(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略することがある。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)の吐出容量を制御する。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸を有し、その回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。その揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出量が調整される。制御弁1は、その圧縮機の吐出室から制御室へ導入する冷媒流量、および制御室から吸入室へ導出する冷媒流量を制御することで揺動板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。
【0014】
圧縮機には冷媒の循環路として、冷凍サイクルを循環させるための外部循環路のほか、圧縮機内を循環させるための内部循環路が設けられている。圧縮機のシリンダに導入された冷媒の一部は、いわゆるブローバイガスとして、シリンダとピストンとのクリアランスを通って制御室へ漏れる。このブローバイガスも内部循環に寄与している。なお、本実施形態の制御室はクランク室からなるが、変形例においてはクランク室内又はクランク室外に別途設けられた圧力室であってもよい。
【0015】
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Ps(「被感知圧力」に該当する)を設定圧力に保つように、吐出室から制御室に導入する冷媒流量、および制御室から吸入室へ導出する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを軸線方向に組み付けて構成される。弁本体2は、吐出室から制御室へ流れる冷媒の流量を制御する主弁7と、制御室から吸入室へ流れる冷媒の流量を制御する副弁8とを含む。主弁7は「第1弁」として機能し、副弁8は「第2弁」として機能する。主弁7は、圧縮機の運転時に開度が調整され、吐出冷媒の一部を制御室へ導入する。副弁8は、圧縮機の起動時に全開状態となり、制御室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する。ソレノイド3は、供給電流値に応じた主弁7の閉弁方向かつ副弁8の開弁方向の駆動力を発生する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5を有し、そのボディ5内に主弁7,副弁8およびパワーエレメント6を収容する。パワーエレメント6は「感圧部」として機能し、吸入圧力Psの大きさに応じたソレノイド3への対抗力を発生する。
【0016】
ボディ5には、その上端側からポート12,14,16が設けられている。ポート12は「吸入室連通ポート」として機能し、圧縮機の吸入室に連通する。ポート14は「制御室連通ポート」として機能し、圧縮機の制御室に連通する。ポート16は「吐出室連通ポート」として機能し、圧縮機の吐出室に連通する。ボディ5の上端開口部を閉じるように端部材13が固定されている。ボディ5の下端部がソレノイド3の上端部に圧入されることにより、弁本体2とソレノイド3とが固定されている。
【0017】
ボディ5内には、ポート16とポート14とを連通させる主通路と、ポート14とポート12とを連通させる副通路とが形成されている。主通路は「第1通路」として機能し、副通路は「第2通路」として機能する。主通路には主弁7が設けられ、副通路には副弁8が設けられる。すなわち、制御弁1は、一端側からパワーエレメント6、副弁8、主弁7、ソレノイド3が順に配置される構成を有する。主通路には主弁孔20と主弁座22が設けられる。副通路には副弁孔32と副弁座34が設けられる。主弁孔20は「第1弁孔」として機能し、副弁孔32は「第2弁孔」として機能する。
【0018】
ポート12は、ボディ5の上部に区画された作動室23と吸入室とを連通させる。パワーエレメント6は、作動室23に配置されている。ポート16は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート16と主弁孔20との間には弁室24が設けられている。主弁孔20の下端開口部に主弁座22が形成されている。ポート14は、圧縮機の定常動作時に主弁7を経由して制御圧力Pcとなった冷媒を制御室へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時には制御室から排出された制御圧力Pcの冷媒を導入する。ポート12は、圧縮機の起動時に副弁8を経由して吸入圧力Psとなった冷媒を吸入室へ向けて導出する。
【0019】
ポート14,16には、円筒状のフィルタ部材15,17がそれぞれ取り付けられている。フィルタ部材15,17は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのメッシュを含む。主弁7の開弁時にはフィルタ部材17がポート16への異物の侵入を規制し、副弁8の開弁時にはフィルタ部材15がポート14への異物の侵入を規制する。
【0020】
ポート14と作動室23との間に副弁孔32が設けられている。副弁孔32の上端開口部に副弁座34が形成されている。副弁孔32は、主弁孔20と同軸状に連通している。ボディ5の下部(弁室24の主弁孔20とは反対側)にはガイド孔26が設けられている。ガイド孔26には、段付円筒状の弁駆動体29が摺動可能に挿通されている。
【0021】
弁駆動体29の上半部が縮径し、主弁孔20および副弁孔32を貫通しつつ内外を区画する区画部33となっている。弁駆動体29の中間部に形成された段部が、主弁体30となっている。主弁体30が弁室24側から主弁座22に着脱することにより主弁7を開閉し、吐出室から制御室へ流れる冷媒流量を調整する。弁駆動体29の上端部に副弁体36が一体に設けられている。
【0022】
副弁体36はリング状をなし、区画部33の上端部に同軸状に圧入されている。副弁体36は、作動室23に配置され、副弁座34と軸線方向に対向配置されている。副弁体36が副弁座34に着脱することにより副弁8を開閉する。主弁体30は「第1弁体」として機能し、副弁体36は「第2弁体」として機能する。なお、主弁体30および副弁体36は、制御弁1による所定の制御特性を実現するためにそれぞれ主弁孔20,主弁座22に挿抜されるスプール部を有するが、その構造および動作の詳細については後述する。
【0023】
弁駆動体29の上端部は、副弁体36を介してパワーエレメント6と作動連結される。弁駆動体29の下端部は、ソレノイド3から延びるシャフト38(「作動ロッド」として機能する)に連結されている。弁駆動体29の下端中央には凹状の嵌合穴37が設けられており、シャフト38の上端部が圧入されている。
【0024】
ボディ5とソレノイド3との間には作動室28が形成されている。弁駆動体29の下部側面には、その内部通路35と作動室28とを連通する連通孔39が設けられている。作動室28は、弁駆動体29の内部通路を介して作動室23に連通する。このため、作動室28には作動室23の吸入圧力Psが導入される。この吸入圧力Psは、ソレノイド3の内部にも導かれる。弁駆動体29の下端部には、半径方向外向きに突出するばね受け40が設けられている。ボディ5とばね受け40との間には、弁駆動体29を主弁7の開弁方向かつ副弁8の閉弁方向に付勢するスプリング42(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング42は、ソレノイド3のオフ時に主弁7を全開させるいわゆるオフばねとして機能する。
