓の虚血−再灌流も行なって、肝臓の血液循環系のクランプおよび放出を繰り返すことにより出血量を減らす。
【0245】
肝臓の血管付近、特にグリソン鞘の周辺で電気メスを使用することは、血管損傷のリスクのため、依然として困難なままである。滲出性出血(電気メスにより焼灼された部分から徐々に出る)を止めることはできない。さらに、出血が既に止まっている部分の近くに電気メスを適用すると、かさぶたを剥がすことによる再出血を引き起こし得る。ペプチド組成物(本明細書に記載の、例えば、組成物1)が適用された部分には、しかしながら、電気メスを用いることができる。SURGICEL(登録商標)およびフィブリン糊を用いる難点は、適用部位で、さらなる肝臓の分離または血管の剥脱を行なうことができないことである。さらに、末梢組織に損傷を生じさせずにフィブリン糊を除去することは困難である。しかしながら、組成物1は、例えば、適用部位上にさらなる処置を行なう機会を提供し、血管系に損傷をほとんど全く引き起こさない。したがって、全体的な外科的処置の時間が減る。
【0246】
出血点が明確に特定されない場合は、止血するための圧力の使用は、典型的にガーゼを用いて行なわれる。SURGICEL(登録商標)を適用することもできるが、患者での肝臓分離の凝固性は典型的に低いため、有効性は低い。フィブリン糊は出血点以外の組織を凝固させ、除去するのが困難であるため、この場合、フィブリン糊は適用しない。例えば、組成物1は、出血有効性(hemorrhage efficacy)が高く、吸引、ガーゼまたは洗浄によって簡単に除去されるので、この場合に躊躇なく適用することができる。内視鏡的または腹腔鏡下な外科的処置の場合では、出血点の特定はよりいっそう困難である。これは、ペプチド組成物(例えば組成物1)の適用の、より有利な状況を示す。
【0247】
出血点が明確に特定される場合は、滲出にSURGICEL(登録商標)を適用することができるが、ペプチド組成物とは異なり、追加の処置を行なう前に除去しなければならない。このことは、出血を調節するために必要な時間を著しく増加させる。本明細書に記載のペプチド組成物は、適用部位に対して追加の処置を行なうことができ、オペレーションが出血を止めるプロセスにより中断されないので、有利である。フィブリン糊は、止血後に除去が困難なので、肝臓分離中は使用できない。
【0248】
本明細書に記載のペプチド組成物は、完全な止血が達成されるまで、繰り返して適用してよい。肝臓分離の場合は、1つの出血部位に対して、組成物1を1mLよりも多く適用することが好ましい。湿った表面上には、組成物1は静止して保持されない可能性があり、手作業で操作する(例えば指で擦り込む)と崩れる。組成物1は、出血部位自体よりも広い領域に適用される。過剰の組成物1は、外科的手順の完了後に簡単に洗い落とされるので、肝臓分離中、無視される。
【0249】
組成物1の適用後に完全な止血が達成されない場合は、適用した組成物1から出る出血に対してさらなる適用を行なうことができる。また、広範囲からの滲出性出血も、上記の方法により効果的に止めることができる。フィブリン糊の場合は、外科医は、フィブリン糊を除去して再適用しなければならず、または、凝固したフィブリンの周囲にフィブリン糊を過剰に適用しなければならない。周囲領域へのフィブリン糊の適用は出血点を直接止めないので、外科医は、結局のところ、過剰な適用を避け得る。フィブリン糊の下から出血が出ることがある。組成物1をギャップに注入して、外科的手順中のより効果的な止血を達成することができる。フィブリン糊は、通常、わずかな出血を止めるために断面上に噴霧され、肝臓分離の手順の終わりの後出血を防ぐ。組成物1は、外科的手順におけるこのステップに適しており、肝臓分離の完了後に、断面上に適用することができる。典型的に、SURGICEL(登録商標)は、断面を剥離させる作用のせいで、肝臓分離において効果的に使用されない。
【0250】
実施例8.完全腹腔鏡下肝切除(PLH)
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた、肝臓の腹腔鏡下の外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は、組成物1(上述)である。
【0251】
完全腹腔鏡下肝切除(PLH)は、典型的に、病理学的病変が肝臓の表面にある状況で行なわれるが、部分的肝切除および肝葉切除の状況でも行なうことができる。
【0252】
手短には、カメラポートを臍部へ挿入し、そして、腫瘍の位置を確認後、2−3ポートを腫瘍付近に挿入する。それから、3−4ポートを外科的手順に用いる。腫瘍および血管系の関係は、典型的に、超音波検査により特定される。これは、PLHの手順では、腫瘍への直接的な接触はされないという事実のためである。次に、切除ラインを決定し、電気メスで印をつける。切除中の出血を減らすために、事前の凝固を行なう(例えば、マイクロ波凝固および高周波アブレーション)。
【0253】
浅層の切除を、超音波的に活性化されたメスにより行なう。肝臓深部の大血管(large vascular)を、脱腸および肝実質吸引で用いられる超音波の外科用吸引装置によって露出させる。肝切除中に明確に特定することのできる滲出型の出血を、電気メスを用いて焼灼する。任意のさらなる出血を、結紮により止める。いくらかの滲出型の出血が、肝切除中に、明らかな出血点を特定せずに生じる場合は、以下の理由のために、かなりの時間が外科的処置に追加される:腹腔鏡下の外科的手順では、視野が、開かれた開腹の外科的手順と比較して制限され、視野を確保するために血液をガーゼで除去しながら、出血が、超音波的に活性化されたメスにより凝固され、凝固が行われない場合は、出血領域にSURGICEL(登録商標)が適用され、それは、以下の理由から、膨大にさらなる時間を招く可能性がある。(1)SURGICEL(登録商標)は綿から作られているので、腹腔鏡下の外科的処置において、標的領域(特に、横断面の裏側)に綿棒で塗ることが難しいこと、および(2)鉗子がSURGICEL(登録商標)を所定の位置にクランプして、ポートの1つを行き来している間に、出血が広がり、そして、血液をガーゼにより除去、または生理食塩水により洗い落として、SURGICEL(登録商標)を適用するために、術野をはっきり見ることができるように確保する。
【0254】
ペプチド組成物(例えば組成物1)は、チューブを通した1適用で速やかに広がることができるので、裏側および広範囲の出血領域に適用することができる。液体として適用され、組織または外科的部位に置かれるとすぐにゲル化状態を採択するので、このことは組成物1の独特の利点である。反対に、フィブリン糊は、断面に硬化作用があり外科医が切除を行なうのをさらに困難にさせるので、切除中に適切でない。
【0255】
