特許第6710414号(P6710414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東洋新薬の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710414
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】化粧料、抗糖化組成物及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20200608BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20200608BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/39 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/8998 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/738 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/287 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 36/286 20060101ALI20200608BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200608BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200608BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20200608BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20200608BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20200608BHJP
【FI】
   A61K8/9794
   A61K8/9789
   A61Q19/08
   A61K36/39
   A61K36/8998
   A61K36/736
   A61K36/185
   A61K36/738
   A61K36/287
   A61K36/286
   A61P17/00
   A61P43/00 107
   A61K127:00
   A61K133:00
   A61K135:00
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-103636(P2016-103636)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-210424(P2017-210424A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 千絵
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/119955(WO,A1)
【文献】 特開2016−124827(JP,A)
【文献】 特開2015−127339(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099570(WO,A1)
【文献】 特開2012−121874(JP,A)
【文献】 特開2015−172017(JP,A)
【文献】 特開2014−234366(JP,A)
【文献】 特開2014−185100(JP,A)
【文献】 特開2002−241299(JP,A)
【文献】 特開2005−037196(JP,A)
【文献】 Able C&C, South Korea,B.B Cream,Mintel GNPD,2010年 3月,ID#1297031,URL,https://portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 36/00−36/9068
A61P 1/00−43/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦及び甘藷から選ばれる少なくとも1種の緑葉及び/又は緑茎と、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部の抽出物と、を含む化粧料。
【請求項2】
大麦及び甘藷から選ばれる少なくとも1種の緑葉及び/又は緑茎と、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部の抽出物と、を含む組成物。
【請求項3】
大麦及び甘藷から選ばれる少なくとも1種の緑葉及び/又は緑茎と、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部の抽出物と、を含む抗糖化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料、抗糖化組成物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
終末糖化産物(Advanced Glycation End-product(s);AGE(s))は、グルコースなどの還元糖のカルボニル基と、タンパク質やアミノ酸のアミノ基との非酵素的な反応から始まる一連の反応(メイラード反応)により不可逆的に生じる架橋物質である。これらの反応は、生体内で長期間にわたりゆっくり進行する。AGEsは、グルコースだけではなく、グルコースの自動酸化及び分解産物などの種々の糖から生成される。AGE(s)としては、ペントシジン、クロスリン、カルボキシメチルリジン(CML)、ピラジンなどが知られている。