【0025】
パワーエレメント6は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ45を含み、そのベローズ45の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、主弁体30および副弁体36に伝達される。副弁体36が副弁座34に着座して副弁8を閉じることにより、制御室から吸入室への冷媒のリリーフが遮断又は制限される。また、副弁体36が副弁座34から離間して副弁8を開くことにより、制御室から吸入室への冷媒のリリーフが促進される。
【0026】
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア46と、コア46の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ48と、スリーブ48に収容されてコア46と軸線方向に対向配置された段付円筒状のプランジャ50と、コア46およびスリーブ48に外挿された円筒状のボビン52と、ボビン52に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル54と、電磁コイル54を外方から覆うように設けられる円筒状のケース56と、ケース56の下端開口部を封止するように設けられた端部材58と、ボビン52の下方にて端部材58に埋設された磁性材料からなるカラー60を備える。
【0027】
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア46の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア46とボディ5との間に作動室28が形成されている。一方、コア46の中央を軸線方向に貫通するように、シャフト38が挿通されている。シャフト38の下端部が、プランジャ50の上半部に圧入されている。作動室28の吸入圧力Psは、シャフト38とコア46との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ48の内部にも導かれる。
【0028】
スリーブ48の底部とプランジャ50との間には、プランジャ50ひいては弁駆動体29を主弁7の閉弁方向かつ副弁8の開弁方向に付勢するスプリング44(「付勢部材」として機能する)が介装されている。シャフト38は、弁駆動体29およびプランジャ50のそれぞれに対して同軸状に接続されている。
【0029】
シャフト38は、コア46とプランジャ50との吸引力であるソレノイド力を、弁駆動体29に伝達する。一方、弁駆動体29には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)がソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁7の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が主弁体30に作用し、主弁7の開度を適切に制御する。圧縮機の起動時には、ソレノイド力の大きさに応じてシャフト38が上方へ変位して副弁体36を押し上げ、副弁8を全開させる。それによりブリード機能が発揮させる。
【0030】
スリーブ48は非磁性材料からなる。プランジャ50の側面には軸線に平行な連通溝66が設けられ、プランジャ50の下部には内外を連通する連通孔68が設けられている。このような構成により、吸入圧力Psがプランジャ50とスリーブ48との間隙を通って背圧室70に導かれる。
【0031】
ボビン52からは電磁コイル54につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部材58を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部材58は、ケース56に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から覆うように取り付けられている。端部材58は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙にも介在している。それにより、電磁コイル54で発生した熱をケース56に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部材58からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
【0032】
図2は、
図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
弁駆動体29のガイド孔26との摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール74が設けられている。シャフト38が弁駆動体29と一体に設けられているため、ソレノイド力を主弁体30および副弁体36に直接的に伝達できる。この構成は、弁駆動体29とガイド孔26との摺動部への異物の噛み込みにより各弁体の作動がロックした場合に、それを解除するロック解除機構として機能する。
【0033】
パワーエレメント6は、ベローズ45の上端開口部を第1ストッパ82により閉止し、下端開口部を第2ストッパ84により閉止して構成されている。ベローズ45は「感圧部材」として機能し、第1ストッパ82および第2ストッパ84は、それぞれ「ベース部材」として機能する。第1ストッパ82は、端部材13と一体成形されている。第2ストッパ84は、金属材をプレス成形して有底円筒状に構成されており、その下端開口部に半径方向外向きに延出するフランジ部86を有する。ベローズ45は、蛇腹状の本体の上端部が端部材13の下面に気密に溶接され、その本体の下端開口部がフランジ部86の上面に気密に溶接されている。ベローズ45の内部は密閉された基準圧力室Sとなっており、ベローズ45の内方には、端部材13とフランジ部86との間に、ベローズ45を伸長方向に付勢するスプリング88が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。
【0034】
端部材13は、パワーエレメント6の固定端となっている。端部材13のボディ5への圧入量を調整することにより、パワーエレメント6の設定荷重(スプリング88の設定荷重)を調整できるようにされている。なお、第1ストッパ82の中央部がベローズ45の内方に向けて下方に延在し、第2ストッパ84の中央部がベローズ45の内方に向けて上方に延在し、それらがベローズ45の軸芯を形成している。ベローズ45は、作動室23の吸入圧力Psと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁および副弁の開閉方向)に伸長または収縮する。その差圧が小さくなってベローズ45が伸長するに応じて、弁駆動体29に主弁7の開弁方向かつ副弁8の閉弁方向の駆動力が付与される。その差圧が大きくなっても、ベローズ45が所定量収縮すると、第2ストッパ84が第1ストッパ82に当接して係止されるため、その収縮は規制される。
【0035】
副弁体36は、リング状の本体を有し、その周方向の所定箇所の上面が切り欠かれて連通路90が形成されている。また、その周方向の他の箇所には、軸線に平行に本体を貫通する連通路92が形成されている。弁駆動体29の先端部がやや縮径されており、その縮径部94に外挿されるように副弁体36が圧入されている。副弁体36の高さは、縮径部94の高さよりもやや大きい。このような構成により、
