(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710109
(24)【登録日】2020年5月28日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
H01H73/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-118217(P2016-118217)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-224453(P2017-224453A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】品田 小有里
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−060447(JP,U)
【文献】
特開平07−240140(JP,A)
【文献】
特開2011−134599(JP,A)
【文献】
実開平04−123024(JP,U)
【文献】
特開2011−154885(JP,A)
【文献】
米国特許第04945327(US,A)
【文献】
特開2009−266480(JP,A)
【文献】
実開昭63−029840(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの背面側に電源側の端子部、前面側に負荷側の端子部、そして上面に電路をオン/オフ操作する操作ハンドルを備え、前記電源側及び前記負荷側の端子部に端子カバーを装着することで端子部が閉塞されると共に、装着した前記端子カバーには前記ハウジングからの取り外し操作を禁止する封印部を備えた回路遮断器であって、
前記電源側の端子部及び負荷側の端子部は、左右方向に隣接配置された複数の端子を有して、隣接する端子間には前記ハウジングに一体形成された隔壁が立設されて成る一方、
前記端子カバーは、端子部の上方を覆う水平板と、前記ハウジングの端部で垂下する垂下片とを有して略L字状を成し、
前記封印部は、前記隔壁の位置で前記水平板と前記垂下片とに跨がって貫通形成された傾斜孔と、前記傾斜孔に連続するよう前記隔壁に形成された連通孔とを有して成り、
前記傾斜孔と前記連通孔の双方に封印線を連続挿通して前記端子部を封印することを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記隔壁は、上方に突出させた突起部を有して、当該突起部の下部に前記連通孔が形成され、
前記端子カバーの前記突起部に対応する部位には、前記突起部を露出させる開口部が形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記電源側の端子部及び負荷側の端子部は、少なくとも3端子が左右方向に隣接配置されて前記隔壁を少なくとも2つ有し、
前記封印部は1つの隔壁に設けられ、他の1つの隔壁には、装着した前記端子カバーを固定する係止部を具備して成ることを特徴とする請求項1又は2記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記係止部は、内部に前記端子カバーを係止するための係止段部を備えた凹部であると共に、
前記端子カバーの水平板には、前記凹部に挿入した際に前記係止段部に係止する突起を備えた凸部が設けられ、
前記凸部がU字状に折り曲げ形成された弾性体であり、
前記弾性体の先端は、前記水平板から上方に露出して配置され、当該先端が前記係止部の係止解除操作を行う操作片であることを特徴とする請求項3記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路遮断器に関し、特に回路遮断器の端子を覆う端子カバーの取り外しを不可とするために設けられた封印構造に関する。
【背景技術】
【0002】
分電盤内に組み付けられた回路遮断器は、端子が端子カバーで覆われて、端子金具が露出しないよう構成されている。この端子カバーは感電の防止や塵の進入防止のために取り付けられるが、端子カバーに封印部を設けて取り外せないよう構成し、不正な回路操作が出来ないようにしたものがある。
例えば特許文献1では、回路遮断器本体に封印線を挿通する孔を備えた突起を設ける一方、端子カバーにも封印線を挿通する孔を備えた突起を設け、端子カバー装着時にそれら突起同士が密着するよう構成した封印部を形成し、封印線を双方の孔に挿通して締め付けることで封印が成された。
