特許第6710364号(P6710364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ やまと真空工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000002
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000003
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000004
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000005
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000006
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000007
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000008
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000009
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000010
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000011
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000012
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000013
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000014
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000015
  • 特許6710364-加飾容器および加飾方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710364
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】加飾容器および加飾方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20200608BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20200608BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20200608BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   B65D23/00 T
   B65D23/08 B
   C23C14/14 Z
   C23C14/04 A
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-225360(P2018-225360)
(22)【出願日】2018年11月30日
(65)【公開番号】特開2020-83448(P2020-83448A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2019年6月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510171069
【氏名又は名称】やまと真空工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 策三
(72)【発明者】
【氏名】森 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】込山 茂
【審査官】 西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3141962(JP,U)
【文献】 特開2016−101942(JP,A)
【文献】 特開昭51−004077(JP,A)
【文献】 特開2004−205777(JP,A)
【文献】 特開2017−066429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D23/00−25/56
C23C14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる側面部と、
金属蒸着膜によって前記側面部に形成された加飾部と、
を備え、
前記加飾部は、
上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域と、
前記グラデーション領域ではない領域であって、上下方向において幅を有するように形成され、かつ、可視光線透過率が前記グラデーション領域よりも小さい領域と、を有し、
前記グラデーション領域の上下方向における長さは、前記側面部の上下方向における長さの20パーセント以上であり、
前記グラデーション領域における可視光線透過率は、1パーセント以上45パーセント以下である、
加飾容器。
【請求項2】
前記グラデーション領域は、
下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも大きい、第1透過領域を有する、
請求項1に記載の加飾容器。
【請求項3】
前記第1透過領域は、
上下方向における長さが、前記側面部の上下方向における長さの10パーセント以上の領域を有する、
請求項2に記載の加飾容器。
【請求項4】
前記グラデーション領域は、
下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも小さい、第2透過領域を有し、
前記第2透過領域は、前記第1透過領域の下方に形成されている、
請求項2または請求項3に記載の加飾容器。
【請求項5】
前記側面部は筒状であり、
前記側面部の下部には、底面部が設けられており、
金属蒸着膜によって前記底面部に形成された底面加飾部をさらに有する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加飾容器。
【請求項6】
容器に金属蒸着膜による加飾部を形成する加飾方法であって、
前記容器は、上下方向に延びる側面部を有し、
両端に開口部を有する筒状のマスク本体、および前記マスク本体の側面に形成された複数の側面開口部を備えたマスクを用いて、前記マスク本体の内面に対して間隔を確保するように、前記容器を前記マスク本体の内側に配置した状態とする、第1工程と、
前記マスクと前記容器との相対位置を固定した状態で、前記側面部に金属蒸着を行い、前記側面部の上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有する加飾部を形成する、第2工程と、
