特許第6710475号(P6710475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710475
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】材料処理用ロータリーキルン
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/32 20060101AFI20200608BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20200608BHJP
   F27B 7/38 20060101ALI20200608BHJP
   F27D 3/08 20060101ALI20200608BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   F27B7/32ZAB
   B09B3/00 302A
   F27B7/38
   F27D3/08
   F23G5/44 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-241930(P2017-241930)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-109010(P2019-109010A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】曽田 光洋
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩幸
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−115273(JP,U)
【文献】 特開2001−090922(JP,A)
【文献】 特開平11−304370(JP,A)
【文献】 特開2003−294214(JP,A)
【文献】 特開2001−050670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/00− 7/42
F27D 3/00− 5/00
B09B 3/00
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が含有された材料を、材料供給管内を通して回転可能に支持された円筒状のキルン筒体内に供給し、前記のキルン筒体を加熱させながら回転させて、キルン筒体内に供給された前記の材料を加熱させながら搬送させ、前記の材料中における樹脂を気化させて排気部から排気させて処理するようにした材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の材料供給管内を通して前記の材料を、前記のキルン筒体内が前記の材料に含有された樹脂が気化される温度の位置に搬送させて、前記の材料供給管における供給口から前記の材料をキルン筒体内に供給させると共に、前記の材料供給管内が材料に含有された樹脂が溶融される温度に加熱されるのを防止する冷却手段と、前記の材料供給管及び冷却手段の外周部を断熱させる断熱手段とを設けたことを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【請求項2】
請求項1に記載の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の材料供給管内に供給された材料を搬送させる搬送スクリュウを、材料供給管内に設けたことを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の冷却手段として、前記の材料供給管の外周側に冷媒通路を有する冷却管を前記の材料供給管に沿って設け、この冷却管における冷媒通路に冷媒を通して前記の材料供給管を冷却させることを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【請求項4】
請求項3に記載の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の断熱手段として、前記の冷却管の外周側に、筒状の断熱部材を前記の冷却管に沿って設けたことを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の材料供給管からキルン筒体内に材料を供給する供給口より材料送り方向下流側の位置に、キルン筒体内における熱が前記の供給口を通して材料供給管内に導かれるのを抑制する輻射シールドを設けたことを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【請求項6】
