(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱膨張性シートを搬送させながら、光照射手段により前記熱膨張性シートに光を照射することで前記熱膨張性シートに立体画像を形成する際の熱膨張性シート搬送方法であって、
前記光照射手段により一方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、第1の搬送速度で搬送させる第1ステップと、
前記第1ステップによる搬送の後、前記光照射手段により他方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、前記第1の搬送速度より速い第2の搬送速度で搬送させる第2ステップと、
を備えることを特徴とする熱膨張性シート搬送方法。
熱膨張性シートを搬送させながら、光照射手段により前記熱膨張性シートに光を照射することで前記熱膨張性シートに立体画像を形成する際の熱膨張性シート搬送方法であって、
前記光照射手段により一方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、第1の搬送速度で搬送させる第1ステップと、
前記熱膨張性シートの表裏を反転する反転ステップと、
前記反転ステップにより表裏が反転され、前記光照射手段により他方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、前記第1の搬送速度より速い第2の搬送速度で搬送させる第2ステップと、
を備えることを特徴とする熱膨張性シート搬送方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
《第1の実施形態》
第1の実施形態の立体画像形成システムにおいて、濃淡画像が両面に印刷された熱膨張性シートが、表面と裏面の2回連続して挿入され、搬送されながら光が照射される。これにより、立体画像が形成される。この2回目の光照射において、光照射装置は、熱膨張性シート(用紙)の搬送速度を1回目の搬送速度よりもアップさせている。これは1回目の加熱で熱膨張性シートの水分量が減少して、熱膨張性シートが熱膨張しやすくなっているためである。
【0013】
更に表面側の光照射終了後から裏面側の光照射開始までの時間が変化した場合であっても、立体画像形成システムは、熱膨張の高さが所望の値になるように、その時間の変化に応じて2回目の搬送速度を変化させる。これは1回目の加熱で熱膨張性シートの水分量が減少したのち、2回目の加熱までの待ち時間によって、熱膨張性シートが大気中の湿気を吸収して水分量が増加するためである。水分量が増加するにつれ、熱膨張性シートは次第に熱膨張しにくくなる。この第1の実施形態の詳細について、以下の
図1から
図6により詳細に説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態における立体画像形成システム1を示す概略の構成図である。
図1に示すように、立体画像形成システム1は、タッチパネルディスプレイ2、コンピュータ3、光照射ユニット4を備えている。
【0015】
コンピュータ3は、不図示のCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)や記憶手段を備え、光照射ユニット4を制御する。
タッチパネルディスプレイ2は、タッチパネルに液晶表示パネルが張り合わされて構成され、このコンピュータ3の操作に用いられる。
【0016】
光照射ユニット4は、熱膨張性シート7を搬送しながら、この熱膨張性シート7に可視光および近赤外光を照射し、カーボンブラックによる濃淡画像(電磁波熱変換層)が形成されている部分に熱を発生させるものである。この光照射ユニット4は、光照射制御回路41、冷却ファン42、温度センサ43、ランプヒータ44、反射板441、バーコードリーダ45、鏡451の各部を備える。
【0017】
光照射制御回路41は、例えば不図示のCPUとメモリとを備え、コンピュータ3の指示に基づき、この光照射ユニット4を統括制御する。光照射制御回路41は、バーコードリーダ45・入口センサ46・出口センサ47からの入力信号に基づき、冷却ファン42およびモータ48を制御する。光照射制御回路41は更に、温度センサ43からの入力信号に基づき、ランプヒータ44を制御する。光照射制御回路41は、ランプヒータ44により一方の面に光を照射するように設定された熱膨張性シート7を、第1の搬送速度(V1)で搬送させる第1搬送制御手段である。光照射制御回路41は、その後、ランプヒータ44により他方の面に光を照射するように設定された熱膨張性シート7を、第1の搬送速度(V1)より速い第2の搬送速度(V2)で搬送させる第2搬送制御手段である。
【0018】
冷却ファン42は、反射板441を空気冷却する。温度センサ43は、反射板441の温度を計測する。反射板441は、ランプヒータ44において発生した可視光および近赤外光を反射する。ランプヒータ44と反射板441は、可視光および近赤外光を発生して、熱膨張性シート7に可視光や近赤外光を照射する光照射手段である。
【0019】
バーコードリーダ45は、熱膨張性シート7の裏面端部に印刷されたバーコードを読み取る。鏡451は、熱膨張性シート7の裏側が上方向を向くようにセットされているとき、この熱膨張性シート7のバーコードを反射して、バーコードリーダ45から読み取れるようにする。バーコードリーダ45がバーコードを読み取る位置により、熱膨張性シート7の表面と裏面とを判別することができる。
【0020】
光照射ユニット4は、一点鎖線で示す搬送路6に沿って、給紙部50、入口センサ46、挿入ローラ51,52、下ガイド55、上ガイド56、排出ローラ53,54、出口センサ47を備え、更にモータ48を備える。
【0021】
給紙部50は、熱膨張性シート7がセットされる部位である。この給紙部50に熱膨張性シート7がセットされて光照射が指示されると、光照射ユニット4は、熱膨張性シート7の搬送と光照射とを開始する。この搬送は、給紙部50が備える不図示の搬送機構によって開始される。
【0022】
入口センサ46は、熱膨張性シート7の前端が挿入ローラ51,52の直前に到達したことと、熱膨張性シート7の後端が挿入ローラ51,52の直前に到達したことを検知する。
【0023】
挿入ローラ51,52は、それぞれ搬送路6の左右に分かれて設けられ、熱膨張性シート7の端部を上下から挟み込んで搬送する。これら挿入ローラ51,52は、モータ48によって駆動される。下ガイド55と上ガイド56とは、格子状であり、搬送路6の下と上から熱膨張性シート7をガイドするなお、上ガイド56は、熱膨張性シート7に強い影を落とさないように、斜め方向に設けられている。これによりランプヒータ44の直下において、上ガイド56と熱膨張性シート7とは所定距離だけ離れているので、強い影を落とすことはない。
【0024】
排出ローラ53,54は、熱膨張性シート7を上下から挟み込んで搬送する。これら排出ローラ53,54も、モータ48によって駆動される。
【0025】
出口センサ47は、熱膨張性シート7の前端が排出ローラ53,54から排出されたことや、熱膨張性シート7の後端が排出ローラ53,54から排出されたことを検知する。
【0026】
なお、第1の実施形態では、熱膨張性シート7の表面を光照射したのち、オペレータが熱膨張性シート7の裏面を上にしてセットして光照射する。これにより、熱膨張性シート7の両面に光照射することができる。
【0027】
この立体画像形成システム1は、例えば以下のように動作する。
図2は、加熱搬送処理の一例を示す図である。
最初、オペレータは、熱膨張性シート7(用紙)を給紙部50にセットし(ステップS10)、タッチパネルディスプレイ2に表示されているスタートボタン(不図示)を押下(タップ)する(ステップS11)。これにより第1回目の搬送が開始する。このときの熱膨張性シート7の断面図を、後記する
図4に示す。
【0028】
光照射制御回路41は、バーコードリーダ45により熱膨張性シート7の表裏を判別する(ステップS12)。光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の裏面が上を向くように設定されているならば、標準速度V1で搬送しながらランプヒータ44で光照射し、この熱膨張性シート7を加熱する(ステップS13)。これにより、立体画像が形成される。この処理は、裏面だけに濃淡画像が形成されている場合のものである。
【0029】
光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の表面が上を向くように設定されているならば(ステップS12→表面)、標準速度V1で搬送しながらランプヒータ44で光照射し、この熱膨張性シート7を加熱する(ステップS14)。これにより、細かなパターンで構成された立体画像が形成される。このときの熱膨張性シート7の断面図を、後記する
図5に示す。このステップS14の処理は、ランプヒータ44により一方の面に光を照射するように設定された熱膨張性シート7を、第1の搬送速度(V1)で搬送させる処理である。
【0030】
ステップS14の加熱搬送が終了すると、光照射制御回路41は、経過時間のカウントを開始し(ステップS15)、熱膨張性シート7の裏面への光照射のガイダンス画面(不図示)をタッチパネルディスプレイ2に表示する。
【0031】
オペレータは、熱膨張性シート7の裏面に濃淡画面が印刷されているか判断する。オペレータは、熱膨張性シート7の裏面に何も印刷されていないならば(ステップS16→No)、タッチパネルディスプレイ2上のスキップボタン(不図示)を押下(タップ)して。加熱搬送処理を終了する。
【0032】
