特許第6710341号(P6710341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710341
(24)【登録日】2020年5月28日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】サイド堰移送設備
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   B22D11/06 330B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-534735(P2019-534735)
(86)(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公表番号】特表2020-501915(P2020-501915A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】CN2016112011
(87)【国際公開番号】WO2018119553
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512171021
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BAOSHAN IRON & STEEL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡安 晋平
(72)【発明者】
【氏名】冨野 貴義
(72)【発明者】
【氏名】堀井 健治
(72)【発明者】
【氏名】方 園
(72)【発明者】
【氏名】崔 健
(72)【発明者】
【氏名】于 艶
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104972081(CN,A)
【文献】 特開平05−329583(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103100674(CN,A)
【文献】 中国実用新案第201543794(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造装置の湯溜り部を構成する一対の冷却ロールの端面に接して用いるサイド堰を受け入れて加熱する一対のサイド堰予熱装置と、
前記冷却ロール両端面それぞれに対面して配置され、前記サイド堰を着脱可能にすると共に前記サイド堰を前記冷却ロール端面に押し付ける一対のサイド堰押付装置と
を備えたサイド堰移送設備であって、
ベースと、
前記ベースより下方に、前記湯溜り部、前記冷却ロール、前記サイド堰押付装置、前記サイド堰予熱装置をそれぞれ設けると共に、
前記ベース上に設けられ、上面視して、前記冷却ロール両端面よりも外側にそれぞれ前記サイド堰押付装置から前記サイド堰予熱装置まで直線に延びる、一対のレールと、
それぞれの前記レール上を走行し、前記サイド堰を着脱可能に支持すると共に前記サイド堰を前記サイド堰予熱装置と前記サイド堰押付装置との間で移送する一対のサイド堰移送装置と、
前記湯溜り部の上方の前記ベースに開けられた第一開口部と、
前記サイド堰を前記サイド堰予熱装置から前記サイド堰移送装置への引き渡す経路となる、前記レールから前記冷却ロール側に所定距離位置離れた位置で前記ベースに開けられた一対の第二開口部と、
前記サイド堰を前記サイド堰移送装置から前記サイド堰押付装置に引き渡す経路となる、前記レールから前記冷却ロール側に前記所定距離位置離れた位置で前記ベースに開けられた一対の第三開口部と
を備えることを特徴とするサイド堰移送設備。
【請求項2】
前記第三開口部は、前記第一開口部と前記レールとの間に設けられ、且つ前記第一開口部に沿って前記冷却ロールの軸方向に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のサイド堰移送設備。
【請求項3】
前記一対の第二開口部と前記一対の第三開口部とには、前記ベースの下面側で水平移動して開閉する一対のスライド板がそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサイド堰移送設備。
【請求項4】
それぞれの前記レールは、二本によって構成され、
二本の前記レールの間には、前記レールと平行に延びるラックを備え、
前記サイド堰移動装置は、保持装置と、往復移動装置と、昇降移動装置とを有し、
