(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保全管理部は、前記プロセス値算出部により算出された前記プロセス値が前記上限管理値より大きい場合、または前記プロセス値が前記下限管理値より小さい場合、前記プラントに異常が発生していると判定する
請求項7記載のフィールド機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィールド機器の測定周期は短いため、フィールド機器が測定周期ごとに測定値を外部機器に送信すると、通信経路におけるトラフィックが増大する場合があった。トラフィックの増大を防止するため、フィールド機器が測定値を間引いてコントローラに送信しようとすると、測定値のリアルタイム性が失われ、プラントの診断に用いられる管理指標を正確に算出できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、通信経路におけるトラフィックの増大を防止するとともに、管理指標を正確に算出することができるフィールド機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載のフィールド機器(100)は、プラントに設置されたフィールド機器であって、前記プラントにおける測定対象を第1の周期で測定することにより得られた測定値を出力するセンサ(110,115)と、前記センサから出力された前記測定値に基づき、プロセス値を算出するプロセス値算出部(131)と、前記プロセス値算出部により算出された前記プロセス値を用いて、前記第1の周期よりも長い第2の周期で前記プラントの診断に用いられる管理指標を算出する管理指標算出部(132)と、を有する。
本発明の請求項2に記載のフィールド機器は、請求項1において、前記管理指標算出部が、前記プロセス値を用いて重回帰計算を行うことにより、前記管理指標を算出する多変量解析部(133)を有する。
本発明の請求項3に記載のフィールド機器は、請求項2において、前記多変量解析部が予め多変量解析を行うことによって算出された重回帰式の係数を記憶する記憶部(120)と、外部機器から出力された外部信号が入力される信号入力部(155)を更に有し、前記多変量解析部が、前記記憶部に記憶された前記係数、前記プロセス値算出部により算出された前記プロセス値、および前記信号入力部に入力された前記外部信号を用いて重回帰計算を行うことにより、前記管理指標を算出する。
本発明の請求項4に記載のフィールド機器は、請求項2または3において、前記多変量解析部が、算出した前記管理指標に基づき、前記プラントの状態を判定する。
本発明の請求項5に記載のフィールド機器は、請求項4において、前記多変量解析部によって判定された前記プラントの状態を表示する表示部(140)を更に有する。
本発明の請求項6に記載のフィールド機器は、請求項4または5において、前記多変量解析部によって判定された前記プラントの状態を、外部機器に出力する状態出力部(150)を更に有する。
本発明の請求項7に記載のフィールド機器は、請求項1または2において、前記管理指標算出部が、前記プラントの保全管理に用いられる保全管理情報を前記管理指標として算出する保全管理部(134)を有する。
本発明の請求項8に記載のフィールド機器は、請求項7において、前記保全管理部が、前記プロセス値の平均値および標準偏差を用いて、前記測定値の上限管理値および下限管理値を前記管理指標として算出する。
本発明の請求項9に記載のフィールド機器は、請求項8において、前記保全管理部が、前記プロセス値算出部により算出された前記プロセス値が前記上限管理値より大きい場合、または前記プロセス値が前記下限管理値より小さい場合、前記プラントに異常が発生していると判定する。
本発明の請求項10に記載のフィールド機器は、請求項9において、前記保全管理部によって前記プラントに異常が発生していると判定されたことに応じて、前記プラントに異常が発生していることを表示する表示部(140)を更に有する。
本発明の請求項11に記載のフィールド機器は、請求項9または10において、前記保全管理部によって前記プラントに異常が発生していると判定されたことに応じて、アラーム情報を外部機器に出力する状態出力部(150)を更に有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィールド機器によれば、通信経路におけるトラフィックの増大を防止するとともに、管理指標を正確に算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態のフィールド機器を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、プラント制御システム1の全体構成を示すブロック図である。プラント制御システム1は、プラントの監視および制御等を行う制御システムである。プラントとしては、例えば、化学等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等がある。
