特許第6710546号(P6710546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710546
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】作業用手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/00 20060101AFI20200608BHJP
   D04B 21/20 20060101ALI20200608BHJP
   D04B 21/14 20060101ALI20200608BHJP
   A41D 19/04 20060101ALN20200608BHJP
【FI】
   A41D19/00 M
   D04B21/20 Z
   D04B21/14 Z
   !A41D19/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-44923(P2016-44923)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-160554(P2017-160554A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小間 正博
(72)【発明者】
【氏名】谷口 圭一
(72)【発明者】
【氏名】小西 由幸
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3118655(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3154687(JP,U)
【文献】 特開2012−233279(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3056974(JP,U)
【文献】 特開2007−077544(JP,A)
【文献】 特開2007−031879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00 − 19/04
D04B 1/00 − 1/28
D04B 21/00 − 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経編み機によって前編み地と後編み地と連結編みが編成されて、5本の指袋と手の平袋が形成され、手の平袋は、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端が連続した4本胴部と、親指袋の外側端と4本胴部の小指袋側外側端が連続した5本胴部とからなり、5本胴部に手挿入口を備えた作業用手袋において、
4本胴部の人差し指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さが、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さより短くなるように、連結編みして編成したことを特徴とする作業用手袋。
【請求項2】
5本胴部の親指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さが、親指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さより短くなるように編成したことを特徴とする請求項1記載の作業用手袋。
【請求項3】
連結編みは、前編み地と後編み地を連結すると共に左右を連結し切れ目を形成しない第一の連結編みと、前編み地と後編み地のみを連結し切れ目を形成する第二の連結編みとからなり、
5本胴部の親指袋側外側端を形成する連結編みは、手挿入口近傍が第二の連結編みで形成され、それ以外が第一の連結編みで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の作業用手袋。
【請求項4】
前編み地と後編み地のどちらか一方の糸の太さ又は度目を変えることによって、連結編みの位置が偏倚していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の作業用手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、経編み機によって編成される作業用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、編み機によって編成された作業用手袋が存在する(例えば特許文献1)。当該作業用手袋は、5本の指袋と手の平袋を備えている。手の平袋は、4本胴部と5本胴部とからなる。4本胴部の上部には、人差し指袋、中指袋、薬指袋、小指袋が配置されている。4本胴部の一方の外側端は、人差し指袋の外側端が下方に真っ直ぐ下がった直線と一致している。