一方で、分電盤は充電部を保護すると共に塵等から機器を保護するために、充電部及び組み付けた機器の前面全体を配線覆いで覆う構成が採用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−315707号公報
【特許文献2】特開2001−145216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、回路遮断器を組み付けた分電盤前面は配線覆いで覆われるが、封印部を備えた回路遮断器が組み付けられている場合、封印部は前方(操作ハンドルを配置した方向)に突出した部位を有しているため、配線覆いで覆った際に封印部に当接することで撓みが発生したり、配線覆いから受けるストレスで封印部が破損する場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、回路遮断器ハウジングの操作ハンドルを配置した方向に大きな突起が発生しない封印構造を備えた回路遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ハウジングの背面側に電源側の端子部、前面側に負荷側の端子部、そして上面に電路をオン/オフ操作する操作ハンドルを備え、電源側及び負荷側の端子部に端子カバーを装着することで端子部が閉塞されると共に、装着した端子カバーにはハウジングからの取り外し操作を禁止する封印部を備えた回路遮断器であって、電源側の端子部及び負荷側の端子部は、左右方向に隣接配置された複数の端子を有して、隣接する端子間にはハウジングに一体形成された隔壁が立設されて成る一方、端子カバーは、端子部の上方を覆う水平板と、ハウジングの端部で垂下する垂下片とを有して略L字状を成し、封印部は、隔壁の位置で水平板
と垂下片
とに跨がって貫通形成された傾斜孔と、傾斜孔に連続するよう隔壁に形成された連通孔とを有して成り、傾斜孔と連通孔の双方に封印線を連続挿通して端子部を封印することを特徴とする。
この構成によれば、封印部を端子カバーに形成した傾斜孔に封印線を挿通する構成としたので、端子カバーから上方に突出する部位が無く、回路遮断器を組み付けた分電盤の前面を配線覆いで覆った際に、封印部により配線覆いが歪んだり撓みが発生するようなここがない。
また、封印線を挿通する孔は傾斜孔であるため、回路遮断器の上方から視認し易く封印操作しやすい。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、隔壁は、上方に突出させた突起部を有して、当該突起部の下部に連通孔が形成され、端子カバーの突起部に対応する部位には、突起部を露出させる開口部が形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、連通孔が隔壁の端部に形成されても、突起部を有することで隔壁端部を堅牢にでき、端子部を確実に封印できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、電源側の端子部及び負荷側の端子部は、少なくとも3端子が左右方向に隣接配置されて隔壁を少なくとも2つ有し、
封印部は1つの隔壁に設けられ、他の1つの隔壁には、装着した端子カバーを固定する係止部を具備して成ることを特徴とする。
この構成によれば、端子カバーはハウジングに装着した状態で固定できるため、固定するためのネジ止め等の操作が必要ないし、ハウジングに固定した状態で封印操作でき、装着操作、封印操作が容易である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、係止部は、内部に端子カバーを係止するための係止段部を備えた凹部であると共に、端子カバーの水平板には、凹部に挿入した際に係止段部に係止する突起を備えた凸部が設けられ、凸部がU字状に折り曲げ形成された弾性体であり、弾性体の先端は、水平板から上方に露出して配置され、当該先端が係止部の係止解除操作を行う操作片であることを特徴とする。
この構成によれば、簡易な操作で端子カバーの係止操作、及び係止解除操作ができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、封印部を端子カバーに形成した傾斜孔に封印線を挿通する構成としたので、端子カバーから上方に突出する部位が無く、回路遮断器を組み付けた分電盤の前面を配線覆いで覆った際に、封印部により配線覆いが歪んだり撓みが発生するようなここがない。