を有する加飾方法。
【請求項7】
前記マスクに設けられた前記複数の側面開口部は、
前記加飾部に、前記グラデーション領域を形成させるように、位置、形状、および大きさが設定されている、
請求項6に記載の加飾方法。
【請求項8】
前記複数の側面開口部は、
それぞれ前記マスク本体の中心軸に沿った第1方向に延びており、かつ、前記マスク本体の周方向に沿った第2方向に間隔をおいて形成されている、
請求項6または請求項7に記載の加飾方法。
【請求項9】
前記側面開口部は、
前記第1方向に向かうに従って、前記第2方向における長さが増加または減少するように形成されている、
請求項8に記載の加飾方法。
【請求項10】
前記マスクを保持するとともに、前記容器を前記マスク本体の内側に配置した状態に保持する、保持具を用いる、
請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の加飾方法。
【請求項11】
前記保持具は、
前記マスク本体の内側と前記容器との間に連通する連通部を有する、
請求項10に記載の加飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着によって加飾部が形成された加飾容器、および金属蒸着によって容器に加飾部を形成する加飾方法に関する。より具体的には、光輝感を有する長いグラデーション領域が金属蒸着膜によって形成された加飾容器、および、このようなグラデーション領域を有する加飾部を容器に形成する加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば化粧品容器等の表面に金属蒸着によって加飾部を設けることが知られている。金属蒸着によって形成された金属蒸着膜は、金属光沢のある光輝感(メタリック感)を生じさせるため、化粧品容器等の装飾性を高めることができる。
【0003】
金属蒸着膜は、膜厚の大小によって可視光線透過率が変化する。可視光線透過率は、金属蒸着膜が可視光線を通す割合である。金属蒸着膜が薄いと可視光線を透過させやすいため、可視光線透過率が大きくなる。反対に金属蒸着膜が厚いと可視光線を透過させにくいため、可視光線透過率が小さくなる。
【0004】
可視光線透過率が小さい金属蒸着膜は、金属光沢のある光輝感を生じさせる。一方、可視光線透過率が大きい金属蒸着膜は、光輝感が低下して薄墨色(薄い黒色)に見える場合がある。金属蒸着膜が薄墨色に見えると加飾部の装飾性が著しく低下する。このため、加飾部が薄墨色に見えないように加飾部の金属蒸着膜は厚く均一に形成することが一般に行われている。
【0005】
また、容器の加飾部として、グラデーション状に塗装した加飾部も知られている。グラデーション状の加飾部は、塗装の濃さに変化をつけることで形成されている。グラデーション状の加飾部は、容器の内部が透けて見える。このため、グラデーション状の加飾部は、内容物の残量を視認するための残量視認部としても用いられている。
【0006】
なお、グラデーション状の加飾部を残量視認部として用いる場合、内部が透けて見える領域の上下方向の長さが短いと、内容物の残量の変化を使用者が把握しにくくなる。このため、内部が透けて見える領域は、容器の上下方向に長く形成されている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−35849号公報
【特許文献2】特開平11−38206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、塗装によって形成された加飾部は、金属蒸着膜のような光輝感を生じさせにくい。そこで、グラデーション状の加飾部に光輝感を生じさせるために、グラデーション状の加飾部を金属蒸着膜で形成することが考えられる。
【0009】
特許文献1には、容器の加飾部ではないが、基材にグラデーション状の金属蒸着膜を形成する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、基材にマスキング材を密着させる領域とマスキング材を設けない領域とを形成し、これらの二つの領域の間に離間領域を設ける。離間領域では、マスキング材を基材から離間させてマスキング材と基材との間に隙間を形成する。この状態で金属蒸着を行うと、離間領域に形成された隙間の開放部から蒸着物質が入り込んで基材に蒸着される。そして、離間領域の開放部に近い部分ほど金属蒸着膜の膜厚が厚くなり、離間領域の奥部に行くほど金属蒸着膜の膜厚が薄くなる。その結果、金属蒸着膜の膜厚が徐々に変化したグラデーション状の金属蒸着膜を形成することができる。
【0010】
特許文献1に開示された技術では、グラデーション状の金属蒸着膜の長さはマスキング材を基材から離間させた離間領域の長さによって決定される。特許文献1の技術を用いて容器のグラデーション状の加飾部を形成する場合、グラデーション状の加飾部を残量視認部として利用するには、離間領域を長くしてグラデーション状の領域を長くする必要がある。
【0011】
しかしながら、離間領域を長くすると離間領域の奥部に蒸着物質が入り込みにくくなる。離間領域をある程度まで長くすると、離間領域の奥部に金属蒸着膜を形成しにくくなり、金属蒸着膜が薄くなる。金属蒸着膜が薄くなると可視光線透過率が大きくなる。その結果、金属蒸着膜の光輝感が低下して薄墨色(薄い黒色)に見えることとなり、加飾部の装飾性が著しく低下する。
【0012】
このため、特許文献1に開示された技術を用いることで、容器にグラデーション状の金属蒸着膜を形成することは可能ではあるものの、グラデーション状の領域を残量視認部に必要な長さに形成し、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせることは困難であった。
【0013】
また、特許文献2には、所定のマスキングパターンが形成されたマスク板を基板に対して回転させながら金属蒸着を行うことにより、基板上にグラデーション状の金属蒸着膜を形成する技術が開示されている。
【0014】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、蒸着装置にマスク板を回転させる機構およびスペースが必要であるとともに、一回の蒸着処理につき少量の基板しか蒸着処理を行うことができない。このため、特許文献2に開示された技術を用いて容器に加飾部を形成すると、加飾部を形成するためのコストが嵩むこととなる。
【0015】
そこで、本発明の第1の目的は、グラデーション領域が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる加飾部を金属蒸着膜で形成した加飾容器を提供することであり、本発明の第2の目的は、容器に対して、グラデーション領域が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる加飾部を金属蒸着膜によって容易に形成する加飾方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の加飾容器は、
