【文献】
BOWLER Neill E et al.,STEPS: A probabilistic precipitation forecasting scheme which merges an extrapolation nowcast with downscaled NWP,Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society,2006年10月,Vol.132、No.620 ,Page.2127-2155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の降水量予測方法は、積乱雲よりも空間スケールが大きく、時間スケールの長い現象を主な対象としているため、急激に発達する積乱雲の時空間変動をとらえることができなかった。また、特許文献1の降水量予測方法は、降水量を予測するものであって、降水発生確率を提供することができなかった。
【0005】
本発明は、従来技術と比較して、急激に発達する積乱雲に対して降水量の予測に加え、強雨の発生確率を予測することが可能な降水予測装置及び降水予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる降水予測装置は、
少なくとも降水の観測データを取得する観測データ取得部と、
観測領域を格子状に分割し、前記観測データ取得部から取得した観測データを用いて、物理法則を用いて降水状況の時間変化をコンピュータで計算して未来の降水状況を格子毎に予測する数値予測部と、
観測領域を格子状に分割し、前記観測データ取得部から取得した観測データを用いて、過去の降水域の動きと現在の降水の分布を求め、短時間後の降水の分布を格子毎に予測するナウキャスト予測部と、
前記数値予測部から得られる数値予測データと前記ナウキャスト予測部から得られるナウキャスト予測データに対して、所定の領域を示す位置ズレ格子数を決定し、位置ズレ格子数毎の正解率を計算する正解率計算部と、
前記正解率計算部で求めた正解率を考慮して、最適な合成係数をリアルタイムで推定し、その合成係数を用いて最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成する合成部と、
を備える
ことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる降水予測装置では、
前記正解率計算部は、以下の式(1)を用いて、位置ズレ格子数毎の正解率を計算することを特徴とする。
【数1】
・・・(1)
ただし、
O(n)(i,j) は、格子(i,j)での観測値のFraction、
M(n)(i,j) は、格子(i,j)での予測値のFraction、
Fractionは、n×n領域に対して降水量が予め定めた所定の値以上となる格子の割合、
nは、Fractionを計算する正方形の1辺の格子数、
Nは、 評価領域の全格子数、
Σ
iΣ
jは、評価領域内の和
である。
【0008】
本発明にかかる降水予測装置は、
前記位置ズレ格子数を入力可能な位置ズレ格子数入力部を備える
ことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる降水予測装置では、
前記合成部は、以下の式(2)を用いて、前記最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成する
ことを特徴とする。
R(n,t)=C(n,t)×R1(n,t)+(1−C(n,t))×R2(n,t) ・・・(2)
ただし、
nはFractionを計算する正方形の1辺の格子数、
tは、時間、
R1(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後のナウキャスト予測データ、
R2(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後の数値予測データ、
C(n,t)は、1辺の格子数nでの数値予測データR2(n,t)に対するナウキャスト予測データR1(n,t)のt時間後の合成係数(nとtの関数、0≦C(n,t)≦1)、
である。
【0010】
本発明にかかる降水予測方法は、
少なくとも降水の観測データを取得するステップと、
観測領域を格子状に分割し、前記観測データを用いて、物理法則を用いて降水状況の時間変化をコンピュータで計算して未来の降水状況を示す数値予測データを格子毎に予測するステップと、
観測領域を格子状に分割し、前記観測データを用いて、過去の降水域の動きと現在の降水の分布を求め、短時間後の降水の分布を示すナウキャスト予測データを格子毎に予測するステップと、
前記数値予測データと前記ナウキャスト予測データに対して、所定の領域を示す位置ズレ格子数を決定し、位置ズレ格子数毎の正解率を計算するステップと、
