特許第6711083号(P6711083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6711083アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法、及びアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器
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  • 特許6711083-アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法、及びアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711083
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法、及びアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20200608BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20200608BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20200608BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08L23/26
   C08L77/06
   B65D77/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-72811(P2016-72811)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179286(P2017-179286A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129487(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037459(WO,A1)
【文献】 特開2005−263264(JP,A)
【文献】 特開2011−148858(JP,A)
【文献】 特開2013−010250(JP,A)
【文献】 特開2010−077279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
B65D 77/00− 77/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器であって、
ポリオレフィン(A)40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜30質量%、及びバリア性樹脂(C)3〜30質量%を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散しており、
前記アルキレングリコールアルキルエーテルがジエチレングリコールジメチルエーテルであり、
ポリオレフィン(A)が高密度ポリエチレンであり、バリア性樹脂(C)がメタキシリレン基含有ポリアミドである、容器。
【請求項2】
バリア性樹脂(C)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドである請求項に記載の容器。
【請求項3】
容器胴部の平均厚みが0.5mm以上である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
下記式(i)で表される容積変化率が1%未満である、請求項1〜のいずれかに記載の容器。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
【請求項5】
アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法であって、
ポリオレフィン(A)40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜30質量%、及びバリア性樹脂(C)3〜30質量%を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散している容器に、前記液体を収容し、前記アルキレングリコールアルキルエーテルがジエチレングリコールジメチルエーテルであり、
ポリオレフィン(A)が高密度ポリエチレンであり、バリア性樹脂(C)がメタキシリレン基含有ポリアミドである、保存方法。
【請求項6】
バリア性樹脂(C)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドである請求項に記載の保存方法。
【請求項7】
容器胴部の平均厚みが0.5mm以上である、請求項5又は6に記載の保存方法。
【請求項8】
下記式(i)で表される容積変化率が1%未満である、請求項のいずれかに記載の保存方法。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
【請求項9】
アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を容器に収容してなるアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器であって、
該容器がポリオレフィン(A)40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜30質量%、及びバリア性樹脂(C)3〜30質量%を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散しており、
前記アルキレングリコールアルキルエーテルがジエチレングリコールジメチルエーテルであり、
ポリオレフィン(A)が高密度ポリエチレンであり、バリア性樹脂(C)がメタキシリレン基含有ポリアミドである、アルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
【請求項10】
バリア性樹脂(C)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドである請求項に記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
【請求項11】
容器胴部の平均厚みが0.5mm以上である、請求項9又は10に記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
【請求項12】
