特許第6710738号(P6710738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6710738光学ガラス、光学プリフォーム、及び光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6710738
(24)【登録日】2020年5月29日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学プリフォーム、及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/247 20060101AFI20200608BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   C03C3/247
   G02B1/00
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-208009(P2018-208009)
(22)【出願日】2018年11月5日
(62)【分割の表示】特願2017-64608(P2017-64608)の分割
【原出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-23160(P2019-23160A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】201610475273.0
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】匡波
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−113348(JP,A)
【文献】 特開2012−001422(JP,A)
【文献】 特開2012−012282(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196523(WO,A1)
【文献】 特開2016−023111(JP,A)
【文献】 特許第6431948(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/247
G02B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン総量に対するモルパーセントで、その組成成分が、P5+:10−35%; Al3+:10−35%; Ba2+3−15%; Sr2+:10−35%; Ca2+:1−20%; Gd3+0.5−10%; Na:0−10%を含み、Sr2+/(Gd3++Na)が1−18; Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−18であり、
陰イオンとして、FとO2−とを含み、Fの陰イオン総量に対するモルパーセントと、P5+の陽イオン総量に対するモルパーセントとの比F/P5+が2.5以上である、光学ガラス。
【請求項2】
陽イオン総量に対するモルパーセントで、更にその組成成分が、Mg2+:0−15%; Y3+:0−10%; La3+:0−10%; Yb3+:0−10%; Li:4%より小さい; K:0−10%; Zn2+:0−10%; Nb5+:0−10%; Ti4+:0−10%; Zr4+:0−10%を含む、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
陽イオン総量に対するモルパーセントで、その組成成分が、P5+:10−35%; Al3+:10−35%; Ba2+3−15%; Sr2+:10−35%; Ca2+:1−20%; Mg2+:0−15%; Gd3+0.5−10%; Y3+:0−10%; Na:0−10%; La3+:0−10%; Yb3+:0−10%; Li:4%より小さい; K:0−10%; Zn2+:0−10%; Nb5+:0−10%; Ti4+:0−10%; Zr4+:0−10%を含Sr2+/(Gd3++Na)が1−18; Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−18である、光学ガラス。
【請求項4】
陽イオン総量に対するモルパーセントで、その組成成分が、P5+:10−35%; Al3+:10−35%; Ba2+3−15%; Sr2+:10−35%; Ca2+:1−20%; Mg2+:0−15%; Gd3+0.5−10%; Y3+:0−10%; Na:0−10%; La3+:0−10%; Yb3+:0−10%; Li:4%より小さい; K:0−10%; Zn2+:0−10%; Nb5+:0−10%; Ti4+:0−10%; Zr4+:0−10%であSr2+/(Gd3++Na)が1−18; Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−18である、光学ガラス。
【請求項5】
5+:15−30%;および/又は Al3+:15−25%;および/又は Ba2+:3−15%;および/又は Sr2+:15−35%;および/又は Ca2+:1−15%;および/又は Mg2+:1−10%;および/又は Gd3+:0.5−8%;および/又は Na:0.5−8%;および/又は Y3+:0−5%;および/又は La3+:0−5%;および/又は Yb3+:0−5%;および/又は Li:1%より小さい;および/又は K:0−5%;および/又は Zn2+:0−5%;および/又は Nb5+:0−5%;および/又は Ti4+:0−5%;および/又は Zr4+:0−5%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
