【実施例】
【0087】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。
【0088】
<材料と方法>
ポリエチレングリコールはメルク株式会社より、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)はAlfa Aesar, A Johnson Matthey Companyより、塩基性のガンマ酸化アルミニウム(N613N)は日揮触媒化成株式会社より、アルファ酸化アルミニウム(CAS.No1344-28-1, Cat.013-23115)、酸性のガンマ酸化アルミニウム(CAS.No1344-28-1, Cat.590-13685)、中性のガンマ酸化アルミニウム(CAS.No1344-28-1, Cat.013-590-13715)は和光純薬株式会社より購入した。実施例中で用いたポリマー水溶液は、それぞれの濃度に水で溶解した。また、実施例中で特に断らない限り、ガンマ酸化アルミニウムは塩基性のものを用いた。また、特に断らない限り、酸化アルミニウムは、ふるい分けなどせずに購入したまま実験に用いた。
【0089】
また、100bp DNA ladder(Fragment; 200bp, 300bp, 1000bp)はタカラバイオ株式会社より、臭化エチジウムはナカライテスク株式会社より購入した。また、let7aの配列として知られる22塩基の核酸をDNA配列に変換して合成したものとRNA配列として合成したものをユーロフィンジェノミクス株式会社より購入した。以降RNA配列の合成核酸についてはRNA22、DNA配列の合成核酸についてはDNA22と記載する。これらの核酸は、特に精製することなくそのまま用いた。
【0090】
その他の試薬については、和光純薬株式会社、東京化成株式会社、シグマーアルドリッチジャパン合同会社から購入し、特に精製することなくそのまま用いた。
【0091】
ミキサーは東京理化器械株式会社のCUTE MIXER CM-1000を、蛍光計はThermo Fisher Scientific株式会社のNanodrop3300と株式会社堀場製作所のFLUOROMAX-3を、ゼータ電位の測定には大塚電子株式会社のELS-Zを、電気泳動は株式会社アドバンスのMupid-eXUを用いた。ふるいはアズワン株式会社のMVS−1を用いた。染色したアガロースゲルはGEヘルスケア・ジャパン株式会社のTyphoon9410を用いて解析した。アガロースゲルの画像解析は、Molecular Dynamics社のImageQuant(商標登録)を用いた。表面電位顕微鏡は、Bruker AXS社のDigital Instruments製のNanoScope Iva AFM Dimension 3100 ステージAFMシステムを用いた。
【0092】
また、表面被覆率を算出する際の画像解析ソフトとして、Adobe社のPhotoshopを使用した。画像解析にあたって、酸化アルミニウムの表面電位の平均値をスケール下端、水溶性の中性ポリマーの表面電位の平均値をスケール上端とし、下端の色を黒(8bit、RGB値0)、上端の色を赤(R値255)、または緑(G値255)、または青(B値255)に設定した。設定したスケールで水溶性の中性ポリマーが吸着した酸化アルミニウムの表面電位画像を表示し、R値、またはG値、またはB値のいずれかの値を255で割り、その比を表面被覆率とした。
【0093】
表面電位顕微鏡から表面被覆率を算出するにあたり、測定の視野スケールは、0.5μm×1μmの範囲で行う。表面被覆率の算出方法は、まず酸化アルミニウムの表面電位画像を取得し視野内の平均電位を求めた。次に水溶性の中性ポリマーの表面電位画像を取得し視野内の平均電位を求めた。そして、水溶性の中性ポリマーが吸着した酸化アルミニウムの表面電位画像を取得し視野内の平均電位を求める。酸化アルミニウムのみの被覆率を0%、水溶性の中性ポリマーのみの被覆率を100%とし、水溶性の中性ポリマーが吸着した酸化アルミニウムの平均電位と水溶性の中性ポリマーの平均電位の比をとることで、水溶性の中性ポリマーが吸着した酸化アルミニウムの表面被覆率を算出した。表面被覆率を求めるにあたり、使用する視野内の平均電位は、本発明の単体の粒子をランダムに3つ選んで、それぞれの測定値の平均値を使用した。
【0094】
<比較例1>水溶性の中性ポリマーが表面に吸着していない担体を用いた核酸回収
特許文献3(実施例4,Table2)に記載の酸化アルミニウムAと組成の近い塩基性のガンマ酸化アルミニウム(N613N, 日揮触媒化成株式会社)、酸化アルミニウムDと組成の近い、アルファ酸化アルミニウム(和光純薬株式会社)を用いて、核酸を効率的に回収することができるかを検討した。酸化アルミニウムに吸着させた核酸を溶出させる溶出液として、特許文献3、4に、リン酸緩衝液、又はTris-EDTA緩衝液を溶出液として利用できることが記載されおり、特許文献5には、リン酸溶液が核酸と酸化アルミニウムとの結合を阻害する旨が記載されていたことから、リン酸緩衝液(0.5M, pH8)又はTris-EDTA緩衝液(0.5M Tris, 0.5M EDTA, pH8)を溶出液として、以下の実験を行った。
【0095】