オペレータは、熱膨張性シート7の裏面に濃淡画像が印刷されていたならば(ステップS16→Yes)、熱膨張性シート7(用紙)の裏面が上を向くように給紙部50にセットする(ステップS18)。オペレータは更に、タッチパネルディスプレイ2に表示されているスタートボタン(不図示)を押下(タップ)する(ステップS19)。これにより第2回目の搬送が開始する。
【0033】
光照射制御回路41は、第1回目の搬送終了からの経過時間に応じてアップ率を判定している(ステップS20)。このときの経過時間とアップ率との関係を、
図3のグラフに示している。光照射制御回路41は、ステップS14における1回目の搬送の終了から、この2回目の搬送の開始までの経過時間に応じてアップ率を算出する。このアップ率は、2回目の搬送における第2の搬送速度に対応している。
【0034】
光照射制御回路41は、標準速度V1をアップ率で補正した速度V2で搬送しながらランプヒータ44で光照射し、この熱膨張性シート7を加熱する(ステップS21)。これにより、立体画像を構成する粗いパターンが形成される。このステップS21の処理は、ステップS14の搬送の後、ランプヒータ44により他方の面に光を照射するように設定された熱膨張性シート7を、第1の搬送速度(V1)より速い第2の搬送速度(V2)で搬送させる処理である。
【0035】
2回目の搬送では標準速度V1をアップ率で補正した速度V2で搬送し、加熱時間を短縮しているので、光照射制御回路41は、1回目の加熱搬送によって熱膨張性シート7の水分量が減少する影響を相殺することができる。光照射制御回路41は更に、経過時間に応じてアップ率を算出しているので、熱膨張性シート7が大気中の湿気を吸収して水分量が増加する影響を相殺することができる。よって、形成された立体画像の高さを安定させることができる。なお、本実施形態において大気中の湿気は、所定値(平均値)であることが仮定されている。
ステップS21の処理が終了すると、
図2の加熱搬送処理が終了する。なお、このときの熱膨張性シート7の断面図を、後記する
図6に示す。
【0036】
第1の実施形態の立体画像形成システム1によれば、熱膨張性シート7の片面に濃淡画像を印刷して1回の加熱を実施する場合と、両面に濃淡画像を印刷して2回の加熱を実施する場合の両方で、安定した立体画像が形成できる。立体画像形成システム1によれば更に、1回目の加熱後に熱膨張性シート7が放置されて大気の水分を吸収した場合でも、放置された時間によって加熱搬送速度を変えることで、安定した立体画像を形成できる。
【0037】
図3は、経過時間とアップ率との関係を示すグラフである。
第1回目の搬送終了時は、このグラフの経過時間ゼロに相当する。このとき、第1回目の加熱搬送によって熱膨張性シート7の水分量が減少しているので、その影響を相殺するためにアップ率は最も高くなる。その後、経過時間に応じて熱膨張性シート7の水分量が増加し、アップ率は次第に減少する。経過時間が極めて大きくなると、熱膨張性シート7は大気中の水分を吸わなくなる。このときのアップ率はRmに収束する。
【0038】
図4は、搬送前の熱膨張性シート7Aを示す断面図である。
図4に示す熱膨張性シート7Aは、基材71と発泡樹脂層72とインク受容層73とが順に積層されている。
基材71は、紙、キャンバス地などの布、プラスチックなどのパネル材などからなり、材質は特に限定されるものではない。
【0039】
発泡樹脂層72には、基材71上に設けられた熱可塑性樹脂であるバインダ内に熱発泡剤(熱膨張性マイクロカプセル)が分散配置されている。これにより、発泡樹脂層72は、吸収した熱量に応じて発泡膨張する。
【0040】
インク受容層73は、発泡樹脂層72の上面全体を覆うように、例えば、10μmの厚さに形成されている。インク受容層73は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザ方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペンや万年筆のインク、鉛筆の黒鉛などを受容して、その表面に定着させるために好適な材料で構成される。
【0041】
熱膨張性シート7Aは更に、表面(インク受容層73側)に電磁波熱変換層74とカラーインク層75a,75bが印刷され、裏面(基材71側)に電磁波熱変換層76が印刷されている。電磁波熱変換層74,76は、例えばカーボンブラックを含むインクで印刷された層であり、可視光や近赤外光(電磁波)を熱に変換する。また、カラーインク層75a,75bは、シアン・マゼンタ・イエローなどのインクで印刷された画像層の一例である。
【0042】
熱膨張性シート7Aは、発泡樹脂層72を加熱により膨張させる前の状態なので、この発泡樹脂層72の厚さは一様である。熱膨張性シート7Aは、