図1に示したようにパワーエレメント6が伸長しているときには、副弁体36の上面がフランジ部86の下面に当接し、連通路92の上端は閉じられる。一方、連通路90は径方向に常に開放される。このため、作動室23の吸入圧力Psは、常に、その連通路90および弁駆動体29の内部通路35を通って作動室28ひいてはソレノイド3の内部に導かれる。
【0036】
本実施形態においては、主弁体30の主弁7における有効受圧径A(シール部径)と、副弁体36の副弁8における有効受圧径B(シール部径)と、弁駆動体29の摺動部径C(シール部径)とが等しくされている。なお、ここでいう「等しい」とは、完全に等しい概念はもちろん、ほぼ等しい(実質的に等しい)概念を含めてよい。このため、主弁体30と副弁体36との結合体(つまり弁駆動体29と副弁体36との結合体)に作用する吐出圧力Pd,制御圧力Pcおよび吸入圧力Psの影響がキャンセルされる。その結果、主弁7の制御状態において、主弁体30は、パワーエレメント6が作動室23にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0037】
本実施形態ではこのように、径A,B,Cを等しくするとともに、弁体(主弁体30および副弁体36)の内部通路を上下に貫通させることで、弁体に作用する圧力(Pd,Pc,Ps)の影響をキャンセルすることができる。つまり、副弁体36,弁駆動体29,シャフト38およびプランジャ50の結合体の前後(図では上下)の圧力を同じ圧力(吸入圧力Ps)とすることができ、それにより圧力キャンセルが実現される。これにより、ベローズ45の有効受圧径Dに依存することなく各弁体の径を設定することもでき、設計自由度が高い。本実施形態では、ベローズ45の径Dを径A,B,Cより大きくしているが、径A,B,Cと等しくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0038】
次に、制御弁の動作について説明する。
本実施形態では、ソレノイド3への通電制御にPWM方式(Pulse Width Modulation )が採用される。このPWM制御は、所定のデューティ比に設定した400Hz程度のパルス電流を供給して制御を行うものであり、図示しない制御部により実行される。この制御部は、指定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。
【0039】
図3は、制御弁の動作を表す図である。既に説明した
図2は、最小容量運転時における制御弁の状態を示している。
図3は、最大容量運転時(空調装置の起動時等)にブリード機能が発揮されたときの状態を示している。以下では
図1に基づき、適宜
図2,
図3を参照しつつ説明する。
【0040】
制御弁1においてソレノイド3が非通電(オフ)のとき、つまり空調装置が動作していないときには、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しない。一方、スプリング42により弁駆動体29が下方に押し下げられる。その結果、主弁体30が主弁座22から離間して主弁7が全開状態となる。このとき、
図1に示すように、副弁体36が副弁座34に着座して副弁8が全閉状態となるが、その後に吸入圧力Psが高まると、
図2に示すようにベローズ45が縮小し、連通路92が開放される。このため、オフ時は冷凍サイクルの流れそのものが小さく、しかも制御圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が小さくなるにもかかわらず、その連通路92を介した適度な抽気がなされ、必要最小限の内部循環量を確保することができる。また、制御圧力Pcが過度に高まることが防止される。パワーエレメント6と副弁体36とにより、吸入圧力Psの大きさに応じて連通路92を開閉する「開閉機構」が構成される。パワーエレメント6の感圧体(ベローズ45および第2ストッパ84を含む)と副弁体36とを作動連結又は連結解除することにより連通路92を開閉することができる。なお、連通路92の大きさを適切に設定することで、圧縮機のハウジングに通常設けられる固定オリフィスを省略することができる。
【0041】
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド3に制御電流(起動電流)が供給されると、コア46がプランジャ50を吸引する。このため、シャフト38ひいては弁駆動体29が押し上げられる。その結果、
図3に示すように、主弁体30が主弁座22に着座して主弁7が閉じ、副弁体36が副弁座34から離間して副弁8が全開状態となる。それにより、制御室から吸入室へ所定流量の冷媒のリリーフが促進されて制御圧力Pcが低下し、圧縮機は最大容量運転を行う。つまり、ブリード機能が発揮され、圧縮機が速やかに起動する。また、空調装置の起動時に吸入圧力Psが比較的高い場合、図示のようにベローズ45が縮小し、連通路92が開かれる。このため、副弁8の全開と相俟って冷媒のリリーフがさらに促進される。その結果、その起動性のより一層の改善を実現できる。特に、制御室(クランク室)に液冷媒が溜まっている状態からの起動の場合、その液冷媒の蒸発により制御圧力が上昇してしまうため、ブリード効率が低下する傾向にある。この点、本実施形態のように制御室からのリリーフを相乗的に増加させる構成とすることで、その起動性を改善できるメリットがある。吸入圧力Psが低下すると、ベローズ45が伸長して連通路92が閉じられ、パワーエレメント6と各弁体が作動連結される。
【0042】
このように、パワーエレメント6と副弁体36とによる開閉機構は、空調装置の最小容量運転時および最大容量運転時の双方において連通路92を開放する。それにより、最小容量運転時における冷媒の内部循環を確保するとともに、最大容量運転時のブリード機能を促進できる。言い換えれば、副弁体36に設けられた特定の通路(孔)により、異なる運転状態での抽気性能の確保を両立させることができる。一方、開閉機構は、可変容量運転時においては連通路92を閉じる。それにより、内部循環量を必要最小限に抑え、空調装置の仕事率向上を図ることができる。なお、本実施形態では、副弁体36に連通路92を一つ設ける例を示したが、複数設けてもよい。また、本実施形態では、連通路92を副弁体36に設ける例を示したが、変形例においてはボディ5内の他の可動体、つまり弁駆動体やシャフト(作動ロッド)等に設けてもよい。
【0043】
ソレノイド3に供給される電流値が主弁7の制御電流値範囲にあるときには、吸入圧力Psが供給電流値により設定された設定圧力Psetとなるよう主弁7の開度が自律的に調整される。この主弁7の制御状態においては、副弁8は小開度状態を維持する。このとき、吸入圧力Psが比較的低いためにベローズ45は伸長しており、主弁体30とパワーエレメント6とが作動連結して主弁7の開度を調整する。このとき、主弁体30は、スプリング42,44の合力による開弁方向の力と、閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じたパワーエレメント6による開弁方向の力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0044】
そして、例えば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ45が縮小するため、主弁体30が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁7の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ45が伸長する。その結果、パワーエレメント6が主弁体30を開弁方向に付勢して主弁7の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。
