(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
はじめに、
図1〜3を参照しながら、本発明における作業車両の一例である本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作について具体的に説明する。
【0022】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の農業用トラクターの模式的な左側面図であり、
図2および3は本発明における実施の形態の農業用トラクターの運転ユニット20の部分斜視図(その一および二)である。
【0023】
車体10の前部のボンネットの内部には、エンジン30が設けられている。
【0024】
エンジン30の回転動力は、運転ユニット20のフロア22の下方に設けられているトランスミッションケースの内部の各種クラッチを介して伝えられる。そして、変速装置で変速された回転動力は、左前輪40Lおよび右前輪40R、ならびに左後輪50Lおよび右後輪50Rに伝えられる。
【0025】
運転ユニット20には、耕耘作業機昇降スイッチ610、主変速スイッチ620、定回転スイッチ630、差動ロックスイッチ640、およびPTO(Power Take Off)スイッチ650とともに、耕耘作業機昇降レバー410、副変速レバー付属主変速スイッチ461を有する副変速レバー460、およびアクセルレバー470が設けられている。
【0026】
エンジン30の後方には、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420、ハンドルチルトレバー430、パーキングレバー440、およびPTO変速レバー450とともに、操舵ハンドル23が設けられている。
【0027】
操舵ハンドル23の後方には、運転席21が設けられている。
【0028】
ホースカバーは、操舵ハンドル23に接続されているホースを覆っている。
【0029】
操作コラムカバーの左側のフロア22には、ブレーキペダル連結解除ペダル520、およびクラッチペダル540が配置されている。
【0030】
操作コラムカバーの右側のフロア22には、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510R、ならびにアクセルペダル530が配置されている。
【0031】
車体10の後部には、ロータリ耕耘作業機などの耕耘作業機11が、たとえば、3点リンク機構を利用して装着される。
【0032】
耕耘作業機昇降機構60は、メインシリンダー61、リフトアーム62、トップリンク63およびロワーリンク64、ならびに回動カバー65aおよびサイドカバー65bを有する。
【0033】
トップリンク63およびロワーリンク64の前端部は車体10の側に接続されており、トップリンク63およびロワーリンク64の後端部は耕耘作業機11の側に接続されている。そして、メインシリンダー61により回動されるリフトアーム62の後端部は、ロワーリンク64に接続されている。
【0034】
耕耘深さセンサー310は回動カバー65aの回動角度を検出するセンサーであり、リフトアームセンサー331はリフトアーム62の回動角度を検出するセンサーである。
【0035】
つぎに、
図4および5を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作についてより具体的に説明する。
【0036】
ここに、
図4は本発明における実施の形態の農業用トラクターの模式的な上面図であり、
図5は本発明における実施の形態の農業用トラクターのブロック図である。
【0037】
エンジン30の回転動力は、前後進クラッチ121、主変速部111、副変速部112、および後輪差動ギア51を介して、左後輪50Lおよび右後輪50Rに伝えられる。4WD(4−Wheel Drive)駆動が行われる場合には、エンジン30の回転動力は、前後進クラッチ121、主変速部111、副変速部112、4WDクラッチ122、および前輪差動ギア41を介して、左前輪40Lおよび右前輪40Rにも伝えられる。
【0038】
左ブレーキ装置130Lは、左ブレーキシリンダー131Lの状態に応じて左後輪50Lの制動を行う装置である。左ブレーキシリンダー131Lの状態は、左ブレーキペダル510Lおよび走行制御部230からの指示により変化させられる。走行制御部230からの指示は、左ブレーキソレノイドバルブ133L、リリーフバルブ134、およびポンプ135を利用して行われる。
【0039】
右ブレーキ装置130Rは、右ブレーキシリンダー131Rの状態に応じて右後輪50Rの制動を行う装置である。右ブレーキシリンダー131Rの状態は、右ブレーキペダル510Rおよび走行制御部230からの指示により変化させられる。走行制御部230からの指示は、右ブレーキソレノイドバルブ133R、リリーフバルブ134、およびポンプ135を利用して行われる。
【0040】
左前輪40Lおよび右前輪40Rのステアリングは、操舵シリンダー140の状態に応じて行われる。操舵シリンダー140の状態は、操舵ハンドル23からの指示により変化させられる。
【0041】