肝切除後、出血点は、血管および肝実質の断面において完全に特定される。典型的に、滲出性出血は、超音波的に活性化されたメスを用いた凝固によって、および、フィブリン糊を綿棒で塗ることによって、止められる。組織の炭化に起因して、凝固は肝再生を遅らせる。フィブリン糊が断面上に留まるのは困難であり、下へ流れやすい。さらに、フィブリン糊は凝固して外科的部位に残るので、外科的処置の部位での高い感染リスクが生じる。その代わり、組成物1の適用は、少なくとも、出血部位への適用後に生じるゲル化状態に起因して組成物1が簡単に洗い落とされるため、そのようなリスクを低減する。
【0256】
実施例9.胸腔鏡的な部分的肺切除
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を利用した肺の体内の外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は、組成物1(上述)である。
【0257】
本手順の最初のステップでは、外科医はまず切除部位を特定し、小切開を介して肋骨の間の胸部へ、トロカールおよび胸腔鏡を挿入する(
図5)。外科医はそれから、切除すべき領域を、胸腔鏡を介して検査し、自動縫合の方向を設定する。次に、小切開を介して自動縫合を胸部へ挿入する。自動縫合により切除すべきラインを示すために、典型的に、切除領域から約1.5〜2cm離れた領域を鉗子で掴む。肺組織は、きつく掴みすぎて強く引っ張ると簡単に引きちぎられる可能性があるため、注意深く掴まなければならない。組織が自動縫合により真っ直ぐに切られなかった場合は、切除された領域を、縫合、吸収メッシュまたはコラーゲンシートにより強化する。縫合は、2.0またはそれより太い縫合糸を一般に用いる。結紮は、体の外側で結び、そして、ノットプッシャーを用いて結紮糸を胸部の内側へ送る。
【0258】
肺組織または血管が、切除中に意図せずに切断され、または、縫合針により損傷した場合は、止血するために、まずはガーゼ圧迫止血を用いる。ガーゼ圧迫止血により出血が止まらなければ、フィブリン糊を出血部位に適用する。液状のフィブリン糊を適用すると、フィブリン糊は無色または透明でないので、術野が遮られ得る。フィブリン糊およびポリグリコール酸(PGA)シートは、標準的な方法として同時に用いて出血を調節および止血するが、これらの物質の使用は追加の時間がかかり、外科医にとって手間となる可能性がある。この手順の下では、PGAシートをまず出血部位に付け、それから、フィブリン糊をその領域上に適用する。その後、外科医は少なくとも5分間待って出血の状態をチェックする必要がある。
【0259】
外科的処置中に肺動脈が損傷した場合は、広範囲の出血のために術野はほとんど完全に失われる。したがって、出血部位を特定することは困難である可能性がある。出血部位が明確でない限り、フィブリン糊の適用により引き起こされる出血部位周辺の組織の凝固を避けるために、この時点でフィブリン糊は使用しない傾向がある。出血を止めるために、外科医は通常、出血部位を大まかに特定することを試み、そして、圧迫止血を行ない、または血管を遮断する。これらの試みがうまくいかない場合は、追加の手段のために胸部を開く。
【0260】
外科的手順の終わりに、開胸チューブを挿入して出血の状態を検査する。出血が検出される場合は、まずはドレインの手順を行なって胸部内部に残っている血液を除去する。それから、他の手段(上述)も行なう。出血を止める最初の試みでフィブリン糊を適用した場合は、組織が裂ける可能性があり、さらなる出血部位が生じる可能性があり、または、元の出血部位が除去されると膨張する可能性があるため、第二の適用を簡単に行なうことはできない。出血が、ドレインおよび上述の他の方法を用いた胸腔鏡検査下で回復しない場合は、追加の手段のために胸部を開く。
【0261】
外科的処置の後に、空気漏れを明らかにするために密封試験も用いる。この試験は、5〜10cm H
2Oの気道内圧を用いて行なう。任意の主な空気漏れを縫合により止める。空気漏れを防ぐ主な付属物は、ウシ心膜、Gore−Texまたは自家の胸膜である。ステープルラインのバットレス(buttressing)は空気漏れの持続時間を減らすことが示されているが、バットレスに関連するステープルは、組織外傷をもたらすことがある。
【0262】
切除中に、または胸腔鏡検査下での縫合針によって、任意の肺組織または血管が損傷した場合は、術野は、ほんの少量の血液で遮られる可能性がある。本明細書に記載のペプチド組成物(例えば組成物1)の適用は、その透明な性質に起因して、術野を遮ることなく出血を止め、フィブリン糊と直接的に対照的である。組成物1は液状で投与されるので、例えばシリンジによって、チューブを通して簡単に出血部位へ直接注入することもでき、どんなシートタイプの物質と異なり、肺表面にうまく適用される。さらに、組成物1の適用は、圧迫止血を必要とせず、外科的手順を妨げもしない。組成物1は、適用後にそのままにしておくことも可能であり、外科医は、いつでも、出血の状態を検査することができる。
【0263】
外科的処置中に肺動脈が損傷した場合は、出血のための処置が直ちに必要とされる。しかしながら、開胸の外科的処置とは異なり、通常、出血部位を特定するのに時間がかかり、圧迫止血を行なうのが困難である。組成物1は、低い圧力で、肺動脈の十分な血液の調節および止血を示す。繰り返すが、組成物1は透明なので、過剰分は、処置後にドレインにより簡単に除去することができる。いつでも術野を遮らずに任意の量を出血部位周辺の領域に適用することができ、それにより、外科医が外科的手順を迅速に再開することを可能にする。
【0264】
外科的処置の終わりに出血が再度検出される場合、フィブリン糊とは異なり、組成物1は、出血部位から簡単に除去され、同じ部位に任意の回数適用することができる。
【0265】
任意の空気漏れを修復するために、組成物1は、チューブを通じて簡単に、空気漏れの部位に適用することができ、そして、シートタイプの産物とは異なり、肺表面にうまく適用することができる。組成物1の適用は、バットレスと比較して、外科的なオペレーションの持続時間を短くすることができる。バットレスとは異なり、組成物1の適用は、針により肺組織に害を及ぼさない。漏出部位を処置した後に空気漏れが再度検出される場合、組成物1は、簡単に除去して同じ部位にすぐに任意の回数適用することができる。
【0266】
実施例10.内視鏡的粘膜切除(EMR)
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた胃腸系の内視鏡的な外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を用いることができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は組成物1(上述)である。
【0267】