【0045】
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しなくなるため、スプリング42の付勢力により主弁体30が主弁座22から離間し、主弁7が全開状態となる。このとき、副弁体36が副弁座34に着座しているため、副弁8は閉弁状態となる。それにより、圧縮機の吐出室からポート16に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁7を通過し、ポート14から制御室へと流れることになる。したがって、制御圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。ただし、上述のように、吸入圧力Psが高まると、ベローズ45が縮小して連通路92が開放され、適度な抽気がなされるようになる。
【0046】
次に、各弁体の構造および動作の詳細について説明する。
図4は、主弁体および副弁体の構造および動作を表す部分拡大断面図である。
図4(A)〜(E)は、主弁が全開状態から全閉状態となるまでの動作過程を示す。各図の下段は主弁の状態を示し、上段は対応する副弁の状態を示す。
図4(A)の上段は
図2におけるa部拡大図であり、下段はb部拡大図である。
図4(E)の上段は
図3におけるa部拡大図であり、下段はb部拡大図である。
【0047】
図4(A)の下段に示すように、主弁体30は段差形状を有し、その段差の基端が着脱部100を構成し、その着脱部100の上方にスプール部102(「第1スプール部」として機能する)が連設されている。着脱部100が主弁座22に着脱して主弁7を開閉する。スプール部102は、主弁孔20に挿抜される。
【0048】
一方、
図4(A)の上段に示すように、副弁体36はその下端部に段差形状を有し、その段差の基端が着脱部110を構成し、その着脱部110の下方にスプール部112(「第2スプール部」として機能する)が連設されている。着脱部110が副弁座34に着脱して副弁8を開閉する。スプール部112は、先端(下方)に向けて外径が小さくなるテーパ形状を有し、副弁孔32に挿抜される。
【0049】
このような構成において、ソレノイド3がオフのときには、
図4(A)に示すように、主弁7が全開状態、副弁8が全閉状態となる。ソレノイド3への通電がなされると、主弁7が閉弁方向、副弁8が開弁方向にそれぞれ動作する。ソレノイド3への供給電流の増大に伴い、まず副弁8が開弁を開始する。このとき、スプール部112が副弁孔32から抜けるまでは、副弁体36と副弁孔32との間にオリフィスが形成され、副弁8を介した冷媒の流れが許容されつつも小流量に制限される(
図4(A),(B))。ただし、スプール部112がテーパ形状を有するため、副弁体36の変位につれてそのオリフィスが少しずつ大きくなり、その流量は漸増する。主弁7の開度は徐々に小さくなる。
【0050】
スプール部112が副弁孔32から抜けると、副弁8の弁開度増大率が大きくなり、冷媒流量が増大する。それにより、制御室から吸入室への冷媒のリリーフが促進される。一方、主弁7は、スプール部102が主弁孔20に挿入されることから、主弁体30と主弁孔20との間にオリフィスが形成され、主弁7を介した冷媒の流れが許容されつつも小流量に制限される(
図4(C),(D))。その後、スプール部102が主弁座22に着座することで主弁7が全閉状態となり、副弁8は全開状態となる(
図4(E))。
【0051】
図5は、主弁および副弁の開弁特性を示す図である。
図5(A)は、各弁体のストロークと弁開度(弁部の開口面積)との関係を示す。同図の横軸は主弁の全開位置を基点とした閉弁方向へのストロークを示し、縦軸は弁開度を示す。図中の実線が主弁を示し、一点鎖線が副弁を示す。
図5(B)は、ソレノイドへの供給電流値と弁開度との関係を示す。同図の横軸はソレノイドへの供給電流値を示し、縦軸は弁開度を示す。図中の実線が主弁を示し、一点鎖線が副弁を示す。なお、説明の便宜上、
図4(A)〜(E)の動作過程との対応を示すために、
図5(A),(B)においてA〜Eを表記している。
【0052】
図4に示した各弁の動作は、
図5に示す制御特性として表れる。すなわち、ソレノイド3への供給電流値がゼロからI1(「下限電流値」に対応する)までは、ストロークがゼロであり、主弁7が全開状態、副弁8が全閉状態となる。ただし、吸入圧力Psが比較的高くなるため、副弁体36の連通路92が開放される。このため、この92をオリフィスとして冷媒の流れが許容される(
図5(B)点線部)。
【0053】
供給電流値が下限電流値I1を超えると、主弁7が閉弁作動を開始し、副弁8が開弁作動を開始する。このとき、供給電流値の増大に伴いストロークが大きくなるにつれて、主弁7の開度は比例的に小さくなる。一方、副弁8の開度はストロークがS1となるまでに速やかに微増するが、供給電流値がI2となり、ストロークがS2となるまでは緩やかに増大する。これは、副弁8が平弁であるために開弁当初に開度が立ち上がるが、その後はテーパ形状のオリフィスにより開度が抑えられつつも緩やかに増加することを意味する。本実施形態では、このようにストロークがS2となるまでに、副弁8の開度が主弁7の開度を上回る。
【0054】
ストロークがS2を超えると、上述のようにスプール部112が副弁孔32から抜けることで副弁8のオリフィス効果がなくなる。その結果、弁開度増大率が大きくなり、副弁8は全開状態へ向かう。それによりブリード効果が発揮される。一方、主弁7の開度は、供給電流値がI3となり、ストロークがS3となるまでは比例的に減少する。ストロークがS3を超えると、上述のようにスプール部102が主弁孔20に挿入されることで主弁7のオリフィス効果が発揮される。供給電流値がI4を超え、ストロークがS4を超えると、主弁7は全閉状態へ向かう。すなわち、供給電流値が上限電流値I5以上となり上限電流値に到るまで主弁7は全閉状態となる。
【0055】
この制御特性では、ソレノイド3への供給電流値の増加とともに副弁8の開度が増大する第1制御領域R1と、第1制御領域R1よりも供給電流値が大きく、その供給電流値の増加とともに副弁8の開度がさらに増大する第2制御領域R2とが含まれる。そして、第1制御領域R1の弁開度増大率が第2制御領域R2の弁開度増大率よりも小さくなる。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態では、主弁7と副弁8とが同時に開弁する状態が存在する制御特性を有するため、両弁の開度の調整により、圧縮機における冷媒の内部循環量を小さく抑えることができ、空調装置の仕事率向上を図ることができる。主弁体30および副弁体36の双方にスプール部を設けることにより、
図5(B)に示したように、ソレノイド3への供給電流を変化させたときの主弁7と副弁8との開弁状態の切り替えが滞りなく行える。具体的には、主弁体30の閉弁タイミングにおいて副弁体36の開弁動作に停滞(不感帯)を伴うことがなく、副弁8を効率よく開弁させることができる。また、副弁体36のスプール部を副弁8の閉弁方向に向けて副弁孔32とのクリアランスを大きくする傾斜形状とすることで、