図1に示すように、光照射ユニット4の給紙部50に、電磁波熱変換層74が印刷されたインク受容層73を上に向けてセットされる。そののち熱膨張性シート7Aは、搬送路6で可視光や近赤外光(電磁波)を照射されることで発泡樹脂層72が加熱により膨張し、
図5に示した熱膨張性シート7Bが形成される。
【0043】
図5は、1回目の搬送後の熱膨張性シート7Bを示す断面図である。
電磁波熱変換層74は、第1回目の搬送において、図の上側から光の照射を受けて熱に変換する、この電磁波熱変換層74は、熱膨張性シート7に細かな立体パターンを形成するために設けられている。この電磁波熱変換層74の直下の発泡樹脂層72は、熱を受けて発泡膨張する。インク受容層73、電磁波熱変換層74、カラーインク層75bは、それぞれ伸縮性を有し、発泡樹脂層72の発泡膨張に追従して変形する。このようにして熱膨張性シート7Bが形成される。
【0044】
なお、これらの層間に隙間が生じると、電磁波熱変換層74から発泡樹脂層72への熱伝導量が抑制されるおそれがある。
【0045】
この熱膨張性シート7Bは更に、光照射ユニット4の給紙部50に、電磁波熱変換層76が印刷された基材71を上に向けてセットされたのち、搬送路6で可視光や近赤外光(電磁波)を照射されることで発泡樹脂層72が加熱により膨張し、
図6に示した熱膨張性シート7Cが形成される。熱膨張性シート7Bは、1回目の加熱により、熱膨張性シート7Aよりも用紙の水分量が減少している。この熱膨張性シート7Bの2回目の加熱は、その水分減少を見込んで、加熱における搬送速度を上げている。更に1回目の加熱終了から2回目の加熱までの経過時間により、2回目の加熱における搬送速度を変化させている。
【0046】
図6は、2回目の搬送後の熱膨張性シート7Cを示す断面図である。
電磁波熱変換層76は、第2回目の搬送において、図の下側から光の照射を受けて熱に変換する、この電磁波熱変換層76は、粗い立体パターンを形成するために設けられている。この電磁波熱変換層76の近傍の発泡樹脂層72は、熱を受けて発泡膨張する。インク受容層73、電磁波熱変換層74、カラーインク層75aは、それぞれ伸縮性を有し、発泡樹脂層72の発泡膨張に追従して変形する。このようにして、立体画像を含む熱膨張性シート7Cが形成される。
【0047】
なお、
図4から
図6に示した熱膨張性シート7A〜7Cは、表面側の電磁波熱変換層74と裏面側の電磁波熱変換層76に対して2回の加熱が実施されている。しかし、裏面側の電磁波熱変換層76のみが印刷された熱膨張性シート7に対しても、用紙の水分量の変化を防ぐ手段として2回の加熱は有効である。
【0048】
密閉袋より熱膨張性シート7を取出して濃淡画像からなる電磁波熱変換層76を印刷後、直ぐに加熱発泡させる場合には、標準加熱モードで加熱してもよい。しかし、密閉袋より熱膨張性シート7を取出して放置しておいた場合、環境湿度により熱膨張性シート7の水分量が変化する。その為、熱膨張性シート7の表面に濃淡画像からなる電磁波熱変換層74が印刷されていなくても、表面と裏面に対して2回の加熱を実施することで、熱膨張性シート7を乾燥させて、その水分量を所定範囲とすることができる。よって、両面加熱の際に安定した立体画像を形成することができる。
【0049】
《第2の実施形態》
第2の実施形態の立体画像形成システムは、湿度センサにより大気の湿度を検知して、2回目の搬送速度を変化させるものである。これにより、湿度に関わらず安定した立体画像を形成することができる。この第2の実施形態の詳細について、以下の
図7から
図9により詳細に説明する。
【0050】
図7は、第2の実施形態における立体画像形成システム1Aを示す概略の構成図である。
図1に示した第1の実施形態の立体画像形成システム1と同一の構成には、同一の符号を付与している。
第2の実施形態の立体画像形成システム1Aは、第1の実施形態の光照射ユニット4(
図1参照)とは異なる光照射ユニット4Aを備えている。この光照射ユニット4Aは、第1の実施形態の光照射ユニット4(
図1参照)と同様な構成に加えて、湿度センサ49を備えている。この湿度センサ49は、大気の湿度を計測する湿度計測手段である。光照射制御回路41は、この湿度センサ49に接続されている。それ以外は、第1の実施形態の立体画像形成システム1と同様に構成されている。
【0051】
図8は、加熱搬送処理の一例を示す図である。
図8のステップS10〜S19の処理は、
図2に示したステップS10〜S19の処理と同様である。ステップS20Aにおいて、光照射制御回路41は、現在の湿度と、第1回目の搬送終了からの経過時間に応じてアップ率を判定している。このときの経過時間とアップ率との関係を
図9に示している。
【0052】