一般に、内視鏡的粘膜切除(EMR)は、リンパ節転移の可能性が低い場合の初期の胃癌のケースの処置の選択肢として受け入れられる。EMRは、良好または適度に組織学的に分化型で、および、表面的に隆起および/または下降しているが、潰瘍化または粘膜下浸潤の明らかな兆候がない、直径が25mmまでの初期癌である患者に適用される。大部分のEMRは、「ストリップ生検法」(他のどこかに記載されている相対的に単純な技術)により行われる。より最近のEMRの手順が開発されていて、絶縁チップ付き透熱性ナイフ(ITナイフ)を使用し、それは大部分の場合に用いられる(下記)。ITナイフは、穿孔のリスクを最小限にするために、上部にセラミックボールを備える従来の透熱性の針状ナイフ(KD−1L;オリンパス、日本)からなる。EMR後3ヶ月および6ヶ月に、経過観察の内視鏡検査を行なう。
【0268】
典型的に、EMR処置は以下のように行なう:(a)インジゴカルミン色素を噴霧後、下半身の小弯上の表面隆起型の初期胃癌を特定し、(b)縁を明確にするために、プレカットナイフを用いて標的病巣の周囲にドットをマークし、(c)エピネフリン(0.025mg/mL)を含む生理食塩水またはヒアルロン酸を粘膜下層への注入した後、従来の針状ナイフを用いてドットの外側で最初の切断をして、そして、ITナイフをこの切断に挿入して、病巣の周りを切断するために用い、(d)マークした腫瘍を、周辺の正常粘膜から分離し、(e)単一フラグメント内で切断および凝固の流れ(current)の組み合わせを用いて、標準的なポリープ切除により腫瘍を除去し、そして、(f)切除した検体は、明確な外側縁を有する高分化型腺癌(20×25mm)を示す。
【0269】
出血の調節は、この手順において非常に重要である。出血が非常に重度の場合は、輸血または外科的処置が考慮される。出血が、特にITナイフによる切除およびポリープ切除中に生じる場合は、通常、凝固、エタノール注入、内視鏡クリッピング、トロンビン溶液の噴霧、またはこれらの処置の組み合わせを用いた内視鏡的処置が、状況に応じて用いられる。しかしながら、これらの処置は欠点がある。凝固に関しては、組織の表面への損傷は、その技術はポリープ切除および出血部位での切除を行なうためにループワイヤーを使用するので、出血を生じさせる可能性がある。この場合、組織が治癒する時間はない。エタノール注入に関しては、出血調節の有効性が低く、内視鏡を通してシリンジを介して出血部位上に過剰の量が注入されると、潰瘍性領域が肥大するリスクが生じる可能性がある。クリッピングに関しては、外科医は十分な時間および技術を必要とし、そして、外科的手順に多くの時間を費やすと、目に見えない過ち(例えば筋肉壁の破裂)をより多く引き起こす可能性がある。トロンビン溶液の噴霧に関しては、特に、処置野の視覚が隠された露出血管では、その不透明性のせいで、出血調節について低い有効性が見られる。これは、内視鏡を介して、カテーテルを通じて、出血部位に噴霧されているためである。
【0270】
病巣周囲の最初の切断をITナイフで行なった後に、まず、ペプチド組成物(例えば組成物1)を、カテーテルを通して適用する。これは、ポリープ切除による切除の際の、出血の予防のためである。これに関して、組成物1は溶液であり、出血部位との接触の際にゲル化するので、適している。この適用は、外科的処置の時間を妨げず、外科医は、組成物1の適用により作られる澄んだ処置野に部分的に起因して、すぐに進めることができる。さらに、適用した時点でゲル化状態を採択するその能力に起因して、それは病巣部位周辺に留まり、出血を防ぐ。したがって、切除前の組成物1の適用は、出血のリスクを大幅に減らすことができ、このことは、切除中の凝固の使用の排除を可能にし得る。
【0271】
切除中に、例えば、予期したよりも深い切開により、出血が起きた場合は、灌漑後に、組成物1を出血部位に大量に適用する。これは、止血するためだけでなく、出血部位を特定するために澄んだ術野を維持するためでもある。組成物1の適用は、エタノール注入、内視鏡クリッピングまたはトロンビン溶液の噴霧のような従来の方法の必要性を排除する。これらの方法による外科的手順中の出血調節は、多数の点に適用するのに相当な手順時間を要する。反対に、本明細書に記載の外科的手順での組成物1の適用は、多数の出血部位を含む広範な領域にわたって、より良好な止血および出血の調節を提供する。
【0272】
しかしながら、出血が、滲出、噴出、湧出または露出した血管のように重度である場合は、通常、クリッピングまたは凝固が用いられる。組成物1は、これらの方法を効率的な様式で補うことができ、さらなる出血を防ぎ、このような状況を対処している外科医が費やす時間を減らす。
【0273】
組成物1は、切除部位でのオペレーションの後の出血を防ぐために、腫瘍を除去した直後に適用される。この手順はクリッピングの必要を排除し、手順の時間を約10分短くする。
【0274】
本実施例で示すように、組成物1の適用は、上述のように、切除前、切除中、および切除後に、腫瘍切除中の出血を調節するための上述の手順を組み合わせる必要を排除し、そして、手順の全体的な時間を短くすることができる。腫瘍切除を、平均して少なくとも20分減らすことができることが予測される。また、手順全体を通じて、出血および周辺組織の損傷が減少するため、患者の安全も他の技術と比べて高くなる。したがって、より迅速な患者回復が期待される。
【0275】
実施例11.結腸の内視鏡的粘膜下剥離(EDS)
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた結腸の内視鏡的な外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を用いることができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は組成物1(上述)である。
【0276】
一般に、ESDは、EMRではほとんど切除されない直径が20mmよりも大きな初期癌の患者に適用される。外科医および助手のチームは、他の外科的器具に加えて、結腸鏡(PCF−Q260AI;オリンパス、東京、日本)を用いて手順を行なう。ESDの典型的な手順は以下のとおりである:
【0277】
インジゴカルミン色素を噴霧して結腸の病巣縁を特定し、その後に、粘膜下に注入して病巣を持ち上げる。0.5%インジゴカルミンおよび0.1%エピネフリンを含む、10%グリセリンとヒアルロン酸の混合物を注入液として用いる。次に、外科医の選択に従って、電気的な外科的ユニットに連結された、針状ナイフ、絶縁チップナイフ(KD−610L、611L;オリンパス、東京、日本)、またはフラッシュナイフ(DK2618JN20;フジノン、東京、日本)などの器具を用いて、周囲切開を行なう。上述の器具のうちの一つを用いて、標的病巣の周囲に沿った連続的な粘膜下切離を行なう。手順中、出血は、特殊な鉗子または絶縁チップナイフによって調節される。ESDが完了した時点で、遅発性出血を防ぐために、切離領域内の目に見える血管の凝固もまた、特殊な鉗子または絶縁チップナイフを用いて行なう。この手段にもかかわらず、ESD後の出血は、典型的に、効率的な様式で調節することができない。オペレーションの後に吐血または下血が生じる場合は、出血を調節するための緊急の内視鏡的取り組みが、特殊な鉗子または絶縁チップを用いて行われる。典型的に、術後出血は相対的に少ないが、外科的手順中、過剰な凝固に起因する組織壊死による出血に直面することが多い。
