特許第6709945号(P6709945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6709945高純度グラフェンを含有する被膜体および、その被膜体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6709945
(24)【登録日】2020年5月28日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】高純度グラフェンを含有する被膜体および、その被膜体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20200608BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200608BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20200608BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200608BHJP
   C09D 127/12 20060101ALN20200608BHJP
   C09D 7/61 20180101ALN20200608BHJP
   C09D 5/24 20060101ALN20200608BHJP
   C09D 5/00 20060101ALN20200608BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   B32B27/18 D
   B32B15/082 B
   B05D7/24 303B
   B05D7/24 302L
   !C09D127/12
   !C09D7/61
   !C09D5/24
   !C09D5/00 D
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-18323(P2019-18323)
(22)【出願日】2019年2月4日
【審査請求日】2019年4月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391065448
【氏名又は名称】日本フッソ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信一
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第108165171(CN,A)
【文献】 特開平07−329172(JP,A)
【文献】 特開2001−002982(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/141356(WO,A1)
【文献】 特開昭63−024562(JP,A)
【文献】 特開2015−210524(JP,A)
【文献】 特開2018−090323(JP,A)
【文献】 特開平03−021379(JP,A)
【文献】 特開昭59−172669(JP,A)
【文献】 特開平04−298778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09D
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層とを有する被膜体であって、
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であり、
前記フッ素樹脂被膜層は、フッ素樹脂と高純度グラフェンとを含有し、
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、
前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングしたものの表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqである、
ことを特徴とする被膜体。
【請求項2】
基材と、前記基材の表面上に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層とを有する被膜体であって、
前記プライマー層は、PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%と、
クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%とを含有し、
前記フッ素樹脂被膜層は、フッ素樹脂と高純度グラフェンとを含有し、
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、
前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングしたものの表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqである、
ことを特徴とする被膜体。
【請求項3】
基材と、前記基材の表面上に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層とを有する被膜体であって、
前記フッ素樹脂被膜層は、フッ素樹脂と高純度グラフェンとを含有し、
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、
前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングしたものの表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqであり、
前記被膜体は、前記フッ素樹脂被膜層上に形成されたトップ層とをさらに有し、
前記トップ層は、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEおよび、PVDFからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を含有し、
前記トップ層は、10μm〜300μmの厚みを有することを特徴とする被膜体。
【請求項4】
前記フッ素樹脂被膜層上に形成されたトップ層をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の被膜体。
【請求項5】
前記トップ層は、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEおよび、PVDFからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を含有し、
