【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被膜体は、基材と、前記基材の表面上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層とを有する被膜体であって、前記フッ素樹脂被膜層は、フッ素樹脂と高純度グラフェンを含有することを特徴とする被膜体に関する。
【0011】
係る被膜体によれば、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を有しながら、溶出する金属が少ない被膜体を提供可能である。
【0012】
被膜体に使用される前記高純度グラフェンは、厚み方向に1または2nm、または5nm以下のものであり、10nm〜20nmであっても良い。またこれらの粒子の平均粒径は1μm〜100μmであってもよい。
【0013】
被膜体に使用される前記高純度グラフェンは、比較的、酸素含有量が少なく、5質量%未満の酸素含有量を有するものが好ましく、1質量%未満のものであっても良い。
【0014】
被膜体に使用される前記高純度グラフェンは、Brunauer−Emmett−Teller法に基づく比表面積の測定により(以下BET比表面積)、少なくとも30〜60平方メートル/グラム、または80平方メートル/グラムあっても良く、100または120平方メートル/グラム〜150平方メートル/グラムでも構わない。例えばBET比表面積は300平方メートル/グラム〜750平方メートル/グラムあっても良い。
【0015】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下のものである。5.0質量%以下のものが好ましく、3.0質量%以下のものであればなお好ましい。
【0016】
アモルファスカーボンは、結晶構造を有しない、不完全なグラファイト成分であり、炭素同士がランダムなつながりをしている形状であるが、600℃以上で燃焼し更に高温で結晶構造を作ろうとするグラファイトの前駆体となる成分であり、600℃以下となる300℃〜530℃付近では、この不完全なグラファイト成分であるアモルファスカーボンが燃焼し、揮発する。
【0017】
結晶構造を持つグラファイトは理論的には高温でしか燃焼しないが、各粒子のエッジ部分は完全な結晶構造を有していないことが多く、また特にその粒子径が小さい場合、このエッジ部分から燃焼することがあり、この部分にはカーボン以外の末端基も多く存在するため、このアモルファスカーボン成分が多いと、末端基も多く含むことになるため、炭素以外の含有量も増えることになる。
【0018】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、適切な高純度グラフェンを使用することで、帯電防止性を付与しつつ金属の溶出量の低下を達成できる。
【0019】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングし、厚みを15μmとし、乾燥させた後4−Probe法にて測定した表面抵抗率が1.0×10
2Ω/sq〜4.0×10
2Ω/sqであることが好ましい。また表面抵抗率が1.0×10
2Ω/sq以下でも構わない。
【0020】
上記条件を満たす高純度グラフェンを用いることで、被膜体の帯電防止性を向上させ、静電気による破壊を、より抑制することが可能である。
【0021】
被膜体の体積抵抗値は10
8Ω未満であり、帯電防止性を有する。
【0022】
被膜体は、前記フッ素樹脂被膜層上に形成されたトップ層をさらに設けてもよい。
【0023】
適切なトップ層を形成することで、金属の溶出量をさらに低下させることができる。またトップ層は、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を抑制することもできる。
【0024】
前記トップ層は、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を含有することが好ましい。限定されるものではないが、前記トップ層は、10μm〜
300μmの厚みを有することがさらに好ましい。
【0025】
PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を含有する適切なトップ層を有することで、さらなる耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などの向上、および金属の溶出量の低下を達成できる。
【0026】
適切ではないトップ層の場合は、金属の溶出量の低下を防ぐことができず、汚染の要因ともなりうるため、慎重に選択すべきである。また、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などの性能に影響を及ぼす。またトップ層は、厚みが十分でない場合、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を十分に抑制できない。厚みが過剰な場合、トップ層に由来する金属が溶出する虞が増す。
【0027】
前記フッ素樹脂被膜層は、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を80質量%〜99質量%、高純度グラフェンを20質量%〜1質量%含有することが好ましい。
【0028】
フッ素樹脂被膜層全体に対して、高純度グラフェンの配合量が不足する場合、所望の
帯電防止性や耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを得ることができない。また配合量が過剰な場合、上手く被膜化しない。
【0029】
前記フッ素樹脂被膜層は、200μm〜2000μmの厚みを有することが好ましい。
【0030】
フッ素樹脂被膜層の厚みが十分でない場合、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を得ることができない。厚みが過剰な場合、被膜中での発泡や、被膜表面の亀裂、凹凸を生じるなどにより平滑性を失う虞がある。
【0031】
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタ
ン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であることが好ましい。
【0032】
これらの金属は、粗面化および加工がしやすく、焼成による変性などもしにくいため好適に使用することが可能である。
【0033】
前記プライマー層は、PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%と、クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%とを含有するプライマーで形成することが好ましい。
【0034】
プライマーが、クロム酸およびリン酸を15質量%以上含むことで、基材との密着性を向上させることが可能となる。クロム酸およびリン酸を35質量%より多く含むとプライマー層が上手く被膜化せず好ましくない。
【0035】
被膜体は、3.6質量%塩酸200mlに24時間浸漬したときの金属の溶出量が0に極めて近いことが望ましい。また限定されないが、被膜体の表面積1m
2あたり3.0μg〜15μgであれば略好ましく適用できることが判明している。
【0036】
