(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
グミキャンディは、ゲル化剤を用いたゼリー菓子の一種である。
ゲル化剤は、寒天やゼラチンのように温度によって固形化と流動化が変化する可逆性のものと、ペクチンのように酸やカルシウムで凝固すると熱を加えても流動化しない不可逆性のものがある。本発明では、いずれも用いることができる。
ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、寒天、ペクチン、ジェランガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カラヤガム、カードラン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、食感の点から、ゼラチン、ペクチン、アラビアガムが好ましく、ゼラチンがより好ましい。
ゼラチンは、例えば、牛、豚、鶏、魚等の皮、骨、腱等を原料としたゼラチンが挙げられる。ゼラチンは、特に限定されず、酸又はアルカリで処理して得られるもの等を使用できる。
【0010】
ゲル化剤のゼリー強度は、弾力ある食感を得る観点から、好ましくは50〜300g、より好ましくは150〜250gである。ゼリー強度は、JIS K−6503(2001)に準拠して測定することができる。
【0011】
ゲル化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のグミキャンディ中、ゲル化剤の含有量は、噛み応えある食感を得る観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。また、製造性の点から、好ましくは25質量%以下である。
特に、ゲル化剤としてゼラチンを用いる場合、グミキャンディ中のゼラチンの含有量は、同様の点から、好ましくは5〜25質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
【0012】
本発明のグミキャンディはクロロゲン酸類を含有する。
本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3−フェルロイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸及び5−フェルロイルキナ酸のモノフェルロイルキナ酸を併せての総称である。本発明においては当該6種のうち少なくとも1種を含有すればよい。
【0013】
クロロゲン酸類をグミキャンディに含有させるには、例えば、グミキャンディにクロロゲン酸類を含有する原料を用いればよい。その原料の種類は特に限定されず、例えば、コーヒー豆、リンゴ果実、ヒマワリ種子、シモン葉、マツ球果、マツ種子殻、サトウキビ、南天の葉、ゴボウ、ナス果皮、ウメ果実、フキタンポポ、ブドウ果皮、ブドウ種子等の植物を挙げることができる。
【0014】
本発明においては、クロロゲン酸類として、コーヒー豆の抽出物に由来するものを使用することが好ましい。
抽出に使用するコーヒー豆は、生コーヒー豆でも、焙煎コーヒー豆でも構わないが、クロロゲン酸類含量等の観点から、生コーヒー豆及び浅焙煎コーヒー豆から選ばれる少なくとも1種が好ましい。浅焙煎コーヒー豆のL値は、 クロロゲン酸類含量等の観点から、27以上が好ましく、29以上がより好ましく、35以上が更に好ましく、また、風味の観点から、62未満が好ましく、60以下がより好ましく、55以下が更に好ましい。浅焙煎コーヒー豆のL値の範囲としては、好ましくは27以上62未満、より好ましくは29〜60、更に好ましくは35〜55である。ここで、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を粉砕後に色差計(例えば、スペクトロフォトメーター SE2000、(株)日本電色社製)で測定したものである。
【0015】
コーヒー豆の豆種としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種、アラブスタ種等を挙げることができる。また、コーヒー豆の産地は特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジャロ、マンデリン、ブルーマウンテン、グアテマラ、ベトナム等が挙げられる。コーヒー豆は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
抽出方法及び抽出条件は特に限定されないが、例えば、特開昭58−138347号公報、特開昭59−51763号公報、特開昭62−111671号公報、特開平5−236918号公報等に記載の方法を採用することができる。また、精製方法は特に限定されず、公知の方法を採用することが可能であるが、例えば、イオンクロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー等を1種又は2種以上組み合わせて行うことができる。
【0016】
本発明のグミキャンディ中、クロロゲン酸類の含有量は、0.25〜0.75質量%である。グミキャンディ中のクロロゲン酸類の含有量は、グミキャンディのべとつきを抑える点から、好ましくは0.3〜0.65質量%である。また、クロロゲン酸類の量が増えるとグミキャンディの硬さ(N/m
2)の値が小さく、つまりグミキャンディがより柔らかくソフトな食感になる傾向が見られたため、べとつきを抑えながら、より噛み応えのある食感のグミキャンディとする場合は、好ましくは0.35〜0.5である。
本明細書においてクロロゲン酸類の含有量は、特段断らない限り上記6種の合計量に基づいて定義される。また、クロロゲン酸類の分析は、後掲の実施例に記載の方法に従うものとする。
【0017】
本発明において、グミキャンディ中のゲル化剤の含有量に対するクロロゲン酸類の含有量の比(含有質量比)[クロロゲン酸類の含有量/ゲル化剤の含有量]は、グミキャンディのべとつきを抑える点、食感の点から、好ましくは0.03〜0.06であり、より好ましくは0.04〜0.05である。
【0018】
本発明のグミキャンディは、水分活性を低下させて保存性を向上させる点、風味の点から、糖類を含有することが好ましい。糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等のニ糖類が挙げられる。糖類は無水物又は水和物であってもよい。また、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖水あめ等を使用することもできる。なかでも、風味の点から、ショ糖、ブドウ糖、果糖が好ましく、ショ糖がより好ましい。ショ糖は、清浄精製した白色の砂糖である白糖が好ましい。
糖類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のグミキャンディ中、糖類の含有量は、風味の点から、40〜50質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明のグミキャンディは、上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲において、グミキャンディに配合し得る他の原料成分を含有してもよい。当該原料成分としては、例えば、上記糖類以外の甘味料(例えば、オリゴ糖類、糖アルコール、非糖質天然甘味料、合成甘味料等)、酸味料(例えば、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸及びこれらのアルカリ金属塩)、野菜汁・果汁、乳成分、安定剤、香料、着色料、酸化防止剤、保存料等が挙げられる。
