(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709853
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】構成グループを実装ラインへ割り当てるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20200608BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-548007(P2018-548007)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公表番号】特表2019-511116(P2019-511116A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】EP2016055140
(87)【国際公開番号】WO2017152981
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】プファッフィンガー,アレキサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー,クリスチャン
【審査官】
板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−531161(JP,A)
【文献】
特開2006−287075(JP,A)
【文献】
特開平07−024701(JP,A)
【文献】
特開平04−257968(JP,A)
【文献】
特開平08−255197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成グループ(LP1〜LP6)を、当該構成グループ(LP1〜LP6)に複数の構成素子(B1〜B6)を実装するための複数の実装ライン(BL1〜BL2)へ割り当てるための方法であって、
前記構成素子(B1〜B6)を実装すべき前記構成グループ(LP1〜LP6)の各構成グループ種類および各前記実装ライン(BL1〜BL2)について、前記実装ライン(BL1〜BL2)における前記構成グループ種類の各サイクル時間と、前記構成グループ種類ごとに期待される生産すべき個数とを考慮して、期待される生産時間の合計が求められ、
実際の生産される個数が、予め定められた確率分布に従って算定され、
前記複数の実装ライン(BL1〜BL2)への前記複数の構成グループ(LP1〜LP6)の可能性のある割り当てが、既存のインフラストラクチャ又は使用者定義の設定によって制限されて、前記複数の実装ライン(BL1〜BL2)への前記複数の構成グループ(LP1〜LP6)の割り当てが最適化法により算定され、
前記複数の個数に関する前記確率分布から結果として生じる前記実装ライン(BL1〜BL2)ごとの前記期待される生産時間の合計に関する確率分布について、これらの結果として生じる前記確率分布に基づく分散値が最小化されるように、前記割り当ての算定が実施される、
方法。
【請求項2】
前記複数の実装ライン(BL1〜BL2)が等しい前記確率分布(W1、W2)を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つの前記実装ライン(BL1〜BL2)に割り当てられる前記構成グループ(LP1〜LP6)の集合について前記期待される生産時間の合計が、各前記実装ライン(BL1〜BL2)の最大の時間稼働容量を超えないことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記実装ラインごとの前記分散値は、ある時間内における1つの前記構成グループ種類の前記期待される個数からの偏差の2乗と、前記結果として生じる確率分布の付属した値との掛算から、1つの前記実装ラインに割り当てられている全ての前記構成グループ種類にわたる合計によって決定されて、2乗されたサイクル時間と掛算されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記最適化法として、整数線形計画法が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
1つの前記実装ラインの生産時間の前記分散値が、予め与えられた最大閾値に制限されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記最大閾値が最小にされることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記最大閾値が、上方又は下方に向けて制限された間隔の形で予め与えられていることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記間隔の幅が当該間隔を制限する値の1つに基づいてパーセント値で規定されていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各前記構成グループ種類が厳密に1つの前記実装ライン(BL1〜BL2)に割り当てられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