前記トップ層は、10μm〜300μmの厚みを有することを特徴とする請求項4に記載の被膜体。
【請求項6】
前記フッ素樹脂被膜層は、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEおよび、PVDFからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を80質量%〜99質量%、高純度グラフェンを20質量%〜1質量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項7】
前記フッ素樹脂被膜層は、200μm〜2000μmの厚みを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項8】
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項9】
前記プライマー層は、
PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%と、
クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%とを含有するプライマーで形成することを特徴とする請求項1、3乃至8のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項10】
3.6質量%塩酸200mlに24時間浸漬したときの金属の溶出量が、被膜体の表面積1mあたり3.0μg〜15μgであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項11】
前記基材は、電子部品・精密機器の製造装置、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、撹拌翼を含む撹拌槽、貯槽、蒸留槽を構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項12】
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が3.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の被膜体。
【請求項13】
基材の表面から油脂を除去する脱脂工程と、
脱脂後の基材表面を粗面化するブラスト工程と、
前記ブラスト工程後の基材表面にプライマーを塗布し、乾燥または焼成してプライマー層の形成を行うプライマー層形成工程と、
前記プライマー層上に高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜層の形成を1以上の回数行うフッ素樹脂被膜層形成工程とを含む被膜体の製造方法であって、
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であり、
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、
前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングしたものの表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqである、
被膜体の製造方法。
【請求項14】
基材の表面から油脂を除去する脱脂工程と、
脱脂後の基材表面を粗面化するブラスト工程と、
前記ブラスト工程後の基材表面にプライマーを塗布し、乾燥または焼成してプライマー層の形成を行うプライマー層形成工程と、
を含む被膜体の製造方法であって、
前記プライマー層形成工程において、前記プライマー層を、
PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%、
クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%含有するプライマーによって形成し、
前記プライマー層上に高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜層の形成を1以上の回数行うフッ素樹脂被膜層形成工程とをさらに含み、
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、
前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングしたものの表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqである、
被膜体の製造方法。
【請求項15】
基材の表面から油脂を除去する脱脂工程と、
脱脂後の基材表面を粗面化するブラスト工程と、
前記ブラスト工程後の基材表面にプライマーを塗布し、乾燥または焼成してプライマー層の形成を行うプライマー層形成工程と、
前記プライマー層上に高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜層の形成を1以上の回数行うフッ素樹脂被膜層形成工程とを含む被膜体の製造方法であって、
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、
前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングしたものの表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqであり、
前記フッ素樹脂被膜層上にフッ素樹脂を塗布し、焼成してトップ層の形成を行うトップ層形成工程をさらに含み、
前記トップ層形成工程は、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEおよび、PVDFからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を塗布し、
10μm〜300μmの厚みで前記トップ層を形成することを特徴とする、
被膜体の製造方法。
【請求項16】
前記フッ素樹脂被膜層上にフッ素樹脂を塗布し、焼成してトップ層の形成を行うトップ層形成工程をさらに含む、請求項13または14に記載の被膜体の製造方法。
【請求項17】
前記トップ層形成工程は、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEおよび、PVDFからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を塗布し、