請求項5に記載の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の輻射シールドに金属板を用い、この輻射シールドを前記の断熱手段から材料送り方向下流側に向けて設けられた支柱に保持させたことを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の材料中における樹脂を気化させて排気部から排気させるにあたり、前記の排気部を、キルン筒体内に材料を供給させる供給側に設けたことを特徴とする材料処理用ロータリーキルン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属,金属化合物,炭素材料等にプラスチック等の樹脂が含有された材料を、材料供給管内を通して回転可能に支持された円筒状のキルン筒体内に供給し、前記のキルン筒体を加熱させながら回転させて、キルン筒体内に供給された前記の材料を加熱させながら搬送させ、前記の材料中における樹脂を気化させて排気部から排気させて除去し、前記の金属,金属化合物,炭素材料等を分離して取り出す処理をするようにした材料処理用ロータリーキルンに関するものである。特に、前記のような材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記のように樹脂が含有された材料を前記の材料供給管内を通してキルン筒体内に供給し、このキルン筒体を加熱させながら回転させて、前記の材料をキルン筒体内において搬送させながら加熱させ、前記の材料中における樹脂を気化させて排気部から排気させるにあたり、材料中における樹脂が速やかに気化されずに、材料中における樹脂が溶融された粘着体の状態で前記の材料供給管内やキルン筒体内に付着して、前記の材料が材料供給管内やキルン筒体内に蓄積して詰まったりするのを防止し、材料供給管を通して前記の材料をキルン筒体内に適切に供給させて、前記の材料中における樹脂を速やかに気化させて排気させ、前記の材料を適切に処理できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロータリーキルンは様々な用途に利用されており、例えば、特許文献1に示されるように、冶金や窯業において焙焼や乾燥などを行うために使用されたり、特許文献2に示されるように、含水量の高い原料を乾燥させたり、特許文献3に示されるように、有機性廃棄物を処理して炭化物や賦活物や灰化物として取り出したりするのに使用されている。
【0003】
ここで、このようなロータリーキルンにおいては、一般に、材料供給管内を通して処理する材料を、回転可能に支持された円筒状のキルン筒体内に供給し、前記のキルン筒体を回転させると共に、加熱手段によりキルン筒体内に供給された材料を加熱させて、キルン筒体内に供給された材料を加熱させながら搬送させて処理し、処理された材料を冷却させて導出部から導出させるようにしている。
【0004】
また、従来においては、金属,金属化合物,炭素材料等に樹脂が含有された材料を加熱させ、前記の材料に含有された樹脂を除去させて、樹脂が除去された金属,金属化合物,炭素材料等の材料を得ることが行われており、このような処理を行うのに様々な熱処理炉が使用されていた。
【0005】
そして、このように金属,金属化合物,炭素材料等に樹脂が含有された材料を加熱させ、前記の材料に含有された樹脂を除去させて、樹脂が除去された金属,金属化合物,炭素材料等の材料を得るのに、前記のようなロータリーキルンを使用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−165476号公報
【特許文献2】実用新案登録第3031902号公報
【特許文献3】特開2004−34003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、前記のようなロータリーキルンを使用し、金属,金属化合物,炭素材料等に樹脂が含有された材料を、材料供給管内を通して回転可能に支持された円筒状のキルン筒体内に供給し、前記のキルン筒体を加熱させながら回転させて、キルン筒体内に供給された材料を加熱させながら搬送させ、前記の材料中における樹脂を気化させて排気部から排気させるようにした場合、材料中における樹脂がキルン筒体内において徐々に加熱されて溶融され、溶融されて粘着性を持った樹脂がキルン筒体内に付着して次第に蓄積し、前記のようにキルン筒体を回転させて、前記の材料をキルン筒体内において加熱させながら搬送させることが困難になり、前記の材料中における樹脂を気化させて適切に除去させることができなくなるという問題があった。
【0008】
また、前記のように材料供給管内を通して樹脂が含有された材料を円筒状のキルン筒体内に供給するにあたり、前記の材料を、前記の材料供給管を通してキルン筒体内が前記の材料中に含まれる樹脂が気化される温度に達する位置まで搬送させて、この材料供給管の供給口から前記の材料をキルン筒体内に供給し、キルン筒体内に供給された材料中に含まれる樹脂が粘着性を持った溶融状態で居る時間をできるだけ短くし、キルン筒体内において樹脂を速やかに気化させることが考えられた。
【0009】
しかし、このように樹脂が含有された材料を、材料供給管内を通してキルン筒体内が前記の材料中に含まれる樹脂が気化される温度に達する位置まで導くようにした場合、樹脂が含有された材料を前記のように加熱されたキルン筒体の内部の位置に導く材料供給管内の途中において、前記の材料中に含まれる樹脂が、材料供給管内において次第に溶融され、このように溶融されて粘着性を持った樹脂が前記の材料供給管内に付着して次第に蓄積し、材料供給管内を通して前記の材料を、樹脂が気化される温度に達するキルン筒体の位置まで導くことができなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、ロータリーキルンを使用し、金属,金属化合物,炭素材料等に樹脂が含有された材料を、材料供給管を通して回転可能に支持された円筒状のキルン筒体内に供給し、前記のキルン筒体を加熱させながら回転させて、キルン筒体内に供給された材料を加熱させながら搬送させ、前記の材料中に含まれる樹脂を気化させて排気部から排気させて処理する場合における前記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0011】
