特許第6711125号(P6711125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711125
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】力率補償装置、LED照明装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20200608BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   H02M3/155 K
   H02M3/155 P
   H02M7/12 P
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-96407(P2016-96407)
(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公開番号】特開2017-85865(P2017-85865A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2019年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-213846(P2015-213846)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山上 陽
(72)【発明者】
【氏名】平山 達也
(72)【発明者】
【氏名】石黒 義章
(72)【発明者】
【氏名】坂下 友一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 章太
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−176665(JP,A)
【文献】 特開2013−070614(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0153858(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0261599(US,A1)
【文献】 特開2013−218917(JP,A)
【文献】 特開2005−020994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源主回路と、
制御回路と、を備え、
前記電源主回路は、
交流電源の交流電圧を全波整流する全波整流回路と、
インダクタンス素子と、スイッチング素子を有し、前記全波整流回路によって得られた入力電圧を目標とする出力電圧に変換する力率補償回路と、
前記入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、
前記出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、
前記インダクタンス素子に流れる電流がゼロになるタイミングを検出するゼロ電流検出回路と、を有し、
前記制御回路は、前記入力電圧検出回路、前記出力電圧検出回路及び前記ゼロ電流検出回路で検出された検出信号に基づいて前記スイッチング素子をオンオフ制御することにより前記出力電圧を所望の電圧に制御しつつ、前記インダクタンス素子に流れる電流を制御して入力電流を力率補償制御し、
前記制御回路は、前記入力電圧が最大値となるときを含む第1期間では前記インダクタンス素子に流れる電流を臨界動作させ、前記入力電圧が最小値となるときを含む第2期間では前記インダクタンス素子に流れる電流を不連続動作させ、
前記制御回路は、予め定められた切替閾値電圧と前記入力電圧を比較し、前記入力電圧が前記切替閾値電圧より大きい期間を前記第1期間とし、前記入力電圧が前記切替閾値電圧より小さい期間を前記第2期間とすることを特徴とする力率補償装置。
【請求項2】
電源主回路と、
制御回路と、を備え、
前記電源主回路は、
交流電源の交流電圧を全波整流する全波整流回路と、
インダクタンス素子と、スイッチング素子を有し、前記全波整流回路によって得られた入力電圧を目標とする出力電圧に変換する力率補償回路と、
前記入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、
前記出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、
前記インダクタンス素子に流れる電流がゼロになるタイミングを検出するゼロ電流検出回路と、を有し、
前記制御回路は、前記入力電圧検出回路、前記出力電圧検出回路及び前記ゼロ電流検出回路で検出された検出信号に基づいて前記スイッチング素子をオンオフ制御することにより前記出力電圧を所望の電圧に制御しつつ、前記インダクタンス素子に流れる電流を制御して入力電流を力率補償制御し、
前記制御回路は、前記入力電圧が最大値となるときを含む第1期間では前記インダクタンス素子に流れる電流を臨界動作させ、前記入力電圧が最小値となるときを含む第2期間では前記インダクタンス素子に流れる電流を不連続動作させ、
前記制御回路は、
前記臨界動作を実現する臨界動作器と、
前記不連続動作を実現する不連続動作器と、
前記臨界動作器を用いるか前記不連続動作器を用いるかを切り替える動作切替器と、を備え、
前記動作切替器は、前記入力電圧と予め定められた切替閾値電圧を入力とするコンパレータを有し、
前記入力電圧検出回路は2つ以上の抵抗素子で構成されたことを特徴とする力率補償装置。
【請求項3】
電源主回路と、
制御回路と、を備え、
前記電源主回路は、
交流電源の交流電圧を全波整流する全波整流回路と、
インダクタンス素子と、スイッチング素子を有し、前記全波整流回路によって得られた入力電圧を目標とする出力電圧に変換する力率補償回路と、
前記入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、
前記出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、
前記インダクタンス素子に流れる電流がゼロになるタイミングを検出するゼロ電流検出回路と、を有し、
前記制御回路は、前記入力電圧検出回路、前記出力電圧検出回路及び前記ゼロ電流検出回路で検出された検出信号に基づいて前記スイッチング素子をオンオフ制御することにより前記出力電圧を所望の電圧に制御しつつ、前記インダクタンス素子に流れる電流を制御して入力電流を力率補償制御し、
前記制御回路は、前記入力電圧が最大値となるときを含む第1期間では前記インダクタンス素子に流れる電流を臨界動作させ、前記入力電圧が最小値となるときを含む第2期間では前記インダクタンス素子に流れる電流を不連続動作させ、
前記制御回路は、前記入力電圧に同期してクリアされるタイマーのカウント数に応じて前記第1期間と前記第2期間を切り替えることを特徴とする力率補償装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記出力電圧に基づき前記切替閾値電圧を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の力率補償装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記出力電圧が予め定められた値より大きくなると前記切替閾値電圧を低くすることを特徴とする請求項4に記載の力率補償装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記出力電圧に基づき前記カウント数を変化させることを特徴とする請求項3に記載の力率補償装置。