前記正解率を考慮して、最適な合成係数をリアルタイムで推定し、その合成係数を用いて最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成するステップと、
を有する
ことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる降水予測方法では、
位置ズレ格子数毎の正解率を計算するステップは、以下の式(1)を用いる
ことを特徴とする。
【数2】
・・・(1)
ただし、
O(n)(i,j) は、格子(i,j)での観測値のFraction、
M(n)(i,j) は、格子(i,j)での予測値のFraction、
Fractionは、n×n領域に対して降水量が予め定めた所定の値以上となる格子の割合、
nは、Fractionを計算する正方形の1辺の格子数、
Nは、 評価領域の全格子数、
Σ
iΣ
jは、評価領域内の和
である。
【0012】
本発明にかかる降水予測方法は、
前記位置ズレ格子数を入力するステップを有する
ことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる降水予測方法では、
前記最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成するステップは、以下の式(2)を用いる
ことを特徴とする。
R(n,t)=C(n,t)×R1(n,t)+(1−C(n,t))×R2(n,t) ・・・(2)
ただし、
nはFractionを計算する正方形の1辺の格子数、
tは、時間、
R1(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後のナウキャスト予測データ、
R2(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後の数値予測データ、
C(n,t)は、1辺の格子数nでの数値予測データR2(n,t)に対するナウキャスト予測データR1(n,t)のt時間後の合成係数(nとtの関数、0≦C(n,t)≦1)、
である。
【発明の効果】
【0014】
このような降水予測装置及び降水予測方法によれば、急激に発達する積乱雲に対して降水量の予測に加え、強雨の発生確率を予測することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる実施の形態を図により説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の降水予測装置のシステムブロック図を示す。
【0018】
降水予測装置10は、観測データ取得部11と、数値予測部12と、ナウキャスト予測部13と、正解率計算部14と、合成部16と、を備える。
【0019】
観測データ取得部11は、地上観測、気象衛星及びレーダー等の観測データを、世界各国の気象機関又は宇宙機関等から取得する。観測は、様々な場所や時刻で行われているので、観測データはそれぞれの取得先から所定の時間毎に取得される。観測データには、人為的なミスや機器の故障等によって精度が低く、利用できないものが存在するので、これらのデータは除外する。取得された観測データは、数値予測部12及びナウキャスト予測部13に出力される。
【0020】
数値予測部12は、観測領域を格子状に分割し、観測データ取得部11から取得した観測データを用いて、格子毎に数値予報を行う部分である。数値予報は、物理法則を用いて降水の時間変化をコンピュータで計算して未来の降水を予測する。
【0021】
ナウキャスト予測部13は、観測領域を格子状に分割し、観測データ取得部11から取得した観測データを用いて、過去の降水域の動きと現在の降水の分布を用いて、短時間後の降水の分布を格子毎に予測する部分である。
【0022】
正解率計算部14は、数値予測部12から得られる数値予測データとナウキャスト予測部13から得られるナウキャスト予測データに対して、位置ズレを許容しながら、位置ズレ格子数(位置ズレを許容する空間スケール)毎の正解率を以下の式(1)を用いて計算する。
【数3】
・・・(1)
ただし、
O(n)(i,j) は、格子(i,j)での観測値のFraction、
M(n)(i,j) は、格子(i,j)での予測値のFraction、
Fractionは、n×n領域に対して降水量が予め定めた所定の値以上となる格子の割合、
nは、Fractionを計算する正方形の1辺の格子数、
Nは、 評価領域の全格子数、
Σ
iΣ
jは、評価領域内の和
である。
【0023】
位置ズレ格子数入力部15は、必要な位置ズレ格子数を適宜入力する。位置ズレ格子数nを大きくすると、降水発生確率の予測精度は上がる。しかしながら、広い範囲内の何れかの場所で雨が降るという予報は的中するが、実用的ではない。逆に、位置ズレ格子数nを小さくすると、降水発生確率の予測精度は下がる。すなわち、この地点で数十分後に雨が降るというピンポイントの予報は、困難である。したがって、位置ズレ格子数nは、利用者の要望に応じて、適宜決定することが好ましい。
