(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の液体バッグおよび液体バッグの製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<実施形態>
図1は、本発明の液体バッグの正面図である。
図2は、
図1中のA−A線断面図であって、(a)が自然状態を示す図、(b)が弱融着部が剥離した状態を示す図である。
図3は、本発明の液体バッグの製造方法を説明するための断面図であって、(a)が配置工程を示す図、(b)が熱融着工程を示す図である。
図4は、実施例における引張試験が行われている試験片を示す側面図である。
図5は、実施例における落下試験が行われている液体バッグを示す断面図である。
図6は、従来の液体バッグの融着部を示す断面図であって、(a)が自然状態を示す図、(b)が融着部が破断した状態を示す図である。
【0024】
なお、以下では、説明の都合上、
図1〜
図6の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0025】
図1に示すように、液体バッグ1は、軟質なシート材同士を熱融着してなるものであり、その融着部2の内側に液体を収納可能な収納部111(収納空間)を有する袋状のバッグ本体11と、バッグ本体11に設けられた口部12および口部13とを備える。なお、液体バッグ1は、一例として、腹膜透析液が収納されたものとする。
【0026】
以下、各部について説明する。
バッグ本体11は、例えば、軟質材料からなるシート材10を筒状に成形し、その両端部を融着する方法や、2枚のシート材10の縁部を融着する方法等により得られる。液体バッグ1では、バッグ本体11は、軟質材料からなるシート材10を筒状に成形し、その両端部において、シート材10が重なっている部分を熱融着する方法により形成される。このため、バッグ本体11では、上端および下端の縁部には、帯状の融着部2(熱融着部)が形成されている。
【0027】
また、バッグ本体11は、偏平形状をなし、その平面視で、略矩形をなしている。また、バッグ本体11の両端部には、収納部111の幅W(液体が収納されていない状態における最大幅)が両端側にいくに従って徐々に縮幅する縮幅部112が形成されている。融着部2は、バッグ本体11の角部において、縮幅部112に沿って湾曲した形状をなしている。
【0028】
また、収納部111は、シート材10同士が融着されてなる帯状の仕切り部23によって仕切られている。これにより、収納部111は、互いに非連通状態の収納部113および収納部114に分けられる。また、仕切り部23は、後述する強融着部21よりも融着強度が低く、バッグ本体11に圧力を加えることにより破断し、収納部113および収納部114が連通可能になっている。
【0029】
収納部113および収納部114は、
図1中下側から並んで配置されている。また、収納部113は、収納部114よりも容積が大きい。収納部113に収納されている液体100としては、ブドウ糖等を主成分とするものを用いることができる。また、収納部114に収納されている液体101としては、例えば、塩化ナトリウムおよび乳酸ナトリウム等を主成分とするものを用いることができる。前述したように、収納部113および収納部114を連通させることにより、液体100および液体101が混合される。
【0030】
シート材10の厚さとしては、特に限定されないが、0.2mm以上、0.8mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上、0.7mm以下であるのがより好ましい。シート材10が厚すぎると、熱融着により融着されるのに比較的時間がかかる。一方、シート材10が薄すぎると、熱融着により形成された融着部2の強度を十分に確保するのが困難になる可能性が有る。
【0031】
バッグ本体11の構成材料としては、特に限定されないが、適度な耐熱性のある軟質合成樹脂を用いることができる。この軟質合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物等、ポリオレフィンを含む混合物)、さらにはこれらの部分架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、軟質塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体のようなスチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)等が挙げられる。
【0032】
口部12は、円筒状の部材で構成され、バッグ本体11の縁部に固定されている。また、口部12は、一端部がバッグ本体11内に臨んでおり、他端部がバッグ本体11の外側に位置している。これにより、バッグ本体11の内外を連通することができる。
【0033】
図1に示すように、口部12は、円筒をなす円筒部121と、円筒部121の外周部に突出形成された固定部122とを有している。