図5に示したように、ソレノイド3への供給電流に対する副弁8の開弁効率を段階的に切り替えることができる。このため、供給電流が比較的小さい主弁7の制御領域において副弁8の開度を漸増させ、主弁7の制御領域外で副弁8を全開状態へ移行させる際に制御を滑らかに接続することができる。また、このような傾きをもたせることにより、例えばブローバイガス等による制御圧力Pcの高まりを抑制し易くなり、容量制御を安定化できる可能性がある。
【0057】
一方、最小容量運転への移行時には、ソレノイド3への供給電流を下限電流値I1(変曲点)以下とすることで主弁7を直ちに全開状態とでき、その運転の切り替えを速やかに行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、圧縮機の運転効率を高く維持するとともに、運転の切り替えを効率良く行えるようになる。
【0058】
また、最大容量運転時および最小容量運転時の双方において抽気を増大可能な開閉機構を設けたことで、両運転状態における必要十分な抽気量を確保することができる。その結果、最小容量運転時(外部循環を特に小さくすべきとき)における内部循環を確保しつつ、最大容量運転時(外部循環を特に大きくすべきとき)のブリード機能を高めることができる。このような構成により、圧縮機内に通常設けられる固定オリフィスを省略するか、少なくとも小さくできる。その結果、可変容量運転時における外部循環を確保し易くなり、空調装置の仕事率向上を図ることができる。このことは、圧縮機の駆動源であるエンジンの負荷低減にもつながり、車両の燃費向上を図ることもできる。また、単一の開閉機構を最大容量運転時および最小容量運転時の双方で利用できることから、簡素な構成で上記効果が得られるメリットもある。
【0059】
(変形例1)
図6は、変形例に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
本変形例では、吸入圧力Psをソレノイドの内部へ供給するための通路が、第1実施形態のような弁駆動体(各弁体)ではなく、ボディに形成されている。
【0060】
すなわち、ボディ105には、第1実施形態の弁駆動体29およびシャフト38に代えて長尺状の作動ロッド138が挿通されている。作動ロッド138は、その上半部が段階的に縮径しており、その先端がパワーエレメント6の第2ストッパ84に挿通されている。主弁体130は作動ロッド138の中間部に一体に設けられ、副弁体136は作動ロッド138の上端部に固定(圧入)されている。主弁体130は、主弁体30と同様に着脱部とスプール部を有する。
【0061】
副弁体136は、リング状の本体を有し、その本体の下端部に段差形状を有する。副弁体136は、その段差部に副弁体36と同様に着脱部とスプール部を有するが、その説明については省略する。
【0062】
ボディ105には、作動室23と作動室28とを連通する連通路135が軸線と平行に設けられている。このため、作動室23の吸入圧力Psは、常に、その連通路135を通って作動室28ひいてはソレノイド3の内部に導かれる。
【0063】
本変形例によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本変形例の制御特性は、
図5に示した制御特性とほぼ同様であるが、
図5(B)に点線で示される特性(つまり、主弁7が全開状態であっても制御室からの抽気がなされる特性)は有していない。副弁体136には、パワーエレメント6の縮小により開放される連通路(
図2の連通路92参照)が設けられていないためである。なお、本変形例の構成においてその連通路を設けてもよいことは言うまでもない。逆に、第1実施形態の構成において連通路92を省略してもよい。
【0064】
(変形例2)
図7は、変形例に係る各弁体の構造および動作を表す部分拡大断面図である。本図は第1実施形態の
図4に対応する。
図7(A)〜(E)の各図の下段は主弁の状態を示し、上段は対応する副弁の状態を示す。
図8は、変形例に係る主弁および副弁の開弁特性を示す図である。本図は第1実施形態の
図5に対応する。
図8(A)は各弁体のストロークと弁開度との関係を示し、
図8(B)はソレノイドへの供給電流値と弁開度との関係を示す。
【0065】
図7に示すように、本変形例の副弁体137は、第1実施形態の副弁体36とは異なり、着脱部を有していない。スプール部113は、副弁体137の軸線と平行な円筒部120と、下方に向けて外径が小さくなるテーパ部122とを有する。すなわち、副弁体137は、副弁孔32に対して開閉動作をするものの、副弁8を全閉状態にはしない。
【0066】
このような構成により、
図7に示した各弁の動作は、
図8に示す制御特性として表れる。すなわち、主弁7の特性については第1実施形態と同様である。一方、副弁8の特性については、ソレノイド3への供給電流値がゼロからI1(下限電流値)までストロークがゼロであるが、円筒部120と副弁孔32との間のクリアランスを介して冷媒が流れるため、そのクリアランスを第1のオリフィスとして冷媒の流れが許容される(
図8(B)一点鎖線部)。また、吸入圧力Psが比較的高くなるため、副弁体137の連通路92が開放される。このため、この連通路92を第2のオリフィスとして冷媒の流れがさらに許容される(
図8(B)点線部)。すなわち、第1実施形態よりも抽気流量を多く得ることができる。
【0067】
供給電流値が下限電流値I1を超えると、主弁7が閉弁作動を開始し、供給電流値の増大に伴いストロークが大きくなるにつれてその開度が比例的に小さくなる。一方、副弁8も開弁作動を開始するが、ストロークがS1となるまでは、円筒部120と副弁孔32との間のクリアランスが一定であるため、副弁8の開度は変化しない。供給電流値がI2を超えると、ストロークがS1からS2となるまで副弁8の開度が緩やかに増大する。供給電流値がI3を超え、ストロークがS2を超えると、スプール部113が副弁孔32から抜けることで副弁8の弁開度増大率が大きくなる。それによりブリード効果が発揮される。
【0068】
供給電流値がI4を超え、ストロークがS3を超えると、スプール部102が主弁孔20に挿入されることで主弁7のオリフィス効果が発揮される。供給電流値がI5を超え、ストロークがS4を超えると、主弁7は全閉状態へ向かう。すなわち、供給電流値がI6以上となり上限電流値に到るまで主弁7は全閉状態となる。この制御特性においても第1制御領域R1と第2制御領域R2とが含まれ、第1制御領域R1の弁開度増大率が第2制御領域R2の弁開度増大率よりも小さくなる。本変形例によれば、ソレノイド3のオフ時の副弁8の開度を大きくするという仕様に対応することができる。
【0069】
(変形例3)
図9は、他の変形例に係る各弁体の構造および動作を表す部分拡大断面図である。
図9(A)〜(E)の各図の下段は主弁の状態を示し、上段は対応する副弁の状態を示す。
図10は、変形例に係る主弁および副弁の開弁特性を示す図である。
図10(A)は各弁体のストロークと弁開度との関係を示し、
図10(B)はソレノイドへの供給電流値と弁開度との関係を示す。
図10(C)は吸入圧力Psと弁開度との関係を示す。
【0070】
図9に示すように、本変形例の副弁体139は、着脱部を有していない。スプール部114は、副弁体139の軸線と平行な円筒部124を有するが、第1実施形態のようなテーパ部を有していない。主弁体131は、スプール部を有しておらず、その上端部が着脱部100となっている。
【0071】
このような構成により、
図9に示した各弁の動作は、
図10に示す制御特性として表れる。すなわち、ソレノイド3への供給電流値がゼロから下限電流値I1までは、ストロークがゼロであり、主弁7が全開状態となる。一方、副弁8の特性については、ソレノイド3への供給電流値がゼロからI1までストロークがゼロであるが、スプール部114と副弁孔32との間のクリアランスを介して冷媒が流れるため、そのクリアランスを第1のオリフィスとして冷媒の流れが許容される。また、吸入圧力Psが比較的高い間は、副弁体139の連通路92が開放される。このため、この連通路92を第2のオリフィスとして冷媒の流れがさらに許容される(