前記保持装置は、前記サイド堰を一時的に挟む機構を有し、
前記往復移動装置は、前記ラックと噛み合って前記ラックの延び方向に沿って移動可能なピニオンと、前記ピニオンを駆動するモータとを有し、
前記昇降移動装置は、前記レールから冷却ロール側に前記所定距離位置離れたところで前記保持装置を上下に移動させる機構を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサイド堰移送設備。
【請求項5】
前記保持装置は、前記昇降移動装置によって、前記第二開口部又は前記第三開口部を貫通可能に昇降されるものである
ことを特徴とする請求項4に記載のサイド堰移送設備

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイド堰移送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
双ロール式連続鋳造装置は、一対の冷却ロールを同じ高さで平行に対向配置すると共に、当該冷却ロールの軸方向両端側にサイド堰をそれぞれ配置し、当該冷却ロールを回転させながら当該冷却ロールと上記サイド堰とで包囲される空間(湯溜まり)に溶湯を注入することにより、当該冷却ロールの間から下方へ向けて帯状の鋳片を製造することができるようになっている。
【0003】
このような双ロール式連続鋳造装置においては、鋳造開始前にサイド堰を900〜1300℃ぐらいに予熱しておく必要があるため、例えば、下記特許文献1では、サイド堰を加熱器内で約1200℃に予熱した後、当該サイド堰をクランプ装置で保持して向きを変えるように旋回してから台車で走行移動して冷却ロールの両端側に配置するようにしたサイド堰交換装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−329583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されている双ロール式連続鋳造装置のサイド堰交換装置においては、高温に予熱したサイド堰をクランプ装置で保持して向きを変えるように旋回してから台車で走行移動して冷却ロールの両端側に移動させている。
【0006】
このような連続鋳造装置の冷却ロールのある床上では、操業中、複数の作業員が頻繁に点検や作業をするため、作業スペースや、安全性の確保が必要である。作業員の安全を確保するには、湯溜り部、サイド堰予熱装置、サイド堰押付装置といった主要機器のメンテナンスや点検のために利用できる作業領域が一見してわかることが望ましい。また、その作業領域には主要な機器がなく、広いことが望まれる。
【0007】
ところが、前記特許文献1は、回動体と共にその腕であるフレームが大きく旋回するため、その移動前にその移動範囲が一見してわかるものではないので、作業員にとって安全な作業範囲を判断し難くなっている。また、仮に、上部から吊るして物を移送する機器を採用することを考えた場合も、フロア上で作業する作業員には、その物の移動範囲がわかり難いため、作業員にとって安全な作業範囲を判断し難くなってしまう。
【0008】
また、前記特許文献1に記載のように、サイド堰を移動させる際に、サイド堰の向きを変えることは、直線的に移動させるよりも機器が複雑となるだけでなく、移動時間もかかてしまう。作業に利用できる領域を広くしたとしても、サイド堰の移送に時間がかかることは、加温したサイド堰が冷えてしまうため、サイド堰の移送に時間がかからない機器の配置であることが望まれる。
【0009】
このようなことから、本発明は、作業員にとって安全な作業領域を判断し易く、且つ、サイド堰を予熱装置から湯溜り部に早く移送することができるサイド堰移送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するための、本発明に係るサイド堰移送設備は、連続鋳造装置の湯溜り部を構成する一対の冷却ロールの端面に接して用いるサイド堰を受け入れて加熱する一対のサイド堰予熱装置と、前記冷却ロール両端面それぞれに対面して配置され、前記サイド堰を着脱可能にすると共に前記サイド堰を前記冷却ロール端面に押し付ける一対のサイド堰押付装置とを備えたサイド堰移送設備であって、ベースと、前記ベースより下方に、前記湯溜り部、前記冷却ロール、前記サイド堰押付装置、前記サイド堰予熱装置をそれぞれ設けると共に、前記ベース上に設けられ、上面視して、前記冷却ロール両端面よりも外側にそれぞれ前記サイド堰押付装置から前記サイド堰予熱装置まで直線に延びる、一