下記式(i)で表される容積変化率が1%未満である、請求項11のいずれかに記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法、及びアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素類や各種薬品を保存するための容器としては、例えば薬品瓶、自動車や小型エンジンの燃料タンク等が挙げられる。その素材として従来利用されていた金属やガラスは、その多くがプラスチックへ代替されつつある。プラスチックは金属やガラスと比較して、軽量、防錆処理が不要、割れにくい、形状の自由度が高い等の特長がある。
【0003】
上述の用途の多くは高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と略する場合がある)等のポリオレフィンを利用したものであり、機械強度、成形加工性及び経済性に優れるものの、容器内部に保存される物品が容器壁を通して大気中に飛散しやすいという欠点がある。
そこで、HDPE等のポリオレフィンからなる容器においてバリア性能を高めるための方法として、ナイロン6,66等のポリアミド樹脂やEVOHを接着性樹脂と共にポリオレフィンとブレンドし、その組成物から単層容器を製造する方法が知られている(例えば特許文献1及び2を参照)。また、上記ブレンド単層容器において、ナイロン6,66よりもバリア性に優れるポリメタキシリレンアジパミド(以下、「N−MXD6」と略する場合がある)を使用する方法も開示されている(例えば特許文献3及び4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−121017号公報
【特許文献2】特開昭58−209562号公報
【特許文献3】特開2005−206806号公報
【特許文献4】特開2007−177208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4では、ポリオレフィン容器のバリア性能が低いという問題に着目し、それを改善することを課題としている。しかしながら、本発明者らは、特定の内容物、具体的にはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体、を密封保存した場合に容器が変形する(凹む)という新たな問題を見出した。特に、内容物を充填した容器の保管温度を上げると、室温での保管と比べて、容器の変形がより顕著に発生することが懸念される。容器が大きく変形すると容器の耐久性や保存性能に悪影響を与える可能性があり、また、外観が悪くなることも懸念される。
本発明はこの新たな問題点に鑑みてなされたものであり、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を保存しても容器変形を小さく抑えることのできる容器、当該容器を用いたアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法、及びアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を当該容器に収容してなるアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法、及びアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器を提供する。
<1>
アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する容器であって、
ポリオレフィン(A)40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜30質量%、及びバリア性樹脂(C)3〜30質量%を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散している、容器。
<2>
アルキレングリコールアルキルエーテルがジエチレングリコールジアルキルエーテルである、<1>に記載の容器。
<3>
バリア性樹脂(C)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドである<1>又は<2>に記載の容器。
<4>
容器胴部の平均厚みが0.5mm以上である、<1>〜<3>のいずれかに記載の容器。
<5>
下記式(i)で表される容積変化率が1%未満である、<1>〜<4>のいずれかに記載の容器。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
<6>
アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法であって、
ポリオレフィン(A)40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜30質量%、及びバリア性樹脂(C)3〜30質量%を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散している容器に、前記液体を収容する、保存方法。
<7>
アルキレングリコールアルキルエーテルがジエチレングリコールジアルキルエーテルである、<6>に記載の保存方法。
<8>
バリア性樹脂(C)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドである<6>又は<7>に記載の保存方法。
<9>
容器胴部の平均厚みが0.5mm以上である、<6>〜<8>のいずれかに記載の保存方法。
<10>
下記式(i)で表される容積変化率が1%未満である、<6>〜<9>のいずれかに記載の保存方法。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
<11>
アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を容器に収容してなるアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器であって、
該容器がポリオレフィン(A)40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜30質量%、及びバリア性樹脂(C)3〜30質量%を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散している、アルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
<12>
アルキレングリコールアルキルエーテルがジエチレングリコールジアルキルエーテルである、<11>に記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
<13>
バリア性樹脂(C)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドである<11>又は<12>に記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
<14>
容器胴部の平均厚みが0.5mm以上である、<11>〜<13>のいずれかに記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
<15>
下記式(i)で表される容積変化率が1%未満である、<11>〜<14>のいずれかに記載のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を容器に密封保存しても容器変形を小さく抑えることができる。これにより、容器の耐久性や保存性能、また、その外観を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】製造例1で得られた容器1を軸方向に対して垂直に切断して、その断面を拡大して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[樹脂組成物]
本発明に係る容器は、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及びバリア性樹脂(C)を含有する樹脂組成物からなり、該樹脂組成物中においてバリア性樹脂(C)が層状に分散している。
以下、樹脂組成物に含有されるこれら各成分について詳細に説明する。
【0010】
(ポリオレフィン(A))
ポリオレフィン(A)は、容器を構成する主要材料である。本発明で使用されるポリオレフィン(A)は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等に代表されるポリエチレン、プロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、エチレン−プロピレンランダムコポリマー等に代表されるポリプロピレン、1−ポリブテン、1−ポリメチルペンテン等の炭素数2以上のエチレン系炭化水素の単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンの単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体等が例示される。
【0011】
ポリオレフィンの溶融粘度及び分子量の指標となるものとしては、メルトフローレート(MFR)が代表的なものである。本発明で使用されるポリオレフィン(A)は、例えばメルトフローレート(MFR)が0.01〜10(g/10分)である。また、ポリオレフィン(A)のMFRは容器の製造法に応じて最適な範囲が異なり、例えば、容器がダイレクトブロー法により製造される場合は、MFRは0.01〜1(g/10分)であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.9(g/10分)、更に好ましくは0.05〜0.9(g/10分)である。尚、MFRは、JIS K7210に準拠して測定した値をいう。
本発明の成形加工温度は、ポリオレフィン単体の成形加工時に比べて高く、また、バリア性樹脂(C)は、一般的にポリオレフィンよりも密度が大きいため、ダイレクトブロー法の場合、バリア性樹脂(C)が配合されたポリオレフィンは、ポリオレフィンのみからなるものと比較して、成形加工時のドローダウンが大きくなる傾向がある。そのため、本発明では、ポリオレフィン(A)のMFRを1(g/10分)以下とすることで、ダイレクトブロー法による成形加工時のドローダウンの発生を抑制することができ、さらに得られた容器の厚み精度が優れたものとなる。また、ポリオレフィン(A)のMFRが0.01(g/10分)以上であれば、溶融粘度は成形時に適した粘度となるうえに、得られた容器を構成する樹脂組成物中でバリア性樹脂(C)の分散状態が良好なものとなる結果、バリア性能に優れた容器を得ることができる。また、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を容器に密封保存したときに容器の変形を抑制する性能(以後、単に“変形抑制性能”とも呼ぶこともある)も高くなりやすい。
ポリオレフィン(A)は、特に限定されないが、例えばその融点(ATm)は100〜180℃となるものであり、好ましくは125〜170℃程度となるものである。
【0012】
ポリオレフィン(A)は、好ましくは上述のうちのポリエチレンやポリプロピレンであり、更に好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)が使用される
高密度ポリエチレン(HDPE)は、密度が0.942g/cm以上のポリエチレンであり、好ましくはその密度が、0.97g/cm以下、より好ましくは0.945〜0.96g/cmである。ポリエチレンは、密度が高くなることで結晶性が十分なものとなり、容器に収納される内容物の種類によらず、その内容物を保存することが可能となる。また密度が0.97g/cm以下であれば、ポリオレフィン(A)がガラスのように脆くなることはなく、容器として実用的な強度を発揮することができる。
これらのポリオレフィンは、容器を構成するポリオレフィン(A)として単独で用いることもできるし、2種類以上の混合物として使用することもできるが、高密度ポリエチレン単体であることが最も好ましい。
【0013】
(酸変性ポリオレフィン(B))
本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性したもので、一般に接着性樹脂として広く用いられているものである。ポリオレフィンは、上記したポリオレフィン(A)で列挙したものと同様のものが使用され、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンが使用され、より好ましくはポリエチレンが使用される。また、酸変性ポリオレフィン(B)は、使用されるポリオレフィン(A)と同種のポリオレフィンを変性したものが好ましい。すなわち、ポリオレフィン(A)がポリエチレンならば、酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリエチレンを酸変性したものが好ましく、ポリオレフィン(A)がポリプロピレンならば酸変性ポリオレフィン(B)としてはポリプロピレンを酸変性したものが好ましい。
不飽和カルボン酸又はその無水物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロロマレイン酸、ブテニルコハク酸、及びこれらの酸無水物が挙げられる。中でも、マレイン酸及び無水マレイン酸が好ましく用いられる。上記不飽和カルボン酸又はその無水物をポリオレフィンにグラフト共重合して酸変性ポリオレフィンを得る方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、ポリオレフィンを押出機等で溶融させ、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法、あるいはポリオレフィンを溶媒に溶解させてグラフトモノマーを添加して共重合させる方法、ポリオレフィンを水懸濁液とした後グラフトモノマーを添加して共重合させる方法等を挙げることができる。