複数の構成グループ(LP1〜LP6)を、当該構成グループ(LP1〜LP6)に複数の構成素子(B1〜B6)を実装するための複数の実装ライン(BL1〜BL2)へ割り当てるための装置であって、
前記構成素子(B1〜B6)を実装すべき前記構成グループ(LP1〜LP6)の各構成グループ種類および各前記実装ライン(BL1〜BL2)について、前記実装ライン(BL1〜BL2)における前記構成グループ種類の各サイクル時間と、前記構成グループ種類ごとに期待される生産すべき個数とを考慮して、期待される生産時間の合計を求めるためのユニットを有しており、実際の生産される個数が予め定められた確率分布に従って算定可能であり、前記複数の実装ライン(BL1〜BL2)への前記複数の構成グループ(LP1〜LP6)の可能性のある割り当てが、既存のインフラストラクチャ又は使用者定義の設定によって制限可能であり、かつ
最適化法により前記複数の実装ライン(BL1〜BL2)への前記複数の構成グループ(LP1〜LP6)の割り当てを算定するためのユニットを有しており、前記複数の個数に関する前記確率分布から結果として生じる前記実装ライン(BL1〜BL2)ごとの前記期待される生産時間の合計に関する確率分布について、これらの結果として生じる前記確率分布に基づく分散値が最小化されるように、前記割り当ての算定が実施される、
装置。
【請求項12】
前記複数の実装ライン(BL1〜BL2)が等しい前記確率分布(W1、W2)を有することを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
1つの前記実装ライン(BL1〜BL2)に割り当てられる前記構成グループ(LP1〜LP6)の集合について前記期待される生産時間の合計が、各前記実装ライン(BL1〜BL2)の最大の時間稼働容量を超えないことを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記実装ラインごとの前記分散値は、ある時間内における1つの前記構成グループ種類の前記期待される個数からの偏差の2乗と、前記結果として生じる確率分布の付属した値との掛算から、1つの前記実装ラインに割り当てられている全ての前記構成グループ種類にわたる合計によって決定されて、2乗されたサイクル時間と掛算されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記最適化法として整数線形計画法が使用可能であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
1つの前記実装ラインの生産時間の前記分散値が予め与え得る最大閾値に制限可能であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
前記最大閾値が最小化可能であることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記最大閾値が上方又は下方に向けて制限される間隔の形で設定されていることを特徴とする請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
前記間隔の幅が当該間隔を制限する値の1つに基づいてパーセント値で規定されていることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
各前記構成グループ種類が厳密に1つの前記実装ライン(BL1〜BL2)に割り当てられていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項21】
製造又は組立ラインへの複数の構成グループ(LP1〜LP6)の割り当てが請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法に従って決定可能である、前記複数の構成グループ(LP1〜LP6)に複数の構成素子(B1〜B6)を実装するための製造又は組立ライン(BL1〜BL2)。
【請求項22】
請求項11〜20のいずれか1つに記載の装置又はその装置の手段で実行されるコンピュータプログラムであって、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法を実施するための手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項23】
命令を含んでおり、請求項11〜20のいずれか1つに記載の装置の適切な処理装置又は前記装置又は前記装置の1つまたは複数の手段において実行される際に、前記処理装置のコンピュータ又は前記装置又は前記手段に、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法を実施させるコンピュータ読取可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の構成グループを、当該構成グループ(構造体)に複数の構成素子(コンポーネント)を実装するための複数の実装ラインへ割り当てるための方法に関する。さらに、本発明は、複数の構成グループに複数の構成素子を実装するための製造又は組立ラインのための装置に関する。さらに、本発明は、コンピュータプログラム製品およびコンピュータ読取可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特に電子機器生産の分野では、製造すべきプリント基板もしくは構成グループがSMT実装ラインにおいて表面実装技術(surface mounted technology,SMT)によって製造される。SIPLACEなる製品名を有するSMT自動実装機およびシステムの製造元は、例えばASM社(http://www.siplace.com/en/Home)である。