【0012】
図1に示されるように、プラント制御システム1は、フィールド機器100と、I/Oモジュール200と、コントローラ300と、操作監視端末400とを含む。フィールド機器100は、流量計や温度センサ等の測定器100aと、バルブ機器やアクチュエータ機器等の操作器100bとを含む。以下、いずれの「フィールド機器」であるかを区別しないときは、単にフィールド機器100と表記する。なお、
図1においては、2つのフィールド機器が示されているが、3つ以上のフィールド機器がプラントに設置されていてもよい。
【0013】
フィールド機器100は、伝送線Lを介してI/Oモジュール200に設けられたI/Oポートに接続されている。伝送線Lは、例えば、「4〜20mA」のアナログ信号の伝送に用いられる伝送線、「0〜1kHz」のパルス信号の伝送に用いられる伝送線、およびフィールド機器100の内部に設けられた接点をON/OFFすることによりHigh信号/Low信号を送信する伝送線を含む。フィールド機器100は、測定したプロセス値(例えば、流量および温度)等の信号を、伝送線Lを介してI/Oモジュール200に送信する。
【0014】
なお、フィールド機器100およびI/Oモジュール200は、例えばHART(登録商標)、FieldBus等に準拠した有線の工業用ネットワーク、またはISA100.11aやWirelessHART(登録商標)等に準拠した無線の工業用ネットワークで接続されてよい。
【0015】
I/Oモジュール200は、フィールド機器100とコントローラ300との間に設けられている。I/Oモジュール200には、複数のフィールド機器100が接続可能である。I/Oモジュール200は、接続されたフィールド機器100とコントローラ300との間で送受信される信号の処理を行う。例えば、フィールド機器100から受信した信号(「4〜20mA」信号等のアナログ信号、及びアナログ信号に重畳されているディジタル信号)を、コントローラ300が受信可能な信号に変換する処理を行う。I/Oモジュール200は、変換した信号を、ケーブルCを介してコントローラ300に送信する。
【0016】
コントローラ300および操作監視端末400は、ネットワークNに接続されている。ネットワークNは、例えばイーサネット(登録商標)等の有線ネットワークであるが、例えばWi−Fi(登録商標)、WiMAX(登録商標)、3G/LTE(登録商標)等の無線通信規格に準拠した無線通信が可能な無線ネットワークであってもよい。
【0017】
コントローラ300は、操作監視端末400からの指示等に応じてフィールド機器100との間でプロセス制御通信を行うことにより、フィールド機器100の制御を行う。具体的に、コントローラ300は、あるフィールド機器100(例えば、センサ機器100a)によって測定されたプロセス値を取得し、他のフィールド機器100(例えば、バルブ機器100b)の操作量を演算して送信することによって、他のフィールド機器100(例えば、バルブ機器100b)を制御する。
【0018】
操作監視端末400は、例えばプラント等の運転員によって操作されてプロセスの監視のために用いられる端末である。例えば、操作監視端末400は、フィールド機器100から送信されたデータ(例えば、プロセス値)をコントローラ300から取得してフィールド機器100やコントローラ300の挙動を運転員に伝えるとともに、運転員の指示に基づいてコントローラ300の制御を行う。
【0019】
図2は、フィールド機器100の詳細構成の一例を示すブロック図である。
図2においては、フィールド機器100の一例として、配管内の流体の流量を測定する流量計のブロック図が示されている。フィールド機器100は、流量センサ110と、温度センサ115と、記憶部120と、制御部130と、表示部140と、信号出力部145と、状態出力部150と、信号入力部155と、状態入力部160とを含む。
【0020】
流量センサ110は、配管内の流体の流量を測定し、測定値(流量)を示す信号を制御部130に供給するセンサである。温度センサ115は、配管内の流体の温度を測定し、測定値(温度)を示す信号を制御部130に供給するセンサである。流量センサ110および温度センサ115は、例えば50[msec]のサンプリング周期で測定値を制御部130に供給する。
【0021】
記憶部120は、制御部130によって使用されるメモリであり、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。
