【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
加圧すると膨張する内側チューブと、
内側チューブの外面を覆って内側チューブの膨張を規制する外側スリーブと、
で構成され、
内側チューブの径方向の膨張が外側スリーブによって長さ方向の収縮に変換されるようにしたアクチュエータであって、
内側チューブが、伸び率100%以上の弾性材料によって形成された
ことを特徴とするアクチュエータ
を提供することによって解決される。
ここで、「伸び率」とは、「 JIS K 6251 : 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方 」に準拠して算出した「所定応力伸びE
s(%)」(同規格における「15.1 ダンベル状試験片」の式5を参照)のことを云う。試験片は、同規格の「6.1 ダンベル状試験片」の表1に規定される「ダンベル状1号形」のものを用いる。ただし、同表における「平行部分の厚さ」は、2.5mmとする。また、試験片に加える引張力は、1.0Kg重とする。
本発明のアクチュエータでは、従来のマッキベン型のアクチュエータにおける内側チューブ(通常、上記の伸び率が数十%程度の弾性材料で形成される。)よりもかなり伸びやすい弾性材料で内側チューブを形成したため、従来のものよりも低い圧力で同等以上の収縮力を発生させることが可能となっている。
また、本発明のアクチュエータは、内側チューブを高い圧力まで加圧しなくても動作するため、内側チューブの破れを抑えて寿命を長くするだけでなく、内側チューブ加圧手段の小型化を図ることも可能なものとなっている。
さらに、本発明のアクチュエータは、内側チューブが伸びやすい(柔らかい)素材で形成されているため、身体支援装置に用いた場合には、装着者が拘束感を感じにくいものとなっている。
【0008】
本発明のアクチュエータにおいて、内側チューブを形成する弾性材料の伸び率(以下では「内側チューブの伸び率」と表記することがある。)は、100%以上であれば特に限定されない。
しかし、上述した効果がより顕著に奏されるようにするためには、内側チューブの伸び率をさらに高めると好ましい。内側チューブの伸び率は、200%以上とすると好ましく、300%以上とするとより好ましく、400%以上とするとより好ましく、500%以上とするとより好ましく、600%以上とするとより好ましく、700%以上とするとより好ましく、800%以上とするとより好ましく、900%以上とするとより好ましい。このように伸び率の高い内側チューブは、例えば、エラストマーの発泡体によって形成することが可能である。
ただし、内側チューブの伸び率を高くしすぎると、内側チューブの強度を維持しにくくなる虞がある。このため、内側チューブの伸び率は、通常、2000%以下とされ、好ましくは、1500%以下とされる。
【0009】
本発明のアクチュエータにおいて、非加圧時における内側チューブの外周面と外側スリーブの内周面との間には、隙間が存在するようにしてもよい。しかし、この場合には、内側チューブを加圧し始めてからアクチュエータが動作を開始するまでの間に時間が掛かるようになる虞がある。このため、非加圧時において、内側チューブの外周面を外側スリーブの内周面に密着させた状態としておくと好ましい。これにより、内側チューブの加圧を開始した直後からアクチュエータを動作させることが可能になる。
【0010】
ところで、従来のマッキベン型のアクチュエータにおいて、内側チューブと外側スリーブは、通常、その長さ方向両端部で互いに固定される。本発明のアクチュエータにおける内側チューブと外側スリーブも、これと同様の固定構造を採用することができる。本発明のアクチュエータにおいて、内側チューブの長さ方向両端部と外側スリーブの長さ方向両端部を固定する際には、内側チューブを長さ方向に伸長させた状態としておくと好ましい。
これにより、外側スリーブの内径よりも大きな外径を有する筒状部材を内側チューブとして用いることが可能になる。というのも、内側チューブは、伸長させればさせる程、その外径が小さくなるため、自然長状態では外側スリーブの内径よりも大きな外径を有する内側チューブであっても、伸長させることにより、外側スリーブの内部に挿入することが可能な状態となるからである。
また、外側スリーブに内側チューブを挿入した後の状態にあっては、内側チューブの外周面を外側スリーブの内周面に密着させることも容易となる。外側スリーブに挿入された内側チューブは、自然長状態へ戻ろうとして縮むことで、その外径が増大するからである。
さらに、アクチュエータを内側チューブの加圧直後から収縮しやすいものとすることが可能になる。というのも、アクチュエータの収縮は、内側チューブの径方向の膨張が外側スリーブによって長さ方向の収縮に変換されることによって生じるところ、内側チューブを予め長さ方向に伸長させた状態としておくことで、加圧開始直後の内側チューブが長さ方向よりも径方向に膨張しやすくすることができるからである。
さらにまた、非加圧時のアクチュエータを収縮しがちにしてコンパクトに収めることも可能になる。このため、アクチュエータを身体支援装置に好適に用いることが可能になる。例えば、
図4に示すように、アクチュエータ10を股関節用の身体支援装置100として用いる場合を想定すると、内側チューブを長さ方向に伸長させた状態で外側スリーブに固定する構成を採用していない場合には、支援装置100の装着者200が着席した状態(内側チューブの非加圧時)において、アクチュエータ10が大きく余った状態となりやすい(
図4(b)の破線部Aを参照)のに対し、内側チューブを長さ方向に伸長させた状態で外側スリーブに固定する構成を採用した場合には、装着者200が着席した状態(内側チューブの非加圧時)において、アクチュエータ10の余りを小さく抑えることが可能になる。
このように、内側チューブを長さ方向に伸長させた状態で外側スリーブに固定する構成を採用すると、様々な効果が奏されるようになるが、当該構成は、内側チューブを伸びやすい材料で形成したことによって採用することが可能になったものである。従来のマッキベン型のアクチュエータのように、内側チューブが伸びにくい(硬い)材料で形成されている場合に、内側チューブを長さ方向に伸長させた状態で外側スリーブに固定すると、内側チューブが自然長状態に戻ろうとする力が強くなりすぎ、非加圧時のアクチュエータが歪な形態になってしまう。また、非加圧時のアクチュエータに大きな収縮力が生じるようになり、身体支援装置に用いた場合に装着者が強い拘束感を感じるようになる。
【0011】
また、上記課題は、
本発明のアクチュエータと、
アクチュエータを身体における所定部位に取り付けるためのアクチュエータ装着部材と、
アクチュエータの内側チューブを加圧するための内側チューブ加圧手段と、
を備えたことを特徴とする身体支援装置。
を提供することによっても解決される。
これにより、装着者が拘束感を感じにくく快適に使用することができる身体支援装置を提供することが可能になる。
【0012】
本発明の身体支援装置において、内側チューブ加圧手段は、電力等で駆動されるものであってもよいが、人力で駆動されるものであると好ましい。本発明のアクチュエータは、上述したように、内側チューブを高い圧力まで加圧しなくても動作するため、人力駆動式の内側チューブ加圧手段を用いても、身体における支援対象部位を支援するのに十分な作動力を出力することが可能だからである。人力駆動式の内側チューブ加圧手段を用いる例としては、アクチュエータを、装着者の足の動作(大腿部を前方上側へ引き上げる動作)を支援することができる箇所に取り付け、内側チューブ加圧手段を、当該アクチュエータによって支援される側とは反対側の足で踏みつけ可能な足踏み式ポンプとする場合等が挙げられる。