特許第6711439号(P6711439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6711439熱収縮性ポリエステル系ラベル、包装体、熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711439
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系ラベル、包装体、熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/04 20060101AFI20200608BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200608BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20200608BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20200608BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   G09F3/04 C
   C08J5/18CFD
   B29C65/48
   B65D77/20 S
   B65D65/02 E
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-88846(P2019-88846)
(22)【出願日】2019年5月9日
(62)【分割の表示】特願2015-549704(P2015-549704)の分割
【原出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-163475(P2019-163475A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-183426(P2014-183426)
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-231491(P2014-231491)
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】多保田 規
【審査官】 堀川 あゆ美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−173041(JP,A)
【文献】 特開2010−247540(JP,A)
【文献】 特開2003−94576(JP,A)
【文献】 特開2014−24902(JP,A)
【文献】 特開2013−134446(JP,A)
【文献】 特開2008−280371(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0170341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/04
B29C 65/48
B65D 65/02
B65D 77/20
C08G 63/00
C08J 5/18
G09F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて溶剤で接着することにより形成されたチューブ状の熱収縮性ポリエステル系ラベルであって、
前記溶剤が、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤を含み、
前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの溶剤接着部に残存する1,3−ジオキソラン濃度が4000ppm以上16000ppm以下であり、
前記溶剤接着部に残存する残存溶剤100質量%中、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物の合計量が1質量%以上10質量%以下であり、
溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上、
であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項2】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが12μm以上30μm以下である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項3】
1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤と、前記非環状化合物を含む接着用溶剤により接着されている請求項1または2に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルを包装対象物の少なくとも外周の一部に有することを特徴とする包装体。
【請求項5】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着面の一部または全面に、予め、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物を1種以上含む溶剤を塗布しておき、その後、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤で、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【請求項6】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着部となる端部に、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤と、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物とを含む接着用溶剤を塗布した後、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【請求項7】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて有機溶剤で接着することにより形成された熱収縮性ポリエステル系ラベルであって、
前記有機溶剤は、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、かつ芳香環構造を有する環状化合物を含み、
前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの溶剤接着部に残存する前記環状化合物の濃度が4000ppm以上25000ppm以下であり、
溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上、
であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項8】
前記環状化合物は、o−クロロフェノール、p−クロロフェノールおよびフェノールよりなる群から選択される1種以上である請求項7に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項9】
前記ラベルの溶剤接着部の残留溶剤の中に、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトンおよびアセトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物が含まれている請求項7または8に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項10】
前記ラベルの溶剤接着部の残留溶剤100質量%中、前記非環状化合物の含有率が1質量%以上20質量%以下である請求項9に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項11】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが12μm以上50μm以下である請求項7〜10のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルを包装対象物の少なくとも外周の一部に有することを特徴とする包装体。
【請求項13】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着面の一部または全面に、予め、アルコール類、エステル類およびケトン類よりなる群から選択される1種以上の非環状化合物を含む溶剤を塗布しておき、その後、前記非環状化合物を含む溶剤を乾燥させ、フィルム幅方向の片端部の内側に、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、かつ芳香環構造を有する環状化合物を含む有機溶剤を塗布し、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【請求項14】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着部となる端部に、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、芳香環構造を有する環状化合物と、アルコール類、エステル類およびケトン類よりなる群から選択される1種以上の非環状化合物とを含む接着用溶剤を塗布した後、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムをチューブ状に丸めて前記フィルムの両端部同士を溶剤で接着することにより形成された熱収縮性ポリエステル系ラベルに関し、さらに詳しくは、ラベルを形成するフィルムの厚みが薄くても、溶剤接着部における溶剤の過度な浸透が起こりにくい熱収縮性ポリエステル系ラベルに関する。また、結晶性の高いポリエチレンテレフタレートリサイクル原料をフィルム原料として多用しても、溶剤接着部の剥離強度が高い熱収縮性ポリエステル系ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶またはプラスチックボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムから得られた熱収縮性ポリエステル系ラベルが、広範に利用されるようになってきており、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル容器等の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
しかし、熱収縮性ラベルは使用された後はゴミとなってしまうため、最近は、環境面からゴミ量を削減する必要が生じ、厚みが薄い熱収縮性ラベル(薄肉化した熱収縮性ラベル)が使用されはじめている。
【0004】
また、さらなる環境対応として、PETボトルリサイクル原料の比率を多くした熱収縮性ポリエステル系フィルムがある。
【0005】
ところで、熱収縮性フィルムからチューブ状ラベルを形成するには、フィルムの幅方向片端部をもう一方の端部に重ねて固定する必要がある。この固定方法としては、従来から、溶剤接着法(特許文献1、2)や接着剤を使用する方法(特許文献3)等が用いられてきた。それらの中でも溶剤接着法は高速でチューブ状ラベルへの加工が可能であり、広く用いられている。
【0006】
この溶剤接着法で熱収縮性ポリエステルフィルムの面同士をチューブ状ラベルに加工する工程(チュービング工程)では、生産効率を向上させてコストダウンを図るため、高速化が進んでいる。高速のチュービング工程で、高い剥離強度(接着強度)の溶剤接着部を安定的に得るには、接着溶剤として一般的に用いられている1,3−ジオキソランの塗布量を多くすればよいが、1,3−ジオキソランの塗布量を多くすると、厚みが薄い熱収縮性ポリエステルフィルムの場合、塗布面側からフィルム裏面側まで溶剤が浸透してしまい(溶剤突き抜け)、裏面にも溶剤が付着する。そして、溶剤接着後のチューブ状ラベルをロール状に巻き取る際にはチューブ状ラベルが平らにつぶされるが、溶剤接着部に溶剤突き抜けが起こっている場合、溶剤接着部の裏側と接触したラベルが接着してしまい、チューブとして機能しなくなったり、ブロッキングを起こして、ロールの解きほぐしができなくなることがあった。
【0007】
一方、溶剤突き抜けしないように1,3−ジオキソランの塗布量を少なくすると、高速化されたチュービング工程では、1,3−ジオキソランの塗布量がばらつきやすく、塗布量が少なくなってしまった場合は充分な剥離強度が得られなくなるという不都合があった。
【0008】
他方、PETボトルリサイクル原料を多く用いた熱収縮性ポリエステルフィルムでは、PETボトルリサイクル原料の結晶性の高さから溶剤接着が行い難くなっており、特許文献1、2に示される溶剤である1,3−ジオキソランでは、接着部の剥離強度が不足するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3075019号公報
【特許文献2】特許第3452021号公報
【特許文献3】特開2014−43520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フィルムの厚みが薄くても溶剤突き抜けを起こさない溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体の提供を課題とし、特に、高速化したチュービング工程でも、あるいはPETボトルリサイクル原料を多く用いた熱収縮性ポリエステルフィルムであっても、安定的に高い剥離強度が得られる溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて溶剤で接着することにより形成されたチューブ状の熱収縮性ポリエステル系ラベルであって、
