特許第6710366号(P6710366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710366
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】ミスト・粉塵類の捕集装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 47/06 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   B01D47/06 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-63436(P2018-63436)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171305(P2019-171305A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127123
【氏名又は名称】株式会社アンレット
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】横井 康名
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義展
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昌史
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−097318(JP,A)
【文献】 実公昭43−025141(JP,Y1)
【文献】 実公昭40−016232(JP,Y1)
【文献】 特開2014−205212(JP,A)
【文献】 特開昭49−010462(JP,A)
【文献】 特開2006−075688(JP,A)
【文献】 特開2006−175319(JP,A)
【文献】 特表2005−500501(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0134351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D45/00−45/18
B01D47/00−47/18
B01D50/00
B23Q11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気導入口を設けるとともに注水ノズルを設けた導入室と、導入室に連通するミスト・粉塵類分離室と、ミスト・粉塵類分離室に連通し、ドレン排出口を設けるとともに空気吸引機構に接続される空気吸引口を設けた回収室から成るタンクを備え、
タンクに導入室を貫通してミスト・粉塵類分離室まで延びる回転軸を設け、
回転軸の下部に回転ブラシを一体的に組み付け、回転軸の下端部に振り切り部材を一体的に組み付けるととともに、回転ブラシと振り切り部材をミスト・粉塵類分離室に配置し、
空気吸引機構で空気吸引口からタンク内の空気を吸引することにより、空気導入口からミスト・粉塵を含む空気を導入室の内周面に沿った旋回流となるように導入室内に導入するとともに、注水ノズルで回転ブラシに注水し、
導入室から旋回流となってミスト・粉塵類分離室に流入する空気で回転軸を回転させるとともに、ミスト・粉塵類分離室に流入する空気中のミスト・粉塵類を注水ノズルから注水された水分とともにミスト・粉塵類分離室の内面に叩き付けて空気から分離し、
ミスト・粉塵類分離室でミスト・粉塵類が分離した空気を回収室の空気吸引口からタンクの外部に排出するとともに、
分離したミスト・粉塵類を含む水分を回収室のドレン排出口からタンクの外部に排出するように構成したミスト・粉塵類の捕集装置であって、
前記空気導入口を導入室に向けて先細り形状にし、
前記導入室の上端開口を覆蓋する蓋体に向けて注水ノズルから注水するようにしたことを特徴とするミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項2】
2個の注水ノズルを、回転軸に関して対称位置に配置するとともに各注水ノズルの吐出方向が回転軸と注水ノズルを結ぶ直線に対して45度を成すように配置したことを特徴とする請求項1に記載のミスト・粉塵類の捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品等の洗浄の際に発生するミスト、機械部品等の加工時に発生する切粉や研磨屑等の微粉塵、木工粉・プラスチック粉等の微粉塵を周囲に飛散させないように捕集するミスト・粉塵類の捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のミスト・粉塵類の捕集装置の一形式として、特許第5701925号公報には、空気導入口を設けるとともに注水ノズルを設けた導入室と、導入室に連通するミスト・粉塵類分離室と、ミスト・粉塵類分離室に連通し、ドレン排出口を設けるとともにターボファンに接続される空気吸引口を設けた回収室から成るタンクを備えたミスト・粉塵類の捕集装置が開示されている。