対のレールと、それぞれの前記レール上を走行し、前記サイド堰を着脱可能に支持すると共に前記サイド堰を前記サイド堰予熱装置と前記サイド堰押付装置との間で移送する一対のサイド堰移送装置と、前記湯溜り部の上方の前記ベースに開けられた第一開口部と、前記サイド堰を前記サイド堰予熱装置から前記サイド堰移送装置への引き渡す経路となる、前記レールから前記冷却ロール側に所定距離位置離れた位置で前記ベースに開けられた一対の第二開口部と、前記サイド堰を前記サイド堰移送装置から前記サイド堰押付装置に引き渡す経路となる、前記レールから前記冷却ロール側に前記所定距離位置離れた位置で前記ベースに開けられた一対の第三開口部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るサイド堰移送設備は、上述したサイド堰移送設備において、前記第三開口部は、前記第一開口部と前記レールとの間に設けられ、且つ前記第一開口部に沿って前記冷却ロールの軸方向に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るサイド堰移送設備は、上述したサイド堰移送設備において、前記一対の第二開口部と前記一対の第三開口部とには、前記ベースの下面側で水平移動して開閉する一対のスライド板がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るサイド堰移送設備は、上述したサイド堰移送設備において、それぞれの前記レールは、二本によって構成され、二本の前記レールの間には、前記レールと平行に延びるラックを備え、前記サイド堰移動装置は、保持装置と、往復移動装置と、昇降移動装置とを有し、前記保持装置は、前記サイド堰を一時的に挟む機構を有し、前記往復移動装置は、前記ラックと噛み合って前記ラックの延び方向に沿って移動可能なピニオンと、前記ピニオンを駆動するモータとを有し、前記昇降移動装置は、前記レールから冷却ロール側に前記所定距離位置離れたところで前記保持装置を上下に移動させる機構を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るサイド堰移送設備は、上述したサイド堰移送設備において、前記保持装置は、前記昇降移動装置によって、前記第二開口部及び前記第三開口部を貫通可能に昇降されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るサイド堰移送設備によれば、第一開口部(湯溜り部のある個所)と一対の直線レールで囲まれる四角形状の領域がベース上に出現し、そのベースの下には、関連する主要機器が配置されているので、作業員は、ベース上のその領域を、湯溜り部、押付装置、予熱装置に対する作業や点検をする際に利用できる。そのため、作業員は、自然にその領域内において慎重に歩行したり、余分な物を置かないように留意することとなり、安全に作業を行う空間を確保し易くなる。
【0016】
また、ベースの下に、関連する主要機器が配置されていることから、ベース上での作業領域を広く確保できる。
【0017】
また、サイド堰移送装置は、冷却ロールの両端面より外側に配置される直線レール上を走行することから、この四角形状の領域内での作業の妨げにならず、むしろ、この領域の外周を認識させる目安となる。
【0018】
また、サイド堰移送装置は、直線レール上を走行しており、第二開口部も第三開口部もレールの内側から同距離の箇所にあり、且つ、第三開口部はレールから見て冷却ロールに近い側にあるので、サイド堰の移送距離を短くでき、サイド堰を早く移送できる。
【0019】
さらに、第三開口部(第二開口部)は、第一開口部とレールとの間に設けられると共に、前記第一開口部に沿って前記冷却ロールの軸方向に配置されることから、第一開口部、一対の第二開口部及び一対の第三開口部で囲まれる作業領域を大きく確保できると共に、作業領域がどの範囲かをより認識し易くなる。
【0020】
さらに、第二開口部と第三開口部は、サイド堰を移送するときに使用するものであり、他のときには使用しないため、使用しないときにはスライド板で閉状態としておくことができ、ベース上で作業を安全に行い易くなる。
【0021】
さらに、第一開口部と一対のレールで囲まれる四角形状の領域の形成に、レールと平行に走るラックも加わることから、同領域がベース上に出現していることをより認識し易くなり、作業を安全に行う空間を確保し易くなる。
【0022】