前記溶剤が、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤を含み、
前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの溶剤接着部に残存する1,3−ジオキソラン濃度が4000ppm以上16000ppm以下であり、
前記溶剤接着部に残存する残存溶剤100質量%中、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物の合計量が1質量%以上10質量%以下であり、
溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上、
であることを特徴とする(以下、第1の態様ということがある)。
【0012】
第1の態様においては、熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが12μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0013】
第1の態様においては、熱収縮性ポリエステル系ラベルは、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤と、前記非環状化合物を含む接着用溶剤により接着されていてもよい。
【0014】
第1の態様の本発明には、本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルを包装対象物の少なくとも外周の一部に有する包装体も包含される。
【0015】
また、第1の態様の本発明には、PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着面の一部または全面に、予め、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物を1種以上含む溶剤を塗布しておき、その後、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤で、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法、およびPETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着部となる端部に、1,3−ジオキソラン、または、1,3−ジオキソランと1,3−ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤と、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物とを含む接着用溶剤を塗布した後、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法も包含される。
【0016】
PETボトルリサイクル原料を多く用いた熱収縮性ポリエステルフィルムである場合には、PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて有機溶剤で接着することにより形成された熱収縮性ポリエステル系ラベルであって、
前記有機溶剤は、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、かつ芳香環構造を有する環状化合物を含み、
前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの溶剤接着部に残存する前記環状化合物の濃度が4000ppm以上25000ppm以下であり、
溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上、
であることが好ましい(以下、第2の態様という)。前記環状化合物は、o−クロロフェノール、p−クロロフェノールおよびフェノールよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0017】
第2の態様においては、ラベルの溶剤接着部の残留溶剤の中に、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトンおよびアセトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物が含まれていることも好ましい。このとき、ラベルの溶剤接着部の残留溶剤100質量%中、前記非環状化合物の含有率が1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが12μm以上50μm以下であることは、第2の態様の本発明の好ましい実施態様である。
【0018】
また、第2の態様の本発明においても、第2の態様の本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルを包装対象物の少なくとも外周の一部に有する包装体も含まれる。
【0019】
さらに、第2の態様の本発明には、PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着面の一部または全面に、予め、アルコール類、エステル類およびケトン類よりなる群から選択される1種以上の非環状化合物を含む溶剤を塗布しておき、その後、前記非環状化合物を含む溶剤を乾燥させ、フィルム幅方向の片端部の内側に、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、かつ芳香環構造を有する環状化合物を含む有機溶剤を塗布し、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法と、PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの溶剤接着部となる端部に、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、芳香環構造を有する環状化合物と、アルコール類、エステル類およびケトン類よりなる群から選択される1種以上の非環状化合物とを含む接着用溶剤を塗布した後、前記フィルムの両端部を重ねて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法も含まれる。
【0020】