4本胴部の他方の外側端は、小指袋の外側端が下方に真っ直ぐ下がった直線と一致している。従って、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さと、4本胴部の巾の長さは略同じである。5本胴部の上部には、親指袋と4本胴部が配置されている。5本胴部の一方の外側端は、親指袋の外側端が下方に真っ直ぐ下がった直線と一致している。5本胴部の他方の外側端は、小指袋の外側端が下方に真っ直ぐ下がった直線と一致している。従って、親指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さと、5本胴部の巾の長さは略同じである。経編み作業用手袋は、ジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機によって編成される。経編み作業用手袋は、横編み手袋に比べて、10〜100デニールの細い糸で編み込まれ、薄く柔軟で作業性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−154408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人の手は、4本胴部の親指側外側端と人差し指の外側端が一致し、4本胴部の小指側外側端と小指の外側端が一致している。従って、人差し指の外側端と小指の外側端の間の長さと、4本胴部の巾の長さは略同じである。また、5本胴部の親指側外側端と親指の外側端が一致し、5本胴部の小指側外側端と小指の外側端が一致している。従って、親指の外側端と小指の外側端の間の長さと、5本胴部の巾の長さは略同じである。前記した作業用手袋は、手に装着すると、柔軟性があるので作業しやすく、薄いので表面の微細な凹凸を感じ取ることができる。しかし、作業用手袋は、手の4本胴部と作業用手袋の4本胴部のサイズが一致しており、手の4本胴部に作業用手袋の4本胴部が圧着せず、手から外れ易いという問題点があった。同様に、作業用手袋は、手の5本胴部と作業用手袋の5本胴部のサイズが一致しており、手の5本胴部に作業用手袋の5本胴部が圧着せず、手から外れ易いという問題点があった。特に、前記した作業用手袋は、手に装着して作業すると、指の屈曲動作に伴い、各指袋が上方に引っ張られ、手の平袋(4本胴部及び5本胴部)が上方(脱げる方向)に移動し、手の平袋の位置がずれ、作業に支障をきたすことになるという問題点があった。また、作業用手袋は、使い捨てが基本であり、短時間の使用後に廃棄されるので、編成後の切断のみで安価に製造できるものが望まれる。しかし、作業用手袋は、手挿入口が切断後に後加工しないのでギザギザとなり、切断面が剥き出しとなり、商品価値を損なうという問題点があった。さらにまた、作業用手袋は、経編み機によって前編み地と後編み地と連結編みが編成されて形成されるが、連結編み部が指の先端等の位置にくると、小さな物をつまんだりするような精密作業時に、指先と物との間に連結編み部がきて作業性が損なわれたり、破け易くなる可能性があるという問題点があった。
【0005】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、4本胴部の外側端間の長さを、人差し指袋と小指袋の外側端の間の長さより短く編成し、装着した手の平に4本胴部が圧着して外れ難くした作業用手袋を提供することを第1の目的とする。また、5本胴部の外側端間の長さを、親指袋と小指袋の外側端の間の長さより短く編成し、装着した手の平に4本胴部及び5本胴部が圧着して外れ難くした作業用手袋を提供することを第2の目的とする。さらに、手挿入口の切断部が素材の特性により丸み込まれて切断面が隠れ、商品価値を高めることができる作業用手袋を提供することを第3の目的とする。さらにまた、連結編み部の位置を偏倚させ、精密作業しやすい構成や破れ難い構成とした作業用手袋を提供することを第4の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1記載の作業用手袋は、上記第1の目的を達成するため、経編み機によって前編み地と後編み地と連結編みが編成されて、5本の指袋と手の平袋が形成され、手の平袋は、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端が連続した4本胴部と、親指袋の外側端と4本胴部の小指袋側外側端が連続した5本胴部とからなり、5本胴部に手挿入口を備えた作業用手袋において、4本胴部の人差し指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さ(L2)が、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さ(L1)より短くなるように、連結編みして編成したことを特徴とする。ここで、L1は、各指袋の基端に沿って延びる人差し指袋側外側端と小指袋側外側端を結ぶ直線の長さであり、L2は、各指袋の基端より下方に位置する4本胴部の人差し指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さ(幅)である。