【0003】
しかし、技術的制約のために、どの実装ラインにおいてもどの構成グループも製造可能であるとは限らない。構成グループは、実装ラインで異なる生産時間を有することも多い。さらに、実装ラインの最大生産時間能力を上回ることは許されない。
【0004】
1つの実装システムの複数の実装ラインへの複数の構成グループの割り当ては、通常、経験値又はヒューリスティック法に基づいて手動又は半自動で実施される。
【0005】
数理最適化法が使用できる場合に線形最適化法が考えられる。線形最適化法は、線形の等式および不等式によって制限されている集合について、線形目的関数の最適化に取り組む。線形最適化法は、(混合)整数線形最適化の解法の基礎である。いわゆるソルバーは、数学的問題を数値的に解くことができる特殊な数学的コンピュータプログラムに対する総称である。MIP(mixed integer linear programming、混合整数線形計画法)との関連では、小さいIPプログラム(整数最適化モデル)のために、例えばCPLEX、Gurobi、Ilog、Xpressのような標準ソルバーを使用することができる。小さいIPプログラムとしては、例えば2個のライン、181個の構成グループおよび839個の構成素子種類を有するインスタンスが考えられる。大きなインスタンスの場合に、CPLEXのような標準ソルバーにより、この複雑な問題設定を解くという問題が生じ得る。
【0006】
製造での計画視野は通常中期的であるので、異なる構成グループ種類の将来的な個数に関しては不確実性が存在する。これは、願わしくない実装ラインの稼働容量/生産時間の著しい変動をもたらし得る。それゆえ実際には個々のラインにおいて格別に大きい生産時間変動を生じさせ得るような構成グループ−ライン割り当てを回避することが望まれる。このような生産時間変動は、しばしば当該ラインの過負荷又は不足負荷をもたらす。
【0007】
上述の方法の生産時間は、二次的条件において考慮されなければならないために、ヒューリスティック法の場合に通常は、例えば生産時間制限値のような値において、架空の前提が導き出される。これは一般に試行錯誤のようなやり方で行われ、結局は非常に大きな計算処理能力が要求される結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011076565号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第2014/005741号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第2014/005743号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2014/005744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、複数の構成グループを複数の実装ラインへ割り当てるための改善された最適化方法もしくは技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば独立請求項によって解決される。有利な発展形態は従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明は、複数の構成グループを、当該構成グループに複数の構成素子を実装するための複数の実装ラインへ割り当てるための方法に関する。本方法では、
構成素子を実装すべき構成グループの各構成グループ種類および各実装ラインについて、各実装ラインにおける構成グループ種類の各サイクル時間と、構成グループ種類ごとに期待される生産すべき個数とを考慮して、期待される生産時間
の合計が求められ、実際の生産
される個数が、予め定め
られた確率分布に従って
算定され、複数の実装ラインへの複数の構成グループの可能性のある割り当てが既存のインフラストラクチャ
又は使用者定義の設定によって制限されて、複数の実装ラインへの複数の構成グループの割り当てが最適化法により算定され、複数の個数に関する
上記確率分布から結果として生じる実装ラインごとの期待される生産時間の合計に関する確率分布について、これらの結果として生じる確率分布
に基づく分散値が最小化されるように、
上記割り当ての算定が実施される。
【0012】
本発明の実施形態は、
個々のラインの生産時間変動を制限すること、又は当該変動をできるだけ最小化する。
【0013】