【0024】
合成部16は、正解率計算部14で求めた正解率を考慮して、最適な合成係数をリアルタイムで推定し、その合成係数を用いて数値予測データとナウキャスト予測データを、以下の式(2)を用いて合成する。
R(n,t)=C(n,t)×R1(n,t)+(1−C(n,t))×R2(n,t) (2)
ただし、
nはFractionを計算する正方形の1辺の格子数、
tは、時間、
R1(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後のナウキャスト予測データ、
R2(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後の数値予測データ、
C(n,t)は、1辺の格子数nでの数値予測データR2(n,t)に対するナウキャスト予測データR1(n,t)のt時間後の合成係数(nとtの関数、0≦C(n,t)≦1)、
である。
【0025】
合成係数は、数値予測データとナウキャスト予測データの正解率を考慮して決定される。予測データの正解率は、過去1時間の真値と比較することで、リアルタイムに算出される。
【0026】
図2は、予測時間に対する数値予測による予測正解率とナウキャスト予測による予測正解率の比を示す。
【0027】
図2に示すように、数値予測は、予測時間が短い場合、正解率が低く、予測時間が長くなると正解率が高くなる。ナウキャスト予測は、予測時間が短い場合、正解率が高く、予測時間が長くなると正解率が低くなる。したがって、予測時間が短い場合にはナウキャスト予測を重視し、予測時間が長い場合には数値予測を重視する合成係数を求めることが好ましい。
【0028】
また、局地的大雨を予測する場合には、格子を1km以下とした高い分解能での予測が求められる。高い格子分解能で予測すると、格子毎の予測データの精度は、一般に低くなる。すなわち、高い格子分解能での予測は、誤差が大きい。
【0029】
図3は、格子毎の観測データと予測データの比較を示す。
図3(a)は観測データ、
図3(b)は予測データを示す。斜線部分の格子は予め定めた所定量以上の降水量の位置を示す。
【0030】
図3に示した例において、位置ズレを許容しないn=1の格子スケールを選択すると、予測データは観測データと異なる結果と判定される。しかしながら、位置ズレを5グリッド許容するn=5の格子スケールを選択すると、予測データと観測データがどちらも所定量以上の降水量の位置が6つなので、予測データは観測データと同一の結果と判定される。
【0031】
本実施形態では、正解率計算部14において、ある程度の位置ズレを許容し予測精度を維持することで、高い格子分解能においても予測の精度を高める以下の式(1)を用いる。そして、合成部16で、正解率計算部14の結果を用いて、数値予測データとナウキャスト予測データを合成する。
【数4】
・・・(1)
ただし、
O(n)(i,j) は、格子(i,j)での観測値のFraction、
M(n)(i,j) は、格子(i,j)での予測値のFraction、
Fractionは、n×n領域に対して降水量が予め定めた所定の値以上となる格子の割合、
nは、Fractionを計算する正方形の1辺の格子数、
Nは、 評価領域の全格子数、
Σ
iΣ
jは、評価領域内の和
である。
【0032】
式(1)は、評価する座標(i,j)における位置ズレ格子数nを許容した時のFractionの正解率を示す。Fractionには、OとMがある。FractionOは、実際に観測された雨に対して位置ズレ許容した時の降水発生確率である。FractionMは、予測された雨に対して位置ズレ許容した時の降水発生確率である。
【0033】
式(1)は、過去に得られた数値予測データとナウキャスト予測データに対して、各位置ズレ格子数について求められ、予測の正解率を計算することができる。また、式(1)は、予測のリードタイム毎に計算される。そして、数値予測とナウキャスト予測のリードタイム毎の正解率の比から合成係数を決定する。したがって、合成係数は、各位置ズレ格子数と各リードタイムによって決定される。
【0034】
つまり、正解率計算部14は、数値予測データとナウキャスト予測データを位置ズレ格子数nだけ許容した降水量分布及び降水発生確率分布をリードタイム毎に計算する。そして、合成部16は、リードタイム及び位置ズレ格子数n毎の予測に対して、合成係数をもとに最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成し、降水量分布及び降水発生確率分布を求める。
【0035】