また、昇降移動装置がサイド堰をサイド堰予熱装置のところで掴む位置とサイド堰押付装置のところでサイド堰を離して渡す位置とのレールからの距離を同じにしたので、サイド堰の移動距離が短くでき、サイド堰をより迅速に移動させることができる。
【0023】
さらに、保持装置は、昇降移動装置によって、第二開口部及び第三開口部を貫通可能に昇降されるので、サイド堰をサイド堰予熱装置からサイド堰押付装置へ安全且つスムーズに移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るサイド堰移送装置を利用する双ロール式連続鋳造装置の主な実施形態の要部の概略構成を表す平面図である。
図2図1のII−II線断面矢線視図である。
図3図2の III−III 線断面矢線視図である。
図4】湯溜まりの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るサイド堰移送設備及びこのサイド堰移送設備を利用する双ロール式連続鋳造装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0026】
〈主な実施形態〉
本発明に係るサイド堰移送設備及びこのサイド堰移送設備を利用する双ロール式連続鋳造装置の主な実施形態を図1〜4に基づいて説明する。
【0027】
図1〜4において、1は溶湯、10は湯溜まり、11は冷却ロール、12はサイド堰、13はサイド堰押付装置、14はタンディッシュ、15は移動レール、16はサイド堰予熱装置である。
【0028】
冷却ロール11は、水平方向へ軸方向を向けて対をなすように同じ高さで互いに対向して平行に配置されている。サイド堰12は、対をなす冷却ロール11の間の、冷却ロール11の軸方向両端側に対をなすようにしてそれぞれ配置され、冷却ロール11との間で形成される空間に湯溜まり10を形成するものである。
【0029】
サイド堰押付装置13は、対をなす冷却ロール11の間の、冷却ロール11の軸方向両端側に対をなすようにしてそれぞれ配置されている。サイド堰押付装置13は、油圧シリンダ13bが収縮することにより、サイド堰12を着脱可能に支持するサイド堰ホルダ13aが冷却ロール11の端部から離反してサイド堰12を着脱される着脱位置P1に位置することができるようになっている。また、サイド堰押付装置13は、油圧シリンダ13bが前進することにより、サイド堰ホルダ13aがサイド堰12を冷却ロール11の端部に押し付ける押付位置P2に位置して冷却ロール11とサイド堰12との間で湯溜まり10を形成することができるようになっている。
【0030】
タンディッシュ14は、冷却ロール11とサイド堰12とで形成される湯溜まり10の上方に配置され、湯溜まり10に溶湯1を注ぎ込むものである。移動レール15は、湯溜まり10の上方に配置され、タンディッシュ14を冷却ロール11の軸方向に沿って移動させるものである。
【0031】
つまり、タンディッシュ14は、湯溜まり10に溶湯1を注ぎ込むときに湯溜まり10の上方に位置するように移動レール15に沿って移動し、サイド堰12の交換を行う等のときに湯溜まり10の上方から冷却ロール11の軸方向へ離反した待機位置に位置するように移動レール15に沿って移動することができるようになっているのである。
これにより、タンディッシュ14は、移動レール15において冷却ロール11の軸方向に沿って湯溜まり10の上方に移動することができ、溶湯1を湯溜まり10に注ぎ込むことになる。さらに、サイド堰12の交換作業を行う等のときに、タンディッシュ14は、冷却ロール11の軸方向に垂直の待機位置に位置するように移動することができる。
【0032】
サイド堰予熱装置16は、サイド堰押付装置13から冷却ロール11の軸方向と直交する水平方向で離反する箇所に配置され、サイド堰12を内部に出し入れする出入口を上部に有している。なお、サイド堰予熱装置16は、内部に載置されるサイド堰12の高さ位置(図2参照)及び冷却ロール11の軸方向の位置(図1参照)が、サイド堰押付装置13の着脱位置P1に位置するサイド堰ホルダ13aに保持されたサイド堰12のそれと略一致するように設定されていると好ましい。
【0033】
そして、冷却ロール11の軸方向両側に対をなすようにしてそれぞれ配置されたサイド堰予熱装置16の上方とサイド堰押付装置13の上方との間には、当該間を直線的に連絡する二本で一組のガイドレール111がベース110を介してそれぞれ布設されている。組をなすガイドレール111上には、スライダ112aを介して当該ガイドレール111に沿ってスライド移動可能な移動台112が二本のガイドレール111間を橋渡すようにしてそれぞれ取り付けられている。
