(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記運転許容部は、前記第1取得部が取得した前記揺れデータが示す揺れの大きさ以上の揺れを示し、かつ、前記参照エレベータに異常がないとの点検結果を示す参照データが存在することを、自動診断仮復旧運転の実行を許容する必要条件とすることを特徴とする請求項1、3、4、5、6、7、8、9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0030】
(エレベータ100の概要)
図2は、エレベータ100の構成の一部を示す概略図である。なお、エレベータ100の概略構成は図示の例に限定されない。
【0031】
図示のエレベータ100は、昇降路21と機械室22とを備えたエレベータである。なお、機械室22の位置は、昇降路21の上方に限定されない。また、エレベータ100は、機械室22を備えない構成であってもよい。
【0032】
図示のように、エレベータ100のかご23は、ロープ24の一端部に連結されている。また、ロープ24の他端部には釣合おもり25が連結されている。ロープ24を機械室22に設置された巻上機26が巻き上げることで、かご23が昇降路21内を昇降する。
【0033】
機械室22には、エレベータ100の各部に対する制御を行う制御盤1(情報処理装置)が設置されている。制御盤1は、エレベータ100に設けられた各種ボタン(例えば乗場ボタン)などから取得した制御信号に応じて、利用者が指定した階床へのかご23の移動および該階床での停止、かご23および乗場に設けられたドアの開閉、乗場に設けられた位置表示機の表示変更などを制御する。
【0034】
また、制御盤1は、所定の通信網6(例えば、インターネットなど)を介して、外部の装置と通信可能に構成されている。例えば、制御盤1は、図示のように通信網6を介して、情報処理装置5と通信してもよい。なお、情報処理装置5については後述する。
【0035】
また、制御盤1は、揺れが発生した後のエレベータ100の運転を制御する。図示のように、機械室22には、地震感知器2が設置されている。地震感知器2は、地震による揺れの加速度が予め設定された値(以下では「設定値」と称する。)以上であるときに動作し、動作信号を制御盤1へ出力する。図示の例では、図面の見やすさを考慮して地震感知器2を1つのみ記載しているが、典型的には、設定値が異なる複数の地震感知器2が設置される。本実施形態では、P波感知器、低設定感知器、高設定感知器の3つの地震感知器2が機械室22に設置されている例を説明する。P波感知器は地震のP波を感知する。低設定感知器および高設定感知器は、地震のS波を感知するS波感知器である。
【0036】
P波感知器には、2.5Gal以上10Gal以下の設定値が設定される。S波感知器には、典型的には、〔特低〕設定、〔低〕設定、〔高〕設定と称される3つの設定値のいずれかが設定される。これら3つの設定値は、〔特低〕設定が最も小さい値であり、〔高〕設定が最も大きい値である。低設定感知器は、上記の3つの設定値のうち、〔低〕設定がなされた地震感知器2であり、高設定感知器は、〔高〕設定がなされた地震感知器2である。〔低〕設定および〔高〕設定の具体的な値は、エレベータ100が設置された建築物の地上からの高さに応じて決定されてもよい。例えば、該高さが60m以下の建築物において、図示のように昇降路21の上部に地震感知器2を設置する場合、〔低〕設定は200Gal、〔高〕設定は300Galである。
【0037】
なお、高層建築物、具体的には、60mより高く120m以下の建築物の場合、P波感知器で感知できないような表面波を伴う地震により、建築物の頂上部において、ロープ24の揺れが大きくなる可能性がある。このような場合、これら3つの地震感知器2に加え、〔特低〕設定のS波感知器を設置してもよい。〔特低〕設定の具体的な値は、例えば、60mより高く90m以下の建築物の場合、40Galである。
【0038】
また、高設定感知器に代えて、〔診断〕設定のS波感知器を設置してもよい。〔診断〕設定とは、建物の強度設計およびロープ24の振幅拡大を考慮した設定値である〔高〕設定に対し、建物の強度設計のみを考慮した設定値である。このため、〔診断〕設定の具体的な値は、〔高〕設定以上の値となる。
【0039】
また、機械室22以外の場所に地震感知器2が設置されてもよい。例えば、昇降路21の下部に設置されてもよいし、建築物内のエレベータ100とは別の場所に設置されてもよい。なお、P波感知器は、原則として昇降路21の下部に設置される。また、昇降路21の下部に低設定感知器および高設定感知器を設置する場合、昇降路21の上部に設置する場合に比べて、設定値を小さくする。例えば、地上からの高さが60m以下の建築物において、昇降路21の下部に低設定感知器および高設定感知器を設置する場合、設定値はそれぞれ、80Galおよび120Galである。
【0040】
また、建築物に複数のエレベータが設置されている場合、地震感知器2はエレベータごとに設置されてもよいし、共用であってもよい。
【0041】
なお、本開示において、エレベータ100において発生する揺れの原因を、地震に限定する意図はない。エレベータ100において発生する揺れの原因は、例えば強風であってもよい。
【0042】
制御盤1は、動作信号を出力した地震感知器2の種類に応じた処理を行う。具体的には、P波感知器のみから動作信号を取得した場合、制御盤1は、エレベータ100の運転を所定時間停止させた後、再開する。また、P波感知器および低設定感知器から動作信号を取得した場合、制御盤1は、仮復旧のための自動診断運転が可能である場合には該自動診断運転を行う。また、すべての地震感知器2から動作信号を取得した場合、制御盤1は、基本的には、専門技術者の点検が行われるまでエレベータ100の運転を再開しない。換言すれば、自動診断運転、および、自動診断運転により異常がないと判断された場合に実行される仮復旧運転(以下、これら2つの運転を総称して自動診断仮復旧運転と称する)を行うための条件は、高設定感知器(または、〔診断〕設定の地震感知器2)が、予め定められた設定値以上の揺れ(加速度)を感知していないことである。つまり、高設定感知器(または、〔診断〕設定の地震感知器)に設定された設定値は、自動診断仮復旧運転の実行禁止のために設定された設定値である。
【0043】
なお、制御盤1は、すべての地震感知器2から動作信号を取得したとしても、例外的に自動診断仮復旧運転を実行する場合がある。この点については後述する。
【0044】
また、図示のように、本実施形態に係るかご23には、加速度センサ3Aが設置されている。加速度センサ3Aは、かご23に発生する加速度を所定時間ごと(例えば、0.5秒ごと)に検出する。また、機械室22の地震感知器2の近傍には、加速度センサ3Bが設置されている。加速度センサ3Bは、地震の発生などでエレベータ100に揺れが発生したとき、制御盤1が、加速度センサ3Bが検出した加速度を用いて、該揺れの大きさおよび方向を特定するために設けられている。加速度センサ3Bも、加速度センサ3Aと同様に、加速度を所定時間ごと(例えば、0.5秒ごと)に検出する。なお、以降の説明において、加速度センサ3Aおよび3Bを区別しない場合、これらを総称して加速度センサ3と称する場合がある。また、加速度センサ3は既存のものを使用することができる。
【0045】
なお、加速度センサ3Aの設置位置は、かご23に発生する加速度を検出できる位置であればよく、図示の例と異なる位置、例えば、かご23の外側下部または側面に設置されてもよいし、かご23の内側に設置されてもよい。また、加速度センサ3Bの設置位置は、地震感知器2の感知結果とのずれを抑えるため、地震感知器2の近傍に設置することが好ましい。換言すれば、地震感知器2が機械室22とは異なる位置に設置されている場合、加速度センサ3Bも同様に、機械室22とは異なる位置(すなわち、地震感知器2が設置されている位置の近傍)に設置される。
【0046】
(制御盤1の要部構成)
図1は、制御盤1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、制御盤1は、制御部10、通信部11、および記憶部12を備えている。制御部10は、制御盤1の各部を統括して制御する。通信部11は、制御盤1の外部の装置と有線または無線で通信可能に接続し、該装置からデータを取得する。記憶部12は、制御盤1が使用する各種データを記憶する。記憶部12は少なくとも、レイアウト情報121、かご移動情報122、および参照データテーブル123を記憶している。
【0047】
レイアウト情報121は、エレベータ100の各部材の配置、寸法などを含むエレベータ100のレイアウトに関する情報である。具体的には、レイアウト情報121は少なくとも、エレベータ100の各階床の地上からの高さ、および、エレベータ100がいずれの方位を向いているかを示す情報(以下では「エレベータ方位情報」と称する。)を含む。なお、エレベータ方位情報は、例えば、エレベータ100のドアが設置された面の方位を示す情報であってもよい。
【0048】
かご移動情報122は、かご23の位置の経時変化を示す情報である。
図3は、かご移動情報122の一具体例を示す図である。かご移動情報122は、図示のように、かご23の位置を階床で示すものであってもよいし、地上からの高さで示すものであってもよい。なお、かご移動情報122の詳細については後述する。
【0049】
参照データテーブル123は参照データを格納するテーブルである。「参照データ」とは、高設定感知器(または、〔診断〕設定の地震感知器2)が動作する揺れを受けて停止したエレベータ(以下では「対象エレベータ」と称する。)にて自動診断仮復旧運転を実行するか否かを判定するために参照するデータである。参照データは、対象エレベータと同一または異なる参照エレベータが、過去に、自動診断仮復旧運転の実行禁止のために設定された設定値以上の大きさの揺れを受けたときの、該揺れの大きさを示す揺れデータと、参照エレベータに対するその後の点検の結果を示す点検結果データとを少なくとも対応付けたデータである。
【0050】
本実施形態では、参照エレベータおよび対象エレベータは同一のエレベータ、すなわちエレベータ100であるものとする。つまり、本実施形態に係る制御盤1は、エレベータ100において、高設定感知器(または、〔診断〕設定の地震感知器2)が動作する揺れが発生したとき、エレベータ100において過去に発生した揺れに関するデータ(参照データ)を参照して、自動診断仮復旧運転を実行するか否かを判定する。
【0051】
なお、本実施形態の参照データは、さらに、上記設定値以上の大きさの揺れの発生による、エレベータ100の損傷度合に影響を及ぼし得る、揺れの大きさ以外の事象を示す事象データを含んでいる。また、本実施形態の参照データには、エレベータ100が自動診断運転を実行したか否かを示す情報(以下では、「診断運転可否」と称する)を含んでいる。なお、診断運転可否の詳細については後述する。すなわち、本実施形態の参照データは、揺れデータ、点検結果データ、事象データ、および診断運転可否が対応付けられたデータである。上記事象の典型例は、(1)揺れが発生した時にエレベータ100が所定方向に揺れた(または揺れていない)、(2)揺れが発生した時にかご23が所定位置に居た(または居ない)、(3)揺れが発生した時にかご23が移動していた(または停止していた)、という事象である。また、参照データテーブル123の詳細については後述する。
【0052】
制御部10は、
図1に示すように、データ取得部101、類似状況特定部102、運転制御部103、および、対応付け部104を含んでいる。
【0053】
データ取得部101は、上記揺れデータおよび上記事象データを取得する。具体的には、データ取得部101は、通信部11を介して、地震感知器2から動作信号を取得すると、該動作信号を運転制御部103へ出力するとともに、いずれの地震感知器2からの動作信号であるかを特定する。すべての地震感知器2からの動作信号である場合、データ取得部101は、上記揺れデータおよび上記事象データを取得する。
【0054】
データ取得部101は、
図1に示すように、加速度取得部111(第1取得部、第2取得部)、かご位置取得部112(第2取得部)、および移動状態取得部113(第2取得部)を含んでいる。
【0055】
加速度取得部111は、加速度センサ3Bから取得した、エレベータ100に発生した揺れの加速度に基づいて、該揺れの大きさおよび、エレベータ100の向きに対する該揺れの方向を取得する。加速度取得部111は、通信部11を介して、加速度センサ3Bから加速度を取得すると、該加速度が所定の閾値を超えているか否かを判定する。すなわち、加速度取得部111は、取得した加速度が、揺れにより発生した加速度であるか否かを判定する。
【0056】
加速度取得部111は、取得した加速度が所定の閾値を超えていると判定した場合、該加速度の大きさ(すなわち、加速度の値)を特定する。典型的には、加速度取得部111は、エレベータ100に揺れが発生した場合、該閾値を超える加速度を複数取得することとなる。この場合、加速度取得部111は、最も大きい加速度の値を特定する。
【0057】
また、加速度取得部111は、取得した加速度が所定の閾値を超えていると判定した場合、該加速度の方向を特定する。続いて、加速度取得部111は、特定した加速度の方向と、レイアウト情報121に含まれるエレベータ方位情報とを用いて、エレベータ100の揺れの方向(以下では、「エレベータ揺れ方向」と称する)を特定する。加速度取得部111は例えば、エレベータ方位情報に基づいて定められた、基準軸に対する加速度の方向の角度を、エレベータ揺れ方向として特定する。
図4は、エレベータ100の上面図であり、エレベータ揺れ方向の一具体例を示す図である。この例の場合、基準軸91は、エレベータ100の乗場ドア27およびかごドア28に平行な軸である。加速度取得部111は、取得した加速度の方向92と、基準軸91とがなす角度93を、エレベータ揺れ方向として特定する。
【0058】
なお、典型的には、加速度取得部111は、エレベータ100に揺れが発生した場合、該閾値を超える加速度を複数取得することとなるが、加速度取得部111は、エレベータ揺れ方向を1つだけ特定する。例えば、加速度取得部111は、該加速度の方向それぞれについて、上記の方法でエレベータ揺れ方向を特定し、特定した複数のエレベータ揺れ方向(すなわち、角度93)の平均値を算出してもよい。また例えば、加速度取得部111は、値が最も大きい加速度の方向を用いてエレベータ揺れ方向を特定してもよい。
【0059】
再び
図1を参照する。かご位置取得部112は、揺れが発生したときの、昇降路21内におけるかご23の位置(以下では、単に「かご23の位置」と称する場合がある)を取得する。本実施形態では、かご位置取得部112は、加速度センサ3Aから取得した加速度の変化履歴に基づいてかご23の位置を取得する。
【0060】
具体的には、かご位置取得部112は、通信部11を介して加速度センサ3Aから加速度を取得すると、加速度の取得間隔(例えば0.5秒)を用いて二階積分する。これにより、かご23の位置の変化量が算出される。かご位置取得部112は、算出した位置の変化量と、記憶部12に記憶されているレイアウト情報121およびかご移動情報122に基づいて、かご23が昇降路21内のどの位置にあるのかを特定する。具体的には、かご位置取得部112は、前回取得した加速度から特定した、階床に基づいて示されるかご23の位置を、かご移動情報122から読み出す。かご位置取得部112は、読み出したかご23の位置を、レイアウト情報121を参照することで地上からの高さに変換する。かご位置取得部112は、該地上からの高さに、算出した変化量を加算することで、今回取得した加速度に基づく位置の地上からの高さを特定する。かご位置取得部112は、レイアウト情報121に含まれる各階床の地上からの高さを参照して、特定したかご23の地上からの高さを、階床に基づいて示されるかご23の位置に変換することで、今回取得した加速度に基づくかご23の位置を算出する。最後に、かご位置取得部112は、算出したかご23の位置を、かご移動情報122に追加する(かご移動情報122を更新する)。かご位置取得部112は、以上の処理を、加速度センサ3Aから加速度を取得する度に行う。
【0061】
なお、かご移動情報122が、かご23の位置を地上からの高さで示すものである場合、かご位置取得部112は、かご移動情報122の更新のために、かご移動情報122から読み出したかご23の位置に、算出した変化量を加算することで今回取得した加速度に基づくかご23の位置を算出し、該かご23の位置をかご移動情報122に追加するだけでよい。
【0062】
かご位置取得部112は、通信部11を介して地震感知器2から動作信号を取得したとき、かご移動情報122を参照して、直近のかご23の位置を特定する。かご位置取得部112は、該かご23の位置を、揺れが発生したときの昇降路21内におけるかご23の位置として特定する。
【0063】
移動状態取得部113は、揺れの発生時におけるかご23の移動状態、すなわち、揺れが発生した時にかご23が移動していたか否かを取得する。本実施形態では、移動状態取得部113は、かご移動情報122を参照して、かご23が移動していたか否かを特定する。具体的には、移動状態取得部113は、通信部11を介して地震感知器2から動作信号を取得したとき、かご移動情報122を参照して、直近のかご23の位置の変化の有無を特定する。かご23の位置が変化している場合、移動状態取得部113は、揺れが発生した時にかご23が移動していたと判定する。一方、かご23の位置が変化していない場合、移動状態取得部113は、揺れが発生した時にかご23が移動していなかったと判定する。
【0064】
データ取得部101は、加速度取得部111が取得した「揺れの大きさ」および「エレベータ揺れ方向」、かご位置取得部112が取得した「かご23の位置」、並びに、移動状態取得部113が取得した「かご23の移動の有無」を、「取得データ」として類似状況特定部102へ出力する。なお、取得データには、揺れの発生日時を示す情報も含まれる。
【0065】
類似状況特定部102は、対象エレベータが受けた揺れに類似する揺れを示す参照データを特定する。つまり、本実施形態では、類似状況特定部102は、エレベータ100が現在において受けた揺れに類似する、エレベータ100が過去に受けた揺れを示す参照データを特定する。
【0066】
具体的には、類似状況特定部102は、データ取得部101から取得データを取得すると、参照データテーブル123から、該取得データに含まれる揺れデータと類似する揺れデータ、および、該取得データに含まれる事象データと類似する事象データを含む参照データを読み出す。
【0067】
この処理の一具体例について、
図5を参照して説明する。
図5の(a)は、参照データテーブル123の一具体例を示す図であり、
図5の(b)は、取得データの一具体例を示す図である。
【0068】
図5の(a)に示す参照データテーブル123は、揺れの発生日時、揺れの大きさ、エレベータ揺れ方向、揺れが発生した時のかご23の位置、揺れが発生した時のかご23の移動の有無、自動診断運転の可否の判定結果、および点検結果データを対応付けた参照データを時系列順に格納するテーブルである。
【0069】
なお、参照データテーブル123の「番号」のカラムには、各参照データ(参照データテーブル123の各行)を識別するための番号が格納される。図示の例では4桁の数字が格納されているが、このカラムに格納される情報は、各参照データを識別可能な情報であれば、図示の例に限定されない。
【0070】
例えば、番号が「1229」の参照データは、エレベータ100において発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2003年8月21日9時49分」、揺れの大きさが「900Gal」、揺れの方向が「80°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「4階」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可否の判定結果が「否」、点検結果が「異常あり」であることを意味している。
【0071】
また、番号「1230」の参照データは、エレベータ100において発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2003年8月23日17時5分」、揺れの大きさが「480Gal」、揺れの方向が「25°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「1〜2階」、揺れが発生した時のかご23の移動が「有り」、自動診断運転の可否の判定結果が「否」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。ここで、かご23の位置が「1〜2階」とはかご23が1階から2階に向けて移動しているときに揺れが発生し、その後、かご23が2階で停止したことを表している。
【0072】
また、番号「1231」の参照データは、エレベータ100において発生した揺れについて、発生日時が「2011年1月9日22時18分」、揺れの大きさが「360Gal」、揺れの方向が「12°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「10階」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可の否判定結果が「可」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。
【0073】
また、番号「1232」の参照データは、エレベータ100において発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2015年10月25日12時2分」、揺れの大きさが「320Gal」、揺れの方向が「97°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「8〜7階」、揺れが発生した時のかご23の移動が「有り」、自動診断運転の可否の判定結果が「可」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。ここで、かご23の位置が「8〜7階」とはかご23が8階から7階に向けて移動しているときに揺れが発生し、その後、かご23が7階で停止したことを表している。
【0074】
また、番号「1233」の参照データは、エレベータ100において発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2015年11月1日4時32分」、揺れの大きさが「620Gal」、揺れの方向が「93°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「1階」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可否の判定結果が「否」、点検結果が「異常あり」であることを意味している。
【0075】
また、
図5の(b)に示す取得データは、エレベータ100において発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2017年7月24日9時51分」、揺れの大きさが「350Gal」、揺れの方向が「15°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「10階」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」であることを意味している。
【0076】
ここで、類似状況特定部102は、
図5の(b)に示す取得データをデータ取得部101から取得したものとする。類似状況特定部102は、例えば、参照データテーブル123に含まれる参照データのうち、取得データに含まれる揺れデータより大きい値の揺れデータを含む1または複数の参照データを特定する。そして、類似状況特定部102は、特定した参照データのうち、取得データに最も類似する参照データを1つ特定する。
【0077】
ここで、取得データに最も類似する参照データの特定方法の一例を説明する。類似状況特定部102は、以下の4つの条件を満たす参照データを、取得データに最も類似する参照データとして特定する。(1)参照データに含まれる揺れの大きさと、取得データに含まれる揺れの大きさとの差が所定値以内(例えば40Gal以内)である。(2)参照データに含まれるエレベータ揺れ方向と、取得データに含まれるエレベータ揺れ方向との差が所定値以内(例えば10°以内)である。(3)参照データに含まれるかご23の位置が共振範囲内であるか否かと、取得データに含まれるかご23の位置が共振範囲内であるか否かと、が一致する。(4)参照データに含まれるかご23の移動有無と、取得データに含まれるかご23の移動有無とが一致する。例えば、
図5の(b)に示す取得データを取得した場合、類似状況特定部102は、この特定方法に基づいて、参照データテーブル123に含まれる参照データのうち、番号が「1231」である参照データ(
図5の(a)において、破線で囲った参照データ)を特定する。
【0078】
なお、上記条件(3)において、共振範囲とは、かご23の位置がその範囲内であるときに揺れが発生した場合、ロープ24が共振しやすい範囲である。一方、非共振範囲とは、かご23の位置がその範囲内であるときに揺れが発生しても、ロープが共振しづらい範囲である。典型的には、共振範囲および非共振範囲は、複数の階床に対応する昇降路21の位置と、該階床の間に対応する昇降路21の位置とを含む範囲である。例えば、共振範囲が3階から5階までの場合、共振範囲には、3階、3階と4階との間、4階、4階と5階との間、5階のそれぞれに対応する昇降路21の位置が含まれる。これは非共振範囲についても同様である。共振範囲および非共振範囲は、エレベータ100が設置された建物の固有周期と、エレベータ100との仕様に基づいて予め決定され、レイアウト情報121に含まれている。類似状況特定部102は、レイアウト情報121を参照して、取得データおよび参照データのかご23の位置が共振範囲であるか否かを特定する。
【0079】
また、類似状況特定部102は、上記4つの条件を満たす参照データが複数ある場合、揺れの大きさおよびエレベータ揺れ方向が、取得データに最も類似する参照データを特定してもよい。なお、上記の条件(1)および(2)において所定値として例示した数値は一例であり、この例に限定されない。また、揺れが発生した時のかご23の位置に関する条件は、例えば、参照データに含まれるかご23の位置が取得データに含まれるかご23の位置と一致するという条件であってもよい。
【0080】
再び
図1を参照する。類似状況特定部102は、特定した、取得データに最も類似する参照データを読み出し、運転制御部103へ出力する。なお、類似状況特定部102は、取得データに最も類似する参照データを特定することができない場合、その旨を運転制御部103へ通知し、自動診断仮復旧運転を実行させないことが望ましい。また、類似状況特定部102は、取得データを対応付け部104へ出力する。
【0081】
運転制御部103は、エレベータの運転を制御する。具体的には、運転制御部103は、エレベータ100のエレベータ駆動部4に駆動信号を送信し、エレベータ駆動部4を駆動させる。なお、エレベータ駆動部4は、制御盤1の制御によって駆動するエレベータ100の各部の総称である。エレベータ駆動部4の具体例としては、巻上機26、乗場ドア27、かごドア28などが挙げられるが、この例に限定されるものではない。運転制御部103は、地震感知器2からの動作信号を取得すると、エレベータ100の運転を停止させる。
【0082】
運転制御部103は、診断運転制御部131(運転許容部)を含んでいる。診断運転制御部131は、仮復旧のための自動診断運転を制御する。診断運転制御部131は、データ取得部101から、すべての地震感知器2からの動作信号を取得した場合、類似状況特定部102からの出力を待機する状態となる。診断運転制御部131は、類似状況特定部102から、参照データを取得すると、該参照データに含まれる点検結果データが、エレベータ100に異常がないことを示しているか否か(すなわち、
図5に示す「異常なし」が格納されているか否か)を判定する。エレベータ100に異常がないことを示していると判定した場合、診断運転制御部131は、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。これは、過去の類似する揺れでエレベータ100に異常がないことから、今回の揺れにおいても自動診断仮復旧運転の実行に影響を及ぼす程度の異常が発生している可能性は低いためである。
【0083】
続いて、診断運転制御部131は、「参照データに含まれる点検結果データが、エレベータ100に異常がないことを示している」以外の、自動診断運転を許可する条件(以下では単に「その他の条件」と称する。)を満たしているか否かを判定する。その他の条件とは、例えば、エレベータの安全装置が動作していない、いずれかの階床に停止している、などであるが、この例に限定されるものではない。なお、安全装置は、地震との関連性が低い安全装置(例えば、かご23の移動中にかごドア28が開いたときに、かご23を停止させる装置など)を含んでもよい。
【0084】
診断運転制御部131は、その他の条件を満たしていると判定した場合、エレベータ駆動部4を制御して、自動診断運転を開始させる。すなわち、診断運転制御部131は、高設定感知器が動作した場合であっても、過去の類似する揺れで異常が発生していないという条件と、その他の条件とを満たしたときには、自動診断運転を実行する。例えば、
図5の(a)に示す、番号が「1231」の参照データを取得した場合、該参照データの点検結果データは「異常なし」であるため、診断運転制御部131は、その他の条件を満たしていると判定した場合、エレベータ100に自動診断運転を開始させる。
【0085】
一方、類似状況特定部102から取得した参照データに含まれる点検結果データが、エレベータ100に異常があったことを示している場合(
図5に示す「異常あり」が格納されている場合)、診断運転制御部131は、自動診断運転を実行しない。また、該点検結果データが、エレベータ100に異常がないことを示していたとしても、その他の条件のいずれかを満たしていないと判定した場合、診断運転制御部131は、自動診断運転を実行しない。また、診断運転制御部131は、類似状況特定部102から、取得データに最も類似する参照データを特定できなかった旨の通知を取得した場合も、自動診断運転を実行しない。
【0086】
なお、診断運転制御部131は、P波感知器および低設定感知器から動作信号を取得した場合、類似状況特定部102からの出力を待つことなく、上述したその他の条件を満たしているか否かを判定する。そして、診断運転制御部131は、その他の条件を満たしていると判定した場合、エレベータ駆動部4を制御して、自動診断運転を開始させる。一方、その他の条件を満たしていないと判定した場合、診断運転制御部131は、自動診断運転を実行しない。
【0087】
また、P波感知器のみからの動作信号を取得した場合、運転制御部103は、エレベータ駆動部4を所定時間停止させた後、通常の運転を再開させる。
【0088】
診断運転制御部131は、自動診断運転を実行したか否かを示す情報(診断運転可否)を、対応付け部104へ出力する。また、診断運転制御部131は、自動診断運転が終了すると、自動診断運転により仮復旧運転ができない程度の異常が発見されたか否かを示す情報(以下では、「診断結果」と称する)を対応付け部104へ出力する。
【0089】
対応付け部104は、エレベータ100に発生した揺れに基づく参照データを作成し、参照データテーブル123を更新する。具体的には、対応付け部104は、類似状況特定部102から取得データを取得すると、診断運転制御部131からの診断運転可否の取得を待機する。診断運転可否を取得すると、対応付け部104は、取得していた取得データと、該診断運転可否とを対応付けて参照データを生成し、参照データテーブル123へ格納する。この参照データは、「点検結果」カラムに情報が格納されていない、未完成のデータである。
【0090】
また、対応付け部104は、診断運転制御部131から診断結果を取得すると、該診断結果を点検結果データとして「点検結果」カラムへ格納する。また、対応付け部104は、通信部11を介して、専門技術者によるエレベータ100の点検結果を示す情報(以下では、「点検結果」と称する。換言すれば、エレベータ100の異常の有無を示す情報。)を情報処理装置5から受信すると、該点検結果を点検結果データとして「点検結果」カラムへ格納する。すなわち、点検結果データは、上記の診断結果および点検結果を含む。なお、点検結果を格納するときに診断結果が既に格納されている場合、対応付け部104は、診断結果を点検結果で上書きする。これは、専門技術者による点検結果の方が、診断結果に比べて、エレベータ100の異常の有無を示す情報としての正確性が高いためである。
【0091】
情報処理装置5は、典型的には、専門技術者が使用するパーソナルコンピュータである。専門技術者は、エレベータ100の点検が終了すると、異常の有無を示す情報を情報処理装置5へ入力し、制御盤1へ送信する。
【0092】
(制御盤1が実行する処理の流れ)