【0003】
AGEsに関して、加齢と共に蓄積が認められること、皮膚の老化にも密接な関連があることが、近年明らかとなってきた。皮膚のタンパク質でメイラード反応が生じると、タンパク質中のリジン残基のアミノ基あるいはアルギニン残基のグアニジル基と糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、AGEが生成しタンパク質同士を架橋させてしまう。架橋構造が形成されると分子が硬くなり、皮膚本来の弾力性が失われる。また、架橋物を異物と判断し、タンパク質分解酵素の分泌量が増える。これらに起因して、肌のハリや弾力性が失われ、また肌が脆くなり、更にはシワ、たるみ、くすみが発生する。
【0004】
AGEsの生成抑制作用を有する物質としてはアミノグアニジンが広く知られている。アミノグアニジンを投与することにより、加齢に伴う様々な体内組織の老化現象を抑制できたことが報告されていることから、欧米では、アミノグアニジンはアンチエイジング物質として汎用されている。しかし、米国の第III相臨床試験で、アミノグアニジンが毒性を有することが明らかとなっており、その使用及び用量に大きな制限が加えられている。
【0005】
また、AGEsは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などの糖尿病による血管合併症の原因物質であり、体内のAGEsを低減することは、糖尿病合併症の発症・進行を予防する上でも非常に重要である。更に、AGEsは、アテローム性動脈硬化、アルツハイマー病、慢性関節リウマチなどの種々の衰弱性疾患の発症にも関与していることから、AGEsの生成を抑制することは、これらの疾患を予防・改善するためにも重要である。
【0006】
このような背景から、AGEs生成抑制作用を含むタンパク質の抗糖化作用を有する成分として、副作用の問題が少ない天然物を使用することに関する研究が進められている。例えば、特許文献1には、サフランチンキを含むメイラード反応生成物分解剤が記載されている。特許文献2には、桜の抽出物及び/又はその処理物を有効成分として含有するAGEs産生抑制剤が記載されている。特許文献3には、ブドレジャアキシラリス葉抽出物を有効成分として含むAGEs産生抑制作用が記載されている。特許文献4には、スターアップル(Chrysophyllum cainito)の水性果実抽出物によるカルボキシメチルリジンの形成抑制作用が記載されている。特許文献5には、プロポリス又はその加工物を有効成分とするタンパク質の抗糖化剤が記載されている。特許文献6には、梅酢を含有する抗糖化化粧料が記載されている。特許文献7には、ヘンナの花部を含有するAGEs生成抑制作用を有する組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−119373号公報
【特許文献2】WOA2011/099570号のパンフレット
【特許文献3】特開2011−102270号公報
【特許文献4】特表2011−528701号公報
【特許文献5】特開2012−077042号公報
【特許文献6】特開2012−214434号公報
【特許文献7】特開2013−245171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の通り、様々な天然物に由来する素材の抗糖化作用が知られている。
しかしながら、これらの天然物に由来する素材を単独で用いたときの作用は十分に高いものではない。このため、天然物由来の素材を用いて、より一層高い抗糖化作用を奏する技術が求められている。したがって、本発明の課題は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る化粧料、抗糖化組成物及び組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、天然成分の抗糖化作用を高める技術について、鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、特定の天然素材同士を組み合わることにより、抗糖化作用が相乗的に向上することを見出した。
本発明は緑葉及び/又は緑茎と、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部と、を含む化粧料を提供するものである。
本発明は緑葉及び/又は緑茎と、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部と、を含む組成物を提供するものである。
本発明は緑葉及び/又は緑茎と、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部と、を含む抗糖化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安全に使用できるだけでなく、従来よりも抗糖化作用の高い組成物が得られる。本発明の組成物は、化粧料、抗糖化組成物として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の組成物は、緑葉及び/又は緑茎(以下、「緑茎葉」ともいう)とモモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク及びベニバナから選ばれる少なくとも1種の花部とを含有するものである。本発明者らは天然素材により高い抗糖化作用を得る方法を鋭意検討した。そして、単独で抗糖化作用を有する天然素材同士を組み合わせることで、高い抗糖化作用を得ることができないかを研究した。特許文献1及び特許文献2には、抗糖化作用を有する天然素材を2種以上組み合わせて使用できることが記載されているが、具体的な組合せや組み合わせた場合の抗糖化作用に関する具体的な効果は一切記載されておらず、当業者であっても相乗的な抗糖化作用の得られる具体的な天然素材の組み合わせは容易に想到できるものではなかった。
