特許第6710504号(P6710504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710504
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】生体音聴診装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   A61B7/04 E
   A61B7/04 G
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-147804(P2015-147804)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-23595(P2017-23595A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502196463
【氏名又は名称】株式会社テック・エキスパーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】小林 透
(72)【発明者】
【氏名】石戸谷 耕一
(72)【発明者】
【氏名】水野 智啓
(72)【発明者】
【氏名】青山 将士
(72)【発明者】
【氏名】澤辺 孝夫
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−090909(JP,A)
【文献】 特開2014−166241(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/072237(WO,A1)
【文献】 米国特許第05467775(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体音を取得する生体音取得部と、
本体部と、
前記生体音取得部が前記本体部に接しないように、前記本体部に前記生体音取得部を保持するダンパ部と、
を備え、
前記生体音取得部は、
前記生体音を取得するセンサ部と、
前記センサ部を収容するケースと、
前記センサ部が前記ケースに接しないように、前記ケースに前記センサ部を保持するダイアフラムと、
を有し、
前記ダンパ部の弾性力は、前記ダイアフラムの弾性力よりも高い
ことを特徴とする生体音聴診装置。
【請求項2】
前記ケースは、開口を有し、
前記ダイアフラムは、前記開口を塞ぐように前記ケースと接続されており、
前記ダイアフラムは、被検体の体表面と対向する一の面と、前記一の面とは反対側の他の面とを有し、
前記センサ部は、前記他の面上の前記ケースと接しない位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記生体音取得部を収容する中空の収容部を有し、
前記ダンパ部は、前記生体音取得部が前記本体部に接しないように、前記収容部内で、
前記生体音取得部を保持する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生体音聴診装置。
【請求項4】
前記ダイアフラムはシリコーンにより形成されていることを特徴とする請求
項1乃至3のいずれか一項に記載の生体音聴診装置。
【請求項5】
前記ダンパ部は、前記ダイアフラムとは硬度の異なるシリコーンにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載の生体音聴診装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子聴診器等の生体音聴診装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置では、筺体の内部に、例えばマイクロフォン等のセンサが配置されている。この種の装置により生体音が収集される際には、筺体が被検体の体表に接触させられる。この種の装置により収集される音には、生体音の他に外部からの雑音も含まれる。このため、この種の装置では外部雑音の抑制が図られる。
【0003】
例えば特許文献1には、筺体の体表に接触する部分を、体表に接する面とは反対側に音を採取する時の密閉空間を形成する凹部を有する集音部構成部材と、集音部構成部材の外周に接する保持部材と、により構成し、集音構成部材及び保持部材各々の音響インピーダンスを所定の条件に該当させることにより、外部雑音を抑える技術が開示されている。
【0004】