【0022】
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、プログラムを格納するプログラムメモリを含み、フィールド機器100全体の制御を司る。制御部130は、プロセス値算出部131と、管理指標算出部132とを含む。
【0023】
プロセス値算出部131は、流量センサ110から供給された測定値に対してフィルタリングや移動平均等の信号処理を行うことにより、プロセス値(流量データ)を算出する。また、プロセス値算出部131は、温度センサ115から供給された測定値に対してフィルタリングや移動平均等の信号処理を行うことにより、プロセス値(温度データ)を算出する。プロセス値算出部131は、算出したプロセス値を、管理指標算出部132および信号出力部145に供給する。
【0024】
管理指標算出部132は、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値を用いて、管理指標を算出する。管理指標は、プラントの診断に用いられる指標であり、例えば、プラント内の配管のライニング減肉量や、生産物の品質または収率を示す指標である。
【0025】
管理指標算出部132は、多変量解析部133および保全管理部134を含む。多変量解析部133は、詳細は後述するが、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データおよび温度データ)を用いて重回帰計算を行うことにより、管理指標を算出する。多変量解析部133は、算出した管理指標を信号出力部145に供給する。また、多変量解析部133は、算出した管理指標に基づいてプラントの状態を判定し、プラントの状態を示す情報を、表示部140および状態出力部150に供給する。
【0026】
保全管理部134は、詳細は後述するが、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データおよび温度データ)を用いて、プラントの保全管理に必要な保全管理情報(例えば、プラントで製造される製品の歩留まり管理および品質管理等に必要な情報)を管理指標として算出する。保全管理部134は、算出した管理指標に基づいてプラントに異常が発生しているか否かを判定する。プラントに異常が発生している場合、保全管理部134は、アラーム情報を表示部140および状態出力部150に供給する。
【0027】
表示部140は、例えば液晶表示装置などの表示装置であり、多変量解析部133や保全管理部134から供給されたプラントの状態を示す情報等を表示する。
【0028】
信号出力部145は、例えば、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値および管理指標算出部132から供給された管理指標を、「4〜20mA」信号の伝送に用いられる伝送線Lを介してI/Oモジュール200に送信する。信号出力部145は、例えば1[sec]の周期で、プロセス値および管理指標をI/Oモジュール200に送信する。
【0029】
I/Oモジュール200は、信号出力部145から受信した管理指標を、コントローラ300が受信可能な信号に変換してコントローラ300に送信する。なお、信号出力部145は、「4〜20mA」信号の伝送に用いられる伝送線Lの代わりに、パルス信号の伝送に用いられる伝送線Lを介してプロセス値および管理指標を送信してもよい。
【0030】
状態出力部150は、多変量解析部133から供給されたプラントの状態を示す状態情報および保全管理部134から供給されたアラーム情報を、伝送線Lを介してI/Oモジュール200に送信する。状態出力部150は、例えば、フィールド機器100の内部に設けられた接点をON/OFFすることによりHigh信号/Low信号を送信する伝送線Lを用いて、アラーム情報等をI/Oモジュール200に送信する。
【0031】
このように、状態出力部150は、信号出力部145によって用いられる伝送線Lとは異なる系統の伝送線Lを用いて、アラーム情報等をI/Oモジュール200に送信する。これによって、信号出力部145によって用いられる伝送線Lにおけるトラフィックが増大することを防止できるとともに、アラーム情報を即時にI/Oモジュール200に送信することができる。
【0032】
なお、状態出力部150は、I/Oモジュール200を介してアラーム情報をコントローラ300に送信するだけでなく、I/Oモジュール200を介してアラーム情報を他のフィールド機器100に送信してもよい。これにより、フィールド機器間でアラーム情報を共有することができる。
【0033】