光照射制御回路41は、標準速度V1をアップ率で補正した速度V2で搬送しながらランプヒータ44で光照射し、この熱膨張性シート7を加熱する(ステップS21)。これにより、立体画像を構成する粗いパターンが形成される。標準速度V1をアップ率で補正した速度V2で搬送しているので、光照射制御回路41は、1回目の加熱搬送によって熱膨張性シート7の水分量が減少する影響を相殺することができる。光照射制御回路41は更に、大気の湿度と経過時間に応じてアップ率を判定しているので、熱膨張性シート7が、この大気中の湿気を吸収して水分量が増加する影響を相殺することができる。よって、形成された立体画像の高さを安定させることができる。
【0053】
図9は、経過時間とアップ率との関係を示すグラフである。
第1回目の搬送終了時は、このグラフの経過時間ゼロに相当する。このとき、第1回目の加熱搬送によって熱膨張性シート7の水分量が減少しているので、その影響を相殺するためにアップ率は最も高くなる。その後、経過時間に応じて熱膨張性シート7の水分量が増加し、アップ率は次第に減少する。経過時間が極めて大きくなると、熱膨張性シート7は大気中の水分を吸わなくなる。このときのアップ率は、大気の湿度に応じた値に収束する。
【0054】
アップ率R0は、例えば雨天など湿度が高い環境に、極めて長時間に亘ってシートを放置したときのアップ率である。グラフでは、このような環境におけるアップ率の推移を一点鎖線で示している。
アップ率R1は、例えば湿度が標準である環境に、長時間に亘ってシートを放置したときのアップ率である。グラフでは、このような環境におけるアップ率の推移を実線で示している。
アップ率R2は、例えば乾燥した環境に、長時間に亘ってシートを放置したときのアップ率である。グラフでは、このような環境におけるアップ率の推移を破線で示している。
【0055】
《第3の実施形態》
第3の実施形態の立体画像形成システムは、用紙反転機構により2回の搬送を行うものである。これにより、オペレータが用紙を設定する手間は1度でよく、作業が効率化される。この第3の実施形態の詳細について、以下の
図10と
図11により詳細に説明する。
【0056】
図10は、第3の実施形態における立体画像形成システム1Bを示す概略の構成図である。
図1に示した第1の実施形態の立体画像形成システム1と同一の構成には、同一の符号を付与している。
【0057】
第3の実施形態の立体画像形成システム1Bは、第1の実施形態の光照射ユニット4(
図1参照)とは異なる光照射ユニット4Bを備えている。この光照射ユニット4Bは、第1の実施形態の光照射ユニット4(
図1参照)と同様な構成に加えて、用紙反転機構57を備え、更に第1の実施形態とは異なる上ガイド56Bを備えている。この用紙反転機構57は、熱膨張性シート7を反転して戻す機構である。光照射制御回路41は、この用紙反転機構57を制御する。上ガイド56Bは、山形であり、ランプヒータ44の直下において最も搬送路6から離れている。これにより、左右どちらの方向の搬送にも対応可能である。それ以外は、第1の実施形態の立体画像形成システム1と同様に構成されている。
【0058】
図11は、加熱搬送処理の一例を示す図である。
最初、オペレータは、熱膨張性シート7(用紙)を給紙部50にセットし(ステップS30)、タッチパネルディスプレイ2に表示されているスタートボタン(不図示)を押下(タップ)する(ステップS31)。これにより第1回目の搬送が開始する。このときの熱膨張性シート7の断面図は、
図4に示している。
【0059】
光照射制御回路41は、バーコードリーダ45により熱膨張性シート7の表裏を判別する(ステップS32)。光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の裏面が上を向くように設定されているならば、タッチパネルディスプレイ2上にエラーを表示して警告し(ステップS33)、
図11の処理を終了する。
【0060】
光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の表面が上を向くように設定されているならば、標準速度で搬送しながらランプヒータ44で光照射し、この熱膨張性シート7を加熱する(ステップS34)。これにより、表面側の加熱が行われるので熱膨張性シート7は乾燥する。更に熱膨張性シート7に濃淡画像が印刷されていれば、この熱膨張性シート7の表面に濃淡画像に応じた立体画像が形成される。このときの熱膨張性シート7の断面図は、
図5に示している。
【0061】
ステップS34の加熱搬送が終了すると、光照射制御回路41は、用紙反転機構57により熱膨張性シート7の表と裏とを反転したのち(ステップS35)、アップ率を所定値とする(ステップS36)。用紙反転機構57による熱膨張性シート7の表裏反転にかかる時間は一意に決定されるため、アップ率も一意に決定される。用紙反転機構57により熱膨張性シート7を表裏反転しているので、オペレータによるミスを防止することができる。
【0062】