【0034】
円筒部121は、その内側が液体が通過する流路として機能するものである。これにより、バッグ本体11から液体を外部へ排出することができたり、液体をバッグ本体11に注入することができる。
【0035】
また、円筒部121の基端外周部には、偏平形状の固定部122が形成されている。固定部122は、シート材10に挟まれた状態でシート材10に固定される部分である。
【0036】
なお、未使用状態では、円筒部121にはキャップ15が装着されており、収納部111が液密的に封止される。
【0037】
口部13は、口部12よりも内径および外径が細い管状の部材で構成されている。また、口部13は、バッグ本体11の口部12が固定されている縁部の近傍に固定されている。口部13は、一端部がバッグ本体11内に突出して設けられ、他端部がバッグ本体11の外側に位置している。これにより、バッグ本体11の内外を連通することができる。
【0038】
また、口部13は、管状をなす管状部131と、管状部131の外周部に突出形成された固定部132とを有している。
【0039】
管状部131は、その内側が液体が通過する流路として機能するものである。これにより、バッグ本体11から液体を外部へ排出することができたり、液体をバッグ本体11に注入することができる。
【0040】
また、管状部131の長手方向の途中には、偏平形状の固定部132が形成されている。固定部132は、シート材10に挟まれた状態でシート材10に固定される部分である。
【0041】
なお、口部13の外側に位置している端部には、可撓性を有するチューブ14が接続されている。これにより、チューブ14を介して液体バッグ1を他の医療機器等に接続することができる。また、口部13の内側に位置している端部には、折って破断することでその端部が開口し、バッグ本体11内とチューブ14内とを連通させることができる破断部材を有する。
【0042】
口部12および口部13の構成材料としては、各種熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
このような液体バッグ1は、搬送される際、仕切り部23にて折り畳んで、2つ折りにした状態とされる。また、折り畳む際、
図5に示すように、チューブ14が内側に挟まれるようにして折り畳むのが好ましい。
【0044】
さて、液体バッグ1では、収納部113に液体100を収納し、収納部114に液体101を収納した状態で、例えば、搬送中等にバッグ本体11に外力が加わると、その程度によっては、融着部2が剥離したりシート材が破断して、液体100または液体101が外部に漏れる可能性があるが、液体バッグ1では、これを防止または抑制するのに有効な構成となっている。
【0045】
以下、このことについて説明する。
図2(a)および(b)は、
図1中のA−A線断面図である。
図2(a)に示すように、融着部2は、シート材10が重ねられた部分が熱融着された部分であり、収納部111との境界からバッグ本体11の外縁までが融着部2となっている。
【0046】
この融着部2は、融着強度が比較的高い強融着部21(第1の融着部)と、強融着部21よりも融着強度(シート材10の面方向での平均融着強度)が低い弱融着部22(第2の融着部)とを有している。これら強融着部21および弱融着部22は、本実施形態では、融着部2の長手方向の全長にわたって形成されている。
【0047】
強融着部21は、融着部2において、シート材10の外縁側に位置し、弱融着部22は、融着部2において、バッグ本体11の内側、すなわち、収納部111側に位置している。
【0048】
強融着部21の、シート材10の長さL21(バッグ本体11の内側から外側にかけての平均長さ)は、特に限定されないが、3mm以上、30mm以下であるのが好ましく、5mm以上、25mm以下であるのがより好ましい。また、弱融着部22のシート材10の長さL22(バッグ本体11の内側から外側にかけての平均長さ)は、特に限定されないが、0.1mm以上、20mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上、10mm以下であるのがより好ましい。
【0049】
長さL21と長さL22との比L22/L21は、融着部2の長手方向に沿って一定であってもよく、異なる部分を有していてもよい。この比L22/L21は、0.01以上、2.5以下であるのが好ましい。これにより、後述する液漏れを防止または抑制することができる。
【0050】
強融着部21の厚さは、シート材10の面方向に沿って一定となっている。また、弱融着部22は、厚さがバッグ本体11の内側、すなわち、収納部111に向って漸増している漸増部221を有している。この漸増部221は、後述する液体バッグの製造方法を経ることにより形成され、その際、弱融着部22となる部分である。
【0051】