5+:16−26%;および/又は Al3+:18−25%;および/又は Ba2+:5−15%;および/又は Sr2+:20−35%;および/又は Ca2+:1−10%;および/又は Mg2+:1−7%;および/又は Gd3+:1−5%;および/又は Na:1−5%;および/又は Y3+:0−3%;および/又は La3+:0−1%;および/又は Yb3+:0−1%;および/又は K:0−1%;および/又は Zn2+:0−1%;および/又は Nb5+:0−1%;および/又は Ti4+:0−1%;および/又は Zr4+:0−1%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
3++Y3++La3++Yb3+が1−20%;および/又は Na/(Gd3++Na)が0.8以下および/又は Sr2+>P5+である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
/P5+が2.5−5.5;および/又は Sr2+/(Gd3++Na)が2−10;および/又は Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−10%;および/又は Na/(Gd3++Na)が0.2−0.7;および/又は Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−15;および/又は Sr2+>P5++1%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
/P5+が2.8−4.5;および/又は Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−5%;および/又は Na/(Gd3++Na)が0.3−0.6;および/又は Sr2+/(Gd3++Y3+)が5−12;および/又は Sr2+>P5++2%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
陰イオン総量に対するモルパーセントで、F:60−80%; O2−:20−40%を含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
陰イオン総量に対するモルパーセントで、F:64−75%; O2−:25−36%を含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
陰イオン総量に対するモルパーセントで、F:65−70%; O2−:30−35%を含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
屈折率が1.46−1.53; アッベ数が77−84; 転移温度が470℃以下; 耐湿大気作用安定性が2級以上; 耐酸作用安定性が2級以上; 密度が4.30g/cm以下; 透過比が80%を達成する時に対応する波長λ80が340nmより小さいか等しく、透過比が5%を達成する時に対応する波長λが290nmより小さいか等しい、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学ガラス製の、光学プリフォーム。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学ガラス製の、光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折・低分散光学ガラスに関する。特に、低屈折・低分散フルオロりん酸塩光学ガラス、光学プリフォームと光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、デジタルカメラ、ビデオカメラとカメラ付き携帯電話の急速な普及に伴い、光学材料も高精度化、コンパクト化に向けて急速に発展してきている。上記の要求を達成するために、非球面レンズを使った光学設計はすでに主流となった。同時に、低コスト、高収率の精密成形技術は光学素子製造においてますます重要視されている。フルオロりん酸塩光学ガラスは、幅広く応用されている新型ガラス材料として、低分散、低屈折率の特性を有し、光学システムにおいては、二次スペクトル特殊分散を無くして、解像度を上げ、光学システムイメージ品質を著しく改善し、比較的に低い軟化温度を有するため、精密成形によって高級非球面レンズを製造することができる。
既存技術において、屈折率1.46−1.53、アッベ数77−84範囲内のフルオロりん酸塩光学ガラスは、精密成形において破裂或いは亀裂がよく発生する。更に、ガラス表面によく白濁とフォギングが起き、効果的な光学素子を製造できなく、生産歩留まりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−163631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、精密成形性能が優れて屈折率が1.46−1.53、アッベ数が77−84の光学ガラスを提供する。
上記課題を解決するために、本発明は更に上記光学ガラスからなる光学プリフォームと光学素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の光学ガラスの一実施形態は、陽イオン総量に対するモルパーセントで、その組成成分が、P5+:10−35%; Al3+:10−35%; Ba2+:1−20%; Sr2+:10−35%; Ca2+:1−20%; Gd3+:0−10%; Na:0−10%を含み、Sr2+/(Gd3++Na)が1−30であり、