本発明による方法の利点は、大きなインスタンスを有する問題設定も今や、初めに述べた方法よりも少ない計算費用で解くことができることにある。
【0014】
最適化法としては、いわゆる整数線形計画法を使用することができる。それによって、市販の標準ソルバーを使用することができる。
【0015】
結果として生じる確率分布の期待値からの前記偏差は、類似した又は等しい値を取る。この場合に、「類似した」とは、最大偏差が上方又は下方に向けて許容されることを意味する。「等しい」とは同一を意味する。しかし、(ほとんど)等しい値の場合にも、上方又は下方に向けての僅かな偏差の形で僅かな不正確さがあってよく、「類似した」と違って、このような僅かな偏差は、ほとんど予定することができず、従ってほとんど予め定めることができない。
【0016】
1つの実装ラインに割り当てられる構成グループの集合について、期待される生産時間の合計が各実装ラインの最大の時間稼働容量を上回ってはならない。
【0017】
各構成グループが厳密に1つの実装ラインに割り当てられるならば、これは有意義なことである。1つの実装ラインの期待される生産時間の合計からの偏差は、その生産時間の分散値として表すことができる。
【0018】
実装ラインごとの分散値は、ある時間内における1つの構成グループ種類の期待される個数
からの偏差の2乗と、結果として生じる確率分布の付属した値との
掛算から、1つの実装ラインに割り当てられている全ての構成グループ種類にわたる合計によって決定されて、2乗されたサイクル時間と掛算されるとよい。
【0019】
前記分散値は、予め与え得る最大閾値に制限することができ、場合によっては後述の実施例においてVarMax
lと称す最大閾値の設定によって最小化することができる。最大閾値は上方および/又は下方に向けて制限された間隔の形で設定することができる。
【0020】
その間隔の値は、パーセント表示で、当該間隔を制限する値の1つに依存して規定することができる。
【0021】
整数線形計画法のための入力データとして、インフラストラクチャを記述する次のデータを使用することができる:
− 実装ラインの数、
− 構成グループの数、
− 構成グループ種類の数、
− 実装ラインごとの構成グループ種類の期待される個数、
− 実装ラインごとの生産時間制限値、
− 各実装ラインにおける構成グループ種類のサイクル時間、
− 構成グループ種類の期待される個数についての確率分布。
【0022】
装置設備ファミリは、1つの実装ラインにおいて実装のために用意されている構成素子種類の集合を変更することなく、1つの実装ラインにおいて実装することができる構成グループの集合であると規定されている。1つの実装ラインに用意されている構成素子種類の集合は装置設備とも称せられる。一般に、1つの実装ラインには1つの装置設備ファミリが含み得るよりも多い構成グループが割り当てられている。というのは、1つの実装ラインに任意に多くの構成素子種類を用意することができないからである。従って、実装ラインは時々装置設備交換される。その装置設備交換の際に、第1の装置設備ファミリのための装置設備が、第2の装置設備ファミリのための装置設備と交換される。この装置設備交換が稀であるほど、また装置設備交換の際に交換されなければならない構成素子種類が少ないほど、少ない時間コストで実装システムを運転することができる。全体として実装システムにおいて使用される装置設備ファミリの数は、例えば1つの実装ラインの構成素子分散値よりも実際的な品質指標を表すことができる。その場合に1つの実装ラインの構成素子分散値は、その実装ラインに割り当てられている複数の構成グループの1つへ実装すべきである構成素子がそれぞれ属している異なる構成素子種類の数によって与えられている。従って、この方法は、実装ラインへの構成グループの割り当てを決定することができ、それらの割り当ては、実装システム全体の改善された稼働容量を可能にする。
【0023】
特許請求されている方法は、各期待値からの偏差に関してできるだけ最善の結果に収束すべきである最適化法の第1の目的関数を定義する一方で、第2の目的関数により付加的に補足可能である。この第2の目的関数は、上述の割り当てに基づいて各実装ラインのため装置設備ファミリの数を決定することができ、その場合に時間的な装置設備変更コストを低減するためには、実装ラインの数はできるだけ少なくすべきである。各実装ラインの装置設備ファミリの数の制限および/又は最適化のために、場合によっては実装ラインごとに異なる閾値が予め設定可能であるか、もしくは予め定め得るとよい。
【0024】
第2の目的関数における構成素子分散値および/又は装置設備ファミリの数のような他の制約条件により、実装ラインの最大の稼働容量が超過されないように寄与するさらに一層正確な結果を得ることができる。
【0025】
使用者は、両目的関数を用いる全体的最適化の場合に、第1の目的関数に大きい重み付けをするべきか、それとも第2の目的関数に大きい重み付けをするべきかを手動で設定することができる。
【0026】
本発明の他の観点によれば、複数の構成グループを、当該構成グループに複数の構成素子を実装するための複数の実装ラインへ割り当てるための装置が提供される。本装置は、
−