【0007】
本願請求項2記載の作業用手袋は、上記第2の目的を達成するため、5本胴部の親指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さが、親指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さより短くなるように編成したことを特徴とする。
【0008】
本願請求項3記載の作業用手袋は、上記第3の目的を達成するため、連結編みは、前編み地と後編み地を連結すると共に左右を連結し切れ目を形成しない第一の連結編みと、前編み地と後編み地のみを連結し切れ目を形成する第二の連結編みとからなり、5本胴部の親指袋側外側端を形成する連結編みは、手挿入口近傍が第二の連結編みで形成され、それ以外が第一の連結編みで形成されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項4記載の作業用手袋は、上記第4の目的を達成するため、前編み地と後編み地のどちらか一方の糸の太さ又は度目を変えることによって、連結編みの位置が偏倚していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る作業用手袋は、経編み機によって前編み地と後編み地と連結編みが編成されて、5本の指袋と手の平袋が形成されている。手の平袋は、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端が連続した4本胴部と、親指袋の外側端と4本胴部の小指袋側外側端が連続した5本胴部とからなり、5本胴部に手挿入口を備えている。4本胴部の人差し指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さは、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さより短くなるように編成されている。従って、本願発明に係る作業用手袋は、4本胴部が狭くなっており、装着時に4本胴部が手の平に密着し、外れ難いという効果がある。
【0011】
本願発明に係る作業用手袋は、5本胴部の親指袋側外側端と小指袋側外側端の間の長さが、親指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さより短くなるように編成されている。本願発明に係る作業用手袋は、4本胴部及び5本胴部が狭くなっており、装着時に4本胴部と5本胴部が手の平に密着し、外れ難いという効果がある。
【0012】
本願発明に係る作業用手袋は、連結編みが、前編み地と後編み地を連結すると共に左右を連結し切れ目を形成しない第一の連結編みと、前編み地と後編み地のみを連結し切れ目を形成する第二の連結編みとからなる。5本胴部の親指袋側外側端を形成する連結編みは、手挿入口近傍が第二の連結編みで形成され、それ以外が第一の連結編みで形成されている。第一の連結編みは、切れ目がないので、切り離さなければならず裁断代が作業用手袋に残る。第二の連結編みは、切れ目が形成されるので、切り離す必要がなく裁断代が残らない。手挿入口近傍は第二の連結編みで形成されているので、裁断代が存在しない。裁断代が存在すると、裁断代が邪魔で手挿入口の開口端(切断面)が丸まり難いが、裁断代がないので手挿入口の開口端が素材の特性により丸まり、切断面を隠すことができ、見た目を良くすることができるという効果がある。
【0013】
本願発明に係る作業用手袋は、前編み地と後編み地のどちらか一方の糸の太さ又は度目を変えることによって、連結編みの位置が偏倚しているので、精密作業しやすい構成や破れ難い構成にすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明に係る作業用手袋の一つの実施の形態を示す全体平面図である。
図2図1の作業用手袋の製造過程を示す平面図である。
図3図1の作業用手袋の斜視図である。
図4】本願発明に係る作業用手袋の他の実施の形態を示す全体平面図である。
図5図4の作業用手袋の製造過程を示す平面図である。
図6】本願発明に係る作業用手袋の他の実施の形態を示す全体平面図である。
図7】本願発明に係る作業用手袋の要部斜視図である。
図8】本願発明に係る作業用手袋の一部裁断した斜視図である。
図9図8の拡大斜視図である。
図10】本願発明に係る作業用手袋の他の実施の形態を示す全体平面図である。
図11】本願発明に係る作業用手袋の他の実施の形態を示す全体平面図である。
図12】本願発明に係る作業用手袋の他の実施の形態を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