陰イオンとして、FとO2−とを含み、Fの陰イオン総量に対するモルパーセントと、P5+の陽イオン総量に対するモルパーセントとの比F/P5+が2.5以上である。
【0006】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、陽イオン総量に対するモルパーセントで、更にその組成成分が、Mg2+:0−15%; Y3+:0−10%; La3+:0−10%; Yb3+:0−10%; Li:4%より小さい; K:0−10%; Zn2+:0−10%; Nb5+:0−10%; Ti4+:0−10%; Zr4+:0−10%を含む。
【0007】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、陽イオン総量に対するモルパーセントで、その組成成分が、P5+:10−35%; Al3+:10−35%; Ba2+:1−20%; Sr2+:10−35%; Ca2+:1−20%; Mg2+:0−15%; Gd3+:0−10%; Y3+:0−10%; Na:0−10%; La3+:0−10%; Yb3+:0−10%; Li:4%より小さい; K:0−10%; Zn2+:0−10%; Nb5+:0−10%; Ti4+:0−10%; Zr4+:0−10%を含む。
【0008】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、陽イオン総量に対するモルパーセントで、その組成成分が、P5+:10−35%; Al3+:10−35%; Ba2+:1−20%; Sr2+:10−35%; Ca2+:1−20%; Mg2+:0−15%; Gd3+:0−10%; Y3+:0−10%; Na:0−10%; La3+:0−10%; Yb3+:0−10%; Li:4%より小さい; K:0−10%; Zn2+:0−10%; Nb5+:0−10%; Ti4+:0−10%; Zr4+:0−10%である。
【0009】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、P5+:15−30%;および/又は Al3+:15−25%;および/又は Ba2+:3−18%;および/又は Sr2+:15−35%;および/又は Ca2+:1−15%;および/又は Mg2+:1−10%;および/又は Gd3+:0.5−8%;および/又は Na:0.5−8%;および/又は Y3+:0−5%;および/又は La3+:0−5%;および/又は Yb3+:0−5%;および/又は Li:1%より小さい;および/又は K:0−5%;および/又は Zn2+:0−5%;および/又は Nb5+:0−5%;および/又は Ti4+:0−5%;および/又は Zr4+:0−5%である。
即ち、本発明の光学ガラスの一実施形態は、その組成成分が、P5+:15−30% Al3+:15−25%; Ba2+:3−18%; Sr2+:15−35%; Ca2+:1−15%; Mg2+:1−10%; Gd3+:0.5−8%; Na:0.5−8%; Y3+:0−5%; La3+:0−5%; Yb3+:0−5%; Li:1%より小さい; K:0−5%; Zn2+:0−5%; Nb5+:0−5%; Ti4+:0−5%;および Zr4+:0−5%のうち、少なくとも一つを満たす。
【0010】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、P5+:16−26%;および/又は Al3+:18−25%;および/又は Ba2+:5−15%;および/又は Sr2+:20−35%;および/又は Ca2+:1−10%;および/又は Mg2+:1−7%;および/又は Gd3+:1−5%;および/又は Na:1−5%;および/又は Y3+:0−3%;および/又は La3+:0−1%;および/又は Yb3+:0−1%;および/又は K:0−1%;および/又は Zn2+:0−1%;および/又は Nb5+:0−1%;および/又は Ti4+:0−1%;および/又は Zr4+:0−1%である。
即ち、本発明の光学ガラスの一実施形態は、その組成成分が、P5+:16−26%; Al3+:18−25%; Ba2+:5−15%; Sr2+:20−35%; Ca2+:1−10%; Mg2+:1−7%; Gd3+:1−5%; Na:1−5%; Y3+:0−3%; La3+:0−1%; Yb3+:0−1%; K:0−1%; Zn2+:0−1%; Nb5+:0−1%; Ti4+:0−1%;および Zr4+:0−1%のうち、少なくとも一つを満たす。
【0011】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、Sr2+/(Gd3++Na)が1−18;および/又は Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−20%;および/又は Na/(Gd3++Na)が0.8以下;および/又は Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−18;および/又は Sr2+>P5+である。
即ち、本発明の光学ガラスの一実施形態は、その組成成分が、Sr2+/(Gd3++Na)が1−18; Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−20%; Na/(Gd3++Na)が0.8以下; Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−18;および Sr2+>P5+のうち、少なくとも一つを満たす。