すなわち、本発明においては、前記のように材料供給管内を通して樹脂が含有された材料をキルン筒体内に供給し、このキルン筒体を加熱させながら回転させて、前記の材料をキルン筒体内において搬送させながら加熱させ、前記の材料中に含まれる樹脂を気化させて排気部から排気させて処理するにあたり、材料中に含まれる樹脂が溶融された粘着体の状態で前記の材料供給管内やキルン筒体内に付着して蓄積するのを防止し、材料供給管を通して前記の材料をキルン筒体内に適切に供給させて、前記の材料中における樹脂をキルン筒体内において速やかに気化させて排気部から排気させ、前記の材料から金属,金属化合物,炭素材料等を分離して取り出す処理が適切にできるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記のような課題を解決するため、樹脂が含有された材料を、材料供給管内を通して回転可能に支持された円筒状のキルン筒体内に供給し、前記のキルン筒体を加熱させながら回転させて、キルン筒体内に供給された前記の材料を加熱させながら搬送させ、前記の材料中における樹脂を気化させて排気部から排気させて処理するようにした材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の材料供給管内を通して前記の材料を、前記のキルン筒体内が前記の材料に含有された樹脂が気化される温度の位置に搬送させて、前記の材料供給管における供給口から前記の材料をキルン筒体内に供給させると共に、前記の材料供給管内が材料に含有された樹脂が溶融される温度に加熱されるのを防止する冷却手段と、前記の材料供給管及び冷却手段の外周部を断熱させる断熱手段とを設けた。
【0013】
ここで、本発明に係る材料処理用ロータリーキルンのように、前記のような冷却手段を設け、材料供給管内が材料に含有された樹脂が溶融される温度に加熱されるのを防止させると、材料供給管内を通して前記の材料を、前記のキルン筒体内が前記の材料に含有された樹脂が気化される温度の位置まで導く途中において、前記の材料中に含有された樹脂が溶融された粘着体の状態で材料供給管内に付着して蓄積するのが防止されながら、前記の材料が材料供給管内を通して、材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱されたキルン筒体内の位置まで導かれるようになる。そして、このように材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱されたキルン筒体内の位置において、前記の材料供給管の供給口からキルン筒体内に供給させると、キルン筒体内に供給された前記の材料に含有された樹脂が、溶融された粘着体の状態でキルン筒体内に付着して蓄積することがなく、速やかに気化されて排気部から排気されるようになる。
【0014】
また、本発明に係る材料処理用ロータリーキルンのように、前記の材料供給管及び冷却手段の外周部を断熱させる断熱手段を設けると、前記のようにキルン筒体内において気化された材料中における樹脂の気体(気化した樹脂の成分)が、材料供給管や冷却手段の外周部に直接接触して冷却されるのが抑制され、気化された樹脂が材料供給管や冷却手段の外周部で凝固されて、材料供給管や冷却手段の外周部に樹脂が付着するのが防止される。
【0015】
ここで、本発明の材料処理用ロータリーキルンにおいて、前記の材料供給管内に供給された材料を搬送させてキルン筒体内に導くにあたっては、前記の材料供給管内に搬送スクリュウを設け、この搬送スクリュウを回転させて材料供給管内に供給された材料を搬送させるようにすることができる。
【0016】
また、本発明の材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記の冷却手段として、前記の材料供給管の外周側に冷媒通路を有する冷却管を前記の材料供給管に沿って設け、この冷却管における冷媒通路に冷媒を通して前記の材料供給管内を冷却させることができる。このようにすると、前記の材料供給管内が、前記の材料に含有された樹脂が溶融される温度に加熱されるのを簡単に防止することができる。
【0017】
また、前記のように冷却手段として、材料供給管の外周側に冷媒通路を有する冷却管を前記の材料供給管に沿って設けた場合、前記の断熱手段として、前記の冷却管の外周側に、筒状の断熱部材を前記の冷却管に沿って設けるようにすることができる。そして、このように筒状の断熱部材を、冷却管に沿って冷却管の外周側に設けると、キルン筒体内において気化された材料中に含まれる樹脂の気体が、冷却管の外周部に接触して冷却されるのが防止され、前記の樹脂の気体が冷却管の外周部に凝固されて付着するということがなく、気化された樹脂の気体が排気部から適切に排気されるようになる。
【0018】
