特許第6709827号(P6709827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709827
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】車両のリッド装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   B60K15/05 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-130352(P2018-130352)
(22)【出願日】2018年7月10日
(62)【分割の表示】特願2015-174030(P2015-174030)の分割
【原出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2018-167833(P2018-167833A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 靖広
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−297848(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0000875(KR,A)
【文献】 実開昭54−159625(JP,U)
【文献】 特開平11−189261(JP,A)
【文献】 実開平06−013924(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00 − 15/10
B62D 25/10 − 25/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上開口した略容器状のハウジングと、前記ハウジングの開口を開閉するリッドと、前記リッドを前記ハウジングに対して開閉可能に連結するリンク部材とを有する車両のリッド装置であって、
前記リンク部材を構成している第一のリンク部材及び第二のリンク部材と、
前記第一のリンク部材と第二のリンク部材との間に配置された付勢手段と、
前記第一及び第二の各リンク部材をそれぞれの軸部を介して回動自在に軸支可能なベース部材と、
前記ハウジングに設けられて前記ベース部材を受入可能な凹部とを有し、
前記ベース部材及び前記凹部の何れか一方には係合部が形成され、他方には前記係合部と係合する被係合部が形成されており、前記ベース部材が前記凹部に対して前記係合部及び前記被係合部の係合を介して装着されていると共に、前記第一ないしは第二のリンク部材の外面がリッド開き時に前記ハウジング又は前記リッドの対応部とほぼ同一面となることを特徴とする車両のリッド装置。
【請求項2】
前記係合部と前記被係合部は互いに係合可能な突条部と溝部からなることを特徴とする請求項1に記載の車両のリッド装置。
【請求項3】
前記リンク部材の基端は前記ベース部材に対し前記軸部を介して回動自在に連結されると共に、前記軸部の軸端は前記凹部の内壁面により遮蔽されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のリッド装置。
【請求項4】
前記ハウジング、前記リッド、前記リンク部材、前記ベース部材は樹脂成形品からなることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車両のリッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリッド装置に関し、特に自動車等の車体に設けられたリッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は特許文献1に開示のフューエルリッド(以下、リッドと略称する)を示している。このリッド13は、同(a)に示された車体後部のリアフェンダ部3に設けられた給油口部5を開閉するものである。給油口部5は、ハウジングで区画形成されており、車幅方向に延びる前後の縦面7と、車両前後方向に延びる左右の横面11とで凹状となっており、図示を省いた凹状の底壁にキャップで閉じられた燃料入口部を配置している。リッド13は、前側を車幅方向内側に屈曲したフランジ部21に形成し、前裏側でフランジ部21に沿って設けられた支持ブラケット19を有している。そして、リッド13は、縦面7に固定された取付ブラケット9に対して第1及び第2のリンク部材15,17を介して開閉自在に支持されている。
【0003】