図6は、制御盤1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートの前半部分である。
図7は、
図1に記載の制御盤が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートの後半部分である。なお、ここでは、自動診断運転および仮復旧運転との区別のために、エレベータ100の通常の運転を「平常運転」と称する。
【0093】
運転制御部103は、エレベータ100の平常運転を開始する(S1)。運転制御部103は、点検信号を受信するために待機している(S2)。点検信号とは、点検スイッチ(不図示)がOFFからONとなったときに、通信部11を介して運転制御部103へ送信される信号である。なお、点検スイッチはかご23内に設けられた操作盤ボックス(不図示)内にある。
【0094】
運転制御部103が点検信号を受信していない状態で(S2でNO)、データ取得部101がP波感知器からの動作信号を取得すると(S3でYES)、データ取得部101は、該動作信号を運転制御部103へ出力する。運転制御部103は、該動作信号を取得すると、エレベータ100の運転を停止させる(S4)。
【0095】
データ取得部101が、さらに、低設定感知器からの動作信号を取得すると(S5でYES)、データ取得部101は、所定時間が経過するまで待機する(S6)。該所定時間は、地震による建物の揺れが継続する時間であり、建物の高さにもよるが、典型的には、5〜10分程度である。すなわち、データ取得部101は、低設定感知器からの動作信号を取得すると、揺れが収まるまで待機する。該所定時間が経過すると(S6でYES)、データ取得部101は、高設定感知器からの動作信号を取得しているか否かを判定する(S7)。高設定感知器からの動作信号を取得している場合(S7でYES)、データ取得部101は、揺れデータおよび事象データを取得する(S8)。本実施形態では、データ取得部101は、揺れの大きさ、エレベータ揺れ方向、かご23の位置、かご23の移動の有無を取得し、揺れの発生日時と対応付けて取得データを生成し、類似状況特定部102へ出力する。
【0096】
続いて、類似状況特定部102は、取得データを取得すると、
図7に示すとおり、参照データテーブル123を参照して、過去の類似する揺れを示す参照データを特定する(S21)。類似状況特定部102は、特定した参照データを診断運転制御部131へ出力する。また、類似状況特定部102は、取得した取得データを対応付け部104へ出力する。
【0097】
診断運転制御部131は、参照データを取得すると、該参照データに含まれる点検結果データが、「異常なし」であるか否かを判定する(S22)。「異常なし」であると判定した場合(S22でYES)、診断運転制御部131は、自動診断運転の可否に関するその他の条件を満たしているか否かを判定する(S23)。該条件を満たしていると判定した場合(S23でYES)、診断運転制御部131は、エレベータ100に自動診断運転を開始させる(S24)。また、診断運転制御部131は、自動診断を実行したか否かを示す情報(診断運転可否)を対応付け部104へ出力する。対応付け部104は、取得した診断運転可否および取得データを参照データとして記憶する(S25)。具体的には、対応付け部104は、取得した診断運転可否および取得データを対応付けて参照データを生成し、参照データテーブル123へ格納する。
【0098】
診断運転制御部131は、自動診断運転にてエレベータ100の異常を検出する(S26)。異常が検出されないまま(S26でYES)、自動診断運転が終了した場合(S27でYES)、診断運転制御部131は、自動診断運転で異常が発見されたか否かを示す情報(診断結果)を対応付け部104へ出力する。この場合、診断運転制御部131は、自動診断運転で異常が発見されなかったことを示す診断結果を出力する。対応付け部104は、診断運転制御部131から診断結果を取得すると、生成した参照データに、該診断結果を点検結果データとして追加する(S28)。続いて、診断運転制御部131は、エレベータ100を仮復旧し、運転を再開させる(S29)。運転制御部103は、P波感知器およびS波感知器に対して信号を送信することにより、P波感知器およびS波感知器の自動リセットを行う(S30)。そして、制御盤1が実行する処理は、
図6に示すステップS2へ戻る。
【0099】
専門技術者が、エレベータ100を本復旧とするための点検を行うために、操作盤ボックスを開け、点検スイッチをOFFからONに切り替える。また、点検スイッチと同様に操作盤ボックス内にある運転スイッチを自動運転から手動運転に切り替える。これにより、制御盤1へ点検信号が送信される。運転制御部103が点検信号を取得すると(S2でYES)、運転制御部103はエレベータ100の運転を停止させる(S16)。
【0100】
専門技術者は、点検が終了すると、点検結果を情報処理装置5へ入力し、制御盤1へ送信させる。対応付け部104は、通信部11を介して点検結果を受信すると(S17)、生成した参照データに、該点検結果を点検結果データとして追加する(S18)。
【0101】
専門技術者の点検で異常が発見されなかった場合(S19でYES)、専門技術者は、点検スイッチをONからOFFに切り替え、運転スイッチを手動運転から自動運転に切り替える。これにより、制御盤1へ平常運転を開始するための信号が送信される。運転制御部103は、該信号を取得すると、エレベータ100の平常運転を再開させる(S20)。なお、この場合、すべての地震感知器2が既にリセットされているため、ステップS30で信号が送信されても、地震感知器2の自動リセットは行われない。あるいは、制御盤1が、地震感知器2の自動リセットを行ったか否かを示す情報を保持しておき、該情報が自動リセットを行ったことを示している場合、運転制御部103は、地震感知器2へ信号を送信しない構成であってもよい。この場合、ステップS30は省略される。
【0102】
ステップS5において、データ取得部101が、低設定感知器からの動作信号を取得していない場合(S5でNO)、データ取得部101は、所定時間が経過するまで待機する(ステップS11)。該所定時間はP波を検知した後、S波を検知するまでのタイムラグであり、典型的には、45〜60秒程度である。すなわち、データ取得部101は、P波感知器からの動作信号を取得すると、S波が来ないと特定することができるまで待機する。所定時間が経過するまでに低設定感知器からの動作信号を取得しなかった場合(S11でYES)、データ取得部101は、所定時間が経過した旨を運転制御部103へ通知する。運転制御部103は、データ取得部101からの通知を受けると、仮復旧運転中であるか否かを判定する(S12)。仮復旧運転中である場合(S12でYES)、運転制御部103は、仮復旧運転を再開する(S13)。一方、仮復旧運転中でない(S12でNO)、すなわち平常運転中である場合、運転制御部103は、平常運転を再開する(S14)。そして、運転制御部103は、P波感知器に対して信号を送信することにより、P波感知器をリセットさせる(S15)。そして、制御盤1が実行する処理は、
図6に示すステップS2へ戻る。
【0103】
ステップS7において、高設定感知器からの動作信号を取得していない場合(S7でNO)、制御盤1が実行する処理は、
図7に示すステップS23へ進む。具体的には、データ取得部101は、低設定感知器からの動作信号を運転制御部103へ出力する。そして、運転制御部103は、自動診断運転の可否に関するその他の条件を満たしているか否かを判定する。
【0104】
ステップS22において、診断運転制御部131が、取得した参照データに含まれる点検結果データが、「異常なし」でない(すなわち、「異常あり」である)と判定した場合(S22でNO)、制御盤1が実行する処理は、
図6に示すステップS17へ進む。すなわち、エレベータ100は、診断運転制御部131が診断運転を実行することなく、専門技術者の点検を待つ状態となる。これは、ステップS23にて、診断運転制御部131が、自動診断運転の可否に関するその他の条件を満たしていないと判定した場合(S23でNO)も同様である。
【0105】
ステップS26において、自動診断運転にてエレベータ100の異常が検出された場合(S26でNO)、診断運転制御部131は、エレベータ100の自動診断運転を終了させ(S31)、自動診断運転で異常が発見されたか否かを示す情報(診断結果)を対応付け部104へ出力する。この場合、診断運転制御部131は、自動診断運転で異常が発見されたことを示す診断結果を出力する。対応付け部104は、診断運転制御部131から診断結果を取得すると、生成した参照データに、該診断結果を点検結果データとして追加する(S32)。続いて、診断運転制御部131は、エレベータ100の運転を停止させる(S33)。そして、制御盤1が実行する処理は、
図6に示すステップS17へ進む。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る制御盤1は、基本的に自動診断運転を行うことができない、高設定感知器からの動作信号を取得した場合であっても、今回発生した揺れと類似する、過去に発生した揺れにおいてエレベータ100に異常が発生していない場合は、例外的に、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。これにより、異常が発生していないエレベータを迅速に仮復旧することができるので、エレベータの運転を迅速に再開することができる。また、異常が発生していないエレベータは、専門技術者の点検無しで復旧(仮復旧)できるため、専門技術者は、このようなエレベータの点検の優先度を下げることができる。よって、早急に点検することが必要なエレベータの数が減少するので、専門技術者の負担を減らすことができる。
【0107】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0108】
図8は、本実施形態に係る管理サーバ7(情報処理装置)の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、管理サーバ7は、複数のエレベータ(図示の例では、エレベータ200A、200B、200C)と通信可能に接続している。これら複数のエレベータは所定領域内に設置されたエレベータである。所定領域とは、例えば、同一市内、エレベータの保守会社を含む所定範囲内などであるが、この例に限定されるものではない。なお、以降の説明において、エレベータ200A、200B、200Cを区別しない場合、これらを総称してエレベータ200と称する場合がある。
【0109】
管理サーバ7は、エレベータ200から取得した取得データに基づいて、エレベータ200それぞれにおいて発生した揺れと類似する、エレベータ200のいずれかにおいて過去に発生した揺れを示す参照データを特定する。そして、該参照データに基づいて、各エレベータ200の自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを判定する。なお、管理サーバ7の要部構成については後述する。
【0110】
(制御盤1aの要部構成)