また、本発明の材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記の材料供給管からキルン筒体内に材料を供給する供給口よりも材料送り方向下流側の位置に、キルン筒体内における熱が前記の供給口を通して材料供給管内に導かれるのを抑制する輻射シールドを設けることが好ましい。このようにすると、材料中に含まれる樹脂が気化される温度に加熱されたキルン筒体内の熱が、前記の供給口を通して材料供給管内に導かれるのが抑制され、前記の材料を材料供給管の供給口に導く途中で材料中における樹脂が溶融されて粘着体の状態で材料供給管内に付着するのが防止されるようになる。ここで、このような輻射シールドを設けるにあたっては、輻射シールドに金属板を用い、この輻射シールドを前記の断熱部材から材料送り方向下流側に向けて設けられた支柱に保持させるようにすることができる。
【0019】
また、本発明の材料処理用ロータリーキルンにおいて、材料中における樹脂が気化された気体を排気部から排気させるにあたっては、前記の排気部を、キルン筒体内に材料を供給させる供給側に設けることが好ましい。このようにすると、樹脂が気化された後の材料をキルン筒体内で搬送させて導出口から導出させる場合に、前記の材料から気化された樹脂の気体が、前記の処理後の材料と一緒に導出口に導かれて、気化された樹脂の気体が処理後の材料に接触して凝固するのが防止され、処理後の材料に樹脂が再付着するということがなくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明における材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記のように樹脂が含有された材料を、材料供給管を通してキルン筒体内が前記の材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱された位置まで導くにあたり、材料供給管内が材料に含有された樹脂が溶融される温度に加熱されるのを防止する冷却手段を設けたため、材料供給管内を通して前記の材料を、キルン筒体内が前記の材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱される位置まで導く途中において、前記の材料中における樹脂が溶融された粘着体の状態で材料供給管内に付着して蓄積するのが防止され、前記の材料が材料供給管内を通して、材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱されたキルン筒体内の位置まで適切に導かれるようになる。そして、このように前記の材料が、材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱されたキルン筒体内の位置まで導かれて、材料供給管の供給口からキルン筒体内に供給され、材料中における樹脂がキルン筒体内で速やかに気化されて排気部から排気されるようになり、材料中における樹脂が溶融された粘着体の状態でキルン筒体内に付着して蓄積し、材料の搬送が困難になるということもなくなり、前記の材料から金属,金属化合物,炭素材料等を分離して取り出す処理が適切にできるようになる。
【0021】
また、本発明における材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記のように材料供給管及び冷却手段の外周部を断熱させる断熱手段を設けたため、前記のようにキルン筒体内において気化された材料中における樹脂の気体が、材料供給管や冷却手段の外周部に直接接触して冷却されるのが抑制され、気化された樹脂が材料供給管や冷却手段の外周部で凝固されて、材料供給管や冷却手段の外周部に樹脂が付着するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る材料処理用ロータリーキルンにおいて、材料供給管内を通して樹脂が含有された材料をキルン筒体内に供給し、キルン筒体を加熱させながら回転させて、キルン筒体内に供給された前記の材料に含有された樹脂を気化させてキルン筒体内を搬送させ、気化された樹脂の気体を排気部から排気させると共に、樹脂が気化された後の材料を導出部から導出させる状態を示した概略断面説明図である。
図2】前記の実施形態に係る材料処理用ロータリーキルンにおいて、材料供給管内を通して材料を、キルン筒体内が材料に含有された樹脂が気化される温度に加熱される位置まで導いてキルン筒体内に供給する状態を示した部分拡大概略断面説明図である。
図3】前記の実施形態に係る材料処理用ロータリーキルンにおいて、キルン筒体の底部を両側から対になった支持ローラーによって回転可能に支持すると共に、前記の材料供給管の供給口よりも材料送り方向下流側の位置に、輻射シールドを設けた状態を示した部分拡大概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る材料処理用ロータリーキルンを添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る材料処理用ロータリーキルンは、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