【0012】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、F/P5+が2.5−5.5;および/又は Sr2+/(Gd3++Na)が2−10;および/又は Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−10%;および/又は Na/(Gd3++Na)が0.2−0.7;および/又は Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−15;および/又は Sr2+>P5++1%である。
即ち、本発明の光学ガラスの一実施形態は、その組成成分が、F/P5+が2.5−5.5; Sr2+/(Gd3++Na)が2−10; Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−10%; Na/(Gd3++Na)が0.2−0.7; Sr2+/(Gd3++Y3+)が3−15;および Sr2+>P5++1%のうち、少なくとも一つを満たす。
【0013】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、F/P5+が2.8−4.5;および/又は Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−5%;および/又は Na/(Gd3++Na)が0.3−0.6;および/又は Sr2+/(Gd3++Y3+)が5−12;および/又は Sr2+>P5++2%である。
即ち、本発明の光学ガラスの一実施形態は、その組成成分が、F/P5+が2.8−4.5; Gd3++Y3++La3++Yb3+が1−5%; Na/(Gd3++Na)が0.3−0.6; Sr2+/(Gd3++Y3+)が5−12;および Sr2+>P5++2%のうち、少なくとも一つを満たす。
【0014】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、陰イオン総量に対するモルパーセントで、F:60−80%; O2−:20−40%を含有する。
【0015】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、陰イオン総量に対するモルパーセントで、F:64−75%; O2−:25−36%を含有する。
【0016】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、陰イオン総量に対するモルパーセントで、F:65−70%; O2−:30−35%を含有する。
【0017】
本発明の光学ガラスの一実施形態は、屈折率が1.46−1.53; アッベ数が77−84; 転移温度が470℃以下; 耐湿大気作用安定性が2級以上; 耐酸作用安定性が2級以上; 密度が4.30g/cm以下; 透過比が80%を達成する時に対応する波長λ80が340nmより小さいか等しく、透過比が5%を達成する時に対応する波長λが290nmより小さいか等しい。
【0018】
本発明は、前記光学ガラス製の光学プリフォームを提供する。
また、本発明は、前記光学ガラス製の光学素子を提供する。
【発明の効果】
【0019】
各成分間の配合比率を調整することにより、光学ガラスの成形性能が根本的に改善され、屈折率1.46−1.53、アッベ数77−84の光学ガラスの成形におけるガラスの破損やフォギング問題を効果的に解決し、光学素子生産の歩留まりを大きく向上する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光学ガラスはP5+、Al3+及びアルカリ土類金属を陽イオン成分とし、O2−とFを含んだものを陰イオン成分とする。その内、Fの含有量は、陰イオン総量に対するモルパーセントとP5+含有量の陽イオン総量に対するモルパーセントの比F/P5+は2.5以上で、且つ、屈折率(nd)は1.46−1.53、アッベ数(ν)は77−84である。
【0021】
I.光学ガラス
本発明になる光学ガラスの各成分に対して説明する。
本明細書において、各成分の含有量は特別説明のない限り、陽イオン成分含有量は、当該陽イオンの全部、陽イオン総モルパーセント含有量で示し、陰イオン成分含有量は、当該陰イオンの全部、陰イオン総モルパーセント含有量より示す。更に、以下の説明において、規定値は、規定値以上、或るいは規定値以下であり、当該規定値を含むものとする。
【0022】
説明しなければいけないのは、各成分のイオン価は、便宜を図る為に使う代表値であり、その他イオン価とは違わない。光学ガラスにおける各成分のイオン価は代表値以外のものが存在する可能性がある。例えば、Pは通常イオン価の5価状態でガラスに存在する。その為、本明細書では、「P5+」を代表値とするが、そのたのイオン価状態で存在する可能性あり、これも本発明の保護範囲内とする。
【0023】
本発明の光学ガラスのアッベ数は77−84で、これほど低分散性のフルオロりん酸塩ガラスを製造する際、フッ素の揮発性が増加する恐れがあり、特に精密成形において、光学ガラスが成型済みとなっても、その中のフッ素によって、ガラスが不安定となり、破損やフォギング、白濁等現象が起きやすい。本発明者はFとP5+含有量の比を制御して、Fの含有量の陰イオン総量に対するモルパーセントとP5+含有量の陽イオン総量モルパーセントに対する比F/P5+が2.5以上の場合、FとP5+の配位は最適となり、各成分がガラスフレーム間の安定且つ平衡となり、ガラスの成形における各成分の活躍度を抑制し、破損やフォギング発生確率を低下させ、光学素子の生産歩留まりが大幅に向上された事を、研究を通じて発見した。従って、本発明において、F/P5+は2.5以上で、2.5−5.5が好ましく、2.8−4.5がもっと好ましい。