図9は、エレベータ200に含まれる制御盤1aの要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、制御盤1aは、実施形態1で説明した制御盤1と異なり、制御部10および記憶部12に代えて、制御部10aおよび記憶部12aを備えている。記憶部12aは、記憶部12と異なり、参照データテーブル123を記憶していない。
【0111】
制御部10aは、制御部10と異なり、データ取得部101および運転制御部103に代えて、データ取得部101aおよび運転制御部103aを含んでいる。また、制御部10aは、制御部10と異なり、類似状況特定部102および対応付け部104を含んでいない。
【0112】
データ取得部101aは、データ取得部101と同様に、加速度取得部111(第1取得部、第2取得部)、かご位置取得部112(第2取得部)、および移動状態取得部113(第2取得部)を含んでいる。データ取得部101aが、データ取得部101と異なる点は、通信部11を介して、取得データを管理サーバ7へ送信する点であり、その他の点は、データ取得部101と同様である。なお、本実施形態の取得データは、揺れの大きさ、エレベータ揺れ方向、かご23の位置、かご23の移動の有無、および揺れの発生日時を示す情報の他、エレベータ200を識別するためのエレベータ識別情報を含んでいる。
【0113】
運転制御部103aは、運転制御部103と同様に、エレベータの運転を制御する。運転制御部103aは、診断運転制御部131aを含んでいる。診断運転制御部131aは、診断運転制御部131と同様に、仮復旧のための自動診断運転を制御する。診断運転制御部131aが、診断運転制御部131と異なる点は、参照データに含まれる点検結果データが、エレベータ200に異常がないことを示しているか否かの判定、換言すれば自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かの判定を行わない点である。具体的には、該判定は管理サーバ7で行われ、診断運転制御部131aは、管理サーバ7から送信される判定結果を示す通知(以下では、「判定結果通知」と称する)を待機する。受信した判定結果通知が、自動診断仮復旧運転の実行を許容する旨の通知(以下では、「診断運転許可通知」と称する)である場合、診断運転制御部131aは、その他の条件を満たしているか否かを判定し、条件を満たしていると判定した場合、エレベータ200に自動診断運転を開始させる。一方、受信した判定結果通知が、自動診断仮復旧運転の実行を許容しない旨の通知(以下では、「診断運転不許可通知」と称する)である場合、診断運転制御部131aは、自動診断運転を行わない。また、診断運転制御部131aは、通信部11を介して、診断運転可否および診断結果を管理サーバ7へ送信する。
【0114】
(管理サーバ7の要部構成)
再び
図8を参照して、管理サーバ7の要部構成を説明する。管理サーバ7は、図示のように、制御部70、通信部71(第1取得部、第2取得部)、および記憶部72を備えている。制御部70は、管理サーバ7の各部を統括して制御する。通信部71は、管理サーバ7の外部の装置と有線または無線で通信可能に接続し、該装置からデータを取得する。通信部11は例えば、エレベータ200の制御盤1aから送信された取得データを取得する。記憶部72は、管理サーバ7が使用する各種データを記憶する。記憶部72は少なくとも、参照データテーブル721を記憶している。
【0115】
参照データテーブル721は、実施形態1で説明した参照データテーブル123と同様に、参照データを格納するテーブルである。本実施形態では、参照データが示す揺れを受けたエレベータ(参照エレベータ)は、エレベータ200のいずれかである。すなわち、本実施形態に係る参照エレベータは、取得データを送信したエレベータ200(対象エレベータ)と同一のエレベータ200であってもよいし、異なるエレベータ200であってもよい。換言すれば、本実施形態に係る参照データテーブルは、各エレベータ200が過去に受けた高設定感知器(または、〔診断〕設定の地震感知器2)が動作する揺れの大きさを示す揺れデータと、該揺れの後の各エレベータ200の点検の結果を示す点検結果データとを対応付けた参照データを格納している。
【0116】
制御部70は、
図8に示すように、類似状況特定部701(特定部)、診断運転判定部702(運転許容部)、および対応付け部703を含んでいる。
【0117】
類似状況特定部701は、類似状況特定部102と同様に、対象エレベータが受けた揺れに類似する揺れを示す参照データを特定する。類似状況特定部701は、例えば対象エレベータがエレベータ200Aである場合、エレベータ200Aの参照データだけでなく、すべてのエレベータ200の参照データから、エレベータ200Aが受けた揺れに類似する揺れを示す参照データを特定する。
【0118】
図10の(a)は、参照データテーブル721の一具体例を示す図であり、
図10の(b)は、取得データの一具体例を示す図である。
図10の(a)に示すように、本実施形態に係る参照データは、実施形態1で説明した参照データにエレベータ識別情報が含まれたものである。なお、
図10に示すように、本実施形態に係る参照データおよび取得データにおけるかご23の位置には、かご23の位置が共振範囲内であるか、または、非共振範囲内であるかを示す情報が対応付けられている。これにより、類似状況特定部701は、参照データおよび取得データを比較するだけで、「参照データに含まれるかご23の位置が共振範囲内であるか否かと、取得データに含まれるかご23の位置が共振範囲内であるか否かと、が一致する」という条件を満たすか否かを判定することができる。また、
図10の例では、エレベータ識別情報として、
図8にてエレベータに付した部材番号を用いているが、エレベータ識別情報はこの例に限定されない。
【0119】
例えば、番号が「7209」の参照データは、エレベータ200Aにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2010年4月9日2時11分」、揺れの大きさが「380Gal」、揺れの方向が「80°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「1階であり、共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可否の判定結果が「否」、点検結果が「異常あり」であることを意味している。
【0120】
また、番号が「7210」の参照データは、エレベータ200Bにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2010年4月9日2時11分」、揺れの大きさが「390Gal」、揺れの方向が「64°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「7〜8階であり、非共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「有り」、自動診断運転の可否の判定結果が「否」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。ここで、かご23の位置が「7〜8階」とはかご23が7階から8階に向けて移動しているときに揺れが発生し、その後、かご23が8階で停止したことを表している。
【0121】
また、番号が「7211」の参照データは、エレベータ200Cにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2010年4月9日2時11分」、揺れの大きさが「355Gal」、揺れの方向が「17°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「10階であり、非共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可否の判定結果が「可」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。
【0122】
また、番号が「7239」の参照データは、エレベータ200Aにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2014年9月22日13時54分」、揺れの大きさが「365Gal」、揺れの方向が「22°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「6〜5階であり、共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「有り」、自動診断運転の可否の判定結果が「可」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。ここで、かご23の位置が「6〜5階」とはかご23が6階から5階に向けて移動しているときに揺れが発生し、その後、かご23が5階で停止したことを表している。
【0123】
また、番号が「7240」の参照データは、エレベータ200Bにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2014年9月22日13時54分」、揺れの大きさが「330Gal」、揺れの方向が「39°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「10階であり、非共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可否の判定結果が「可」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。
【0124】
また、番号が「7241」の参照データは、エレベータ200Cにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2014年9月22日13時54分」、揺れの大きさが「345Gal」、揺れの方向が「92°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「1階であり、共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」、自動診断運転の可否の判定結果が「否」、点検結果が「異常なし」であることを意味している。
【0125】
また、
図10の(b)に示す取得データは、エレベータ200Aにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2017年7月24日9時51分」、揺れの大きさが「350Gal」、揺れの方向が「15°」、揺れが発生した時のかご23の位置が「10階であり、非共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」であることを意味している。
【0126】
類似状況特定部701は、例えば、類似状況特定部102と同様の方法で参照データを1つ特定する。この特定方法については、実施形態1で説明しているため、ここでの説明を省略する。例えば、
図10の(b)に示す取得データを取得した場合、類似状況特定部701は、この特定方法に基づいて、番号が「7211」である参照データ(