【0278】
その代わり、本明細書に記載のペプチド組成物(例えば組成物1)は、縁の切開をした後に、カテーテルを通して、まずは標的病巣の周囲上に適用される。この場合、組成物1は、切開周囲から内部組織へ(例えばシリンジによって)注がれ、または注入される。これは、絶縁チップナイフまたはフラッシュナイフの使用により典型的に直面する、切離の際の出血を防ぐためである。組成物1のこの適用は、その透明な性質に起因して澄んだ術野を確立し、そして、手順の次のステップへ外科医がより速やかに進めることを可能にする。さらに、組織および流体との接触から生じるゲル化状態に起因して、それは切開の周囲上に留まり、それにより、出血が生じるのを防ぐ。したがって、切離前の組成物1の適用は、出血のリスクを低減することができる。結果としてこれは、切離中に凝固のための特殊な鉗子を用いる頻度をさらに低下させる。
【0279】
切離中に、例えば、予期したよりも深い切開により、出血が起きた場合は、血液の灌漑後に、組成物1を出血部位に大量に適用する。これは、止血するだけでなく、出血点を特定するために澄んだ術野を維持する。組成物1の適用は、特殊な鉗子または絶縁チップナイフによる凝固の処置を排除する。そのような器具による外科的手順中の止血は、多数の点に適用するのに相当な手順時間を必要とする。反対に、組成物1による出血調節は、多数の出血点を含む広範な領域にわたる適用を可能にすることにより、より効率的な様式で出血を調節することによって、より良好な代替を提供し、そして同時に、澄んだ術野を維持し、外科医が、より効率的に外科的手順を完了することを可能にする。
【0280】
出血が滲出よりも重度、例えば噴出、湧出である場合は、典型的に、特殊な鉗子または絶縁チップナイフによる凝固が適用される。凝固が器具によってなされる場合は、さらなる出血を防ぐために、組成物1を手術野に適用することができる。これらの器具による処置とは異なり、組成物1は組織表面に対していかなる損傷も与えず、一方で、特殊な鉗子または絶縁チップナイフは、組織壊死をもたらす傾向があり、患者の回復を困難にさせる。さらに、広範囲の凝固は、重度の組織壊死を生じさせ、それはさらなる遅発性出血をもたらす。この手順での組成物1の利点は以下のとおりである:適用直後の、より迅速な止血(手順時間を少なくとも約5〜10分短くする)、その透明な性質に起因して出血点の視覚化を可能にし、適用によって組織表面に損傷をもたらさない、澄んだ術野。
【0281】
組成物1は、切離部位での術後出血を防ぐために、ESDの完了直後に適用される。この手順は、特殊な鉗子の使用を排除する。このことは、外科的手順の時間のこの部分を、少なくとも約5〜10分、さらに短くすることができる。手順後に吐血または下血が生じる場合、組成物1を病巣部位上に大量に適用する。この適用は、特殊な鉗子または絶縁チップナイフによる凝固の必要性を排除する。繰り返すが、これは、短縮された手順時間をもたらし、患者の利益となる。
【0282】
本実施例に示すように、組成物1の適用は、切離中および切離後の、器具による凝固の頻度を大幅に減らすことができ、平均して少なくとも約20分、外科的手順の時間を短くする(これは、各患者により存在する状況に基づいて変動し得る)。さらに、凝固技術と比べて患者の回復がより早いことが観察され(手順中、予想される出血がより少なく、組織壊死がないことに起因する)、切開組織の表面上の組織を保護する。
【0283】
実施例12.開腹部分的腎摘出
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた腎臓の体内の外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は組成物1(上述)である。
【0284】
以下の実施例は、開腹部分的腎摘出のステップを示す。手短には、患者は、半分側部(half lateral)の位置で横たわり、皮膚切開が行われる(開腹)。それから、後腹膜を剥がして広げ、外側円錐筋膜(lateroconal fascia)を露出し、電気メスを用いて切開する。滲出または湧出する出血に直面した場合は、ガーゼの圧迫止血を適用する。さらに進める前に、腎動脈、腎静脈および尿管を特定しなければならない。
【0285】
それから、ハーモニックメスを用いて、ゲロタ筋膜(腎臓の滑らかなカプセル膜)をカプセル除去する。ゲロタ筋膜は非常に多くの毛管血管からなるので、カプセル除去は用心深く行ない、小さな滲出出血は典型的に焼灼する。また、ガーゼ圧迫止血も、任意の重度の出血に適用する。完全なカプセル除去は、腫瘍の位置を特定するために行なうことがある。腹膜と腎臓前面との間の結合組織も完全に剥がす。その後の経過観察の外科的処置のケースでは、融合筋膜を剥がさなければならず、それは滲出出血を最も頻繁に引き起こし、そのような出血を止めるために焼灼が必要である。これは、外科的手順にかなりの時間を追加する。腫瘍の位置は、超音波プローブを用いて特定する。次に、動脈のクランプを行ない、そして、30分以内にリリースすべきである。尿管および腎動脈の周辺の結合組織を剥がす。典型的に、剥離領域からの出血(滲出または湧出)を最小限にするためにガーゼ圧迫止血またはSURGICEL(登録商標)を適用する。腎周囲が非常に硬い場合は、結合組織の強制的な剥離は、腫瘍カプセルの破裂をもたらすので、結合組織の完全な剥離は困難である。しかしながら、それは、腫瘍の位置の検出を阻害する。
【0286】
虚血−再灌流障害を避けるために、腎臓を氷で約5分間冷却する。時折、マンニトール溶液を腎臓表面に適用し、クランピング鉗子を用いて腎動脈の血流を遮断する。腎杯と腫瘍との間の距離または腎洞と腫瘍との間の距離が十分遠い(1cmよりも遠い)一部のケースでは、腎動脈のクランプは行なわない。しかしながら、これは、より大量の出血を生じる可能性がある。腫瘍の位置の0.5〜1cm外側の正常な腎組織を、ハーモニックメスによる、またはメッツェンバームによる、凝固切開で切離する。切離された表面にガーゼ圧迫止血を適用し、電気メス、アルゴンビーム凝固剤、フィブリン糊または結紮を用いて、滲出または湧出する出血を止める。出血の調節は、手順におけるこの時点で重要であり、したがって、指による連続的な圧迫止血を度々行なう。腎杯が開かれているケースでは、結紮およびZ−縫合を行なって腎杯を閉じる。主な出血が特定されない場合は、結紮の代わりに、縫合クリップでの連続的な縫合または腎実質のみの縫合を行なう。それから、インジゴカルミン溶液を適用することにより尿漏れを検査する。