光照射制御回路41は、標準速度をアップ率で補正した速度で逆方向に搬送しながらランプヒータ44で光照射し、この熱膨張性シート7を加熱する(ステップS37)。これにより、立体画像を構成する粗いパターンが形成される。標準速度をアップ率で補正しているので、光照射制御回路41は、1回目の加熱搬送によって熱膨張性シート7の水分量が減少する影響を相殺することができる。
ステップS37の処理が終了すると、
図11の加熱搬送処理が終了する。なお、このときの熱膨張性シート7の断面図を、
図6に示している。
【0063】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 光照射ユニット4の構成は、
図1・
図7・
図10に示した例に限定されない。例えば、ランプヒータ44を搬送路6の下側に設けていてもよい。
【0064】
(b) この立体画像形成システム1の操作は、タッチパネルディスプレイ2による操作に限定されず、ボタン・マウス・トラックボールなど任意の入力装置を介して操作してもよい。
(c) 熱膨張性シート7の表裏判定は、バーコードリーダと鏡による判定に限定されず、任意の判定方式であってもよい。
【0065】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
《請求項1》
熱膨張性シートを搬送させながら、光照射手段により前記熱膨張性シートに光を照射することで前記熱膨張性シートに立体画像を形成する立体画像形成システムであって、
前記光照射手段により一方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、第1の搬送速度で搬送させる第1搬送制御手段と、
前記第1搬送制御手段による搬送の後、前記光照射手段により他方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、前記第1の搬送速度より速い第2の搬送速度で搬送させる第2搬送制御手段と、
を備えることを特徴とする立体画像形成システム。
《請求項2》
前記第2搬送制御手段は、前記第1搬送制御手段による搬送の終了から当該第2搬送制御手段による搬送の開始までの経過時間に応じて前記第2の搬送速度を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体画像形成システム。
《請求項3》
大気の湿度を計測する湿度計測手段を更に備え、
前記第2搬送制御手段は、前記第1搬送制御手段による搬送の終了から当該第2搬送制御手段による搬送の開始までの経過時間、および前記湿度計測手段が計測した湿度に応じて前記第2の搬送速度を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体画像形成システム。
《請求項4》
熱膨張性シートを搬送させながら、光照射手段により前記熱膨張性シートに光を照射することで前記熱膨張性シートに立体画像を形成する際の熱膨張性シート搬送方法であって、
前記光照射手段により一方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、第1の搬送速度で搬送させる第1ステップと、
前記第1ステップによる搬送の後、前記光照射手段により他方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、前記第1の搬送速度より速い第2の搬送速度で搬送させる第2ステップと、
を備えることを特徴とする熱膨張性シート搬送方法。
《請求項5》
熱膨張性シートを搬送させながら、光照射手段により前記熱膨張性シートに光を照射することで前記熱膨張性シートに立体画像を形成する立体画像形成システムであって、
前記光照射手段により一方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、第1の搬送速度で搬送させる第1搬送制御手段と、
前記第1搬送制御手段による搬送の後、前記熱膨張性シートの表裏を反転する反転手段と、
前記反転手段により表裏が反転された前記熱膨張性シートを、前記第1の搬送速度より速い第2の搬送速度で搬送させる第2搬送制御手段と、
を備えることを特徴とする立体画像形成システム。
《請求項6》
熱膨張性シートを搬送させながら、光照射手段により前記熱膨張性シートに光を照射することで前記熱膨張性シートに立体画像を形成する際の熱膨張性シート搬送方法であって、
前記光照射手段により一方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、第1の搬送速度で搬送させる第1ステップと、
前記熱膨張性シートの表裏を反転する反転ステップと、
前記反転ステップにより表裏が反転され、前記光照射手段により他方の面に光を照射するように設定された前記熱膨張性シートを、前記第1の搬送速度より速い第2の搬送速度で搬送させる第2ステップと、
を備えることを特徴とする熱膨張性シート搬送方法。