或いは、特許文献2には、その表面を被検体の体表に密着させる板状の生体音伝播部と、筺体とで区画された空間内に、マイクロフォンを配置すると共に、生体音伝播部よりもショアA硬度の低い素材を前記空間内に充填してマイクロフォンを埋設することにより、外部環境雑音や摺動雑音の混入を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−152377号公報
【特許文献2】特開2013−074915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した背景技術では、外部雑音の抑制が十分ではないという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、外部雑音を好適に抑制することができる生体音聴診装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体音聴診装置は、上記課題を解決するために、生体音を取得する生体音取得部と、本体部と、前記生体音取得部が前記本体部に接しないように、前記本体部に前記生体音取得部を保持するダンパ部と、を備え、前記生体音取得部は、前記生体音を取得するセンサ部と、前記センサ部を収容するケースと、前記センサ部が前記ケースに接しないように、前記ケースに前記センサ部を保持するダイアフラムと、を有し、前記ダンパ部の弾性力は、前記ダイアフラムの弾性力よりも高い。
【0009】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。
図2】実施例に係る電子聴診器の要部の構造を示す断面図である。
図3】比較例に係る電子聴診器の要部の構造を示す断面図である。
図4】実施例に係る電子聴診器のノイズ抑制効果を説明するための図である。
図5】実施例に係る電子聴診器のダンパ部の他の効果を説明するための図である。
図6】ダイアフラムの外部雑音遮断特性の一例を示す図である。
図7】実施例に係る電子聴診器の第1変形例を示す図である。
図8】実施例に係る電子聴診器の第2変形例を示す図である。
図9】実施例に係る電子聴診器の第3変形例を示す図である。
図10】実施例に係る電子聴診器の第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の生体音聴診装置に係る実施形態について説明する。
【0012】
実施形態に係る生体音聴診装置は、生体音取得部と、本体部と、該生体音取得部が該本体部に接しないように、該本体部内に該生体音取得部を保持するダンパ部と、を備えて構成されている。
【0013】
生体音取得部は、生体音を取得するセンサ部と、該センサ部を収容する中空のケースと、該センサ部が該ケースに接しないように、該ケースに該センサ部を保持するダイアフラムと、を備えて構成されている。
【0014】
この種の装置が聴診に用いられる場合には、例えば、装置を扱うユーザ自身の血流等に起因する生体ノイズ、ユーザの指や着衣等が装置に触れることにより、又は、被検体の皮膚等が装置に触れることにより、生じる接触ノイズ、被検体の目的とする生体音以外の音に起因する生体ノイズ、が、目的とする生体音と一緒に取得される可能性がある。
【0015】
本実施形態に係る生体音聴診装置では、先ず、本体部と生体音取得部とが互いに接触しないように、ダンパ部により該生体音取得部が保持されている。このため、本体部から生体音取得部へ直接ノイズが伝播することを防止することができる。また、本体部からダンパ部を介して生体音取得部へノイズが伝播する場合であっても、ダンパ部の働きによってノイズが減衰されるので、生体音取得部へのノイズの伝播を抑制することができる。
【0016】
次に、生体音取得部を構成するケースとセンサ部とが互いに接触しないように、ダイアフラムにより該センサ部が保持されている。このため、ケースからセンサ部へ直接ノイズが伝播することを防止することができる。また、ケースからダイアフラムを介してセンサ部へノイズが伝播する場合であっても、ダイアフラムの働きによってノイズが減衰されるので、センサ部へのノイズの伝播を抑制することができる。
【0017】
このように、本実施形態に係る生体音聴診装置では、仮に生体音取得部へノイズが伝播した場合であっても、該生体音取得部のケースからセンサ部へのノイズの伝播が抑制される。つまり、本実施形態に係る生体音聴診装置では、2段階で、センサ部へのノイズの伝播が抑制される。この結果、本実施形態に係る生体音聴診装置によれば、外部雑音を好適に抑制することができる。
【0018】
加えて、生体音取得部がダンパ部により保持されているので、例えば該生体音取得部の被検体の体表面に接する部分を、体表面に比較的容易に密着させることができる。このため、被検体が聴診時に受ける、装置が体に触れることによる違和感を低減することができる。