この場合、取付ブラケット9及び支持ブラケット19には、それぞれ支持ピン27,35が2個づつ突設されている。第1のリンク部材15は、両端をC字状の支持部23,25に形成しており、支持部23,25が取付ブラケットの支持ピン27と支持ブラケットの支持ピン27に回動自在に連結されている。第2のリンク部材17も、両端をC字状の支持部31,33に形成しており、支持部31,33が取付ブラケットの支持ピン35と支持ブラケットの支持ピン35に回動自在に連結されている。また、第2のリンク部材17は、第1のリンク部材15の後方側に配置されており、第1のリンク部材15の動きをサポートすることによりリッド13の開閉軌跡を所定の経路に規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−343367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したリッド構造において、通常は、給油口部を区画しているハウジングがリッドをリンク部材等を介して組付けた状態で、車体パネル(アウタパネル等)に設けた開口部の内側に差し込まれると共に、開口部の縁部にシール部材を介して一体的に装着される。そして、燃料を給油するときは、リッドを開状態にした後、給油口部内に設けられた燃料入口部のキャップを外してから、燃料ノズルを給油口部の空間から燃料入口部に差し込む。この給油操作では、燃料ノズルが給油口部の空間に突出している取付ブラケット等に誤って当たる虞がある。勿論、リッド開状態においては、給油口部に取付ブラケットが突出しているため意匠性に欠けるものとなっている。
【0006】
なお、以上の対策としては、例えば、給油口部を区画しているハウジングの周囲部に外へ張り出した張出部を設け、該張出部の内空間にリッド支持部を配置することによりリッド開状態での見栄えを保つこともある(例えば、特開2014−97712号公報)。その場合は、ハウジングが車体パネルの開口に対し張出部をまずパネル背面側にもぐらせた状態から、車体パネルに対し斜め方向に差し込みながらシール部材を介して装着される。ところが、この操作では、前記ハウジングが張出部の存在により車体パネルの開口に真っ直ぐに挿入できないため、シール部材が捻れたり位置ずれする虞がある。
【0007】
本発明の目的は、以上の課題を解決して、ハウジング内の意匠性に優れた車両のリッド装置を得る。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、上開口した略容器状のハウジングと、前記ハウジングの開口を開閉するリッドと、前記リッドを前記ハウジングに対して開閉可能に連結するリンク部材とを有する車両のリッド装置であって、前記リンク部材を構成している第一のリンク部材及び第二のリンク部材と、前記第一のリンク部材と第二のリンク部材との間に配置された付勢手段と、前記第一及び第二の各リンク部材をそれぞれの軸部を介して回動自在に軸支可能なベース部材と、前記ハウジングに設けられて前記ベース部材を受入可能な凹部とを有し、前記ベース部材及び前記凹部の何れか一方には係合部が形成され、他方には前記係合部と係合する被係合部が形成されており、前記ベース部材が前記凹部に対して前記係合部及び前記被係合部の係合を介して装着されていると共に、前記第一ないしは第二のリンク部材の外面がリッド開き時に前記ハウジング又は前記リッドの対応部とほぼ同一面となることを特徴としている。
【0009】
以上の本発明は、請求項2〜4で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)前記係合部と前記被係合部は互いに係合可能な突条部と溝部からなる構成である(請求項2)。
【0010】
(イ)前記リンク部材の基端は前記ベース部材に対し軸部を介して回動自在に連結されると共に、前記軸部の軸端は前記凹部の内壁面により遮蔽されて(目視不能となって)いる構成である(請求項3)
【0011】
(ウ)前記ハウジング、前記リッド、前記リンク部材、前記ベース部材は樹脂成形品か
らなる構成である(請求項4)
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、図3に例示されるごとくハウジングとリッド及びリッドをハウジングに連結するリンク部材を有したリッド装置として、第一及び第二の各リンク部材をハウジングの凹部に配置されるベース部材に軸支するようにしたため、従来構造に比べハウジング内に突出した部材や突出箇所を無くしたり減少し、それによりハウジング内の空間の意匠性を良好にできる。
【0013】
また、この発明では、ベース部材がハウジング側の凹部に係合部及び被係合部の係合介して装着されるため、良好な組立性を実現し、それにより組付け工数の低減も可能となる。また、リンク部材が2つのリンク部材で構成されているため、特許文献1と同様にリッドの回動軌跡を規制容易となり、それによってハウジンク内にベース部材ないしはリッドの軸部を配置してもハウジングや車体に対する干渉を回避できる。