【0024】
[陽イオン成分について]
5+は、ガラスのネットワークフォーマの重要な陽イオン成分として、その含有量が10%以下の場合、ガラスの安定性が低下してしまう。一方、P5+含有量を35%以下に制御することにより、ガラスの失透を抑制し、更にガラスアッベ数の低下を抑制し、低分散の安定なガラスが得られる。その為、P5+含有量を10−35%に限定し、15−30%が好ましく、16−26%が更に好ましく、18−25%がもっと好ましい。例えば、メタリン酸、メタリン酸塩、P、リン酸、リン酸塩等を原料としてP5+を導入することができる。
【0025】
Al3+は、本発明のガラスにおける主要なガラスフレーム成分であり、ガラスの機械性能と化学耐久性を効果的に向上することができ、並びにガラスの平均線膨張係数を低下する。その含有量が10%より低い場合は、安定したガラスフレームが形成出来なくなり、上記の効果が得られない。その含有量が35%より高い場合は、ガラスの転移温度と液相線温度が大幅に高くなり、溶融が難しくなり、成型時には温度が上昇して、ガラスの揮発を進行させ、ガラスストライプが悪くなり、余りにも高い転移温度により、成形困難となる。その為、Al3+含有量は10−35%とし、15−30%が好ましく、15−25%が更に好ましく、18−25%がもっと好ましい。本発明においては、Alのフッ化物、酸化物とAl含有の塩類等方式を使ってAl3+を導入することができる。
【0026】
Ba2+の投入は、ガラスの屈折率を適切に向上させ、同時にガラスの化学安定性の向上、特に耐候性向上には十分効果がある。但し、過度な投入によってガラスの耐失透安定性を著しく損傷してしまい、並びに転移温度が上昇してしまう。その為、本発明において、Ba2+の含有量範囲は1−20%に限定し、3−18%が好ましく、5−15%が更に好ましい。本発明においては、Baのフッ化物、酸化物とBa含有の塩類等方式を使ってBa2+を導入することができる。
【0027】
Sr2+は、ガラスの耐失透性能の向上に効果があり、ガラスの屈折率と比重を効果的に調整することができる。但し、その含有量が高すぎると、ガラスの屈折率と分散が大きくなるだけではなく、プリセットの光学性質の達成が難しく、また、ガラスの化学安定性も低下してしまう。その為、本発明においては、Sr2+の含有量範囲を10−35%に限定し、15−35%好ましく、20−35%が更に好ましく、20−30%がもっと好ましい。本発明において、Sr2+含有量がP5+含有量より大きい場合は、ガラスのガラス形成能向上に有利であり、特にSr2+>P5++1%の場合、ガラス形成能は著しく向上され、Sr2+>P5++2%が更に好ましい。本発明において、Srのフッ化物、酸化物と含Srの塩類等方式を使ってSr2+を導入することができる。
【0028】
Ca2+は、ガラスにおいてガラスのアッベ数と比重を低下するだけではなく、ガラスの形成を安定させることができる。その含有量が低すぎると効果は明らかではない。その含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性能が悪化する。その為、本発明において、Ca2+の含有量範囲を1−20%に限定し、1−15%が好ましく、1−10%が更に好ましい。本発明においては、Caのフッ化物、酸化物とCa含有の塩類等方式を使ってCa2+を導入することができる。
【0029】
Mg2+が特定量を含有する場合は、ガラスの耐失透性を向上することができる。但し、その含有量が15%を超える場合は、却ってガラスの耐失透性能が悪くなる。その為、Mg2+の含有量範囲を0−15%に限定する。本発明において、特にMg2+含有量を1%以上とすることによって、ガラスの摩耗度を低下させることができ、研磨加工性の高いガラスが得られるその為、Mg2+の含有量は1−10%が好ましく、1−7%が更に好ましい。本発明において、Mgのフッ化物、酸化物とMg含有の塩類等方式を使ってMg2+を導入することができる。
【0030】
3+は、ガラスの屈折率と耐失透性能を向上するが,その含有量が10%より高い場合は、ガラスの屈折率は設計要求事項を超えてしまう。その為、Y3+の含有量は10%より低く、5%より低いのが好ましく、3%より低いのが更に好ましく、1%より低いのはもっとも好ましい。本発明において、可使用Yのフッ化物、酸化物とY含有の塩類等方式を使ってY3+を導入することができる。
【0031】
Gd3+は、ガラスの安定性と耐久性を改善することができる。更に屈折率を適切に向上すると同時に低分散性を維持し、並びに機械強度を適切に向上することができる。その含有量が10%を超える場合は、ガラスの液相温度と転移温度が上昇し、その安定性も低下してしまう。その為、Gd3+含有量範囲は0−10%とする。本発明のガラスにおけるGd3+含有量は0.5%以上の場合、ガラスの耐失透性能を著しく向上させ、並びに本発明のガラス形成能を向上することができる。その為、Gd3+含有量の範囲は0.5−8%が好ましく、1−5%が更に好ましい。本発明において、Gdのフッ化物、酸化物とGd含有の塩類等方式を使ってGd3+を導入することができる。
【0032】
本発明において、特にGd3+、Sr2+とNaの比であるSr2+/(Gd3++Na)が1−30の場合、ガラス成形におけるフォギングと白濁の発生を効果的に抑制することができるため、1−18が好ましく、2−10が更に好ましい。