最初に1.5mlチューブに、0.5mgのアルファ酸化アルミニウム、又はガンマ酸化アルミニウムを量り取った。それぞれに200μlのエタノールを加え、ボルテックスした後、遠心機で1分間遠心して上清を除いた。この操作を更に2回行って洗浄した。
【0096】
続いて、これらに対し、100pmolのDNA22が溶解した6Mグアニジンチオシアン酸塩水溶液100μlを加え、5分間ミキサーで攪拌した。遠心(10000G, 1min)して上清を捨て、0.05% Tween水を100μl加え、ボルテックスした。この操作を更に2回行った。その後、50μlのリン酸緩衝液(0.5M, pH8)又はTris-EDTA緩衝液(0.5M Tris, 0.5M EDTA, pH8)を加えて5分間ミキサーで攪拌した。遠心機で遠心(10000G, 1min)して、核酸溶液を回収した。
【0097】
吸着率はCy3の蛍光測定により以下のように算出した。はじめに、アルファ酸化アルミニウムとガンマ酸化アルミニウムを加える前の100pmolのDNA22が溶解した6Mグアニジンチオシアン酸塩水溶液100μlの蛍光強度を測定し、次にアルファ酸化アルミニウムとガンマ酸化アルミニウムを加えて混合した後の蛍光強度を測定した。酸化アルミニウムを加えた後の蛍光強度を加える前の蛍光強度で割り、加える前の核酸量(100pmol)の積をとって溶液中の核酸量を算出した。加える前の核酸量(100pmol)から、この値の差をとり、吸着した核酸量を算出した。吸着した核酸量を、酸化アルミニウムを加える前の核酸量(100pmol)で割り、吸着率を算出した。
【0098】
溶出率はCy3の蛍光測定により以下のように算出した。核酸が吸着した酸化アルミニウムに対して50μlのリン酸緩衝液又はTris-EDTA緩衝液をそれぞれ加え、溶出した後の溶出液に対して蛍光測定を行った。次に、100pmolのDNA22が溶解した50μlのリン酸緩衝液、及びTris-EDTA緩衝液を調製し、この溶液に対してそれぞれ蛍光測定を行った。溶出液の蛍光強度をこの溶液の蛍光強度で割り、溶出した核酸量を算出した。溶出した核酸量を、吸着した核酸量で割り、溶出率を算出した。回収率は、算出された吸着率と溶出率の積をとって算出した。結果を表1に示した。
【0099】
これらの結果から、ポリマーが表面に吸着していないガンマ酸化アルミニウム、又はアルファ酸化アルミニウムを担体として用いた核酸の回収方法は、溶出率が低く、核酸の回収率が低いことが分かった。
【0100】
【表1】
【0101】
<比較例2>水溶性の中性ポリマー以外の水溶性のポリマーが表面に吸着した酸化アルミニウムの担体の作製
1.5mlチューブに、0.5mgずつガンマ酸化アルミニウムを量り取った。これにポリマー溶液として、ポリアクリル酸(PAcA, 5.1kD, 10wt%)、デキストラン硫酸(DS, 4kD, 10wt%)、ポリビニルスルホン酸(PVSA, 10wt%)、ポリアリルアミン(PAA, 17kD, 10wt%)、ポリ-L-リシン(PLL, 150kD, 1wt%)をそれぞれ50μlずつ加えて10分間ミキサーで攪拌した。遠心機で遠心(10000G, 1min)して上清を除き、それぞれのポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウム得た。
【0102】
<比較例3>水溶性の中性ポリマー以外の水溶性の各ポリマーが表面に吸着した酸化アルミニウムを担体として用いた核酸回収
1.5mlのチューブに比較例2で作製した水溶性の中性ポリマー以外の水溶性のポリマーとして、ポリアクリル酸(PAcA, 5.1kD, 10wt%)、デキストラン硫酸(DS, 4kD, 10wt%)、ポリビニルスルホン酸(PVSA, 10wt%)、ポリアリルアミン(PAA, 17kD, 10wt%)、ポリ-L-リシン(PLL, 150kD, 1wt%)が表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを0.5mgずつ量り取り担体として用いた。溶出液はTris-EDTA緩衝液(0.5M Tris, 0.5M EDTA, pH8)とし、その他の条件、操作は比較例1と同様に行い核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出した。結果を表2に示した。
【0103】
これらの結果から、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、及びデキストラン硫酸が表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体に用いた場合には、核酸の吸着率も溶出率も低く、核酸の回収率も低いことがわかった。また、ポリアリルアミン、及びポリ-L-リシンが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体として用いた場合には、核酸の吸着率は高く保たれたが、溶出率が低下し、回収率も低い結果となった。
【0104】
<実施例1>水溶性の中性ポリマーが表面に吸着した酸化アルミニウムの担体の作製