コントローラー200は、協働して動作する、耕耘作業機昇降制御部210、エンジン制御部220および走行制御部230を有する。
【0042】
エンジン回転センサー341およびレール圧センサー342の検出値は、エンジン制御部220へ入力される。そして、エンジン制御部220は、燃料高圧ポンプ31、および四つの高圧インジェクターを有する高圧インジェクター部32の制御を、入力された検出値に基づいて行う。
【0043】
耕耘作業機昇降センサー332、リフトアームセンサー331および耕耘深さセンサー310の検出値は、耕耘作業機昇降制御部210へ入力される。そして、耕耘作業機昇降制御部210は、メインシリンダー61のメイン上昇ソレノイドバルブ66およびメイン下降ソレノイドバルブ67の制御を、入力された検出値に基づいて行う。
【0044】
ブレーキペダル踏込みセンサー390、ブレーキペダル連結ロック解除センサー321、ブレーキペダル連結センサー320、操舵角度センサー350、前進センサー361、後進センサー362、主変速スイッチ620、副変速センサー370、耕耘作業機昇降スイッチ610およびアクセルセンサー380の検出値は、走行制御部230へ入力される。そして、走行制御部230は、前後進クラッチ121、主変速部111、右ブレーキシリンダー131Rの右ブレーキソレノイドバルブ133Rおよび左ブレーキシリンダー131Lの左ブレーキソレノイドバルブ133Lの制御を、入力された検出値に基づいて行う。
【0045】
つぎに、
図6〜8を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510R、ならびにブレーキペダル連結解除ペダル520に関する構成および動作について具体的に説明する。
【0046】
ここに、
図6は本発明における実施の形態の農業用トラクターの左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510R近傍の部分斜視図であり、
図7は本発明における実施の形態の農業用トラクターのブレーキペダル連結解除機構700およびブレーキペダル連結ロック解除機構800近傍の模式的な部分左側面図であり、
図8(a)および(b)は本発明における実施の形態の農業用トラクターのブレーキペダル連結解除ペダル520近傍の模式的な部分左側面図(その一および二)である。
【0047】
図6においては、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rのブレーキペダル連結がブレーキペダル連結具710により実行されている状態が示されている。
【0048】
図7においては、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられてブレーキペダル連結ロックが解除されるとともに、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれてブレーキペダル連結が解除された状態が二点鎖線で示されている。
【0049】
図8(a)においては、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれていない状態が示されている。
図8(b)においては、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれた状態が示されているが、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれていない状態も二点鎖線で示されている。そして、
図8(b)においては、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられたときのロックプレート820の移動方向が矢印Xで示されており、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれたときのブレーキペダル連結解除ペダル520およびロックプレート当接部750の移動方向が矢印Y1およびY2でそれぞれ示されている。
【0050】
左ブレーキシリンダー131Lの状態がスプリング付勢されている左ブレーキペダル510Lの左ブレーキロッド132Lを介した左ブレーキペダル510Lからの指示により変化させられると、左後輪50Lの制動が行われる。
【0051】
右ブレーキシリンダー131Rの状態がスプリング付勢されている右ブレーキペダル510Rの右ブレーキロッド132Rを介した右ブレーキペダル510Rからの指示により変化させられると、右後輪50Rの制動が行われる。
【0052】
ブレーキペダル連結具710は、スプリング711によりスプリング付勢されて左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rを係留する閂形状の連結具である。
【0053】
ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれていない、直進動作などが行われる通常の場合においては、ブレーキペダル連結具710は左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rを係留している。したがって、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rの内の少なくとも一方が踏込まれると、左後輪50Lおよび右後輪50Rの両方の制動が行われる。
