(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法において、コイル状に巻かれた金属部材は、レベリング加工を行った後においても残留応力(巻きぐせ)が存在する場合がある。このため、残留応力によりヒートシンクが湾曲し、基板との間に隙間が生じる可能性がある。この場合、基板からヒートシンクへの熱の伝導が抑制され、放熱性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れた車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用灯具は、基板と、前記基板に実装された半導体型光源と、前記半導体型光源からの光を出射する光学部材と、金属材料により板状に設けられ、前記基板が接触して固定され前記光学部材が支持される平面状の第1面と、前記第1面の裏面である平面状の第2面とを有し、前記第2面のうち前記基板が前記第1面に接触する領域の裏側の領域を含む領域に所定のパターンで配置された複数の凹部により塑性変形された状態の放熱部材とを備える。
【0007】
また、前記基板は、ネジ部材により前記放熱部材に固定され、前記放熱部材は、前記第1面と前記第2面とを貫通し前記ネジ部材を挿入するネジ穴を有し、前記複数の凹部は、前記ネジ穴の周囲を空けて配置されてもよい。
【0008】
また、前記ネジ部材は、セルフタップネジであってもよい。
【0009】
また、前記放熱部材は、湾曲しようとする残留応力を有した状態で設けられてもよい。
【0010】
また、前記凹部は、多角形形状であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放熱性に優れた車両用灯具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用灯具の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、水平面に平行な面に配置された車両に車両用前照灯が取り付けられた状態における方向であって、運転席から正面を見た場合における方向を示す。したがって、本実施形態では、上下方向は鉛直方向であり、前後方向及び左右方向は水平面に平行な方向(水平方向)となる。
【0015】
図1及び
図2は、本実施形態に係る車両用灯具100の一例を示す斜視図である。
図1では前方から車両用灯具100を見た場合、
図2では後方から車両用灯具100を見た場合の構成を示している。
図3は、本実施形態に係る車両用灯具100の分解斜視図である。
【0016】
図1から
図3に示すように、車両用灯具100は、基板10と、半導体型光源20と、レンズ(光学部材)30と、ヒートシンク(放熱部材)40とを備える。基板10は、半導体型光源20が実装される。基板10は、矩形かつ平板状に形成される。基板10は、半導体型光源20に電気信号を供給する所定の回路や、当該回路に接続するコネクタ等を有する。
【0017】
基板10は、ネジ部材13により、ヒートシンク40に固定される。ネジ部材13は、例えばセルフタップネジである。したがって、ナット等を用いることなく、基板10をヒートシンク40に固定可能となっている。基板10は、グリース又はシート等の熱伝導部材を介してヒートシンク40に接触している。このため、基板10をヒートシンク40に直接接触させる場合に比べて、基板10とヒートシンク40との接触性が向上し、基板10からヒートシンク40への熱伝導性が向上した状態となっている。
【0018】
半導体型光源20は、本実施形態において、例えばLEDやOEL、OLED(有機EL)などの半導体型光源である。半導体型光源20は、例えば複数設けられているが、1つであってもよい。複数の半導体型光源20は、左右方向に例えば等ピッチで配置されているが、これに限定するものではなく、等ピッチでなくてもよい。半導体型光源20は、発光面を有している。発光面は、例えば車両の前方に向けられている。半導体型光源20は、発光面から車両の前方に向けてランバーシアン分布を形成するように光を出射する。
【0019】
レンズ30は、半導体型光源20に対して前方に配置される。レンズ30は、入射面及び出射面を有する。入射面は、半導体型光源20の発光面に対向して配置される。入射面は、半導体型光源20からの光が直接入射される。出射面は、前方に向けられる。出射面は、入射面から入射した光を車両の前方に出射する。レンズ30は、レンズホルダ35に支持される。レンズホルダ35は、ネジ等の固定部材36により、レンズ30を支持した状態でヒートシンク40に固定される。
【0020】
ヒートシンク40は、例えばアルミニウム等の金属材料を用いて形成される。ヒートシンク40は、例えばコイル状に巻かれた金属部材を引き出してプレス加工等を行うことにより、矩形の平板状に形成される。ヒートシンク40は、第1面40aが前方に向けて配置され、第2面40bが後方に向けて配置される。
【0021】
ヒートシンク40は、基板固定部41及びレンズ支持部42を有する。基板固定部41は、例えばヒートシンク40のうち水平方向の中央部に配置される。基板固定部41は、第1面40aに基板10が接触した状態で固定される。このため、基板固定部41の第1面40aには、基板10が接触する接触領域47が設けられる。接触領域47は、基板固定部41のうち鉛直方向及び水平方向の中央部に配置される。