図10の(a)において、破線で囲った参照データ)を特定する。
【0127】
類似状況特定部701は、特定した、取得データに最も類似する参照データを読み出し、取得データに含まれるエレベータ識別情報を対応付けて、診断運転判定部702へ出力する。なお、類似状況特定部701は、取得データに最も類似する参照データを特定することができない場合、その旨を診断運転判定部702へ通知し、自動診断仮復旧運転の実行を許容させないことが望ましい。また、類似状況特定部701は、取得データを対応付け部703へ出力する。
【0128】
なお、類似状況特定部701が、取得データに最も類似する参照データを特定するための条件は、実施形態1で説明した4つの条件に限定されない。例えば、該4つの条件に加え(または、上記の4つの条件の何れかに代えて)、「エレベータ200が設置された建物の高さがほぼ同じである」という条件があってもよい。この条件がある場合、取得データおよび参照データには、建物の高さを示す情報が含まれる。該情報は、例えば、該建物の最上階の階数を示す数字であってもよい。この場合、「エレベータ200が設置された建物の高さがほぼ同じである」という条件はすなわち、「最上階の階数を示す数字が同一である」という条件であってもよい。なお、建物の高さを示す情報は、エレベータ200の記憶部12aに記憶されているレイアウト情報121に含めておけばよく、データ取得部101aは、レイアウト情報121から該情報を読み出して、取得データに含めればよい。
【0129】
診断運転判定部702は、対象エレベータの自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを判定する。診断運転判定部702は、類似状況特定部701から、参照データを取得すると、該参照データに含まれる点検結果データが、エレベータ200に異常がないことを示しているか否か(
図10に示す「異常なし」が格納されているか否か)を判定し、判定結果通知をエレベータ200へ送信する。エレベータ200に異常がないことを示していると判定した場合、診断運転判定部702は、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。そして、診断運転判定部702は、通信部71を介して、参照データと共に取得したエレベータ識別情報が示すエレベータへ、診断運転許可通知を送信する。一方、類似状況特定部701から取得した参照データに含まれる点検結果データが、エレベータ200に異常があったことを示している場合(
図10に示す「異常あり」が格納されている場合)、診断運転判定部702は、自動診断仮復旧運転の実行を許容しない。そして、診断運転判定部702は、通信部71を介して、参照データと共に取得したエレベータ識別情報が示すエレベータへ、診断運転不許可通知を送信する。
【0130】
例えば、
図10の(a)に示す、番号が「7211」の参照データを取得した場合、該参照データの点検結果データは「異常なし」であるため、診断運転判定部702は、エレベータ200に診断運転許可通知を送信する。
【0131】
対応付け部703は、エレベータ200に発生した揺れに基づく参照データを生成し、参照データテーブル721を更新する。対応付け部703は、例えば、対応付け部104と同様の方法で対応付けデータを生成する。なお、該方法は実施形態1で説明しているため、ここでの説明を省略する。
【0132】
(制御盤1aが実行する処理の流れ)
図11は、制御盤1aが実行する処理の流れの一例を示すフローチャートの前半部分(取得データ送信処理)である。なお、
図11では、
図6と同じ処理を示すステップについては、
図6と同じステップ番号を付している。また、
図6と同じ処理を示すステップについては、ここでの説明を省略する。
【0133】
データ取得部101aは、通信部11を介して、ステップS8で取得した取得データを管理サーバ7へ送信する(S41)。
【0134】
なお、本実施形態に係るエレベータ200は、ステップS16の処理を実行した後、
図6に示すステップS17およびS18の処理を実行することなく、ステップS19の処理を実行する。
【0135】
図12は、制御盤1aが実行する処理の流れの一例を示すフローチャートの後半部分(運転再開処理)である。なお、
図12では、
図7と同じ処理を示すステップについては、
図7と同じステップ番号を付している。また、
図7と同じ処理を示すステップについては、ここでの説明を省略する。
【0136】
診断運転制御部131aは、判定結果通知を受信するために待機している(S51)。判定結果通知を受信すると(S51でYES)、診断運転制御部131aは、該判定結果通知が診断運転許可通知であるか否かを判定する(S52)。受信した判定結果通知が診断運転許可通知である場合(S51でYES)、診断運転制御部131aは、ステップS23およびS24の処理を実行する。そして、診断運転制御部131aは、通信部11を介して、診断運転可否を管理サーバ7へ送信する(S53)。その後、診断運転制御部131aは、ステップS26およびS27の処理を実行する。そして、診断運転制御部131aは、通信部11を介して、診断結果を管理サーバ7へ送信する(S54)。この場合、診断運転制御部131aは、自動診断運転で異常が発見されなかったことを示す診断結果を送信する。その後、診断運転制御部131aがステップS29の処理を実行し、続いて、運転制御部103aがステップS30の処理を実行する。以上で運転再開処理は終了し、取得データ送信処理は
図11に示すステップS2へ戻る。
【0137】
ステップS52において、受信した判定結果通知が診断運転不許可通知である場合(S52でNO)、診断運転制御部131aは、運転再開処理を終了する。そして、取得データ送信処理は
図11に示すステップS19へ進む。すなわち、エレベータ200は、診断運転制御部131aが診断運転を実行することなく、専門技術者の点検を待つ状態となる。
【0138】
また、診断運転制御部131aは、ステップS31の処理を実行した後、通信部11を介して、診断結果を管理サーバ7へ送信する(S55)。
【0139】
(管理サーバ7が実行する処理の流れ)
図13は、管理サーバ7が実行する診断運転判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、類似状況特定部701は、エレベータ200から送信される取得データを受信するために待機している(S61)。通信部71を介して取得データを受信すると(S61でYES)、類似状況特定部701は、参照データテーブル721を参照して、過去の類似する揺れを示す参照データを特定する(S62)。類似状況特定部701は、特定した参照データに、取得データに含まれるエレベータ識別情報を対応付けて診断運転判定部702へ出力する。また、類似状況特定部701は、取得データを対応付け部703へ出力する。
【0140】
診断運転判定部702は、参照データを取得すると、該参照データに含まれる点検結果データが、「異常なし」であるか否かを判定する(S63)。「異常なし」であると判定した場合(S63でYES)、診断運転判定部702は、通信部71を介して、診断運転許可通知をエレベータ識別情報が示すエレベータ200(対象エレベータ)へ送信する(S64)。一方、「異常なし」でないと判定した場合(S63でNO)、診断運転判定部702は、通信部71を介して、診断運転不許可通知をエレベータ識別情報が示すエレベータ200(対象エレベータ)へ送信する(S65)。
【0141】
図14は、管理サーバ7が実行する参照データ生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、対応付け部703は、エレベータ200から送信される診断運転可否を受信するために待機している(S71)。通信部71を介して診断運転可否を受信すると(S71でYES)、対応付け部703は、受信した診断運転可否および取得した取得データを参照データとして記憶する(S72)。具体的には、対応付け部703は、診断運転可否および取得データを対応付けて参照データを生成し、参照データテーブル721へ格納する。
【0142】
また、対応付け部703は、通信部71を介して、エレベータ200から診断結果を取得した場合(S73でYES)、生成した参照データに、該診断結果を点検結果データとして追加する(S74)。一方、エレベータ200から診断結果を取得しなかった場合(S73でNO)、対応付け部703は、ステップS74の処理を省略する。
【0143】
続いて、対応付け部703は、生成した参照データについて、情報処理装置5から送信される、専門技術者による点検結果を示す情報(点検結果)の受信を待機する状態となる(S75)。対応付け部703は、通信部71を介して該情報を受信すると(S75でYES)、生成した参照データに、該点検結果を点検結果データとして追加する(S76)。
【0144】
以上のように、本実施形態に係る管理サーバ7は、対象エレベータが受けた揺れと類似する、過去に発生した揺れを示す参照データを、所定領域内に設置された複数のエレベータにおける参照データから特定する。これにより、対象エレベータが受けた揺れと類似する揺れを示す参照データを特定できる可能性が高くなる。よって、対象エレベータを仮復旧することができる可能性が高くなる。
【0145】
(実施形態1および2の変形例)
対応付け部104および対応付け部703は、参照データの「点検結果」カラムに診断結果が格納された状態で、専門技術者によるエレベータ100の点検の結果を示す情報(点検結果)を受信した場合、診断結果および点検結果の両方を格納してもよい(すなわち、診断結果を残してもよい)。この場合、対応付け部104および対応付け部703は、診断結果と点検結果が異なる場合に点検結果を正しく選択できるように、いずれの情報が点検結果であるかを識別できるようにしておく。例えば、対応付け部104および対応付け部703は、診断結果および点検結果の少なくとも一方に、識別用の情報を対応付ける。これにより、診断結果と点検結果が異なる場合であっても、診断運転制御部131および診断運転判定部702は、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを正確に判定することができる。例えば、診断結果が「異常なし」であり、点検結果が「異常あり」である場合に、診断運転制御部131および診断運転判定部702は、自動診断仮復旧運転の実行を許容しないと判定することができる。
【0146】
また、診断運転判定部702は、参照データの点検結果データが「異常あり」であると判定した場合、対象エレベータであるエレベータ200が自動診断仮復旧運転を実行しないことが確定するので、その旨を示す診断運転可否を対応付け部703へ出力してもよい。
【0147】
また、短期間で複数回の揺れが発生した場合、類似状況特定部102および類似状況特定部701が特定した参照データの「点検結果」カラムに情報が格納されていない可能性がある。この場合、診断運転制御部131および診断運転判定部702は、参照データの「自動診断運転」カラムの情報に基づいて、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを決定してもよい。具体的には、「自動診断運転」カラムに自動診断運転を実行したことを示す情報(