漸増部221の最大厚さと最小厚さとの差をaとし、漸増部221のシート材の、バッグ本体11の内側から外側にかけての長さをbとしたとき、比a/bは、0.05以上、0.25以下である関係を満足するのが好ましく、0.07以上、0.23以下である関係を満足するのがより好ましい。これにより、後述する液漏れを防止または抑制することができる。なお、本実施形態では、長さL22とbとは、同じ値である。
【0052】
ここで、
図6(a)に示すように、従来の液体バッグ1’に外力を付与しない自然状態から、液体バッグ1’が圧迫されるような外力が付与されると、応力が融着部2’と収納部111’との境界部に集中する。その程度や融着強度等によっては、
図6(b)に示すように、融着部2’のシート材が破断して内部の液体が漏れることがある。また、図示はしないが、上記応力集中により、融着部2’でのシート材同士が剥離してしまうこともある。これは、融着部2’の融着強度が一定であることが原因の1つである。融着強度が一定であると、融着部2’が内側から剥離しだすと、外側まで一気に剥離してしまう。
【0053】
本発明では、
図2(a)に示す自然状態から外力が加わると、
図2(b)に示すように、収納部111に臨んでいる弱融着部22(漸増部221)に応力が集中する。この際、弱融着部22においてシート材10が剥離される。これにより、融着部2に過剰な応力が集中するのを緩和することができる。すなわち、液体バッグ1では、弱融着部22においてシート材10を敢えて剥離させることに上記過剰な応力集中を緩和し、強融着部21まで剥離したり、シート材10が破断してしまうのを防止することができる。その結果、融着部2全体が破断また剥離してしまうのを防止することができ、収納部111の液体100が外部に漏れるのを防止することができる。
【0054】
特に、縮幅部112は、上記応力集中が生じやすい部分である。液体バッグ1では、この縮幅部112に強融着部21と弱融着部22とが形成されているため、縮幅部112において、液体100が外部に漏れるのを防止または抑制することができる。
【0055】
また、弱融着部22では、融着強度が、収納部111に向って漸減している。すなわち、弱融着部22では、収納部111に臨んでいる部分において、融着強度が最も低く、収納部111から外側に行くに従って融着強度が高くなっている。このような構成によれば、弱融着部22においてシート材10が剥離する際、徐々に剥離することとなる。よって、弱融着部22が一気に剥離して強融着部21まで剥離してしまうのをより確実に防止することができる。
【0056】
また、本実施形態では、漸増部221の厚さの漸増率が一定となっている。このため、弱融着部22では、外側に向って融着強度が一定の割合で低くなっている。すなわち、弱融着部22では、バッグ本体11の内側から外側にかけての融着強度の漸減率が一定となっている。これにより、弱融着部22のシート材10が剥離される際、安定的に剥離され、より確実に上記効果を発揮することができる。
【0057】
次に、
図3を用いて液体バッグ1の製造方法(本発明の液体バッグの製造方法)について説明する。
【0058】
図3は、本発明の液体バッグの製造方法を説明するための断面図であって、(a)が配置工程を示す図、(b)が熱融着工程を示す図である。
【0059】
液体バッグ1の製造方法は、[1]配置工程と、[2]熱融着工程と、[3]冷却工程と、を有している。
【0060】
以下、液体バッグ1の製造方法を説明するのに先立って、本製造方法に用いる熱融着装置3について説明する。
【0061】
図3(a)および(b)に示すように、熱融着装置3は、シート材10を挟持し合い、その挟持状態で熱融着を行う第1の型31および第2の型32を有している。
【0062】
第1の型31は、内側にヒーターが内蔵されたブロック状をなす金型で構成されている。第1の型31は、第2の型32の上方に配置され、上下動可能に構成されている。また、第1の型31の下面であるプレス面310は、第2の型32と対向する平坦な平坦面311と、平坦面311に対して、第2の型32から遠ざかる方向に傾斜した傾斜面312とを有している。平坦面311は、
図3(a)中左側に位置し、傾斜面312は、
図3(a)中右側に位置している。
【0063】
なお、傾斜面312の平坦面311に対する傾斜角度θと、傾斜面312の平坦面311と平行な方向(
図3中左右方向)の長さL1と、傾斜面312の平坦面311と直交する方向の長さL2とは、漸増部221の形状に合わせて適宜設定することができる。
【0064】
第2の型32は、シリコンを含むブロック体で構成されている。第2の型32の上面であるプレス面320は、平坦な平坦面321で構成されている。この平坦面321は、融着される以前のシート材10が配置される部分である。
【0065】
以下、この熱融着装置3を用いた液体バッグ1の製造方法について説明する。
[1]配置工程
まず、筒状に成形されたシート材10を第2の型32の平坦面321上に載置する。このとき、図示しない第2の型32の位置決め部(例えば突起等)によって、融着部2とする部分を、第1の型31と第2の型32との間に正確に配置することができる。
【0066】