図10(B)点線部)。
【0072】
供給電流値が下限電流値I1を超えると、主弁7が閉弁作動を開始し、供給電流値の増大に伴いストロークが大きくなるにつれてその開度が比例的に小さくなる。一方、副弁8は開弁作動を開始するが、ストロークがS11となるまでは、スプール部114と副弁孔32との間のクリアランスが一定であるため、副弁8の開度は変化しない。供給電流値がI2を超え、ストロークがS11を超えると、スプール部114が副弁孔32から抜けることで副弁8の弁開度増大率が大きくなる。それによりブリード効果が発揮される。
【0073】
供給電流値がI3以上となり、ストロークがS12に達すると、上限電流値に到るまで主弁7は全閉状態となる。一方、主弁7の閉弁作動により吸入圧力Psが上昇する。この吸入圧力Psが比較的高くなる間は、副弁体139の連通路92が開放される。それにより、ブリード効果が促進される。この制御特性においては、第1制御領域R11における副弁8の弁開度増大率はほぼゼロであり、第2制御領域R12において所定の弁開度増大率を有する。本変形例によれば、ブリード時に主弁7が全閉状態となることで制御室からの抽気がより促進され、速やかに最大容量運転へ移行させることができる。
【0074】
なお、開閉機構の作動有無は、パワーエレメント6が感知する吸入圧力Psの大きさに基づく。
図10(C)の横軸は吸入圧力Psを示し、縦軸は弁開度を示す。同図において、ソレノイド3への供給電流値をIsol1としたときの主弁7の作動特性を実線、副弁8の作動特性を一点鎖線にて示す。供給電流値をIsol2としたときの主弁7の作動特性を破線、副弁8の作動特性を二点鎖線にて示す。図中点線が開閉機構の作動特性を示す。Isol2はIsol1よりも小さい。
【0075】
図示のように、開閉機構の作動有無は、吸入圧力Psに依存し、弁ストロークや供給電流値Isolの影響を受けない。一方、主弁7が閉じてから連通路92が開放されるまでの吸入圧力Psの圧力差ΔP、つまり主弁7が閉じてから連通路92が閉じ続ける圧力範囲(便宜上「不感帯」ともいう)が確保されているため、主弁7や副弁8の制御中に連通路92が無用に開放されることはない。
【0076】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0077】
制御弁201は、弁本体202とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。弁本体202は、ボディ205およびパワーエレメント6等を備えている。制御弁201は、一端側からパワーエレメント6、第1副弁8、第2副弁208、主弁7、ソレノイド203が順に配置される構成を有する。
【0078】
ボディ205には、その上端側からポート12,ポート14,ポート16が設けられている。弁室24のガイド孔26とは反対側には、副弁室224が設けられている。副弁室224は、ポート14と半径方向に連通している。ガイド孔26および主弁孔20を貫通するように弁駆動体229が設けられている。弁駆動体229は段付円筒状をなし、ガイド孔26に沿って軸線方向に摺動可能である。
【0079】
弁駆動体229の上半部が縮径し、主弁孔20を貫通しつつ内外を区画する区画部233となっている。弁駆動体229の中間部に形成された段部が主弁体230を構成し、主弁座22に着脱して主弁7を開閉する。区画部233の上部が上方に向かってテーパ状に拡径し、その上端開口部に副弁座234が構成されている。副弁座234は、弁駆動体229と共に変位する可動弁座として機能する。
【0080】
ボディ205の軸線に沿って長尺状の作動ロッド238が設けられている。作動ロッド238の上半部は弁駆動体229を貫通し、その上部が段階的に縮径されている。その段部に副弁体236が圧入されている。作動ロッド238の上端部は副弁体236を貫通し、パワーエレメント6と作動連結可能となっている。作動ロッド238の下端部は、プランジャ50に連結されている。
【0081】
作動ロッド238の軸線方向中間部にはばね受け240が嵌着されている。弁駆動体229とばね受け240との間には、弁駆動体229を主弁7の閉弁方向に付勢するスプリング244(「付勢部材」として機能する)が介装されている。主弁7の制御時には、スプリング244の弾性力によって弁駆動体229とばね受け240とが突っ張った状態となり、弁駆動体229と作動ロッド238とが一体に動作する。
【0082】
副弁体236は、副弁孔32を貫通するように配置され、弁駆動体229と同軸状に対向する。副弁体236を軸線方向に貫通するように複数の連通路232(「第3通路」として機能する)が設けられている。副弁体236の上端部がスプール部212となっており、そのスプール部212が副弁孔32に挿抜されることにより第1副弁8が開閉される。また、副弁体236が副弁座234に着脱することにより第2副弁208を開閉する。副弁体236と弁駆動体229とにより、ソレノイド3への供給電流値の大きさに応じて、主弁7が閉じた状態で連通路232を開放する「開閉機構」が構成される。
【0083】
ソレノイド203におけるコア246の上端部にはリング状の軸支部材260が圧入されており、作動ロッド238は、その軸支部材260によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材260の外周面の所定箇所には、軸線に平行な連通溝が形成されている。このため、作動室28の吸入圧力Psが、その連通溝を通ってソレノイド203の内部に導かれる。
【0084】
コア246とプランジャ50との間には、プランジャ50を主弁7の開弁方向かつ副弁8,208の閉弁方向に付勢するスプリング242(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング242は、ソレノイド203のオフ時に主弁7を全開させるいわゆるオフばねとして機能する。
【0085】
図12は、
図11の上半部に対応する部分拡大断面図である。
作動ロッド238は、副弁体236が副弁座234に着座した図示の状態においては、ばね受け240の上面が弁駆動体229の下面から少なくとも所定間隔Lをあけて離間するように設定されている。所定間隔Lは、いわゆる「遊び」として機能する。
【0086】
ソレノイド力を大きくすると、作動ロッド238を弁駆動体229に対して相対変位させて副弁体236を押し上げることもできる。それにより、副弁体236と副弁座234とを離間させて第2副弁208を開くことができる。また、ばね受け240と弁駆動体229とを係合(当接)させた状態でソレノイド力を主弁体230に直接的に伝達することができ、主弁体230を主弁の閉弁方向に大きな力で押圧することができる。この構成は、弁駆動体229とガイド孔26との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体230の作動がロックした場合に、それを解除するロック解除機構として機能する。
【0087】