外部機器から送信された外部信号は、信号入力部155に入力される。例えば、外部機器から出力された外部信号が、「4〜20mA」信号の伝送に用いられる伝送線Lを介して信号入力部155に入力される。なお、信号入力部155は、「4〜20mA」信号の伝送に用いられる伝送線Lの代わりに、パルス信号の伝送に用いられる伝送線Lを介して外部信号を受信してもよい。信号入力部155は、入力された外部信号を制御部130に供給する。
【0034】
他のフィールド機器100等の外部機器から送信されたアラーム情報は、状態入力部160に入力される。状態入力部160は、例えば、フィールド機器100の内部に設けられた接点をON/OFFすることによりHigh信号/Low信号を送信する伝送線Lを用いて、アラーム情報等をI/Oモジュール200から受信する。
【0035】
このように、状態入力部160は、信号入力部155によって用いられる伝送線Lとは異なる系統の伝送線Lを用いて、アラーム情報等をI/Oモジュール200から受信する。これによって、信号入力部155によって用いられる伝送線におけるトラフィックが増大することを防止できるとともに、アラーム情報を即時にI/Oモジュール200から受信することができる。
【0036】
次に、多変量解析部133による重回帰計算について説明する。多変量解析部133は、予め多変量解析を行うことによって算出した係数、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値、および信号入力部155に入力された外部信号を用いて重回帰計算を行う。多変量解析部133は、重回帰計算を行うことにより、管理指標(例えば、プラント内の配管のライニング減肉量や、生産物の品質または収率を示す指標)を算出する。
【0037】
図3は、多変量解析部133による管理指標の算出処理を説明するための図である。以下、管理指標Yとして、配管のライニング減肉量を算出する場合について説明する。「ライニング減肉量」は、配管の内側のコーティング部材の減肉量[mm/year]を表す管理指標である。
【0038】
まず、流量センサ110は、配管内の流体の流量を測定し、測定値(流量)を示す信号をプロセス値算出部131に供給する。温度センサ115は、配管内の流体の温度を測定し、測定値(温度)を示す信号をプロセス値算出部131に供給する。
【0039】
プロセス値算出部131は、流量センサ110から供給された測定値に基づいてプロセス値(流量データX1)を算出するとともに、温度センサ115から供給された測定値に基づいてプロセス値(温度データX2)を算出する。プロセス値算出部131は、算出した流量データX1および温度データX2を、多変量解析部133に供給する。
【0040】
一方、信号入力部155には、外部機器から出力されたプロセス値(スラリー硬度データX3)が入力される。外部機器は、配管内の流体のスラリー硬度を測定する他のフィールド機器100であってもよいし、ユーザからスラリー硬度の入力を受け付けるキーボード等の入力装置であってもよい。信号入力部155は、受信したスラリー硬度データX3を、多変量解析部133に供給する。
【0041】
多変量解析部133は、重回帰式を用いて重回帰計算を行う。重回帰式は、以下の式(1)のように表される。式(1)において、係数A0〜A3は、多変量解析部133が予め多変量解析を行うことによって算出された値であり、記憶部120に記憶されている。
【0042】
Y=A0+A1・X1+A2・X2+A3・X3 ・・・式(1)
【0043】
多変量解析部133は、係数A0〜A3を記憶部120から読み出す。そして、多変量解析部133は、記憶部120から読み出した係数A0〜A3と、プロセス値算出部131により算出された流量データX1および温度データX2と、信号入力部155から供給されたスラリー硬度データX3とを用いて、ライニング減肉量データYを管理指標として算出する。
【0044】
多変量解析部133は、算出したライニング減肉量データYを信号出力部145に供給する。信号出力部145は、多変量解析部133から供給されたライニング減肉量データYを、伝送線Lを介してI/Oモジュール200へ送信する。
【0045】
I/Oモジュール200は、信号出力部145から受信したライニング減肉量データYをコントローラ300が受信可能な信号に変換し、変換した信号を、ケーブルCを介してコントローラ300に送信する。これによって、コントローラ300を操作するプラントの運転員は、ライニング減肉量を把握することができる。
【0046】
また、多変量解析部133は、算出した管理指標(ライニング減肉量データY)に基づき、プラントの状態を判定する。例えば、多変量解析部133は、以下の判定基準(a)〜(e)に基づき、プラント内の配管の状態レベルを判定し、判定した状態レベルを示すレベルデータLDを導出する。なお、閾値TH1〜TH4は、ライニングの厚み等に応じて予め設定された閾値であり、TH1<TH2<TH3<TH4である。