【0054】
ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれている、作業時旋回動作などが行われる場合においては、ブレーキペダル連結具710は左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rを係留していない。したがって、左ブレーキペダル510Lが踏込まれると、左後輪50Lの制動が行われ、右ブレーキペダル510Rが踏込まれると、右後輪50Rの制動が行われる。
【0055】
ワイヤー720は、上端部がブレーキペダル連結具710に接続されており、下端部がブレーキペダル連結解除ペダル520のペダルアーム521に接続されているワイヤーである。
【0056】
ブレーキペダル連結解除ペダル520は、ペダルアーム521の基端部に設けられたブレーキペダル連結解除ペダル回動軸730の回りに回動し、前述の如くスプリング付勢されるブレーキペダル連結具710を利用したブレーキペダル連結を解除するペダルである。
【0057】
しかしながら、下方へスプリング付勢されているブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられていない場合には、ブレーキペダル連結解除ペダル520は回動することができず、ブレーキペダル連結ロックが実行される。
【0058】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0059】
すなわち、ロッド810は、上端部がブレーキペダル連結ロック解除レバー420に接続されており、下端部がロックプレート820に接続されているロッドである。
【0060】
ロックプレート820は、ロックプレート回動軸830の回りに回動するプレートである。
【0061】
ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられていない場合には、ブレーキペダル連結ロック解除センサー321のアクチュエーター321bはブレーキペダル連結ロック解除センサー321の感知部321aから乖離しているので、ブレーキペダル連結ロックの解除が検出されない。そして、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれようとしても、ブレーキペダル連結解除ペダル回動軸730のロックプレート当接部750はロックプレート820に接触しており、ブレーキペダル連結解除ペダル520は回動することができないので、ブレーキペダル連結解除ペダル回動軸730のアクチュエーター当接部740はブレーキペダル連結センサー320のアクチュエーター320bに接触しており、ブレーキペダル連結センサー320のアクチュエーター320bはブレーキペダル連結センサー320の感知部320aに接触しており、ブレーキペダル連結の解除が検出されない。
【0062】
ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられている場合には、ロックプレート回動軸830のアクチュエーター当接部840はブレーキペダル連結ロック解除センサー321のアクチュエーター321bに接触しており、ブレーキペダル連結ロック解除センサー321のアクチュエーター321bはブレーキペダル連結ロック解除センサー321の感知部321aに接触しているので、ブレーキペダル連結ロックの解除が検出される。そして、ブレーキペダル連結解除ペダル520が踏込まれると、ブレーキペダル連結解除ペダル回動軸730のロックプレート当接部750はロックプレート820から乖離しており、ブレーキペダル連結解除ペダル520は回動することができるので、ブレーキペダル連結センサー320のアクチュエーター320bはブレーキペダル連結センサー320の感知部320aから乖離し、ブレーキペダル連結の解除が検出される。
【0063】
つぎに、
図9を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの前後進レバー480に関する構成および動作について具体的に説明する。
【0064】
ここに、
図9(a)から(c)は、本発明における実施の形態の農業用トラクターの前後進レバー480近傍の模式的な部分平面図(その一から三)である。
【0065】
図9(a)においては、前後進レバー480のレバー位置が前進位置である状態が示されている。
図9(b)においては、前後進レバー480のレバー位置が中立位置である状態が示されている。
図9(c)においては、前後進レバー480のレバー位置が後進位置である状態が示されている。
【0066】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0067】
すなわち、前後進レバー480は、下端部が前後進カム480aに接続されているレバーである。
【0068】
前後進カム480aは、前後進レバー480のレバー位置に応じて回動するカムである。
【0069】