【0019】
本実施形態に係る生体音聴診装置の一態様では、生体音取得部を構成するケースは開口を有している。ダイアフラムは、ケースの開口を塞ぐように該ケースと接続されている。ダイアフラムは、被検体の体表面と対向する一の面と、該一の面とは反対側の他の面とを有している。センサ部は、ダイアフラムの他の面上のケースと接しない位置に配置されている。
【0020】
この態様によれば、センサ部により生体音を好適に取得できると共に、該センサ部にノイズが伝播することを好適に抑制することができる。
【0021】
本実施形態に係る生体音聴診装置の他の態様では、当該生体音聴診装置を構成する本体部は、生体音取得部を収容する中空の収容部を有している。ダンパ部は、生体音取得部が本体部に接しないように、収容部内で生体音取得部を保持する。
【0022】
この態様によれば、生体音取得部を好適に保護することができると共に、該生体音取得部にノイズが伝播することを好適に抑制することができる。
【0023】
本実施形態に係る生体音聴診装置の他の態様では、ダンパ部の弾性力が、ダイアフラムの弾性力よりも高くなるように、該ダンパ部が構成されている。尚、弾性力の総和は弾性エネルギーと等しいため、物体の弾性力が高ければ高いほど、当該物体は硬いことを意味する。
【0024】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、センサ部により目的とする生体音を適切に取得するためには、ダイアフラムは可能な限り薄く設計されることが望ましい。他方で、センサ部を良好に保持するために、ダイアフラムにはある程度の硬さが求められる。
【0025】
弾性力は、硬さ(硬度)に関係するヤング率(縦弾性係数)と、厚さの3乗と、に比例する。そこで、生体音の適切な取得と、センサ部の良好な保持との両立が可能な弾性力を決定し、該決定された弾性力を達成するように、ダイアフラムの材質(硬度)と厚さとを選択すれば、比較的容易に生体音の適切な取得と、センサ部の良好な保持とを両立することができるダイアフラムを設計することができる。
【0026】
同様に、ダンパ部には、聴診時に生体音取得部が被検体の体表面に比較的容易に密着可能なことと、生体音取得部を良好に保持することとの両立が求められる。
【0027】
ダンパ部の弾性力が、ダイアフラムの弾性力よりも高い場合、上記ダイアフラムに対する要求と、ダンパ部に対する要求とを満たすことが、本願発明者の研究により判明している。
【実施例】
【0028】
本発明の生体音取得装置に係る実施例を図面に基づいて説明する。本実施例では、生体音取得装置の一例として電子聴診器を挙げる。
【0029】
(電子聴診器の構成)
実施例に係る電子聴診器の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1において、電子聴診器200は、信号取得部21と、バンドパスフィルタ22と、該バンドパスフィルタ22に係る遮断周波数を調整する遮断周波数調整部23と、パワーアンプ24と、該パワーアンプのゲインを調整する音量調整部25と、イヤフォン26とを備えて構成されている。尚、信号取得部21等には、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0031】
(聴取部の構造)
次に、電子聴診器200の聴取部の構造について、図2を参照して説明する。図2は、実施例に係る電子聴診器の要部の構造を示す断面図である。
【0032】
図2において、聴取部は、本体部11、ダンパ部13及びセンサモジュール100を備えて構成されている。ここで、実施例に係る「センサモジュール100」は、本発明に係る「生体音取得部」の一例である。
【0033】
センサモジュール100は、本発明に係る「センサ部」の一例としての、信号取得部21と、ケース110と、該ケース110に信号取得部21を保持するダイアフラム120とを備えて構成されている。尚、センサモジュール100には、信号取得部21に加えて、例えばバンドパスフィルタ22(図1参照)等が含まれていてよい。
【0034】
ケース110の、被測定者(被検体)の体表面と対向する側(図2下側)には、開口が形成されている。ダイアフラム120は、該開口を塞ぐようにケース110に接続されている。ケース110とダイアフラム120とにより形成される空間130内に信号取得部21が配置されている。
【0035】
より具体的には、信号取得部21は、ダイアフラム120の被測定者の体表面と対向する面(図2における下側の面)とは反対側の面(図2における上側の面)上の、ケース110と接しない位置に配置されている。
【0036】