構成素子を実装すべき構成グループの各構成グループ種類および各実装ラインについて、各実装ラインにおける構成グループ種類の各サイクル時間と、構成グループ種類ごとに期待される生産すべき個数とを考慮して、期待される生産時間
の合計を求めるためのユニットを有しており、実際の生産
される個数が予め定め
られた確率分布に従って
算定可能であり、
複数の実装ラインへの
複数の構成グループの可能性のある割り当てが、既存のインフラストラクチャ
又は使用者定義の設定によって制限可能であり、かつ
− 最適化法により
複数の実装ラインへの
複数の構成グループの割り当てを算定するためのユニットを有しており、複数の個数に関する
上記確率分布から結果として生じる、実装ラインごとの期待される生産時間の合計に関する確率分布について、これらの結果として生じる確率分布
に基づく分散値が最小化
されるように、
上記割り当ての算定が実施される。
【0027】
本装置は、上述の方法を実施するための手段および/又はユニットもしくは装置および/又はモジュールを含み、これらは、それぞれハードウェアおよび/又はファームウェアおよび/又はソフトウェアにより、もしくはコンピュータプログラムもしくはコンピュータプログラム製品として具体化することができる。
【0028】
本装置は、上述の方法と同様に、それ相応に発展形態をとることができる。
【0029】
本発明は、さらに別の観点に従って、複数の構成グループに複数の構成素子を実装するための製造又は組立ライン装置を提供する。本発明による製造又は組立ライン装置では、製造又は組立ラインへの構成グループの割り当てが前述の方法に従って決定可能である。
【0030】
この製造ライン装置又は組立ライン装置は1つの設備の一部であってよい。
【0031】
その設備の特徴をなしているのは、とりわけ次の設備種類である。これに関する例は、
− 自動化設備、
− 製造もしくは生産設備、
− 洗浄設備、
− 水処理設備、
− 機器又は機械、
− 流体機械、
− 発電設備、
− 電力供給網、
− 通信網、
− 医用装置もしくは機器、
− 病院情報システム、
である。
【0032】
本発明の他の観点は、コンピュータプログラム(製品)が上述の装置又はその装置の手段において実行される際に上述の方法を実施するための手段を有するコンピュータプログラム製品もしくはコンピュータプログラムである。コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品は、コンピュータ読取可能な媒体に記憶することができる。コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品は、通常のプログラミング言語(C++,Java(登録商標))で作成することができる。処理装置は、適切な入力手段、出力手段および記憶手段を有する市販のコンピュータ又はサーバを含み得る。これらの処理装置は、本発明による装置又は該装置の手段に組み込むことができる。
【0033】
以下において図面を参照して実施例を説明することにより、本発明の他の利点、詳細および発展形態を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は構成グループ製造のための複数の実装ラインを有する第1の模範的な組立設備を示す。
【
図2】
図2は複数の構成グループを複数のラインへ割り当てるためのライン1および2の個数/生産時間に関する確率分布図を示す。
【
図3】
図3は複数の構成グループを複数のラインへ割り当てるための本発明による最適化方法に基づく確率分布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、構成グループ製造のための複数の実装ラインBL1〜BL2を有する第1の模範的な組立工場もしくは組立設備を示す。1つの実装ラインBL1〜BL2は、通常複数の自動実装機BA1〜BA6からなり、これらの自動実装機は、それぞれ実装すべき構成グループを搬送するための搬送システムFB1〜FB2(例えばコンベヤベルト)によって互いに接続されている。複数の構成グループLP1〜LP6上に実装すべき複数の構成素子もしくは構成部品B1〜B6は、通常、複数のコンベヤF1〜F
12を介して供給される。その際に、1つの実装ラインBL1,BL2に、構成グループ種類の集合Rからの1つの特定の構成グループ種類r(r∈R)の複数の構成グループLP1〜LP6を割り当てることができる。
【0036】
例えば、複数の基板に複数の構成素子B1〜B6を実装するための複数の自動実装機BA1〜BA6では、それらの基板のための搬送経路の横に、複数の構成素子B1〜B6のための複数の供給装置F1〜F
12が配置されている。位置決めシステムによって移動可能な自動実装機BA1〜BA6の実装ヘッドは、構成素子B1〜B6を供給装置F1〜F
12から取り出し、構成素子B1〜B6を、実装されるべき基板が用意されている自動実装機の実装領域に移動させ、構成素子B1〜B6を基板上に置く。構成素子B1〜B6を準備するために、例えば、ベルト内に格納された構成部品を搬送および供給に適したいわゆるベルトフィーダが使用される。ベルトフィーダはポケット状の凹部内に格納された構成部品を、取り出し位置まで搬送し、この取り出し位置で当該構成部品が実装ヘッドによってベルトポケットから取り出される。空のベルトは適切な個所で供給装置F1〜F