また、封印線を挿通する孔は傾斜孔であるため、回路遮断器の上方から視認し易く封印操作しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る回路遮断器の一例を示す斜視図である。
【
図4】端子カバーを示し、(a)は前面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
【
図5】A部拡大図であり、(a)は封印した状態、(b)は封印していない状態を示している。
【
図6】B−B線断面の一部を示し、(a)は封印した状態、(b)は封印していない状態を示している。
【
図8】2端子構造の回路遮断器に適用する端子カバーの背面側から見た斜視図である。
【
図9】
図8の端子カバーを回路遮断器に装着した状態の係止部付近の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1,2は本発明に係る回路遮断器の一例を示し、
図1は斜視図、
図2は平面図であり3端子構造の回路遮断器を示している。図において、1は接続された電路を開閉するための操作ハンドル、2は電源側の端子部、3は負荷側の端子部、4は端子カバーであり、双方の端子部2,3は端子カバー4で閉塞された状態を示している。尚、負荷側の端子部3の端子カバー4は、封印線Sで封印された状態を示している。
【0013】
操作ハンドル1は回路遮断器のハウジング10の上面略中央に配置され、電源側の端子部2はハウジング10の背面側に設けられ、負荷側の端子部3は前面側に設けられている。双方の端子部2,3は3個のネジ式の端子5を左右方向に列設して構成されている。
そして、6は端子カバー4を封印線Sにより封印する封印部、7は端子カバー4をハウジング10に係止させる係止部である。
【0014】
図3はハウジング10上部を構成する蓋体10a単体の斜視図を示している。蓋体10aの電源側の端子部2及び負荷側の端子部3に対応する部位の構造は同一の形状であり、中央に設けられた操作ハンドル挿通孔1aを中心に前後は対称に形成されている。そのため、装着される端子カバー4は、双方の端子部2,3で同一のものが使用可能となっている。尚、
図3では手前に電源側の端子部2を配置している。
【0015】
そして、8は隔壁であり、隣接する端子5の間に起立するように配置され、隣接する端子5は互いに隔離される。ここでは端子部2,3が3端子を有するため、隔壁8はそれぞれ一対設けられている。この隔壁8も、双方の端子部2,3は互いに対称に形成され、更に封印部6の一方を構成するハウジング側封印部8a、及び係止部7の一方を構成する係止凹部8bも同一の形状で隔壁8を利用して形成されている。
また、端子部2,3の左右側部に配置されて端子部2,3の左右を閉塞する閉塞壁21を有し、ハウジング10の側面を形成している。隔壁8はこの左右の閉塞壁21の間に配置されている。
【0016】
図4は端子カバー4の斜視図であり、(a)は前面側からみた状態、(b)は背面側から見た状態を示しており、端子カバー4は
図4に示すように端子部2,3の上方を覆うことで端子5の上方を閉塞する水平板41と、ハウジング10前面或いは背面に垂下するように配置される垂下片42とを有し、略L字状に形成され、封印部6の他方を構成するカバー側封印部4aを有している。尚、41aは検電プローブを差し込むための窓、4bは係止部7の他方を構成する係止凸部である。
【0017】
以下、封印部6を具体的に説明する。尚、上述したように電源側と負荷側の隔壁8の構造は同一であるため、
図3に示す電源側の隔壁8に形成された封印部6の構造を説明する。ハウジング側封印部8aは、
図3に示すように隔壁8の上面から僅かに上方に突出した起立片(突起部)22を有し、この起立片22の背部(図示奥側である操作ハンドル1側)には凹部23が形成され、この凹部23から図示前方(ハウジング10の背面側)に掛けて起立片22を貫通する孔(連通孔)22aが図示前方に向けて下り傾斜で形成されている。
【0018】
一方、カバー側封印部4aは
図4に示すように、蓋体10aに形成された起立片22を露出させるために、水平板41から垂下片42に掛けて切り欠いた開口部43、封印線Sを挿通するための傾斜孔44により構成されている。傾斜孔44は、開口部43の背部となる水平板41から、垂下片42に掛けて傾斜形成されている。但し、開口部43が形成されている垂下片42側は溝44aとして形成され、傾斜孔44全体は直線状に形成されている。
【0019】
図5は封印部6を拡大したA部拡大図であり、(a)は
図1の状態である封印された状態、(b)は封印してない状態を示している。また