【0014】
本発明では、酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィン(A)とバリア性樹脂(C)とを接着する役割を有する。そして、本発明の容器を構成する樹脂組成物中では、メタキシリレン基含有ポリアミド等のバリア性樹脂(C)は、酸変性ポリオレフィン(B)の酸変性された置換基と化学結合状態をとると考えられ、その結果、バリア性樹脂(C)が酸変性ポリオレフィン(B)の近傍に存在し、酸変性率の違いによって接着力が変わることになる。
酸変性ポリオレフィン(B)の酸変性率の指標となるものとしては、酸価が挙げられ、本発明における酸価は、JIS K0070に記載の方法に準拠して測定される。本発明において、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、2〜30mg/gであることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が2mg/g以上となると、樹脂組成物中のポリオレフィン(A)とバリア性樹脂(C)との接着性が良好となり、両者の接着界面に空隙等が生じにくくなる。そのため、得られる容器のバリア性能、機械的強度が良好になりやすく、落下させた際の容器割れが発生しにくくなる。また、変形抑制性能も高くなりやすい。
また、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が30mg/g以下となることで、酸変性ポリオレフィン(B)およびバリア性樹脂(C)が局在化しにくくなり、ダイレクトブロー法により成形される容器の場合、内面に凹凸が生じたり、厚みムラが生じたりすることが防止され、バリア性能や機械的強度が良好になりやすい。また、変形抑制性能も高くなりやすい。
以上の観点から、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、3〜20mg/gであることがより好ましい。
【0015】
また、バリア性樹脂(C)は一般的に比較的硬い材料であるため、容器に衝撃等が加わると界面でクラックや剥離が起きやすくなり、容器の強度、バリア性能、耐薬品性能、変形抑制性能を損なうおそれがある。そのため、本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン(B)として、密度が比較的低く、比較的柔らかい性質を有するものを利用することが有効である。
このような観点から、本発明に用いられる酸変性ポリオレフィン(B)の密度は、好ましくは0.89〜0.96g/cmであり、より好ましくは0.90〜0.945g/cm、特に好ましくは0.91〜0.93g/cmである。酸変性ポリオレフィン(B)の密度が0.89g/cm以上であれば、ポリオレフィン(A)との相溶性が良好なものとなり、さらにバリア性樹脂(C)との接着性が向上して容器の強度、バリア性能、耐薬品性能、変形抑制性能が優れたものとなる。また、酸変性ポリオレフィン(B)の密度が0.96g/cm以下であれば、酸変性ポリオレフィン(B)が適度な柔らかさを有するため、容器に衝撃等が加わった場合でも、強度、バリア性能、耐薬品性能、変形抑制性能の低下を招くことを抑えることができる。
【0016】
また、本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン(B)のMFRは、成形加工安定性、容器の強度保持の観点から、溶融粘度が高めのものを用いることが好ましく、JIS K7210に記載の方法に準拠して測定される値として、好ましくは0.1〜10(g/10分)、より好ましくは0.1〜8(g/10分)、さらに好ましくは0.2〜3(g/10分)である。
酸変性ポリオレフィン(B)は、特に限定されないが、例えばその融点(BTm)は110〜180℃となるものであり、好ましくは115〜170℃程度となるものである。
【0017】
(バリア性樹脂(C))
本発明に用いられるバリア性樹脂(C)は、ポリオレフィン(A)よりもバリア性に優れる樹脂であり、具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂やポリアミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、例えばメタキシリレン基含有ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。これらの中では、メタキシリレン基含有ポリアミド、ナイロン6、ナイロン666等が好ましく、バリア性能や変形抑制性能を向上させやすい観点等から、メタキシリレン基含有ポリアミドが特に好ましい。
【0018】
メタキシリレン基含有ポリアミドは、ジアミン単位及びジカルボン酸単位を含み、そのジアミン単位がメタキシリレンジアミンに由来する単位(メタキシリレンジアミン単位)を有するものである。メタキシリレン基含有ポリアミドを構成するジアミン単位は、バリア性、耐薬品性能や変形抑制性能の観点から、メタキシリレンジアミン単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含む。
メタキシリレン基含有ポリアミドにおいて、メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラキシリレンジアミン等の芳香環を有するジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式構造を有するジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ポリオキシアルキレンアミン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族ジアミンが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
メタキシリレン基含有ポリアミドを構成するジカルボン酸単位は、結晶性の観点から、α,ω−脂肪族ジカルボン酸単位を好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上含む。
α,ω−脂肪族ジカルボン酸単位を構成する化合物としてはスベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等が挙げられるが、バリア性、耐薬品性能、変形抑制性能及び結晶性の観点から、アジピン酸やセバシン酸が好ましく用いられる。