12を去る。
【0037】
以下において、数理最適化法として、この問題設定のためのIPモデル(IPは、Integer ProgrammierungもしくはInteger Programm(整数計画法)又はganzzahliges Optimierungsmodell(整数最適化モデル)を表す。)を説明する。厳密な数学的な方法を使用することによって、従来において使用されたヒューリスティック法もしくは最適化法によるよりも明らかに良好な解を獲得することができる。IP解法は次の利点を有する:
・ グローバルな最適化アプローチ、
・ 容易に拡張可能、
・ 実際に広く普及しており有効性が実証されている、非常に良好な市販の標準ソルバー(例えば、Ilog、Xpress)、
・ 標準ソルバーは絶えず改善されるので、将来はインスタンスをさらに高速で解くことが期待できる。
【0038】
この方法により良好な生産時間を達成することができる。
【0039】
計画期間内には、複数のSMTラインにおいて構成グループ集合に異なる構成素子種類の複数の構成素子を実装しなければならない。各構成グループ
種類rについて、それに幾つのオーダーが与えられかが推定され、また構成グループが全体として計画期間内に何度作られなければならないかが推定される。異なる(実装)ラインにおけるサイクル時間と、推定変更時間と、ライン利用容量とを用いて、構成グループおよびラインごとに、入力として使用できる推定総生産時間を求めることができる。さらに、計画期間内においてラインごとに最大生産時間が設定される。図示されていないユニットにより、構成グループごとの期待される生産時間を求めることができる。このようなユニットは、1つの自動実装機、例えば実装ラインBL1のBA1に組み込まれているとよい。実装ラインへの構成グループの割り当てを算定するための図示されていないユニットも、このような1つの自動実装機に組み込まれているとよい。
【0040】
これらのユニットは、自動実装機から分離されている、自動実装機を制御するコンピュータで実行可能にされていてもよいし、あるいはそのコンピュータに組み込まれていてもよい。
【0041】
説明したIPモデルは、実行可能な模範的な定式化と見なすにすぎず、本発明による方法に対して制限を加えるものではない。
【0042】
目的は、個々のラインの生産時間変動を制限すること、又は当該変動をできるだけ最小化することにある。
【0043】
実施例では、IPモデルにおいて次のパラメータが使用される:
Lは全ての(実装)ラインの集合、Rは全ての構成グループ種類の集合、R
lはラインlにおいて実装可能な構成グループ種類の集合である。
【0044】
他のパラメータは次のとおりである:
n
r ある特定の時間内での構成グループ種類rの生産すべき個数に関する独立の確率変数、
c
r 構成グループ種類rの任意の個数を生産する際の固定の生産時間、
t
r,l ラインlにおいて構成グループ種類rの1つの構成グループを生産するためのサイクル時間、
VarMax
l 実装ラインlにおける最大生産時間分散値、
TimeLimit
l 実装ラインlにおける生産時間制限値、
Assign
r,l 実装ラインlへの構成グループ
種類rの割り当て。
【0045】
1つのラインにおける1つの構成グループの生産時間がt
r,ln
r+c
rであると仮定する。但し、c
rは一定成分であり、その成分には、例えば変更時間が含まれている。1つのラインにおける1つの構成グループの生産時間は、独立の確率変数でもある。
【0046】
それゆえ、1つのラインlに割り当てられている構成グループ種類rの集合R
l’⊆R
lについては、生産時間が確率変数でもあり、それの分散値に関して、
【数1】
が当てはまる。
【0047】
IPモデルでは一般に制約条件が使用される。IPモデルの次の制約条件は、ラインにおける期待される生産時間を制限し、解の許容性を保証する。
【数2】
【0048】
次の制約条件、即ち
【数3】
は、構成グループも実装可能である実装ラインにのみ構成グループを割り当て得ることを保証する。
【0049】
次の制約条件、即ち
【数4】
によって、各構成グループ種類が厳密に1つの実装ラインに割り当てられる。
【0050】
さらに、IPモデルでは、1つの実装ラインの生産時間分散値を次のように表すことができる:
【数5】
【0051】
ラインにおける最大生産時間分散値を制限するために次の変形例が実施可能である:
【0052】
(1)固定して予め与えられたパラメータVarMax
lによって、全てのラインlについての生産時間分散値を、
【数6】
なる付加的な制約条件により制限することができる。
【0053】
(2)VarMax
lが変数として選ばれるならば、補助変数Vmaxと、
【数7】
なる付加的な制約条件により、Vmaxの最小化によって、ラインの最大生産時間分散値をできるだけ最小化することが達成できる。その際に、Vmaxを、重み付け係数w
VにてIPモデルの目的関数の中に取り込むことができる。
【0054】
(3)他の実施可能性は、予め与えられたパーセント値pについて、ラインの最大分散値と最小分散値との偏差を制限することにある。