上下方向に延びる側面部と、
金属蒸着膜によって前記側面部に形成された加飾部と、
を備え、
前記加飾部は、
上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有し、
前記グラデーション領域の上下方向における長さは、前記側面部の上下方向における長さの20パーセント以上であり、
前記グラデーション領域における可視光線透過率は、1パーセント以上45パーセント以下である。
【0017】
本発明の加飾方法は、容器に金属蒸着膜による加飾部を形成する加飾方法であって、
前記容器は、上下方向に延びる側面部を有し、
両端に開口部を有する筒状のマスク本体、および前記マスク本体の側面に形成された複数の側面開口部を備えたマスクを用いて、前記マスク本体の内面に対して間隔を確保するように、前記容器を前記マスク本体の内側に配置した状態とする、第1工程と、
前記マスクと前記容器との相対位置を固定した状態で、前記側面部に金属蒸着を行い、前記側面部の上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有する加飾部を形成する、第2工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の加飾容器によれば、加飾部は、上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有する。グラデーション領域の上下方向における長さは、側面部の上下方向における長さの20パーセント以上であり、グラデーション領域における可視光線透過率は、1パーセント以上45パーセント以下である。このため、グラデーション領域が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる、金属蒸着膜で形成した加飾部とすることができる。
【0019】
本発明の加飾方法によれば、筒状のマスクの内側に容器を配置した状態とする第1工程と、マスクと容器との相対位置を固定した状態で、金属蒸着を行う第2工程を有している。このため、容器に対して、グラデーション領域が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる加飾部を金属蒸着膜によって容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る加飾容器の正面図である。
図2図2(A)は、保持具の平面図であり、図2(B)は、保持具の側面図である。
図3図3は、マスクを展開した状態を示す平面図である。
図4図4は、マスクの変形例を示す図である。
図5図5は、保持具に容器本体を配置した状態を示す側面図である。
図6図6は、保持具にマスクを保持させた状態を示す側面図である。
図7図7は、保持具を蒸着装置内に配置した状態を示す側面図である。
図8図8は、図7のA―A線における断面図である。
図9図9は、容器本体の側面部を平面に展開した状態を示す模式図である。
図10図10は、可視光線透過率の測定結果を示す表である。
図11図11は、可視光線透過率の測定結果を示すグラフである。
図12図12は、実施形態2に係る加飾部の可視光線透過率の測定結果を示す表である。
図13図13は、実施形態2に係る加飾部の可視光線透過率の測定結果を示すグラフである。
図14図14は、実施形態3に係る加飾部の可視光線透過率の測定結果を示す表である。
図15図15は、実施形態3に係る加飾部の可視光線透過率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態にかかる加飾容器は、
上下方向に延びる側面部と、
金属蒸着膜によって前記側面部に形成された加飾部と、
を備え、
前記加飾部は、
上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有し、
前記グラデーション領域の上下方向における長さは、前記側面部の上下方向における長さの20パーセント以上であり、
前記グラデーション領域における可視光線透過率は、1パーセント以上45パーセント以下である(第1の構成)。
【0022】
上記構成によれば、加飾部は、上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有する。グラデーション領域の上下方向における長さは、側面部の上下方向における長さの20パーセント以上であり、グラデーション領域における可視光線透過率は、1パーセント以上45パーセント以下である。このため、グラデーション領域が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる、金属蒸着膜で形成した加飾部とすることができる。
【0023】
上記第1の構成において、
前記グラデーション領域は、
下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも大きい、第1透過領域を有してもよい(第2の構成)。
【0024】
上記構成によれば、第1透過領域では、下部位置における可視光線透過率は、上部位置における可視光線透過率よりも大きい。このため、金属蒸着膜で形成されたグラデーション領域を残量視認部として用いることができる。
【0025】
上記第2の構成において、
前記第1透過領域は、
上下方向における長さが、前記側面部の上下方向における長さの10パーセント以上の領域を有していてもよい(第3の構成)。
【0026】
上記構成によれば、第1透過領域の上下方向における長さは、側面部の上下方向における長さの10パーセント以上である。このため、第1透過領域を残量視認部として十分な長さとすることができる。
【0027】
上記第2または第3の構成において、
前記グラデーション領域は、
下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも小さい、第2透過領域を有し、
前記第2透過領域は、前記第1透過領域の下方に形成されていてもよい(第4の構成)。
【0028】
上記構成によれば、第2透過領域では、下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも小さく、第2透過領域は、第1透過領域の下方に形成されている。このため、容器の下部の光輝感を低下させずにグラデーション領域を形成することができる。
【0029】
上記第1から第4のいずれかの構成において、
前記側面部は筒状であり、
前記側面部の下部には、底面部が設けられており、
金属蒸着膜によって前記底面部に形成された底面加飾部をさらに有してもよい(第5の構成)。
【0030】
上記構成によれば、筒状の容器の底面部には、金属蒸着膜によって底面加飾部が形成されている。このため、容器の側面部だけでなく、底面部にも金属蒸着膜による加飾を行うことができる。