【0287】
血流は、クランピング鉗子をリリースすることにより、30分以内に再灌流する。この時点で止血を確認する。特定されれば、さらなる焼灼、SURGICEL(登録商標)、フィブリン糊またはトロンビンを適用する。出血部位は脂肪組織またはSURGICEL(登録商標)で覆われていることがあり、全体として縫合される(マットレス縫合)。
【0288】
ゲロタ筋膜は非常に多くの毛管血管からなるので、血液滲出が生じる可能性がある(上述)。本明細書に記載のペプチド組成物(例えば組成物1)は、出血が、凝固または超音波的に凝固することが望ましくない大血管(large blood vessel)に生じる前または直後に大量に適用することができる。この適用は、組成物1の透明な性質に起因して澄んだ術野を維持し、洗浄可能なままである。
【0289】
腎周囲組織周辺の完全な剥離は、腫瘍の位置の特定に重要であることが報告されている。大量または保守的な組成物1の適用は、腎周囲からの出血の効率的な調節を可能にし、それにより、完全な剥離を可能にする。融合筋膜は、手で張力を加えながら電気メスにより剥がす。滲出または大きな出血のリスクが、この手順により増大する。出血の調節は、所望のとおりに、組成物1を出血が生じる前または直後に適用することにより、達成することができる。組成物1の透明かつ洗浄可能な性質に起因して、これは後の手順に影響を及ぼさない。組成物1の適用は制限されない。フィブリン糊または他の出血調節手段は、超音波プローブを典型的に用いるので、腎周囲を剥がすステップにおいて典型的に適用されない。
【0290】
組成物1は、フィブリン糊とは異なり、取り除くと動脈に損傷を生じさせ得る腎動脈の結合組織に適用することができる。SURGICEL(登録商標)は、腎動脈に適用することができるが、手順の次のステップに進む前に除去しなければならない。その代わりに、組成物1は、生理食塩水で洗浄することにより除去することができる。結合組織の徹底的な剥離は、大量の組成物1を前もって適用することにより達成される。これは、腫瘍の位置の正確な検出を可能にする。腫瘍の位置が曖昧な場合、腫瘍の確実な摘出のために、大きな縁を切離しなければならない。組成物1の適用は、その透明かつ洗浄可能な性質に起因して、腫瘍の位置の特定を妨げない。
【0291】
腎動脈のクランプを行なわないケースでは、かなりの滲出出血が生じることが多い。事前の組成物1の適用は、そのような出血を防ぎ、そして同時に、澄んだ術野を確保する。完全な血液調節および止血は、腹腔を閉じる前に、過剰量の組成物1を生理食塩水で洗浄して除去することにより、確認することができる。
【0292】
30分の虚血時間の制限は、30分以内に結合組織の完全な剥離を達成することは困難であるため、腫瘍の位置の検出を妨げる主な理由である。組成物1の適用は、出血調節および動脈クランプの回避に費やす外科的時間を減らすので、部分的腎摘出中に、より安全な外科的環境を提供する。
【0293】
事前の組成物1の適用による出血調節により、より温和な切離方法を選択することができる。しかしながら、それを適用しても、ハーモニックメスの使用は制限されない。滲出出血部位に組成物1を事前またはすぐに適用することは、出血の予防および澄んだ視野を達成する。ガーゼ圧迫止血を組成物1の適用に置き換えることにより、オペレーションの時間が節約される。指での圧力止血が多くの場合に続けられ、十分な止血が得られない場合は、フィブリンシートおよびフィブリン糊を用い得る。組成物1は上記の手順を置き換えることができ、そして、外科医はオペレーションの他の手順にシフトすることができるので、オペレーションの時間が著しく節約される。
【0294】
腎杯の縫合後に周囲に組成物1を適用する機会もある。これは、後出血の予防に貢献する。組成物1は洗浄可能であるので、尿漏れの検査を妨げない。微小な漏孔を組成物1によって(おそらく組成物1によってのみ)防止することができ、それは結紮を不必要にし、外科的処置手順を行なう時間をさらに減らす。
【0295】
30分未満の虚血時間が望ましい。一時的な止血では、フィブリン糊およびSURGICEL(登録商標)は、妨げられた視界の術野をもたらし、したがって、これらの物質を取り除く必要があるので、過剰な時間が追加される。組成物1は、澄んだ視点を維持するために術野を洗い流すことなく、手順を進めることができるという利点を有する。
【0296】
切離領域に組成物1を適用することにより、出血が残る状況において、血流をしばらく再灌流することができる。血流下で、さらなる出血調節手段を行なってよい。ここでのフィブリン糊の適用は、除去するために剥がさなければならないので制限され、一方で、組成物1は、洗浄により簡単に除去することができる。マットレス縫合の方法も取られるが、組成物1に同様に置き換えることができる。組成物1は、適用後に洗浄する必要性を伴わずに、外科的処置後の出血の予防の調節として行なう可能性を有する。開腹部分的腎摘出と関連する術後合併症は、尿漏れ(0〜9%)および術後出血(1〜9%)を含み、およびポジティブな(positive)止血に対する要求は高い。
【0297】
実施例13.腹腔鏡下部分的腎摘出
以下の実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた、部分的腎摘出に関する腹腔鏡下の外科的手順(その一部のステップは実施例12に上述される)、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を適用することができる外科的方法のステップを示す。提供される例示的なペプチド組成物は、組成物1(上述)である。
【0298】
手短には、患者は、半分側部の位置で横たわり、トロカール(torocar)のための穴を(少なくとも4つ)作る。血流を遮断する必要のため、クランピング鉗子のための可撓性ポートを典型的に用意する。次に、後腹膜を剥がして広げ、そして、外側円錐筋膜を露出し、任意の出血を調節しながら電気メスを用いて切開する。進めるためには、腎動脈、腎静脈および尿管の位置を特定しなければならない。
【0299】
ゲロタ筋膜は、腎臓の滑らかなカプセル膜であり、ハーモニックメスを用いてカプセル除去される。ゲロタ筋膜は非常に多くの毛管血管からなるので、カプセル除去は、出血を引き起こさないように用心深く行なう。完全なカプセル除去は、腫瘍の位置を特定するのに好ましいことがある。腹膜と腎臓前面との間の結合組織も完全に剥がされる。腫瘍の位置は、超音波プローブを用いて特定する。
【0300】
動脈クランピングは、30分以内にリリースすべきである。尿管および腎動脈の周辺の結合組織を剥がす。剥離領域からの出血(滲出または湧出)を最小限にするために、典型的に、SURGICEL(登録商標)を適用する。剥離後、腎臓を氷で約5分間冷却し、鉗子でクランプすることにより、腎動脈の血流を遮断する。切断された腎臓表面からの出血に起因して手術野が見えにくくなることが多いため、腹腔鏡下部分的腎摘出では、腎静脈も剥がして腎静脈の血流を遮断することが多い。