【0034】
移動台112上には、コラム113が冷却ロール11側へ案内面を向けるようにしてそれぞれ立設されている。コラム113の案内面には、コラム113の案内面を上下方向に沿ってスライド移動可能なスライドテーブル114がそれぞれ取り付けられている。スライドテーブル114の冷却ロール11側の面には、サイド堰12を着脱可能に把持して保持する保持装置であるクランプ装置115がそれぞれ取り付けられている。
【0035】
コラム113の内部には、ボールねじ軸116が、それぞれ回転可能に設けられ、上下方向へ軸方向を向けて、スライドテーブル114にナットブロック(図示省略)を介して螺合する。サーボモータ117が、コラム113の上部にそれぞれ取り付けられている。サーボモータ117の駆動軸をボールねじ軸116の上端に連結させた
【0036】
つまり、サーボモータ117の駆動軸を回転させてボールねじ軸116を回転させると、ナットブロックを介してスライドテーブル114をコラム113の案内面に沿って上下方向へスライド移動させて、クランプ装置115を直線的に昇降移動させることができるようになっているのである。
【0037】
組をなす二本のガイドレール111の間には、ガイドレール111に沿って長手方向を向けたラック118がガイドレール111の全長にわたってそれぞれ布設されている。移動台112上には、サーボモータ120がそれぞれ設けられている。移動台112の下部に駆動軸120aの先端を位置させるように、駆動軸120aを移動台112の上下方向に貫通させた。サーボモータ120の駆動軸120aの先端側には、ラック118と噛み合うピニオン119が同軸をなしてそれぞれ取り付けられている。
【0038】
つまり、サーボモータ120の駆動軸120aを回転させてピニオン119を回転させると、ピニオン119がラック118の長手方向に沿って転動することにより、移動台112がスライダ112aを介してガイドレール111に沿ってスライド移動して、クランプ装置115をサイド堰予熱装置16の出入口の上方の位置P3とサイド堰押付装置13の着脱位置P1に位置するサイド堰ホルダ13aの上方の位置P4とに位置させるように切り換え可能となっているのである。
【0039】
このような本実施形態においては、ガイドレール111、移動台112、ラック118、ピニオン119、サーボモータ120等により、往復移動装置122を構成し、コラム113、スライドテーブル114、ボールねじ軸116、サーボモータ117等により、昇降移動装置123を構成し、往復移動装置122、昇降移動装置123等により、移動装置を構成し、保持装置115、移動装置122、123等により、サイド堰移送装置121を構成し、冷却ロール11、サイド堰12、サイド堰押付装置13、サイド堰予熱装置16、前記サイド堰移送装置121等により、双ロール式連続鋳造装置を構成している。
【0040】
このような本実施形態に係るサイド堰移送装置121を利用する双ロール式連続鋳造装置において、サイド堰12を冷却ロール11の軸方向両端側に配置して湯溜まり10を形成している。
【0041】
まず、サイド堰押付装置13のサイド堰ホルダ13aを着脱位置P1に位置させるように、油圧シリンダ13bを収縮させると共に、クランプ装置115をサイド堰予熱装置16の上方の位置P3に位置させるように、サーボモータ120を作動させて移動台112を位置付ける。その後、サイド堰12をサイド堰予熱装置16の内部に載置して、サイド堰予熱装置16を作動させてサイド堰12を予熱する。
【0042】
そして、サイド堰12を例えば900〜1300℃の範囲に予熱し終えたら、サーボモータ117の駆動軸を回転させてボールねじ軸116を回転させ、スライドテーブル114を下方へ移動させてクランプ装置115を鉛直方向で直線的に下降させ、クランプ装置115をサイド堰予熱装置16内に入れてサイド堰12をクランプ装置115で把持する。その後、サーボモータ117の駆動軸を逆回転させてボールねじ軸116を逆回転させ、スライドテーブル114を上方へ移動させてクランプ装置115を鉛直方向で直線的に上昇させることにより、サイド堰12をサイド堰予熱装置16の内部から取り出す。
【0043】
続いて、サーボモータ120の駆動軸120aを回転させて、ピニオン119を回転させ、ピニオン119をラック118に沿って転動させることにより、スライダ112aを介して移動台112をガイドレール111に沿って水平方向で直線的に移動させて、クランプ装置115をサイド堰押付装置13のサイド堰ホルダ13aの上方の位置P4に位置させる。