【0014】
また、この発明では、第一リンク部材と第二のリンク部材の間に付勢手段の付勢力が作用することでリンクのがたつきを防止できる。更に、この発明では、第一ないしは第二のリンク部材の外面がリッド開き時にハウジング又はリッドの対応部とほぼ同一面となるため、見栄えを向上できる。更に、請求項2の発明では、係合部及び被係合部が互いに係合可能な突条部及び溝部からなるため、溝部に沿った方向への摺動操作つまりワンタッチ操作によりベース部材を凹部に取付可能となる。
【0015】
請求項3の発明では、リンク部材の基端がベース部材に軸部を介して回動自在に連結された状態で、軸部の軸端が凹部の内壁面により遮蔽されているため、軸部が目視不能となって見栄え向上と共に不用意な外れの虞を解消できる。
【0016】
これに対し、請求項4の発明では、構成部材が樹脂成形品からなるため樹脂による軽量化が可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】形態例のリッド装置を車体側に装着した状態において、(a)はリッドの閉状態を示す模式図、(b)はリッドの開状態を示す模式図である。
図2図1(a)のA−A線に対応した断面図であり、(a)は車体パネル側の取付枠に装着する前の状態を示す図、(b)は前記取付枠に装着した状態を示す図である。
図3図1(b)のA1−A1線に対応した断面図である。
図4】上記リッド装置を示し、(a)は上面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は下面図である。
図5】上記リッド装置の構成を示す概略分解図である。
図6】上記リッドの構成を示し、(a)はリッド及び該リッド裏面に装着される支持体を示す分解図、(b)及び(c)は(a)のB方向とC方向から見た支持体の端面図である。
図7】(a)はハウジングに筒部材を装着した状態で示す斜視図、(b)は更にハウジングに支持体を組付けた状態で示す斜視図である。
図8】(a)はハウジングにロック手段を装着した状態で示す斜視図、(b)は(a)のD部拡大図である。
図9】(a)は上記D部拡大図において、凹部に装着されたベース部材に対し第一のリンク部材の組立説明図、(b)は前記凹部のベース部材に対し第二のリンク部材の組立説明図である。
図10】(a)と(b)及び(c)は上記支持体に第一,第二のリンク部材を連結した状態での上面図と側面図及び下面図である。
図11】特許文献1に開示のものであり、(a)はリッド装置を車体パネルに装着した非使用状態での説明図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。この説明では、本発明に係るリッド装置の構造を明らかにした後、作動特徴に言及する。
【0019】
(構造)図1から図5において、このリッド装置7は、給油口部12を区画している上開口した略容器状のハウジング1と、ハウジング1の上開口を開閉するリッド2と、ハウジング1の内周囲に装着されるベース部材3と、ベース部材3に対してリッド2を開閉可能に支持するリンク部材4と、ハウジング1の底壁に連結されて燃料ノズルを給油口部12から差し込む筒状部5とを備えている。また、リッド2は、蓋体20及び該蓋体の裏面に装着される支持体24からなる。リンク部材4は、第一及び第二のリンク部材4A,4Bからなる。なお、ハウジング1、リッド2(蓋体20及び支持体24)、ベース部材3、リンク部材4(第一のリンク部材4A及び第二のリンク4B)、筒部材5はそれぞれ樹脂の射出成形体である。
【0020】
換言すると、リッド装置7は、リッド2がハウジング1に対しベース部材3と2つのリンク部材4A,4Bを介して回動可能に支持されている。そして、リッド2は、ハウジング1の外周に装着されるロック手段18により図2の閉状態に係止されており、例えばロック手段18が車室内のオープナーを介して係止解除操作されることで、或いはドアロックの解除操作と連動して係止解除されると、後述するプッシュリフタ16aにより付勢手段(トーションばね)6の付勢力に抗して図2の閉状態から少しだけ開く。そこで、リッド2を手で開方向へ回動させると途中で付勢手段6の付勢方向が反転し、以後は付勢手段6の付勢力で全開方向へ回動される。以下、これらの細部を明らかにする。
【0021】