【0031】
本発明の一実施形態にかかる加飾方法は、容器に金属蒸着膜による加飾部を形成する加飾方法であって、
前記容器は、上下方向に延びる側面部を有し、
両端に開口部を有する筒状のマスク本体、および前記マスク本体の側面に形成された複数の側面開口部を備えたマスクを用いて、前記マスク本体の内面に対して間隔を確保するように、前記容器を前記マスク本体の内側に配置した状態とする、第1工程と、
前記マスクと前記容器との相対位置を固定した状態で、前記側面部に金属蒸着を行い、前記側面部の上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域を有する加飾部を形成する、第2工程と、
を有する(第6の構成)。
【0032】
上記構成によれば、筒状のマスクの内側に容器を配置した状態とする第1工程と、マスクと容器との相対位置を固定した状態で、金属蒸着を行う第2工程を有している。このため、容器に対して、グラデーション領域が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる加飾部を金属蒸着膜によって容易に形成することができる。
【0033】
上記第6の構成において、
前記マスクに設けられた前記複数の側面開口部は、
前記加飾部に、前記グラデーション領域を形成させるように、位置、形状、および大きさが設定されていてもよい(第7の構成)。
【0034】
上記構成によれば、マスクに設けられる複数の側面開口部は、加飾部にグラデーション領域を形成させるように、位置、形状および大きさが設定されている。このため、複数の側面開口部の位置、形状および大きさを変更することによって、グラデーション領域の位置および長さを変更することができ、加飾部の装飾性を高めることができる。
【0035】
上記第6または第7の構成において、
前記複数の側面開口部は、
それぞれ前記マスク本体の中心軸に沿った第1方向に延びており、かつ、前記マスク本体の周方向に沿った第2方向に間隔をおいて形成されていてもよい(第8の構成)。
【0036】
上記構成によれば、複数の側面開口部は、それぞれマスク本体の中心軸に沿った第1方向に延びており、かつ、マスク本体の周方向に沿った第2方向に間隔をおいて形成されている。このため、簡易な構成のマスクを用いて金属蒸着膜によって加飾部を形成することができる。
【0037】
上記第8の構成において、
前記側面開口部は、
前記第1方向に向かうに従って、前記第2方向における長さが増加または減少するように形成されていてもよい(第9の構成)。
【0038】
上記構成によれば、側面開口部は、第1方向に向かうに従って、第2方向における長さが増加または減少するように形成されている。このため、簡易な構成のマスクを用いて金属蒸着膜によって加飾部を形成することができる。
【0039】
上記第6から第9のいずれかの構成において、
前記マスクを保持するとともに、前記容器を前記マスク本体の内側に配置した状態に保持する、保持具を用いてもよい(第10の構成)。
【0040】
上記構成によれば、保持具は、マスクを保持するとともに、容器をマスク本体の内側に配置した状態に保持する。このため、第2工程においてマスクと容器との相対位置を固定しやすく、加飾部を容易に形成することができる。
【0041】
上記第10の構成において、
前記保持具は、
前記マスク本体の内側と前記容器との間に連通する連通部を有していてもよい(第11の構成)。
【0042】
上記構成によれば、保持具は、マスク本体の内側と容器との間に連通する連通部を有している。このため、マスク本体の内側と容器との間に金属蒸着の蒸着物質が入りやすく、グラデーション領域を側面部の上下方向に長く形成することができる。
【0043】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る加飾容器100および加飾方法を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0044】
[加飾容器]
まず、加飾容器100の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る加飾容器100の正面図である。本実施形態の加飾容器100は、液状の化粧料を収容する化粧品容器である。
【0045】
加飾容器100は、容器本体10を有している。容器本体10は、底面部11、側面部12、上面部13、および口部14を有している。本実施形態にかかる容器本体10の外形は略円柱状であり、合成樹脂素材を用いて一体成型されている。
【0046】
以下では、容器本体10の中心軸C1に平行であって、底面部11から上面部13に向かう方向を上方向Uとし、上面部13から底面部11に向かう方向を下方向Dとする。上方向Uおよび下方向Dに平行な方向を上下方向という場合がある。また、上方向Uおよび下方向Dと直交する方向であって、側面部12に沿った方向を周方向DRとする。
【0047】
側面部12は、円筒状であり、上下方向に延びるように形成されている。底面部11は、側面部12の下部に配置されており、容器本体10の底部を構成している。上面部13は、側面部12の上部に配置されており、容器本体10の上部を構成している。底面部11、側面部12、および上面部13によって化粧料を収容するための収容空間が構成されている。口部14は、上面部13に形成されており、内部空間に連通する開口部が形成されている。口部14の開口部には、適量の化粧料を注出させるためのポンプ(図示せず)や、注出孔が形成された内蓋(図示せず)などが取り付けられる。口部14の外周部には、雄螺子141が形成されている。上面部13の上方には、蓋部15が着脱可能に取り付けられる。
【0048】
側面部12には、加飾部30が形成されており、底面部11には、底面加飾部35が形成されている。加飾部30は、側面部12の外表面に蒸着された金属蒸着膜によって形成されている。底面加飾部35は、底面部11の外表面に蒸着された金属蒸着膜によって形成されている。
【0049】
本実施形態の加飾部30は、側面部12の全面に形成されている。側面部12の上下方向における長さLHと、加飾部30の上下方向における長さは同一である。図1では、加飾部30は、ドットによって模式的に表されている。
【0050】
加飾部30は、グラデーション領域32を有している。グラデーション領域32は、上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させた領域である。グラデーション領域32は、金属蒸着膜の膜厚を上部位置と下部位置とで漸次変化させることによって形成されている。
【0051】