【0020】
グミキャンディの水分活性値(Aw、20℃)は、常温における保存性を考慮して、好ましくは0.5〜0.7であり、より好ましくは0.6〜0.7である。
【0021】
後掲の実施例に示すとおり、本発明のグミキャンディは、所定量のクロロゲン酸類を含むことにより、噛み応えのある食感を有しながらも、20℃での付着性が低く、表面のべたつきが少ない。従って、クロロゲン酸類はグミキャンディのべたつき防止に有用であり、グミキャンディのべたつき防止のために使用することができる。
本発明のグミキャンディは、後掲の実施例に記載の方法により測定される付着(N/m
2)の値が好ましくは500(N/m
2)以下、より好ましくは400(N/m
2)以下である。この値が小さい程、グミキャンディの表面同士が接着し難いことを示す。
【0022】
本発明のグミキャンディは、いずれの方法で製造してもよい。例えば、糖類を煮詰め、これにゲル化剤を混合し、さらにクロロゲン酸類を混合して冷却、固形化する工程等を経て製造することができる。
【実施例】
【0023】
〔クロロゲン酸類の測定〕
HPLCを使用した。HPLCでは、サンプルを熱水溶解し、その抽出物をメンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A、孔径0.45μm、ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
(分析機器)
装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)
ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)
オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)
カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))
UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)
(分析条件)
サンプル注入量:10μL
流量:1.0mL/min
UV−VIS検出器設定波長:325nm
カラムオーブン設定温度:35℃
溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDPO)、10mM酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
溶離液B:アセトニトリル
(濃度勾配条件)
時間(分) A液(%(v/v)) B液(%(v/v))
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
(クロロゲン酸類の保持時間(単位:分))
モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点
モノフェルロイルキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点
ここで求めた6種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、クロロゲン酸類含量(g/100g)を求めた。
【0024】
〔原料〕
次の原料を用いた。
ゼラチン:APS−250(ニッピ製)
アラビアガム:アラビアガム(日本粉末薬品製)
ペクチン:GENU pectin type AS confectionery−J、CP Kelco Japan製
グラニュ糖:グラニュ糖SGS(日新製糖製)
果汁(イチゴ):あまおう苺ピューレ(丸菱製)
クエン酸:クエン酸(無水)(磐田化学製)
香料:ストロベリーフレーバーM25896(高砂香料製)
キシリトール:キシリトール(物産フードサイエンス製)
グリセリン:精製グリセリン(イエナ商事製)
緑茶抽出物:サンフェノンBG(太陽化学製)、カテキン含有量75質量%
【0025】
〔生コーヒー豆抽出物の調製〕
ロブスタ種のコーヒー生豆400gを2400Lの熱水にて20分間攪拌・抽出し、得られた抽出液をスプレードライにて乾燥した。これを生コーヒー豆抽出物とした。
生コーヒー豆抽出物中のクロロゲン酸類の含有量は38.27質量%(6種)であった。
【0026】
実施例1〜7及び比較例1〜6
〔グミキャンディの調製〕
表2の処方表に従い、グラニュ糖に水を加えて加温溶解した後、果汁を加え、水分量が約30質量%になるまで煮詰めた。次いで、当該糖液に予め膨潤させたゲル化剤を混合し、生コーヒー豆抽出物とその他原料成分を加え混合した。得られたグミキャンディ溶液を、一粒当たりの重量が3.0gになるようにスターチモールドに充填し、放冷してグミキャンディを得た。グミキャンディの組成を表2に示す。
【0027】
比較例7
〔グミキャンディの調製〕
特開2007−89579号公報の方法に準じ、ゼラチンに水を加え70℃にて撹拌しながら、緑茶抽出物を徐々に投入し、30分間撹拌混合した。その後、キシリトールを加え、更にグリセリンを加えた後、30分間混合し、混合溶液を一粒当たりの重量が3.0gになるようにスターチモールドに充填し、放冷してグミキャンディを得た。グミキャンディの組成を表2に示す。
各実施例と比較例のグミキャンディは、20℃で2日間静置した後、次の評価を行った。
【0028】
〔物性評価〕
(1)水分活性(Aw)
分析機器は、水分活性計 Pawkit(デカゴン社製)を使用した。
予め20℃にて保持したグミキャンディ6.0gを測定用容器に入れ、密封した後、20℃環境下にて定常状態にある分析サンプルの水分活性値をセンサーにて測定した。
【0029】
(2)硬さ、噛み応え、付着
TENSIPRESSER(TAKETOMO ELECTRIC製)を用いて一粒のグミキャンディを圧縮させることにより硬さ(N/m
2)、噛み応え(N/m
2・m)、付着(N/m
2)を求めた。分析条件は、次の通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
〔官能評価〕
グミキャンディの官能評価は、一粒3gを手でつまんだときの表面のべとつきを以下の基準に従って、専門パネル5名にて評価を行い、協議をもって評点とした。
結果を表2に示す。
(べとつき)
5:全くべたつかない
4:殆どべたつかない
3:僅かにべたつくが問題のない範囲
2:べたつく
1:かなりべたつく
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、所定量のクロロゲン酸類を含む実施例1〜7のグミキャンディは、付着性が低く、表面のべたつきが少なかった。グミキャンディの水分活性値、硬さ、噛み応えは概ね一般的なグミキャンディの値であった。
これに対して、比較例1〜6のグミキャンディはべたつきが感じられた。特にカテキンを多く含む比較例7のグミキャンディは付着性が高くかなりべたつくものであった。
また、クロロゲン酸類の量が本発明の規定よりも多いと柔らかい食感になった。