本実施形態においては、主弁体230の主弁7における有効受圧径A(シール部径)と、副弁体236の第1副弁8における有効受圧径B(シール部径)と、弁駆動体229の摺動部径C(シール部径)とが実質的に等しく設定されている。このため、主弁体230と副弁体236との結合体(つまり弁駆動体229と副弁体236との結合体)に作用する吐出圧力Pd,制御圧力Pcおよび吸入圧力Psの影響がキャンセルされる。その結果、主弁7の制御状態において、主弁体230は、パワーエレメント6が作動室23にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁201は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0088】
本実施形態では、ベローズ45の径Dを径A,B,Cと等しくしているが、径A,B,Cより大きくしてもよいし、小さくしてもよい。一方、本実施形態では、副弁体236の第2副弁208におけるシール部径Eが、主弁体230の主弁7におけるシール部径Aよりも小さくされ、制御圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が弁駆動体229に対して副弁の開弁方向に作用する。このような受圧構造とスプリング244による付勢構造とが、差圧(Pc−Ps)が設定差圧ΔPset以上となったときに副弁を開弁させる「差圧開弁機構」を実現している。
【0089】
次に、制御弁201の動作について説明する。
図13は、制御弁の動作を表す図である。既に説明した
図12は、最小容量運転時における制御弁の状態を示している。
図13は、最大容量運転時(空調装置の起動時等)にブリード機能を動作させたときの状態を示している。以下では
図11に基づき、適宜
図12,
図13を参照しつつ説明する。
【0090】
ソレノイド203が非通電のときには、コア246とプランジャ50との間に吸引力が作用しない。このため、主弁7が全開状態となり、
図12に示すように、ポート16に導入された吐出圧力Pdの冷媒が、全開状態の主弁7を通過し、ポート14から制御室へと流れることになる。このため、制御圧力Pcが上昇し、圧縮機は最小容量運転を行う。このとき、副弁8,208は閉弁状態にあるものの、第1副弁8がスプール弁であるため、制御室から吸入室へ所定流量の冷媒のリリーフがなされる。その結果、圧縮機に必要な範囲で冷媒の内部循環を確保することができる。
【0091】
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド203に制御電流(起動電流)が供給されると、コア246がプランジャ50を吸引する。このため、作動ロッド238が押し上げられる。このとき、スプリング244の付勢力により弁駆動体229が押し上げられ、
図13に示すように、主弁体230が主弁座22に着座して主弁7を閉じる。一方、作動ロッド238が弁駆動体229に対して相対変位しつつさらに押し上げられ、作動ロッド238が副弁体236を押し上げる。その結果、副弁体236が副弁座234から離間して第2副弁208を開く。また、第1副弁8も開弁する。それにより、制御室から吸入室へ所定流量の冷媒のリリーフがなされて制御圧力Pcが低下し、圧縮機は最大容量運転を行う。つまり、ブリード機能が発揮され、圧縮機が速やかに起動する。
【0092】
こうして吸入圧力Psが十分に低くなると、パワーエレメント6が伸長して第2副弁208を閉じる。このとき、ソレノイド203に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、弁駆動体229とパワーエレメント6とが一体となって作動し、主弁7が所定の開度に設定される。その結果、吐出圧力Pdの冷媒が開度に応じた流量に制御されて制御室に導入され、圧縮機は、制御電流に対応した容量の運転に移行するようになる。
【0093】
ソレノイド203の電磁コイル54に供給される制御電流が一定の場合、パワーエレメント6が吸入圧力Psを感知して主弁7の開度を制御する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに近づくようになる。
【0094】
図14は、主弁体および副弁体の構造および動作を表す部分拡大断面図である。
図14(A)〜(E)は、主弁が全開状態から全閉状態となるまでの動作過程を示す。各図の下段は主弁の状態を示し、上段は対応する副弁の状態を示す。
図14(A)の上段は
図12におけるa部拡大図であり、下段はb部拡大図である。
図14(E)の上段は
図13におけるa部拡大図であり、下段はb部拡大図である。
図15は、主弁および副弁の開弁特性を示す図である。
図15(A)は各弁体のストロークと弁開度との関係を示し、
図15(B)はソレノイドへの供給電流値と弁開度との関係を示す。図中の実線が主弁7を示し、一点鎖線が副弁(第1副弁8と第2副弁208とを合わせたもの)を示す。
【0095】
図14に示すように、副弁体236は、着脱部を有していない。スプール部212は、副弁体236の軸線と平行な円筒部220と、下方に向けて外径が小さくなるテーパ部222とを有する。すなわち、副弁体236は、副弁孔32に対して開閉動作をするものの、第1副弁8を全閉状態にはしない。一方、主弁孔20は、スプール部を有しておらず、その上端部が着脱部250となっている。
【0096】
このような構成により、
図14に示した各弁の動作は、
図15に示す制御特性として表れる。すなわち、ソレノイド203への供給電流値がゼロから下限電流値I1までは、ストロークがゼロであり、主弁7が全開状態となる。供給電流値がI1を超えると、主弁7が閉弁作動を開始し、供給電流値の増大に伴いストロークが大きくなるにつれて、主弁7の開度は比例的に小さくなる。
【0097】
一方、副弁の特性については、ソレノイド203への供給電流値がゼロからI1(下限電流値)までストロークがゼロであるが、円筒部220と副弁孔32との間のクリアランスを介して冷媒が流れるため、そのクリアランスを第1のオリフィスとして冷媒の流れが許容される。供給電流値がI1を超えると、第1副弁8が開弁作動を開始するが、ストロークがS1となるまでは、円筒部220と副弁孔32との間のクリアランスが一定であるため、第1副弁8の開度は変化しない。第2副弁208は閉じたままである。供給電流値がI2を超えると、ストロークがS1からS2となるまで第1副弁8の開度が緩やかに増大する。供給電流値がI3からI4の間は、主弁7が閉じることによりスプリング244の付勢力が増大してソレノイド力とバランスするため、副弁の開度は一定のまま保たれる。この区間は容量制御範囲ではないため、実質的に不感帯であっても制御への影響はない。供給電流値がI4を超え、ストロークがS2を超えると、スプール部212が副弁孔32から完全に抜けるとともに第2副弁208が開弁を開始する。その結果、副弁の弁開度増大率が大きくなる。供給電流値が上限電流値に到るまで副弁の開度は拡大される。それによりブリード効果が発揮される。この制御特性においても第1制御領域R1と第2制御領域R2とが含まれ、第1制御領域R1の弁開度増大率が第2制御領域R2の弁開度増大率よりも小さくなる。
【0098】
以上に説明したように、本実施形態では、副弁体236にスプール部を設けることにより、第1副弁8と第2副弁208とを段階的に開弁させることができる。その結果、
図15(B)に示したように、ソレノイド203への供給電流に対する副弁の開弁効率を段階的に切り替えることができる。このため、供給電流が比較的小さい主弁7の制御領域において第1副弁8の開度を漸増させ、主弁7の制御領域外で第1副弁8および第2副弁208の開度を大きくすることができる。
【0099】
[第3実施形態]
図16は、第3実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。以下では第2実施形態との相異点を中心に説明する。
【0100】