作業用手袋1は、図4に示すように、経編み機によって前編み地11と後編み地12と連結編みA,Bが編成されて、5本の指袋2〜6と手の平袋7が形成されている。手の平袋7は、人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aが連続した4本胴部8と、親指袋2の外側端2aと4本胴部8の小指袋6側外側端8bが連続した5本胴部9とからなる。5本胴部9には手挿入口1aを備えている。4本胴部8の人差し指袋3側外側端8aと小指袋6側外側端8bの間の長さL2は、人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aの間の長さL1より短くなるように編成している。ここで、L1は、各指袋2〜6の基端に沿って延びる人差し指袋3側外側端3aと小指袋6側外側端6aを結ぶ直線の長さであり、L2は、各指袋2〜6の基端より下方に位置する4本胴部8の人差し指袋3側外側端8aと小指袋6側外側端8bの間の長さ(幅)である。作業用手袋1は、4本胴部8の内部が狭くなっており、装着時に4本胴部8が手の平に密着して外れ難い。作業用手袋1は、手に装着して作業すると、指の屈曲動作に伴い、各指袋2〜6が上方に引っ張られ、手の平袋7を上方(脱げる方向)に移動させる力が発生するが、4本胴部8が手の平に圧着しているので、手の平袋7の位置がずれることがなく、作業に支障をきたす恐れが少ない。
【0016】
作業用手袋1は、5本胴部9の親指袋2側外側端9aと小指袋6側外側端9bの間の長さL3が、親指袋2の外側端2aと小指袋6の外側端6aの間の長さL4より短くなるように編成している。作業用手袋1は、親指袋2を挟んだ両側の4本胴部8及び5本胴部9の内部が狭くなっており、装着時に4本胴部8と5本胴部9が手の平に密着し、一層外れ難くなっている。作業用手袋1は、前述したように、指の屈曲動作に伴い、手の平袋7を上方(脱げる方向)に移動させる力が発生するが、4本胴部8及び5本胴部9が親指を挟んで手の平の両側に圧着しているので、より手の平袋7の位置がずれることがない。
【0017】
作業用手袋1は、連結編みが、前編み地11と後編み地12を連結すると共に左右を連結し切れ目を形成しない第一の連結編みAと、前編み地11と後編み地12のみを連結し切れ目を形成する第二の連結編みBとからなる。図4に示すように、5本胴部9の親指袋2側外側端9aを形成する連結編みは、手挿入口1a近傍が第二の連結編みBで形成され、それ以外が第一の連結編みAで形成されている。第一の連結編みAは、切れ目がないので、ハサミ等の切断具で切断しなければならず、裁断代15aが作業用手袋1に残る。第二の連結編みBは、切れ目が形成されるので、切断する必要がなく裁断代が残らない。手挿入口1a近傍は第二の連結編みBで形成されているので、裁断代が存在しない。裁断代15aが存在すると、裁断代15aが邪魔で手挿入口1aの開口端1b(切断面)が丸まり難いが、裁断代15aがないので手挿入口1aの開口端1bが素材の特性により丸まり、切断面を隠すことができる。そのため、作業用手袋1は、手挿入口1aの開口端1bを加工する必要がなく、見た目を良くすることができる。
【0018】
作業用手袋1は、図12に示すように、前編み地11と後編み地12のどちらか一方の糸の太さ又は度目を変えることによって、連結編み13の位置が偏倚しているので、精密作業しやすい構成や破れ難い構成にすることができる。
【0019】
作業用手袋1について具体的に説明する。図1乃至3に示すように、作業用手袋1は、図示しない経編み機によって編成され、5本の指袋2〜6と手の平袋7を備えている。5本の指袋は、親指袋2、人差し指袋3、中指袋4、薬指袋5、小指袋6からなる。手の平袋7は、4本胴部8と5本胴部9とからなる。人差し指袋3、中指袋4、薬指袋5、小指袋6は、4本胴部8の上端に配置されており、人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aが4本胴部8の両側外側端8a,8bと連続している。親指袋2と4本胴部8は、5本胴部9の上部に配置され、親指袋2の外側端2aと4本胴部8の小指袋6側の外側端8bが5本胴部9の両側外側端9a、9bと連続している。5本胴部9には、手挿入口1aが形成されている。通常は、4本胴部8の人差し指袋3側外側端8aと小指袋6側外側端8bの間の長さL2が、人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aの間の長さと同じになるように編成されている。また、5本胴部9の親指袋2側外側端9aと小指袋6側外側端9bの間の長さL3が、親指袋2の外側端2aと小指袋6の外側端6aの間の長さと同じになるように編成されている。
【0020】