【0301】
腫瘍の位置の外側0.5〜1cmの正常な腎組織を、ハーモニックメスによる凝固切開で切離する。主な出血を防ぐために、任意の出血を同時に調節しながら切離を行なう。腫瘍を持ち上げながら、根元の塊(root mass)の凝固切開を行なう。出血が生じる場合は、電気メス、フィブリン糊または結紮を用いて出血を止める。腎杯が開いている場合は、結紮およびZ−縫合を行なって腎杯を閉じて、その後に、インジゴカルミン溶液の適用により尿漏れがないことを確認する。
【0302】
クランピング鉗子をリリースすることにより、30分以内に血流を再灌流する。出血がないことの確認を行なう。出血が特定される場合は、焼灼、SURGICEL(登録商標)、フィブリン糊またはトロンビンなどの、さらなる手順を行なう。
【0303】
ゲロタ筋膜は非常に多くの毛管血管からなるので、滲出型の出血に直面する可能性がある。本明細書に記載のペプチド組成物を事前に適用することにより、出血を調節することができ、術野を遮らずに剥離を行なうことができる。超音波プローブを用いて腫瘍の位置を特定するので、止血のための従来の手段(例えばフィブリン糊)は、そのような手段を用いる前に出血部位の特定が必要なので困難である。本明細書に記載のペプチド組成物は、生理食塩水で洗浄することにより洗い流すことができ、したがって、剥離中に直面する出血を止めるために用いることができる。
【0304】
例えば、組成物1は、フィブリン糊とは異なり、腎動脈の結合組織に適用することができる。これは、フィブリン糊は、除去する時に、動脈に損傷をもたらす可能性があるためである。SURGICEL(登録商標)は、同様に腎動脈に適用することができるが、手順における次のステップに進む前に除去しなければならない。その代わり、組成物1は、上述のとおり、生理食塩水で洗浄することにより除去することができる。
【0305】
また、組成物1は、出血を予防するために適用することもでき、したがって、剥離を、効率的かつ途切れずに行なうことができる。組成物1は、ゲル化状態を採択した後でさえ透明な物質であり、したがって、腫瘍の位置の特定を妨げない。事前の組成物1の適用により、滲出性出血を防ぐことができ、外科医にとって澄んだ術野を維持する。さらに、組成物1は、腎静脈をクランピングする必要性を減らす。
【0306】
滲出出血部位への、組成物1の事前またはすぐの適用は、止血を達成し、さらなる出血を防ぎ、その全てが、術野の澄んだ視界に貢献する。伝統的で複雑なことが多い出血調節手段(例えばSURGICEL(登録商標)およびフィブリン糊)を、組成物1に置き換えることにより、外科的手順の時間が低減する。生理食塩水洗浄を用いて過剰の組成物1を除去した後、出血の防止を簡単に確認することができる。さらに、腎杯の縫合後に組成物1を周囲に適用することにより、後出血の予防が達成される。
【0307】
30分未満の虚血時間が望ましい。一時的な止血では、フィブリン糊およびSURGICEL(登録商標)は外科的視野の妨害をもたらし、それらを除去する必要があるので、外科的時間を延長させる。組成物1は、手順全体を通じて、その使用により、手順を完了するために必要な全体的時間を減らすことができるという利点を有し、その間ずっと、その透明な性質に起因して澄んだ外科的視野を維持する。
【0308】
腹腔鏡検査中に出血が調節できない場合は、外科医は、開腹の外科的処置に変更しなければならない。しかしながら、組成物1の適用による滲出性出血の防止は、このリスクを著しく減らす可能性がある。腹腔鏡検査では、ガーゼ圧迫止血により止血するのは困難であり、したがって、組成物1の適用が比類なくこの外科的手順に適している。腹腔鏡検査後の、出血する部分的な腎臓の切除の可能性に起因して(3〜8%)、出血を調節するための信頼性のある手段の必要性が高い。
【0309】
実施例14.多様な外科的手順での、組成物1の適用の臨床試験
本実施例は、本明細書に記載のペプチド組成物を用いた様々な体内の外科的手順、および、特に、本明細書に記載のペプチド組成物を用いることができる外科的方法のステップを示す。
【0310】
特に、様々な外科的および内視鏡的な手順における出血(特に滲出性出血)を、組成物1の適用のための標的部位として指定した。一次エンドポイントは術中の出血であり、一方で、二次エンドポイントは術後出血であった。本試験の他の目的は、安全性の検証(有害事象の発生)を含んだ。この試験に関して確立されたプロトコルは、非盲検で非対照の多施設共同の試験であり、会社の治験審査委員会(IRB)によって承認され、規制当局、Pharmaceuticals and Medical Devices Agency(PMDA)に伝えられた。PMDAにより承認されたプロトコルが各試験施設のIRBにより議論および承認された時点で、試験を開始した。
【0311】
組成物1は、開始ペプチド、CH
3CO−(Arg−Ala−Asp−Ala)
4−NH
2を、注入用の水に2.5%(w/v)の濃度で溶解することにより製造した。シリンジを無菌的に予め充填し、ブリスタ包装にパッケージした。パッケージおよびシリンジの両方の外側をエチレンオキシドで滅菌した。
【0312】
この試験では、直接の適用および経カテーテルの組成物1の適用を用いた。直接の適用の場合には、プラスチック使い捨てノズルをシリンジに取り付けて、組成物1を出血部位に適用するのに用いた。経カテーテルの適用の場合には、カテーテルをシリンジチップに取り付け、モニターによる視認で、出血部位に適用した。
【0313】
この臨床試験に選択された標的の外科的手順は、内視鏡的粘膜切除(EMR)、内視鏡的粘膜下剥離(ESD)、血管吻合(冠動脈バイパスまたは他の血管の外科的処置における、血管と血管の吻合、または、血管と人工血管の吻合)、および、肝切除(肝葉切除、肝臓の区域切除(hepatic segmentectomy)、または、部分的肝臓切除(腹腔鏡下肝切除および腹腔鏡下補助の肝切除を含む))であった。組成物の適用を標的とした出血は 滲出性出血、外科医は、出血が当視野内である場合は、目視検査により判定した。標的の患者は、入院患者、または、これらの外科的手順のうちの一つを受けることが予定される患者に予定した。患者(20〜80才の間)は、外科的処置の前に同意書の説明が与えられ、そして、外科的処置の前に同意書を提供するように要求された。
【0314】
施設あたりおよそ10名の患者、および、合計でおよそ100名の患者を、試験のための標的登録数として設定した。患者の標的数として100名、および、動物で観察された結果に基づき予測した組成物1の有効性を85%と仮定し、推測精度は7%であり、および、組成物1による完全な止血率の割合の推測範囲の下限は78%と計算することができる[(予測有効性