α,ω−脂肪族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、イソフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸は、メタキシリレン基含有ポリアミドの製造時における重縮合反応を阻害することなく、バリア性能、耐薬品性能、変形抑制性能に優れるポリアミドを容易に得ることができるので好ましい。メタキシリレン基含有ポリアミドがイソフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位を有する場合、樹脂組成物中のメタキシリレン基含有ポリアミドの分散性及び容器のバリア性能、耐薬品性能、変形抑制性能の観点から、イソフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位の好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0020】
また前記のジアミン単位及びジカルボン酸単位以外にも、メタキシリレン基含有ポリアミドを構成する共重合体単位として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類、p−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等の化合物を共重合単位として使用できる。メタキシリレン基含有ポリアミド中におけるこれら共重合体単位の比率は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下である。
【0021】
メタキシリレン基含有ポリアミドは溶融重縮合法(溶融重合法)により製造される。例えばジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がある。また、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0022】
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内にはアミド化反応を促進する効果や、重縮合時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物を添加してもよい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムが好ましいが、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0023】
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、重縮合中のメタキシリレン基含有ポリアミドの着色を防止する観点から、メタキシリレン基含有ポリアミド中のリン原子濃度換算で好ましくは1〜500ppm、より好ましくは5〜450ppm、さらに好ましくは10〜400ppmである。
【0024】
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のメタキシリレン基含有ポリアミドの着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を共存させることが好ましい。
例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属の水酸化物や、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属の酢酸塩等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が、好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.6〜1.8、さらに好ましくは0.7〜1.5である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の添加量を上述の範囲とすることでリン原子含有化合物によるアミド化反応促進効果を得つつゲルの生成を抑制することが可能となる。
【0025】
溶融重縮合で得られたメタキシリレン基含有ポリアミドは一旦取り出され、ペレット化される。得られたペレットは、乾燥したり、更に重合度を高めるために固相重合したりしてもよい。乾燥乃至固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミドの固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、かつ着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0026】
本発明におけるバリア性樹脂(C)の好適な一例としては、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位と、を含む、ポリアミドが挙げられる。
【0027】
本発明で使用されるメタキシリレン基含有ポリアミドの水分率は、好ましくは0.001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.005〜0.4質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%である。メタキシリレン基含有ポリアミドの水分率が0.5質量%質量以下とすることで、成形時に水分が気化して成形体中に気泡が発生したりすることが防止される。一方で、水分率が低くなるにつれて、軟化状態における粘度が高くなり、層状分散状態を維持しやすくなるが、0.001%以上とすることで、メタキシリレン基含有ポリアミド製造時の乾燥時間を短くして着色や熱劣化を防止できる。
【0028】
メタキシリレン基含有ポリアミドの重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度が一般的に使われるものである。本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度は好ましくは1.5〜4.5であり、より好ましくは2.0〜4.2、さらに好ましくは2.5〜4.0である。メタキシリレン基含有ポリアミドは相対粘度が高くなるにつれてポリオレフィン(A)と相溶化しにくくなり、層状分散状態を形成しやすくなる。しかし、メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度を高くしようとすると重合時間が長くなり、製造コストが増大する。メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度を上述の範囲に設定することで良好な層状分散状態を形成させることができ、かつ製造コストを低く抑えることができる。