【請求項7】
前記力率補償回路の出力電流を検出する出力電流検出回路を備え、
前記制御回路は、前記出力電流と前記出力電圧を乗算した出力電力に基づき前記切替閾値電圧を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の力率補償装置。
【請求項8】
前記力率補償回路の出力電流を検出する出力電流検出回路を備え、
前記制御回路は、前記出力電流と前記出力電圧を乗算した出力電力に基づき前記カウント数を変化させることを特徴とする請求項3に記載の力率補償装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記入力電圧の実効値レベルに基づき、前記切替閾値電圧を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の力率補償装置。
【請求項10】
前記制御回路は、前記入力電圧の最小電圧を検出したタイミングで、前記出力電圧と目標とする電圧とから、前記スイッチング素子のオン時間を求め、前記オン時間だけ前記スイッチング素子をオンすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の力率補償装置。
【請求項11】
前記力率補償回路を昇圧コンバータとすることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の力率補償装置。
【請求項12】
前記制御回路を1つの制御ICのパッケージに収めたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の力率補償装置。
【請求項13】
前記力率補償回路の後段に接続されたLED電流調整回路と、
前記LED電流調整回路に接続されたLEDと、を備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の力率補償装置。
【請求項14】
複数のLEDを接続したLEDモジュールと、
前記LEDモジュールに電流を供給する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の力率補償装置と、を備えることを特徴とするLED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力率補償(PFC:Power Factor Correction)機能と所望の直流電力を出力する機能を備えた力率補償装置、及びLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、力率補償動作として、インダクタのゼロ電流検出タイミングでスイッチング素子をターンオンさせる臨界モード(電流連続モードと電流不連続モードとの境界)で動作を行うことで、高力率に電力変換を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−205766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
力率補償装置及びLED照明装置では、力率を高めることと、効率を高めることが求められる。特許文献1に示される方式では、特に入力電圧のゼロクロス付近においてスイッチング周波数が高周波化し、スイッチングに伴う電力損失が増大するといった問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、高力率かつ高効率の制御を実現できる力率補償装置とLED照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明に係る力率補償装置は、電源主回路と、制御回路と、を備え、該電源主回路は、交流電源の交流電圧を全波整流する全波整流回路と、インダクタンス素子と、スイッチング素子を有し、該全波整流回路によって得られた入力電圧を目標とする出力電圧に変換する力率補償回路と、該入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、該出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、該インダクタンス素子に流れる電流がゼロになるタイミングを検出するゼロ電流検出回路と、を有し、該制御回路は、該入力電圧検出回路、該出力電圧検出回路及び該ゼロ電流検出回路で検出された検出信号に基づいて該スイッチング素子をオンオフ制御することにより該出力電圧を所望の電圧に制御しつつ、該インダクタンス素子に流れる電流を制御して入力電流を力率補償制御し、該制御回路は、該入力電圧が最大値となるときを含む第1期間では該インダクタンス素子に流れる電流を臨界動作させ、該入力電圧が最小値となるときを含む第2期間では該インダクタンス素子に流れる電流を不連続動作させ、該制御回路は、予め定められた切替閾値電圧と該入力電圧を比較し、該入力電圧が該切替閾値電圧より大きい期間を該第1期間とし、該入力電圧が該切替閾値電圧より小さい期間を該第2期間とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチング周波数が比較的高周波であり入力電流レベルの小さい、入力電圧ゼロクロス付近においてはスイッチングに伴う電力損失が低減され、スイッチング周波数が比較的低周波であり入力電流レベルの大きい、入力電圧ピーク付近では大きな力率改善効果を得られるため、高力率かつ高効率の制御が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における力率補償装置を説明するための回路ブロック図である。
図2】電流臨界動作を説明する図である。
図3】臨界動作器の構成例を示す回路図である。
図4】臨界動作器の動作を示すタイミングチャートである。
図5】電流不連続動作を説明する図である。
図6】不連続動作器の構成例を示す回路図である。
図7】不連続動作器の動作を示すタイミングチャートである。
図8】動作切替器の構成例を示す回路図である。
図9】第1期間と第2期間の動作を示す図である。
図10】変形例に係るセレクト信号の生成方法を示す図である。
図11】実施の形態2における力率補償装置の構成を示す回路ブロック図である。
図12】第1期間と第2期間の動作を示す図である。
図13】実施の形態3における力率補償装置の構成を示す回路ブロック図である。
図14】切替閾値電圧を変化させることを示す図である。
図15】変形例に係る力率補償装置の回路ブロック図である。
図16】実施の形態4における力率補償装置の構成を示す回路ブロック図である。
図17】変形例に係る力率補償装置の回路ブロック図である。
図18】別の変形例に係る力率補償装置の回路ブロック図である。
図19】入力電圧の波形を示すグラフである。
図20】実施の形態5に係る力率補償装置を説明するための回路ブロック図である。