ハウジング1は、筒状部10の上周囲にフランジ部11を突出している。筒状部10は、底壁に設けられた円形の貫通孔13と、内周囲に設けられてベース部材3を受入可能な大きさの凹部14と、凹部14の左右ないしは前後部を一段低く形成した窪み部15と、内周囲にあって凹部14と対向する箇所に位置して一段低く形成した窪み部16と、外周囲に突設された複数の弾性係止爪17と、リッド2を閉状態に係止するロック手段18とを備えている。また、フランジ部11は、概略矩形であり、図2の拡大図に示されるごとく先端周囲部に一体的に装着されたシール部材19を有している。符号11aは、フランジ部11上に設けられてリッド2を受け止めるための複数の突起である。
【0022】
このうち、貫通孔13には筒部材5が連結される。筒部材5は、不図示の燃料タンク側と連結管により連通される。そして、給油用燃料ノズルは、給油口部12から筒部材5の筒内に差し込まれた状態で給油操作されることになる。
【0023】
凹部14は、図8に示されるごとく上が窪み部15に連通しており、対向した内側面にそれぞれ設けられて水平に突出された係合部である突条部14aと、上下に突出されてベース部材3を位置決めする規制突起14bと、奥側の底面に突出されて貫通孔付きの台座14cとを有している。突条部14aは、後述するベース部材3の両側部31に設けられた溝部37と係合することで、ベース部材3を凹部14に装着可能にする。
【0024】
窪み部15は、図3から推察されるごとくリッド2が図2の閉状態から開状態に回動されるときにリッド2の基端側を逃がす箇所である。窪み部16は、図7のごとく底壁上に、プッシュリフタ16aと、間に所定の隙間を区画している突起16b及び突起16cとがそれぞれ突設されている。なお、プッシュリフタ16a(このリフタは例えば特開2015−105062号公報などに開示されている)は、リッド2を開く際に、リッド2を少しより押し上げて浮かすことで指などで掴むことができるようにする。符号16dは筒状部10の内周にあって、窪み部15より下側箇所に設けられた貫通孔である。
【0025】
各弾性係止爪17は、図4に示されるごとく略コ形のスリットで区画形成され、また、フランジ部11との間に所定の隙間を保って突設されている。そして、各弾性係止爪17は、図2に示されるごとくリッド装置7をアウタパネル8に固定された取付枠9に装着する際、取付枠9の開口部9aを弾性縮径しつつ通過し、通過と同時に復元することにより開口部9aの縁部をフランジ部11との間に挟持した状態で取付枠9に対し装着可能にする。
【0026】
換言すると、アウタパネル8には、リッド2に対応した大きさの開口部8aが設けられている。取付枠9は、筒状部10を挿通可能な開口部9aを有し、アウタパネル8の内面にあって開口部8aの周縁部に溶接等で結合されている。また、リッド装置7は、図2(b)の拡大図に示されるごとく開口部9aの縁部がフランジ部11(の下面に設けられた突起)と係止爪17とで挟持された状態で取付枠9に装着される。
【0027】
ロック手段18は、出没駆動されるロック部材18aを有した公知のロック機構からなる。そして、ロック手段18は、筒状部10の外周囲にあって窪み部6の下側に装着されて、ロック部材18aを上記した貫通孔16dから突出するとリッド2を閉状態に係止し、貫通孔16dから没するとリッド2を開状態に切換可能となる。
【0028】
リッド2において、蓋体20は、図1図5及び図6に示されるごとくアウタパネル8の開口部8aにほぼ隙間なく収まる矩形状からなる。蓋体20の裏面には、支持体24を内側に位置決めする枠部20aと、枠部20aの両側内面及び前角部に突設された複数の下片部22と、下片部22との間に挟持部を形成している複数の上片部23とを有している。支持体24は、後側が対の腕部25で構成されている。各腕部25は、前後中間から端側に行くに従って上下に厚く形成されている。各腕部25の対向内面には、軸孔25a及び軸孔25bが前後に位置してそれぞれ同軸線上に設けられている。
【0029】
支持体24の上面側は、長手方向の両側及び前側がL形の段差に形成され、該L形の垂直面及び腕部25の上側に突出した複数の片部26を有している。支持体24の下面側は、前一方側の角部に突設された台部24aと、前側で板幅の略中間に突設された係合片27と、係合片27の前端面の一部から更に前方に突設された小突起28と、係合片27及び小突起28の対応側面に連結された状態で前他方側に突設されたガイド片29とを有している。
【0030】
このうち、各片部26は、上記した下片部22と上片部23との間に挟持されるよう組み付けらることにより支持体24が蓋体20の裏面に取り付けられる。台部24aは、リッド2が開から閉状態に切り換えられるときに上記した緩衝突起16aに当接する。係合片27は、前後に貫通された係止孔27aを有しており、上記したロック部材18aが挿入係合することでリッド2を閉状態に係止する。小突起28は、リッド2の閉状態で上記した突起16b,16c同士の間の隙間に嵌合されることで、リッド2の不用意な揺動を規制する。ガイド片29は、リッド2が開から閉状態、閉から開状態に切り換えられる過程で窪み部16と筒状部10との境部に形成した湾曲面に沿って摺動されることで、リッド2のスムースな回動を維持可能にする。