この実施形態に係る材料処理用ロータリーキルンにおいては、図1及び図2に示すように、樹脂が含有された材料Wを材料案内部11から材料供給管12内に供給するようにしている。そして、この材料供給管12を、加熱されながら回転される円筒状のキルン筒体20内に挿入させて、この材料供給管12内に供給された前記の材料Wを、材料供給管12内を通してキルン筒体20内が前記の材料Wに含有された樹脂が気化される温度の位置に導き、この材料供給管12の搬送方向下流側における供給口12aから前記の材料Wを前記のキルン筒体20内の加熱された前記の位置に供給するようにしている。なお、この実施形態においては、前記の材料供給管12を前記のキルン筒体20内に挿入させるにあたり、キルン筒体20内の中心よりも下方の位置に設け、前記の材料Wを材料供給管12の供給口12aからキルン筒体20内に落下させるようにして供給した際に、供給された材料Wがキルン筒体20内で飛散するのを抑制するようにしている。
【0025】
ここで、この実施形態においては、前記のように樹脂が含有された材料Wを、材料供給管12の供給口12aから前記のキルン筒体20内の温度が材料Wに含有された樹脂が気化される温度の位置に供給し、前記の材料Wに含まれる樹脂が溶融されて粘着体の状態でキルン筒体20内に付着する前に、材料Wに含まれる樹脂を気化させるようにしている。このため、材料供給管12の供給口12aからキルン筒体20内に供給された材料Wに含有された樹脂が、溶融された粘着体の状態でキルン筒体20内に付着して蓄積することがなく、キルン筒体20内に材料Wが詰まったりすることなく、適切に搬送されるようになる。
【0026】
そして、このように樹脂を気化させるようにして材料Wをキルン筒体20内で加熱させながら搬送させた後は、前記の材料をキルン筒体20が加熱されていない冷却部分Cを通して冷却させながら導出部30に導き、前記のように処理した材料Wを導出部30における導出口31から導出させるようにしている。
【0027】
また、前記の導出部30において、窒素ガス等のキャリアガスを供給するキャリアガス供給口32を設け、このキャリアガス供給口32から前記のキャリアガスをキルン筒体20内に導入させ、前記のようにキルン筒体20内において気化された樹脂の気体とこのキャリアガスと一緒にしてキルン筒体20内を通して材料供給側に設けられた排気部40に導き、この排気部40に設けられた排気路41を通して前記の樹脂の気体とキャリアガスとを含む排ガスを排気させるようにしている。
【0028】
ここで、この実施形態においては、前記のように材料供給管12内を通して樹脂が含有された材料Wを搬送させてキルン筒体20内に供給するにあたり、前記の材料供給管12内に搬送スクリュウ13を設け、この搬送スクリュウ13をモーター14により回転させて、材料供給管12内に供給された材料Wをこの搬送スクリュウ13により搬送させて前記の供給口12aに導き、この供給口12aからキルン筒体20内の温度が材料Wに含有された樹脂が気化される温度の位置に供給するようにしている。なお、この実施形態においては、前記のように材料供給管12内を通して樹脂が含有された材料Wを搬送させてキルン筒体20内に供給するにあたり、前記の材料供給管12内において回転する搬送スクリュウ13によって適当量の材料Wを搬送させてキルン筒体20内に供給させるようにしたが、前記の材料供給管12によって適当量の材料Wが搬送させてキルン筒体20内に供給させることができれば、特に、搬送スクリュウ13を設けなくてもよく、例えば、前記の材料供給管12を適当な角度傾斜させて、材料Wが滑落するようにして設けることも可能である。
【0029】
また、前記のように材料供給管12内を通して樹脂が含有された材料Wを、キルン筒体20内の温度が材料Wに含有された樹脂が気化される温度の位置に搬送させるにあたり、前記の材料供給管12内が材料Wに含有された樹脂が溶融される温度に加熱されて、溶融された粘着性の樹脂が材料供給管12内に付着するのを防止するため、材料供給管12を冷却させる冷却手段15を設けている。そして、この実施形態においては、前記の冷却手段15として、冷媒を通す二重管構造になった冷却管15aを、前記の材料供給管12に沿って材料供給管12の外周側に設け、この冷却管15a内に冷媒導入部15bから水や冷風等の冷媒を供給し、この冷却管15a内を流れる冷媒により前記の材料供給管12を冷却させて、材料供給管12内の温度が前記の材料Wに含有された樹脂が溶融される温度に加熱されるのを防止し、その後、このように冷却管15a内を通して材料供給管12を冷却させた後の冷媒を冷媒導出部15cから導出させるようにしている。
【0030】
また、この実施形態においては、材料供給管12や冷却管15aの外周部を断熱させる断熱手段16として、断熱材で構成された筒状の断熱部材16を前記の冷却管15aに沿って冷却管15aの外周側に設けている。このようにすると、前記のように材料供給管12の外周側に設けた冷却管15aに冷媒を通して材料供給管12内を冷却させた場合において、前記のようにキルン筒体20内に供給されて材料Wから気化された樹脂の気体が冷却管15aの外周部に直接接触して冷却されるのが防止され、気化された樹脂が冷却管15aの外周部において凝固して付着するのが抑制される。また、キルン筒体20内の熱によって前記の冷却管15aが加熱されて、冷却効率が低下することも防止できる。
【0031】
また、前記のように材料供給管12の供給口12aから材料Wを、樹脂が気化される温度になったキルン筒体20内に供給する際に、キルン筒体20内における熱が前記の供給口12aを通して材料供給管12内に導かれて、供給口12aの近傍における材料供給管12内の材料Wに含まれる樹脂が溶融されて粘着体の状態で材料供給管12に付着するおそれがある。