10μm〜300μmの厚みで前記トップ層を形成することを特徴とする請求項16に記載の被膜体の製造方法。
【請求項18】
前記フッ素樹脂被膜層形成工程において、前記フッ素樹脂被膜層を、
PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFEおよび、PVDFからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を80質量%〜99質量%、
高純度グラフェンを20質量%〜1質量%含有する塗料組成物によって形成することを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の被膜体の製造方法。
【請求項19】
前記フッ素樹脂被膜層形成工程において、前記フッ素樹脂被膜層を、200μm〜2000μmの厚みで形成することを特徴とする請求項13乃至18のいずれか1項に記載の被膜体の製造方法。
【請求項20】
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であることを特徴とする請求項13乃至19のいずれか1項に記載の被膜体の製造方法。
【請求項21】
前記プライマー層形成工程において、前記プライマー層を、
PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%、
クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%含有するプライマーによって形成することを特徴とする請求項13、15乃至20のいずれか1項に記載の被膜体の製造方法。
【請求項22】
前記基材は、電子部品・精密機器の製造装置、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、撹拌翼を含む撹拌槽、貯槽、蒸留槽を構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられることを特徴とする請求項13乃至21のいずれか1項に記載の被膜体の製造方法。
【請求項23】
前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が3.0質量%以下であることを特徴とする請求項13乃至22のいずれか1項に記載の被膜体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高純度グラフェンを含有する被膜体および、その被膜体の製造方法に関する。その目的は、溶出金属が極めて少なく、帯電防止性を備えた、フッ素樹脂と高純度グラフェンを含有するフッ素樹脂被膜層を有する被膜体および、当該被膜体の製造方法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性等に優れており、金属等からなる基材のコーティング被膜として用いられている。
【0003】
半導体に代表されるような電子部品・精密機器を製造する工程には、材料の研磨、洗浄、加熱等の工程が含まれている。したがって、耐食性などに優れるフッ素樹脂の被膜体でコーティングされた電子部品・精密機器の製造装置も知られている(特許文献1)。
【0004】
フッ素樹脂被膜の耐食性などの向上を目的として、フィラー(充填材)を混合することも知られている。
【0005】
このフィラーとしては、金属が使用されることが多い。例えば、特許文献2には耐久性の向上を目的として、アルカリ金属をフィラーとして含有させることが開示されている。
【0006】
またフッ素樹脂の被膜体は一般的に、絶縁性物質であるために、流体となる液体や粉体が接触し摩擦が起こることで、静電気が発生し、被膜体が絶縁破壊を起こすなどの虞がある。また、発生した静電気が蓄積することにより、有機溶剤などに引火、爆発を起こす危険性もはらんでいる。この問題を解決すべく、フィラー(充填材)などを混合し、帯電防止性を付与することもある。
【0007】
【特許文献1】特開2013−071341号公報
【特許文献2】特開2000−297231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フッ素樹脂にフィラーを含有させることで、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性や帯電防止性などは向上する。一方でこのようなフッ素樹脂でコーティングした電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンクなど)では、フィラーの金属成分が電子部品・精密機器の製造工程で使用される処理液に金属イオンとして溶出し、電子部品・精密機器へ不純物として残留することで、電子部品・精密機器の清浄度を低下させるという問題が生じる。または化学反応槽(リアクター)、濾過槽、撹拌翼を含む撹拌槽、貯槽、蒸留槽などに、コーティングした場合は、槽(タンク)内の薬品に金属イオンとして溶出する問題が生じる。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを有しながら、溶出する金属が少ない被膜体および、当該被膜体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被膜体は、基材と、前記基材の表面上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層とを有する被膜体であって、前記フッ素樹脂被膜層は、フッ素樹脂と高純度グラフェンを含有することを特徴とする被膜体に関する。
【0011】
係る被膜体によれば、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を有しながら、溶出する金属が少ない被膜体を提供可能である。
【0012】
被膜体に使用される前記高純度グラフェンは、厚み方向に1または2nm、または5nm以下のものであり、10nm〜20nmであっても良い。またこれらの粒子の平均粒径は1μm〜100μmであってもよい。
【0013】
被膜体に使用される前記高純度グラフェンは、比較的、酸素含有量が少なく、5質量%未満の酸素含有量を有するものが好ましく、1質量%未満のものであっても良い。
【0014】
被膜体に使用される前記高純度グラフェンは、Brunauer−Emmett−Teller法に基づく比表面積の測定により(以下BET比表面積)、少なくとも30〜60平方メートル/グラム、または80平方メートル/グラムあっても良く、100または120平方メートル/グラム〜150平方メートル/グラムでも構わない。例えばBET比表面積は300平方メートル/グラム〜750平方メートル/グラムあっても良い。