図21】入力電圧検出値を取り込むタイミングを示す図である。
図22】フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る力率補償装置とLED照明装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電源制御に用いる力率補償装置を説明するための回路ブロック図である。図1において、商用の交流電源20の交流電圧が全波整流回路2で全波整流される。全波整流回路2の出力電圧が入力電圧として力率補償回路1に供給され、力率補償回路1の出力が負荷19に接続される。本発明の実施の形態1に係る力率補償装置は、破線で囲んだ力率補償回路1及び一点鎖線で囲んだ制御回路8をその構成要素として含んでいる。
【0012】
力率補償回路1は、入力電圧を分圧する抵抗R1とR2を備えている。抵抗R1とR2は、全波整流回路2によって得られた入力電圧を検出する入力電圧検出回路である。力率補償回路1は、入力側コンデンサ3、インダクタンス素子4、スイッチング素子5、ダイオード6及び出力側コンデンサ7をその構成要素として含んでいる。力率補償回路1は、力率補償回路1の出力電圧を分圧する抵抗R4とR5を備えている。抵抗R4とR5は力率補償回路1の出力電圧を検出する出力電圧検出回路である。
【0013】
また、制御回路8は、力率補償回路1の抵抗R4とR5により分圧した電圧(出力電圧)と目標電圧Vaimとの誤差を求める減算器9と、PI(Proportional and Integral)演算を行ってPI制御するPI制御器10と、入力電圧のボトムを検出するボトム検出器11と、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を後述する臨界動作・不連続動作で切り替える判断を行う動作切替器12と、動作切替器12から出力されるセレクト信号に応じてインダクタンス素子4に流れる電流の動作切替を行うセレクタ17、18と、インダクタンス素子4に流れる電流を臨界動作とするための臨界動作器15、同電流を不連続動作とするための不連続動作器16、PI制御器の出力と臨界動作器15または不連続動作器16とからPWM信号を生成するスイッチ生成器13、とを含む。ここでPWM信号は、周期を一定にしてデューティを可変制御する一般的なPWM信号ではなく、PFC制御(力率補償制御)を行うために周期を可変にしたスイッチング信号である。
【0014】
上記の制御回路8は、全部がICを用いない一般のデジタル制御回路(同機能をもつソフトウェアによる回路も含まれる)でもよく、またその構成要素の一部がデジタル制御回路であってもよく、さらに、全部がデジタル制御回路を用いないアナログ制御回路であっても良い。本願では、以降、これらを総称して制御回路8と呼ぶこととし、ここでは制御回路8の一部をデジタル制御回路とした構成について記述する。
【0015】
次に回路動作を説明する。交流電源20の交流入力電圧を全波整流回路2によって全波整流し、全波整流回路2の出力端には入力側コンデンサ3の一端およびインダクタンス素子4の一次側インダクタの一端が接続され、入力側コンデンサ3によって後述のスイッチング素子5のスイッチング動作に起因する高周波成分を除去する。インダクタンス素子4の一次側インダクタには、その他端と基準電位(接地電位)の間にスイッチング素子5、ダイオード6及び出力側コンデンサ7からなる昇圧回路(昇圧コンバータ)が設けられている。この昇圧回路によって全波整流回路2から出力される整流電圧を昇圧整流することで、出力側コンデンサ7の両端に対して、所望の直流出力電圧を供給することができる。
【0016】
インダクタンス素子4の二次側インダクタはインダクタンス素子4の一次側インダクタに流れるインダクタ電流がゼロになる電圧値を検出するためのものである。この二次側インダクタには、インダクタンス素子4に流れる電流がゼロになるタイミングを検出するゼロ電流検出回路として機能する抵抗R3が接続されている。
【0017】
なお、便宜的に入力電圧検出回路(抵抗R1とR2)、出力電圧検出回路(抵抗R4とR5)及びゼロ電流検出回路(抵抗R3)を力率補償回路1の構成要素でないとすると、全波整流回路2、インダクタンス素子4とスイッチング素子5を有し全波整流回路2によって得られた入力電圧を目標とする出力電圧に変換する力率補償回路1、入力電圧検出回路(抵抗R1とR2)、出力電圧検出回路(抵抗R4とR5)及びゼロ電流検出回路(抵抗R3)は、電源主回路を構成している。
【0018】
次に、制御回路8の動作について説明する。抵抗R4とR5により分圧された出力電圧と目標電圧Vaimとの誤差を減算器9により求め、減算器9により演算された誤差を用いてPI制御器10にてPI演算を実施し、誤差を0に近づけるための制御量を定める。減算器9と、PI制御器10を含む制御器とをまとめて、以下では、出力電圧制御器14と呼ぶ。減算器9により、目標電圧Vaimとフィードバックされる出力電圧との誤差を得ることができ、PI制御器10により、当該減算器9の出力値から出力電圧を一定の範囲に制御するための制御量を求めることができる。PI制御器10は、例えば、PID制御器又はH∞制御器などに置き換えてもよい。なお、∞は無限大を意味する。
【0019】
上記のPI演算処理は、交流入力電圧の半周期、例えば交流入力電圧周波数が50Hzの場合10ms周期の時間間隔で実行される。具体的には、抵抗R1とR2で分圧した入力電圧から、交流入力電圧を全波整流回路2によって全波整流した波形の下限電圧(以降、ボトム電圧と称する)をボトム検出器11にて検出したタイミングで、PI演算処理が実施される。PI演算処理の実施タイミングは、ボトム電圧検出タイミングでなく、例えば、交流入力電圧を全波整流回路2によって全波整流した波形の上限電圧検出タイミング又は中間電圧検出タイミングとしても良い。
【0020】
臨界動作器15は、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を図2に示すように電流連続動作と電流不連続動作の境界となる電流臨界動作でスイッチング素子5のスイッチングを行う機能を持っている。図2には、インダクタンス素子4の電流iL22と、インダクタンス素子4に流れる電流のピーク電流値iLpeak23と、単位時間当たりのiL平均値24が示されている。図3は、臨界動作器15の構成例を示す回路図である。インダクタンス素子4の二次側インダクタの一端に接続されている抵抗R3を介して出力される電圧iLsenとiLsenの下限(0A)を検出するためのiLmin(例えば0.01V)とを比較する構成である。図4は、臨界動作器15の動作のタイミングチャートである。図4に示されるように、iLsenがiLminよりも小さくなったタイミングでタイマーリセット信号は「L」から「H」に切り替わり、このタイマーリセット信号をターンオンのタイミングとして検出する。
【0021】