グラデーション領域32は、第1透過領域AR1および第2透過領域AR2を有している。第1透過領域AR1は、下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも大きい領域である。第2透過領域AR2は、下部位置における可視光線透過率が、上部位置における可視光線透過率よりも小さい領域である。第2透過領域AR2は、第1透過領域AR1の下方に形成されている。第1透過領域AR1および第2透過領域AR2については後に詳細に説明する。
【0052】
[加飾方法]
続いて、容器本体10に金属蒸着膜による加飾部30を形成する加飾方法について説明する。図2は、容器本体10およびマスク200を保持する保持具250を示している。図2(A)は、保持具250の平面図であり、図2(B)は、保持具250の側面図である。保持具250は、蒸着装置内部の蒸着室300(図7参照)において、容器本体10およびマスク200を所定の位置に保持する。
【0053】
図2に示すように、保持具250は、取付部260、マスク支持アーム270、およびマスク支持部280を有している。取付部260は、保持具250の中心位置に設けられている。取付部260には、容器取付部261および支持孔262が形成されている。
【0054】
容器取付部261は、容器本体10の口部14に対応した凹状部である。容器取付部261の内側には、容器本体10の口部14に形成された雄螺子141に対応した雌螺子(図示せず)が形成されている。容器取付部261に容器本体10の口部14が螺合されることにより、保持具250に容器本体10が保持される(図5参照)。
【0055】
支持孔262は、支持アーム320(図7参照)の端部が差し込まれる部分である。支持孔262に支持アーム320が差し込まれることにより、保持具250が蒸着室300内の所定の位置に配置される。支持孔262と容器取付部261との間には、支持孔262と容器取付部261とを連通させて通気させる通気孔263が設けられている。
【0056】
マスク支持アーム270は、取付部260とマスク支持部280を連結する部材である。マスク支持アーム270は、取付部260に対して放射状に設けられている。隣接するマスク支持アーム270の間は間隔が空いており、連通部290が形成されている。連通部290により、保持具250にマスク200および容器本体10が保持された状態で、マスク200と容器本体10との間の空間がマスク200の外部と連通する(図8参照)。
【0057】
マスク支持部280は、取付部260の周囲に同心円状に配置されており、マスク支持アーム270によって支持されている。マスク支持部280には、支持スリット281が形成されている。支持スリット281にマスク本体210の端部が差し込まれることにより、マスク200が保持具250に固定される。
【0058】
図3は、マスク200を展開した状態を示す平面図である。マスク200を用いて容器本体10に金属蒸着する際には、マスク200を円筒状にして保持具250に装着する。マスク200は、マスク本体210および側面開口部220を有している。マスク本体210を円筒状にした状態において、マスク本体210の中心軸C2に沿う方向を第1方向D1とする(図6参照)。また、マスク本体210を円筒状にした状態においてマスク本体210の周方向に沿った方向を第2方向D2とする。
【0059】
マスク本体210は、円筒状に湾曲させることが可能なシート状の素材で形成されている。マスク本体210として、例えば、合成樹脂素材で形成したシート状材を用いることができる。平面状のマスク本体210の第1方向D1における長さを第1長さLD1とし、平面状のマスク本体210の第2方向D2における長さを第2長さLD2とする。第1長さLD1および第2長さLD2は、容器本体10の寸法および形成する加飾部30の形状等に対応させて設定される。第1長さLD1は、例えば、マスク200および容器本体10が保持具250に保持された状態で、マスク200が容器本体10の側面部12全体を覆う程度の長さに設定される。また、第2長さLD2は、マスク200および容器本体10が保持具250に保持された状態で、マスク200と容器本体10との間に間隔を確保できるように、容器本体10の周方向DRの長さよりも長く設定される。例えば、第2長さLD2は、容器本体10の周方向DRの長さの1.5倍から2.0倍程度が好ましいが、1.0倍を超えた長さから3.0倍程度の長さの範囲で設定することが可能である。
【0060】
側面開口部220は、マスク本体210に複数形成されている。マスク200に設けられた複数の側面開口部220は、加飾部30にグラデーション領域32を形成させるように、位置、形状および大きさが設定されている。
【0061】
本実施形態では、複数の側面開口部220は、それぞれ第1方向D1に延びる三角形状を有している。また、各側面開口部220は、第2方向D2に間隔をおいて形成されている。側面開口部220の第1方向D1に平行な長さ(高さ)をHとし、第2方向D2に延びる辺(底辺)221の長さをW1とし、第2方向D2に平行な側面開口部220の各部の幅をW2とすると、幅W2は、第1方向D1に向かうほど長さが減少するように形成されている。このように各側面開口部220を配置することにより、第1方向D1に向かうに従って、マスク200によってマスクされる領域が増加することとなる。このため、第1方向D1に沿って、容器本体10に蒸着される金属蒸着膜の膜厚を容器本体10の上下方向において漸次変化させることが可能となる。
【0062】
なお、形成する加飾部32の形状によっては、幅W2は、第1方向D1に向かうほど長さが増加するように、つまり、側面開口部220の頂部222と底辺221の位置が逆になるように配置してもよい。
【0063】
また、側面開口部220は、マスク200によってマスクされる領域を第1方向D1に沿って変化させるために形成されるものである。このため、マスクされる領域を変化させることができれば、側面開口部220の形状は三角形状に限定されない。図4は、マスク200の変形例を示す図である。図4(A)に示すように、側面開口部220Aを台形状としてもよく、あるいは、図4(B)に示すように、側面開口部220Bを大きさの異なる複数の開口部225によって構成してもよい。また各開口部225は、台形に限定されず、例えば大きさの異なる楕円形状等であってもよい。
【0064】
[第1工程]
図5は、加飾方法の第1工程において、保持具250に容器本体10を配置した状態を示す側面図である。図5に示すように、保持具250の容器取付部261に容器本体10の口部14が螺合されることにより、保持具250に容器本体10が保持される。
【0065】
保持具250に容器本体10を保持させた状態で、次に、保持具250にマスク200を保持させる。図6は、保持具250にマスク200を保持させた状態を示す側面図である。図6に示すように、マスク本体210を円筒状にした状態で、マスク本体210の端部を各マスク支持部280の支持スリット281に差し込むことにより、保持具250にマスク200が保持される。これにより、マスク200と容器本体10との相対位置が固定される。図6では、マスク200に形成された側面開口部220を介してマスク本体210の側面部12の一部が見えている状態を示している。