前後進レバー480のレバー位置が前進位置である場合には、前後進カム480aが強く当接している前進センサー361のアクチュエーター361bは前進センサー361の感知部361aに接触しており、後進センサー362のアクチュエーター362bは後進センサー362の感知部362aから乖離しているので、前進状態が検出される。
【0070】
前後進レバー480のレバー位置が中立位置である場合には、前進センサー361のアクチュエーター361bは前進センサー361の感知部361aから乖離しており、後進センサー362のアクチュエーター362bは後進センサー362の感知部362aから乖離しているので、中立状態が検出される。
【0071】
前後進レバー480のレバー位置が後進位置である場合には、前進センサー361のアクチュエーター361bは前進センサー361の感知部361aから乖離しており、前後進カム480aが強く当接している後進センサー362のアクチュエーター362bは後進センサー362の感知部362aに接触しているので、後進状態が検出される。
【0072】
つぎに、本実施の形態の農業用トラクターのコントローラー200に関する構成および動作について具体的に説明する。
【0073】
以下では、コントローラー200が行うさまざまな制御について順番に説明する。
【0074】
(A)はじめに、耕耘作業機11を車体10に対して昇降させる耕耘作業機昇降制御について説明する。
【0075】
耕耘深さセンサー310は、車体10へ装着された耕耘作業機11の耕耘深さを検出するセンサーである。ブレーキペダル連結解除機構700は、左ブレーキペダル510Lと、右ブレーキペダル510Rと、のブレーキペダル連結を解除する機構である。ブレーキペダル連結センサー320は、ブレーキペダル連結の状態を検出するセンサーである。
【0076】
コントローラー200は、耕耘作業機11を車体10に対して昇降させる耕耘作業機昇降制御を、耕耘深さセンサー310の検出値に基づいて行う。
【0077】
耕耘作業機昇降レバー410は、耕耘作業機を車体10に対して昇降させるユーザー指示を、コントローラー200に行うレバーである。耕耘作業機昇降レバー410は、本発明における耕耘作業機昇降部材の一例である。ユーザーは、耕耘作業機昇降レバー410の操作で昇降後の耕耘作業機11の高さを指示することにより、耕耘作業機11を車体10に対して昇降させることができる。
【0078】
なお、耕耘作業機昇降スイッチ610も、本発明における耕耘作業機昇降部材の一例である。ユーザーは、耕耘作業機昇降スイッチ610の操作で耕耘作業機11の上昇を指示すると、耕耘作業機11を最上げ位置まで上昇させることができ、下降を指示すると、耕耘作業機昇降レバー410で操作されている高さまで耕耘作業機11を下降させることができる。
【0079】
前述の如き構成要素が関連する、耕耘作業における圃場端でのUターンについて具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0080】
すなわち、耕耘作業においては、耕耘深さを設定値に保つための耕耘作業機昇降制御がコントローラー200により自動的に行われる農業用トラクターが圃場端でのUターンを繰返しながら圃場を往復する。
【0081】
このようなUターンは、比較的に小さい旋回半径で行われるので、旋回内側にある、左後輪50Lおよび右後輪50Rの内の一方の制動を利用して行われる。
【0082】
そこで、ユーザーは、圃場内での作業中はブレーキペダル連結ロック解除レバー420を持上げてブレーキペダル連結ロックを解除し、農業用トラクターが圃場端に接近すると、ブレーキペダル連結解除ペダル520を踏込んでブレーキペダル連結を解除する。
【0083】
そして、ユーザーは、旋回内側にある、左後輪50Lおよび右後輪50Rの内の一方の制動を利用するために、左ブレーキペダル510Lまたは右ブレーキペダル510Rを踏込みながら、すばやく操舵ハンドル23を切る。
【0084】
操舵角度が旋回角度に固定されると、農業用トラクターの作業時旋回動作が始まり、耕耘作業機11が自動的に上昇させられる。
【0085】
そして、ユーザーは、農業用トラクターの作業時旋回動作が終わると、すばやく操舵ハンドル23を切り、操舵角度が直進角度に固定される。
【0086】
もちろん、作業時旋回動作が終わった時点においては、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420は持上げられておらず、ブレーキペダル連結解除ペダル520は踏込まれておらず、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rも踏込まれていない。
【0087】
そして、自動的に上昇させられた耕耘作業機11は手動で下降させられ、つぎの圃場端に向かう農業用トラクターの直進動作が始まる。
【0088】
ところで、本発明者は、このようなUターン開始の直前での車速が不安定になりやすいことに気付いた。
【0089】
特に、本発明者は、耕耘深さを設定値に保つための耕耘作業機昇降制御が圃場端での土質変化などに影響されて適切に行われず、耕耘作業機11が過度に昇降させられて車速が過度に増減した場合、および作業負荷の増加に起因するエンジン30の回転数減少などを吸収するための自動変速制御が耕耘作業機昇降制御とともに行われる場合においては、車速が前述の如く不安定になりやすいと考えている。