不連続動作器16は、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を図5に示すように一定周期の電流不連続動作とする機能を持っている。図6は、不連続動作器16の構成例を示す回路図である。この不連続動作器16は、一定間隔で一定電圧が増加するタイマーと所望のPWM周期から決定するタイマーの上限である一定電圧値のタイマーmaxとを比較する構成となっている。図7は不連続動作器16の動作のタイミングチャートである。タイマーがタイマーmaxよりも大きくなったタイミングでタイマーリセット信号は「L」から「H」に切り替わり、この切り替わりをターンオンのタイミングとして検出する。なお、不連続動作器16はマイコン等のデジタル制御器に搭載されているタイマー機能を使用することで、一定周期でのタイマーリセット信号を簡単に生成することができる。
【0022】
スイッチ生成器13では、PI制御器10の演算結果から決定されるON時間(「オン時間」に同じ。以降「オン時間」と記載)信号と、臨界動作器15又は不連続動作器16にて決定されるタイマーリセット信号を基準として、スイッチング素子5を制御するためのPWM信号を生成する。具体的には、スイッチ生成器13の出力であるPWM信号が「H」に切り替わるのと同時にタイマーのカウントアップ処理を開始し、出力電圧制御器14から出力されるオン時間信号に基づいたオン時間経過後にPWM信号を「L」に切り替え、臨界動作器15又は不連続動作器16から出力されるタイマーリセット信号の「H」を検出したタイミングでPWM信号を再び「H」に切り替え、タイマーをリセットする。
【0023】
インダクタンス素子4の一次側インダクタでは、スイッチ生成器13の出力であるPWM信号に「H」が出力されている期間電流が上昇し、「L」が出力されている期間電流が下降する。
【0024】
上記スイッチ生成器13の動作は、商用電源(交流電源20)の周期の半周期の期間、即ち、ボトム検出器11にて次の入力電圧ボトムが検出されるまでの期間、一定のオン時間信号を元に継続してPWM信号が生成される。
【0025】
なお、上記では、制御量の演算にPI制御を用いたが、PI制御、PID制御などの古典制御、あるいは現代制御であるH∞制御等、誤差算出結果を目標値に近づけるための制御方法であれば、何を用いてもよい。
【0026】
ここで、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を、臨界動作器15で動作させた場合と、不連続動作器16で動作させた場合の特徴についてそれぞれ説明する。
【0027】
まず、商用電源(交流電源20)の周期の半周期の期間、PWM信号のオン時間を一定に制御する本制御方式では、図2、5の矢印に示す通り、PWM信号が「H」の期間にインダクタンス素子4に流れる電流iL22の増加量(傾き)は、入力電圧|Vin|に比例した大きさとなる。また、インダクタンス素子4に流れる電流のピーク電流値iLpeak23は入力電圧に比例した正弦波上の軌跡となる。
【0028】
スイッチ生成器13を臨界動作器15で動作させた場合、図2の通りに単位時間あたりのインダクタンスに流れるiLの平均値24は、ピーク電流値iLpeak23の半分の値となるため、入力電流は入力電圧とほぼ同位相となり、大きな力率改善効果がある。しかし、特にスイッチング時間tr、tfの長い安価なスイッチング素子5を用いる場合には、特にボトム付近におけるスイッチング回数増加により、スイッチング素子5でのスイッチング損失が増大し、電源効率の悪化につながる。
【0029】
一方で、スイッチ生成器13を不連続動作器16で動作させた場合、図5の通りに単位時間あたりのインダクタンス素子4に流れる平均値24は、ピーク電流値iLpeak23の半分以下の値となり、さらに一定周期のPWM信号とすることで不連続の期間がボトム付近とピーク付近では変化するため、単位時間あたりのインダクタンス素子4に流れる平均値24は正弦波が歪んだ形となり、力率が悪化してしまう。しかし、特にボトム付近でのスイッチング回数が減少するため、スイッチング素子5でのスイッチング損失は低減し、電源効率の改善につながる。
【0030】
以上のように、上記制御方式における臨界動作と不連続動作では、力率と効率の面でトレードオフの関係を持つ。そこで、臨界動作と不連続動作の各動作に応じて生じる力率と効率のトレードオフを改善する方法について、特に本発明の特徴である動作切替器12について以下説明する。
【0031】
図8は、動作切替器12の構成例を示す回路図である。動作切替器12は、コンパレータにより、交流入力電圧を全波整流回路2によって全波整流した電圧の抵抗R1とR2による分圧値|Vin|sen(入力電圧)と、予め定められた切替閾値電圧との比較を行う。簡単に言えば、動作切替器12は、入力電圧と予め定められた切替閾値電圧を入力とするコンパレータを有している。分圧値|Vin|sen(入力電圧)が切替閾値電圧よりも大きいときは、セレクタ17、18のa点をb点と接続することで、スイッチ生成器13を臨界動作器15で動作させ、分圧値(入力電圧)が切替閾値電圧よりも小さいときは、セレクタ17、18のa点をc点と接続することで、スイッチ生成器13を不連続動作器16で動作させる。言い換えれば、動作切替器12は、抵抗R1とR2によって分圧された入力電圧が切替閾値電圧より大きい期間(第1期間)では臨界動作を実現し、同入力電圧が切替閾値電圧より小さい期間(第2期間)では不連続動作を実現する。
【0032】
図9は、第1期間と第2期間の動作を示す図である。図9に示されるように、入力電圧のピークに対して左右対称の時間で臨界動作/不連続動作を切り替えることができる。つまり、入力電圧のピーク付近、すなわち電流レベルが大きく力率改善効果の高い領域では臨界動作をすることで高力率制御を実現し、入力電圧のボトム付近、すなわち効率改善効果の高い領域では不連続動作をすることで高効率制御を実施する。
【0033】
なお、切替閾値電圧は入力電圧の実効値レベルに応じて変更することで入力電圧に依存しない臨界動作/不連続動作の切替が可能となる。具体的には、入力電圧実効値レベルがAC200Vの場合、入力電圧実効値レベルがAC100Vの場合の切替閾値電圧を2倍した値を設定し、入力電圧実効値レベルがAC242Vの場合、入力電圧実効値レベルがAC100Vの場合の切替閾値電圧を2.42倍した値を設定する。ここで、入力電圧実効値レベルは例えば|Vin|senのピークホールド回路によりピーク電圧値を検出して、求めることができる。
【0034】
ここで、例えば臨界動作と不連続動作をスイッチング周波数に応じて切り替えることでスイッチング損失を低減する方法も考えられる。しかしその場合、一般的にマイコン等で随時カウントアップを行い、周波数を求める必要があるため、力率補償装置を簡易な構成とすることができず、それをアナログ回路で実現することも容易ではない。それに対し、本発明の実施の形態1のように入力電圧の値で臨界動作と不連続動作を切り替える方法は、入力電圧の分圧検出用の抵抗2つとコンパレータ1つのみで実現でき、アナログ回路でも容易に安価に構成することが可能である。
【0035】
このように、本発明の実施の形態1に係る力率補償装置によれば、力率補償回路1を制御回路8にて制御するにあたり、交流入力電圧の下限のタイミング(全波整流した後の入力電圧波形のボトム(最小)電圧のタイミング)で、分圧された出力電圧と、目標電圧との誤差を減算器9により演算処理し、減算器9により演算された誤差を用いて、PI演算を実施し、PI演算結果から求めたオン時間信号と、タイマーリセット信号を用いてスイッチ生成器13にてPWM信号を生成する。そして、タイマーリセット信号は、動作切替器12にて、入力電圧が切替閾値電圧よりも大きいときは臨界動作器15で生成するセレクト信号を出力し、入力電圧が切替閾値電圧より小さいときは不連続動作器16で生成するセレクト信号を出力する。セレクト信号に応じて臨界動作器15又は不連続動作器16でタイマーリセット信号を生成することで、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を、入力電圧ピーク付近では臨界動作で、入力電圧ボトム付近では不連続動作で制御する。