【0047】
(a)Y≦TH1の場合 :判定レベル1
(b)TH1<Y≦TH2の場合:判定レベル2
(c)TH2<Y≦TH3の場合:判定レベル3
(d)TH3<Y≦TH4の場合:判定レベル4
(e)Y>TH4の場合 :判定レベル5
【0048】
多変量解析部133は、導出したレベルデータLDを表示部140に供給する。表示部140は、多変量解析部133から供給されたレベルデータLDに基づき、プラント内の配管の状態レベルを表示する。表示部140は、状態レベルを文字で表示してもよいし、バーグラフ等のグラフィカルオブジェクトで表示してもよい。プラントの作業員は、表示部140に表示された配管の状態レベルを確認することにより、配管の状態を把握することができる。
【0049】
また、多変量解析部133は、導出したレベルデータLDを状態出力部150に供給する。状態出力部150は、多変量解析部133から供給されたレベルデータLDを、伝送線Lを介してI/Oモジュール200へ送信する。
【0050】
I/Oモジュール200は、状態出力部150から受信したレベルデータLDをコントローラ300が受信可能な信号に変換し、変換した信号を、ケーブルCを介してコントローラ300に送信する。これによって、コントローラ300を操作するプラントの運転員は、プラント内の配管の状態レベルを把握することができる。
【0051】
なお、多変量解析部133によって算出される管理指標Yは、ライニング減肉量データに限らない。例えば、多変量解析部133は、生産物の品質データを管理指標Yとして算出してもよい。この場合、多変量解析部133は、以下の式(2)に基づいて生産物の品質データYを算出する。
【0052】
Y=A0+A1・X1+A2・X2 ・・・式(2)
【0053】
式(2)において、A0〜A2は係数、X1は流量データ、X2はpHデータである。pHデータは、外部機器から信号入力部155に入力されるデータであり、配管内を流れる流体のpH値を示すデータである。外部機器は、配管内の流体のpH値を測定する他のフィールド機器100であってもよいし、ユーザからpH値の入力を受け付けるキーボード等の入力装置であってもよい。
【0054】
多変量解析部133は、流量センサ110および温度センサ115のサンプリング周期(50[msec])よりも長い周期(例えば、1[sec])で管理指標Yを算出する。また、信号出力部145は、管理指標Yの算出周期(1[sec])で、管理指標YをI/Oモジュール200に送信する。これによって、通信経路におけるトラフィックの増大を防止することができる。
【0055】
図4は、保全管理部134による管理指標の算出処理を説明するための図である。保全管理部134は、多変量解析部133によって算出された管理指標(例えば、ライニング減肉量データおよび生産物の品質データ)とは異なる管理指標(例えば、上限管理値および下限管理値)を算出する。以下、保全管理部134による管理指標の算出処理について説明する。
【0056】
プロセス値算出部131は、流量センサ110から供給された測定値に基づいてプロセス値(流量データX1)を算出するとともに、温度センサ115から供給された測定値に基づいてプロセス値(温度データX2)を算出する。プロセス値算出部131は、算出した流量データX1および温度データX2を、保全管理部134に供給する。
【0057】
保全管理部134は、プロセス値算出部131から供給された流量データX1および温度データX2を、記憶部120に記憶する。これによって、記憶部120には、流量データX1および温度データX2のログが蓄積される。
【0058】
保全管理部134は、流量データX1および温度データX2に基づいて管理指標を算出する。以下、一例として、保全管理部134が、管理指標として流量データX1の上限管理値ULおよび下限管理値LLを算出する場合について説明する。
【0059】
保全管理部134は、記憶部120から流量データX1のログを読み出し、読み出した流量データX1のログに基づいて流量データX1の平均値Avおよび標準偏差σを算出する。そして、保全管理部134は、式(3)に基づいて流量データX1の上限管理値ULを算出し、式(4)に基づいて流量データX1の下限管理値LLを算出する。
【0060】
UL=Av+3・σ ・・・式(3)
LL=Av−3・σ ・・・式(4)
【0061】