【0066】
また、容器本体10は、マスク本体210の内側において、容器本体10の中心軸C1とマスク本体210の中心軸C2とが重なるように配置されている。また、マスク本体210は、円筒状にした状態では、容器本体10の外径よりも大きい内径を有しているため、容器本体10の側面部12とマスク本体210の内面との間には、間隔が確保されている。
【0067】
[第2工程]
図7は、保持具250を蒸着装置の蒸着室300内に配置した状態を示す側面図である。図8は、図7のA―A線における断面図である。図7に示すように、保持具250に容器本体10およびマスク200を保持させ、マスク200と容器本体10との相対位置が固定された状態で、保持具250を蒸着装置の蒸着室300内に配置する。本実施形態で用いる蒸着装置は、蒸着室300に複数の支柱310が設けられており、各支柱310には、複数の支持アーム320が放射状に設けられている。支持アーム320の端部は上方に向けて屈曲している。保持具250の支持孔262に支持アーム320の端部を差し込むことにより、支持アーム320に保持具250が装着される。同様に、他の支持アーム320にも別の保持具250を装着することにより、一回の蒸着処理によって多数の容器本体10に対して金属蒸着膜による加飾部30を形成することができる。なお、蒸着装置として、公知の真空蒸着装置を用いることができる。
【0068】
図7および図8において、二点鎖線で示した矢印は、金属蒸着膜を構成する蒸着物質Mの動きの一例を示している。図8に示すように、マスク200は円筒状であり、両端部は開放されている。また、保持具250には連通部290が形成されている。このため、蒸着物質Mは、マスク200に形成された側面開口部220だけでなく、マスク200の両端からもマスク200の内側に進入して蒸着されると考えられる。底面加飾部35は、主にマスク200の端部から進入する蒸着物質Mにより形成されると考えられる。
【0069】
また、図8に示すように、マスク200と容器本体10との間に間隔があいているため、側面開口部220から進入する蒸着物質Mは、容器本体10の側面部12に垂直な方向から進入するだけでなく、垂直方向以外の様々な方向から進入して蒸着されると考えられる。
【0070】
そして、側面開口部220が三角形状であることにより、マスク200によって容器本体10がマスクされる領域は、容器本体10の上下方向に沿って差異が生じている。この差異により、容器本体10に蒸着される金属蒸着膜の膜厚を容器本体10の上下方向に沿って変化させることができる。
【0071】
[グラデーション領域]
次に、容器本体10の側面部12に形成された加飾部30について説明する。図9は、容器本体10の側面部12を平面に展開した状態を示す模式図である。図9に示すように、加飾部30を上下方向に等間隔に15段に区分けし、容器本体10の下方向Dに向けて、つまり、上面部13から底面部11に向けて、第1段目、第2段目・・・第15段目とする。また、加飾部30を周方向DRに等間隔に14列に区分けし、第1列目、第2列目・・・第14列目とする。
【0072】
そして、第1段目の第1列目のマス目で囲まれた領域から、第15段目の第14列目のマス目で囲まれた領域において、各領域における可視光線透過率を可視光線透過率測定器によって測定した。可視光線透過率測定器として朝日分光株式会社製「TLV‐304‐BP」を用い、測定波長は550nmとした。なお、可視光線透過率の測定は、各マス目で囲まれた領域の略中心位置で行った。
【0073】
図10は、可視光線透過率の測定結果を示す表である。表の左端の欄の数字は測定位置の段の番号に対応しており、表の上端の欄の数字は測定位置の列の番号に対応している。そして、第1段目の第1列目の欄から第15段目の第14列目の欄まで記載された数値は、加飾部30の各位置で測定した可視光線透過率を示している。例えば、加飾部30のうち、第1段目の第1列目の領域における可視光線透過率は0.7パーセントであり、第15段目の第14列目の領域における可視光線透過率は0.3パーセントである。
【0074】
可視光線透過率が小さい程、可視光線を透過させにくく、可視光線透過率が大きい程、可視光線を透過させやすい。目視によって可視光線の透過を知覚できる可視光線透過率の最小値は、約1.0パーセントである。一方、目視によって金属光沢を看取できる可視光線透過率の最大値は、約45パーセントである。
【0075】
そこで、可視光線透過率が1.0パーセント以上45パーセント以下であって、かつ、上部位置と下部位置とで可視光線透過率が変化している領域をグラデーション領域32とする。
【0076】
図10では、可視光線透過率が1.0パーセント未満となった測定位置にドットによるハッチングを施しているため、ハッチングを施していない領域がグラデーション領域32となる。ハッチングを施した領域は、グラデーション領域32ではないが、可視光線を透過させにくい領域であり、金属光沢のある強い光輝感(メタリック感)を生じさせている。
【0077】
各列におけるグラデーション領域32の長さの割合は、各列におけるグラデーション領域32の段数によって求めることができる。例えば、第1列目では、グラデーション領域32は、第7段目から第14段目までの7段分の長さを有している。このため、第1列目では、グラデーション領域32は、14段のうち7段、すなわち、50パーセントとなる。同様に第2列目では約64パーセント、第3列目では約71パーセントとなる。また、グラデーション領域32が他と比較して短い第11列目では約35パーセントとなる。よって、実施形態1では、グラデーション領域32は、各列において容器本体10の側面部12の上下方向における長さの35パーセント以上となっており、容器本体10の全周において、グラデーション領域32の長さは側面部12の上下方向における長さの20パーセント以上を達成している。
【0078】
なお、本実施形態では、グラデーション領域32の可視光線透過率は、1.0パーセント以上45パーセント以下としたが、可視光線透過率が35パーセント以下の領域では、より強い光輝感を生じさせることができる。
【0079】
図10において、各列における可視光線透過率の最大値については、文字を大きく表示している。例えば、第1列目では、可視光線透過率の最大値は、第12段目の14.5パーセントである。本実施形態では、各列の第12段目において可視光線透過率が最大値となっている。そのため、各列のグラデーション領域32では、上部位置から第12段目までの領域において、下部位置における可視光線透過率が上部位置における可視光線透過率よりも大きい領域、すなわち第1透過領域AR1となっている。例えば、第1列目では、第7段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっており、第2列目では、第6段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっている。また、第11列目では、第9段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっている。