【0036】
これにより、力率への影響の大きい入力電圧ピーク付近では高力率に制御しつつ、効率への影響の大きい入力電圧ボトム付近では高効率に制御を行うため、高力率かつ高効率の制御を実現できる。
【0037】
なお、ここでは動作切替器12を図8の通りに、入力電圧と切替閾値電圧との比較からセレクト信号(臨界/不連続)を決定する構成とした。しかし、動作切替器12を図10に示すように、入力電圧|Vin|senのボトム検出でリセットされるタイマーを用いて、タイマーのカウント数と2つの一定値change_a、change_bの比較からセレクト信号(臨界/不連続)を生成しても良い。この場合、change_a、change_bの値はタイマーの最大値をtimer_maxとすると、timer_maxの半分の値に対して定数Yを加算したもの、減算したものと設定する。即ち、change_a=timer_max/2−Y、change_b=timer_max/2+Yと設定する。
【0038】
これにより、入力電圧と切替閾値電圧とを比較する図8の構成と同様に、入力電圧のピークに対して左右対称の時間で臨界動作と不連続動作を切り替えることができる。つまり、商用周波数50Hzの場合、全波整流後の入力電圧の周期は10msであるため、左右対称のタイミングである、例えば4msと6msで臨界動作/不連続動作を切り替えることが可能となる。これにより、入力電流レベルの大きい領域では高力率制御を、スイッチング回数の多い領域では高効率制御をすることができる。このように、入力電圧に同期してクリアされるタイマーのカウント数に応じて第1期間と第2期間を切り替える制御回路を用いてもよい。
【0039】
制御回路8は、入力電圧検出回路、出力電圧検出回路及びゼロ電流検出回路で検出された検出信号に基づいてスイッチング素子5をオンオフ制御することにより出力電圧を所望の電圧に制御しつつ、インダクタンス素子4に流れる電流を制御して入力電流を力率補償制御するものである。そして、本発明の実施の形態1に係る力率補償装置の制御回路8は、入力電圧が最大値となるときを含む第1期間ではインダクタンス素子4に流れる電流を臨界動作させ、入力電圧が最小値となるときを含む第2期間ではインダクタンス素子4に流れる電流を不連続動作させることを特徴とする。この特徴を失わない範囲で様々な変形をなし得る。
【0040】
これらの変形は以下の実施の形態に係る力率補償装置にも応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る力率補償装置は、実施の形態1に係る力率補償装置との相違点を中心に説明する。
【0041】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2における力率補償装置の構成を示す回路ブロック図である。図1と同一もしくは対応する構成部分には、同一の符号を付す。実施の形態2の力率補償装置の特徴は、動作切替器12において、入力電圧が切替閾値電圧よりも小さいときには、不連続動作器でなく、インダクタンス素子に流れる電流をゼロにするスイッチ停止器21を用いる点である。
【0042】
動作切替器12において、入力電圧が切替閾値電圧よりも小さいとき(第2期間)は、セレクタ17のaをcに接続する。セレクタ17のaがcと接続された場合、スイッチ停止器21からスイッチ停止信号がスイッチ生成器13に入力される。これによりスイッチ生成器13からは、PWM信号を常に「L」とした信号が出力される。
【0043】
つまり、入力電圧が切替閾値電圧よりも大きいとき(すなわち、入力電圧が最大値となるときを含む第1期間)は臨界動作器15で生成するセレクト信号が出力され、入力電圧が切替閾値電圧より小さいとき(すなわち、入力電圧が最小値となるときを含む第2期間)はスイッチ停止器21で生成するセレクト信号が出力され、セレクト信号に応じて臨界動作器15からタイマーリセット信号、または、スイッチ停止器21からスイッチ停止信号がスイッチ生成器13に入力される。
【0044】
このような制御により、インダクタンス素子4に流れる電流は図12に示すとおりとなる。図12には、第1期間ではインダクタンス素子4に流れる電流を臨界動作させ、第2期間ではインダクタンス素子4に流れる電流をゼロとすることが示されている。言い換えれば、入力電圧ピーク付近では臨界動作で、入力電圧ボトム付近ではゼロ電流に制御するように、臨界動作器15とスイッチ停止器21を切り替える。
【0045】
このように、実施の形態2によれば、力率補償回路1を制御回路8にて制御する場合、交流入力電圧の下限のタイミング(全波整流した波形のボトム電圧のタイミング)で、分圧された出力電圧と、目標電圧との誤差を減算器9により演算処理し、減算器9により演算された誤差を用いて、PI演算を実施し、PI演算の結果から求めたオン時間信号と、タイマーリセット信号を用いてスイッチ生成器13にてPWM信号を生成する。そして、動作切替器12にて、入力電圧が切替閾値電圧よりも大きいときは臨界動作器15からタイマーリセット信号を出力し、入力電圧が切替閾値電圧より小さいときはスイッチ停止器21からスイッチ停止信号を出力することで、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を、入力電圧ピーク付近では臨界動作で、入力電圧ボトム付近ではゼロに制御するように切り替える。
【0046】
これにより、入力電圧のピーク付近、すなわち電流レベルが大きく力率改善効果の高い領域では高力率制御を実現し、入力電圧のボトム付近、すなわち効率改善効果の高い領域では実施の形態1よりもさらに高効率な制御を実施することができる。
【0047】
なお、スイッチを停止することで単位時間あたりにインダクタンス素子4に流れる電流はゼロとなるが、入力電圧のボトム付近の領域は電流レベルが小さい領域であるため、力率低下への影響は少ない。
【0048】
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3における力率補償装置の構成を示す回路ブロック図である。実施の形態3の力率補償装置は、実施の形態1の力率補償装置と比べて、力率補償回路1内の出力電圧を分圧する抵抗R4とR5により分圧した電圧を動作切替器12に入力し、動作切替器12では入力された値に応じて臨界動作/不連続動作の切替タイミングを変更する点において異なる。
【0049】
具体的には、実施の形態1では切替閾値電圧を一定の値としていたが、実施の形態3では抵抗R4とR5により分圧した電圧(出力電圧)の値に基づき切替閾値電圧を変化させる。図14は、切替閾値電圧を変化させることを示す図である。丸1で示される矢印は切替閾値電圧を変化させることを示し、丸2で示される矢印は切替閾値電圧の変化に伴い第1期間と第2期間の長さが変化することを示す。
【0050】