なお、ここで言う相対粘度は、ポリアミド0.2gを96%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
【0029】
メタキシリレン基含有ポリアミドの重合度の上記以外の指標として、溶融粘度が使われている。一般的に相対粘度と溶融粘度には相関関係があるが、メタキシリレン基含有ポリアミドが水分を多く含む場合、溶融時に加水分解が進行して溶融粘度が低下することがある。本発明に用いられるメタキシリレン基含有ポリアミドの溶融粘度は、水分率0.001〜0.5質量%の範囲においては、好ましくは100〜2000Pa・sであり、より好ましくは150〜1900Pa・s、さらに好ましくは200〜1800Pa・sである。
なお、ここで言う溶融粘度は、キャピラリーレオメーターにて、メタキシリレン基含有ポリアミドを260℃設定のバレル内で溶融させた後、直径1mm、長さ10mmのキャピラリーを剪断速度100sec−1で通過させた際の値である。
【0030】
本発明で使用されるメタキシリレン基含有ポリアミドは、バリア性、変形抑制性能、及び物性の観点から、陽電子消滅法により求められる自由体積が好ましくは0.045〜0.060nmであり、より好ましくは0.046〜0.059nm、さらに好ましくは0.047〜0.058nmである。メタキシリレン基含有ポリアミドの自由体積は、分子鎖の分岐や異物の存在により変動するが、上述の範囲とすることで各種化合物を透過しにくく、かつ物性が良好となる。また、メタキシリレン基含有ポリアミドの自由体積は、結晶化度によっても変動するが、ここで言う自由体積は、メタキシリレン基含有ポリアミドのDSC測定時の昇温結晶化発熱量が20〜40J/gの範囲にある状態での値である。
【0031】
本発明で使用されるバリア性樹脂(C)は、結晶性樹脂である場合、その融点(CTm)が、通常、150〜250℃となるものであるが、好ましくは190〜245℃となるものである。
また、バリア性樹脂は、その融点(CTm)がポリオレフィン(A)の融点(ATm)より高くなるものであり、その融点差(CTm−ATm)は、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。本発明では、このように、成分(C)と成分(A)との融点差を大きくすることで、後述する製造方法をより適切に実施することができる。
同様に、バリア性樹脂(C)の融点(CTm)は、酸変性ポリオレフィン(B)の融点(BTm)より高くなるものであり、その融点差(CTm−BTm)は、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。
【0032】
また、本発明で使用されるメタキシリレン基含有ポリアミドは、容器の外観及びバリア性の観点から、GPCで測定される数平均分子量1000以下の成分が、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0033】
(各材料の配合比率)
本発明の容器を構成する各材料の配合比率は、容器を形成する樹脂組成物全量に対して、ポリオレフィン(A)が40〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が3〜30質量%、バリア性樹脂(C)が3〜30質量%である。好ましくはポリオレフィン(A)が50〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が3〜25質量%、バリア性樹脂(C)が3〜25質量%であり、より好ましくはポリオレフィン(A)が60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が5〜20質量%、バリア性樹脂(C)が5〜20質量%である。ただし、(A)〜(C)の3成分の合計が100質量%を超えることはない。上述の範囲に各材料の配合比率を設定することによって、容器のバリア性能、耐薬品性能及び変形抑制性能を効率的に高めることができ、かつ容器の強度低下を最小限にすることができる。本発明の容器は、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及びバリア性樹脂(C)の3成分からなることが好ましい。
【0034】
(その他の成分)
樹脂組成物には、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、バリア性樹脂(C)の3成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、様々な材料を配合することができる。例えば、アイオノマー;エチレン−エチルアクリレート共重合体やエチレン−メチルアクリレート共重合体等の各種変性ポリエチレン;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート等の各種ポリエステル;スチレン−ブタジエン共重合体やその水添化物;各種熱可塑性エラストマー等を加えてもよい。
また、酸化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、滑剤、ゲル化防止剤等の添加剤、層状ケイ酸塩等のクレイやナノフィラー等の添加剤を加えてもよい。これら各添加剤は、(A)、(B)及び(C)成分の1つ以上に予め混合された状態で成形機に投入してもよい。
【0035】
さらに、樹脂組成物は、容器の製造工程において発生したパージくずやバリ、得られた容器のうち不良品等になった樹脂固形物を粉砕した再使用樹脂を含んでいてもよい。なお再使用樹脂の混合率は、変形抑制性能の低下、バリア性能の低下、容器の強度低下、色調の悪化を最小限とするため、組成物中の含有量として、60質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。また、その下限値は特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましい。使用するポリオレフィンの一部代替として再使用樹脂を混合すると容器に占めるバリア性樹脂(C)の含有率が増加することがある。その際も、成形加工品の強度が大きく低下することを防止するために、上記した(A)、(B)及び(C)成分の配合比率となるように再使用樹脂の配合を行う。
【0036】
[容器]
本発明の容器は、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容することができる限りにおいて任意の形状を有することができる。具体的には、ボトル形状、タンク形状、ドラム形状等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。容器胴部の平均厚みは、容器のバリア性、耐薬品性能、変形抑制性能、強度といった観点から、0.5mm以上とすることが好ましい。また、容器の軽量化や低コスト化といった観点からは、好ましくは5.0mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以下である。なお、容器胴部の平均厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