【0080】
各列における第1透過領域AR1の長さの割合は、各列における第1透過領域AR1の段数によって求めることができる。例えば、第1列目では、第1透過領域AR1は、第7段目から第12段目までの5段分の長さを有している。このため、第1列目では、第1透過領域AR1は、14段のうち5段、すなわち、約36パーセントとなる。同様に第2列目では約43パーセント、第3列目では50パーセントとなる。また、第1透過領域AR1が他と比較して短い第11列目では約21パーセントとなる。よって、実施形態1では、第1透過領域AR1は、各列において、容器本体10の側面部12の上下方向における長さの20パーセント以上となっており、容器本体10の全周において、第1透過領域AR1の長さは、側面部12の上下方向における長さの10パーセント以上を達成している。
【0081】
また、本実施形態では、各列の第12段目において可視光線透過率が最大値となっており、各列のグラデーション領域32では、第12段目から下部位置までの領域において、下部位置における可視光線透過率が上部位置における可視光線透過率よりも小さい領域、すなわち第2透過領域AR2となっている。例えば、第1列目では、第12段目から第14段目までが第2透過領域AR2となっており、第2列目では、第12段目から第15段目までが第2透過領域AR2となっている。このため、本実施形態では、各列の第2透過領域AR2は、第1透過領域AR1の下方に形成されている。
【0082】
図11は、可視光線透過率の測定結果を示すグラフである。グラフの縦軸は可視光線透過率であり、グラフの横軸は側面部12の周方向の位置を示す列番号に対応している。そして、第7段目から第14段目の各段について、可視光線透過率の変化をグラフに示している。
【0083】
図11において、第1列目から第6列目にかけては、各段における可視光線透過率の変化が大きくなっている。一方、第7列目から第14列目にかけては、各段における可視光線透過率の変化が小さくなっている。これは、蒸着装置の蒸着室300内における配置が関係していると考えられる。図7および図8に示したように、容器本体10とマスク200が保持された保持具250は、蒸着室300内において、支柱310に支持される。この支柱310と容器本体10およびマスク200との位置関係によって、各列における可視光線透過率の変化に差異が生じていると考えられる。このような各列間の差異は、マスク200に形成される側面開口部220の位置、形状および大きさを設定することにより少なくできると考えられる。また、マスク200の外側を包囲する別のマスクを設けることにより、蒸着室300内における影響を減少させることができると考えられる。
【0084】
以上説明した加飾容器によれば、加飾部30は、上部位置と下部位置とで可視光線透過率を変化させたグラデーション領域32を有する。グラデーション領域32の上下方向における長さは、側面部12の上下方向における長さの20パーセント以上であり、グラデーション領域32における可視光線透過率は、1パーセント以上45パーセント以下である。このため、グラデーション領域32が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる、金属蒸着膜で形成した加飾部30とすることができる。
【0085】
また、上記説明した加飾方法によれば、筒状のマスク200の内側に容器本体10を配置する第1工程と、マスク200と容器本体10との相対位置を固定した状態で、金属蒸着を行う第2工程を有している。このため、容器本体10に対して、グラデーション領域32が長く、かつ金属光沢のある光輝感を生じさせる加飾部30を金属蒸着膜によって容易に形成することができる。
【0086】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る容器本体10Aに形成された加飾部30Aについて説明する。図12は、実施形態2に係る加飾容器100Aについて、加飾部30Aの可視光線透過率の測定結果を示す表である。実施形態2では、容器本体10Aの形状およびマスク200については実施形態1と同様であるが、蒸着の設定条件を変更している。
【0087】
図12では、図10と同様に、表の左端の欄の数字は測定位置の段番号に対応しており、表の上端の欄の数字は測定位置の列番号に対応している。そして、第1段目の第1列目の欄から第15段目の第14列目の欄まで記載された数値は、加飾部30Aの各位置で測定した可視光線透過率を示している。
【0088】
図12では、可視光線透過率が1.0パーセント未満となった測定位置にドットによるハッチングを施しており、ハッチングを施していない領域がグラデーション領域32Aとなる。ハッチングを施した領域は、グラデーション領域32Aではないが、可視光線を透過させにくい領域であり、金属光沢のある強い光輝感(メタリック感)を生じさせている。
【0089】
各列におけるグラデーション領域32Aの長さの割合は、各列におけるグラデーション領域32Aの段数によって求めることができる。例えば、第1列目では、グラデーション領域32Aは、第9段目から第14段目までの5段分の長さを有している。このため、第1列目では、グラデーション領域32Aは、14段のうち5段、すなわち、約36パーセントとなる。同様に第2列目では約57パーセント、第3列目では50パーセントとなる。また、グラデーション領域32Aが他と比較して短い第10列目から第13列目では約29パーセントとなる。よって、実施形態2では、グラデーション領域32Aは、各列において容器本体10Aの側面部12Aの上下方向における長さの約29パーセント以上となっており、容器本体10Aの全周において、グラデーション領域32Aの長さは側面部12Aの上下方向における長さの20パーセント以上を達成している。
【0090】
図12において、各列における可視光線透過率の最大値については、文字を大きく表示している。本実施形態では、各列の第12段目において可視光線透過率が最大値となっている。そのため、各列のグラデーション領域32Aでは、上部位置から第12段目までの領域において、下部位置における可視光線透過率が上部位置における可視光線透過率よりも大きい領域、すなわち第1透過領域AR1となっている。例えば、第1列目では、第9段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっており、第2列目では、第6段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっている。また、第10列目から第13列目では、第10段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっている。