実施の形態3による効果を説明する。本願の力率補償回路1においては出力電圧が大きくなると、PWM信号が「H」を継続するオン時間、即ちインダクタンス素子4に流れるピーク電流が増大することと、PWM信号が「L」時のインダクタンス素子4に流れる電流減少速度が高速化することから、臨界動作器15で動作する場合の効率改善効果及び不連続動作器16で動作する場合の力率改善効果が変化する。つまり、PWM信号が「H」を継続するオン時間の長短に応じて、臨界動作器15と不連続動作器16による力率改善効果が変化する。
【0051】
このため、出力電圧に応じずに一定の切替閾値電圧で臨界動作と不連続動作を切り替えた場合、出力電圧が変化したときに高効率と高力率の両立が困難となる恐れがある。そこで、検出した出力電圧値に応じて、高効率と高力率をともに実現するための適した切替閾値電圧に随時変化させることで、臨界動作と不連続動作の適用範囲を変化させ、高効率かつ高力率の制御を実現する。
【0052】
なお、出力電圧に応じた切替閾値電圧は、あらかじめマイコン等にテーブルとして記憶させたものから決定する方法だけでなく、あらかじめ算出した出力電圧対切替閾値電圧の関数を演算して決定しても良い。
【0053】
このように、実施の形態3によれば、交流入力電圧の下限のタイミング(全波整流した入力電圧波形のボトム電圧のタイミング)で、分圧した出力電圧と、目標電圧との誤差を減算器9により演算処理し、減算器9により演算された誤差を用いて、PI演算を実施し、PI演算結果から求めたオン時間信号と、タイマーリセット信号を用いてスイッチ生成器13にてPWM信号を生成する構成において、動作切替器12を用いて、入力電圧が切替閾値電圧よりも大きいときは臨界動作器15で生成するセレクト信号を出力し、入力電圧が切替閾値電圧より小さいときは不連続動作器16で生成するセレクト信号を出力する。そして、セレクト信号に応じて臨界動作器15又は不連続動作器16でタイマーリセット信号を生成することで、インダクタンス素子4に流れる電流の動作を、入力電圧ピーク付近では臨界動作で、入力電圧ボトム付近では不連続動作で制御するように切り替える。さらに、その切替閾値電圧は、出力電圧を分圧した電圧に応じて変化させる。
【0054】
これにより、出力電圧が変化した場合でも、変化後の出力電圧に応じた臨界動作と不連続動作の切り替えが可能となり、高力率かつ高効率な制御を行うことができる。高力率かつ高効率な制御を実現するためには、例えば制御回路(動作切替器12)は、出力電圧が予め定められた値より大きくなると切替閾値電圧を低くする。
【0055】
図15は、変形例に係る力率補償装置の回路ブロック図である。実施の形態3では出力電圧に応じて切替閾値電圧を変化させる構成を説明したが、この変形例では、図15に示されるように、力率補償回路1の出力電流を検出する出力電流検出回路25を追加し、出力電流検出回路25から検出した出力電流検出値を動作切替器12に入力する。そして、制御回路8(動作切替器12)は、出力電流検出値に応じて、または、上記出力電流検出値と上記出力電圧を乗算した出力電力に基づき切替閾値電圧を変化させる。なお、出力電流検出回路25は、例えば抵抗で構成されており、抵抗に流れる電流をその両端電圧として検出する。
【0056】
また、動作切替器12を図10に示すようにタイマーを用いて構成する場合は、切替閾値電圧の代わりに、change_a、change_bを変化させる。即ち、出力電流(又は出力電力)に基づき、図10に示すYの値を変化させれば良い。Yの値を変えるということは、第1期間と第2期間を切り替えるカウント数を変化させるということである。
【0057】
実施の形態4.
図16は、この発明の実施の形態4における力率補償装置の構成を示す回路ブロック図である。実施の形態4は、実施の形態1(図1)に示した構成の力率補償回路1を前提として、複数のLED31を直列に接続したLEDモジュール30を負荷としたものである。複数のLED31の接続方法は、単に直列接続した場合に限らず並列接続又は直並列接続としてもよい。また、複数のLED31は有機EL又はレーザーダイオードといった別の光源でもかまわない。
【0058】
ここで、LEDは通常、その特性から電流制御が適している。このため、図16に示される実施の形態4の回路構成は、複数のLED31に流れるLED電流を検出するためのLED電流検出回路26を備えている。そして、図1に示される抵抗R4、R5の分圧抵抗とその検出信号は、本実施の形態では利用しない。LED電流検出回路26は、例えば抵抗で構成されており、抵抗に流れる電流をその両端電圧として検出する。さらに、本実施の形態の制御回路8は、抵抗R4、R5から検出していた出力電圧に代えて、LED電流検出回路26で検出された信号と出力電流の目標指令値であるIaimとの誤差を減算器9により求める出力電流制御器14’を備える。
【0059】
この構成にすれば、実施の形態1と同様の制御により、複数のLED31に流れるLED電流の制御を行う高力率かつ高効率な力率補償装置とすることができる。また、光量を調整するための調光機能を搭載する場合は、外部の機器から上記の目標出力電流Iaimを可変する構成とする。
【0060】
図17は、変形例に係る力率補償装置の回路ブロック図である。この力率補償装置は、LED電流検出回路26から検出された信号を動作切替器12に入力する。そして、実施の形態3で述べた方法と同様に切替閾値電圧を変化させることで、以下の効果を得ることができる。
【0061】
図17に示すように負荷がLEDモジュール30である場合、負荷の電圧−電流特性は、出力電流の値によらずほぼ一定の出力電圧となる。このため、出力電流が変化したときでもPWM信号が「L」時のインダクタンス素子に流れる電流減少速度に変化がなく、スイッチング素子の周波数はPWM信号が「H」を継続するオン時間、即ち、LED電流の大きさのみで決まる。そのため、高力率かつ高効率とするための切替閾値電圧はLED電流の検出値のみから決定することができる。以上のことから、負荷がLEDモジュール30である場合、負荷を抵抗とした場合よりも、出力電流に対する切替閾値電圧を容易に決定することが可能となる。
【0062】
なお、切替閾値電圧の決定方法は、LED電流検出値に代えて、目標とするLED電流Iaimから決定しても良い。
【0063】
このように、実施の形態4では、負荷を複数のLED31とし、複数のLED31に流れるLED電流を検出するためのLED電流検出回路26を追加し、LED電流検出回路26から検出された信号から出力電流制御器14’により、LED電流が目標出力電流Iaimとなるように制御することで、LED電流を高力率かつ高効率に一定出力電流に制御することが可能となり、調光機能も実現することができる。
【0064】
さらに、LED電流検出回路26で検出した信号を動作切替器12に入力し、当該信号に基づき切替閾値電圧を決定することで、その決定方法を容易にすることができ、回路規模の縮小及びプログラムメモリの削減を図ることができる。
【0065】