【0015】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下のものである。5.0質量%以下のものが好ましく、3.0質量%以下のものであればなお好ましい。
【0016】
アモルファスカーボンは、結晶構造を有しない、不完全なグラファイト成分であり、炭素同士がランダムなつながりをしている形状であるが、600℃以上で燃焼し更に高温で結晶構造を作ろうとするグラファイトの前駆体となる成分であり、600℃以下となる300℃〜530℃付近では、この不完全なグラファイト成分であるアモルファスカーボンが燃焼し、揮発する。
【0017】
結晶構造を持つグラファイトは理論的には高温でしか燃焼しないが、各粒子のエッジ部分は完全な結晶構造を有していないことが多く、また特にその粒子径が小さい場合、このエッジ部分から燃焼することがあり、この部分にはカーボン以外の末端基も多く存在するため、このアモルファスカーボン成分が多いと、末端基も多く含むことになるため、炭素以外の含有量も増えることになる。
【0018】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、適切な高純度グラフェンを使用することで、帯電防止性を付与しつつ金属の溶出量の低下を達成できる。
【0019】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングし、厚みを15μmとし、乾燥させた後4−Probe法にて測定した表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqであることが好ましい。また表面抵抗率が1.0×10Ω/sq以下でも構わない。
【0020】
上記条件を満たす高純度グラフェンを用いることで、被膜体の帯電防止性を向上させ、静電気による破壊を、より抑制することが可能である。
【0021】
被膜体の体積抵抗値は10Ω未満であり、帯電防止性を有する。
【0022】
被膜体は、前記フッ素樹脂被膜層上に形成されたトップ層をさらに設けてもよい。
【0023】
適切なトップ層を形成することで、金属の溶出量をさらに低下させることができる。またトップ層は、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を抑制することもできる。
【0024】
前記トップ層は、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を含有することが好ましい。限定されるものではないが、前記トップ層は、10μm〜00μmの厚みを有することがさらに好ましい。
【0025】
PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を含有する適切なトップ層を有することで、さらなる耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などの向上、および金属の溶出量の低下を達成できる。
【0026】
適切ではないトップ層の場合は、金属の溶出量の低下を防ぐことができず、汚染の要因ともなりうるため、慎重に選択すべきである。また、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などの性能に影響を及ぼす。またトップ層は、厚みが十分でない場合、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を十分に抑制できない。厚みが過剰な場合、トップ層に由来する金属が溶出する虞が増す。
【0027】
前記フッ素樹脂被膜層は、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を80質量%〜99質量%、高純度グラフェンを20質量%〜1質量%含有することが好ましい。
【0028】
フッ素樹脂被膜層全体に対して、高純度グラフェンの配合量が不足する場合、所望の
帯電防止性や耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを得ることができない。また配合量が過剰な場合、上手く被膜化しない。
【0029】
前記フッ素樹脂被膜層は、200μm〜2000μmの厚みを有することが好ましい。
【0030】
フッ素樹脂被膜層の厚みが十分でない場合、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を得ることができない。厚みが過剰な場合、被膜中での発泡や、被膜表面の亀裂、凹凸を生じるなどにより平滑性を失う虞がある。
【0031】
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であることが好ましい。
【0032】
これらの金属は、粗面化および加工がしやすく、焼成による変性などもしにくいため好適に使用することが可能である。
【0033】
前記プライマー層は、PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%と、クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%とを含有するプライマーで形成することが好ましい。
【0034】
プライマーが、クロム酸およびリン酸を15質量%以上含むことで、基材との密着性を向上させることが可能となる。クロム酸およびリン酸を35質量%より多く含むとプライマー層が上手く被膜化せず好ましくない。
【0035】
被膜体は、3.6質量%塩酸200mlに24時間浸漬したときの金属の溶出量が0に極めて近いことが望ましい。また限定されないが、被膜体の表面積1mあたり3.0μg〜15μgであれば略好ましく適用できることが判明している。
【0036】
その理由は、金属の溶出量が、3.0μg〜15μgと極めて少ない被膜体であれば、例えば、フィラーの金属成分が電子部品・精密機器の製造工程で使用される処理液に金属イオンとして溶出し、電子部品・精密機器へ不純物として残留することで、電子部品・精密機器の清浄度を低下させるという問題が起きにくくなるためである。この問題を解決することにより、電子機器や精密機器に使用されている、精密電子機器部品の製造時において、金属汚染を拡散させることなく電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンクなど)に好適に使用することができる。
【0037】
前記基材は、電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンク)、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、攪拌翼を含む撹拌槽、貯槽、または蒸留槽などを構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられるもので
あってもよい。
【0038】
本発明の被膜体の製造方法であって、基材の表面から油脂を除去する脱脂工程と、脱脂後の基材表面を粗面化するブラスト工程と、ブラスト後の基材表面にプライマーを塗布し、乾燥または焼成してプライマー層の形成を行うプライマー層形成工程と、前記プライマー層上に高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜層の形成を1以上の回数行うフッ素樹脂被膜層形成工程と、を有する被膜体の製造方法に関する。
【0039】
係る被膜体の製造方法によれば、脱脂工程、ブラスト工程、プライマー層形成工程を有するため、基材の表面上に密着性の高い被膜体を形成することが可能である。また高純度グラフェンおよびフッ素樹脂を含有する塗料組成物によって、フッ素樹脂被膜層を形成するため、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を有しながら、溶出する金属が少ない被膜体を製造することが可能である。さらにフッ素樹脂被膜層形成工程は、1以上の回数行うため、フッ素樹脂被膜層を所望の厚さで形成することが可能である。
【0040】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下のものである。5.0質量%以下のものが好ましく、3.0質量%以下のものであればなお好ましい。
【0041】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下であり、適切な高純度グラフェンを使用することで、帯電防止性を付与しつつ、金属の溶出量の低下を達成できる。
【0042】
フッ素樹脂被膜層に含有される前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングし、コーティング厚みを15μmとし、乾燥させた後4−Probe法にて測定した表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqであることが好ましい。また表面抵抗率が1.0×10Ω/sq以下でも構わない。
【0043】
上記条件を満たす高純度グラフェンを用いることで、被膜体の帯電防止性を向上させ、静電気による破壊を、より抑制することが可能である。
【0044】
被膜体の体積抵抗値は10Ω未満であり、帯電防止性を有する。
【0045】
前記フッ素樹脂被膜層上にフッ素樹脂を塗布し、焼成してトップ層の形成を行うトップ層形成工程をさらに有することが好ましい。
【0046】
適切なトップ層形成工程を有することで、金属の溶出量をさらに低下させる被膜体の製造が可能となる。またトップ層形成工程を有することで、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を抑制する被膜体の製造が可能となる。
【0047】
前記トップ層形成工程は、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を塗布することが好ましい。前記トップ層形成工程は、10μm〜00μmの厚みで前記トップ層を形成することが好ましい。
【0048】
PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を塗布して、適切なトップ層を形成することで、さらに耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などに優れ、かつ金属の溶出量が少ない被膜体を製造することが可能となる。またトップ層は、厚みが十分でない場合、フッ素樹脂被膜層からの高純度グラフェンの脱離を十分に抑制できない。厚みが過剰な場合、トップ層に由来する金属が溶出する虞が増す。
【0049】
前記フッ素樹脂被膜層形成工程において、前記フッ素樹脂被膜層を、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)および、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を80質量%〜99質量%、高純度グラフェンを20質量%〜1質量%含有する塗料組成物によって形成することが好ましい。
【0050】
フッ素樹脂被膜層全体に対して、高純度グラフェンの配合量が不足する場合、所望の帯電防止性や耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを得ることができない。また配合量が過剰な場合、上手く被膜化しない。
【0051】
前記フッ素樹脂被膜層形成工程において、前記フッ素樹脂被膜層を、200μm〜2000μmの厚みで形成することが好ましい。
【0052】
フッ素樹脂被膜層の厚みが十分でない場合、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を得ることができない。厚みが過剰な場合、被膜中での発泡や、被膜表面の亀裂、凹凸を生じるなどにより平滑性を失う虞がある。
【0053】
前記基材は、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金であることが好ましい。
【0054】
これらの金属は、ブラスト工程において粗面化がしやすく、焼成を行う際に変性などもしにくいため好適に使用することが可能である。
【0055】
前記プライマー層形成工程において、前記プライマー層を、PTFE、PFAおよび、FEPからなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を65質量%〜85質量%、クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%含有するプライマーによって形成することが好ましい。
【0056】
クロム酸およびリン酸を15質量%以上含むプライマーを使用することで、基材とプライマー層の密着性を向上させることが可能となる。クロム酸およびリン酸を35質量%より多く含むプライマーを使用すると、プライマー層が上手く被膜化せず好ましくない。
【0057】
前記基材は、電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンク)、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、攪拌翼を含む撹拌槽、貯槽、または蒸留槽などを構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられるものであってもよい。
【発明の効果】
【0058】
本発明の高純度グラフェンを含有する被膜体および、その被膜体の製造方法によれば、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを有しながら、溶出する金属が少ない被膜体および、当該被膜体の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の第1の実施形態に係る被膜体の構造断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る被膜体を使用する撹拌槽を例示する断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る被膜体の構造断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る被膜体の耐食試験に供する被膜体をコーティングした基板の平面概略図であり、耐食試験後の密着力を評価する際の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明に係る高純度グラフェンを含有する被膜体および、その被膜体の製造方法について詳述する。
【0061】
なお本明細書中において、単に被膜体と記載した場合、本発明に係る被膜体のことを指すものとする。
【0062】
また本明細書中において、塗料組成物とは、フッ素樹脂被膜層を形成するために用いる塗料組成物を指すものとする。
【0063】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る被膜体(10)の断面図である。第1の実施形態に係る被膜体(10)は、基材(1)と、基材(1)の表面上に形成されたプライマー層(2)と、プライマー層(2)上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層(3)とを有する被膜体(10)である。
【0064】
基材(1)としては、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、またはこれらの内から選択される2種以上からなる合金を使用する。

【0065】
これらの基材(1)は、電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンク)、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、撹拌翼(101)を含む撹拌槽(100)、貯槽または、蒸留槽などを構成する部材からなる群から選択される1種以上に用いられるものであってもよい。図2は、被膜体(10)を使用する撹拌槽(100)を一例として示すものである。図2の撹拌槽(100)の場合では、基材(1)は、撹拌槽(100)の外枠を構成する部材として提供され、被膜体(10)は、撹拌槽(100)の内面に形成される。また撹拌槽(100)の内面のみならず、撹拌翼(101)などの撹拌槽(100)に加えられる薬品に接触する部分は、被膜体(10)によってコーティングされ得る。
【0066】
本実施形態に係る被膜体(10)の製造方法は、基材(1)の表面にプライマー層(2)を形成する前に、基材(1)の表面から油脂を除去する脱脂工程を含む。脱脂工程は限定されないが、基材(1)を空焼きするなどの方法で行うことができる。
【0067】
脱脂工程に続いて、基材(1)の表面を粗面化するブラスト工程を含む。ブラスト工程は限定されないが、投射材として、アルミナ、スチールなどの金属、ガラス、砂などを用いて、サンドブラスト、ショットブラスト、および/またはグリットブラストなどの方法で行うことができる。
【0068】
これらの工程を経ることで、基材(1)の表面から、油脂や付着物などの不純物を取り除き、基材(1)とプライマー層(2)の密着性を高めることができる。
【0069】
続いてプライマー層形成工程として、ブラスト工程を経た基材(1)の表面上にプライマーを塗布して乾燥または、焼成してプライマー層(2)の形成を行う。このプライマー形成工程は1回でもよく、または複数回繰り返して行ってもよい。プライマー層形成工程における焼成は、基材(1)の材質や、プライマー層(2)の種類などに応じて適宜設定する。
【0070】
プライマーは、クロム酸およびリン酸を含有するフッ素樹脂である。このフッ素樹脂として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)および、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を使用することが好ましい。
【0071】
プライマーはフッ素樹脂を65質量%〜85質量%と、クロム酸およびリン酸を35質量%〜15質量%とを含有することが好ましい。
【0072】
クロム酸およびリン酸を15質量%以上含むプライマーを使用することで、基材(1)とプライマー層(2)の密着性を向上させることが可能となる。クロム酸およびリン酸を35質量%より多く含むプライマーを使用すると、プライマー層(2)が上手く被膜化せず好ましくない。
【0073】
フッ素樹脂被膜層形成工程として、プライマー層(2)上に高純度グラフェンを含有するフッ素樹脂塗料組成物を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜層(3)の形成を行う。フッ素樹脂被膜層形成工程は、複数回繰り返して行って複数層のフッ素樹脂被膜層(3)を形成してもよい。
【0074】
フッ素樹脂被膜層形成工程における条件についても特に制限されるものではなく、基材(1)の材質や、フッ素樹脂被膜層(3)の種類などに応じて適宜設定する。このような焼成は、例えば電気炉やガス炉などを用いて行うことができる。なお、フッ素樹脂塗料組成物を塗布した後、焼成を行う前に、フッ素樹脂塗料組成物を乾燥させるようにしてもよい。乾燥は適宜の条件で行うことができる。
【0075】
フッ素樹脂被膜層(3)に含有される前記高純度グラフェンは、一般的なグラフェンと比較してアモルファスカーボンが少なく、フィラー(充填材)として好適に使用できる。フッ素樹脂被膜層(3)に適切な高純度グラフェンを含有させることで、優れた帯電防止性を有しながら、溶出する金属が少ない被膜体(10)を提供することができる。
【0076】