【0055】
さらに、V
minは他の補助変数である。付加的な制約条件は、
【数8】
および
【数9】
である。
【0056】
さらに、上記変形例(1)および(3)の上述の制約条件により、それぞれ独国特許出願公開第102011076565号明細書、国際特許出願公開第2014/005741号明細書、国際特許出願公開第2014/005743号明細書、国際特許出願公開第2014/005744号明細書からのIPモデルを拡張することができる。上述の特許文献から公知の方法は、実装ラインへ構成グループを割り当てるためのMIPによる最適化方法の例である。
【0057】
本特許出願と同日付けの特許出願「実装ラインへ構成グループを割り当てるための方法」 においては、上述の拡張が開示されている。
【0058】
従って、これらのIPモデルにおいては、生産時間変動を制限することもできる。上記変形例(2)により、これらのIPモデルは、新たな制約条件に加えて、選択された重み付けにてV
maxを目的関数の中に取り込むことによって、同様に拡張可能である。
【0059】
整数線形計画法は次のステップによって解くことができる:
a)1つの初期解もしくは最初の現在解を求め、
b)1つの現在解に基づいて構成グループLP1〜L6の選択された集合を実装ラインBL1〜BL2へ割り当て、
c)整数線形計画法に基づく標準ソルバー又は最適化プログラムによる新たな割り当てを算定する。
【0060】
それらのステップは反復して実行され、予め定められた制限時間又は結果品質が到達されたときに、プログラム停止が行われる。
【0061】
以下において簡単化された例を説明する。この例は、上述の複雑に示された最適化プロセスを理解のために簡単化して説明しようとするものであって、当該最適化プロセスをこの簡単化された例に限定しようとするものではない。小さいインスタンスを有する以下に説明する簡単な例を大きなインスタンスもしくは複雑な問題設定に転用する場合に、複雑な問題設定の解を既述の標準ソルバーによりおおまかに得ることができるようにするためには、適用すべき制約条件もしくは使用者定義の設定によるIPモデルにおけるパラメータの良好もしくは正確な選択が重要である。
【0062】
次の例では、1つの構成グループ種類ついて期待される個数がnである場合に、実際に製造すべきもしくは実装すべき個数が次の確率分布に従って変動することを仮定する:
・ 0.8の確率で、期待される値nを仮定する。
・ それぞれ0.1の確率で、値nの上方もしくは下方に向けて10%の偏差を仮定する。
【0063】
6個の異なる構成グループ種類が2つのラインBL1およびBL2に割り当てられるものとする。期待される個数nは:
【表1】
【0064】
割り当ては、両ラインが等しく能力を活用されるように、即ち等しい期待される生産時間を有するように実施されるべきである。サイクル時間は、全ての構成グループ種類について1分であり、従って、例えば個数が1000である場合に生産時間は1000分である。
【0065】
考えられ得る初期解として、r1およびr2がラインBL1ヘ割り当てられ、構成グループr3〜r6がラインBL2へ割り当てられる。それにより、次の表もしくは
図2に示されているように、2つのラインBL1およびBL2において次の個数/生産時間の確率分布W1およびW2が生じる。
【表2】
【0066】
ラインBL1においては、大きい個数を有する2つの構成グループ種類によって、個数/生産時間について大きな変動幅が生じる。
【0067】
これに対して、2つの構成グループ
種類r1およびr2がラインBL1およびBL2に分配される場合には、次の表および
図3に示されているように、2つのラインBL1およびBL2において次の個数/生産時間の確率分布W1およびW2が生じる。
【0068】
最大分散値は、第1の割り当ての場合には、
2*(400
2*0.01+200
2*0.16) = 16000
であり、第2の割り当ての場合には、25%だけ減少して、
2*(400
2*0.001+300
2*0.016+200
2*0.074+100
2*0.144)= 12000
となる。
【0069】
中央部および縁部において、第2の構成グループライン割り当ての場合のラインBL1およびラインBL2に関する分布値が、第1の構成グループライン割り当ての場合のラインBL1に関する分布値よりも低い。それどころか縁部では確率が10分の1しかない。
【0070】
適切にパラメータを選択するならば、狙いどおりに上述の第2の構成グループライン割り当てを求めることができる。最適化のステップは反復して実行され、予め定められた制限時間又は予め設定可能な結果品質が到達されたときに、プログラム停止が行われるとよい。
【0071】
本発明の詳細を好ましい実施例に基づいて詳しく図示および説明したが、本発明は開示された例に限定されておらず、当業者が本発明の保護範囲を逸脱することなくこれらの例から他の変形例を導き出すことができる。
【符号の説明】
【0072】
B1〜B6 構成素子
BA1〜BA6 自動実装機
BL1〜BL2 実装ライン
F1〜F12 コンベヤ(供給装置)
FB1〜FB2 搬送システム
LP1〜LP6 構成グループ