Gd3+、Sr2+とY3+は一定比例によって混融すれば、ガラスの結晶化を効果的に抑制できる。その比例がSr2+/(Gd3++Y3+)が3−18の場合、内部耐結晶化性能と表面耐結晶化性能を含めて、耐ガラス形成能力は一番強く、3−15が好ましく、5−12が更に好ましく、5−10がもっと好ましい。
【0033】
La3+、Yb3+等適量の希土元素を添加することにより、ガラスの屈折率と分散を効果的に調節することができる。但し、その含有量が多すぎると、ガラスの屈折率が設計値を超えてしまい、ガラスの安定性が下がってしまう。その為、その含有量はそれぞれ0−10%で、0−5%が好ましく、0−1%が更に好ましい。本発明においては、La、LaF、Yb、YbF等方式を使ってLa3+とYb3+を導入することができる。
【0034】
本発明においては、三価陽イオンGd3++Y3++La3++Yb3+の総和を優先的に1%以上まで制御することが好ましい。ガラスの化学安定性が明らかに改善され光学の性質を調整することができる。但し、その含有量が20%を超える場合は、屈折率はプリセット値を超えてしまう。その為、Gd3++Y3++La3++Yb3+の総和は、1−20%が好ましく、1−10%が更に好ましく、1−5%がもっと好ましい。
【0035】
Liをガラス成分に投入すると、ガラスのTg温度を効果的に下げることができる。但し、Liを含有するガラスを精密成形に用いる過程において、ガラス素子表面がボケやすい。それは、金型に通常炭素含有の離型剤がコーティングされて、ガラス成分のLiと離型剤の炭素が反応して、ガラス素子の表面に粗い不透明膜層ができるためである。その為、本発明におけるLiの含有量を4%より小さく限定し、好ましくは1%より小さく、非含有がもっと好ましい。本発明においては、Liのフッ化物、酸化物とLi含有の塩類等方式等を使ってLiを導入することができる。
【0036】
Naは、ガラスの溶融特性を改善し、ガラスの屈服点と液相温度を改善する。ただし、その含有量が10%超える場合は、ガラスの耐結晶化性能の悪化を進行させ、同時に冷却成型時にガラスが液状から固体状に変わる時間を延長し、結晶化の為に条件を作り上げる。その為、その含有量を10%以下に制御する。本発明においては、Naの含有量を0.5%以上とすることによって、ガラスの透過率を著しく改善することができる。これはその他のアルカリ金属では(例えば、Li、K、Cs)実現できない。その為、Na含有量は0.5−8%が好ましく、1−5%が更に好ましい。本発明では、Naのフッ化物、酸化物とNa含有の塩類等方式を使ってNaを導入することができる。
【0037】
本発明者は、Na/(Gd3++Na)の比が0.8以下の場合、短波透過率はとても素晴らしく、特にその比が0.2−0.7の場合、短波透過率は最適であり、もっと好ましい比は0.3−0.6である事を、大量の研究を通して発見した。
【0038】
は、本発明のオプション成分であり、ガラス成型時に耐失透性を維持し、Tg温度を下げることが出来る。ただし、その含有量が10%を超える場合は、耐水性が悪くなるその為、Kの含有量を10%以下に限定し、5%以下が好ましく、1%以下が更に好ましい。本発明においては、Kのフッ化物、酸化物とKを含有の塩類等方式を使ってKを導入することができる。
【0039】
Zn2+は、ガラス耐失透性を向上する成分で、ガラスのTg温度も下げることが出来る。本発明の光学ガラスにおける、オプショナル成分である。Zn2+含有量を10%以下まで制御すると、ガラスの耐失透性を向上すると同時に、ガラスの屈折率の低下を適切に抑制することができる。その為、Zn2+含有量を10%以下に限定し、5%以下が好ましく、1%以下が更に好ましい。本発明においては、Znのフッ化物、酸化物とZn含有の塩類等方式を使ってZn2+を導入することができる。
【0040】
Nb5+は、高屈折高分散成分である。ガラス成分に投入すると、ガラス屈折率を向上し、ガラスのアッベ数を調節することができる。本発明体系のガラスにおいて、その含有量が10%より高い場合は、ガラスの屈折率とアッベ数は設計を満たさなくなる。また、ガラスの耐結晶化性能が急激に低下してしまう。その為、Nb5+の含有量を0−10%とし、0−5%が好ましく、0−1%が更に好ましい。
【0041】
Zr4+の投入は、ガラスにおける、揮発によるストライプを適量に抑制することができる。その含有量が10%を超えると、光学係数の制御が難しくなる。その為、その含有量を10%以下に限定し、5%以下が好ましく、1%以下がさらに好ましい。本発明においては、Zrのフッ化物、酸化物とZr含有の塩類等方式を使ってZr4+を導入することができる。
【0042】
Ti4+は、ガラスの耐失透安定性を向上することができるが、その含有量が10%より高い場合は、ガラスの屈折率が向上され、また、透過率が下がってしまうその為、Ti4+の含有量を0−10%に限定し、0−5%が好ましく、0−1%が更に好ましい。
【0043】
[陰イオン成分について]
は、光線屈折性の改善、屈折率温度係数とTg低下に比較的に大きな役割をし、アッベ数と異常分散性を向上する重要成分である。但し、その含有量が高すぎると、ガラスの安定性を弱くしてしまい、熱膨張係数と摩耗度が増加し、特に溶融過程においては、Fの揮発は環境を汚染するだけではなく、ガラスの光学データーが設計範囲を超えてしまう。その含有量が60%より小さい場合は、設計するアッベ数と異常分散性が得られなくなる。その含有量が80%より高い場合は、ガラスのアッベ数は余りにも大きくなり、溶融と精密成形において揮発が急激に増加してしまう。その為、Fの含有量を60−80%に限定する。本発明においては、Fの含有量が64%より低い場合は、成形におけるガラスの破損率の低下は明らかではなく、その含有量が64%より高い場合は、成形におけるガラスのフォギング現象は完全に無くなり、且つ、歩留まりは大幅に向上される。その為、Fの含有量は64−75%が好ましく、65−70%が更に好ましい。Fは各種のフッ化物原料の方式によって導入できる。