上記の事情を鑑み、本発明では鋭意検討した結果、相乗的な抗糖化作用の得られる具体的な天然素材の組み合わせを突き止めた。後述するサフランを用いた比較例の記載から明らかな通り、単に抗糖化作用を有する天然物素材を組み合わせたとしても、通常は、単独で用いた程度の効果しか得られない。
以下の説明は特に断らない限り、化粧料、抗糖化組成物を含め本発明の組成物のいずれにも当てはまる。
【0012】
(緑葉及び/又は緑茎)
緑葉及び/又は緑茎(以下、「緑茎葉」ともいう)は、緑色植物の葉及び/又は茎を言う。
【0013】
緑葉及び/又は緑茎としては、飲食品用途に適した緑色植物の葉又は茎が挙げられる。具体的には、葉及び茎が飲食品用途に適した緑色植物としては、大麦、小麦、えん麦、ライ麦といった麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきびのようなイネ科植物;ヨモギのようなキク科植物;アシタバ、パセリ、セロリ、ボタンボウフウのようなセリ科植物;クワなどのクワ科植物;ドクダミのようなドクダミ科植物;シソのようなシソ科植物;小松菜、ケール、キャベツ、ブロッコリーのようなアブラナ科植物;アスパラガスのようなユリ科植物;モロヘイヤのようなシナノキ科植物;甘藷のようなヒルガオ科植物などが挙げられ、好ましくは青汁などの食品素材として利用可能な二条大麦、六条大麦、裸大麦などの大麦、ヨモギ、アシタバ、ボタンボウフウ、クワ、ケール、すいおう、ジョイホワイト、コガネセンガン、シロユタカ、サツマスターチ、アヤムラサキなどの甘藷である。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも大麦、甘藷が好ましい。甘藷の中では、ポリフェノール含有量が高いすいおうが好ましい。すいおうは、一度茎葉を収穫した後であっても、同じ茎の先端から甘藷の若茎葉が再生するという特徴があるため、生産性の点からも好適に用いられる。緑茎葉は、茎のみであってもよく、葉のみであってもよく、茎及び葉の混合物であってもよい。
【0014】
緑茎葉はいずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されないが、例えば、緑茎葉が大麦の茎葉である場合、成熟期前、すなわち、分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されたものであることが好ましい。具体的には、品種の違いによっても異なるが、一般に、背丈が10cm以上、好ましくは10〜90cm程度、特に好ましくは20〜80cm程度、とりわけ30〜70cm程度である大麦から、茎葉を収穫することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0015】
緑茎葉が甘藷の茎葉である場合、甘藷茎葉としては、甘藷の栽培時に、地面から外に出ている茎及び/又は葉を用いることが好ましい。好ましくは、地上から外へ、5cm以上、より好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上出て成長した甘藷茎葉が好ましい。また、甘藷の茎が地面から外に出ている位置から甘藷茎葉の先端までの長さは、好ましくは300cm以下、より好ましくは200cm以下、更に好ましくは150cm以下である。
【0016】
甘藷茎葉としては、甘藷茎葉の先端部分(「甘藷の若茎葉」)が好ましく、他の茎葉に比べて、黄味がかった緑色を保持している状態の甘藷の若茎葉が更に好ましい。甘藷の若茎葉としては、甘藷茎葉の先端から60cm以内の部位の茎葉が好ましく用いられる。甘藷の若茎葉は、植物体自身がやわらかいため、加工が容易である。更に、甘藷の若茎葉は、乾燥粉末とした場合、舌触りがよく、様々な食品に利用しやすくなる。
【0017】
本発明では、緑茎葉として、該緑茎葉から得られる各種の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、緑茎葉を乾燥及び粉砕して得られる乾燥粉末(粉砕末と呼ばれる場合もある)、緑茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、緑茎葉を搾汁して得られる搾汁液及びその乾燥粉末、緑茎葉を水、有機溶媒又はそれらの混合物で抽出することにより得られる抽出液、及びその乾燥粉末等が挙げられる。
【0018】
例えば、緑茎葉を乾燥粉末化する(粉砕末とする)には従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、緑茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組み合わせてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組み合わせることが好ましい。
【0019】