図18は、別の変形例に係る力率補償装置の回路ブロック図である。図18には、力率補償回路1の後段にLED電流調整回路27を介して負荷であるLEDモジュール30を接続する構成が示されている。通常、LED照明装置は、交流入力電圧を力率補償回路1で高調波を抑制しつつ直流電圧を出力し、降圧コンバータなどによって構成されるLED電流調整回路27にて力率補償回路1から出力される直流電圧から負荷のLEDで必要な電圧及び電流に変換する。そのため、力率補償回路1の後段に、LED電流を調整する役割のみを担う回路であるLED電流調整回路27を接続することで、商用周期の出力電流リップルをより抑制することが可能となり、商用周期リップルによるLEDのちらつきを抑制することができる。この構成とした場合でも、力率補償回路1を高力率かつ高効率に制御することが可能となる。
【0066】
なお、LED照明装置は、一般的に力率補償回路を昇圧コンバータで構成し、LED電流調整回路27を降圧コンバータで構成するが、これに限らずLED電流調整回路27を昇圧コンバータ又は昇降圧コンバータなどのLED電流を調整することができる回路としてもよい。
【0067】
本発明の実施の形態4では、LEDモジュール30と、LEDモジュール30に電流を供給するための力率補償装置と、を含むLED照明装置について説明した。LED照明装置の一部として、上記の実施の形態1〜4のいずれかの力率補償装置を利用することができる。
【0068】
前述の実施の形態1〜4で説明した力率補償装置によれば、力率補償回路を高力率かつ高効率に制御することができる。なお、実施の形態1〜4で説明した力率補償装置の特徴を組み合わせたり、各実施の形態に係る回路を適宜、変形したり、省略したりすることが可能である。
【0069】
また、本願にて記述した力率補償装置を小型化する為に、力率補償装置のすべてまたは一部を1つの集積回路に実装して、1つのパッケージに収めたICとしても良い。例えば、制御回路8を1つの制御ICのパッケージに収めることが好ましい。
【0070】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5における力率補償装置を説明する回路ブロック図は、基本的には実施の形態2に係る回路ブロック図である図11と同じである。ただし、実施の形態5に係る動作切替器12の動作は、実施の形態2に係る動作切替器12の動作と異なる。
【0071】
実施の形態2では動作切替器12において入力電圧と切替閾値電圧を比較し、入力電圧が切替閾値電圧よりも小さい第2期間では、セレクタ17のaをcに接続することでスイッチ停止器21で動作し、入力電圧が切替閾値電圧よりも大きい第1期間では、セレクタ17のaをbに接続することで臨界動作器15で動作する。
【0072】
他方、実施の形態5の特徴は、動作切替器12において一定周期で検出した入力電圧値を用いて、その検出周期ごとの入力電圧変化分を用いてセレクタ17のaをbに接続するか、またはcに接続するかを判断し、臨界動作器15とスイッチ停止器21の動作を切り替える。これにより、力率を悪化させずに効率を向上させる。
【0073】
1.実施の形態5における動作切替器の基本的な考え方
図19は、抵抗R1,R2で検出される入力電圧の波形を示すグラフである。破線aは理想波形を示し、実線bは実測波形を示す。入力電流を入力電圧の波形と同一にする力率補償制御として、入力電圧ボトム付近では入力電流を小さくするようにスイッチング制御をする必要がある。図19における期間tは、必要とする入力電流が小さい期間であり、この期間tにおいては図11の入力側コンデンサ3に蓄積されているエネルギーで必要電流が供給される。したがって、期間tでは交流電源20から電流を流すことができず、入力電圧が浮上する。つまり、入力電圧ボトムの電圧浮上期間tは交流電源20から入力電流が流れていない状態であるから、力率補償制御の効果が得られていない期間である。この期間tは負荷が軽くなればなるほど長くなる。そこで、実施の形態5では、交流電源20から入力電流が流れ込んでいない期間tにおいて、力率補償のためのスイッチング制御を停止することで、力率を維持しつつ、効率を向上させる。
【0074】
2.具体例
図20は、実施の形態5に係る力率補償装置を説明するための回路ブロック図である。動作切替器12は、検知部12Aと切替部12Bを備えている。検知部12Aは、全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったこと、および全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたこと、を検知する。切替部12Bは、検知部12Aで全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったことを検知したときにはスイッチ停止器21を使用させ、検知部12Aで全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたことを検知したときは臨界動作器15を使用させる。
【0075】
図21図22に実施の形態5における動作切替器12の制御動作を示す。まず、図21を参照しつつ一定時間間隔に入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|senを取り込む方法を示す。図21における●印は、動作切替器12の検知部12Aが入力電圧検出値|Vin|senを取り込むタイミングを示す。●印に示すように入力電圧検出値|Vin|senを一定時間間隔で取り込み、一定時間間隔における入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|senを求める。例えば、サンプリング点n1(検出値a)とn2(検出値b)の一定時間間隔における入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|sen(b)をa−b、n2(検出値b)とn3(検出値c)の一定時間間隔における入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|sen(c)をb−cとして求める。
【0076】
次に図22を参照しつつ、動作切替器12での制御フローを説明する。まず、S1において一定時間間隔ごとにΔ|Vin|senを取り込む。次いで、S2においてΔ|Vin|senの5つ連続した直近の値を動作切替器12によりシフトする。つまり、最新の5つの入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|senを得る。
【0077】
次いで、S3に処理を進める。S3においては、一定時間間隔前に臨界動作器15によって動作が制御されていたか判定する。一定時間間隔前に臨界動作器15によって動作が制御されていた場合は、S4の判断を実施する。S4では3回連続x以上の電圧低下が続いた後に2回連続x未満の電圧低下が続いたときにYESと判断され、S5にてスイッチ停止器21での動作に切り替える。言い換えれば、入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|senが3回連続してxより大きくなった後に、2回連続してx未満となったときにYESと判断する。xは、入力電圧レベル、入力電圧検出倍率、又は一定時間間隔から予め決定する値である。一方、S4でNOと判断された場合はS6に示されるように臨界動作器15での動作を継続する。
【0078】