【0031】
ベース部材3は凹部14にほぼ収まる大きさからなる。また、ベース部材3は、図3図5及び図8に示されるごとく底壁30と、底壁30の両側に連結されると共に上側を下側に比べて幅細に形成している側壁31,31と、両側壁31同士の後端側を連結して凹部内を見え難くする後壁32と、底壁30の上面に突設された上下方向の貫通孔付きのボス33と、後壁32に一体化されて底壁30より下方に突出している脚34と、両側壁31の上下に設けられてそれぞれ同軸線上に位置している軸孔35,36と、両側壁31にあって軸孔36より下側に設けられて前端から後端の手前まで水平に延びている被係合部である溝部37とを有している。
【0032】
以上のベース部材3は、凹部14に対し両側の溝部37が突条部14aに嵌るよう押し入れる。すると、ベース部材3は、各側壁31の幅細となった上側が規制突起14bに当接した状態で位置出しされると共に、突条部14aと溝部37の係合により凹部14に装着される。この装着状態において、ベース部材3は、底壁30の前側が台座14cに支持され、底壁30の後側が脚34を介して凹部14の底面に支持されることで水平状態を保つ。また、ボス33の貫通孔は、図3のごとく台座14cの貫通孔と連通している。なお、この構造では、必要に応じてねじ等の止め具が外側又は内側より台座14cの貫通孔からボス33の貫通孔にねじ込まれることにより、ベース部材3が凹部4から不用意に外れないよう設計されている。但し、そのような止め具は省略可能である。
【0033】
第一のリンク部材4A及び第二のリンク部材4Bは、リッド2ないしは支持体24をベース部材3に対し回動可能に支持する。すなわち、第一のリンク部材4Aは、図5図9(a)及び図10に示されるごとく略矩形の板部40と、板部40の上両側及び下両側にあって上向き又は下向きに突設された上突出部41及び下突出部42と、上突出部41の両外側面に同軸線上に突出された軸部43,43と、下突出部42の両外側面に同軸線上に突出された軸部44,44とを有している。板部40の上下面には、多数の凹ないしは切込部が設けられている。
【0034】
以上のリンク部材4Aは、下側の各軸部44がベース部材の対応する軸孔36に回動自在に嵌合連結され、上側の各軸部43が支持体の対応する軸孔25aに回動自在に嵌合連結される。
【0035】
第二のリンク部材4Bは、図5図9(b)及び図10に示されるごとく側面視で略く形の板部45と、板部45の上両側及び下両側にそれぞれ同軸線上に突設された軸部46,47と、軸部47より更に下両側にあって同軸線上に突設された突起48とを有している。突起48は、リンク部材4Bが凹部14に取り付けられたベース部材3の軸孔35に嵌合された軸部47を支点として回動する過程で、例えばベース部材3の対向部に摺接することで摩擦抵抗を減じたりがたつきを吸収し易くする。また、板部45は、図3のごとくリッド2の開状態において、給油口部12側に配される外面が平坦面(意匠面)に形成されると共に、反対側の内面が上側に多数のリブを設け、下側に空洞を形成している。その空洞には、両内側面にばね保持用の支持軸部49が同軸線上に突設されている。
【0036】
以上のリンク部材4Bは、下側の各軸部47がベース部材の対応する軸孔35に回動自在に嵌合連結され、上側の各軸部46が支持体の対応する軸孔25bに回動自在に嵌合連結される。その際は、付勢手段6であるコイルばねがコイル部を第二のリンク部材における両側の支持軸部49に保持した状態に組み込まれ、一端6aが前記した板部45の空洞内に配置され、他端6bが第一のリンク部材4Aの下側に配置される。
【0037】
(作動)次に、以上のリッド装置7の動作特徴を図1から図3を参照し明らかにする。(1)まず、図2(a)は、以上のようにして組み立てられたリッド装置7をアウタパネル8に装着された取付枠9に対し固定する取付操作を示している。この構造では、リッド装置7が筒状部10の周囲にロック手段18を装着しているが、そのロック手段18はフランジ部11より内側に配置されている。このようにリッド装置7ないしはハウジング1としては、周囲から外側に突出した部分を極力無くしたため、車体の開口部(アウタパネルの開口部8a及び取付枠の開口部9a)に差し込む際に真っ直ぐに組込可能となり、それによりフランジ部11に装着されたシール部材19が従来のごとく組込に伴って捻れたり位置ずれの虞を解消でき、作業効率と品質を向上できる。
【0038】