【0044】
本発明の光学ガラスにはO2−が含まれる。特に20%以上のO2−が含まれることによって、ガラスの失透と摩耗度上昇を抑制することができる。その為、O2−の含有量は20%を下限と限定し、25%下限が好ましく、30%下限がさらに好ましい。一方、O2−の含有量を40%以下に限定することにより,ガラスの成型性能の向上に有利である。その為、本発明では40%をO2−含有量の上限と限定し、36%上限が好ましく、35%上限がさらに好ましい。O2−は酸化物と各種塩類原料等形式によって導入することができる。
ガラスの失透を抑制する観点から、FとO2−の総含有量は98%以上が好ましく、99%以上が更に好ましく、99.5%以上がもっと好ましい。
【0045】
[その他の成分について]
本発明のガラス特性を損なわない範囲において、必要に応じて、本発明の光学ガラスに、Ta、W、Ge、Bi、Te等その他の成分を添加することができる。
【0046】
[含有してはならない成分について]
本発明のガラス特性を損なわない範囲において、必要に応じて、上記において言及していないその他の成分を添加することができる。ただし、Ce、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等遷移金属成分は、個別或いは複合的に少量に含有する場合にでも、ガラスは着色されてしまい、可視光区域の特定波長において吸収が発生し、本発明における、可視光透過率效果を向上する性質を弱くさせてしまう。その為、特に可視光区域における波長の透過率を要求する光学ガラスについては、含有させないのが好ましい。
Pb、Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの陽イオンは、近年以来、有害化学物質として取り扱いを制限する傾向がある。ガラスの製造工程だけではなく、加工工程及び製品化後の処置まで、環境保護対策が必要である。その為、環境への影響を重要視する状況においては、不可欠に混入する以外は、含有しないのが好ましい。従って、光学ガラスは、実際には環境汚染物質を含まないことになる。その為、特殊の環境対策を取らなくても、本発明の光学ガラスは製造、加工及び廃棄が可能となる。
以下、本発明の光学ガラスの特性について詳細に説明する。
【0047】
[光学ガラスの光学定数]
本発明の光学ガラスは低屈折率・低分散ガラスであり、低屈折率・低分散ガラスより製造されたレンズの多くは高屈折率高分散ガラスより製造されたレンズと組合せて、色差校正に用いる。本発明の光学ガラスは、その用途の光学特性に適用する角度から考慮して、ガラス屈折率ndの範囲を1.46−1.53とし、好ましい範囲は1.47−1.52とし、もっと好ましい範囲は1.48−1.51とする;本発明ガラスのアッベ数νdの範囲は77−84で、好ましい範囲は78−83で、もっと好ましい範囲は79−83である。
【0048】
[光学ガラスの着色]
本発明のガラスの短波透射スペクトル特性は着色度(λ80/λ)で表す。λ80とは、ガラス透過率が80%達する時に対応する波長の事を指し、λとは、ガラス透過率が5%達する時に対応する波長の事を指す。その内、λ80の測定は相互並行して、且つ、光学研磨の二つの相対平面で厚さが10±0.1mmのガラスを使って、280nmから700nmまでの波長域内の分光透過率を測定して、且つ透過率80%の波長を表す。所謂分光透過率或いは透過率とは、ガラスの上記表面に強度Iinの光を垂直に入射して、ガラスを透過して、異なる平面から強度Ioutの光を入射する状況において、Iout/Iinによって表示する量であり、また、ガラスの上記表面上の表面反射損失の透過率を含む。ガラスの屈折率が高いほど、表面反射損失は大きい。その為、高屈折率ガラスにおいては、λ80の値が小さければ、ガラス自体の着色は極めて少ない。
本発明の光学ガラスのλ80は、340nmより小か等しく、λ80の範囲は335nmより小か等しいのが好ましく、λ80の範囲は330nmより小か等しいのが更に好ましく、λ80の範囲325nmより小か等しいのがもっと好ましく、λ80の範囲は320nmより小か等しいのが一番好ましい。λは290nmより小か等しい、λの範囲285nmより小か等しいのが好ましく、λの範囲は280nmのが更に好ましく、λの範囲は275nmより小か等しいのがもっと好ましい。
【0049】
[光学ガラスの密度]
光学ガラスの密度は温度20℃の時の単位体積の質量であり、単位はg/cmで表示する。
本発明のガラスの密度は4.30g/cm以下で、4.20g/cm以下が好ましく、4.10g/cm以下が更に好ましく、4.00g/cm以下がもっと好ましい。
【0050】
[光学ガラスの転移温度]
光学ガラスは、ある温度区間において徐々に固体状から塑性状態に変わる。転移温度とは、ガラス試料が室温状態からたるみ温度まで上昇し、その低音区域と高温区域の直線部分の延長線が交差する交差点の対応する温度である。
本発明のガラスの転移温度Tgは470℃以下で、465℃以下が好ましく、460℃以下が更に好ましく、450℃以下がもっと好ましい。
【0051】
[光学ガラスの耐水性]
防湿大気作用安定性RC(S)(表面法):湿気大気作用の安定性によって三級に分類し、その内:
1級:温度50℃相対湿度85%条件において、ガラス研磨表面に加水分解斑点が形成する時間が20hを超える;
2級:温度50℃、相対湿度85%条件において、ガラス研磨表面に加水分解斑点が形成する時間が5〜20hである;