【0090】
ユーザーは適切なタイミングで操舵ハンドル23を切る必要があるので、作業時旋回動作に関する操作フィーリングが不安定な車速に起因して悪化することは望ましくない。
【0091】
そこで、本発明者は、作業時旋回動作開始の直前での過度に敏感な耕耘作業機昇降制御を抑制することが重要であると考えている。
【0092】
本実施の形態においては、このようなコントローラー200の耕耘作業機昇降制御はブレーキペダル連結の状態を考慮して行われ、つぎに説明する第一および第二の耕耘作業機昇降制御モードが選択可能に実装されている。
【0093】
なお、第一および第二の耕耘作業機昇降制御モードの内の何れか一方のみが実装されている変形例の実施の形態も、可能である。
【0094】
(A1)第一の耕耘作業機昇降制御モードは、つぎの通りのモードである。
【0095】
すなわち、耕耘作業機昇降制御は、耕耘深さセンサー310の検出値が不感帯にある場合には耕耘作業機11を昇降させない制御である。そして、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機昇降制御における不感帯の幅は増加させられる。
【0096】
本実施の形態においては、たとえば、耕耘深さの設定値が5センチメートルである場合については、4センチメートルであった不感帯下限値は3センチメートルとされ、6センチメートルであった不感帯上限値は7センチメートルとされる。
【0097】
なお、たとえば、耕耘深さの設定値が5センチメートルである場合については、4センチメートルであった不感帯下限値は3センチメートルとされるが、6センチメートルであった不感帯上限値はそのまま6センチメートルとされる変形例の実施の形態も、可能である。このような変形例の実施の形態においては、不感帯下限値は減少させられるので、耕耘深さが減少しても、耕耘作業機11が下降させられる耕耘作業機昇降制御は抑制され、作業負荷は増加しにくく、エンジン30の回転数減少などを吸収するための自動変速制御が耕耘作業機昇降制御とともに行われる場合においても、一旦減少した車速が増加するような現象はほとんど発生しない。
【0098】
作業時旋回動作に先立つブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機昇降制御における不感帯の幅は増加させられるので、作業時旋回動作開始の直前での過度に敏感な耕耘作業機昇降制御を抑制することにより作業時旋回動作開始の直前での車速をより安定にすることができる。そして、自動変速制御が耕耘作業機昇降制御とともに行われる場合においても、作業時旋回動作開始の直前での車速が不安定になりにくい。
【0099】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機昇降制御における不感帯の幅は瞬時に増加させられる。
【0100】
なお、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機昇降制御における不感帯の幅は徐々に増加させられる変形例の実施の形態も、可能である。このような変形例の実施の形態においては、耕耘作業機昇降制御における不感帯の幅は徐々に増加させられるので、作業時旋回動作開始の直前での急激な耕耘作業機昇降制御を抑制することができる。そして、何らかの不適切なユーザー指示が行われた場合においても、耕耘作業機11が急激に昇降させられる耕耘作業機昇降制御は抑制され、作業時旋回動作開始の直前での車速の急峻な変化、および圃場端での地表面の凸凹の発生が招来されるような現象はほとんど発生しない。
【0101】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結の解除が、ブレーキペダル連結センサー320により検出された後、検出されなくなった場合には、増加させられた不感帯の幅は徐々に元に戻される。
【0102】
増加させられた不感帯の幅は徐々に元に戻されるので、作業時旋回動作終了の前後での急激な耕耘作業機昇降制御を抑制することができる。そして、何らかの不適切なユーザー指示が行われた場合においても、耕耘作業機11が急激に昇降させられる耕耘作業機昇降制御は抑制され、作業時旋回動作終了の前後での車速の急峻な変化、および圃場端での地表面の凸凹の発生が招来されるような現象はほとんど発生しない。
【0103】
なお、ブレーキペダル連結の解除が、ブレーキペダル連結センサー320により検出された後、検出されなくなった場合には、増加させられた不感帯の幅は瞬時に元に戻される変形例の実施の形態も、可能である。
【0104】
ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサーにより検出されているときに、耕耘作業機11を車体10に対して昇降させるユーザー指示が耕耘作業機昇降レバー410または耕耘作業機昇降スイッチ610により行われた場合には、増加させられた不感帯の幅は元に戻される。
【0105】
ブレーキペダル連結の実行が作業時旋回動作終了に比べて遅延した場合においても、作業時旋回動作終了の直後での、耕耘深さを保つ適切な耕耘作業機昇降制御を行うことができる。