その理由は、金属の溶出量が、3.0μg〜15μgと極めて少ない被膜体であれば、例えば、フィラーの金属成分が電子部品・精密機器の製造工程で使用される処理液に金属イオンとして溶出し、電子部品・精密機器へ不純物として残留することで、電子部品・精密機器の清浄度を低下させるという問題が起きにくくなるためである。この問題を解決することにより、電子機器や精密機器に使用されている、精密電子機器部品の製造時において、金属汚染を拡散させることなく電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンクなど)に好適に使用することができる。
【0037】
前記基材は、電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンク)、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、攪拌翼を含む撹拌槽、貯槽、または蒸留槽などを構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられるもので
あってもよい。
【0038】
本発明の被膜体の製造方法であって、基材の表面から油脂を除去する脱脂工程と、脱脂後の基材表面を粗面化するブラスト工程と、ブラスト後の基材表面にプライマーを塗布し、乾燥または焼成してプライマー層の形成を行うプライマー層形成工程と、前記プライマー層上に高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜層の形成を1以上の回数行うフッ素樹脂被膜層形成工程と、を有する被膜体の製造方法に関する。
【0039】
係る被膜体の製造方法によれば、脱脂工程、ブラスト工程、プライマー層形成工程を有するため、基材の表面上に密着性の高い被膜体を形成することが可能である。また高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物によって、フッ素樹脂被膜層を形成するため、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を有しながら、溶出する金属が少ない被膜体を製造することが可能である。さらにフッ素樹脂被膜層形成工程は、1以上の回数行うため、フッ素樹脂被膜層を所望の厚さで形成することが可能である。
【0040】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下のものである。5.0質量%以下のものが好ましく、3.0質量%以下のものであればなお好ましい。
【0041】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、適切な高純度グラフェンを使用することで、帯電防止性を付与しつつ、金属の溶出量の低下を達成できる。
【0042】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングし、コーティング厚みを15μmとし、乾燥させた後4−Probe法にて測定した表面抵抗率が1.0×10
2Ω/sq〜4.0×10
2Ω/sqであることが好ましい。また表面抵抗率が1.0×10
2Ω/sq以下でも構わない。
【0043】
上記条件を満たす高純度グラフェンを用いることで、被膜体の帯電防止性を向上させ、静電気による破壊を、より抑制することが可能である。
【0044】
被膜体の体積抵抗値は10
8Ω未満であり、帯電防止性を有する。
【0045】
前記フッ素樹脂被膜層上にフッ素樹脂を塗布し、焼成してトップ層の形成を行うトップ層形成工程をさらに有することが好ましい。
【0046】
適切なトップ層形成工程を有することで、金属の溶出量をさらに低下させる被膜体の製造が可能となる。またトップ層形成工程を有することで、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を抑制する被膜体の製造が可能となる。
【0047】
前記トップ層形成工程は、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を塗布することが好ましい。前記トップ層形成工程は、10μm〜
300μmの厚みで前記トップ層を形成することが好ましい。
【0048】
PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を塗布して、適切なトップ層を形成することで、さらに耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などに優れ、かつ金属の溶出量が少ない被膜体を製造することが可能となる。またトップ層は、厚みが十分でない場合、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を十分に抑制できない。厚みが過剰な場合、トップ層に由来する金属が溶出する虞が増す。
【0049】
前記フッ素樹脂被膜層形成工程において、前記フッ素樹脂被膜層を、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を80質量%〜99質量%、高純度グラフェンを20質量%〜1質量%含有する塗料組成物によって形成することが好ましい。
【0050】
フッ素樹脂被膜層全体に対して、高純度グラフェンの配合量が不足する場合、所望の帯電防止性や耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを得ることができない。また配合量が過剰な場合、上手く被膜化しない。
【0051】
前記フッ素樹脂被膜層形成工程において、前記フッ素樹脂被膜層を、200μm〜2000μmの厚みで形成することが好ましい。
【0052】
フッ素樹脂被膜層の厚みが十分でない場合、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を得ることができない。厚みが過剰な場合、被膜中での発泡や、被膜表面の亀裂、凹凸を生じるなどにより平滑性を失う虞がある。
【0053】
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタ
ン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であることが好ましい。
【0054】
これらの金属は、ブラスト工程において粗面化がしやすく、焼成を行う際に変性などもしにくいため好適に使用することが可能である。
【0055】
前記プライマー層形成工程において、前記プライマー層を、PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%、クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%含有するプライマーによって形成することが好ましい。
【0056】
クロム酸およびリン酸を15質量%以上含むプライマーを使用することで、基材とプライマー層の密着性を向上させることが可能となる。クロム酸およびリン酸を35質量%より多く含むプライマーを使用すると、プライマー層が上手く被膜化せず好ましくない。
【0057】
前記基材は、電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンク)、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、攪拌翼を含む撹拌槽、貯槽、または蒸留槽などを構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられるものであってもよい。