(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポケット特定部は、前記複数の分割ポケットのそれぞれに対応した生地玉の検出期待時間を設定すると共に、当該検出期待時間内における前記質量データの個数に基づいて、当該質量データがいずれの分割ポケットに対応するかを確定することを特徴とする請求項1記載の食品生地の分割装置。
前記ベルト搬送部による前記生地玉の搬送長及び搬送速度を入力する手段を有し、前記ポケット特定部は当該入力内容に基づいて前記検出期待時間を決定することを特徴とする請求項2記載の食品生地の分割装置。
【背景技術】
【0002】
製パン工程においては、混錬された大量のパン生地を所定量の生地玉に小分けした後、焼成工程前の中間発酵へと工程を進めており、パン生地から生地玉に小分けにする自動化機械として、例えば特許文献1示される分割装置が用いられている。
【0003】
前記分割装置は、混練後の大量のパン生地を投入するホッパーと、このホッパーの下方に位置すると共に複数の分割ポケットを有するスライドヘッド、前記ホッパーから送り込まれたパン生地を前記スライドヘッドの分割ポケットに押し込んで前記生地玉を生成する主ラムと、各分割ポケット内に設けられて各分割ポケットから前記生地玉を排出するピストンと、を有している。そして、前記分割ポケットに対するパン生地の押し込みと、かかる分割ポケットからの生地玉の排出を繰り返することにより、前記分割ポケットの容積に応じた大きさの生地玉を連続的に生産することが可能となっている。
【0004】
各分割ポケット内には当該分割ポケット内を進退するピストンが設けられている。このピストンはパン生地を前記分割ポケットに受け入れる際には当該分割ポケット内を後退し、前記分割ポケッから生地玉を排出する際には当該分割ポケット内を前進する。
【0005】
総てのピストンの最大後退位置はストッパによって規制されている。前記ストッパの位置は電動アクチュエータによって任意に変更可能であり、前記ストッパの位置を変更すると各分割ポケット内のピストンの最大後退位置が一斉に変更される。これにより、パン生地を受け入れる前記分割ポケットの容積を任意に変更することが可能であり、所望の大きさの生地玉を生産することが可能となっている。
【0006】
その一方、混練されたパン生地はその日の気温や湿度等に応じて発酵状態が異なることから、前記分割装置を用いて前記分割ポケットの容積に合致した大きさの生地玉を生産した場合でも、各生地玉の質量が一定となる保証はない。また、前記分割装置のホッパー内に残っている生地の量によって、前記分割ポケットに押し込まれる生地に作用している圧力が異なるので、前記分割ポケットの容積が一定であっても、前記ホッパー内の生地残量に応じて生産された生地玉の質量は変動することになる。
【0007】
このため、特許文献2に開示される分割装置では、分割ポケットから排出された生地玉をベルトコンベアで搬送する途上に計量機を設け、当該計量機で個々の生地玉の質量を計り、得られた質量データに基づいて前記分割ポケット内における前記ピストンの後退位置の調整を行っている。具体的には、得られた質量データと前記分割ポケットの容積との関係からその時点での生地の比重を算出した後、この比重を用いて前記生地玉を目標質量で生産するために必要な前記分割ポケットの容積を算出し、算出した必要容積に基づいて前記ストッパの位置を逐次補正している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記ストッパは総ての分割ポケットに対して共通で設けられているので、当該ストッパの位置を補正すると、前記スライドヘッドに設けられた総ての分割ポケットの容積が一律に補正される。このため、かかる補正を適切に行うためには、前記スライドヘッドから同時に排出された複数の生地玉の一つ一つについてその質量を正確に計量し、前記主ラムの一回のストローク毎に生地玉の平均質量を算出することが必要とされる。
【0010】
その一方、この種の分割装置では、前記スライドヘッドから複数の生地玉が同時に排出されるので、互いに隣接する生地玉同士がベルトコンベア上で互いにくっ付いてしまい、二個の生地玉が一つとなって計量機を通過してしまう場合がある。また、生地玉の生産工程を見守る作業員が何らかの理由で、計量機に到達する前の特定の生地玉をベルトコンベア上から取り除いてしまう場合もある。
【0011】
この点に関して