次に、保全管理部134は、プロセス値算出部131から供給された流量データX1が上限管理値ULより大きい場合、プラントに異常が発生していると判定し、プラントに異常が発生していることを示すアラーム情報AIを表示部140に供給する。また、保全管理部134は、プロセス値算出部131から供給された流量データX1が下限管理値LLより小さい場合、プラントに異常が発生していると判定し、プラントに異常が発生していることを示すアラーム情報AIを表示部140に供給する。
【0062】
表示部140は、保全管理部134から供給されたアラーム情報AIに基づいて、プラントに異常が発生していることを表示する。プラントの作業員は、表示部140の表示内容を確認することにより、プラントに異常が発生していることを把握することができる。
【0063】
また、保全管理部134は、プラントに異常が発生していると判定した場合、アラーム情報AIを状態出力部150に供給する。状態出力部150は、保全管理部134から供給されたアラーム情報AIを、伝送線Lを介してI/Oモジュール200へ送信する。
【0064】
I/Oモジュール200は、状態出力部150から受信したアラーム情報AIをコントローラ300が受信可能な信号に変換し、変換した信号を、ケーブルCを介してコントローラ300に送信する。これによって、コントローラ300を操作するプラントの運転員は、プラントに異常が発生していることを把握することができる。
【0065】
なお、保全管理部134は、多変量解析部133によって算出された管理指標Y(例えば、ライニング減肉量データおよび生産物の品質データ)の上限管理値ULを、管理指標として算出してもよい。
【0066】
この場合、例えば、多変量解析部133は、算出したライニング減肉量データYを保全管理部134に供給する。保全管理部134は、多変量解析部133から供給されたライニング減肉量データYの上限管理値ULを算出する。保全管理部134は、多変量解析部133から供給されたライニング減肉量データYが上限管理値ULより大きい場合、プラントに異常が発生していると判定する。保全管理部134によってプラントに異常が発生していると判定された場合、状態出力部150がアラーム情報をI/Oモジュール200を介してコントローラ300に出力するとともに、表示部140がプラントに異常が発生していることを表示する。これによって、多変量解析部133によって算出されたデータに対する管理指標を算出することが可能となる。
【0067】
保全管理部134は、流量データX1および温度データX2のログを記憶部120に蓄積し、流量センサ110および温度センサ115のサンプリング周期(50[msec])よりも長い周期(例えば、1[sec])で管理指標(上限管理値ULおよび下限管理値LL)を算出する。また、状態出力部150は、管理指標の算出周期(1[sec])で、管理指標をI/Oモジュール200に送信する。これによって、通信経路におけるトラフィックの増大を防止することができる。
【0068】
センサのサンプリング周期のような短い周期でプロセス値をコントローラに送信しようとすると、通信経路におけるトラフィックが増大してしまう。このため、従来のフィールド機器は、プロセス値を間引くことにより、センサのサンプリング周期よりも長い周期でプロセス値をコントローラに送信していた。
【0069】
しかしながら、プロセス値を間引いてしまうと、プロセス値のリアルタイム性が失われるため、管理指標(ライニング減肉量データ、生産物の品質データ、上限管理値UL、下限管理値LL)を正確に算出することができなかった。これに対し、本実施形態によれば、フィールド機器100が管理指標を算出し、センサのサンプリング周期よりも長い周期で管理指標を送信することとした。これによって、本実施形態のフィールド機器100は、通信経路におけるトラフィックの増大を防止するとともに、管理指標を正確に算出することができる。
【0070】
図5は、管理指標算出処理を示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば1[sec]周期で実行される。まず、プロセス値算出部131は、流量センサ110の測定値(流量)および温度センサ115の測定値(温度)を取得する(ステップS10)。
【0071】
プロセス値算出部131は、流量センサ110から取得した測定値(流量)および温度センサ115から取得した測定値(温度)に基づき、プロセス値(流量データX1および温度データX2)を算出する(ステップS11)。プロセス値算出部131は、算出したプロセス値(流量データX1および温度データX2)を、多変量解析部133に供給する。
【0072】
信号入力部155には、外部機器から出力されたプロセス値(スラリー硬度データX3)が入力される。多変量解析部133は、信号入力部155に入力されたプロセス値(スラリー硬度データX3)を取得する(ステップS12)。
【0073】
その後、
図6を用いて後述する多変量解析部133による処理(ステップS13)、および