【0032】
このため、この実施形態においては、図1図3に示すように、前記の材料供給管12における供給口12aよりも材料送り方向下流側の位置に、キルン筒体20内における熱が前記の供給口12aを通して材料供給管12内に導かれるのを抑制するように、前記の供給口12aよりも径が大きくなった金属板で構成された輻射シールド17を、前記の筒状の断熱部材16の先端部から材料送り方向下流側に向けて設けられた複数本の支柱18に保持させ、前記の輻射シールド17によって、キルン筒体20内における熱が供給口12aを通して材料供給管12内に導かれるのを防止するようにしている。
【0033】
また、輻射シールド17の支柱18は前記の断熱部材16に取り付けられているため、輻射シールド17が前記の冷却管15aによって冷やされて、樹脂の気体が輻射シールド17に粘着体になって付着するということもない。
【0034】
また、この実施形態における材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記のようにキルン筒体20を回転させるにあたり、図1図3に示すように、前記の材料供給管12が設けられる供給側と、前記の導出部30が設けられる導出側との位置に、それぞれキルン筒体20の底部を両側から回転可能に支持する対になった支持ローラー21,21を設けると共に、キルン筒体20の導出側の部分に、回転モーター22aによってキルン筒体20を周方向に回転させる回転装置22を設けている。なお、回転装置22はキルン筒体20の外周に巻き付けたチェーン(図示せず)を回転モーター22aによって回転させるなど、どのような構造であってもよい。
【0035】
また、このように回転されるキルン筒体20を加熱させるにあたり、この実施形態においては、前記のキルン筒体20を回転可能に支持する前記の供給側と導出側における支持ローラー21,21の間において、前記のキルン筒体20の外周側に、断熱材で構成された筒状の断熱炉壁50をキルン筒体20の外周と所要間隔の空間部Sを形成するように設け、キルン筒体20の外周と対向するようにしてこの断熱炉壁50の内周側にキルン筒体20を加熱させるヒーター等の加熱装置51を設けている。なお、この実施形態においては、キルン筒体20を加熱させるにあたり、断熱炉壁50の内周側にヒーター等の加熱装置51を設けるようにしたが、断熱炉壁50とキルン筒体20の外周との間の空間部Sに熱風を導入させて、キルン筒体20を加熱させるようにすることもできる。
【0036】
ここで、この実施形態においては、前記の加熱装置51によって加熱された空間部Sの熱が、断熱炉壁50とキルン筒体20との間から外部に漏れ出すのを抑制するように、この断熱炉壁50の軸方向両端部に、それぞれ前記のキルン筒体20との間の隙間を閉塞させて回転可能に保持させるための保持部52をキルン筒体20に向けて設けると共に、前記の保持部52と対向する位置におけるキルン筒体20の外周に所要幅の断熱材23を設け、前記の断熱炉壁50における保持部52と前記のキルン筒体20における断熱材23との間を回転可能な状態で閉塞させる弾性シール53を設けている。
【0037】
また、この実施形態における材料処理用ロータリーキルンにおいては、前記のキルン筒体20と前記の導出部30や排気部40との接続部分の間からガスや熱が漏れ出すのを抑制するため、導出部30を接続させる導出部側におけるキルン筒体20の外周側端部に所要幅の断熱材24を設けると共に、前記の導出部30にこのキルン筒体20における断熱材24との間を回転可能な状態で閉塞させる弾性シール33を設け、また排気部40を接続させる排気側におけるキルン筒体20の外周側端部に所要幅の断熱材25を設けると共に、前記の排気部40にこのキルン筒体20における断熱材25との間を回転可能な状態で閉塞させる弾性シール42を設けている。
【0038】
ここでは、弾性シール33、42、53は高温になると弾性やシール性を失うため、高温になっているキルン筒体20の表面に直接触れないように、断熱材23、24、25で保護している。
【0039】
また、断熱材23が設けられている区間Aは「断熱帯」として機能し、キルン筒体20自体の高温の空間部Sから低温の冷却部分Cにかけての温度変化を緩やかにし、急激な温度変化によってキルン筒体20自体が変形しないようにしている。
【0040】
本発明では、このようにして材料Wに含まれる樹脂が粘着体の状態でいる機会を極力少なくできるため、キルン筒体20内や材料供給管12内に樹脂の粘着体が付着して蓄積することがなくなり、材料Wの搬送トラブルのないロータリーキルンが提供できる。
【符号の説明】
【0041】
11 :材料案内部
12 :材料供給管
12a :供給口
13 :搬送スクリュウ
14 :モーター
15 :冷却手段
15a :冷却管
15b :冷媒導入部
15c :冷媒導出部
16 :断熱手段(断熱部材)
17 :輻射シールド
18 :支柱
20 :キルン筒体
21 :支持ローラー
22 :回転装置
22a :回転モーター
23 :断熱材
24 :断熱材
25 :断熱材
30 :導出部
31 :導出口
32 :キャリアガス供給口
33 :弾性シール
40 :排気部
41 :排気路
42 :弾性シール
50 :断熱炉壁
51 :加熱装置
52 :保持部
53 :弾性シール
A :区間(断熱帯)
C :冷却部分
S :空間部
W :材料
図1
図2
図3