第2の態様においては、前記アルコール類はイソプロピルアルコールであり、前記エステル類は、酢酸エチル、酢酸ブチルおよび酢酸プロピルよりなる群から選択される1種以上であり、前記ケトン類は、メチルエチルケトンおよび/またはアセトンであることは、それぞれ第2の態様の本発明の製造方法の好ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、溶剤接着工程前に、熱収縮性ポリエステルフィルムの溶剤接着面側に、ポリエステルに対する貧溶媒を塗布するか、この貧溶媒を適量混合した接着用溶剤を用いることで、フィルムの厚みが薄くても溶剤突き抜けを起こさず、かつ、高速化したチュービング工程でも安定的に高い剥離強度が得られる溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体を提供することができた。また、接着用溶剤として、特定の比誘電率の環状化合物を用いたことで、フィルムの厚みが薄くても溶剤突き抜けを起こさず、かつ、高い剥離強度が得られる溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて有機溶剤で接着することにより形成されたチューブ状の熱収縮性ポリエステル系ラベルである。ここで、端部とは幅方向(長手方向に沿う方向)の端部を意味する。
【0023】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、ポリエステル1層のみからなるフィルムだけでなく、ポリエステル/ポリエステル以外の樹脂/ポリエステルといった積層構成のフィルムで、外側の層が共にポリエステルフィルムとなっている積層フィルムも含まれるものとする。
【0024】
第1の態様においては、接着用溶剤の主たる成分を1,3−ジオキソランとする。1,3−ジオキソランはポリエステルの良溶媒であり、ポリエステルフィルムを速やかに溶解するので、得られる溶剤接着部は高い剥離強度を発現する。また、溶剤として、1,3−ジオキソランと相溶する有機溶剤と1,3−ジオキソランとの混合溶剤を用いてもよい。1,3−ジオキソランと相溶する有機溶剤のうち、ポリエステルの良溶媒として好ましいものは、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2,2,2−テトラクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの1,3−ジオキソランと相溶する有機溶剤は、1,3−ジオキソラン100質量部に対し、0〜50質量部とすることが好ましい。
【0025】
第2の態様においては、接着用溶剤として、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、かつ芳香環構造を有する環状化合物を含むものを用いる。このような環状化合物としては、o−クロロフェノール(比誘電率6.3)、p−クロロフェノール(比誘電率9.5)、フェノール(比誘電率9.8)等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。ポリエステルは、通常、芳香族ジカルボン酸が有するベンゼン環を有していることから、同じような芳香環構造を有する環状化合物はポリエステルの良溶媒となり、溶剤接着に用いることで充分な剥離強度を得ることができる。ここで、高分子化合物を溶媒に溶解させる場合、両者の比誘電率が近いほど高分子化合物は溶媒に溶け易い傾向がある。接着用の有機溶剤(接着用溶剤)として、比誘電率が6.2以上9.8以下の芳香環構造を有する環状化合物であれば、ポリエステル樹脂との比誘電率差が小さく、良溶媒となる。一方、芳香環構造を有する環状化合物であっても、比誘電率が6.2より小さい場合、若しくは9.8より大きい場合には、ポリエステル樹脂との比誘電率差が大きく、ポリエステル樹脂の溶解性は低いため良溶媒とはならない。
【0026】
第2の態様においては、1,3−ジオキソランを主たる接着用溶剤として用いない。1,3−ジオキソランはポリエステルの良溶媒として知られているが、結晶性が高いPETボトル用のポリエステルは、1,3−ジオキソランに溶解しにくく、PETボトルリサイクル原料を25質量%より多く含むポリエステルフィルムは、1,3−ジオキソランでの溶剤接着を行っても、充分な剥離強度を得難いためである。ただし、数質量%程度なら、1,3−ジオキソランを他の溶剤と共に接着用溶剤として用いても構わない。
【0027】
そして本発明では溶剤突き抜けを防止するため、溶剤接着工程前または溶剤接着工程で、ポリエステルに対する貧溶媒を使用する。この貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物を用いる。ポリエステルは、通常、芳香族ジカルボン酸が有するベンゼン環を有していることから、同じような環構造を有する環状溶剤は一般的にポリエステルの良溶媒となるが、上記の非環状化合物は、ポリエステルをあまり溶解しない。なお、第2の態様では、非環状化合物にアセトンも含まれる。以下では、第2の態様において非環状化合物にアセトンが含まれることと、特に断りのないところ以外は、第1の態様と第2の態様に共通する説明である。
【0028】
従ってこれらの非環状化合物を、予め、熱収縮性ポリエステルフィルムの溶剤接着面になる側の一部または全面に塗布しておくことで、接着用溶剤によるポリエステルフィルムの溶解量が低減されるため、溶剤突き抜けを抑制することができる。塗布する部分は、溶剤接着部(フィルム端部より2〜6mm程度内側まで)よりも少しフィルム内側(中央部側)までとすることが、確実に溶剤突き抜けを防止することができるため好ましいが、フィルム全面に塗布するようにすれば塗布工程が容易となるためより好ましい。塗布の際には、非環状化合物を水と混合して塗布してもよい。このときの塗布量は付着量として、50〜500mg/m2程度が好ましい。非環状化合物の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0029】
また、上記非環状化合物(貧溶媒)を接着用溶剤に混合して用いることもできる。上記非環状化合物は合計で、ラベルとした際の溶剤接着部に残存する残存溶剤100質量%中、非環状化合物の合計量が1質量%以上10質量%以下となるように接着用溶剤を調製するのが好ましい。上記残存溶剤100質量%中、非環状化合物の合計量が1質量%以上10質量%以下となるようにするには、接着用溶剤100質量%中、非環状化合物を1〜10質量%の範囲で用いればよい。非環状化合物(貧溶媒)の量が少ないと溶剤突き抜けを抑制する効果が発現せず、多すぎると高速化したチュービング工程で高い接着強度を安定的に得ることが難しくなることがある。貧溶媒を混合した接着用溶剤を用いる場合は、フィルム全面に塗布する必要はなく、フィルム端部より2〜6mm程度内側まで塗布すればよい。なお、第2の態様においては、ラベルとした際の溶剤接着部に残存する残存溶剤100質量%中、非環状化合物の合計量の上限は20質量%まで許容される。
【0030】