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理における加熱温度は、好ましくは80℃より高い温度、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上の温度とすることが好ましい。加熱温度は100℃以下が好ましい。加熱処理における加熱時間は、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、更に好ましくは3分以下、特に好ましくは10秒〜1分とする。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、茎葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。この場合の熱水のpHとしては好ましくは5.4以上、より好ましくは5.6以上8.4以下、更に好ましくは5.6以上8.0以下である。また、蒸煮処理としては、常圧又は加圧下において、茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20〜40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル類、葉緑素などの栄養成分に富んだ茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
【0020】
また、殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。これらの方法の中でも、加熱殺菌処理は、緑葉の香味を良好にすることができるため好ましい処理方法である。加熱処理の温度は、110℃以上で行うことが好ましく、具体的な機器としては、高圧殺菌機、加熱殺菌機、加圧蒸気殺菌機などを用いることができる。例えば、加圧蒸気殺菌による加熱処理の場合、粗粉砕された甘藷茎葉は、例えば、0.5kg/cm2以上10kg/cm2以下の加圧下、110℃以上200℃以下の飽和水蒸気により、2秒以上10秒以下の間、加熱殺菌処理されることが好ましい。これらの殺菌処理の後で、必要に応じて、飽和水蒸気による加熱時に含んだ水分を更に乾燥することもできる。
【0021】
また、乾燥処理としては、乾燥後の茎葉の水分含量が10%以下、特に5%以下となるように乾燥する処理であることが、風味が良く、色鮮やかな茎葉の乾燥粉末を得られるため、好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われ得る。風味が良く、色鮮やかな茎葉の乾燥粉末を得られる点において、60℃以上150℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下で乾燥処理を行うことが好ましい。茎葉をそのまま乾燥する場合は、2段階で乾燥を行うことが好ましい。2段乾燥は、例えば、熱風乾燥機などを用いて行うことができる。2段階乾燥は、まず、水分含有量が25質量%以下となるまで、60℃以上80℃以下の温度で一次乾燥する。次いで、一次乾燥した緑茎葉の水分含有量が5質量%以下となるまで、一次乾燥よりも高い温度、好ましくは70℃以上90℃以下で二次乾燥する。
【0022】
また、粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された茎葉は必要に応じて篩にかけられる。
【0023】
乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0024】
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号公報を参照)。また例えば、茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報を参照)も挙げられる。また例えば、茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003−033151号公報を参照)も挙げられる。
【0025】
茎葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、茎葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mm以下となるように細片化され、流動性を有するようになる。
【0026】
茎葉を搾汁する方法としては、茎葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、茎葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられ、具体的には、特開平08−245408号公報や特開平09−047252号公報に記載の方法が挙げられる。
また、茎葉の抽出物を得る方法としては、茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0027】
茎葉の加工物のうち、特に、茎葉の粉砕物(粉砕末等)、又は、搾汁(搾汁末等)を用いることが、本発明の組成物をより一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点や、食物繊維の豊富なものとできる点等から好ましい。加工物としては市販されているものを使用できる。例えば大麦であれば、市販の大麦茎葉の粉砕末(商品名「大麦若葉末」等)や搾汁粉末(商品名「大麦若葉エキス」等)を使用でき、甘藷であれば例えば市販の甘藷茎葉末(商品名「すいおう」等)を使用することができる。
【0028】
(モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク、ベニバナ)
本発明は、モモ、ザクロ、バラ、サクラ、キク、ベニバナ(以下、特定植物という)の花部を用いるものである。
このうちモモ(桃)はバラ科モモ属に属し、学名はPrunus persica BatschまたはPrunus persica Batsch var. davidiana Maximowiczという。モモの品種としては、例えば、ハクトウ(白桃)、オウトウ(黄桃)、ネクタリンなどが挙げられる。
【0029】
ザクロ(柘榴、石榴)は、ミソハギ科ザクロ属に属し、学名をPunica granatumという。
バラ(薔薇)は、バラ科バラ属(Rosa)の植物を言う。
【0030】
サクラ(桜、櫻)は、バラ科サクラ属の植物のうち、ウメ、モモ、アンズなどを除いた総称であり、一般にはサクラ亜属 (Subgen. Cerasus) に属するものを指す。
【0031】
キク(菊)は、キク科キク属(Chrysanthemum)の植物である。キクとしては、キク科キク属のキク(学名:Chrysanthemum morifolium Ramatulle)又はシマカンギク(学名:Chrysanthemum indicum Linne)が好ましい。
【0032】
ベニバナ(紅花)はキク科ベニバナ属の一年草または越年草であり、学名をCarthamus tinctorius という。
【0033】
花部は、蕾から全開した花までのいずれの段階で採集した花であってもよい。また、開花後の花部は、は花の全体であってもよく、花弁、萼、雄しべ、雌しべ、柱頭、花床(未成熟期のもの)のいずれか1以上であってもよい。
【0034】
特定植物の花部としては、通常、加工物を用いる。加工物としては、例えば乾燥粉末、細片化物及びその乾燥粉末、搾汁及びその乾燥粉末、抽出物及びその乾燥粉末等が挙げられる。
【0035】
特定植物の花部としては、抽出物であることが好ましい。抽出物を得るための抽出処理としては、水や有機溶媒等の抽出溶媒を用いた処理が挙げられる。抽出溶媒としては極性溶媒が挙げられる。極性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン等が挙げられる。これらのうち、水、メタノール、エタノール、含水エタノールが好ましい。尚、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上併用しても良い。抽出は生の花部に対して行っても良いし、乾燥や加熱を施した花部に行っても良い。抽出液は加温されたものであってもよく、その場合の温度としては40℃以上沸点以下が挙げられる。得られた抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、最終加工品である抽出物を得る。精製方法としては、例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理、シリカゲル処理、イオン交換樹脂、液−液向流分配、膜分離等の方法が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物における、緑茎葉及び特定植物の花部(特に抽出物)の質量比は、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、特定植物の花部が乾燥質量で0.0001質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上75質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上50質量部以下であることが特に好ましい。
【0037】
特に本発明の組成物は、特定植物として、モモを含有する場合、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、モモの花部が乾燥質量で0.01質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
特定植物として、ザクロを含有する場合、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、ザクロの花部が乾燥質量で0.001質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
特定植物として、バラを含有する場合、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、バラの花部が乾燥質量で0.001質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
特定植物として、サクラを含有する場合、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、サクラの花部が乾燥質量で0.0001質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。
特定植物としてキクを含有する場合、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、キクの花部が乾燥質量0.01質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
特定植物としてベニバナを含有する場合、緑茎葉の乾燥質量100質量部に対して、ベニバナの花部が乾燥質量で0.001質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、実質的に緑茎葉及び特定植物の花部のみからなるものであってもよい。実質的に緑茎葉及び特定植物の花部のみからなるとは、緑茎葉及び特定植物の花部の加工工程で不可避に混入する成分以外の成分を含有しない場合が挙げられ、具体的には、本発明の組成物における緑茎葉及び特定植物の花部の合計質量が95質量%以上の場合を意味する。しかしながら本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、緑茎葉及び特定植物の花部以外に、後述する各種の他の成分を含有することが可能である。本発明の組成物は、緑茎葉及び特定植物の花部以外の植物成分は、含有しても含有しなくてもよいが、極力含有しないことが好ましく、極力含有しない場合、該植物成分の含有量は組成物中、5質量%以下であることが好ましく、1質量%であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明の組成物における特定植物の花部(特に抽出物)の乾燥質量と緑茎葉の乾燥質量の合計の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。
本発明の組成物は、例えば3g以上10g以下の質量を有する場合、特定植物の花部(特に抽出物)を、乾燥質量として、1mg以上配合することが望ましく、10mg以上配合することがより望ましく、50mg以上配合することが特に望ましい。また緑茎葉を、乾燥質量として、100mg以上配合することが望ましく、500mg以上配合することがより望ましく、1g以上配合することが特に望ましい。
【0040】
本発明の組成物が経皮摂取する形態である場合、1日の皮膚への投与量は緑茎葉の乾燥質量として1mg以上1000mg以下であることが好ましく、また特定植物の花部の乾燥質量として1日0.01mg以上100mg以下であることが好ましい。本発明の組成物が経口摂取する形態である場合、1日の経口投与量は緑茎葉の乾燥質量として500mg以上50g以下であることが好ましく、また特定植物の花部の乾燥質量としては1mg以上1000mg以下であることが好ましい。本発明の組成物は、連続的に、例えば毎日でも投与でき、長期的、例えば3ヶ月の間投与を継続して差し支えない。
【0041】
本発明の組成物は化粧料として用いることができ、この場合の本発明の組成物を、本発明の化粧料ともいう。本発明の化粧料には、上記緑茎葉及び特定の花部以外に、医薬部外品又は化粧料などに通常使用される他の成分を、該化粧料の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような成分としては、例えば水、他の薬効成分、他の油剤、基剤、保湿剤、粉体、ゲル化剤、増粘剤、界面活性剤、乳化剤、抗炎症剤、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、増粘剤、色素、香料、保存剤や、コラーゲン等の皮膚老化防止・改善剤、発毛抑制剤、防腐剤、防黴剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、紫外線分散剤等が挙げられる。ここで他の薬効成分としては、活性酸素除去剤、抗酸化剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、殺菌剤、ビタミン剤、ホルモン剤、ビタミンAなどのカロテノイド類、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンE、及びこれらの誘導体又はこれらの塩などが挙げられる。
【0042】
本発明の化粧料は、通常用いられる方法により、緑茎葉及び特定植物の花部と他の成分とを混合して調製することができ、医薬品、医薬部外品、化粧品、トイレタリー用品として使用できる。化粧料の具体的な形態は、特に限定されないが、クリーム、化粧クリーム、乳液、化粧水、美容液、ローション、洗顔料、クレンジング、ボディソープ、ボディシャンプー、パック、石鹸、ファンデーション、口紅、リップグロス、頬紅、水性軟膏、油性軟膏、シップ、ゲル(ジェル)、浴用剤等の皮膚用化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤、ヘアトニック、ヘアクリーム、整髪料、育毛剤、石鹸、パーマ・カラーの前後処理剤等の髪用化粧料、化粧品と類似した剤型で薬事法の対象外の製品(いわゆる、雑品)であってよい。また、シップやゲルのような担体や架橋剤に保持・吸収させ、局部へ貼付するなどの方法により、局所的な長時間投与を行うこともできる。また、点眼剤、点鼻剤としての投与も可能である。
【0043】
本発明の組成物は、上述したように、化粧料として用いる場合、経皮投与のような非経口投与して用いることができる。しかしながら、下記の通り、本発明の組成物を経口投与により用いてもよい。
【0044】
本発明の組成物を、経口で摂取する組成物とする場合、上記緑茎葉及び特定植物の花部以外に、通常使用される他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような成分としては、種々の賦形剤、結合剤、光沢剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、香料、添加剤などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
本発明の組成物は、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、各種の剤形に製剤可能であり、剤形としては、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、ペースト状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0046】
本発明の組成物は、抗糖化組成物として用いることが好適である。この抗糖化組成物の投与形態は、非経口投与であっても経口投与であってもよく、上記した本発明の組成物のいずれの形態も、本発明の抗糖化組成物とすることができる。抗糖化としては、メイラード反応生成物、例えば、糖化タンパク質、α−ジカルボニル化合物、AGE等の生成抑制のほか、これらの分解促進も含まれる。
【0047】
本発明の組成物は、後述する実施例の記載から明らかな通り、緑茎葉及び特定の花部の二成分により、相乗的に高い抗糖化作用を得ることができる。
このため、本発明の組成物は、安全に非経口摂取及び経口摂取できるのみならず、従来の抗糖化剤に比べて高い抗糖化作用を奏することができ、例えば、これを摂取することで皮膚の老化を改善及び防止でき、具体的には肌のハリや弾力性を向上させて、シワ、たるみ、くすみを防止及び改善することが可能である。また本発明の組成物は糖尿病合併症の治療及び予防に有用である。更に、本発明の組成物は、アテローム性動脈硬化、アルツハイマー病、慢性関節リウマチ、変形性関節症などの種々の衰弱性疾患の治療及び予防に有用である。また本発明の組成物は、これらの用途以外にも抗糖化作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができ、例えばタンパク質の糖化反応に起因する骨粗鬆症等の疾患の予防・治療剤としても用いることができる。本発明の組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル等)に対して適用することもできる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。以下、特に断らない場合「%」は質量%、「部」は質量部を表す。
【0049】
〔製造例1〕
背丈が約30cmで刈り取った、大麦の茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、次いで2〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、80〜100℃の熱湯で90秒間〜180秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜135℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を、ミキサーを用いて約1mmの大きさに粗粉砕処理し、次いでジェットミル粉砕機を用いて微粉砕処理することにより、大麦の茎葉の乾燥粉末(粉砕末)を得た。
【0050】
〔製造例2〕
背丈が約30cmで刈り取った、大麦の茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去した後、得られた茎葉はジューサーを用いて搾汁加工し搾汁を得た。得られた搾汁はスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、乾燥粉末を得た。
【0051】
〔製造例3〕
甘藷の品種「すいおう」の種芋を植え込み、茎の長さ(地面から外に出ている部分の長さ)が150cm程度となるまで栽培した。甘藷の茎葉の先端部から60cmの部分を刈り取り、水で洗浄した。得られた甘藷の茎葉を5mm程度にカットし、pH8.0に調整した90℃の熱水へ1分間浸漬した。次いで、25℃の水で冷却し、冷却した甘藷茎葉を遠心分離して脱水した。脱水後、水分量が約20質量%となるまで、70℃にて温風乾燥(一次乾燥)し、更に最終水分量が3質量%となるように、80℃にて温風乾燥(二次乾燥)した。次いで、150℃の飽和水蒸気を用いて、3秒間加圧蒸気殺菌した。次いで、甘藷茎葉に含まれている水を温風乾燥で乾燥した後、200メッシュ区分を90質量%が通過するようにハンマーミルを用いて微粉砕し、甘藷茎葉の乾燥粉末(粉砕末)を得た。
【0052】
被験物質として以下のものを用いた。
<緑茎葉>
・製造例1で得られた大麦の茎葉の乾燥粉末
・製造例2で得られた大麦の茎葉の搾汁粉末
・製造例3で得られた甘藷の茎葉の乾燥粉末
<花部>
・ハクトウの花を熱水で抽出して得られた、市販の抽出物粉末
・ザクロの花を含水エタノールで抽出して得られた、市販の抽出物粉末
・バラの花を熱水で抽出して得られた、市販の抽出物粉末
・桜の花を含水エタノールで抽出して得られた、市販の抽出物粉末
・キクの花を水で抽出して得られた、市販の抽出物粉末
・ベニバナの花を水で抽出して得られた、市販の抽出物の粉末
・サフランのめしべを含水エタノールで抽出して得られた、市販の抽出物の粉末
【0053】
更に、リン酸緩衝液調製用粉末 (1/15 mol/l pH 7.2)(和光純薬工業(株))を蒸留水に溶解して67mMリン酸緩衝液(以下、67mMPBと略する)を調製した。また、D(+)グルコース (ナカライテスク)を67mMPBで溶解して200mg/mlグルコース溶液を調製し、また、アルブミン(ウシ血清由来コーンフラクションV、pH7.0、生化学用)(和光純薬工業(株))(以下、BSAと略する)を67mMPBで溶解して40mg/mlBSA溶液を調製した。
【0054】
67mMPBに、上記の製造例1で得られた大麦茎葉粉末及び、ハクトウの花の抽出物粉末を溶解することにより、大麦茎葉粉末と花の抽出物粉末の濃度を下記表1に示す濃度とした実施例1の被験物質溶液を調製した。
【0055】
得られた実施例1の被験物質溶液と、グルコース溶液、BSA溶液及び67mMPBとを下記表2に示す割合で配合して、試験溶液(Test, Blank の2種)とコントロール(Test, Blank の2種)を調製した。
【0056】
試験溶液及びコントロールを60℃で48時間インキュベートし、インキュベート後の試験溶液及びコントロールを370nmで励起したときの440nmの蛍光強度をそれぞれ分光蛍光光度計で測定し、次の式により糖化阻害率(AGEs生成阻害率(%))を算出した。その結果を表1に示す。
【0057】
糖化阻害率(%)
=(1 - [(Sample test−Sample blank)/ (Control test−Control blank) ])×100
(式中、Sample test:試験溶液(test)の蛍光強度
Sample blank:試験溶液(blank)の蛍光強度
Control test:コントロール(test)の蛍光強度
Control blank:コントロール(blank)の蛍光強度 )
【0058】
〔比較例1〕
被験物質溶液として、大麦の茎葉粉末のみを含む溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、糖化阻害率(%)を得た。その結果を下記表1に示す。