*(1−予測の止血有効性)/(推測精度/1.96)
2=0.85(1−0.85)/(0.07/1.96)
2=99.9)]。その結果として、約100ケースの観察は、組成物1の有効率が76.9%を超えることができるかどうかの決定が、以前に承認された物質(AVITENE(登録商標)、INTEGRAN(登録商標)、BOLHEAL(登録商標)、およびTACHOCOMB(登録商標))の試験での滲出性出血に関する完全な止血率を意味することを可能にすると考えられた。
【0315】
この試験は、10施設(上部消化管の内視鏡的な外科的処置を行なう2施設、心臓血管の外科的処置を行なう4施設、および、胃腸の外科的処置を行なう4施設)で、非盲検、非対照の試験として行なった。試験を治験フェーズおよび検証フェーズに分けて;Independent Data Monitoring Committee(IDMC)が実施可能性フェーズの最初の3ケースの中間レビューを行ない、極めて重要なフェーズでは、参加患者の標的数に達するまで試験を続けた。
【0316】
有効性の一次エンドポイントは、組成物1の適用時の完全な止血の発生、および、結紮または焼灼などの標準的な手段を使用せずに、組成物1の適用に適切な滲出性出血における術中の完全な止血の維持であった。出血は、滲出性出血よりも重度である場合は、この試験において、物質の適用の標的部位から除外され、そして、最初の選択処置は、通常、結紮、焼灼、または他のそのような手段であった。
【0317】
内視鏡的な外科的処置では、出血が組成物1の適用に適切な滲出性出血であるかどうかを外科医が視覚的に決定した後に、標準的なEMRまたはESDにおいて関連部位の切除または切離の間に生じる出血に組成物1を適用した。同様に、血管吻合では、出血が組成物1の適用に適切な滲出性出血であるかどうかを外科医が視覚的に決定した後に、標準的な血管吻合の後に血流を再開するときに血管の吻合部位で生じる出血に組成物1を適用した。肝切除においても同様に、標準的な肝切除(開腹および腹腔鏡下の外科的処置を含む)の間、またはその後に生じる出血が、組成物1の適用に適切な滲出性出血であるかどうかを外科医が視覚的に決定した後に、組成物1を適用した。組成物1の適用が適用部位(単数または複数)でエンドポイントを達成したかどうかを決定するための外科医による目視検査。必要に応じて、取得可能なビデオまたは写真の画像データを用いて効果の確認および評価を助けた。
【0318】
有効性の評価に関する二次エンドポイントは、術後1日および術後5〜7日(5日より前に患者が退院した場合は、退院前日または退院日)の、二次的出血の発生であり;このエンドポイントは、組成物1の適用の適用部位での術後の維持(maintenance)を確認した。
【0319】
内視鏡的な外科的処置では、二次的出血の発生を、術後1日に内視鏡的試験を行なって直接確認し、二次的出血に関する二次評価を、血液検査により確認した。血管吻合では、術後1日に、ドレインを用いて患者に関するドレイン中の滲出液の色により、および、ドレインを用いずに患者に関する血液検査により、二次的出血の発生を確認し;血液検査は、二次的出血の二次評価にも用いた。肝切除では、二次的出血の発生を、術後1日におけるドレイン中の滲出液の色により確認し、そして、血液検査を二次的出血の二次評価に用いた。
【0320】
安全性エンドポイントとして、患者の観察期間中に生じる全ての問題および/または有害事象(研究室の試験結果における異常な変化を含む)を、組成物1および試験との因果関係において評価した。患者は、必要に応じてすぐに処置した。
【0321】
他のエンドポイントは以下を含む:オペレーション時間(出血時間の分布、平均値、および標準誤差を適用部位に関して計算し、適用の時点から完全な止血の評価までの時間の測定を可能にした)および、操作性(既存の物質および薬剤に対する、使いやすさの違いは、以下のように数値で表わされた:優良=3、良好=2、許容=1および許容不可=0;評価結果の度数分布、平均および標準偏差を計算した)。
【0322】
安全性および有効性の解析を、それぞれ、安全性解析の対象集団(safety analysis set)(SAS)および最大の解析の対象集団(full analysis set)(FAS)で行なった。SASは、組成物1を適用した全ての対象から構成された。有効性解析の対象集団(set)は、FASであり、試験に参加した対象であって包含基準に反する者を除外するように定義した。試験は、多数の位置に組成物1を適用した患者を含んだので、データを表にして各出血部位に関して解析した。一部の出血部位では、プロトコルの試験によって適用は不適切であると見なされ;これらはFASから除外され、また、治験実施計画書に適合した対象集団(per protocol set)(PPS)として解析した。各患者を、術後の二次的出血に関しても評価し、そして、術後処置を受けた(影響を受けた二次的出血の評価を有し得る)一部の患者もFASから除外し、PPSで解析した。PPS指定の妥当性をIDMCにより確認した。
【0323】
試験は、「ヘルシンキ宣言(World Medical Association Declaration of Helsinki)」(ヘルシンキでの第18回WMA総会(1964年)により起草;2004年10月、東京での第55回総会により改訂;2008年10月、ソウルでの第59回総会により最新改訂)に基づく倫理原理に従って行ない、それには、ヒト対象に関する全ての医学研究が従わなければならず、および、薬事法およびMedical Device Good Clinical Practice(GCP Ministerial Ordinance)の基準に準じる。
【0324】
結果は、有効性エンドポイント、安全性エンドポイント、および、上述の他のエンドポイントにより解析した。
【0325】
有効性:一次エンドポイント(表5)。結果は、3つの標的の外科的手順を全て合わせたFASでの組成物1に関する止血の有効率は82.5%(160/194部位)であり、3つの標的の外科的手順を全て合わせたPPSでの有効率は88.8%(158/178部位)であることを示した。
【0326】
有効性:二次エンドポイント。結果は、FASでの組成物1を用いた二次的出血に関する止血の有効性は、3つの標的の外科的手順を全て合わせて、術後1日および術後5〜7日の両方で、100.0%(89/89患者)であることを示した。3つの標的の外科的処置を全て合わせたPPSでの有効率は、術後1日で100.0%(79/79患者)であり、および、術後5〜7日で100.0%(78/78患者)であった。
【0327】