チュービング工程に際しては、接着用溶剤(非環状化合物を含まない場合も含む場合も両方の意味である)を熱収縮性ポリエステル系フィルムに対し、50〜550mg/m2(第2の態様においては50〜700mg/m2)程度、公知のセンターシールマシン等を用いて塗布することが好ましい。接着用溶剤を、1〜7g/分の塗布速度で塗布すると、上記の範囲の量を塗布することができる。接着用溶剤は、予め貧溶媒をフィルムに塗布しておく場合には、貧溶媒の塗布量−50mg/m2〜貧溶媒の塗布量+300mg/m2(第2の態様においては貧溶媒の塗布量−250mg/m2〜貧溶媒の塗布量+500mg/m2)程度の範囲で塗布することが好ましい。接着用溶剤が、貧溶媒の塗布量−50mg/m2(第2の態様においては貧溶媒の塗布量−250mg/m2)より少ない場合は、溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上にならないおそれがあり、接着用溶剤の塗布量が貧溶媒の塗布量+300mg/m2(第2の態様においては貧溶媒の塗布量+500mg/m2)を超えると、溶剤突き抜けが発生するおそれがある。
【0031】
チュービング工程の速度は特に限定されないが、高速化の点で300〜500m/分(第2の態様においては200〜500m/分)が好ましい。チュービング工程後のチューブ状ラベルは、通常、平らに畳まれてロール状に巻き取られた後、ラベルを繰り出して所定長さに裁断され、最終製品となるが、チュービング工程後に、ロールに巻き取らずに裁断工程を行ってもよい。
【0032】
溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルは、溶剤接着部(ラベルも含む)が1,3−ジオキソラン(第2の態様においては前記環状化合物)を4000ppm(質量基準、以下同じ)以上16000ppm(第2の態様においては25000ppm)以下含むものとなる。また、溶剤接着部に残存する残存溶剤100質量%中、上記の非環状化合物は合計で1〜10質量%(第2の態様においては1〜20質量%)である。溶剤接着部中の1,3−ジオキソランの量(第2の態様においては前記環状化合物)や、溶剤接着部に残存する残存溶剤の量と組成は、溶剤接着部から試料(ラベルごと)を切り出して、加熱脱着GC/MCで加熱し、揮発成分の定性定量分析を行うことで把握することができる。
【0033】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上である。剥離強度が3N/15mm以上あれば、使用中に剥離する等のトラブルを防ぐことができる。剥離強度の測定方法は、実施例で説明する。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルの厚みは、12μm以上30μm以下(第2の態様においては12μm以上50μm以下)であることが好ましい。この範囲であれば、薄肉化の要請に対応できたといえるからである。より好ましくは25μm以下である。
【0035】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、90℃の温水中での熱収縮率が主収縮方向で50%以上(第2の態様においては40%以上)であることが好ましい。熱収縮率が50%以上(第2の態様においては40%以上)あれば、美麗な収縮仕上がり性を得ることができる。50%(第2の態様においては40%)より小さいと、熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。主収縮方向に直交する方向においては、90℃の温水中での熱収縮率は12%以下であることが好ましい。12%を超えると、ラベル縦方向が縮んでしまうタテヒケと呼ばれる現象が起こりやすいため好ましくない。なお、主収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、主収縮方向は、正方形の試料の縦方向または横方向の長さで決められる。また、熱収縮率(%)の測定方法の詳細は実施例で説明する。
【0036】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルに用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とすることが好ましい。強度や耐熱性に優れているからである。エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。
【0037】
第2の態様においては、エチレンテレフタレートユニットは、PETボトルリサイクル原料由来のユニットを含んでいてもよい。PETボトルリサイクル原料とは、飲料用のPETボトルをフレークやペレットに加工したものである。ポリエステルフィルムを成膜するときに、このPETボトルリサイクル原料を、ポリエステル原料100質量%中、90質量%以下で使用することが好ましい。90質量%を超えてPETボトルリサイクル原料を用いると、PETボトルを構成するポリエチレンテレフタレートの結晶性が高いため、得られるフィルムの溶剤接着性や熱収縮特性が低下するおそれがある。リサイクル推進のためには、PETボトルリサイクル原料をポリエステル原料100質量%中20質量%以上使うことが望ましい。
【0038】
本発明のポリエステルを構成する他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0039】
脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)をポリエステルに含有させる場合、含有率は3モル%未満(ジカルボン酸成分100モル%中)であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系ラベルでは、高速装着時のフィルム腰が不充分となりやすい。
【0040】
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)はポリエステルに含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系ラベルは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0041】
ポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
【0042】
本発明で用いるポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3〜6個を有するジオール(例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60〜80℃に調整したポリエステルが好ましい。
【0043】