また、図示はしないが、口部12をシート材10の間に配置しておくことにより、以下の工程を経て口部12がバッグ本体11に固定される。
【0067】
[2]熱融着工程
次に、
図3(a)および(b)に示すように、加熱された第1の型31を第2の型32上のシート材10に押しつける。これにより、シート材10の重なった部分同士が挟持された挟持状態で加熱され、融着部2が形成される。
【0068】
このとき、まず、
図3(a)に示すように、シート材10は、第1の型31の平坦面311によって押圧される部分が溶融または軟化する。そして、
図3(b)に示すように、シート材10の溶融または軟化した部分が、
図3(b)中矢印で示すように、第2の型32の平坦面321と第1の型31の傾斜面312との間の間隙Gに移動する。この移動した部分が後述する冷却工程を経て漸増部221となる。
【0069】
また、
図3(b)に示す状態でさらに第1の型31による加熱を続けると、上下に重ねられたシート材10の双方が溶融または軟化する。
【0070】
また、加熱温度は、180℃以上、240℃以下であるのが好ましく、190℃以上、230℃以下であるのがより好ましい。これにより、シート材10の構成材料や厚さにもよるが、シート材10を確実に溶融することができ、比較的短い時間で融着部2を形成することができる。
【0071】
第1の型31によりシート材10を加熱する時間、すなわち、第1の型31をシート材10に押しつける時間は、2.0秒以上、6.0秒以下であるのが好ましく、3.0秒以上、5.0秒以下であるのがより好ましい。これにより、シート材10を確実に溶融することができる。加熱時間が短すぎると、第1の型31の温度にもよるが、シート材10の溶融または軟化が不十分となる可能性が有る。一方、加熱時間が長すぎると、熱融着工程に費やす時間が比較的長くなり、生産性が低下する傾向を示す。
【0072】
また、
図3(b)に示すように、シート材10が挟持されるときの圧力Pは、0.05Pa以上、2.00Pa以下であるのが好ましく、0.10Pa以上、1.00Pa以下であるのがより好ましい。これにより、融着部2の融着強度を高めることができる。
【0073】
圧力が高すぎると、シート材10の厚さにもよるが、得られる融着部2の厚さが薄くなる傾向を示す。一方、圧力が弱すぎると、融着部2の融着強度が不十分になる可能性が有る。
【0074】
[3]冷却工程
次に、シート材10の溶融または軟化した状態の部分を冷却する。本実施形態では、常温の金属板を当接させることにより冷却を行う。
【0075】
本工程における冷却温度は、50℃以上、100℃以下であるのが好ましく、60℃以上、90℃以下であるのがより好ましい。これにより、融着部2の融着強度を十分に確保することができる。
【0076】
本工程における冷却時間は、3.0秒以上、7.0秒以下であるのが好ましく、4.0秒以上、6.0秒以下であるのがより好ましい。融着部2の冷却を確実に行うことができる。
【0077】
なお、本冷却工程では、図示しない冷却装置によって冷風を吹き付けて冷却を行ってもよく、自然冷却により冷却を行ってもよい。
【0078】
そして、液体100を収納部113に供給するとともに液体101を収納部114に供給し、その供給口を融着する。
【0079】
以上のような工程[1]〜[3]を経て得られた液体バッグ1では、前述したような漸増部221が形成される。また、漸増部221では、融着部2における漸増部221以外の部分よりも厚さが厚い。このため、熱融着工程において伝達される熱量が比較的小さい。よって、漸増部221が形成された部分が比較的融着強度が低い弱融着部22となり、その他の部分が弱融着部22よりも融着強度が高い強融着部21となる。
【0080】
また、漸増部221の厚さの増減に伴って弱融着部22の融着強度も変化する。漸増部221のうち、厚さが比較的薄い部分では、弱融着部22の中でも融着強度が比較的高いものとなり、厚さが比較的厚い部分では、弱融着部22の中でも融着強度が比較的弱くなる。このため、収納部111側の融着強度が比較的弱く、収納部111と反対側にいくに従って融着強度が徐々に高くなる弱融着部22を得ることができる。
【0081】
このような液体バッグ1によれば、前述したように、融着部2全体が破断または剥離してしまうのを防止または抑制することができ、収納部111の液体100が外部に漏れるのを防止することができる。
【0082】
以上、本発明の液体バッグおよび液体バッグの製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものまたは任意の工程に置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
【0083】
なお、前記実施形態では、バッグ本体11は、腹膜透析液を収納するものとして説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、経口栄養剤等が収納されるものであってもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.漸増部が形成された融着部を有する液体バッグの検討