特許文献2に開示される従来の分割装置は、前記計量機を通過する生地玉と前記スライドヘッドに設けられた複数の分割ポケットの対応関係を何ら把握していなかった。このため、計量機を通過する生地玉の個数が前記分割ポケットの数に達した時点で平均質量を算出しており、前述の如く二個の生地玉が一つとなって計量機を通過した場合や、前記計量機の手前で生地玉が抜き取られた場合等には、前記主ラムの一回のストロークに対応させて生地玉の平均質量を正確に算出することができなかった。
【0012】
その結果、生地玉の計量結果に基づいて前記ストッパの位置を補正しても、生産した生地玉の質量と目標質量との誤差を小さくすることができず、例えば、生地玉の質量が目標質量よりも大きい場合はパン生地の無駄に消費することになり、小さい場合には不良品となってやはりパン生地を無駄に消費してしまうといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、複数の分割ポケットとそこから排出された生地玉の質量データを正確に対応させ、もって前記分割ポケットの容積を適切に補正することができ、生産された生地玉の質量と目標質量との誤差を一層小さくすることが可能な経済的な食品生地の分割装置を提供することにある。
【0014】
すなわち、本発明の分割装置は、生地を収容するホッパーと、前記ホッパーから生地を受け入れる複数の分割ポケットを有するスライドヘッドと、
前記スライドヘッドの前記複数の分割ポケットに前記生地を押し込んで複数の生地玉を生成する主ラムと、各分割ポケット内を進退して当該分割ポケットの容量を決定すると共に当該分割ポケットから前記生地玉の排出を行うピストンと、前記分割ポケット内におけるピストンの後退位置を規制するストッパと、前記スライドヘッドから排出された複数の生地玉を順次搬送するベルト搬送部と、前記ベルト搬送部から順次受け取った生地玉の質量を計る計量機と、前記計量機から出力された質量データが前記複数の分割ポケットのいずれに対応するかを確定するポケット特定部と、前記主ラムの一回のストロークで同時に生成された複数の生地玉の平均質量を算出し、当該平均質量と前記生地玉の目標質量とを比較して前記ストッパの位置の駆動信号を生成する補正制御部と、前記駆動信号に基づいて前記ストッパの位置を変更するストッパ駆動部と、を備えている。
【0015】
このような本発明によれば、前記計量機が前記ベルト搬送部によって順次搬送されてくる生地玉の質量を計量し、前記ポケット特定部は前記計量機から出力された質量データが前記複数の分割ポケットのいずれに対応するかを確定するので、前記主ラムの一回のストロークで同時に生成された複数の生地玉の平均質量を正確に算出することができ、前記分割ポケットの容積を適切に補正して、生産された生地玉の質量と目標質量との誤差を一層小さくすることが可能となる。これにより、生地の無駄な消費を抑えつつ、大量の生地玉を経済的に生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を適用した食品生地の分割装置の実施形態を説明する。
【0018】
図1及び
図2は本発明を適用可能なパン生地の分割装置の一例を示すものである。この分割装置は混錬されたパン生地を小分けにして搬出するものであり、ホッパー1から投入されたパン生地を所定重量の生地玉に分割し、かかる生地玉を装置内コンベア2によって装置ハウジング4の外へ次々に搬出するように構成されている。また、前記装置内コンベア2によって搬出された生地玉は図示外の計量器に送られ、当該計量器によって個々の生地玉の質量が計られる。生産する生地玉の目標質量や時間当たりの生成個数は操作パネル3から装置制御部へ入力することができる。
【0019】
前記分割装置は、装置ハウジング4の上部に設けられたホッパー1と、このホッパー1の直下で水平方向に延びると共に生地導入口10を介して当該ホッパー1連通しているシリンダ5と、このシリンダ5内を水平方向へ往復運動する主ラム6と、この主ラム6と対向して前記シリンダ5の一端開口を塞ぐようにして設けられたスライドヘッド7と、前記生地導入口10を開閉するように前記主ラム6と平行に往復運動する平板状のナイフ8とを備えている。
【0020】
前記ホッパー1は混錬されたパン生地の投入口であり、投入されたパン生地は前記ホッパー1の下端に設けられた生地導入口10を介して直下に位置する前記シリンダ5に受け入れられる。また、前記生地導入口10は前記ナイフ8によって適宜開閉され、前記ホッパー1から前記シリンダ5へパン生地が垂下した状態で前記ナイフ8が前進して前記生地導入口10を閉塞することにより、前記シリンダ5内のパン生地がホッパー1内のパン生地と分断されるようになっている。
【0021】
前記スライドヘッド7は前記シリンダ5に向けて開口した複数の分割ポケットを有している。この分割ポケットは
図2の紙面奥行き方向へ一列に配列されており、そのために前記シリンダ5は高さが前記分割ポケットの1個分、幅が前記分割ポケットの個数分に対応している。このスライドヘッド7は上下にストロークし、最上位の第一位置と最下位の第二位置との間を移動する。前記第一位置では前記分割ポケットが前記シリンダ5に正対する一方、前記第二位置では前記分割ポケットが前記シリンダ5から退避し、当該分割ポケットが前記シリンダ5の下方空間において前記装置内コンベア2上に開放される。
【0022】
前記第一位置は前記分割ポケットに対するパン生地の受け入れ位置であり、前記スライドヘッド7が第一位置に設定された状態で前記主ラム6が前記シリンダ5内をスライドヘッド7に向けて前進すると、前記シリンダ5内に存在するパン生地が主ラム6に押圧されて各分割ポケットに押し込まれるようになっている。また、この状態から前記スライドヘッド7が第二位置へ下降することにより、分割ポケットに充填されたパン生地は前記シリンダ5内に残るパン生地から分断される。
【0023】
図3は前記スライドヘッド7に配列された前記複数の分割ポケット70を示す概略図である。前記複数の分割ポケット70は前記装置内コンベア2による生地玉の搬出方向に沿って配列されており、各分割ポケット70から生地玉を排出した際には、分割ポケット70の配列数と同じ個数の生地玉が前記装置内コンベア2上に一斉に落下するようになっている。各分割ポケット70内には前記シリンダ5内の主ラム6と向かい合わせにピストン71が設けられており、これらのピストン71は前記スライドヘッド7の裏側(
図3における紙面左側)から各分割ポケット70に挿入されている。これらピストン71は連接棒72に連結されており、前記連接棒72を駆動することで前記ピストン71が前記分割ポケット70内を進退する。尚、
図3に示した例では、前記スライドヘッド7に対して6個の分割ポケット70が配列されているが、その個数は必要とする生産能力等に応じて任意に変更して差し支えない。
【0024】
また、前記ピストン71の背面側には当該ピストン71の後退位置を規制するストッパ73が設けられている。このストッパ73は電動アクチュエータを内蔵するストッパ駆動部74に連結されており、かかるストッパ駆動部74を動作させることでストッパ73の停止位置を任意に変更することができるようになっている。前記分割ポケット70内におけるピストン71の後退位置は前記ストッパ73によって規制されているので、当該ストッパ73の停止位置を調整することにより、前記分割ポケット70内における前記ピストン71の後退位置を任意に設定することができる。これにより、パン生地を充填した際の分割ポケット70の深さ、換言すれば分割ポケット70の容積を変更し、当該分割ポケット70で小分けにされる生地玉の大きさを任意に調整できるようになっている。前記ストッパ駆動部74はこの分割装置の起動前に前記操作パネル3で目標とする生地玉の重量を設定した際に動作する他、動作中においても生地玉の実際の質量に基づいたフィードバック制御によって動作し、それによって生地玉の質量を目標質量に合致させる試みがなされる。
【0025】
前記分割ポケット70に挿入された複数のピストン71は前記スライドヘッド7に連動して動作し、前記スライドヘッド7が第二位置へ下降する際に前記分割ポケット70内を前進し、当該分割ポケット70からパン生地を押し出す。これにより、前記分割ポケット70の容量に応じた大きさの生地玉が各分割ポケット70から排出される。排出された生地玉は先端にスクレーパーを装着したフリッカー60(
図2参照)によって前記スライドヘッド7から掻き落とされ、前記装置内コンベア2上に落下する。これにより、前記スライドヘッド7の一回の上下動に対応して、前記分割ポケット70の個数分の生地玉が前記装置内コンベア2上に排出される。
【0026】
前記装置ハウジング4の下部にはサーボモータ及びリンク機構なる駆動系40が配置されており、前記主ラム6、前記ナイフ8及び前記スライドヘッド7は前記駆動系40によって相互に関連したタイミングで動作を行う。
【0027】
図4は前記スライドヘッド7の分割ポケット70から排出された生地玉Pを前記計量機9に搬送するベルト搬送部100を示す概略図である。同図において生地玉Pは紙面左から右へ向かって搬送される。前記ピストン71によって複数の分割ポケット70から一斉に押し出された生地玉Pは、前記装置内コンベア2上に落下する。前記装置内コンベア2の下流側には第一コンベア20が位置しており、当該第一コンベア20は前記装置内コンベア2から生地玉を受け取って、前記計量機9へと搬送する。
【0028】
前記第一コンベア20のベルト回転速度は、前記装置内コンベア2のベルト回転速度よりも高速に設定されている。このため、
図4に示すように、生地玉Pが矢線A方向へ搬送され、前記装置内コンベア2から前記第一コンベア20に乗り移ると、前後して搬送される生地玉Pの間隔が拡がり、生地玉Pを所定間隔で前記計量機9へと搬送することができる。
【0029】
前記計量機9は計量コンベア90を備えており、当該計量コンベア90は前記第一コンベア20から生地玉Pを受け取って搬送する。前記計量コンベア90にはロードセル91が設けられており、当該計量コンベア90によって搬送される個々の生地玉Pの質量がロードセル91によって順番に計量される。計量によって得られた質量データは前記装置制御部に送信される。また、前記計量コンベア90の上流側には生地玉Pの通過の有無をチェックする検出センサ92が設けられており、当該検出センサ92の出力信号も前記装置制御部へ送信される。また、前記計量機9の下流側には第二コンベア21が配置されており、計量機9を通過した生地玉Pを次工程の機械、例えば、分割された生地玉の丸めを行う丸め装置等に搬送する。
【0030】
図5は前記装置制御部の構成を示すブロック図である。この装置制御部30は、単位時間当たりの生地玉Pの生産量に基づいて前記駆動系40や前記ベルト搬送部100の動作を制御すると共に、この分割装置で生産される生地玉の質量を予め設定された目標質量に近づけるよう前記ストッパ駆動部74の動作を制御する。前記装置制御部30はRAM及びROMを内蔵したマイクロコントローラによって実現されており、前記装置制御部30は予めROMに格納されたプログラムを実行し、分割装置に内蔵された各種モータの動作を制御する。また、前記装置制御部30はカウンタ31を備えており、当該カウンタ31は前記スライドヘッド7の分割ポケット70から生地玉が排出されると計数を開始し、前記装置内コンベア2に対して同時に排出されたすべての生地玉が前記計量機9を通過するタイミングまで計数を続ける。生地玉が前記ベルト搬送部100で搬送されている間も前記スライドヘッド7からは新たな生地玉が排出されるので、前記装置制御部30には複数のカウンタ31が設けられている。
【0031】
前記操作パネル3に設けられたユーザーインターフェースからは生地玉の単位時間当たりの生産量や目標質量を前記装置制御部30に入力することができる他、前記ベルト搬送部100における生地玉の搬送経路長や搬送速度を入力することができる。また、前記計量機9からは生地玉の質量データ及び前記検出センサ92の出力信号が前記装置制御部30に対して入力される。
【0032】
前記分割ポケット70から生地玉が排出されたタイミングを把握するため、前記フリッカー60には当該フリッカー60の動作を検出する排出センサ61が設けられている。この排出センサ61の出力信号は前記装置制御部30に入力され、当該排出センサ61のオン/オフによって生地玉の排出タイミングを把握することができる。
【0033】
前記装置制御部30は、前記計量機9から出力された質量データを前記複数の分割ポケット70のいずれかと関連付けてメモリに格納するポケット特定部32としての機能と、前記メモリを参照して前記複数の分割ポケット70から同時に排出された生地玉の平均質量を算出すると共に、当該平均質量と前記生地玉の目標質量とを比較して前記ストッパ駆動部74の駆動信号を生成する補正制御部33としての機能とを備えている。
【0034】
次に、この分割装置で生産する生地玉の質量を目標質量に制御する方法について説明する。
【0035】
前記スライドヘッド7から一度に排出された複数の生地玉Pは、
図4に示すように、一定の間隔で前記計量機9に到達する。従って、前記装置制御部30は前記ベルト搬送部20における生地玉Pの搬送経路長や搬送速度に基づき、生地玉の検出期待時間を算出し、前記スライドヘッド7の各分割ポケット70に対して検出期待時間を割り当てる。これら検出期待時間は一定範囲を有している。前記スライドヘッド7に備えられた複数の分割ポケット70は生地玉の搬送方向に対して直列に配置されているので、前記検出期待時間は前記計量機9に最も近い分割ポケット(
図4の70−1)で最少となり、最も遠い分割ポケット(
図4の70−6)で最大となる。前記スライドヘッド7に設けられた6個の分割ポケット70のうち、前記計量機に最も近い分割ポケット70をNo.1、最も遠い分割ポケット70をNo.6とすると、各分割ポケット70に割り当てられる検出期待時間は
図6に示すようになる。すなわち、分割ポケットNo.1から排出された生地玉はt0〜t1の間に計量機9に到達することが想定され。また、分割ポケットNo.2から排出された生地玉はt1〜t2の間に、分割ポケットNo.6から排出された生地玉はt5〜t6の間に計量機9に到達することが想定される。
【0036】
前記スライドヘッド7の分割ポケット70から排出された生地玉Pが計量機9に到達すると、先ずは前記検出センサ92が生地玉Pの通過を検知してその出力信号が前記装置制御部30へ送られ、続いて計量機9が計った質量データが前記装置制御部30へ送られる。前記装置制御部30は前記検出センサ92から生地玉の検出信号を受領すると検知フラグを立てて、計量機9から受領した質量データをメモリに格納する。装置制御部30は検出センサ92によって生地玉Pが検知される毎にこの処理を行う。
【0037】
また、前記計量機9から送られてきた質量データが生地玉の目標質量に対して極端に大きい場合、例えば、目標質量の実質的に2倍に相当する場合には、前後して搬送される2個の生地玉が一つの生地玉として計量された可能性が極めて高いので、当該質量データはメモリに格納することなく破棄する。
【0038】
前記装置制御部30は前記排出センサ61の出力信号のオン/オフをチェックし、排出センサ61の出力信号がオンに反転したら、前記主ラム6のストロークによってスライドヘッド7から生地玉が排出されたと判断して、前記カウンタ31の計数を開始する。前記カウンタ31の計数値は前記検出期待時間の経過を示しており、当該計数値を参照することにより、前記装置制御部30は各分割ポケット70に割り当てられた検出期待時間内に生地玉Pを検知したか否かをチェックすることができる。前記カウンタ31の計数値は分割ポケットNo.6の検出期待時間t6を経過したらクリアされ、前記排出センサ61の出力信号がオンに反転したらカウンタ61の計数を再度開始する。
【0039】
図7はスライドヘッド7から排出された生地玉が一定間隔で計量機9に到達する場合について、前記検出期待時間内に検知フラグを立てて前記メモリに格納された質量データの数を示す表である。
図7の表では、前記主ラム6の三回のストロークA,B,Cについて、ストロークAの分割ポケットNo.4〜No.6、ストロークBの分割ポケットNo.1〜No.6、ストロークCの分割ポケットNo.1に対応する検出期待時間が示されている。
【0040】
スライドヘッド7から排出された生地玉が一定間隔で計量機9に到達する場合を示しているので、各分割ポケットに対応した検出期待時間内において検知フラグを立ててメモリに格納された質量データの数は1つである。これにより、ストロークAの検出期待時間t3〜t4で格納された質量データは、
図6に示す対応関係に基づいて、分割ポケットNo.4から排出された生地玉の計量結果と確定することができる。また、ストロークBの検出期待時間t0〜t1で格納された質量データは分割ポケットNo.1から排出された生地玉のものと確定することができ、同じように、フラグを立ててメモリに格納された総ての生地玉について前記スライドヘッド7のいずれの分割ポケットから排出されたものかを確定することができる。
【0041】
図8は、前記スライドヘッド7から排出された生地玉が何らかの理由で間隔を異ならせながら計量機9に到達する場合について、前記検出期待時間内に検知フラグを立てて前記メモリに格納された質量データの数を示す表である。具体的には、主ラム6のストロークAの検出期待時間t4〜t5では格納された質量データは存在せず、ストロークAの検出期待時間t5〜t6で3つの質量データが格納されている。また、主ラム6のストロークBの検出期待時間t0〜t1では質量データは存在せず、ストロークBの検出期待時間t1〜t2で2つの質量データが格納されている。更に、ストロークBの検出期待時間t2〜t3、t3〜t4、t5〜t6では質量データは存在せず、次のストロークCの検出期待時間t0〜t1で2つの質量データが格納されている。これら以外の、ストロークAの検出期待時間t3〜t4、ストロークBの検出期待時間t4〜t5では、それぞれ1つの質量データのみが格納されている。尚、
図8における分割ポケットNo.の「A4」は、主ラム6のストロークAの際の分割ポケットNo.4を示している。
【0042】
前記装置制御部30はフラグを立ててメモリに格納された質量データについて、先に格納されたものから順番に分割ポケットとの対応関係を確定する。
図8の例では、先ず、ストロークAの検出期待時間t3〜t4で格納された質量データは1つなので、この質量データは
図6に示す対応表の通りに分割ポケットNo.4から排出された生地玉のものと確定する。次に、ストロークAの検出期待時間t4〜t5では質量データが存在していないが、続くストロークAの検出期待時間t5〜t6で3つの質量データが格納されており、更に、ストロークBの検出期待時間t0〜t1では質量データが格納されていないので、検出期待時間t5〜t6で検出された3つの質量データはストロークAの分割ポケットNo.5、分割ポケットNo.6、ストロークBの分割ポケットNo.1から排出された生地玉のものと確定する。また、ストロークBの検出期待時間t1〜t2で2つの質量データが格納され、続く検出期待時間t2〜t3では格納された質量データが存在していないので、検出期待時間t1〜t2の2つの質量データはストロークBの分割ポケットNo.2及びNo.3から排出された生地玉のものと確定する。
【0043】
次に、ストロークBの検出期待時間t3〜t4では質量データが存在しておらず、また、続く検出期待時間t4〜t5では1つの質量データのみが格納されているので、検出期待時間t4〜t5で格納された質量データはそのまま分割ポケットNo.5から排出された生地玉のものと確定し、ストロークBの分割ポケットNo.4は質量データの存在しない「抜け」として確定する。また、ストロークBの検出期待時間t5〜t6では質量データが格納されていないが、ストロークCの検出期待時間t0〜t1で2つの質量データが格納されているので、これら2つの質量データはストロークBの分割ポケットNo.6及びストロークCの分割ポケットNo.1から排出された生地玉のものと確定する。
【0044】
メモリに格納された質量データと各分割ポケットとの対応関係が確定したならば、前記装置制御部30は前記主ラム6の各ストロークに関して、同時に生産された複数の生地玉の平均質量を算出する。例えば、
図8に示す例で主ラム6のストロークBについては、分割ポケットNo.4の質量データが「抜け」となっているので、分割ポケットNo.1〜No.3、No.5及びNo.6に関連付けられた質量データを用いて平均質量を算出する。次いで、前記装置制御部30は算出した平均質量を前記生地玉の目標質量と比較し、その比較結果に基づいて前記ストッパ駆動部74の駆動信号を生成し、当該駆動信号を前記ストッパ駆動部74に対して出力する。これにより、前記ストッパ73の停止位置が再設定されて、前記分割ポケット70内を進退するピストン71の後退位置が変更される。その結果、主ラム6の一回のストローク毎に、生地玉の実測された平均質量と目標質量との差を解消すべく総ての分割ポケット70の容積が変更され、これら分割ポケット70から排出される生地玉の質量を目標質量に向けてフィードバック制御することができる。
【0045】
以上説明してきたように、本発明を適用した分割装置によれば、何らかの理由で生地玉が計量機9の上流側で取り除かれた場合や、前後して搬送される2個の生地玉がくっ付いて計量されてしまった場合であっても、前記計量機9から送られてくる質量データが前記複数の分割ポケット70のいずれに関連したものかを正確に特定することができる。このため、前記スライドヘッド7から同時に排出された複数の生地玉の平均質量を正確に把握することができ、前記主ラム6の一回のストローク毎に前記分割ポケット70の容積を精度よく補正することが可能となる。
【0046】
従って、本発明の分割装置では生産される生地玉の質量と目標質量との誤差を可及的に小さくし、その状態を保って運転を継続することが可能であり、パン生地の無駄な消費を抑える一方、目標質量に達しない不良品の発生を抑えることができ、大量の生地玉を経済的に生産することができる。
【0047】
また、本発明を適用した分割装置によれば、前記計量機9から送られてくる質量データと前記複数の分割ポケット70との対応関係を正確に特定することができるので、前記主ラム6のストロークと関係なく、分割ポケット70毎の生地玉の平均質量を算出することも可能である。このため、特定の分割ポケット70における不具合の有無を容易に把握することが可能となり、分割装置のメインテナンスに資することが可能である。