【0037】
また、バリア性樹脂(C)は、樹脂組成物中において、層状に分散しており、その分散したバリア性樹脂(C)は、一部連続して連続相を形成してもよい。層状に分散したバリア性樹脂(C)は、容器璧の厚さ方向において他の樹脂成分と交互に存在するような分散状態となることが好ましい。また、バリア性樹脂(C)は、容器壁の厚み中心よりも外側に多く配置されることが好ましい。
なお、本発明の容器は、上記成分(A)〜(C)を含む樹脂組成物から形成された層のみからなる単層構造であることが好ましいが、上記成分(A)〜(C)を含む樹脂組成物から形成された層にそれ以外の層を1つ以上組み合わせてなる多層構造であってもよい。
【0038】
[容器の製造方法]
本発明の容器は、上記した樹脂組成物から成形機を用いて製造するものであり、樹脂組成物を成形機から押し出すことにより、樹脂組成物中にバリア性樹脂(C)を層状に分散させた容器を得ることができる。前記成形機は、単軸押出機と、ダイヘッドと、単軸押出機から樹脂組成物をダイヘッドに送る連通部とを備えるものである。
本発明の容器は、ダイレクトブロー法により製造することが好ましい。また、ダイヘッドは、ストレートダイ、クロスヘッドダイのいずれから構成されてもよいが、クロスヘッドダイから構成されることが好ましい。
本発明の製造方法の一実施形態として、国際公開第2015/037459号の[0043]〜[0059]段落に記載の方法が参照される。
【0039】
[アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体]
本発明に係るアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体は、アルキレングリコールアルキルエーテルのみで構成されていてもよいし、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む組成物であってもよい。本発明者らはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を従来のポリオレフィン容器に密封保存した場合に容器が変形するという新たな問題を見出しており、いかなる内容物であってもこのような問題が生じるわけではない。
本発明において、液体中のアルキレングリコールアルキルエーテルの量は特に限定されないが、アルキレングリコールアルキルエーテルの含有量が多いほどに変形抑制性能は顕在化する。例えば、液体中のアルキレングリコールアルキルエーテルの含有量が10質量%以上であれば変形抑制性能の発現が明確であり、30質量%以上であれば変形抑制性能の発現がより明確であり、50質量%以上であれば変形抑制性能の発現がさらに明確である。
【0040】
アルキレングリコールアルキルエーテルとしては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルや、アルキレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルトリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0041】
アルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
上述したアルキレングリコールアルキルエーテル類の化合物の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテルにおいて、変形抑制性能の発現が特に明確である。
【0043】
[アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法]
本発明のアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体の保存方法においては、上述した本発明の容器にアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する。本発明の容器はアルキレングリコールアルキルエーテルに関して変形抑制性能に優れているため、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を容器に入れて密封しても大きく容器変形することなく保存することができる。本発明の保存方法により保存されるアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体については、上述した通りである。
【0044】
[アルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器]
本発明のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器は、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を上述した本発明の容器に収容してなる。即ち、本発明のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器は、その構成要素として、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体と上述の容器とを含むものである。本発明の容器はアルキレングリコールアルキルエーテルに関して変形抑制性能に優れているため、本発明のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器の耐久性や保存性能、また、その外観は安定的に維持される。本発明のアルキレングリコールアルキルエーテル含有液体入り容器に含まれるアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体については、上述した通りである。
【0045】
上述したように、本発明によれば、アルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を容器に密封保存しても容器変形を小さく抑えることができる。したがって、密封保存する前後での容器の容積変化率は小さくすることができ、下記式(i)で表される容積変化率が1%未満であることが好ましい。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例等における各種評価は下記の方法により行った。
【0047】