図4に示すように、作業用手袋1は、手に対する密着性を高めるため、4本胴部8の人差し指袋3側外側端8aと小指袋6側外側端8bの間の長さL2が、人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aの間の長さL1より短くなるように編成されている。人の手は、4本胴部の外側端間の長さが、人差し指の外側端と小指の外側端の間の長さと略同じである。作業用手袋1は、4本胴部8の外側端8aと外側端8bの間の長さL2が人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aの間の長さL1より短くなるように編成されていると、作業用手袋1の4本胴部8が人の手の4本胴部に密着する。
【0021】
同様に、作業用手袋1は、手に対する密着性を高めるため、5本胴部9の親指袋2側外側端9aと小指袋6側外側端9bの間の長さL3が、親指袋2の外側端2aと小指袋6の外側端6aの間の長さL4より短くなるように編成されている。人の手は、5本胴部の外側端間の長さが、親指の外側端と小指の外側端の間の長さと略同じである。作業用手袋1は、5本胴部9の外側端9aと外側端9bの間の長さL3が親指袋2の外側端2aと小指袋6の外側端6aの間の長さL4より短くなるように編成されていると、作業用手袋1の5本胴部9が人の手の5本胴部に密着する。
【0022】
この作業用手袋1の製造方法について説明する。作業用手袋1は、経編み機によって編成される。経編み機は、例えば、ジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機を利用することができる。ダブルラッセル編機は、2列針床型の経編み機であり、一方の針床側で前編み地11(前基布)又は後編み地12(後基布)を編成し、他方の針床側で後編み地12(後基布)又は前編み地11(前基布)を編成し、同時に前編み地11と後編み地12を重ね合わせた状態で手の形に沿って連結編み13を行う。なお、手首部には、手挿入口1aを形成するため、連結編みを行わない。手の形に沿った連結編み13の外側を鋏等の切断具で切り取っていくことにより作業用手袋1が完成する。
【0023】
なお、連結編み13は、編み地11,12に隠れてしまいやすいので、連結編み13の周囲を切断しなければならないのに、連結編み13自体も切断してしまう恐れがある。そのため、連結編み13の周囲に鎖編みCにより切断ライン表示部15を編成しておくと良い。切断ライン表示部15を切断すれは、連結編み13を切断することがないので、不良品ができない。また、作業用手袋1を構成する前編み地11又は後編み地12に、サイズ(例えば、L、M、S)の編み模様を形成しておいても良い。
【0024】
さらに、作業用手袋1の製造方法について、図2に基づいて説明する。ジャカード制御機構を有するダブルラッセル編機は、一方の針床側で前編み地11を編成し、他方の針床側で後編み地12を編成し、前編み地11と後編み地12の両端を連結編み13で連結し、連続的にシームレス筒状の連続体10を編成する。前編み地11及び後編み地12は、一般的なデンビ組織で編まれているが、特にこの経編組織に限定されない。編成される筒状の連続体10には、一対の作業用手袋1が手挿入口1a側を内側にして直列状に連続して配置されている。
【0025】
図1に示すように、作業用手袋1は、前記した5本胴部9の小指袋6側外側端9b、4本胴部8の小指袋6側外側端8b、小指袋6の外側端6aが前記連続体10の連結編み13によって連結され、前記した5本胴部9の親指袋2側外側端9a、親指袋2の外側端2aが前記連続体10の連結編み13によって連結されている。
【0026】
作業用手袋1において採用される連結編み13は、2種類有る。第一の連結編みAは、前編み地11側と後編み地12側及び左右側を同時に連結する編み組織であり、第二の連結編みBは、前編み地11側と後編み地12側を連結する編み組織である。第一の連結編みAの場合は、左右側も連結しているので、前編み地11及び後編み地12の連結編み部に切れ目が生じない。第二の連結編みBの場合は、左右側を連結しないので、前編み地11及び後編み地12の連結編み部に切れ目が生じる。
【0027】
作業用手袋1は、図1に示すように、指袋2〜6の湾曲した先端部が第一の連結編みAで連結され、指袋2〜6の湾曲した先端部以外が第二の連結編みBで連結されている。第二の連結編みBは、左右を連結しないので、指袋2〜6間に切れ目が形成され、指袋2〜6同士が互いに連結していない。第一の連結編みAは、左右を連結するので、指袋2〜6の先端部が連続体10に一体となっている。第一の連結編みAの編み組織の幅は、3〜5mm程度で形成しているが、特に限定するものではない。図2に示すように、作業用手袋1は、連続体10に対向して連続的に配置されているのは前述した通りであり、対向する作業用手袋1の各指袋3〜5の両端が第二の連結編みBで連結され、切れ目が形成されている。例えば、一方の作業用手袋1の人差し指袋3と他方の作業用手袋1の人差し指袋3は、互いに向き合っており、一方の作業用手袋1の人差し指袋3の外側端と他方の作業用手袋1の人差し指袋3の外側端が第二の連結編みBで連結されて切れ目が形成され、一方の作業用手袋1の人差し指袋3の内側端と他方の作業用手袋1の人差し指袋3の内側端も第二の連結編みBで連結されて切れ目が形成されている。