【0003】
このミスト・粉塵類の捕集装置では、タンクに導入室を貫通してミスト・粉塵類分離室まで延びる回転軸を設け、回転軸の上部にインペラを一体的に組み付けるとともに、このインペラを導入室に配置している。また、回転軸の下部に回転ブラシを一体的に組み付けるとともに、回転軸の下端部に振り切り部材を一体的に組み付け、回転ブラシと振り切り部材をミスト・粉塵類分離室に配置している。
【0004】
このミスト・粉塵類の捕集装置によれば、ターボファンで空気吸引口からタンク内の空気を吸引し、それに伴い空気導入口からミスト・粉塵類を含む空気を導入室の内周面に沿った旋回流となるように導入するとともに、注水ノズルから吐出する水をインペラに当てて回転軸を回転させている。そして、ミスト・粉塵類分離室に流入する空気を回転ブラシと振り切り部材で旋回させ、遠心力でミスト・粉塵類を注水ノズルから注水された水分とともにミスト・粉塵類分離室の内面に叩き付けて空気から分離している。ミスト・粉塵類分離室でミスト・粉塵類を分離した空気は回収室の空気吸引口からタンクの外部に排出され、分離したミスト・粉塵類を含む水分が回収室のドレン排出口からタンクの外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5701925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のミスト・粉塵類の捕集装置では、回転ブラシや振り切り部材を組み付けた回転軸を回転させるため、空気導入口から導入室に流入する空気をインペラに衝当させるとともに、注水ノズルから吐出する水をインペラに衝当させている。
しかし、注水ノズルから吐出する水がインペラに衝当するとき一部がミスト状になるため、空気導入口付近にミストで濡れたウェットな領域が形成される。そのウェットな領域にドライな粉塵類が付着してしまい、回収できなくなるという問題点が生じていた。
【0007】
また、注水ノズルから吐出する水が回転するインペラによって散水されるため、回転ブラシにおける注水領域が回転ブラシの外端側に偏在する。そのため、1年以上の長期に亘って装置を使用すると回転ブラシに多量の粉塵が付着するので、タンクを分解して回転ブラシを清掃する作業が不可欠となる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、回転ブラシへの粉塵の付着量を可及的に少なくできるミスト・粉塵類の捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
空気導入口を設けるとともに注水ノズルを設けた導入室と、導入室に連通するミスト・粉塵類分離室と、ミスト・粉塵類分離室に連通し、ドレン排出口を設けるとともに空気吸引機構に接続される空気吸引口を設けた回収室から成るタンクを備え、
タンクに導入室を貫通してミスト・粉塵類分離室まで延びる回転軸を設け、
回転軸の下部に回転ブラシを一体的に組み付け、回転軸の下端部に振り切り部材を一体的に組み付けるととともに、回転ブラシと振り切り部材をミスト・粉塵類分離室に配置し、
空気吸引機構で空気吸引口からタンク内の空気を吸引することにより、空気導入口からミスト・粉塵を含む空気を導入室の内周面に沿った旋回流となるように導入室内に導入するとともに、注水ノズルで回転ブラシに注水し、
導入室から旋回流となってミスト・粉塵類分離室に流入する空気で回転軸を回転させるとともに、ミスト・粉塵類分離室に流入する空気中のミスト・粉塵類を注水ノズルから注水された水分とともにミスト・粉塵類分離室の内面に叩き付けて空気から分離し、
ミスト・粉塵類分離室でミスト・粉塵類が分離した空気を回収室の空気吸引口からタンクの外部に排出するとともに、
分離したミスト・粉塵類を含む水分を回収室のドレン排出口からタンクの外部に排出するように構成したミスト・粉塵類の捕集装置であって、
前記空気導入口を導入室に向けて先細り形状にし、