S3において、一定時間間隔前にスイッチ停止器21によって動作が制御されていた場合は、S7の判断を実施する。S7では3回連続で電圧変化なし、または電圧低下が続いた後、2回連続で電圧上昇したときにYESと判断され、S8にて臨界動作器15での動作に切り替える。一方、S7でNOと判断された場合はS5に示されるようにスイッチ停止器21での動作を継続する。
【0079】
この具体例では、最新の5つの入力電圧検出値の減少分Δ|Vin|senを取り込んで、電圧低下数などを見ることとしたが、これは一例であり別の方法を採用してもよい。上述の「3回連続x以上の電圧低下が続いた後に2回連続x未満の電圧低下が続いた」ことは、全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったことに対応する。また、「3回連続で電圧変化なし、または電圧低下が続いた後、2回連続で電圧上昇したとき」は全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたことに対応する。したがって、全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったことと、全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたことを検知できれば、減少分Δ|Vin|senの取り込み数と、その傾向分析の基準は動作切替に要する判断速度及び入力電圧レベルを考慮して適宜定めることができる。
【0080】
3.効果
図22を参照しつつ説明した制御を実施することでΔ|Vin|senを検出する一定時間間隔で、臨界動作でスイッチングする期間とスイッチ停止期間の切替を行うことができる。そして、交流電源20から力率補償回路1へ入力電流が流れ込んでいない期間tにおいて、スイッチング素子5のスイッチング制御を停止することで、力率を維持しつつ、効率を向上させることが可能となる。
【0081】
なお、力率補償装置は負荷が軽くなるほど回路に流れる電流が減少するため、期間tが増加する。即ち、特に軽負荷時においてスイッチ停止期間tが長くなるので、大きな効率改善効果を得ることができる。さらに、実施の形態5に係る動作切替器12を用いることで、力率補償回路1の出力電流若しくは出力電圧、またはLED照明装置における調光信号等の情報を用いることなく、負荷状態に応じた高力率かつ高効率な動作を達成可能な臨界動作期間(第1期間)とスイッチ停止期間(第2期間)の最適割合を調整することが可能となる。
【0082】
4.変形例
上述のとおり、実施の形態5に係る動作切替器12の検知部12Aは、入力電圧の傾きを検出し、入力電圧の傾きから、全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったこと、および全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたこと、を検知するものである。具体的には、検知部12Aで一定周期で入力電圧の変化分を検知し、その検知結果に基づき切替部12Bがスイッチング動作を切替える。しかしながら、これに限らず、交流電源20から力率補償回路1へ入力電流が流れていないこと、また、流れていることを検出可能な別の構成に変更し動作切替を行っても良い。
【0083】
例えば、事前に制御回路8にサインテーブルを用意してもよい。その場合、検知部12Aは、サインテーブルと入力電圧の差が予め定められた値より大きくなったときに全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったことを検知し、サインテーブルと入力電圧の差が予め定められた値より小さくなったときに全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたことを検知する。つまり、サインテーブルと入力電圧検出値を随時比較し、その誤差が一定以上のときにスイッチ停止を行い、その誤差が一定未満のときに臨界動作を行う。
【0084】
また、ここでは実施の形態2を元に臨界動作器15とスイッチ停止器21との切替を説明したが、実施の形態1の臨界動作器15と不連続動作器16を、実施の形態5の動作切替器12で切替えてもよい。その場合、切替部12Bは、検知部12Aで全波整流回路2から力率補償回路1への電流の流れがなくなったことを検知したときには不連続動作器16を使用させ、検知部12Aで全波整流回路2から力率補償回路1への電流が流れ始めたことを検知したときは臨界動作器15を使用させる。さらに、図示しないが、動作切替器を利用して、第1期間に不連続動作器16を用い、第2期間にスイッチ停止器21を用いる構成にしても良い。
【0085】
5.まとめ
実施の形態5の構成によれば、力率補償回路1を制御回路8にて制御する場合、交流入力電圧の下限のタイミング、すなわち全波整流した波形のボトム電圧のタイミングで、出力電圧を分圧した電圧と、目標電圧との誤差を減算器9により演算処理する。そして、減算器9により演算された誤差を用いて、PI演算を実施し、PI演算結果から求めたオン時間信号と、タイマーリセット信号を用いてスイッチ生成器13にてPWM信号を生成する。そして、このような構成において、動作切替器12にて、一定時間間隔における入力電圧の傾きを随時検出し、その傾きに応じてインダクタンス素子4に流れる電流の動作を、入力電圧ピーク付近を含む第1期間では臨界動作で、入力電圧ボトムを含む第2期間ではインダクタンス素子4に流す電流をゼロに制御するように切り替える。具体的には、臨界動作中に、数回連続して一定以上の電圧低下が続き、その後数回連続で一定未満の電圧低下が続いたときにスイッチ停止動作に切り替える。また、スイッチ停止時に、数回連続で電圧変化なし、または数回連続で電圧低下が続いた後、数回連続で電圧上昇したときに臨界動作に切り替える。これにより、入力電圧ボトム付近の入力電源から入力電流が流れない第2期間ではスイッチが停止されるため、力率を悪化させずに、スイッチング損失を低減でき、高効率化が可能となる。
【0086】
6.実施の形態1〜5を通しての変形
上記した実施形態1〜5では、ボトム検出器11を用いてVinボトムのタイミングでPI演算を行うこととしている。しかしながら、Vinボトム検出タイミングに限らず、一定周期ごと、または、スイッチング周期ごと等、任意のタイミングでPI演算を行っても良い。この場合、PI制御で用いるゲインを小さくすること、または、検出値のマイコン入力の前段に設けるアンチエイリアシングフィルタのカットオフ周波数を下げることでも、入力電圧の全波整流後の周期をほぼ一定のオン時間とすることができるため、上述した出力電圧と出力電流の制御とほぼ同様の力率補償装置を構成することが可能となる。また、臨界動作のゼロ電流検出方法は、実施の形態1の図3を用いて説明した方法に限定されない。なお、実施の形態1〜5の特徴を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 力率補償回路、 2 全波整流回路、 4 インダクタンス素子、 5 スイッチング素子、 8 制御回路、 11 ボトム検出器、 12 動作切替器、 13 スイッチ生成器、 15 臨界動作器、 16 不連続動作器、 27 LED電流調整回路
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