(1)ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)のMFR(g/10分)
東洋精機製作所製メルトインデクサーを使用し、JIS K7210に準拠して、付属書Bに基づく温度及び荷重にて、即ち、190℃、2.16kgfの条件にてメルトフローレートの測定を行った。
【0048】
(2)ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の密度(g/cm
押出機、Tダイ、冷却ロール、引き取り機等からなるシート成形機を用い、厚さが約1mmの単層シートを成形した。次いでシートから縦50mm×横50mmの試験片を切削して真比重計により真比重を求めた。
【0049】
(3)酸変性ポリオレフィン(B)の酸価(mg/g)
JIS K0070に準拠して、中和滴定により測定を行った。酸変性ポリオレフィン1gを精秤し、キシレン100mLに約120℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、フェノールフタレイン溶液を加え、予め正確な濃度を求めた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を用いて中和滴定を行った。滴下量(T)、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(f)、水酸化カリウムの式量56.11の1/10(5.611)、酸変性ポリオレフィンの質量(S)から下記式により酸価を算出した。
酸価=T×f×5.611/S
【0050】
(4)バリア性樹脂(C)(メタキシリレン基含有ポリアミド)の相対粘度
メタキシリレン基含有ポリアミド0.2gを精秤し、96%硫酸20mLに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温層中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また同様の条件で96%硫酸そのものの落下時間(t)を測定した。t及びtから下記式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
(5)ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及びバリア性樹脂(C)の融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、窒素気流下にて、室温から280℃まで10℃/分の昇温速度で試料を融解させた後、液体窒素を用いて測定試料を急冷し、再度室温から280℃まで10℃/分の速度で昇温して測定を行った。次いで、得られたチャートから融解ピーク頂点の温度を読みとった。
(6)容器胴部の厚み
実施例及び比較例で作製した容器胴部の厚みは、次のようにして測定した。
容器底部からの高さ10mm間隔の位置の厚みを、磁気式厚さ計(オリンパス株式会社製、商品名:「MAGNAMIKE8500」)を用いて4方向(0°、90°、180°、270°)の厚みを測定し、その平均値を容器胴部の厚みとした。
(7)容器のバリア性能
製造例で作製した容器に、種々の液体を入れた後、口栓開口部をアルミ箔積層フィルムでヒートシールし、更にキャップをつけて総質量を測定、記録した。次いで、液体を封入した容器を60℃の熱風乾燥機内に保管して、24時間毎に総質量を記録し、3日間継続した。質量減少量分が透過量にあたる。このときの1日あたりの質量減少量を透過率(g/bottle・day)とした。
(8)容積変化率
1000mlメスシリンダーに水400ml加え、バリア性能測定前後の容器(口栓開口部をアルミ箔積層フィルムでヒートシールし、更にキャップをつけたもの)をメスシリンダー内に浸漬して容量増分より容器変形前後の容積を求めた。容積変化率は下記式(i)により算出した。
(A−B)/A×100 ・・・式(i)
(Aはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容する前の容器の容積を表し、Bはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む液体を収容した容器を60℃の雰囲気下で72時間保管した後の容器の容積を表す。)
【0051】
<使用したポリオレフィン(A)>
日本ポリエチレン(株)製、高密度ポリエチレン、商品名:ノバテックHD HB420R、MFR=0.2g/10分、密度=0.956g/cm、融点=133℃
【0052】
<使用した酸変性ポリオレフィン(B)>
三井化学(株)製、酸変性ポリエチレン、商品名:アドマー AT1000、MFR=1.8g/10分(190℃、2.16kgf)、密度=0.927g/cm、酸価=9.5mg/g、融点=123℃
【0053】
<使用したバリア性樹脂(C)>
三菱ガス化学(株)製、ポリメタキシリレンアジパミド、商品名:MXナイロン S6121、相対粘度=3.5、融点=237℃
【0054】
製造例1(容器1の製造)
直径=50mm、L/D=25、供給部/圧縮部/計量部の長さ比率=33/33/33%、圧縮比=2.5のフルフライトスクリューを挿入した単軸押出機、アダプター、パリソンコントローラー付き円筒ダイ(ダイヘッド;ダイ孔の最狭部の幅:1mm)、金型、型締め機、冷却器等を備えた単層ダイレクトブロー容器成形機を使用して、以下のように容器を成形した。押出機ホッパーから、ポリオレフィン(A)/酸変性ポリオレフィン(B)/バリア性樹脂(C)=80/10/10(質量%)の割合でドライブレンドした混合ペレットを、単軸押出機内に投入し、スクリュー回転数を30rpmとしてパリソンを円筒ダイから押し出し、ダイレクトブロー法によって内容積350ml、胴部の平均厚み1mm、容器質量37gのネジ口栓付き容器の成形を行った。その際、押出機のシリンダー温度を、C1/C2/C3=180/190/230℃、アダプターの温度を240℃、ダイヘッドの温度を240℃に設定した。なお、C1、C2、C3は、それぞれ供給部、圧縮部、計量部に対応する部分のシリンダー温度である。
製造例1で得られた容器を水平方向に切断して、その断面を拡大して示す写真を図1に示す。尚、容器壁におけるバリア性樹脂(C)の分散状態は、ヨードチンキで染色して観察した。
【0055】
製造例2(容器2の製造)
ポリオレフィン(A)のみを使用し、酸変性ポリオレフィン(B)及びバリア性樹脂(C)を配合しなかったこと以外は製造例1と同様にして容器2を製造した。
【0056】
実施例1〜2及び比較例1〜2
得られた容器1及び2にジエチレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルを収容し、容器のバリア性能及び容積変化率を評価した。容器と内容物の具体的な組み合わせ、及び評価結果は以下の表1に示した。
【0057】
【表1】
図1