安全性(表6)。試験期間中、試験施設において、問題(例えば製品不具合)の発生は見られなかった。試験の観察フェーズ中、53の有害事象が、SASでの97名の患者間に生じ、そして、3つの有害事象に関しては、組成物1との因果関係が不適格と判断することができなかった。これらの3つの有害事象のうち、2つは異常な研究室試験の結果(肝機能(AST、ALT、Al−P)に関する高い試験値および高い尿酸)であったが、それらの異常度は臨床的に重要でないとみなされた。残りの有害事象は、人工血管の変色であり、主任研究員はそれを臨床的に重要でないとみなした。試験の観察フェーズ中に起きた有害事象は主に外科的浸潤と関連し、症状が確認された後は、処置を必要とする有害事象を適切に処置した。
【0328】
オペレーション時間および操作性(図10)。155部位で組成物1を使用した場合の、止血に関するオペレーション時間の平均値は、約4分42秒(0:04:42)であった。ほとんどの部位で、完全な止血が3分未満で達成された。全ての96名のFAS患者に関する組成物1の操作性の平均値は2.4であり、ほとんどのケースにおいて、操作性は既存の物質よりも良いと評価された(表7)。
【0329】
【表5】
【0330】
【表6】
【0331】
【表7】
【0332】
この試験は様々な外科的セッティングにおける、組成物1の第一の臨床評価を示す。組成物1の、外科的部位での止血に関する有効率は、FASにおいて、82.5%(160/194部位)であった。有効性は、試験プロトコルにより規定される適用手順によって不適切と判断された一部の適用部位を含むことに起因して、より高い可能性がある。PPSの分析では(これらの適用部位はそこから除かれた)、有効率は88.8%(158/178部位)であった(それは、この試験の85%の標的の有効率を超える)。
【0333】
本実施例に示すように、組成物1の適用は、試験された外科的手順のそれぞれの後の滲出性出血に対する、効果的な代替を提供する。肝切除では、有効率のより低い傾向が示されたが、それにもかかわらず結果は臨床的に効果的であった。処置の標的とされる出血部位の範囲は、肝切除において、より広範であり、各部位での出血点の数は、他の外科的手順よりも多く、肝切除での組成物1の適用は、他の外科的手順と比べて、より困難な外科的状況を意味することが示された。試験の初期においては、肝切除の一部のケースは、適切な適用方法を適用することができない部位を示した。したがって、肝切除は、組成物1の適用に関してさらなるトレーニングを必要とし得る。
【0334】
安全性分析の対象集団の97名の患者のうち、53の有害事象が、試験の観察フェーズ中に起きた。これらのうち、3つの有害事象に関しては、組成物1との因果関係が不適格と判断することができなかった。これらの事象の2つは異常な研究室試験の結果であり、臨床的に重大でないとみなされた。残りの有害事象は、人工血管の変色であり、これも臨床的に重大でないとみなされた。4つの重大な有害事象が観察されたが、組成物1の適用と相関しなかった。概して、組成物1が関連する問題は、この試験中に気付かれなかった。このことは、様々な外科的手順中の、外科的部位上での使用に、または外科的部位における使用に、組成物が安全かつ効果的であることを示す。
【0335】
まとめると、これらのデータは、本発明により提供されるペプチド組成物が、様々な外科的方法の間に直面する出血を効果的に止めることができ、および、特に、改善された有効性を提供し、オペレーション時間の減少させることにより、既存の方法論に勝る利点を提供することを示す。
【0336】
本発明の少なくとも1つの実施態様の様々な態様をこのように示したので、様々な変更、修正、および改善は、当業者にとって容易に明らかであることが理解されよう。そのような変更、修正、および改善は、本開示の一部であることが意図され、および、本発明の主旨および範囲内であることが意図される。したがって、前述の記載および図面は、例示目的のみであり、本発明は、以下の特許請求の範囲により詳細に記載される。
【0337】
同等物
請求項の要素を修正するための、特許請求の範囲における序数の用語、例えば「第一」「第二」「第三」などの使用は、それ自体で、優先、先行、または、他に対する1つの請求項の要素の順序または方法の行為が行われる時間的順序のいずれも暗示しないが、請求項の要素を区別するために、ある名前を有する1つの請求項の要素を、(序数の用語の使用が無ければ)同じ名前を有する別の要素から区別するための単なるラベルとして用いられる。
【0338】
明細書および特許請求の範囲において用いられる、冠詞「a」および「an」は、明確に反対を示さない限り、複数形の指示対象を含むと理解すべきである。グループの1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲または記載は、反対を示さない限り、またはそれ以外の方法で文脈から明らかでない限り、グループのメンバーの1つ、1つより多く、または全てが、所定の産物または方法の中に、存在する、採用される、またはそれ以外の方法で関連がある場合、満たしていると考えられる。本発明は、グループのまさに1つのメンバーが、所定の産物または方法の中に、存在する、採用される、またはそれ以外の方法で関連がある、実施態様を含む。また、本発明は、1つよりも多い、または、全体のグループメンバーが、所定の産物または方法の中に、存在する、採用される、またはそれ以外の方法で関連がある、実施態様も含む。さらに、本発明は、別段の指示がない限り、または、矛盾または不一致が生じることが当業者の一人にとって明らかでない限り、列挙されたクレームの1つまたは複数からの、1つまたは複数の限定、要素、節、記述用語などが、同じ基礎クレームに依存する別のクレーム(または、関連のある、任意の他のクレーム)の中に取り込まれている、全てのバリエーション、組み合わせ、および置換を包含することが理解されるべきである。要素がリストとして示される場合(例えば、マーカッシュ群または同様の形式)、その要素の各サブグループもまた開示され、および、任意の要素(単数または複数)がそのグループから除去され得ることが理解されるべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が(単数または複数)、特定の要素、特徴などを含むと言及される場合、本発明の特定の実施態様または本発明の態様は、そのような要素、特徴などからなる、または本質的になる、ということが理解されるべきである。簡潔さの目的のために、これらの実施態様は、本明細書において、全てのケースでそれほど多くの言葉で明確に示されているわけではない。本発明の任意の実施態様または態様は、明細書中に明確な除外が挙げられているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲から明確に除外され得ることもまた、理解されるべきである。本発明の背景を説明するため、および、その実施に関するさらなる詳細を提供するために、本明細書で参照される刊行物、ウェブサイトおよび他の参照材料は、参照によりここに援用される。