3級:温度50℃、相対湿度85%条件において、ガラス研磨表面に加水分解斑点が形成する時間が5h未満である;
本発明のガラスの防湿大気作用安定性(RC)は2級以上で、1級以上が好ましい。
【0052】
[光学ガラスの耐酸性]
耐酸作用安定性RA(S)(表面法):湿気大気作用の酸溶液に対する安定性によって三級に分類し、その内:
1級:0.1NN(規定濃度)、温度50℃の酢酸溶液の作用において、ガラス研磨表面のダメージ深さが135nmまで達する時間が5hを超える;
2級:50N、温度50℃の酢酸溶液の作用において、ガラス研磨表面のダメージ深さが135nmまで達する時間が1〜5hである;
3級:0.1NN、温度50℃の酢酸溶液の作用において、ガラス研磨表面のダメージ深さが135nmまで達する時間が1h未満である;
本発明のガラス耐酸作用安定性(RA)は2級以上で、1級以上が好ましい。
【0053】
II.光学プリフォームと光学素子
以下、本発明の光学プリフォームと光学素子を説明する。
本発明の光学プリフォームと光学素子は、全て上記本発明の光学ガラスからなる。本発明の光学プリフォームは、低屈折率・低分散特性を有する。本発明の光学素子は、低屈折率・低分散特性を有し、光学価値の高い各種レンズ、プリズム等光学素子を提供することができる。
製造済みの光学ガラスから見て、例えば、再加熱圧縮成形、精密圧縮成形等圧縮成形の手法を使って、光学プリフォームを作ることが出来る。即ち、光学ガラスから、圧縮成形用の光学ガラスの成形ビレットを作る事ができ、当該光学ガラス成形ビレットに対して、更に再加熱圧縮成形後に研磨加工により光学プリフォームを作ることが出来る。但し、光学プリフォームの制作手法としては、以上に述べる手法に限らない。
このように造った光学プリフォームは、各種光学素子と光学設計においては有用である。特に、本発明の光学ガラスを使って、精密圧縮成形等手法にてレンズ、プリズム、反射鏡等光学素子を造る事が好ましい。従って、カメラ、投影機等これらの光学素子における、可視光が透過する光学機械の場合、高精度の結像性能を実現し、これら光学機械の軽量化を実現することができる。
レンズの例として、レンズ面が球面或いは非球面の凹面のメニスカスレンズ、凸面のメニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ等各種レンズがある。これらレンズは、高屈折率高分散ガラスより製造されたレンズと組合せて、色差校正をすることができ、色差校正用のレンズに適切する。また、光学体系のコンパクト化にも非常に有効なレンズである。
【実施例】
【0054】
III.実施例
本発明の課題を解決するための手段として、以下、実施例を挙げて本発明の光学ガラスをさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られない。
光学ガラスを製造する熔融と成型方法は、本分野技術者が公知の技術を取り入れた。ガラス原料(炭酸塩、硝酸塩、メタリン酸塩、フッ化物、酸化物等)をガラス各イオンの配合比率によって計量配合して、均一の混合後、精錬装置に投入して(例えば、プラチナるつぼ)、900〜1150℃条件で適切な攪拌、清澄化及び均質化された後、900℃以下まで温度を下げ、成型金型に流し込み或いは漏れ込み、最後にアニーリング、加工等後処理、或いは精密成形技術によって直接圧縮成形した。
【0055】
[光学ガラス実施例]
下記に示す方法によって、本発明の各ガラスの特性を測定し、測定結果を表1〜表7に示す。
(1)屈折率ndとアッベ数νd
屈折率と分散係数は、GB/T7962.1−2010規定の方法により測定した。
(2)ガラス着色度(λ80、λ
お互いに相対の二つ光学研磨平面を有する厚さ10±0.1mmのガラス試料で、分光透過率を測定し、その結果により算出した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
GB/T7962.16−2010規定の方法により測定した。
(4)比重(ρ)
GB/T7962.20−2010規定の方法により測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
[光学プリフォーム実施例]
表7における実施例61〜70で得られた光学ガラスを予定の大きさにカットして、更にその表面に離型剤を均一に塗布してから、加熱、軟化の後、加圧成型して、凹面のメニスカスレンズ、凸面のメニスカスレンズ、両凸レンズ、双凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ等各種レンズ、プリズムのプレハブを制作した。従来の成形技術において、成形によって得られる製品には破損とフォギングの発生は無く、成形効率と製品歩留まりを大幅に向上した。
【0064】
[光学素子実施例]
上記光学プリフォーム実施例から得られた、これらのプリフォームをアニーリングし、ガラス内部の変形を低下すると同時に、微調整を行い、屈折率等光学特性が予期の必要値を達成させた。
次に、各プリフォームを研削、研磨して、凹面のメニスカスレンズ、凸面のメニスカスレンズ、両凸レンズ、双凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ等各種レンズ、プリズムを制作した。得られた光学素子の表面には反射防止フィルムを塗布することができる。得られた光学素子の表面には反射防止フィルムを塗布することができる。
【0065】
本発明は低コストで、且つ透過率の優れた低屈折・低分散光学ガラスであり、屈折率は1.46−1.53、アッベ数は77−84で、及び記述のガラスからなる光学素子であり、現代新型光電製品のニーズを満たすことができる。