1.5mlチューブに、0.5mgずつガンマ酸化アルミニウムを量り取った。これに、ポリマー水溶液として、水溶性の中性ポリマーであるポリビニルアルコール(11%アセチル化, PVA, 18kD, 10wt%)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(PEOz, 5kD, 10wt%)、ポリエチレングリコール(PEG, 10kD, 10wt%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(HPMC, 10kD, 10wt%)、ポリビニルピロリドン(PVP, 10kD, 10wt%)をそれぞれに50μlずつ加えた。その他の条件、操作は比較例2と同様に行い、それぞれのポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムの担体を得た。
【0105】
<実施例2>水溶性の中性ポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体として用いた核酸回収
1.5mlのチューブに実施例1で作製した各水溶性の中性ポリマーとして、ポリビニルアルコール(11%アセチル化, PVA, 18kD, 10wt%)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(PEOz, 5kD, 10wt%)、ポリエチレングリコール(PEG, 10kD, 10wt%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(HPMC, 10kD, 10wt%)、ポリビニルピロリドン(PVP, 10kD, 10wt%)が表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを0.5mgずつ量り取り担体として用いた。その他の条件、操作は比較例3と同様に行い、核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出した。結果を表2に示した。
【0106】
これらの結果から、比較例3に比べ、水溶性の中性ポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体として用いた場合、核酸の吸着率は高く保たれたまま、溶出率及び回収率が向上することがわかった。
【0107】
【表2】
【0108】
<比較例4>水溶性の中性ポリマー以外の水溶性のポリマーのゼータ電位の測定
比較例3で用いた水溶性の中性ポリマー以外の水溶性のポリマーであるポリアクリル酸(PAcA, 5.1kD)、デキストラン硫酸(DS, 4kD)、ポリビニルスルホン酸(PVSA)、ポリアリルアミン(PAA, 17kD)、ポリーL−リシン(PLL, 150kD))を終濃度が1wt%以上10wt%以下となるようにリン酸緩衝液(10mM, pH7)に溶解し、大塚電子株式会社のELS-Zを用いてゼータ電位を測定した。結果を表3に示す。表3は、本測定によって得られたゼータ電位と、それぞれのポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体として使ったDNA22の回収率(比較例3の結果)の相関を取り、ゼータ電位の値の低い順に並べたものである。
【0109】
これらの結果から、比較例3で用いた水溶性の中性ポリマー以外の水溶性ポリマーのゼータ電位は-17mV以下、又は+11mV以上であることがわかった。
【0110】
<実施例3>水溶性の中性ポリマーのゼータ電位測定
終濃度が1wt%以上10wt%以下となるよう、実施例2で用いた水溶性の中性ポリマーであるポリビニルアルコール(11%アセチル化, PVA, 18kD)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(PEOz, 5kD)、ポリエチレングリコール(PEG, 10kD)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC, 10kD)、ポリビニルピロリドン(PVP, 10kD)をリン酸緩衝液(10mM, pH7)に溶解し、比較例4と同様の方法でゼータ電位を測定した。
【0111】
表3は、本測定によって得られたゼータ電位と、それぞれのポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体として使ったDNA22の回収率(実施例2の結果)の相関を取り、ゼータ電位の値の低い順に並べたものである。
【0112】
これらの結果から、実施例2で核酸の回収率が向上した水溶性の中性ポリマーのゼータ電位は、pH7の溶液中で-4mV以上+1.1mV以下であり、-17mV以下及び+11mV以上のゼータ電位を持つ水溶性のポリマーと比べて、回収率が向上することがわかった。
【0113】
【表3】
【0114】
<実施例4>水溶性の中性ポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムの担体に吸着した核酸の溶出