本体部11は、センサモジュール100を収容する中空の収容部12を有している。ダンパ部13は、センサモジュール100が本体部11と接しないように、収容部12内でセンサモジュール100を保持する。
【0037】
(比較例)
ここで、比較例に係る電子聴診器500の聴取部の構造について、図3を参照して説明する。図3は、比較例に係る電子聴診器の要部の構造を示す断面図である。
【0038】
図3において、電子聴診器500は、本体部510及びセンサ部520を備えて構成されている。ここで特に、センサ部520は、その一部が露出するように本体部510に埋設されている。
【0039】
ところで、聴診時には、例えば電子聴診器500を扱う測定者の血流等に起因する生体ノイズと、測定者の指や着衣等が本体部510に触れることによる接触ノイズと、が測定者ノイズとして、センサ部520に伝播する。また、被測定者の目的とする生体音(例えば呼吸音等)以外の音に起因する生体ノイズと、被測定者の皮膚等に本体部510等が触れることによる接触ノイズと、が被測定者ノイズとして、センサ部520に伝播する。特に、電子聴診器500には、上記ノイズを減衰させるような構成が設けられていないので、上記ノイズが聴診の妨げとなる可能性がある。
【0040】
加えて、聴診時に、例えば測定者の持ち方に起因して、又は、被測定者の体表面の形状に起因して、センサ部520が傾くと、例えば破線円C1で示す箇所や破線円C2で示す箇所等が、被測定者の体表面に接触せず、正しく聴診できない可能性がある。或いは、センサ部520が被測定者に比較的強く押し当てられた場合、該被測定者が不快感を覚える可能性がある。
【0041】
(本発明の効果)
本実施例に係る電子聴診器200では、図2に示すように、本体部11とセンサモジュール100とが接触しないように、ダンパ部13により該センサモジュール100が保持されている(所謂、センサモジュール100が本体部11から浮いている状態)。このため、本体部11からセンサモジュール100へノイズが直接伝播することを防止することができる。また、図4に示すように、本体部11からダンパ部13を介して、センサモジュール100へノイズが伝播する場合であっても、ダンパ部13の働きによってノイズが減衰されるので、センサモジュール100へのノイズの伝播を抑制することができる。
【0042】
更に、センサモジュール100のケース110と信号取得部21とが接触しないように、ダイアフラム120により該信号取得部21が保持されている(所謂、信号取得部21がケース110から浮いている状態)(図2参照)。このため、ケース110から信号取得部21へノイズが直接伝播することを防止することができる。また、ケース110からダイアフラム120を介して、信号取得部21へノイズが伝播する場合であっても、ダイアフラム120の働きによってノイズが減衰されるので、信号取得部21へのノイズの伝播を抑制することができる。
【0043】
従って、本実施例に係る電子聴診器200によれば、信号取得部21におけるノイズを好適に低減することができ、もって、良好な聴診を可能とする。
【0044】
また、センサモジュール100は、ダンパ部13によって保持されることにより、ある程度の可動域を有している。このため、聴診時に、例えば図5に示すように、本体部11が被測定者の体表面に対して傾いていたとしても、センサモジュール100のダイアフラム120を、被測定者の体表面に適切に密着させることができる。この結果、電子聴診器200の被測定者への当て方による測定バラツキを防止することができる。
【0045】
(ダイアフラムの特性)
次に、ダイアフラム120の外部雑音遮断特性について、図6を参照して説明する。図6は、ダイアフラムの外部雑音遮断特性の一例を示す図である。図6は、センサモジュール100に加振機を用いて振動を加えた場合に、ダイアフラム120に伝わる振動を信号取得部21により測定した結果により構築されている。
【0046】
図6の各グラフは、シリコーン(硬度50、厚さ0.75mm)からなるダイアフラム、シリコーン(硬度40、厚さ0.5mm)からなるダイアフラム、及びABS樹脂からなるダイアフラムが、ダイアフラム120として用いられた場合の測定結果を表している。尚、図6では、加振機に40Hz、2Vp−pのサイン波を入力した際の振動を0dBとしている。
【0047】
図6において、周波数100Hz〜200Hz付近に現れるピークは、ダイアフラム120と信号取得部21とで構成される弾性体の共振周波数を表している。ここでは、信号取得部21の質量は一定であり、図6からわかるように、ダイアフラム120の材質が柔らかくなるほど、共振周波数帯が低周波数側へ移動する。また、ダイアフラム120の材質が柔らかくなるほど、高周波数帯域のノイズを低減することができることがわかる。