【0106】
このような増加させられた不感帯の幅は、瞬時に元に戻されてもよいし、徐々に元に戻されてもよい。
【0107】
(A2)第二の耕耘作業機昇降制御モードは、つぎの通りのモードである。
【0108】
すなわち、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機昇降制御における耕耘作業機11の昇降制御量は減少させられる。
【0109】
本実施の形態においては、たとえば、下向きに毎秒3センチメートルであった制御ゲイン対応下降速度は制御ゲイン減少により下向きに毎秒2センチメートルとされ、上向きに毎秒3センチメートルであった制御ゲイン対応上昇速度は制御ゲイン減少により上向きに毎秒2センチメートルとされる。
【0110】
なお、たとえば、下向きに毎秒3センチメートルであった制御ゲイン対応下降速度は制御ゲイン減少により下向きに毎秒2センチメートルとされるが、上向きに毎秒3センチメートルであった制御ゲイン対応上昇速度はそのまま上向きに毎秒3センチメートルとされる変形例の実施の形態も、可能である。このような変形例の実施の形態においては、制御ゲイン対応下降速度は減少させられるので、耕耘深さが減少しても、耕耘作業機11が下降させられる耕耘作業機昇降制御は抑制され、作業負荷は増加しにくく、エンジン30の回転数減少などを吸収するための自動変速制御が耕耘作業機昇降制御とともに行われる場合においても、一旦減少した車速が増加するような現象はほとんど発生しない。
【0111】
作業時旋回動作に先立つブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機昇降制御における耕耘作業機11の昇降制御量は減少させられるので、作業時旋回動作開始の直前での過度に敏感な耕耘作業機昇降制御を抑制することにより作業時旋回動作開始の直前での車速をより安定にすることができる。そして、自動変速制御が耕耘作業機昇降制御とともに行われる場合においても、作業時旋回動作開始の直前での車速が不安定になりにくい。
【0112】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機11の昇降制御量は徐々に減少させられる。
【0113】
耕耘作業機11の昇降制御量は徐々に減少させられるので、作業時旋回動作開始の直前での急激な耕耘作業機昇降制御を抑制することができる。そして、何らかの不適切なユーザー指示が行われた場合においても、耕耘作業機11が急激に昇降させられる耕耘作業機昇降制御は抑制され、作業時旋回動作開始の直前での車速の急峻な変化、および圃場端での地表面の凸凹の発生が招来されるような現象はほとんど発生しない。
【0114】
なお、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、耕耘作業機11の昇降制御量は瞬時に減少させられる変形例の実施の形態も、可能である。
【0115】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結の解除が、ブレーキペダル連結センサー320により検出された後、検出されなくなった場合には、減少させられた耕耘作業機11の昇降制御量は徐々に元に戻される。
【0116】
減少させられた耕耘作業機11の昇降制御量は徐々に元に戻されるので、作業時旋回動作終了の前後での急激な耕耘作業機昇降制御を抑制することができる。そして、何らかの不適切なユーザー指示が行われた場合においても、耕耘作業機11が急激に昇降させられる耕耘作業機昇降制御は抑制され、作業時旋回動作終了の前後での車速の急峻な変化、および圃場端での地表面の凸凹の発生が招来されるような現象はほとんど発生しない。
【0117】
なお、ブレーキペダル連結の解除が、ブレーキペダル連結センサー320により検出された後、検出されなくなった場合には、減少させられた耕耘作業機11の昇降制御量は瞬時に元に戻される変形例の実施の形態も、可能である。
【0118】
ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサーにより検出されているときに、耕耘作業機11を車体10に対して昇降させるユーザー指示が耕耘作業機昇降レバー410または耕耘作業機昇降スイッチ610により行われた場合には、減少させられた耕耘作業機の昇降制御量は元に戻される。
【0119】
ブレーキペダル連結の実行が作業時旋回動作終了に比べて遅延した場合においても、作業時旋回動作終了の直後での、耕耘深さを保つ適切な耕耘作業機昇降制御を行うことができる。
【0120】
このような減少させられた耕耘作業機の昇降制御量は、瞬時に元に戻されてもよいし、徐々に元に戻されてもよい。
【0121】
(B)つぎに、作業負荷の増加に起因するエンジン30の回転数減少などを吸収するための自動変速制御について説明する。
【0122】
自動変速制御は、前述の如く耕耘作業機昇降制御とともに行われてもよく、主変速制御などを利用して燃費効率を向上させるためのエコフレンドリーな制御である。
【0123】
しかしながら、ユーザーは適切なタイミングで操舵ハンドル23を切る必要があるので、作業時旋回動作に関する操作フィーリングが不安定な車速に起因して悪化することは望ましくない。