【0091】
各列における第1透過領域AR1の長さの割合は、各列における第1透過領域AR1の段数によって求めることができる。このため、第1列目では、第1透過領域AR1は、14段のうち3段、すなわち、約21パーセントとなる。同様に第2列目では約43パーセント、第3列目では29パーセントとなる。また、第1透過領域AR1が他と比較して短い第10列目から第13列目では約14パーセントとなる。よって、実施形態2では、第1透過領域AR1は、各列において、容器本体10Aの側面部12Aの上下方向における長さの14パーセント以上となっており、容器本体10Aの全周において、第1透過領域AR1の長さは、側面部12Aの上下方向における長さの10パーセント以上を達成している。
【0092】
また、本実施形態では、各列の第12段目において可視光線透過率が最大値となっており、各列のグラデーション領域32Aでは、第12段目から下部位置までの領域において、下部位置における可視光線透過率が上部位置における可視光線透過率よりも小さい領域、すなわち第2透過領域AR2となっている。例えば、第1列目では、第12段目から第14段目までが第2透過領域AR2となっており、第2列目では、第12段目から第14段目までが第2透過領域AR2となっている。このため、本実施形態では、各列の第2透過領域AR2は、第1透過領域AR1の下方に形成されている。
【0093】
図13は、可視光線透過率の測定結果を示すグラフである。グラフの縦軸は可視光線透過率であり、グラフの横軸は側面部12Aの周方向の位置を示す列番号に対応している。そして、第7段目から第14段目の各段について、可視光線透過率の変化をグラフに示している。
【0094】
[実施形態3]
次に、実施形態3に係る容器本体10Bに形成された加飾部30Bについて説明する。図14は、実施形態3に係る加飾容器100Bについて、加飾部30Bの可視光線透過率の測定結果を示す表である。実施形態3では、容器本体10Bの形状およびマスク200については実施形態1と同様であるが、蒸着の設定条件を変更している。
【0095】
図14では、図10と同様に、表の左端の欄の数字は測定位置の段番号に対応しており、表の上端の欄の数字は測定位置の列番号に対応している。そして、第1段目の第1列目の欄から第15段目の第14列目の欄まで記載された数値は、加飾部30Bの各位置で測定した可視光線透過率を示している。
【0096】
図14では、可視光線透過率が1.0パーセント未満となった測定位置にドットによるハッチングを施しており、ハッチングを施していない領域がグラデーション領域32Bとなる。ハッチングを施した領域は、グラデーション領域32Bではないが、可視光線を透過させにくい領域であり、金属光沢のある強い光輝感(メタリック感)を生じさせている。
【0097】
各列におけるグラデーション領域32Bの長さの割合は、各列におけるグラデーション領域32Bの段数によって求めることができる。このため、第1列目では、グラデーション領域32Bは、14段のうち8段、すなわち、約57パーセントとなり、第2列目では約36パーセントとなる。また、グラデーション領域32Bが他と比較して短い第3列目から第7列目では約29パーセントとなる。よって、実施形態3では、グラデーション領域32Bは、各列において容器本体10Bの側面部12Bの上下方向における長さの約29パーセント以上となっており、容器本体10Bの全周において、グラデーション領域32Bの長さは側面部12Bの上下方向における長さの20パーセント以上を達成している。
【0098】
図14において、各列における可視光線透過率の最大値については、文字を大きく表示している。本実施形態では、第1列の第12段目、および第2列から第14列の第13段目において可視光線透過率が最大値となっている。そのため、各列のグラデーション領域32Bでは、上部位置から第12段目または第13段目までの領域において、下部位置における可視光線透過率が上部位置における可視光線透過率よりも大きい領域、すなわち第1透過領域AR1となっている。例えば、第1列目では、第7段目から第12段目までが第1透過領域AR1となっており、第2列目では、第9段目から第13段目までが第1透過領域AR1となっている。また、第3列目から第7列目では、第10段目から第13段目までが第1透過領域AR1となっている。
【0099】
各列における第1透過領域AR1の長さの割合は、各列における第1透過領域AR1の段数によって求めることができる。このため、第1列目では、第1透過領域AR1は、14段のうち5段、すなわち、約36パーセントとなり、第2列目では約29パーセントとなる。また、第1透過領域AR1が他と比較して短い第3列目から第7列目では約21パーセントとなる。よって、実施形態3では、第1透過領域AR1は、各列において、容器本体10Bの側面部12Bの上下方向における長さの21パーセント以上となっており、容器本体10Bの全周において、第1透過領域AR1の長さは、側面部12Bの上下方向における長さの10パーセント以上を達成している。
【0100】
また、本実施形態では、各列の第12段目または第13段目において可視光線透過率が最大値となっており、各列のグラデーション領域32Bでは、第12段目または第13段目から下部位置までの領域において、下部位置における可視光線透過率が上部位置における可視光線透過率よりも小さい領域、すなわち第2透過領域AR2となっている。例えば、第1列目では、第12段目から第15段目までが第2透過領域AR2となっており、第2列目では、第13段目から第14段目までが第2透過領域AR2となっている。このため、本実施形態では、各列の第2透過領域AR2は、第1透過領域AR1の下方に形成されている。
【0101】
図15は、可視光線透過率の測定結果を示すグラフである。グラフの縦軸は可視光線透過率であり、グラフの横軸は側面部12Bの周方向の位置を示す列番号に対応している。そして、第7段目から第14段目の各段について、可視光線透過率の変化をグラフに示している。
【0102】
[変形例]
本発明に係る加飾容器および加飾方法は、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、容器本体の形状は、本実施形態の形状に限定されない。
【0103】
また、加飾方法に用いるマスクは、上記説明したマスク200に限定されず、様々な形状を採用することができる。例えば、マスク200は両端部がほぼ同径が円筒状としたが、両端部の開口部の径が異なる筒状であってもよい。また、マスクを角筒状にしてもよい。角筒状のマスクは、例えば容器本体の側面部が角筒状である場合に用いることができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
100 加飾容器
10 容器本体
12 側面部
30 加飾部
32 グラデーション領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15