【0059】
〔比較例2〕
被験物質溶液として、ハクトウの花の抽出物粉末のみを含む溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、糖化阻害率(%)を得た。その結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
〔比較例3〜21、実施例2〜14〕
被験物質溶液として、下記表3〜表18に示す被験物質を下記表1に示す濃度とした溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、糖化阻害率(%)を得た。その結果を下記表3〜表18に示す。なお以下では、実施例との比較のために、同じ比較例を2以上の表に記載している場合がある。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】
【0072】
【表12】
【0073】
【表13】
【0074】
【表14】
【0075】
【表15】
【0076】
【表16】
【0077】
【表17】
【0078】
【表18】
【0079】
表3〜表18に示す結果から明らかな通り、緑茎葉と特定植物の花部とを組み合わせた各実施例では、緑茎葉又は特定植物の花部のみを用いた比較例に比べて、非常に高い糖化阻害率が示された。この結果から、緑茎葉と特定植物の花部との相乗効果により、本発明の組成物が、高い抗糖化作用を奏し、化粧料及び抗糖化組成物として有用であることは明らかである。一方、比較例11、比較例17及び比較例21の結果から、特許文献1に記載のサフラン等、既に抗糖化作用が知られた成分であっても、特定植物以外の花部の抽出物を用いた場合は、この効果が得られないことが判る。
【0080】
<処方例>
以下の組成物の処方例中の数値の単位は「質量%」である。
また、各花の抽出物粉末の質量は乾燥質量である。
組成物の全処方において、各花の抽出物粉末としては、実施例で記載した抽出物が好ましい。
【0081】
(処方例1:化粧水)
全体を100質量部として、大麦茎葉搾汁末 0.01質量部、ハクトウ花部抽出物粉末 0.01質量部、グリセリン 10質量部、ジグリセリン 3質量部、1,3−ブチレングリコール 12質量部、ペンチレングリコール 3質量部、ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部、クエン酸 0.01質量部、クエン酸ナトリウム 0.02質量部、キサンタンガム 0.1質量部、メチルパラベン 0.15質量部、カルボマー 0.2質量部、水酸化ナトリウム 0.03質量部及び水 残部を混合して、化粧水の態様で本発明の組成物を調製した。
【0082】
(処方例2:石鹸)
全体を100質量部として、大麦茎葉粉末 0.5質量部、ザクロ花部抽出物粉末 0.2質量部、グリセリン 2質量部、オリーブ油 1質量部、EDTA−4ナトリウム 0.1質量部、エチドロン酸4ナトリウム 0.2質量部及び石ケン素地 残部を混合及び固化することにより、石鹸の態様で本発明の組成物を調製した。
【0083】
(処方例3:化粧用クリーム)
全体を100質量部として、甘藷茎葉粉末 0.1質量部、キク花部抽出物粉末 0.1質量部、スクワラン 15.0質量部、ミリスチン酸オクチルドデシル 4.0質量部、水素添加大豆リン脂質 0.2質量部、ブチルアルコール 2.4質量部、硬化油 1.5質量部、ステアリン酸 1.5質量部、親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5質量部、モノステアリン酸ポリグリセリル 0.5質量部、ベヘニルアルコール 0.8質量部、モノミリスチン酸ポリグリセリル 0.7質量部、サラシミツロウ 0.3質量部、d−δ−トコフェロール 0.1質量部、メチルパラベン 0.3質量部、C10〜30アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2質量部、カルボキシビニルポリマー 0.1質量部、1,3−ブタンジオール 18.0質量部、水酸化ナトリウム 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、化粧用クリームの態様で本発明の組成物を調製した。
【0084】
(処方例4:錠剤)
全体を100質量部として、甘藷茎葉粉末 60質量部、バラ花部抽出物粉末 20質量部、結晶性セルロース 10質量部、乳糖 5質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0085】
(配合例5:顆粒剤)
全体を100質量部として、大麦茎葉粉末 80質量部、サクラ花部抽出物粉末 0.01質量部、乳糖 10質量部、ステアリン酸カルシウム 1質量部及び結晶セルロース 残部を混合及び顆粒化することにより、顆粒剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0086】
(処方例6:カプセル剤)
全体を100質量部として、大麦茎葉搾汁末 55質量部、ベニバナ花部抽出物粉末 20質量部、レシチン 8質量部及びオリーブ油 残部を混合して調製したものを内容液として、これをカプセル殻に内包することにより、カプセル剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0087】
(処方例7:液剤)
全体を100質量部として、大麦茎葉搾汁末 5.25質量部、バラ花部抽出物粉末 1質量部、果糖ブドウ糖液糖 10質量部、クエン酸 1質量部、安息香酸ナトリウム 0.02質量部、香料製剤 2質量部、スクラロース 0.05質量部、アセスルファムカリウム 0.03質量部、及び精製水 残部を混合して、液剤の態様で本発明の組成物を調製した。