また、ポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が15モル%以上、好ましくは16モル%以上、より好ましくは17モル%以上、特に好ましくは18モル%以上である。また非晶質成分となり得るモノマー成分の合計の上限は特に限定されないが、上限は30モル%が好ましい。
【0044】
非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはイソフタル酸を用いるのが好ましい。
【0045】
ポリエステルには、炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系ラベルでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。また、ポリエステルには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことも好ましい。
【0046】
本発明のラベルに用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0047】
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、フィルムの作業性(滑り性)を良好にする滑剤としての微粒子を添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0048】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0049】
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0050】
具体的なフィルムおよびラベルの製造方法としては、原料チップをホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料をベント式押し出し機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出す。押出しに際してはTダイ法、チューブラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。押出し後は、急冷して未延伸フィルムを得る。なお、この「未延伸フィルム」には、フィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれるものとする。
【0051】
この未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。延伸処理は、上記キャスティングロール等による冷却後、連続して行ってもよいし、冷却後、一旦ロール状に巻き取って、その後行ってもよい。
【0052】
最大収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。なお、最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90゜変える等、通常の操作に準じて延伸することができる。
【0053】
また、目的とする熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分布を均一化させることに着目すれば、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って予備加熱工程を行うことが好ましく、この予備加熱工程では、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
【0054】
横方向の延伸は、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍に延伸する。その後、60℃〜110℃の範囲内の所定温度で、必要に応じて0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら最終熱処理を施し、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。
【0055】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。
【0056】
その後は、前記したチュービング工程を行って、所定の長さに裁断し、熱収縮性ポリエステル系ラベルとする。
【0057】
本発明には、本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルを被包装体に被覆させ、熱収縮させることにより得られる包装体、すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルが収縮したラベルを被覆した包装体も含まれる。
上記は、請求項4や請求項12がプロバイクレームと言われたときのための手当として追加しました。
【0058】
本願は、2014年9月9日に出願された日本国特許出願第2014−183426号と、2014年11月14日に出願された日本国特許出願第2014−231491号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年9月9日に出願された日本国特許出願第2014−183426号と、2014年11月14日に出願された日本国特許出願第2014−231491号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0060】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを長手方向およびその直交方向(幅方向)に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、90℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、水中から引き出して、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。
熱収縮率(%)={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}
本実施例では、フィルムの最も収縮率の大きい方向(主収縮方向)は幅方向である。
【0061】
[溶剤接着方法]
フィルムの溶剤接着面となる側の全面に貧溶媒を塗布し、乾燥機を通して乾燥させた後に、フィルムを幅380mmに裁断しながら、長手方向の巻長1000mとしてフィルムロールを製造した。そのフィルムロールからフィルムを繰り出して、フィルム幅方向の片端部の内側に接着用溶剤を塗布幅が4±2mm(第2の態様では4±1mm)の範囲内となるように長手方向に連続的に塗布し、この溶剤塗布部をフィルムのもう一方の幅方向端部の上に、重なり部がセンターに来るようにフィルムを折り重ねて、溶剤接着した。
【0062】