【0048】
尚、電子聴診器が測定対象とする生体音の周波数は、50Hz〜2000Hzである。ノイズ低減効果のみを考慮する場合、ダイアフラム120としては、シリコーン(硬度40、厚さ0.5mm)がより望ましいと言える。
【0049】
しかしながら、ダイアフラム120には、ノイズ低減効果に加え、下記点が求められる。即ち、信号取得部21により目的とする生体音を適切に取得するために、ダイアフラム120は可能な限り薄く設計されることが望ましい。また、ダイアフラム120は、信号取得部21によって弛まないように、ある程度の硬さが求められる。
【0050】
上記要件を考慮した場合、本願発明者の研究条件下では、シリコーン(硬度50、厚さ0.75mm)がダイアフラム120により適していることが判明している。
【0051】
(ダンパ部)
ダンパ部13については、ノイズ低減効果に加えて、聴診時にセンサモジュール100が被測定者の体表面に比較的容易に密着可能なこと、及び、被測定者(患者)への負荷を低減させる効果が求められる。もちろん、ダンパ部13は、信号取得部21とダイアフラム120及びケース110の総質量、即ち、センサモジュール100全体を支持するものであって、その上で、ノイズ低減効果を含む上述の効果の全てをもたらすものであることが求められる。
【0052】
上記要件を考慮した場合、本願発明者の研究条件下では、シリコーン(硬度30、厚さ2.5mm)がダンパ部13により適していることが判明している。
【0053】
ここで、ダンパ部13及びダイアフラム120各々を構成する物質の硬度と厚さとに着目すると、弾性力に比例する係数kは、k=Et/Rと表せる。変数Eは、硬度に関係するヤング率であり、変数tは、厚さであり、Rは、半径である。本実施例に係るダンパ部13の半径は、例えば16mmであり、ダイアフラム120の半径は、例えば10mmである。
【0054】
上記式から、ダンパ部13に係る係数kは約0.33、ダイアフラム120に係る係数kは約0.06となる。つまり、ダンパ部13の弾性力のほうが、ダイアフラム120の弾性力よりも高い。
【0055】
<第1変形例>
図7に示すように、センサモジュール100の被測定者の体表面と対向する側が、キャップ30により覆われていてもよい。
【0056】
このように構成すれば、センサモジュール100やダンパ部13への汚れの付着を防止することができる。加えて、キャップ30を使い捨てにする又は使用する度に消毒することにより、比較的容易にして衛生を保つことができる。
【0057】
尚、キャップ30に比較的柔らかい材質を用い、且つ該キャップ30を比較的薄く形成することにより、本体部11からキャップ30を介してセンサモジュール100へ伝播するノイズを抑制することができると共に、目的とする生体音の取得への影響をなくすことができる。
【0058】
<第2変形例>
図8に示すように、ダンパ部13に代えて、ジャバラ構造を有するダンパ部13aが用いられてもよい。
【0059】
このように構成すれば、上述した本発明の効果を奏しつつ、ダンパ部13aに、例えば金属等も用いることができ、素材選定の自由度を向上させることができる。ダンパ部13aを金属により形成した場合には、電磁波等の遮蔽性を向上させることができ、当該電子聴診器200への電子ノイズの影響を抑制することができる。
【0060】
<第3変形例>
図9に示すように、ダイアフラム120に代えて、ジャバラ構造を有するダイアフラム121が用いられてもよい。
【0061】
このように構成すれば、上述した本発明の効果を奏しつつ、ダイアフラム121に、例えば金属等も用いることができ、素材選定の自由度を向上させることができる。ダイアフラム121を金属により形成した場合には、当該電子聴診器200への電子ノイズの影響を抑制することができる。
【0062】
<第4変形例>
図10に示すように、ダンパ部13に代えて、ジャバラ構造を有するダンパ部13aが、ダイアフラム120に代えて、ジャバラ構造を有するダイアフラム121が用いられてもよい。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生体音聴診装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
11…本体部、13、13a…ダンパ部、21…信号取得部、100…センサモジュール、110…ケース、120、121…ダイアフラム、200…電子聴診器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10