【0022】
基板固定部41は、ネジ穴43を有する。ネジ穴43は、基板固定部41のうち第1面40aと第2面40bとを貫通して設けられる。ネジ穴43は、基板10を固定するネジ部材13を挿入する。ネジ穴43は、水平方向の両端に1箇所ずつ、合計で2箇所設けられる。ネジ穴43の数及び配置については、上記に限定するものではない。例えばネジ穴43の数が1箇所又は3箇所以上であってもよいし、ネジ穴43が上記とは異なる位置に配置されてもよい。
【0023】
また、レンズ支持部42は、レンズホルダ35が固定される。レンズ支持部42は、レンズホルダ35が固定されることにより、レンズ30を支持する。レンズ支持部42は、水平方向について基板固定部41の両側に配置される。なお、本実施形態では、ヒートシンク40は、レンズ支持部42から基板固定部41にかけて前方に屈曲した状態に設けられるが、これに限定するものではなく、例えばヒートシンク40が平板状であってもよい。
【0024】
図4は、ヒートシンク40を後方から見た場合の構成を示す図である。
図4に示すように、基板固定部41は、表面加工領域44を有する。表面加工領域44は、第2面40bのうち、例えば接触領域47の裏側の領域を含んで設けられる。つまり、本実施形態では、表面加工領域44は、接触領域47の裏側の領域よりも広い範囲に設けられる。なお、接触領域47の裏側の領域とは、第2面40bの法線方向から見て接触領域47に重なる領域である。表面加工領域44は、接触領域47の裏側の領域に一致する範囲に設けられてもよい。表面加工領域44は、複数の凹部45を有する。
【0025】
図5は、
図4における領域Aを拡大して示す斜視図であり、凹部45の一例を示している。
図5に示すように、複数の凹部45は、例えば正四角錐状に形成される。各凹部45の一辺の長さL1は、例えばヒートシンク40の板厚D(
図6参照)の半分以下とすることができる。
【0026】
複数の凹部45は、表面加工領域44の鉛直方向及び水平方向に所定のピッチP1で配置されている。ピッチP1は、例えばヒートシンク40の板厚D(
図6参照)の2倍以下とすることができる。なお、鉛直方向のピッチと、水平方向のピッチとが異なってもよい。複数の凹部45は、表面加工領域44の全体に亘って均一に配置されている。
【0027】
ヒートシンク40は、第2面40bの表面加工領域44に複数の凹部45が設けられることにより塑性変形された状態となっている。このため、ヒートシンク40は、第1面40aのうち当該表面加工領域44の裏側の領域において、平面度が向上した状態となっている。なお、平面度とは、平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさをいうものである(日本工業規格)。平面度は、平面形体を幾何学的平行二平面で挟んだとき、平行二平面の間隔が最小となる場合の、二平面の間隔で表される(日本工業規格)。
【0028】
本実施形態において、表面加工領域44は接触領域47よりも広い範囲に設けられる。このため、接触領域47は、全体に亘って平面度が向上した状態となる。したがって、基板10と接触領域47との間は、互いに面接触した場合に、隙間等が形成されにくくなっている。
【0029】
また、ヒートシンク40は、第2面40bに設けられた複数の凹部45により、表面積が大きくなっている。このため、複数の凹部45が設けられた表面加工領域44においては、放熱性が高められた状態となっている。
【0030】
図6は、
図4におけるB−B断面に沿った構成を示す断面図である。
図6に示すように、複数の凹部45は、ヒートシンク40の第2面40bに対して所定の深さD1を有する。複数の凹部45は、ヒートシンク40の第2面40bからの深さD1が、ヒートシンク40の厚さDの25%以下となっている。
【0031】
複数の凹部45は、深さD1が厚さDの25%以下であるため、ヒートシンク40の強度に影響を及ぼすことなく、第1面40aの平面度を向上させることができる。
【0032】
上記のヒートシンク40を製造する場合、まず、コイル状に巻かれた金属部材を引き出し、レベリング加工により巻きぐせを矯正する。レベリング加工の後、金属部材にプレス加工を行う。プレス加工では、基板固定部41とレンズ支持部42との間を屈曲させると共に、基板固定部41の表面加工領域44に複数の凹部45を形成する。複数の凹部45を形成することにより、金属部材が塑性変形し、第1面40aに相当する面の平面度が向上する。このため、例えばレベリング加工の後、金属部材に残留応力が存在する場合であっても、第1面40aの平面度を向上することができる。
【0033】
その後、パンチ加工により、金属部材にネジ穴43及びネジ穴46を形成する。ネジ穴43及びネジ穴46を形成した後、切断加工により金属部材を所期の形状に切断することで、ヒートシンク40が完成する。なお、加工手順については上記の手順に限定するものではなく、例えばレベリング加工の後、金属部材を切断してからプレス加工及びパンチ加工を行ってもよい。
【0034】
次に、上記のように構成された車両用灯具100の動作を説明する。車両用灯具100は、半導体型光源20の発光面から光を出射する。この光は、レンズ30の入射面に直接入射し、出射面から車両の前方に出射される。半導体型光源20は、光を出射することにより発熱する。この熱は、基板10を介してヒートシンク40に伝導する。