溶剤接着加工速度は、実施例6と17では200m/分とし、比較例8では100m/分とし、それ以外は400m/分とした。溶剤接着後のフィルムを200m/分で紙管に巻き取った。得られたチューブ状ラベルのロールを23℃の雰囲気下で24時間エージングした。
【0063】
[溶剤の突き抜け性評価]
溶剤接着して得られたエージング後の巻長1000mのチューブ状ラベルを、手でロール表面から500m引き出し、ブロッキング現象があったときは溶剤が突き抜けていると判断し、以下のように評価した。
ブロッキングなし:溶剤の突き抜け性評価 ○(突き抜けなし)
ブロッキングあり:溶剤の突き抜け性評価 ×(突き抜けあり)
【0064】
[溶剤接着部の剥離強度の測定方法]
上記した溶剤突き抜け評価時にロール表層から500m引き出した後の巻長500mのチューブ状ラベルロールの表層部分から、溶剤接着部が中央に来るように幅(長手方向長さに相当)15mmの試料を円周方向に沿って切り出した(長さは100mm程度あればよい)。試料数nは10とした。ボールドウィン社製の万能引張試験機「STM−50」にセットし、引張速度200mm/分の条件で180°ピール試験を行った。10個の試料の平均値を溶剤接着部の剥離強度(N/15mm)とした。
【0065】
[残留溶剤の測定方法]
チューブ状ラベルの溶剤接着部を剥がした直後に、溶剤塗布部をラベルごと1mgサンプリングし、加熱脱着GC/MS(日本電子社製「Automass15」)で試料を120℃で30分加熱した。発生したガスを捕集部で冷却捕集し、再度捕集部を加熱し、捕集したガス成分を加熱脱着GC/MSに導入し、定性定量分析を行い、トルエン換算でラベル中の残留溶剤量を算出した。
【0066】
[ガラス転移点(Tg)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、JIS K7121に従って求めた。未延伸フィルム10mgを、25℃から120℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、昇温プロファイルを得た。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0067】
[溶剤の比誘電率]
「化学便覧 第5版 基礎編」(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行)と、株式会社松島機械研究所(現マツシマ メジャテック)の誘電率表を参照した。
【0068】
合成例(ポリエステルの合成)
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)添加して、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下で重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステルAを得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。なお、上記ポリエステルAの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して8000ppm添加した。また、上記と同様にして、表1に示すポリエステル(B,C,D)と表2に示すポリエステルE,F,Gを合成した。また、PETボトルリサイクル原料として、「クリアペレット」(よのペットボトルリサイクル社製;固有粘度0.63dl/g)をチップHとして用いた。
【0069】
表中、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール、NPGはネオペンチルグリコール、IPAはイソフタル酸、BDは1,4−ブタンジオールである。表1のポリエステルの固有粘度は、チップAが0.70dl/g、チップBが0.70dl/g、チップCが0.73dl/g、チップDが0.73dl/g、チップEが0.70dl/g、チップFが0.73dl/g、チップGが0.73dl/g、チップHが0.63dl/gであった。なお、各ポリエステルは適宜チップ状にした。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
<フィルムIの製造方法>
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表3に示したように、チップA5質量%、チップB15質量%およびチップC80質量%で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押し出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに接触させて急冷することにより、厚さ90μmの未延伸フィルムを得た。フィルム中の非晶成分量とTgを表3に示した。このときの未延伸フィルムの引き取り速度(金属ロールの回転速度)は約20m/minであった。
【0073】
上記未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで100℃に加熱し、78℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて82℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ18μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0074】
<フィルムIIの製造方法>
チップCに変えてチップDを用いた以外は、フィルムIと同様の方法で厚さ18μmの横一軸延伸フィルムを2000mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0075】
<フィルムAの製造方法>
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表4に示したように、チップE5質量%、チップF70質量%およびチップH25質量%で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押し出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに接触させて急冷することにより、厚さ90μmの未延伸フィルムを得た。フィルム中の非晶成分量とTgを表4に示した。このときの未延伸フィルムの引き取り速度(金属ロールの回転速度)は約20m/minであった。
【0076】