【0044】
次に、サーボモータ117の駆動軸を回転させてボールねじ軸116を回転させ、スライドテーブル114を下方へ移動させてクランプ装置115を鉛直方向で直線的に下降させることにより、サイド堰押付装置13のサイド堰ホルダ13aにサイド堰12を支持させてクランプ装置115を開放する。その後、サーボモータ117の駆動軸を逆回転させてボールねじ軸116を逆回転させ、スライドテーブル114を上方へ移動させてクランプ装置115を鉛直方向で直線的に上昇させる。
【0045】
そして、サイド堰押付装置13のサイド堰ホルダ13aを押付位置P2に位置させるように油圧シリンダ13bを伸長してサイド堰12を冷却ロール11の端部に押し付けることにより、冷却ロール11とサイド堰12との間で湯溜まり10を形成することができる。
【0046】
つまり、本実施形態においては、サイド堰予熱装置16とサイド堰押付装置13との間でサイド堰12を旋回移動させることなく直線移動のみで移送できるようにしたのである。
【0047】
このため、本実施形態では、サイド堰12を冷却ロール11の端部に押し付けている状態と同じ方向へ向けた状態で移動させることができると共に、サイド堰12の移動経路を短くすることができるので、サイド堰12を迅速に移動させることができ、高温に予熱されたサイド堰12の移動時の放熱量を抑制することができる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、予熱されたサイド堰12を冷却ロール11の端部に配置するまでの放熱量を抑制して、熱エネルギの無駄を削減することができる。
【0049】
また、サイド堰予熱装置16とサイド堰押付装置13との間でサイド堰12を旋回移動させることがないので、旋回のために確保するスペースが不要となり、設置に要するスペースの削減を図ることができる。
【0050】
より具体的に説明する。サイド堰予熱装置16の上方とサイド堰押付装置13の上方との間のベース110上に一組のガイドレール111が直線的に布設されている。一組のガイドレール111上を移動する移動台112に昇降移動装置123及びクランプ装置115が設けられている。
【0051】
この状態で、作業員がベース110上を歩行している際に、一組のガイドレール111が作業員の視覚に入ることで、作業員が移動台112の移動範囲を直感的に認識できる。このため、作業員は、移動台112やクランプ装置115との接触事故を避けるため、無意識に近い感覚で、一組のガイドレール111の内側や近傍に入らないように行動する。よって、作業員の安全を確保し易い。
【0052】
さらに、一組のガイドレール111を用いて、サイド堰予熱装置16とサイド堰押付装置13とを互いに離して配置したので、それぞれの装置のメンテナンスに必要な作業スペースを確保できる。その上、昇降移動装置123やクランプ装置115も移動台112と共に移動させることができるので、サイド堰押付装置13等のメンテナンスの際にクランプ装置115等を邪魔にならない位置に移動台112で移動させることができ、この点でもメンテナンス作業を安全に行い易くなる。
【0053】
また、サイド堰移送装置121を冷却ロール11の軸方向両端側で対をなすようにしてそれぞれ独立させて配置しているので、冷却ロール11の軸方向一端側と他端側とのサイド堰12の交換をそれぞれ個別に行うことができると共に、冷却ロール11の軸方向の長さに関係なく、同一サイズのサイド堰移送装置121を適用することができる。
【0054】
ここで、前記ベース110に設けた開口部131〜133とベース110の周辺の機器に関連するところについてさらに説明する。
【0055】
ベース110は、一定の高所にあり、機器も配置されるが、作業員が機器の点検等のために移動したり作業したりするスペースともなる。前記ベース110より下方に、前記湯溜り部10、前記冷却ロール11、前記サイド堰押付装置13、前記サイド堰予熱装置16が配置されている。一対の前記レール111は、前記ベース110上に設けられ、上面視して、前記冷却ロール11両端面よりも外側にそれぞれ前記サイド堰押付装置13から前記サイド堰予熱装置16まで直線に延びる。
【0056】
サイド堰移送装置121は、一対あり、それぞれが一対の前記レール111上を走行する。このサイド堰移送装置121は、前記サイド堰12を着脱可能に支持すると共に前記サイド堰12を前記サイド堰予熱装置16と前記サイド堰押付装置13との間で移送する。