前記導入室の上端開口を覆蓋する蓋体に向けて注水ノズルから注水するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、好ましくは、2個の注水ノズルを、回転軸に関して対称位置に配置するとともに各注水ノズルの吐出方向が回転軸と注水ノズルを結ぶ直線に対して45度を成すように配置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気導入口を導入室に向けて先細り形状にしたので、導入室で発生する旋回流の流速を高めることができる。そして、高速の旋回流がミスト・粉塵類分離室に配置されている回転ブラシに作用するので、インペラを備えなくても回転軸が回転する。従って、インペラを省略できるので、注水ノズルから吐出した水がインペラに衝当してミストが発生し、空気導入口付近にミストで濡れたウェットな領域が形成され、ウェットな領域にドライな粉塵類が付着するのを防止できる。また、注水ノズルから水を回転ブラシにまんべんなく注水でき、注水領域が偏在しない。そのため、回転ブラシに粉塵類が付着するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るミスト及び粉塵の捕集装置の一部破断した正面図である。
図2】同捕集装置を示す側面図である。
図3】同捕集装置のタンクを示す拡大断面図である。
図4図3の4−4線から切断した断面図である。
図5】同捕集装置の回転ブラシを示す平面図である。
図6】同捕集装置の回転ブラシを示す側面図である。
図7】同捕集装置の適用例を示す説明図である。
【実施例】
【0013】
以下に、本発明を図面に基づいて説明する。図1図2及び図3には本発明の一実施例に係るミスト・粉塵類の捕集装置10が示されている。当該捕集装置10はタンク20を備えている。タンク20は導入室タンク21と、ミスト・粉塵類分離室タンク22及び回収室タンク23から構成されている。
【0014】
導入室タンク21は両端が開口し、開口端部にフランジ21aを設けた円筒体から成り、上端開口が蓋体24で覆蓋され、蓋体24が上端部のフランジ21aにボルトで固定されている。導入室タンク21の胴部には空気導入口21b(図3参照)が形成されている。蓋体24には2個の注水ノズル25が導入室タンク21の内部に臨むように取り付けられ、注水管27に接続されている。
【0015】
導入室タンク21の中心部には軸受ユニット28が組み付けられている。この軸受ユニット28は上下一対のベアリング28aを内蔵し、ボルト28bで蓋体24に固定されている。この軸受ユニット28によって回転軸30が回転可能に支持されている。回転軸30は導入室タンク21を貫通してミスト・粉塵類分離室タンク22の中間部まで延びている。
【0016】
ミスト・粉塵類分離室タンク22と回収室タンク23は、回収室23タンクを外筒として、ミスト・粉塵類分離室タンク22を回収室タンク23に収納される内筒とする内外二重の筒体20Aで構成され、筒体20Aは導入室タンク21の下端面開口のフランジ21aにボルトで連結されている。内筒を構成するミスト・粉塵分離室タンク22は上下両端面が開口し、上端面開口が導入室タンク21に連通し、下端面開口が外筒を構成する回収室タンク23に連通している。ミスト・粉塵分離室タンク22の中間部まで延びる回転軸30にスリーブ31aとブッシュ31bを介して3枚の円盤型の回転ブラシ33が回転軸30と一体回転するように組み付けられ、ミスト・粉塵類分離室22に配置されている。また、回転軸30の先端部にはナット34で椀型の振り切り部材35が固定され、ミスト・粉塵類分離室22に配置されている。
【0017】
図4に示すように、空気導入口21bは、導入室タンク21に導入される空気が導入室タンク21の内面に沿って流入し、旋回流となるように所要位置に配置されている。また、空気導入口21bは旋回流の流速を高めることができるように、導入室タンク21に向けて先細りに形成されている。
【0018】
各注水ノズル25は注水管27とボールジョイント25aを介して接続され、導入室タンク21の蓋体24に向けて注水されるように吐出方向がボールジョイント25aで調整されている。
また、2個の注水ノズル25は、旋回流に沿った流れが生じやすいように、回転軸30に関して対称位置に配置するとともに各注水ノズル25の吐出方向が互いに逆向きで、回転軸30の中心O1と注水ノズル25のボールジョイント25aの中心O2を結ぶ直線に対して約45度を成すように配置されている。
【0019】
図5及び図6に示すように、回転ブラシ33は、回転軸30に装着するための軸穴33aを形成したボスの外周に多数のブラシ片33bを放射状に突設した構造を備えている。
【0020】