実施例1に従ってポリエチレングリコールが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを作製し、1.5mlチューブに0.5mgずつ量り取った。溶出液として0.5Mクエン酸緩衝液(pH 5, 6)、0.5M リン酸緩衝液(pH6, 7, 8)、0.5M Tris-EDTA緩衝液(pH8)、10wt%の終濃度となるようPVSAを添加した0.5M Tris緩衝液(pH8) をそれぞれ用いた。その他の条件、操作は比較例1と同様に行い、核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出した。結果を表4に示した。
【0115】
これらの結果から、いずれの緩衝液を溶出液として用いても、核酸を高収率に回収できることが分かった。
【0116】
【表4】
【0117】
<実施例5>水溶性の中性ポリマーが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを担体として用いた核酸の回収率と核酸の長さの関係
実施例1に従ってポリエチレングリコールが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを作製し、1.5mlチューブに0.5mgずつ量り取った。核酸を含む溶液として、7.5μgの100bp DNA ladderの200bp、300bp、1000bpがそれぞれ溶解した6Mグアニジンチオシアン酸塩水溶液を100μl用いた。その他の条件、操作は比較例3と同様に行い核酸の回収率を算出した。結果を表5に示した。
【0118】
これらの結果から、水溶性の中性ポリマーであるポリエチレングリコールが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを使うことで、いずれの長さを有する核酸も効率的に回収できることが分かった。
【0119】
【表5】
【0120】
<実施例6>ウシ胎児血清からの核酸回収
実施例1に従ってポリエチレングリコールが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを作製し、1.5mlチューブに1.5mgずつ量り取った。核酸を含む溶液として100pmolのDNA22が溶解した6Mグアニジンチオシアン酸塩水溶液100μlと30mg/mlのタンパク質濃度を有するウシ胎児血清100μlの混合溶液を用いた。その他の条件、操作は比較例3と同様に行い核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出した。同様の実験をRNA22に対しても行った。結果を表6に示した。なお、回収液中のタンパク質濃度は、Bradford試験の検出限界以下(0.25mg/ml以下)であった。
【0121】
これらの結果から、ポリエチレングリコールが表面に吸着した酸化アルミニウムを担体として使うことで、血清からもDNA22、RNA22のいずれも効率よく回収できることが分かった。
【0122】
【表6】
【0123】
<実施例7>核酸回収における酸化アルミニウムの粒径の効果
日本工業規格に規格するJIS Z-8801-1:2006に基づくふるいを使って、ガンマ酸化アルミニウムを粒径ごとに分画(100μm以上212μm未満、40μm以上100μm未満、32μm以上40μm未満、20μm以上32μm未満)した。担体は、実施例1と同様にして、各粒径ごとのポリエチレングリコールが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを調製してこれを用いた。その他の条件、操作は比較例3と同様に行い核酸の回収率を算出した。結果を表7に示した。
【0124】
これらの結果から、粒径が212μm未満のいずれの分画においても、核酸を回収できることがわかった。
【0125】
【表7】
【0126】
<実施例8>核酸回収におけるガンマ酸化アルミニウムの特性の違い
酸性のガンマ酸化アルミニウム、中性のガンマ酸化アルミニウム、塩基性のガンマ酸化アルミニウムを用いた。担体は、実施例1と同様にして、ポリエチレングリコールが表面に吸着したそれぞれの酸化アルミニウムを調製してこれを用いた。その他の条件、操作は比較例3と同様に行い核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出した。結果を表8に示した。
【0127】
これらの結果から、酸性アルミナ、中性アルミナ、塩基性アルミナのいずれを用いた場合でも核酸を高収率に回収できることがわかった。
【0128】
【表8】
【0129】
<実施例9>酸化アルミニウムに表面に吸着させるポリマーの分子量の効果
分子量が 6kD、 10kD、500kDのポリエチレングリコールと、分子量が18kD、40kD、 150kD(いずれも11%アセチル化)のポリビニルアルコールをそれぞれ10wt%になるよう調製しポリマー溶液として用いた。担体は、実施例1と同様にして、各分子量のポリエチレングリコールが表面に吸着したガンマ酸化アルミニウムを調製してこれを用いた。その他の条件、操作は比較例3と同様に行い、核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出した。結果を表9に示した。
【0130】