図7を用いて後述する保全管理部134による処理(ステップS14)が行われ、本フローチャートによる処理を終了する。
【0074】
図6は、
図5のステップS13の多変量解析部133による処理を示すフローチャートである。まず、多変量解析部133は、重回帰式の係数A0〜A3を記憶部120から読み出す(ステップS20)。そして、多変量解析部133は、重回帰式を用いて管理指標を算出する(ステップS21)。例えば、多変量解析部133は、記憶部120から読み出した係数A0〜A3と、プロセス値算出部131により算出されたプロセス値(流量データX1および温度データX2)と、信号入力部155から供給された外部信号(スラリー硬度データX3)とを用いて、前述の式(1)に示される重回帰式に基づいて管理指標(ライニング減肉量データY)を算出する。
【0075】
多変量解析部133は、前述の判定基準(a)〜(e)に基づき、プラントの状態レベルを判定し、判定した状態レベルを示すレベルデータLDを導出する(ステップS22)。多変量解析部133は、判定した状態レベルを表示部140に表示するとともに(ステップS23)、導出したレベルデータLDを状態出力部150に供給する(ステップS24)。状態出力部150は、多変量解析部133から供給されたレベルデータLDを、I/Oモジュール200を介してコントローラ300に送信する。以上が、多変量解析部133による一連の処理である。
【0076】
図7は、
図5のステップS14の保全管理部134による処理を示すフローチャートである。まず、保全管理部134は、記憶部120からプロセス値(流量データX1)のログを読み出す(ステップS30)。次に、保全管理部134は、読み出したログに基づいて、上限管理値ULおよび下限管理値LLを管理指標として算出する(ステップS31)。例えば、保全管理部134は、前述の式(3)に基づいて流量データX1の上限管理値ULを算出し、前述の式(4)に基づいて流量データX1の下限管理値LLを算出する。
【0077】
保全管理部134は、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データX1)が上限管理値ULより大きいか否かを判定する(ステップS32)。プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データX1)が上限管理値ULより大きい場合(ステップS32:YES)、後述するステップS34に進む。
【0078】
プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データX1)が上限管理値UL以下の場合(ステップS32:NO)、保全管理部134は、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データX1)が下限管理値LLより小さいか否かを判定する(ステップS33)。プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データX1)が下限管理値LLより小さい場合(ステップS33:YES)、後述するステップS34に進む。一方、プロセス値算出部131から供給されたプロセス値(流量データX1)が下限管理値LL以上である場合(ステップS33:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0079】
ステップS34において、保全管理部134は、プラントに異常が発生していることを表示部140に表示する(ステップS34)。その後、保全管理部134は、アラーム情報AIを状態出力部150に供給する(ステップS35)。状態出力部150は、保全管理部134から供給されたアラーム情報AIを、I/Oモジュール200を介してコントローラ300に送信する。以上が、保全管理部134による一連の処理である。
【0080】
以上説明したように、本実施形態において、流量センサ110および温度センサ115は、プラントにおける測定対象(流量および温度)を第1の周期(50[msec])で測定することにより得られた測定値を出力する。プロセス値算出部131は、流量センサ110および温度センサ115から出力された測定値に基づき、プロセス値(流量データおよび温度データ)を算出する。管理指標算出部132は、算出されたプロセス値を用いて、第1の周期(50[msec])よりも長い第2の周期(1[sec])でプラントの診断に用いられる管理指標を算出する。これにより、通信経路におけるトラフィックの増大を防止するとともに、管理指標を正確に算出することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。