制御弁301は、弁本体302とソレノイド303とを一体に組み付けて構成される。弁本体302は、ボディ305およびパワーエレメント6等を備えている。本実施形態では、副弁体336がボディ305に摺動可能に支持されている。すなわち、副弁孔32の下部がガイド孔326として機能する。
【0101】
一方、ソレノイド303のコア346には、第2実施形態のような軸支部材260が設けられていない。このため、作動ロッド238は、副弁体336の位置とプランジャ50の位置(
図11参照)とで二点支持、つまり上部と下部で二点支持されるようなり、第2実施形態よりも軸線方向に安定に駆動される。
【0102】
また、弁駆動体329の上端部と副弁体336の下端部とが互いのテーパ面で着脱するように構成されている。それにより、弁駆動体329は、上端部が調心される一方、下半部がガイド孔26に摺動可能に支持されることで、軸線方向に安定に駆動される。
【0103】
図17は、
図16のG部拡大図である。
図18は、
図17に示す副弁体336およびその周辺を表す矢視断面図である。
図18(A)はA−A断面を示し、
図18(B)はB−B断面を示し、
図18(C)はC−C矢視断面を示す。なお、
図16および
図17には説明の便宜上、
図18(A)のD−D断面が示されている。
【0104】
図17に示すように、主弁孔20の開口端部が二段テーパ形状を有し、上部テーパ322により主弁座22が形成されている。主弁孔20の軸線に対する角度(テーパ角)について、下部テーパ320のテーパ角が上部テーパ322のそれよりも小さくされている。それにより、主弁体330の主弁座22からのリフト量に対して、主弁7が緩やかに開弁できるようにしている。
【0105】
弁駆動体329において弁室24に位置する部分の外周面に、ポート16から侵入した異物を受け止めるための段差部333(所定深さの凹部)が周設されている。これにより、ポート16を介して導入された冷媒に異物が含まれていたとしても、その異物を弁駆動体329の段差部333によって一旦受け止めた後に主弁孔20に導くことが可能になる。それにより、弁駆動体329の壁面に沿って流れる異物が主弁座22に直接衝突し難くなり、主弁座22におけるエロージョンの発生を防止又は抑制できる。
【0106】
副弁体336は、ガイド孔326に摺動可能に支持される本体310を有する。本体310の外径は、スプール部212の外径よりも大きい。本体310とスプール部212との間に小径の縮径部312が形成されている。
【0107】
図18(A)に示すように、連通路232は、作動ロッド238の周囲に90度おきに設けられている。
図18(B)および(C)に示すように、本体310の周囲4か所には、いわゆるDカットによる軸線に平行な切欠き314が施されている。切欠き314は、縮径部312に差し掛かるように設けられており、それにより、副弁孔32と副弁室224とを常に連通させる連通路316が形成されている。
【0108】
図17に戻り、副弁体336の下端部は、下方に向けて外径を小さくするテーパ形状とされている。本実施形態では、このテーパ面が、所定の曲率を有する球状面(曲面)となっており、弁駆動体329のテーパ状の副弁座334に対して線接触状態にて着座する。それにより、第2副弁208(第3弁)の閉弁時においては、弁駆動体329と副弁体336とが一体となって安定に駆動される。副弁体336と弁駆動体329とにより、ソレノイド303への供給電流値の大きさに応じて、主弁7が閉じた状態で連通路232を開放する「開閉機構」が構成される。
【0109】
図19は、主弁および副弁(第1副弁および第2副弁)の動作を表す部分拡大断面図である。
図19(A)〜(E)は、主弁が全開状態から全閉状態となり、副弁が開弁されるまでの動作過程を示す。各図の下段は主弁の状態を示し、上段は対応する第1副弁の状態を示し、中段は対応する第2副弁の状態を示す。
図19(A)の上段は
図17におけるa部拡大図であり、中段はc部拡大図であり、下段はb部拡大図である。
図20は、主弁および副弁の開弁特性を示す図である。
図20(A)は各弁体のストロークと弁開度との関係を示し、
図20(B)はソレノイドへの供給電流値と弁開度との関係を示す。図中の実線が主弁7を示し、一点鎖線が副弁(第1副弁8と第2副弁208とを合わせたもの)を示す。
【0110】
上述した構成により、
図19に示した各弁の動作は、
図20に示す制御特性として表れる。この制御特性は、第2実施形態のそれと概ね同様の傾向を有するが、下部テーパ320を設けたことにより、主弁7の開度が相対的に小さくなっている。本実施形態においても、ソレノイド303への供給電流に対する副弁の開弁効率を段階的に切り替えることができる。このため、供給電流が比較的小さい主弁7の制御領域において第1副弁8の開度を漸増させ、主弁7の制御領域外で第1副弁8および第2副弁208の開度を大きくすることができる。
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0112】
上記実施形態では述べなかったが、主弁のスプール部によるオリフィス機能発揮時の開度(開口面積)を、副弁のスプール部によるオリフィス機能発揮時の開度の70%以下、より好ましくは50%以下とするのがよい。
【0113】
上記実施形態では、吐出室から制御室へ流れる冷媒の流量を制御するいわゆる入れ制御をメインとした構成を示したが、制御室から吸入室へ流れる冷媒の流量を制御するいわゆる抜き制御をメインとした構成としてもよい。あるいは、入れ制御および抜き制御の双方を適切に制御する構成としてもよい。
【0114】
上記実施形態では、制御弁として、吸入圧力Psを直接感知して動作するいわゆるPs感知弁を例示した。変形例においては、被感知圧力として制御圧力Pcを感知して動作するいわゆるPc感知弁としてもよい。
【0115】
上記実施形態では、スプリング42,44,242,244等に関し、付勢部材(弾性体)としてスプリングを例示したが、ゴムや樹脂等の弾性材料を採用してもよいことは言うまでもない。
【0116】
上記実施形態では述べなかったが、圧縮機の起動性を改善するという課題を解決するために、以下のような制御弁を構成してもよい。すなわち、
吸入室、吐出室および制御室を有し、前記制御室の圧力を調整することにより吐出容量が可変となる可変容量圧縮機に適用される制御弁であって、
前記吐出室と前記制御室とを連通させる第1通路と、前記制御室と前記吸入室とを連通させる第2通路と、前記第1通路に設けられた第1弁孔と、前記第2通路に設けられた第2弁孔とを有するボディと、
前記第1弁孔に接離して前記第1弁の開度を調整する第1弁体と、
前記第2弁孔に接離して前記第2弁の開度を調整する第2弁体と、
供給電流値に応じた各弁体の開閉方向の駆動力を発生するソレノイドと、
前記ソレノイドの駆動力を各弁体に伝達するための作動ロッドと、
前記吸入室の圧力又は前記制御室の圧力を感知し、その感知した圧力の大きさに応じて前記ソレノイドの駆動力への対抗力を発生する感圧部と、
前記第2通路とは別に前記制御室と前記吸入室とを連通可能な連通路を、前記感圧部が感知した圧力の大きさに応じて開閉する開閉機構と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【0117】
前記開閉機構は、前記連通路が形成された可動体と前記感圧部の感圧体とを作動連結又は連結解除することにより前記連通路を開閉するものでもよい。前記可動体は、前記第2弁体であってもよいし、前記作動ロッドであってもよい。
前記第2弁体と
【0118】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。