これらの結果から、いずれの分子量を持つポリマーであっても、核酸を回収できることが分かった。
【0131】
【表9】
【0132】
<実施例10>本発明の担体の作製方法における水溶性の中性ポリマーの濃度と撹拌時間の関係
1.5mlチューブに、0.5mgずつ酸化アルミニウムを量り取った。これに、ポリマー水溶液として、水溶性の中性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG, 10kD)を0.1wt%、1wt%、10wt%の濃度でそれぞれに50μlずつ加えた。各濃度に対してミキサーでそれぞれ1分間、5分間、30分間攪拌した。遠心機で遠心(10000G, 1min)して上清を除き、酸化アルミニウムの表面にポリエチレングリコールが吸着した担体を得た。また、比較例3と同様に行い、核酸の回収率を算出した。結果を表10に示した。
【0133】
これらの結果から、いずれの条件で作製された担体も、効率的に核酸を回収できることがわかった。
【0134】
【表10】
【0135】
<実施例11>本発明の担体の作製方法における水溶性の中性ポリマーの濃度と浸漬時間の関係
1.5mlチューブに、0.5mgずつ酸化アルミニウムを量り取った。これに、ポリマー水溶液として、水溶性の中性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG, 10kD)を0.1wt%、1wt%、10wt%の濃度でそれぞれに50μlずつ加えてそれぞれ5分間、30分間静置した。遠心機で遠心(10000G, 1min)して上清を除き、酸化アルミニウムの表面にポリエチレングリコールが吸着した担体を得た。また、比較例3と同様に行い、核酸の回収率を算出した。結果を表11に示した。
【0136】
これらの結果から、いずれの条件で作製された担体も、効率的に核酸を回収できることがわかった。
【0137】
【表11】
【0138】
<実施例12>本発明の担体の作製における遠心分離操作の有無と核酸の回収率の関係
1.5mlチューブに、0.5mgずつ酸化アルミニウムを量り取った。これに、ポリマー水溶液として、水溶性の中性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG, 10kD)を10wt%の濃度で50μl加えてミキサーで10分間攪拌した。この後の操作として、実施例2では、遠心機による遠心分離操作及び上清を除く操作を行ったが、実施例12ではこれらの操作を行わなかった。このようにして作製した担体を用いた以外は、比較例3と同様に行い、核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出し、結果を表12に示した。
【0139】
これらの結果から、実施例1で作製した担体を用いて核酸の回収を行った実施例2の結果のうち、水溶性の中性ポリマーとして、ポリエチレングリコールを用いた場合の核酸の回収率の結果と比較すると、どちらの方法で本発明の担体を作製しても、効率的に核酸を回収できることがわかった。
【0140】
【表12】
【0141】
<実施例13>本発明の担体の作製方法における水溶性の中性ポリマーの水洗による除去と回収率の関係
実施例1にしたがってポリエチレングリコールが表面に吸着した酸化アルミニウムを作製した。この後の操作として、この担体に水200μl加えてミキサーで1分間攪拌し、遠心機で遠心(10000G, 1min)して上清を除いた。この水洗操作を1回、3回行ったものをそれぞれ調製した。上記のようにして作製した担体を用いた以外は、比較例3と同様に行い、核酸の吸着率、溶出率、回収率を算出し、結果を表13に示した。
【0142】
これらの結果から、実施例1で作製した担体を用いて核酸の回収を行った実施例2の結果のうち、水溶性の中性ポリマーとして、ポリエチレングリコールを用いた場合の核酸の回収率の結果と比較すると、どちらの方法で本発明の担体を作製しても、効率的に核酸を回収できることがわかった。
【0143】
【表13】
【0144】
<実施例14>本発明の担体におけるポリマーによる酸化アルミニウムの表面被覆率と回収率の関係
実施例13で作製した担体、実施例2で作製したポリエチレングリコールが表面に吸着した酸化アルミニウム(水洗なし)、ポリマーが吸着していない酸化アルミニウム、ポリエチレングリコールを表面電位顕微鏡により分析し、電位分布図を取得して平均電位を算出した。測定にあたり、担体試料をカーボンテープに散布し、CoCrコートシリコンカンチレバーを探針に用い、ノンコンタクトモードで、0.5μm×1μmの視野範囲で、室温、大気中で測定した。測定値には、ポリエチレングリコールが表面に吸着した担体の粒子をランダムに3粒選んで想定した値の平均値を用いた。ポリマーが吸着していない酸化アルミニウムのみの被覆率を0%、ポリエチレングリコールのみの被覆率を100%とし、ポリエチレングリコールが吸着した酸化アルミニウムの平均電位とポリエチレングリコールの平均電位の比をとることで表面被覆率を算出した。表面被覆率と各担体を用いたときの核酸の回収率との関係を表14に示した。
【0145】
これらの結果から、表面被覆率が7%以上の担体を用いると、効率的に核酸を回収できることがわかった。
【0146】
【表14】