【0028】
また、ダブルラッセル編機は、図1に示すように、鎖編みCにより、作業用手袋1の各指袋2〜6の先端部の外周と作業用手袋1の手挿入口1aに切断ライン表示部15を形成している。鎖編みCは、左右連結しない編み組織でスリットを形成することができ、縦方向に5mm程度の巾で形成する。鎖編みCの巾は、5mm程度に限定されるものではないのは勿論である。この切断ライン表示部15に沿って、鋏等の切断具により切断を行うと、連続体10から作業用手袋1を容易に切り離すことができるが、裁断代15aが残る。
【0029】
作業用手袋1は、図4に示すように、4本胴部8の幅L2が人差し指袋3から小指袋6までの長さL1より短くなるように形成されている。即ち、4本胴部8の親指袋2側外側端8aを第二の連結編みBにより連結して切れ目を形成し、さらに4本胴部8の親指袋2側外側端8aを第一の連結編みAで所定の幅(2〜3mm)程度編むことにより、第一の連結編みAの幅分(長さL1−長さL2)、4本胴部8の内部が狭くなるようになっている。なお、この第一の連結編みAの幅分を切断具でカットしても構わない。また、作業用手袋1は、5本胴部9の幅L3が親指袋2から小指袋6までの長さL4より短くなるように形成されている。即ち、5本胴部9の親指袋2側外側端9aを小指袋6側外側端6a側に湾曲させるようにして第一の連結編みAにより前編み地11と後編み地12を連結し、手首内側ライン17を形成する。この手首内側ライン17により、5本胴部9の内部が狭くなるようになっている。
【0030】
また、5本胴部9の親指袋2側の手首内側ライン17は、第一の連結編みAによって形成され、前述したように、第一の連結編みAは肉眼では判別しにくいので、手首内側ライン17の外側に沿って切断ライン表示部15が編成されている。さらに、手首内側ライン17は、手挿入口1aの直前で、第一の連結編みAから第二の連結編みBに変えてもよい。この第二の連結編みBの長さL5は、3〜10mm程度が望ましい。この第二の連結編みBにより切れ目ができており、この切れ目が手挿入口1aまで伸びている。
【0031】
作業用手袋1は、切断ライン表示部15(鎖編みC)を切断することにより、連続体10から取り出すことができる。作業用手袋1は、切断ライン表示部15の裁断代15aが外側に表出しているので、図7に示すように、内側からひっくり返すことにより、切断ライン表示部15の裁断代15aを内側にする。裁断代15aは、前述したように、第一の連結編みAにより手挿入口1a直前まで存在するが、第二の連結編みBにより手挿入口1aから長さL5の範囲には存在しない。作業用手袋1は、前編み地11及び後編み地12の素材の特性により、図8,9に示すように、裁断代15aの存在しない長さL5の範囲で、手挿入口1aの端縁1bが外側から内側に丸まり、切断端(端縁1b)が内側に丸め込まれて切断端(端縁1b)を隠すことになる。
【0032】
上記実施の形態では、4本胴部8の幅L2が人差し指袋3から小指袋6までの長さL1より短くなるよう、4本胴部8の親指袋2側外側端8aを第一の連結編みAで所定の幅(2〜3mm)程度編むことにより、第一の連結編みAの幅分(長さL1−長さL2)4本胴部8の内部が狭くなるようにした。しかし、図10に示すように、切り取れる構成にすることにより、4本胴部8の内部を狭くするようにしても良い。即ち、4本胴部8の親指袋2側外側端8aに沿って第二の連結編みBにより連結し、さらにこの外側端8aから所定の幅(2〜3mm)程度深い位置で第二の連結編みBにより内凹み縁8cを連結し、外側端8aの上端と内凹み縁8cの上端を第一の連結編みAで連結し、外側端8aの下端と内凹み縁8cの下端を第一の連結編みAで連結し、この第一の連結編みAの切断位置を示す切断ライン表示部15を形成しておく。この外側端8aと内凹み縁8cと上下の切断ライン表示部15,15によって囲まれる部分が、カットされるパイプ部19となる。パイプ部19は、第一の連結編みA,Aによって作業用手袋1に連結され、切断ライン表示部15,15を切断することにより、作業用手袋1から取り外すことができる。4本胴部8の内部は、内凹み縁8c分狭くなるので、手に密着する。なお、この内凹み縁8cが、4本胴部8の人差し指袋3側外側端となる。
【0033】
4本胴部8は、図11に示すように、小指袋6側外側端8bから所定の幅(2〜3mm)程度深い位置で第二の連結編みBにより外凹み縁8dを連結し、外側端8bの下端と外凹み縁8dの上端を第一の連結編みAで連結し、この第一の連結編みAの切断位置を示す切断ライン表示部15を形成しておく。この外凹み縁8dと上、下の切断ライン表示部15,15によって囲まれる部分が、カットされるパイプ部20となり、パイプ部20は、切断ライン表示部15,15を切断することにより、作業用手袋1から取り外すことができる。4本胴部8の内部は、外凹み縁8d分狭くなるので、手に密着する。なお、この外凹み縁8dが、4本胴部8の小指袋6側外側端となる。なお、作業用手袋1は、4本胴部8の両側にパイプ部19,20を形成すると、内凹み縁8cと外凹み縁8dの間の長さL2が4本胴部8の幅となる。