【0035】
本実施形態では、基板10と接触領域47との密着性が高められた状態である。このため、基板10からヒートシンク40へ熱の伝導がよりスムーズに行われる。したがって、半導体型光源20で生じた熱は、基板10からヒートシンク40に確実に伝導し、ヒートシンク40から放熱される。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る車両用灯具100は、基板10と、基板10に実装された半導体型光源20と、半導体型光源20からの光を出射するレンズ30と、金属材料により板状に設けられ、基板10が接触して固定されレンズ30が支持される平面状の第1面40aと、第1面40aの裏面である平面状の第2面40bとを有し、第2面40bのうち接触領域47の裏側の領域を含む表面加工領域44に所定のパターンで配置された複数の凹部45により塑性変形された状態のヒートシンク40とを備える。
【0037】
このため、ヒートシンク40は、第1面40aのうち当該表面加工領域44の裏側の領域において、平面度が向上した状態となる。したがって、基板10と第1面40aとの間の密着性が向上するため、基板10からヒートシンク40への熱伝導性が高められる。また、第2面40bに設けられた複数の凹部45により、ヒートシンク40の表面積が大きくなるため、放熱性が向上する。これにより、放熱性に優れた車両用灯具100が得られる。
【0038】
また、本実施形態に係る車両用灯具100は、基板10がネジ部材13によりヒートシンク40に固定され、ヒートシンク40が第1面40aと第2面40bとを貫通しネジ部材13を挿入するネジ穴43を有し、複数の凹部45は、ネジ穴43の周囲を空けて配置される。これにより、ネジ穴43が変形することが抑制されるため、ネジ部材13を確実にネジ穴43に挿入し、基板10を確実に固定することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る車両用灯具100は、ネジ部材13がセルフタップネジである。これにより、第2面40b側にナット等を配置することなく基板10をヒートシンク40に固定することができる。第2面40b側にナット等が配置された場合、複数の凹部45はナットが配置される領域を空けて設けられることになる。したがって、ナット等が配置されないことにより、複数の凹部45を第2面40bの広い範囲に形成することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る車両用灯具100は、ヒートシンク40が湾曲しようとする残留応力を有した状態で設けられる場合であっても、複数の凹部45により塑性変形された状態であるため、第1面40aのうち表面加工領域44の裏側の領域においての平面度を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る車両用灯具100は、表面加工領域44が接触領域47の裏側の領域よりも広い範囲に設けられるため、基板10からヒートシンク40に伝導された熱が第2面40b側から放出されやすくなる。これにより、放熱性に優れた車両用灯具100が得られる。
【0042】
また、本実施形態に係る車両用灯具100は、複数の凹部45の形状が多角形形状であるため、ヒートシンク40を塑性変形しやすくすることができる。これにより、放熱性に優れた車両用灯具100を容易に製造することができる。
【0043】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、複数の凹部45の形状が、正四角錐状である場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、他の多角形形状であってもよい。なお、複数の凹部45は、多角形形状に限定するものではなく、半円形、円錐形等、または他の形状であってもよい。
【0044】
図7は、変形例に係る凹部45Aを示す斜視図である。
図7に示すように、複数の凹部45Aの形状は、正四面体状であってもよい。この場合、各凹部45Aの一辺の長さL2は、例えばヒートシンク40の板厚D(
図6参照)の半分以下とすることができる。
【0045】
また、複数の凹部45Aは、鉛直方向及び水平方向に所定のピッチP2で配置される。ピッチP2は、例えばヒートシンク40の板厚D(
図6参照)の2倍以下とすることができる。この場合、鉛直方向のピッチと水平方向のピッチとが異なってもよい。複数の凹部45Aは、表面加工領域44Aの全体に亘って均一に配置される。これにより、第1面40aにおいて表面加工領域44Aに対応する領域の平面度が全体が均一に調整される。
【0046】
また、上記実施形態では、車両用灯具100として、光学部材としてレンズ30が設けられ、半導体型光源20からの光がレンズ30に直接入射される直射型の構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、車両用灯具100は、光学部材として、レンズ30に代えて、又はレンズ30と共に、リフレクタを有し、リフレクタの反射面により半導体型光源20からの光を前方に反射することで配光パターンを形成する構成(マルチリフレクタ型、プロジェクタ型等)であってもよい。