図6はB−B線断面図であり、(a)は封印された状態、(b)は封印していない状態をそれぞれ示している。
図5,6に示すように、傾斜孔44に封印線Sを挿入することで、ハウジング10と端子カバー4の双方に封印線Sが挿通され互いが連結されて封印される。
尚、蓋体10aに形成された起立片22は、先端が隔壁8の上部から突出しているが、
図6に示すように端子カバー4を装着した状態では端子カバー4の水平板41の上面と一致し、端子部2,3の上面は平坦となる。
【0020】
ここで、
図6(a)に示すTは配線覆いを示している。配線覆いTは、図示しない分電盤内の銅バー等の主電路が配設された充電部や、組み付けられた回路遮断器の端子部2,3の上部(分電盤の前面)を一括して覆う板体であり、回路遮断器に装着された端子カバー4の水平板41の近傍に平行に配置される。
一方、封印された回路遮断器は、封印線Sが水平板41から上方に突出して配置されるが、
図6(a)に示すように、端子カバー4の水平板41から上方に突出するのは封印線Sのみであるため僅かであり、配線覆いTの組み付けに支障をきたすことがない。
【0021】
このように、封印部6を、端子カバー4に形成した傾斜孔44に封印線Sを挿通する構成としたので、端子カバー4から上方に突出する部位が無く、回路遮断器を組み付けた分電盤の前面を配線覆いTで覆った際に、封印部6により配線覆いTが歪んだり撓みが発生するようなことがない。
また、封印線Sを挿通する部位は端子カバー4の水平板41に形成した傾斜孔44であるため、回路遮断器の上方から視認し易く封印操作しやすい。
更に、隔壁8の端部に連通孔22aを形成しても、起立片22を形成して連通孔22a上部に厚みを設けているため、隔壁端部を堅牢にでき、端子部2,3を確実に封印できる。
尚、
図1では、負荷側の端子部2の端子カバー4のみ封印し、電源側の端子部2は封印していないが、電源側の端子部2も同様に封印できる。
【0022】
次に係止部7を説明する。
図7はC−C断面図であり、係止部7の断面を示している。係止凹部8bは封印部6のない他方の隔壁8に形成され、
図7に示すように矩形の縦穴状に形成されて、その内壁に端子カバー4に形成された係止凸部4bを係止する係止段部25が設けられている。
一方、端子カバー4に形成された係止凸部4bは、
図4(b)に示すように下方に延設してU字状に折り曲げ上方に先端が向けられた弾性片であり、係止凹部8bに設けられた係止段部25に係止する係止突起46が設けられている。また、上方に向けられた先端部は係止解除操作する操作片47を構成している。
端子カバー4を端子部2,3の上方から装着操作することで、係止凹部8bに係止凸部4bが挿入され、係止段部25に係止突起46が係止して端子カバー4は保持され固定される。
【0023】
このように、端子カバー4はハウジング10に装着した状態で固定できるため、固定するためのネジ止め等の操作が必要ないし、ハウジング10に固定した状態で封印操作でき、装着操作、封印操作が容易である。また、簡易な操作で端子カバー4の係止操作、及び係止解除操作ができる。
尚、上記実施形態では3端子から成る端子部を備えた回路遮断器を説明したが、4端子構造の回路遮断器に対しても、同様に適用できる。
【0024】
一方、2端子構造の回路遮断器の場合は、上記封印構造(封印部6)に関しては無理なく適用できるが、上記係止部7を適用する隔壁8は無くなるため、例えば
図8,9に示すような係止構造とすることで端子カバーを固定できる。
図8は2端子構造の回路遮断器に適用する端子カバー4の背面側から見た斜視図、
図9はその端子カバー4を回路遮断器に装着した状態の係止部付近の縦断面説明図を示し、カバー封印部4aに隣接する部位に、隔壁段部8c(
図3に示す)に係止する爪状の突起片48を設けて係止部7を構成している。尚、上記
図4に示す端子カバー4と共通する構成要素には同一の符号を付与してある。
【符号の説明】
【0025】
1・・操作ハンドル、2・・電源側の端子部、3・・負荷側の端子部、4・・端子カバー、4a・・カバー側封印部、4b・・係止凸部(凸部)、5・端子、6・・封印部、7・・係止部、8・・隔壁、8a・・ハウジング側封印部、8b・・係止凹部(凹部)、8c・・隔壁段部、10・・ハウジング、10a・・蓋体、22・・起立片(突起部)、22a・・連通孔、25・・係止段部、41・・水平板、42・・垂下片、43・・開口部、44・・傾斜孔、46・・係止突起(突起)、47・・操作片、48・・突起片、S・・封止線、T・・配線覆い。