【0034】
作業用手袋1は、ダブルラッセル編機により、一方の針床側で前編み地11を編成し、他方の針床側で後編み地12を編成し、前編み地11と後編み地12の両端を連結編み13で連結して製造される。前編み地11及び後編み地12を編成する糸の太さ及び度目(編み目の密度)は、同じなので、前編み地11と後編み地12の連結部(連結編み13部分)が略中心の位置にくる。この連結部(連結編み13部分)の位置が指先になると精密作業がし難いことや穴が開きやすいことになるので、連結部(連結編み13部分)の位置をずらす必要がある。また、前述したように、作業用手袋1は、連続体10から切断ライン表示部15を裁断して取り出すので、連結部(連結編み13部分)に、切断ライン表示部15の裁断代15aが存在する。作業用手袋1は、裁断代15aの表出している面が裏面となるので、裁断代15aが内側にくるように反転させて使用する(図7参照)。従って、裁断代15aが手の表面に接触することになる。各指袋2〜6の裁断代15aが指の腹側位置すると、指先の作業に支障をきたすことになる。特に、指の腹部で材料の表面の微細の凹凸を感じ取る作業の場合、指の腹部に裁断代15aが存在すると、微細な凹凸を感じ取ることが困難になる。また、裁断代15aは、指袋2〜6の連結部(連結編み13部分)の位置にあるので、裁断代15aが爪先の位置にあると、連結部(連結編み13部分)の位置が指先になり、精密作業がし難く穴が開きやすくなる。従って、裁断代15aは、爪の上面側(指の腹部と反対側)の位置にくることが望ましい。前述したように、前編み地11と後編み地12の糸の太さ又は度目が同じであると、連結部(連結編み13部分)が略中心の位置となるが、前編み地11と後編み地12のどちらか一方の糸の太さ又は度目を変えると、図12に示すように、連結部(連結編み13部分)即ち裁断代15の位置が中心からずれることになる。前編み地11の度目を後編み地12より密にする、又は後編み地12の糸の太さを前編み地11より太くすると、連結部(連結編み13部分)即ち裁断代15の位置が中心からずれて爪の上面側になる。このように、作業用手袋1は、前編み地11の編成する糸と後編み地12の編成する糸の太さ又は度目を変えることにより、連結部(連結編み13部分)の位置が中心から偏倚し、耐久性を向上させ、作業性を高めることができる。
【0035】
作業用手袋1は、ダブルラッセル編機により編成されるため、自由に糸の太さを変えることができる。作業用手袋1は、例えば、糸太さが20デニール等の細い糸の場合、伸縮性が高く密着性も強いが、例えば、糸太さが70デニール等の太い糸の場合、伸縮性が小さく密着性も弱くなる。作業用手袋1は、作業内容にもよるが、機械等の力作業を行う場合、太い糸のものが望まれる。前述した通り、一般的な作業用手袋は、人差し指袋の外側端と小指袋の外側端の間の長さと、4本胴部の巾の長さが同じである。これに対し、人の手は、指の根本のMP関節部分の存在もあり、人差し指の外側端と小指の外側端の間の長さより手の平が若干狭い。従って、一般的な作業用手袋を手に装着すると、作業用手袋の4本胴部が手の平より広くなり、4本胴部が手の平に密着せずにだぶつく場合がある。特に、作業用手袋は、糸太さが70デニール等の太い糸の場合、密着性が弱いので、4本胴部が手の平部でだぶつき、だぶついた分作業性が悪くなる。作業用手袋1は、人差し指袋3の外側端3aと小指袋6の外側端6aの間の長さL1より、4本胴部8の人差し指袋3側外側端8aと小指袋6側外側端8bの間の長さL2が短くなるように編成したので、糸が太い場合でも、4本胴部8が手の平部に密着し、作業性を損なうことがない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明は、薄く手に密着し、作業性が高く、外れ難い作業用手袋として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
A 第一の連結編み
B 第二の連結編み
C 鎖編み
L1 長さ
L2 長さ
L3 長さ
L4 長さ
L5 長さ
1 作業用手袋
1a 手挿入口
1b 開口端
2 親指袋
2a 外側端
3 人差し指袋
3a 外側端
4 中指袋
5 薬指袋
6 小指袋
6a 外側端
7 手の平袋
8 4本胴部
8a 外側端
8b 外側端
8c 内凹み縁
8d 外凹み縁
9 5本胴部
9a 外側端
9b 外側端
10 連続体
11 前編み地
12 後編み地
13 連結編み
15 切断ライン表示部
15a 裁断代
17 手首内側ライン
19 パイプ部
20 パイプ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12