【0057】
前記湯溜り部10の上方のベース110には、第一開口部131が形成されている。前記タンディッシュ14が、ベース110上に設けた移動レール15(図1中、左側)とベース110よりも上方に設けた移動レール15(図1中、右側)に載って移動し、この第一開口部131の箇所に至る。連続鋳造装置の運転時には、前記タンディッシュ14が下方に移動し、タンディッシュ14の下部から前記第一開口部131を介して、湯溜まり10に溶湯1を注ぎ込む。
【0058】
また、ベース110には、一対の第二開口部133が形成されている。この第二開口部133は、前記レール111から前記冷却ロール11側に所定距離だけ離れた位置にあり、それぞれのレール111に対応して設けられている。前記サイド堰移送装置121が、前記サイド堰12を前記サイド堰予熱装置16から引き受けたり、前記サイド堰予熱装置16に引き渡したりする経路となる。
【0059】
また、ベース110には、一対の第三開口部132が形成されている。この第三開口部132は、前記レール111から前記冷却ロール11側に前記所定距離だけ離れた位置にあり、それぞれのレール111に対応して設けられている。前記第三開口部132は、前記サイド堰移送装置121が前記サイド堰12を前記サイド堰押付装置13から受け取ったり、前記サイド堰12を前記サイド堰押付装置13に引き渡したりする経路となる。
【0060】
このような構成によって、第一開口部131(湯溜り部10のある箇所の上)と一対の直線レール111で囲まれる四角形状の領域がベース110上に出現し、そのベース110の下には、関連する主要機器が配置されているので、作業員は、ベース110上のその領域を、湯溜り部10、押付装置13、予熱装置16に対する作業や点検をする際に利用できる。
【0061】
そのため、作業員は、自然にその領域内において慎重に歩行したり、余分な物を置かないように留意することとなり、安全に作業を行う空間を確保し易くなる。例えば、一対のレール111で囲まれる領域の外側に、第二開口部133や第三開口部132を設ける配置をした場合、作業領域がどの範囲かを認識し難いので、作業員に注意喚起をしないと安全を確保し難くなってしまう。
【0062】
また、ベース110の下に、関連する主要機器が配置されていることから、ベース110上での作業領域を広く確保できる。
【0063】
さらに、サイド堰移送装置121は、冷却ロール11の両端面より外側に配置される直線レール111上を走行することから、この四角形状の領域内での作業の妨げにならず、むしろ、この領域の外周を認識させる目安となる。
【0064】
また、サイド堰移送装置121は、直線レール111上を走行しており、第二開口部133も第三開口部132もレール111の内側から同距離の箇所にあり、且つ、第三開口部132はレール111から見て冷却ロール11に近い側にあるので、サイド堰12の移送距離を短くでき、サイド堰12を早く移送できる。
【0065】
さらに、前記第三開口部132は、前記第一開口部131と前記レール111との間に設けられると共に、前記第一開口部132に沿って前記冷却ロール11の軸方向に配置されていることから、第一開口部131、一対の第二開口部133及び一対の第三開口部132で囲まれる作業領域を広く確保できると共に、安全に作業できそうな領域をより認識し易くなる。
【0066】
さらに、前記開口部131〜133で囲まれる領域は、一対のレール111に挟まれた間の領域でもあるので、一対のレール111からもこの領域を視認し易くなる。なお、サイド堰移動装置121は、レール111上を走行するものの、このレール111に挟まれた間を走行しないので、作業者と衝突してしまうおそれもない。
【0067】
前記一対の第二開口部133と前記一対の第三開口部132には、ベース110の下面側に、水平移動して開閉する一対のスライド板140がそれぞれ設けられている。これらスライド板140の開閉は、スライド板140にそれぞれ接続された油圧シリンダ141を駆動手段としている。スライド板140が軽量の場合であれば、空気シリンダを用いることもできる。しかし、スライド板140は剛性を有することが好ましく、その場合、重量を伴うので、その駆動手段を油圧シリンダ141とすると好ましい。
【0068】
このような構成によって、第二開口部133と第三開口部132は、サイド堰12を移送するときに使用するものであり、他のときには使用しないため、使用しないときにはスライド板140で閉状態としておくことができ、作業員がベース110上で安全に作業を行い易くなる。