図5および
図11に示す「可」)が格納されている場合、診断運転制御部131および診断運転判定部702は、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。一方、「自動診断運転」カラムに自動診断運転を実行しなかったことを示す情報(
図5および
図11に示す「否」)が格納されている場合、診断運転制御部131および診断運転判定部702は、自動診断仮復旧運転の実行を許容しない。また、診断運転制御部131および診断運転判定部702は、参照データの「点検結果」カラムに情報が格納されていない場合、自動診断仮復旧運転の実行を許容しない構成であってもよい。
【0148】
〔実施形態3〕
本発明のさらなる別の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0149】
図15は、本実施形態に係る管理サーバ7aの要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、管理サーバ7aは、実施形態2で説明した管理サーバ7と異なり、制御部70および記憶部72に代えて、制御部70aおよび記憶部72aを備えている。記憶部72aは、記憶部72と異なり、参照データテーブル721に代えて、参照データテーブル721aを記憶している。また、記憶部72aは、新たに運転許可点数722を記憶している。なお、参照データテーブル721および運転許可点数722の詳細は後述する。
【0150】
制御部70aは、制御部70と異なり、類似状況特定部701を含んでいない。また、制御部70aは、診断運転判定部702および対応付け部703に代えて、診断運転判定部702a(運転許容部)および対応付け部703aを含んでいる。また、制御部70aは、新たに、揺れ点数算出部704(算出部)および許可点数更新部705を含んでいる。
【0151】
揺れ点数算出部704は、取得データに基づいて、対象エレベータの損傷度合を算出する。例えば、揺れ点数算出部704は、取得データに含まれる揺れの大きさ、エレベータ揺れ方向、かご23の位置、およびかご23の移動の有無をそれぞれ点数化し、これらを合計し、損傷度合を示す点数(以下では、「揺れ点数」と称する)を算出する。
【0152】
図16は、揺れ点数の算出の一具体例を示す図である。
図16の(a)に示す例の取得データは、エレベータ200Aにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2017年7月24日9時51分」、揺れの大きさが「350Gal」、揺れの方向が「15°であり、エレベータ揺れ方向はかご側ガイドレール方向でない」、揺れが発生した時のかご23の位置が「10階であり、非共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「無し」であることを意味している。また、
図16の(b)に示す例の取得データは、エレベータ200Bにおいて発生した揺れについて、揺れの発生日時が「2017年7月24日9時51分」、揺れの大きさが「350Gal」、揺れの方向が「85°であり、エレベータ揺れ方向はかご側ガイドレール方向」、揺れが発生した時のかご23の位置が「1階であり、共振範囲内」、揺れが発生した時のかご23の移動が「有り」であることを意味している。なお、「かご側ガイドレール方向」の詳細については後述する。
【0153】
図示のように、本実施形態に係る揺れ点数算出部704は、揺れの大きさの値をそのまま点数として用いる。図示の例の場合、揺れの大きさは350Galであるので、揺れの大きさの点数は350である。
【0154】
また、本実施形態に係る揺れ点数算出部704は、揺れの大きさ以外の事象について、所定の判定を行い、該判定の結果に基づいて点数を決定する。所定の判定の典型例は、(1)エレベータ揺れ方向が、ロープ24がエレベータ200のかご23側のガイドレール(不図示)の方向へ揺れる方向(上述の「かご側ガイドレール方向」)であるか否か、(2)揺れが発生した時のかご23の位置が共振範囲内であるか否か、(3)揺れが発生した時にかご23が移動していたか否か、である。
【0155】
エレベータ揺れ方向がかご側ガイドレール方向である場合、昇降路21に設けられた各種スイッチ(不図示)にロープ24が接触し、破損する可能性が、かご側ガイドレール方向でない場合に比べて高くなる。一般的なエレベータにおいては、各種スイッチはかご側のガイドレールにブラケット(不図示)を介して配置されるためである。各種スイッチの一例としては、位置検出スイッチが挙げられる。位置検出スイッチは、かご23の床と各階床との位置を合わせるために使用するスイッチである。該スイッチが破損すると、かご23の各階床での停止時に、かご23の床と各階床との位置がずれる危険性がある。このため、揺れ点数算出部704は、エレベータ揺れ方向がかご側ガイドレール方向である場合、かご側ガイドレール方向でない場合に比べて点数を高くする。例えば、図示のように、エレベータ揺れ方向がかご側ガイドレール方向である場合の点数を「20」とし、かご側ガイドレール方向でない場合の点数を「5」とする。なお、エレベータ揺れ方向がかご側ガイドレール方向であるか否かは、エレベータ揺れ方向(すなわち角度)が、所定の数値範囲内(例えば、70°〜100°など)に含まれているか否かによって判定することができる。
【0156】
また、かご23の位置が共振範囲内である場合、ロープ24は大きく揺れる可能性が高い。この場合、ロープ24の接触により昇降路21内の各部材が破損している可能性は、かご23の位置が非共振範囲内である場合に比べて高くなる。このため、揺れ点数算出部704は、かご23の位置が共振範囲内である場合、非共振範囲内である場合に比べて点数を高くする。例えば、図示のように、かご23の位置が共振階である場合の点数を「20」とし、非共振階である場合の点数を「0」とする。
【0157】
また、揺れが発生した時にかご23が移動している場合、移動していない場合に比べて、かご23の脱レールが起こっている可能性が高い。このため、揺れ点数算出部704は、揺れが発生した時にかご23が移動している場合、移動していない場合に比べて点数を高くする。例えば、図示のように、揺れが発生した時にかご23が移動している場合の点数を「10」とし、移動していない場合の点数を「5」とする。
【0158】
この結果、揺れ点数は、
図16の(a)に示す取得データの場合は360、
図16の(b)に示す取得データの場合は、400となる。揺れ点数算出部704は、算出した揺れ点数に、取得データに含まれるエレベータ識別情報を対応付けて、診断運転判定部702aへ出力する。また、揺れ点数算出部704は受信した取得データと、算出した揺れ点数とを対応付け部704aへ出力する。
【0159】
再び
図15を参照し、制御部70aについて説明する。診断運転判定部702aは、診断運転判定部702と同様に、対象エレベータの自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを判定する。具体的には、診断運転判定部702aは、揺れ点数を取得すると、記憶部72aから運転許可点数722を読み出し、取得した揺れ点数が運転許可点数722以下であるか否かを判定し、判定結果通知をエレベータ200へ送信する。
【0160】
ここで、運転許可点数722について説明する。運転許可点数722は、エレベータ200に異常がないとの点検結果データを含む参照データに含まれる揺れデータおよび事象データに基づいて算出された閾値である。運転許可点数722の算出方法は得に限定されないが、本実施形態では、運転許可点数722は、該参照データに含まれる揺れデータおよび事象データを取得データとして受信したときに揺れ点数算出部704が算出した揺れ点数の平均値である。
【0161】
揺れ点数が運転許可点数722以下であると判定した場合、診断運転判定部702aは、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。そして、診断運転判定部702は、通信部71を介して、参照データと共に取得したエレベータ識別情報が示すエレベータへ、診断運転許可通知を送信する。一方、揺れ点数が運転許可点数722より大きいと判定した場合、診断運転判定部702aは、自動診断仮復旧運転の実行を許容しない。そして、診断運転判定部702は、通信部71を介して、参照データと共に取得したエレベータ識別情報が示すエレベータへ、診断運転不許可通知を送信する。
【0162】
例えば、運転許可点数722が「380」であり、かつ、診断運転判定部702aが、
図16の(a)に示す揺れ点数を取得した場合、揺れ点数「360」は「380」以下であるので、診断運転判定部702aは、自動診断仮復旧運転の実行を許容し、エレベータ200Aへ診断運転許可通知を送信する。一方、運転許可点数722が「380」であり、かつ、診断運転判定部702aが、
図16の(b)に示す揺れ点数を取得した場合、揺れ点数「400」は「380」より大きいので、診断運転判定部702aは、自動診断仮復旧運転の実行を許容せず、エレベータ200Bへ診断運転不許可通知を送信する。
【0163】
対応付け部703aは、対応付け部703と同様に、エレベータ200に発生した揺れに基づく参照データを生成し、参照データテーブル721を更新する。対応付け部703aが対応付け部703と異なる点は、まず、取得した揺れ点数を含む参照データを生成する点である。つまり、本実施形態に係る参照データテーブル721aは、揺れ点数を格納するカラムを含んでいる。さらに、対応付け部703aは、エレベータ200に異常がないとの点検結果データを含む参照データを生成した場合、運転許可点数722の更新指示を許可点数更新部705へ送信する点が、対応付け部703と異なる。
【0164】
許可点数更新部705は、運転許可点数722を更新する。具体的には、許可点数更新部705は、対応付け部703aからの指示を受けると、参照データテーブル721aから、エレベータ200に異常がないとの点検結果データを含む参照データ、すなわち、「点検結果」カラムに「異常なし」が格納されている参照データの揺れ点数を読み出す。そして、許可点数更新部705は、読み出した揺れ点数をすべて加算し、加算後の値を、読み出した揺れ点数の数で除算する。これにより、許可点数更新部705は、新たに生成された参照データにおける揺れ点数を考慮した運転許可点数722を算出することができる。そして、許可点数更新部705は、算出した点数に、運転許可点数722を更新する。
【0165】
(管理サーバ7aが実行する処理の流れ)
図17は、管理サーバ7aが実行する診断運転判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図17では、
図13と同じ処理を示すステップについては、
図14と同じステップ番号を付している。また、
図13と同じ処理を示すステップについては、ここでの説明を省略する。
【0166】