回収室タンク23の底部にはドレン排出口23aが設けられ、ドレン排出口23aにドレンパイプ36が接続されている。回収室タンク23の外周面には空気吸引口23bが形成され、空気吸引口23bにターボファン37が接続されている。ターボファン37は駆動モータ37aを備えている。また、ターボファン37の排気パイプ37bには排気サイレンサ37cが取り付けられている。排気サイレンサ37cのドレン排出口37dが後述する貯水タンク38にドレンパイプ37eを介して接続されている。
【0021】
タンク20は貯水タンク38に立設した支柱39で貯水タンク38の上方に設置されている。貯水タンク38の上面にはマグネットセパレータ40と循環ポンプ41が設置され、側面に鉄系微粉塵の回収箱42が取り付けられている。また、貯水タンク38の底部にキャスタ43が取り付けられている。貯水タンク38にはボールタップ44を介して給水管45が接続されているので、貯水量を一定水位に保つことができる。導入室タンク21に取り付けた注水ノズル25は注水管27を介して循環ポンプ41に接続されている。回収室タンク23のドレン排出口23aから排出されるドレンはドレンパイプ36よってマグネットセパレータ40へ導入された後、貯水タンク38に戻される。
【0022】
本実施例に係るミスト・粉塵類の捕集装置10の構造は以上の通りであって、以下に当該捕集装置10を、図7に示すマシニングセンタ100で機械部品101を加工する際に発生する切粉などの粉塵、特に鉄系微粉塵の捕集に適用した場合の作用について説明する。
マシニングセンタ100の閉鎖空間と捕集装置10の空気導入口21bがダクト102を介して連通される。捕集装置10の運転がされると、ターボファン37の作動によってタンク20内が負圧に保持されるので、機械部品101の加工時に発生する粉塵類が、周囲の空気と一緒に空気導入口21bから導入室タンク21に吸い込まれる。同時に、貯水タンク38の水が循環ポンプ41によって注水ノズル25から導入室タンク21内に吐出する。
【0023】
ターボファン37の作動に伴い、導入室タンク21の空気導入口21bから流入する空気は高速旋回流となってミスト・粉塵類分離室タンク22の回転ブラシ33に衝突し、回転軸30とともに回転ブラシ33が回転する。同時に、注水ノズル25から蓋体24に向けて吐出された水が蓋体24から回転ブラシ33に降り注ぐ。そして、ミスト・粉塵類分離室タンク22に流入する空気には回転ブラシ33及び振り切り部材35から強い旋回作用を受ける。そのため空気中の粉塵類と水分が遠心力でミスト・粉塵類分離室タンク22の内面に叩き付けられて空気から分離し、ミスト・粉塵類分離室タンク22の内面を伝って回収室タンク23へと降下する。
【0024】
回収室タンク23へ降下した粉塵類を含む水はドレン排出口23aからドレンパイプ36を通ってマグネットセパレータ40へ導入され、粉塵類中の鉄系微粉塵がマグネットセパレータ40のマグネット(図示せず)により吸着して除去され、回収箱42に蓄えられる。
【0025】
本実施例に係るミスト・粉塵類の捕集装置10によれば、空気導入口21bを導入室タンク21に向けて先細り形状にしたので、導入室タンク21で発生する旋回流の流速を高めることができる。そして、高速の旋回流がミスト・粉塵類分離室タンク22に配置されている回転ブラシ33に作用するので、インペラを備えなくても回転軸30及び回転ブラシ33が回転する。従って、インペラを省略できるので、注水ノズル25から吐出した水がインペラに衝当してミストが発生し、空気導入口21b付近にミストで濡れたウェットな領域が形成され、ウェットな領域にドライな粉塵類が付着するのを防止できる。
【0026】
とりわけ、本実施例では、導入室タンク21の上端開口を覆蓋する蓋体24に向けて注水ノズル25から注水するので、注水した水が蓋体24から跳ね返って回転ブラシ33に散水される。このため注水ノズル25から水を回転ブラシ33にまんべんなく注水でき、注水領域が偏在しないので、回転ブラシ33に粉塵類が付着するのを抑制できる。
【0027】
また、2個の注水ノズル25を、回転軸30に関して対称位置に配置し、各注水ノズル25の吐出方向が回転軸30と注水ノズル25を結ぶ直線に対して約45度を成すように配置したので、注水ノズル25から吐出する水が旋回流となって蓋体24に当たる。そのため、蓋体24から水が回転ブラシ33に均等に注がれる。
【符号の説明】
【0028】
10…ミスト・粉塵類の捕集装置
20…タンク
20A…内外二重の筒体
21…導入室タンク
21a…フランジ
21b…空気導入口
22…ミスト・粉塵類分離室タンク
23…回収室タンク
23a…ドレン排出口
23b…空気吸引口
24…蓋体
25…注水ノズル
30…回転軸
33…回転ブラシ
35…振り切り部材
37…ターボファン
37d…ドレン排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7