【0124】
そこで、本実施の形態においては、自動変速制御はブレーキペダル連結の状態を考慮して行われる。
【0125】
すなわち、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、自動変速制御における車速の増加は行われない。
【0126】
なお、ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出された場合には、アクセスメモリ変速制御における車速の増加は行われない変形例の実施の形態も、可能である。
【0127】
(C)つぎに、旋回内側にある、左後輪50Lおよび右後輪50Rの内の一方の自動的な制動を行うための旋回オートブレーキ制御について説明する。
【0128】
旋回オートブレーキ制御は、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rの何れの踏込み操作もなく、旋回内側にある、左後輪50Lおよび右後輪50Rの内の一方の自動的な制動を利用してUターンなどを行うためのユーザーフレンドリーな制御である。
【0129】
しかしながら、農業用トラクターに不慣れなユーザーはしばしば旋回オートブレーキ制御をよく理解していないので、ユーザーが操舵ハンドル23を切っただけで自動的な制動が行われることは必ずしも望ましくない。
【0130】
特に、後進時においては、もしもユーザーが操舵ハンドル23を切っただけで自動的な制動が行われると、旋回オートブレーキ制御をよく理解していないユーザーが操舵ハンドル23を十分に切らず、旋回半径が過度に小さくなることがある。
【0131】
そこで、本実施の形態においては、旋回オートブレーキ制御はブレーキペダル連結の状態を考慮して行われる。
【0132】
すなわち、ユーザーが操舵ハンドル23を切ったときに、(1)ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出されている場合には、自動的な制動は行われるが、(2)ブレーキペダル連結の解除がブレーキペダル連結センサー320により検出されていない場合には、自動的な制動は行われない。
【0133】
もちろん、突然な制動の開始はしばしば危険であるので、操舵ハンドル23が切られた後、ブレーキペダル連結解除ペダル520が遅れて踏込まれても、自動的な制動は行われない。
【0134】
操舵ハンドル23を切る前に、ブレーキペダル連結解除ペダル520を踏込んでブレーキペダル連結を解除するユーザーは農業用トラクターに慣れていると考えられるので、後進時においても、旋回半径が前述の如く過度に小さくなるような現象はほとんど発生しない。
【0135】
なお、操舵ハンドル23が切られた後、ブレーキペダル連結解除ペダル520が遅れて踏込まれ、操舵ハンドル23が再び切られると、自動的な制動は行われる変形例の実施の形態も、可能である。
【0136】
本実施の形態においては、農業用トラクターの作業時旋回動作が始まり耕耘作業機11が自動的に上昇させられた後、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は所定期間の間でのみ行われるが、ブレーキペダル連結解除ペダル520が継続的に踏込まれている場合には、自動的な制動は中止されずに所定期間の後も行われる。
【0137】
所定期間の後も行われるこのような自動的な制動は、ブレーキペダル連結の解除が検出されなくなった非検出タイミングで直ちに中止されてもよいし、所定時間が非検出タイミングから経過した後に中止されてもよい。
【0138】
すると、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は、ブレーキペダル連結解除ペダル520の踏込み操作に応じて、中止されずに農業用トラクターの作業時旋回動作が終わるまで確実に行われる。
【0139】
なお、ブレーキペダル連結解除ペダル520が継続的に踏込まれていなくても、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は中止されずにずっと行われる変形例の実施の形態も、可能である。このような変形例の実施の形態においては、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は、継続的なブレーキペダル連結解除ペダル520の踏込み操作なく、中止されずに農業用トラクターの作業時旋回動作が終わるまで確実に行われる。
【0140】
そして、本実施の形態においては、高速走行状態、または副変速レバー460のレバー位置が高速走行位置である高速走行設定状態では、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動はしばしば危険であるので、ブレーキペダル連結の解除が検出されても、自動的な制動は行われない。
【0141】
さらに、本実施の形態においては、コントローラー200の電源投入、およびエンジン30の始動が行われたときに、ブレーキペダル連結の解除がすでに検出されている場合には、ブレーキペダル連結解除ペダル520がこの時点で踏込まれているとは考えがたいので、ブレーキペダル連結の解除がその後に検出されても、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は行われない。