(2)また、リッド装置7は、開口部9aに挿入されて押されると、各係止爪17が縮径方向の変位を伴って開口部9aを通過し、通過と同時に復元してフランジ部11(の下面に設けられた突起)との間に開口部9aの縁部を挟持する。すなわち、この取付構造は、リッド装置7をワンタッチ操作で取付可能にしている。また、リッド装置7の取付状態において、図2(b)の拡大図に示されるごとくシール部材19が取付枠9の対応部に圧接されて開口部9aの水密性を保っている。
【0039】
(3)図2(b)及び図3はリッド装置7を車体側に装着した態様で示している。リッド装置7は、リッド2が閉状態において、ロック手段18により係止されており、従来と同様に給油口部12を塞いでアウタパネル8と同一面に配置されている。リッド2は、ロック手段18が係止解除されると、プッシュリフタ6aにより付勢手段6の付勢力に抗して開き方向に押されて少しだけ開く。その状態から、作業者は、リッド2を手で開き方向へ回動させると、途中(中間位置)で付勢手段6の付勢方向が反転し、それ(中間位置)以降は付勢手段6の付勢力により全開するまでリンク部材4(第一と第二のリンク部材4A,4B)を介して開方向へ回動される。
【0040】
両リンク部材4A,4Bの作動は、特許文献1の2つのリンク部材と類似しており、リッド2の開閉軌跡として、第一のリンク部材4Aによる本来の開閉軌跡を第二のリンク部材4Bにより規制したりサポートすることでコンパクトに修正し、リッド2が開閉時にアウタパネル8と干渉しないようにする。そのため、この構造では、リンク部材4A,4Bの各軸部43,44,46,47をハウジング1内に配置しても干渉しない。
【0041】
(4)また、この構造では、リッド2がリンク部材4(第一と第二のリンク部材4A,4B)を介して図3の実線つまり全開した開状態において、第一のリンク部材4Aの上側が第二のリンク部材4Bの板体45のく形内側に当接し、かつ、リッド2の基端側縁部が第一のリンク部材4Aの板部40に当接している。これにより、リッド2は90度以上に開いた開状態に安定保持されている。しかも、この構造では、図3の開状態において、第一のリンク部材4Aがリッド2と第二のリンク部材4Bに挟まれた状態となっているため見え難くなっている点、第二のリンク部材4Bが給油口部12の側に上記した平坦な意匠面を配置している点、該意匠面がハウジング1に一体的に組み込まれたベース部材3の後壁32、及びリッド2の対応部とほぼ同一面(連続した面)となっている点、等により見栄的に優れている。
【0042】
(5)なお、付勢手段6は、リッド2がリンク部材4を介した付勢力により上記した開方向の途中位置から全開位置まで回動可能にし、また、リッド2が全開位置から付勢力に抗して途中位置まで回動操作されると反転し、以後はリンク部材4を介した付勢力により閉状態に切り換える。このような付勢構造は、リッド2の開閉操作を良好にすると共に、閉状態及び開状態において振動によるがたつきを吸収可能にする。
【0043】
(6)なお、以上のリッド装置7は、主な構成部材つまりハウジング1、リッド2(蓋体20及び支持体24)、ベース部材3、リンク部材4(第一のリンク部材4A及び第二のリンク4B)、筒部材5は樹脂製であるため量産性に優れていると共に軽量化も図り易くなっている。
【0044】
以上のように、本発明のリッド装置は、請求項1又は7で特定される要件を除いて種々変更可能なものである。例えば、リッド2としては、蓋体20に支持体24を装着したが、支持体24に相当する部分を蓋体20に一体に形成してもよい。また、シール部材19としては、ハウジングのフランジ部11に別途作成したものを取り付けるようにしたが、フランジ部11に二色形成より一体に形成するようにしてよい。また、係合部(突条部14a)をベース部材側に設けると共に、被係合部(溝部37)を凹部14側に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・・・ハウジング(10は筒状部、11はフランジ部)
2・・・・・リッド(蓋体20、24は支持体)
3・・・・・ベース部材(30は底壁、31は側壁、32は後壁)
4・・・・・リンク部材(4Aは第一のリンク部材、4Bは第二のリンク部材)
5・・・・・筒部材
6・・・・・付勢手段(6aは一端、6bは他端)
7・・・・・リッド装置
8・・・・・アウタパネル(8aは開口部)
9・・・・・取付枠(9aは開口部)
12・・・・給油口部
14・・・・凹部(14bは規制突起)
14a・・・突条部(係合部)
19・・・・シール部材
35・・・・軸孔
36・・・・軸孔
37・・・・溝部(被係合部)
43・・・・軸部
44・・・・軸部
46・・・・軸部
47・・・・軸部
48・・・・突部
49・・・・支持軸部
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