フッ素樹脂被膜層(3)に含有される前記高純度グラフェンは、アモルファスカーボンの含有量が5.0質量%以下のものである。5.0質量%以下のものが好ましく、3.0質量%以下のものであればなお好ましい。
【0077】
フッ素樹脂被膜層(3)に含有される前記高純度グラフェンは、高純度グラフェン:PET樹脂:溶媒=1:2:40の割合で混合し、スターラーにて攪拌したものをコーティングし、コーティング厚みを15μmとし、乾燥させた後4−Probe法にて測定した表面抵抗率が1.0×10Ω/sq〜4.0×10Ω/sqであることが好ましい。また表面抵抗率が1.0×10Ω/sq以下でも構わない。
【0078】
上記条件を満たす高純度グラフェンを用いることで、被膜体(10)の帯電防止性を向上させ、静電気による破壊を、より抑制することが可能である。
【0079】
被膜体(10)の体積抵抗値は10Ω未満であり、帯電防止性を有する。
【0080】
フッ素樹脂樹脂被膜層(3)に塗布する塗料組成物は、フッ素樹脂として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)、からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂を使用してもよい。
【0081】
フッ素樹脂被膜層形成工程において、フッ素樹脂被膜層(3)を、フッ素樹脂を80質量%〜99質量%、高純度グラフェンを20質量%〜1質量%、含有する塗料組成物によって形成することが好ましい。
【0082】
フッ素樹脂被膜層(3)全体に対して、高純度グラフェンの配合量が不足する場合、所望の帯電防止性や、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを得ることができない。また配合量が過剰な場合、上手く被膜化しない。
【0083】
フッ素樹脂被膜層形成工程において、フッ素樹脂被膜層(3)を、200μm〜2000μmの厚みで形成することが好ましい。
【0084】
フッ素樹脂被膜層(3)の厚みが十分でない場合、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性を得ることができない。厚みが過剰な場合、被膜中での発泡や、被膜表面の亀裂、凹凸を生じるなどにより平滑性を失う虞がある。
【0085】
上記工程を経て製造された被膜体(10)は、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを有する。
【0086】
さらに上記工程を経て製造された被膜体(10)は、溶出する金属が少ない。金属の溶出量は、例えば限定されないが、3.6質量%塩酸200mlに24時間浸漬したときの金属の溶出量が被膜体(10)の表面積1mあたり3.0μg〜15μgであれば略好ましく適用できることが判明している。
【0087】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係る被膜体(20)の断面図である。第2の実施形態に係る被膜体(20)は、第1の実施例に係る被膜体(10)のフッ素樹脂被膜層(3)の表面上にさらにトップ層(4)を有する。すなわち、第2の実施形態ではフッ素樹脂被膜層(3)は、被膜体(20)のミドル層(中間層)を構成する層である。
【0088】
第2の実施形態では、トップ層(4)を形成するために、フッ素樹脂被膜層(3)上にフッ素樹脂を塗布し、焼成してトップ層(4)の形成を行うトップ層形成工程をさらに有する。トップ層形成工程における焼成は、基材(1)の材質や、トップ層(4)の種類などに応じて適宜設定する。
【0089】
トップ層形成工程を有することで、金属の溶出量をさらに低下させる被膜体(20)の製造が可能となる。またトップ層形成工程を有することで、フッ素樹脂被膜層(3)からの高純度グラフェンの脱離を抑制する被膜体(20)の製造が可能となる。
【0090】
トップ層形成工程において使用されるフッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)、からなる群から選択される1種以上のフッ素樹脂であることが好ましい。これらによって、さらに耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性、および耐久性などに優れ、かつ金属の溶出量が少ない被膜体(20)を製造することが可能となる。
【0091】
限定されるものではないが、トップ層形成工程において、トップ層(4)を10μm〜00μmの厚みで形成することが好ましい。トップ層(4)は、厚みが十分でない場合、フッ素樹脂被膜層(3)からの高純度グラフェンの脱離を十分に抑制できない。厚みが過剰な場合、トップ層(4)に由来する金属が溶出する虞が増す。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の被膜体を評価するための実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。しかし本発明は、下記の実施例に示される態様に限定して理解されるべきではない。
【0093】
<1.被膜体の製造>
【0094】
(実施例1)
基材にステンレス鋼(SUS304、6mm厚、200mm角)を用いて、400℃程度で加熱、空焼きにより脱脂し、#60番アルミナによるショットブラストを施した。脱脂および、ブラストを施した基材の表面に、クロム酸系プライマーをスプレー塗装し、プライマー層を形成した。
【0095】
続いて、プライマー層の上に高純度グラフェンxGnP R−10(XG Sciences社製)を3質量%、残りをPFAとする塗料組成物を静電粉体塗装法によって塗布して、300μmの皮膜を得た。この被膜体を実施例1とした。
【0096】
(実施例2)
実施例1と同様の手順で、基材の表面上にプライマー層とフッ素樹脂被膜層を形成した。実施例2ではさらにフッ素樹脂被膜層の表面にPFAを塗布し膜厚300μmのトップ層を形成した。この被膜体を実施例2とした。
【0097】
(比較例1)
実施例1において、高純度グラフェンxGnP R−10(XG Sciences社製)に代えてグラフェンxGnP H−15(XG Sciences社製)を用いるほかは同様にして被膜体を製造した。この被膜体を比較例1とした。
【0098】
(比較例2)
実施例1において、高純度グラフェンxGnP R−10(XG Sciences社製)に代えてグラフェンxGnP M−15(XG Sciences社製)を用いるほかは同様にして被膜体を製造した。この被膜体を比較例2とした。
【0099】
(比較例3)