【0142】
すると、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は、ブレーキペダル連結センサー320の故障などが発生していると考えられる場合には、つぎのエンジン30の始動が行われるまで安全性の観点から行われない。
【0143】
なお、コントローラー200の電源投入、およびエンジン30の始動が行われたときに、ブレーキペダル連結の解除がすでに検出されていても、ブレーキペダル連結の解除がその後に検出されなくなった場合には、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は行われる変形例の実施の形態も、可能である。このような変形例の実施の形態においては、旋回オートブレーキ制御における自動的な制動は、発生したブレーキペダル連結センサー320の故障などが治癒したと考えられる場合には、つぎのエンジン30の始動が行われなくても利便性の観点から行われる。
【0144】
(D)つぎに、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rの内の少なくとも一方の踏込み操作に応じて前後進クラッチ121の自動的なクラッチ切断を行うための前後進クラッチ制御について説明する。
【0145】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結ロックの解除がブレーキペダル連結ロック解除センサー321により検出されている場合には、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rの内の少なくとも一方が踏込まれても作業は継続的に行われると考えられるので、前後進クラッチ制御における自動的なクラッチ切断は行われない。
【0146】
すると、ブレーキペダル連結具710へ装着されたブレーキペダル連結センサーが自動車排出ガス規制に応じて廃止された新しい仕様についても、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられている場合には、ブレーキペダル連結センサーの廃止にかかわらず、ブレーキペダル連結ロックの解除はブレーキペダル連結ロック解除センサー321により検出されるので、前後進クラッチ制御における自動的なクラッチ切断は行われないユーザーフレンドリーな構成が実現される。
【0147】
もちろん、突然なクラッチ接続の開始はしばしば危険であるので、前後進クラッチ制御における自動的なクラッチ切断が行われた後、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が遅れて持上げられても、自動的なクラッチ接続は行われない。
【0148】
(E)つぎに、作業Aまたは作業Bのような所望の作業に適した車速を選択する定回転スイッチ630の押下げ操作に応じて自動的な車速の維持を行うためのアクセスメモリ変速制御について説明する。
【0149】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結ロックの解除がブレーキペダル連結ロック解除センサー321により検出されている場合には、左ブレーキペダル510Lおよび右ブレーキペダル510Rの内の少なくとも一方が踏込まれても作業は継続的に行われると考えられるので、アクセスメモリ変速制御における自動的な車速の維持は行われる。
【0150】
すると、ブレーキペダル連結具710へ装着されたブレーキペダル連結センサーが自動車排出ガス規制に応じて廃止された新しい仕様についても、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられている場合には、ブレーキペダル連結センサーの廃止にかかわらず、ブレーキペダル連結ロックの解除はブレーキペダル連結ロック解除センサー321により検出されるので、アクセスメモリ変速制御における自動的な車速の維持は行われるユーザーフレンドリーな構成が実現される。
【0151】
(F)つぎに、2WD駆動から4WD駆動への自動的な走行設定の強制切替えを行うための4WD駆動切替え制御について説明する。
【0152】
本実施の形態においては、ブレーキペダル連結ロックの解除がブレーキペダル連結ロック解除センサー321により検出されていない場合には、車速が毎時7キロメートル程度の一定速度以上であれば直進動作は継続的に行われると考えられ、4WD駆動における制動距離は2WD駆動における制動距離より小さいので、4WD駆動切替え制御における自動的な走行設定の強制切替えは行われる。
【0153】
すると、ブレーキペダル連結具710へ装着されたブレーキペダル連結センサーが自動車排出ガス規制に応じて廃止された新しい仕様についても、ブレーキペダル連結ロック解除レバー420が持上げられていない場合には、ブレーキペダル連結センサーの廃止にかかわらず、ブレーキペダル連結ロックの解除はブレーキペダル連結ロック解除センサー321により検出されないので、4WD駆動切替え制御における自動的な走行設定の強制切替えは行われるユーザーフレンドリーな構成が実現される。