ステップS61で取得データを受信すると、揺れ点数算出部704は、該取得データに基づいて揺れ点数を算出する(S82)。揺れ点数算出部704は、算出した揺れ点数に、取得データに含まれるエレベータ識別情報を対応付けて診断運転判定部702aへ出力する。また、揺れ点数算出部704は、取得データおよび揺れ点数を対応付け部703aへ出力する。
【0167】
診断運転判定部702aは、揺れ点数を取得すると、記憶部72aから運転許可点数722を読み出し、取得した揺れ点数が運転許可点数722以下であるか否かを判定する(S83)。取得した揺れ点数が運転許可点数722以下であると判定した場合(S83でYES)、診断運転判定部702aは、ステップS64の処理を実行する。一方、取得した揺れ点数が運転許可点数722以下でないと判定した場合(S83でNO)、診断運転判定部702aは、ステップS65の処理を実行する。
【0168】
図18は、管理サーバ7aが実行する参照データ生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図18では、
図14と同じ処理を示すステップについては、
図15と同じステップ番号を付している。また、
図14と同じ処理を示すステップについては、ここでの説明を省略する。
【0169】
ステップS71で診断運転可否を受信すると、対応付け部703aは、受信した診断運転可否、並びに、取得した取得データおよび揺れ点数を参照データとして記憶する(S91)。
【0170】
対応付け部703aは、参照データにおける「点検結果」カラムに情報が格納されると、該情報が、エレベータ200に異常がないことを示す、「異常なし」であるか否かを判定する(S92)。「異常なし」である場合、対応付け部703aは、運転許可点数722の更新指示を許可点数更新部705へ送信する。許可点数更新部705は、対応付け部703aの指示に従い、運転許可点数722を更新する(S93)。
【0171】
以上のように、本実施形態に係る管理サーバ7aは、取得データに基づき算出した揺れ点数が、エレベータ200に異常がないとの点検結果データを含む参照データに基づく運転許可点数722以下である場合、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。これにより、取得データに類似する1つの参照データでなく、エレベータ200に異常がないとの点検結果データを含むすべての参照データに基づいて、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを判定することができる。よって、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かをより正確に判定することができる。
【0172】
(実施形態3の変形例)
運転許可点数722は、専門技術者による点検結果が「異常なし」である参照データのみを用いて算出される点数であってもよい。換言すれば、許可点数更新部705は、自動診断運転による診断結果が「異常なし」である参照データは、許可点数の更新に用いない。これにより、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かをさらに正確に判定することができる。この例の場合、対応付け部703aは、生成した参照データに、点検結果として、「異常なし」が格納されたとき、許可点数更新部705へ運転許可点数722の更新指示を出力する。また、許可点数更新部705は、該更新指示を受けると、点検結果として「異常なし」が格納されている参照データに含まれる揺れ点数を読み出し、運転許可点数722を更新する。なお、この例の場合、「点検結果」カラムに格納されている情報は、点検結果であるか、または、診断結果であるかを識別可能な情報となっている。例えば、対応付け部703aは、診断結果および点検結果の少なくとも一方に、識別用の情報を対応付ける。
【0173】
揺れ点数算出部704は、取得データを用いて、対象エレベータにおいて発生した揺れを再現することで対象エレベータの損傷度合を推定し、該損傷度合を点数化してもよい。すなわち、揺れ点数算出部704はいわゆるシミュレータであってもよい。本変形例に係る揺れ点数算出部704は、取得データを受信すると、該取得データに対応付けられているエレベータ識別情報を用いてレイアウトテーブル(不図示)を検索し、エレベータ識別情報に対応付けられているレイアウト情報を読み出す。揺れ点数算出部704は、読み出したレイアウト情報を用いて、揺れが発生したエレベータ200を管理サーバ7aにおいて仮想的に生成する。また、揺れ点数算出部704は、取得データに含まれる、揺れが発生した時のかご23の位置、揺れが発生した時のかご23の移動の有無および移動方向(移動している場合のみ)を用いて、仮想的に生成したエレベータ200において、揺れが発生した時のエレベータ200のかご23の状態を再現する。すなわち、本変形例に係る取得データには、かご23が移動している場合のみ、かご23の移動方向がさらに含まれている。また、揺れ点数算出部704は、取得データに含まれるエレベータ200の揺れの方向および大きさを用いて、仮想的に生成したエレベータ200において、エレベータ200の揺れを再現する。これにより、揺れ点数算出部704は、エレベータ200の揺れを再現するとともに、再現した揺れにより、エレベータ200に発生したと予想される損傷を再現することができる。
【0174】
なお、レイアウトテーブルとは、各エレベータ200のレイアウト情報121を、エレベータ識別情報と対応付けて格納するデータである。
【0175】
揺れ点数算出部704は、上記損傷の度合を、所定の基準に基づいて点数化することで揺れ点数を算出する。本変形例では、0〜100点の範囲で、揺れ点数を算出する例を説明するが、揺れ点数の範囲はこの例に限定されない。具体的には、揺れ点数算出部704は、発生させた損傷について、損傷の量、損傷の激しさ、運転再開に与える影響の大きさ、修理の困難さなどの項目ごとに設定された基準を参照して揺れ点数を算出する。この例では、項目の数が4つであるので、項目ごとに25点を上限として損傷を点数化し、4つの点数を合計して揺れ点数を算出してもよい。なお、上記の項目の種類および数、並びに、揺れ点数の算出方法は一例であり、この例に限定されるものではない。また、揺れ点数を算出するための基準は、予め記憶部72aに記憶されていればよい(
図15では不図示)。
【0176】
なお、管理サーバ7aとシミュレータとは別装置であってもよい。この例の場合、揺れ点数算出部704は、通信部71を介して、受信した取得データをシミュレータへ送信し、エレベータ200に発生したと予想される損傷を再現させる。揺れ点数算出部704は、該損傷を示す情報をシミュレータから取得し、例えば上述した方法で、揺れ点数を算出する。
【0177】
また、診断運転判定部702aは、取得した揺れ点数が運転許可点数722以下であるか否かに加え、参照データテーブル721に、取得データに含まれる揺れの大きさ以上の揺れを示し、かつ、エレベータ200に異常がないとの点検結果データを含む参照データが存在するか否かを判定する構成であってもよい。本変形例に係る診断運転判定部702aは、取得した揺れ点数が運転許可点数722以下であり、かつ、上記のような参照データが存在する場合に、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。すなわち、本変形例において、揺れ点数が運転許可点数722以下であること、および、参照データテーブル721に、上記のような参照データが存在することは、自動診断仮復旧運転の実行を許容する必要条件である。
【0178】
〔各実施形態に共通の変形例〕
以下、各実施形態に共通の変形例を、実施形態1に適用した場合について説明する。なお、以下に説明する変形例は実施形態2および3にも適用可能である。
【0179】
制御盤1は、取得した揺れデータと、参照データに含まれる揺れデータおよび点検結果データとに基づいて、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かを判定してもよい。具体的には、診断運転制御部131は、参照データテーブル123に、取得データとして取得した揺れデータが示す揺れの大きさ以上の揺れを示し、かつ、エレベータ100に異常がない旨の点検結果データを含む参照データが存在するか否かを判定する。そして、診断運転制御部131は、このような参照データが存在する場合、自動診断仮復旧運転の実行を許容する。一方、このような参照データが存在しない場合、自動診断仮復旧運転の実行を許容しない。なお、この変形例の場合、取得データは揺れデータのみを含むものであってもよい。また、参照データは、揺れデータおよび点検結果データのみを含むものであってもよい。
【0180】
また、制御盤1は、P波感知器および低設定感知器のみから動作信号を取得した場合であっても、取得データを生成するとともに、該取得データから参照データを生成して、参照データテーブル123へ格納する構成であってもよい。
【0181】
具体的には、データ取得部101は、少なくともP波感知器および低設定感知器から動作信号を取得すると、揺れデータおよび事象データを取得し、取得データを生成する。また、対応付け部104は、取得データを取得すると、参照データを生成し、参照データテーブル123へ格納する。
【0182】
なお、P波感知器および低設定感知器のみから動作信号を取得した場合、診断運転制御部131は、その他の条件を満たしていれば自動診断運転を開始させる。このため、データ取得部101は、P波感知器および低設定感知器のみから動作信号を取得して取得データを生成した場合、該取得データを類似状況特定部102へ出力せず、対応付け部104へ出力してもよい。換言すれば、制御盤1は、P波感知器および低設定感知器のみから動作信号を取得して取得データを生成した場合、対象エレベータが受けた揺れに類似する揺れを示す参照データの特定、および、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かの判定を行わない構成であってもよい。
【0183】
また、前段落の構成を実施形態2および3に適用する場合、エレベータ200が管理サーバ7または管理サーバ7aへ送信する取得データに、P波感知器および低設定感知器のみから動作信号を取得したことを示す情報を付加しておけばよい。これにより、管理サーバ7または管理サーバ7aは、受信した取得データについて、対象エレベータが受けた揺れに類似する揺れを示す参照データの特定、および、自動診断仮復旧運転の実行を許容するか否かの判定を行うか否かを特定することができる。
【0184】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御盤1、1a、管理サーバ7、7aの制御ブロック(特に制御部10、10a、70、70a)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0185】
後者の場合、制御盤1、1a、管理サーバ7、7aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0186】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。