実施例1において、高純度グラフェンxGnP R−10(XG Sciences社製)に代えてグラフェンxGnP C300(XG Sciences社製)を用いるほかは同様にして被膜体を製造した。この被膜体を比較例3とした。
【0100】
以下の表1は、実施例1および2、比較例1〜3で使用した高純度グラフェンおよび、グラフェンと、それぞれの特性を示す。
【0101】
【表1】
【0102】
<2.耐食試験>
【0103】
上記実施例1および2、比較例1〜3の被膜体に対して山崎式ライニングテスターLA−15型(株式会社山崎精機研究所製)にて耐食試験を行った。
【0104】
耐食試験では、上記実施例1および2、比較例1〜3の被膜体により、山崎式ライニングテスターLA−15を密閉して、下半分に5%塩酸を満たした。
また、上半分は直接5%塩酸が浸からないようにし、ヒーターからの加熱により、その蒸気に暴露される状態とした。5%塩酸に直接浸かる耐食性部材の下半分を液相部分、5%塩酸に直接浸からない上半分を気相部分とし、二つの部分を合わせて浸漬部分とした。これを100℃下で28日間放置し、以下の評価を行った。
【0105】
具体的には、下記(a)〜(f)の5項目について評価を行った。
【0106】
(a)体積抵抗値
被膜体の特性でもある帯電防止性を測定するため、塩酸に曝す前の被膜体に対して、体積抵抗値を測定した。実施例1、2、比較例1〜3までの被膜体を作成し、ハイレスタ高抵抗抵抗率計にて体積抵抗値を測定した。
【0107】
(b)初期密着力
塩酸に曝す前の被膜体に対して、5mm幅の範囲においてJIS K 5400に規定されるピール強度試験を行うことで、基材との初期密着力を評価した。以下の表2に具体的な密着力を記載し、被膜体に破断が確認された場合は「被膜破断」と記載した。なお図4のEのように塩酸に浸漬させていない部分にピール強度試験を行うことで、基材との初期密着力を評価した。
【0108】
(c)ブリスター(膨れ)発生面積
28日間経過後のブリスターの面積を測定し、試験面積に占めるブリスター発生面積の割合を計算した。概ね密集して発生しているブリスターや面状に被膜浮きが出た部分は個々の膨れの面積の合計ではなく、その範囲をブリスターの面積としてカウントした。
【0109】
(d)ブリスター(膨れ)発生までの時間
ブリスターが発生するまでの時間を測定した。本試験は1週間経過毎に試験を停止し、分解して被膜体を確認したため、ブリスターの発生は週単位にて表記した。
【0110】
(e)浸透量
試験開始前(0日目)と比較した時の、被膜体への塩酸の浸透量を測定した。浸透量の測定は、電子上皿天秤を使用して測定した。
【0111】
(f)残留密着力
JIS K 5400に規定するピール強度試験により28日間経過後の基材との残留密着力を評価した。なお、被膜体は気相部分と液相部分に分かれるため、夫々において密着力を測定し、表2の28日間経過後の密着力の欄には、上段に気相についての密着力を、下段に液相についての密着力を記載した。また表2中にはピール強度試験の測定値(N/5mm)を記載し、被膜体に破断が確認された場合は「被膜破断」と記載した。なお図4のように左右で2回測定しており、AおよびBが気相部分、CおよびDが液相部分に該当する。2回の測定の数値を統合し記載した。
【0112】
耐食試験について評価した結果は、表2に記載した。
【0113】
【表2】
【0114】
表2で示す如く、比較例1及び3は、帯電防止性を付与できる体積抵抗値である10Ω未満を満たすことができなかった。また、比較例2は、帯電防止性を有していたが、実施例1および2に比べブリスター発生までの時間が早く、発生した面積も大きかった。加えて耐食試験後の残留密着力も低く、浸透量も多かった。
【0115】
表2で示す如く、実施例1および2は、帯電防止性を有しつつ、比較例1〜3よりも耐食試験後のブリスター発生までの時間が遅く、発生した面積も小さかった。加えて、耐食試験後の残留密着力も高かった。また浸透量も少なかった。
【0116】
したがって、本発明は帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性に優れる被膜体および、当該被膜体の製造方法であると言える。
【0117】
<3.金属溶出試験>
上記被膜体の製造にて製造した実施例1および2、比較例1〜3の被膜体に対して金属溶出試験を行った。
【0118】
金属溶出試験では、実施例1および2、比較例1〜3の被膜体(表面積3.8×10−3)を洗浄後、3.6質量%塩酸200mlに24時間浸漬した。その後、浸漬液中の金属濃度を、誘導結合プラズマ質量分析装置(Agilent Technologies社製)にて測定した。
【0119】
金属溶出試験について評価した結果は、表3に記載した。
【0120】
【表3】
【0121】
表3において、比較例3も溶出金属量は少ないが、表2で示したように被膜体としての体積抵抗値は高く、帯電防止性が得られておらず性能を満たすことはできなかった。よって、実施例1、2は比較例1〜3よりも、帯電防止性を有しつつ、溶出する金属の量が少ないことが確認された。このように本発明に係る被膜体および、当該被膜体の製造方法は有用であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、優れた帯電防止性、耐食性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐久性などを有しながら、溶出する金属が少ない被膜体および、当該被膜体の製造方法を提供することが可能である。
【0123】
本発明は、金属の溶出量が少ないため、例えば、フィラーの金属成分が電子部品・精密機器の製造工程で使用される処理液に金属イオンとして溶出し、電子部品・精密機器の清浄度を低下させるという問題が生じることなく、電子部品・精密機器の製造装置(例えば、半導体製造装置のタンク)、化学反応槽(リアクター)、濾過槽、撹拌翼を含む撹拌槽、貯槽、または、蒸留槽などに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 基材
2 プライマー層
3 フッ素樹脂被膜層
4 トップ層
10、20 被膜体
【要約】      (修正有)
【課題】優れた帯電防止性、耐久性、耐薬品性、耐浸透性、耐熱性および、耐食性などを有しながら、溶出する金属が少ない被膜体の提供。
【解決手段】基材1と、基材1の表面上に形成されたプライマー層2と、プライマー層2上に形成された1層もしくは複数層のフッ素樹脂被膜層3を有してなり、フッ素樹脂被膜層3はフッ素樹脂と高純度グラフェンを含有する、被膜体。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4