1−1.液体バッグの形成
[実施例1]
[1]まず、厚さが300μmのポリプロピレンで構成されたシート材を筒状に成形したものを用意した。
【0085】
[2]次に、
図3(a)および(b)に示す熱融着装置3を用いて、筒状の端部を熱融着により融着し、その後冷却を行うことにより、実施例1の液体バッグを得た。
【0086】
また、第1の型31として、傾斜面312の長さL1が3.0mm、傾斜面の長さL2が0.5mmのものを用いた。得られた液体バッグの融着部における漸増部は、その最大厚さと最小厚さとの差をaとし、漸増部のシート材の面方向の長さ(バッグ本体11の内側から外側にかけての長さ)をbとしたとき、比a/bが0.17のものであった(
図2(a)参照)。また、強融着部と弱融着部との長さ(帯状の融着部の幅方向の長さ)の比は、3:1であった。
【0087】
なお、融着する際の加熱温度を238.0℃、加熱時間および加圧時間を3.5秒とし、冷却温度を20℃、冷却時間を3.00秒として実施例1の液体バッグを得た。
【0088】
[実施例2]
前記工程[2]において、第1の型31として、傾斜面312の長さL1が3.0mm、傾斜面の長さL2が0.2mmのものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2の液体バッグを得た。なお、実施例2の液体バッグでは、比a/bが0.07であった。
【0089】
[実施例3]
前記工程[2]において、第1の型31として、傾斜面312の長さL1が3.0mm、傾斜面の長さL2が0.7mmのものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例3の液体バッグを得た。なお、実施例3の液体バッグでは、比a/bが0.23であった。
【0090】
[比較例1]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.漸増部が形成された融着部を有する液体バッグの検討
1−1.液体バッグの形成
[1]まず、厚さが300μmのポリプロピレンで構成されたシート材を筒状に成形したものを用意した。
【0091】
[2]次に、平行な挟持面を有する上側金型および下側金型を用いて筒状の両端部に、幅が3.0mmの融着部を形成した。
【0092】
なお、融着する際の加熱温度を238.0℃、加熱時間および加圧時間を3.5秒とし、冷却温度を20℃、冷却時間を3.00秒として比較例1の液体バッグを得た。
そして、各実施例および比較例の液体バッグを、以下の方法で評価した。
【0093】
<引張試験>
まず、
図4に示すように、融着部2を含むシート材10を10mm角に切り出し、2枚のシート材10が融着された試験片を作成した。この試験片を、オートグラフ精密万能試験機(島津製作所社製、オートクラブ AGS−J)を用い、25Nの引張力で10秒間、各シート材の両端部を反対方向に引張る180°引張試験を行った。この際、実施例1〜3の液体バッグに関しては、弱融着部22側から引張った。そして、剥離した部分の長さ、すなわち、試験片において剥離した端部から融着している部分までの最大長さを測定した。
【0094】
<落下試験>
図5に示すように、中央部に仕切り部201を有し、2つの収納空間Sを有する箱体200に、各収納空間Sにそれぞれ2つずつ、計4つの液体バッグを折りたたんだ状態で収納し、封止した。各収納空間Sでは、液体バッグ1が2つずつ重ねられて収納されている。そして、この状態で、液体バッグ1の厚さ方向が鉛直方向となる向きで
図5中矢印方向に箱体を落下させる。
【0095】
このような4つの液体バッグ1が収納された箱体200を5つ用意した。そして、計20個の液体バッグ1のうち、収納空間Sにおいて、鉛直方向下側、すなわち、上側に他の液体バッグが積まれている液体バッグ計5個に関して液漏れが生じたか否かを検証し、液漏れが生じた数を測定した。
【0096】
なお、液体バッグの温度を5℃、落下させる高さを80cmとして、各箱体200ごとに10回落下させ、融着部2の破断に起因する液漏れが生じた液体バッグの個数を測定した。
【0097】
以上のようにして得られた各実施例および比較例の液体バッグにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示したように、各実施例の液体バッグでは、比較例の液体バッグよりも、融着部が破断または剥離することによる液漏れが生じにくくなっている。また、引張試験において、剥離した長さが長いほど、衝撃が加わった際の応力集中を緩和することができる。
【0100】
なお、本発明では、融着部が漸増部を有してさえいれば、現存する液体バッグよりも優れたのもが得られるということは確認されている。
【0101】
また、上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。