【0069】
また、それぞれの前記レール111は、二本で構成されている。この二本の前記レール111の間には、レール111と平行に延びるラック118が配置されている。前記サイド堰移動装置121は、保持装置(クランプ装置)115と往復移動装置122と昇降移動装置123とを備えている。前記保持装置115は、前記サイド堰12を一時的に挟む機構を有している。前記往復移動装置122は、前記ラック118と噛み合って前記ラック118の延び方向に沿って移動可能なピニオン119と、前記ピニオン119を駆動するモータ120とを有している。前記昇降移動装置123は、前記レール111から冷却ロール11側に前記所定距離だけ離れた箇所で前記保持装置115を上下に移動させる機構となっている。
【0070】
このような構成によって、タンディシュ14の下部が至る第一開口部131と一対のレール111で囲まれる四角形状の領域の形成に、レール111と平行に走るラック118も加わることから、四角形状の領域がベース110上に出現していることを、作業員がより認識し易くなり、作業を安全に行う空間を確保し易くなる。
【0071】
また、昇降移動装置123がサイド堰12をサイド堰予熱装置16のところで掴む位置とサイド堰押付装置13のところで離して渡す位置とのレール111からの距離をほぼ同じにしたことから、サイド堰12の移動距離が短くでき、サイド堰12を旋回させることもなく、サイド堰12をより迅速に移動させることができる。
【0072】
また、前記保持装置115は、前記昇降移動装置123によって、前記第二開口部133及び前記第三開口部132を貫通可能に昇降されるものであるので、サイド堰12をサイド堰予熱装置16からサイド堰押付装置13へ安全且つスムーズに移送することができる。
【0073】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、移動台112をガイドレール111に対してスライダ112aを介して移動可能に設けるようにしたが、他の実施形態として、スライダ112aに代えて、例えば、移動台112をガイドレール111に対して車輪を介して移動可能に設けるようにすることも可能である。
【0074】
また、前述した実施形態においては、ラック118及びピニオン119等により、移動台112をガイドレール111に沿ってスライド移動させるようにしたが、他の実施形態として、例えば、伸縮可能な油圧シリンダ等のアクチュエータや、回転可能なねじ軸等により、移動台112をガイドレール111に沿って直線的に往復移動できるようにすることも可能である。
【0075】
また、前述した実施形態では、ボールねじ軸116等により、スライドテーブル114をコラム113に沿ってスライド移動させるようにしたが、他の実施形態として、例えば、伸縮可能な油圧シリンダ等のアクチュエータや、ラック&ピニオン等により、スライドテーブル114をコラム113に沿って直線的に昇降移動できるようにすることも可能である。
【0076】
また、前述した実施形態では、タンディッシュ14を湯溜まり10の上方から冷却ロール11の軸方向へ離反した待機位置に移動レール15で水平方向に沿って移動できるようにしたが、他の実施形態として、例えば、タンディッシュ14を湯溜まり10の上方からさらに上方へ離反した待機位置にリフタ等で鉛直方向に沿って移動できるようにすることも可能である。
【0077】
また、タンディッシュ14が湯溜まり10の上方に位置していても、サイド堰移送装置121と干渉しない場合には、サイド堰12の交換を行う等のときに、タンディッシュ14を待機位置へ移動させることを省略することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 溶湯
10 湯溜まり
11 冷却ロール
12 サイド堰
13 サイド堰押付装置
13a サイド堰ホルダ
13b 油圧シリンダ
14 タンディッシュ
15 移動レール
16 サイド堰予熱装置
110 ベース
111 ガイドレール
112 移動台
112a スライダ
113 コラム
114 スライドテーブル
115 クランプ装置
116 ボールねじ軸
117 サーボモータ
118 ラック
119 ピニオン
120 サーボモータ
120a 駆動軸
121 サイド堰移送装置
122 往復移動装置
123 昇降移動装置
131 第一開口部
132 第三開口部
133 第二開口部
140 スライド板
141 油圧シリンダ

図1
図2
図3
図4