このように、本実施形態の降水予測装置10は、降水量予測分布に加えて、降水発生確率分布を求めることが可能となる。
【0036】
次に、位置ズレ格子数nと降水発生確率の関係について説明する。
【0037】
位置ズレ格子数nを大きくすると、降水発生確率の予測精度は上がる。しかしながら、広い範囲内の何れかの場所で雨が降るという予報は的中するが、実用的ではない。逆に、位置ズレ格子数nを小さくすると、降水発生確率の予測精度は下がる。すなわち、この地点で数十分後に雨が降るというピンポイントの予報は、困難である。したがって、位置ズレ格子数nは、利用者の要望に応じて、決定することが好ましい。
【0038】
図4は、予測時間に対する正解率の関係を示す。
図4(a)は1時間に50mmの降水を予測した場合、
図4(b)は1時間に20mmの降水を予測した場合を示す。
図4に示すグラフ内のLは、位置ズレ許容スケール(km)を示す。
【0039】
例えば、予測の正解率が50%は必要であると決めた場合、
図4に示した許容ラインよりも上方にあるデータを用いることが好ましい。
【0040】
次に、本実施形態の降水予測装置10の制御フローについて説明する。
【0041】
図5は、本実施形態の降水予測方法のフローチャートを示す。
【0042】
まず、ステップ1で、過去の実際の降水データの読み込む(ST1)。続いて、過去の数値予測データ及びナウキャスト予測データの読み込む(ST2)。
【0043】
次に、ステップ3で、位置ズレ格子数nを決定する(ST3)。位置ズレ格子数nは、利用者が適宜決定することが可能である。
【0044】
次に、ステップ4で、式(1)に示した正解率を計算する(ST4)。続いて、ステップ5で、数値予測データとナウキャスト予測データの合成係数を計算する(ST5)。正解率及び合成係数の計算時には、ステップ1〜ステップ3において求めた降水データ、予測データ及び位置ズレ格子数n等を用いる。
【0045】
次に、ステップ6で、最新の数値予測データとナウキャスト予測データを読み込む(ST6)。続いて、ステップ7で、ステップ6において読み込んだ最新の数値予測データ及びナウキャスト予測データにおける位置ズレ格子数毎の降水量予測及び降水確率予測を求める(ST7)。
【0046】
次に、ステップ8で、数値予測データによる予測とナウキャスト予測データによる予測を合成する(ST8)。合成の際は、ステップ5で計算した合成係数を用いて、式(2)から求める。また、
図4に示した許容ライン等を考慮することが好ましい。
【0047】
最後に、ステップ9で、位置ズレ格子数毎の降水量及び降水確率を予測した合成予測ファイルを出力する(ST9)。
【0048】
図6は、本実施形態の降水予測装置及び降水予測方法で得られる降水予測データを示す。
図6(a)は雨量予測データを示し、
図6(b)は降水発生確率データを示す。
【0049】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、本実施形態の降水予測装置及び降水予測方法では、降水量予測データに加えて、降水発生確率データを求めることが可能となる。また、降水発生確率データにおいては、位置ズレ格子数nを選択することで、所定の領域に所定量以上の雨が降る確率を適宜求めることが可能となる。例えば、
図6(b)に示す例では、周囲5km四方に50mm以上の雨が降る確率を求めている。
【0050】
以上、本実施形態の降水予測装置10は、少なくとも降水の観測データを取得する観測データ取得部11と、観測領域を格子状に分割し、観測データ取得部から取得した観測データを用いて、物理法則を用いて降水状況の時間変化をコンピュータで計算して未来の降水状況を格子毎に予測する数値予測部12と、観測領域を格子状に分割し、観測データ取得部11から取得した観測データを用いて、過去の降水域の動きと現在の降水の分布を求め、短時間後の降水の分布を格子毎に予測するナウキャスト予測部13と、数値予測部12から得られる数値予測データとナウキャスト予測部13から得られるナウキャスト予測データに対して、所定の領域を示す位置ズレ格子数nを決定し、位置ズレ格子数n毎の正解率を計算する正解率計算部14と、正解率計算部14で求めた正解率を考慮して、最適な合成係数をリアルタイムで推定し、その合成係数を用いて最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成する合成部16と、を備える。したがって、急激に発達する積乱雲に対して降水量の予測に加え、強雨の発生確率を予測することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の降水予測装置10では、正解率計算部14は、以下の式(1)を用いて、位置ズレ格子数n毎の正解率を計算する。したがって、高い分解能においても、予測精度を高めることが可能となる。
【数5】
・・・(1)
ただし、
O(n)(i,j) は、格子(i,j)での観測値のFraction、
M(n)(i,j) は、格子(i,j)での予測値のFraction、
Fractionは、n×n領域に対して降水量が予め定めた所定の値以上となる格子の割合、
nは、Fractionを計算する正方形の1辺の格子数、
Nは、 評価領域の全格子数、
Σ
iΣ
jは、評価領域内の和
である。
【0052】
また、本実施形態の降水予測装置10は、位置ズレ格子数nを入力可能な位置ズレ格子数入力部15を備える。したがって、利用者の要望に沿った予測データを求めることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の降水予測装置10では、合成部16は、以下の式(2)を用いて、最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成する。したがって、より高精度の合成データを求めることが可能となる。
R(n,t)=C(n,t)×R1(n,t)+(1−C(n,t))×R2(n,t) (2)
ただし、
nはFractionを計算する正方形の1辺の格子数、
tは、時間、
R1(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後のナウキャスト予測データ、
R2(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後の数値予測データ、
C(n,t)は、1辺の格子数nでの数値予測データR2(n,t)に対するナウキャスト予測データR1(n,t)のt時間後の合成係数(nとtの関数、0≦C(n,t)≦1)、
である。
【0054】
さらに、本実施形態の降水予測方法は、少なくとも降水の観測データを取得するステップと、観測領域を格子状に分割し、観測データを用いて、物理法則を用いて降水状況の時間変化をコンピュータで計算して未来の降水状況を示す数値予測データを格子毎に予測するステップと、観測領域を格子状に分割し、観測データを用いて、過去の降水域の動きと現在の降水の分布を求め、短時間後の降水の分布を示すナウキャスト予測データを格子毎に予測するステップと、数値予測データとナウキャスト予測データに対して、所定の領域を示す位置ズレ格子数を決定し、位置ズレ格子数n毎の正解率を計算するステップと、正解率を考慮して、最適な合成係数をリアルタイムで推定し、その合成係数を用いて最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成するステップと、を有する。したがって、急激に発達する積乱雲に対して降水量の予測に加え、強雨の発生確率を予測することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の降水予測方法は、位置ズレ格子数n毎の正解率を計算するステップは、以下の式(1)を用いる。したがって、高い分解能においても、予測精度を高めることが可能となる。
【数6】
・・・(1)
ただし、
O(n)(i,j) は、格子(i,j)での観測値のFraction、
M(n)(i,j) は、格子(i,j)での予測値のFraction、
Fractionは、n×n領域に対して降水量が予め定めた所定の値以上となる格子の割合、
nは、Fractionを計算する正方形の1辺の格子数、
Nは、 評価領域の全格子数、
Σ
iΣ
jは、評価領域内の和
である。
【0056】
また、本実施形態の降水予測方法は、位置ズレ格子数nを入力するステップを有する。したがって、利用者の要望に沿った予測データを求めることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態の降水予測方法では、前記最新の数値予測データとナウキャスト予測データを合成するステップは、以下の式(2)を用いる。したがって、より高精度の合成データを求めることが可能となる。
R(n,t)=C(n,t)×R1(n,t)+(1−C(n,t))×R2(n,t) (2)
ただし、
nはFractionを計算する正方形の1辺の格子数、
tは、時間、
R1(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後のナウキャスト予測データ、
R2(n,t)は、1辺の格子数nでのt時間後の数値予測データ、
C(n,t)は、1辺の格子数nでの数値予測データR2(n,t)に対するナウキャスト予測データR1(n,t)のt時間後の合成係数(nとtの関数、0≦C(n,t)≦1)、
である。
【0058】
なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、当業者であれば、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えてもよい。