上記未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで100℃に加熱し、78℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて82℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ18μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムAは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表4に示した。
【0077】
<フィルムBの製造方法>
チップEを5質量%、チップGを15質量%およびチップHを80質量%用いた以外は、フィルムAと同様の方法で厚さ18μmの横一軸延伸フィルムを1000mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムBは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表4に示した。
【0078】
<フィルムCの製造方法>
未延伸フィルムの厚さを90μmから225μmに変更した以外は、フィルムAと同様の方法で厚さ45μmの横一軸延伸フィルムを1000mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムCは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表4に示した。
【0079】
<フィルムDの製造方法>
チップEを5質量%、チップFを25質量%およびチップHを70質量%用い、未延伸フィルムの厚さを72μmに変更し、幅方向への延伸倍率を5倍から4倍へと変更し、最終熱処理温度を82℃から79℃へ変更した以外は、フィルムAと同様の方法で厚さ18μmの横一軸延伸フィルムを1000mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムDは、収縮率は低下したが、幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表4に示した。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
実施例1
フィルムIの片面全面に、水/イソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチルを40/40/10/10(質量比)で混合した貧溶媒を、200mg/m2塗布した。80℃の熱風ドライヤーの炉内を10秒間通過させて乾燥した。貧溶媒が塗布されたフィルムに、1,3−ジオキソランを4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に示した。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度、溶剤接着部の残留溶剤量を測定し、結果を表6に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0083】
実施例2
フィルムIに変えてフィルムIIを用いた以外は実施例1と同様にして、貧溶媒の塗布と溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0084】
実施例3
貧溶媒として、水/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン/酢酸ブチルを40/40/10/10(質量比)で混合した溶剤を用いた以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0085】
実施例4
貧溶媒として、水/イソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチルを10/70/10/10(質量比)で混合した溶剤を用い、溶剤接着の際に1,3−ジオキソランを4mmの幅で150mg/m2塗布した以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0086】
実施例5
溶剤接着の際に1,3−ジオキソランを4mmの幅で150mg/m2塗布した以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0087】
実施例6
溶剤接着の加工速度を400m/分から200m/分へと変更し、1,3−ジオキソランを4mmの幅で500mg/m2塗布(加工速度が半分になったため、塗布量が2倍となっている)した以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より大きく、良好なラベルであった。
【0088】
実施例7
接着用溶剤として、1,3−ジオキソラン/テトラヒドロフランを50/50(質量比)用いた以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0089】
実施例8
貧溶媒として、イソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチルを60/20/20(質量比)で混合し、400mg/m2塗布したことと、1,3−ジオキソランの塗布を4mmの幅で450mg/m2塗布した以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より大きく、良好なラベルであった。
【0090】
実施例9
貧溶媒の塗布量を100mg/m2とした以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例1より大きく、良好なラベルであった。
【0091】
実施例10
貧溶媒が塗布されていないフィルムIに、1,3−ジオキソラン/イソプロピルアルコールを90/10(質量比)で混合した接着用溶剤を、4mm幅で250mg/m2塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0092】
比較例1
1,3−ジオキソランを4mmの幅で500mg/m2塗布した以外は実施例9と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度は大きかったが、溶剤の突き抜けがあり、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0093】
比較例2
貧溶媒をフィルムの片面全面に塗布するのを止め、1,3−ジオキソランを4mmの幅で450mg/m2塗布した以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤接着部の剥離強度は大きかったが、溶剤の突き抜けがあり、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0094】
比較例3
貧溶媒としてイソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチルを60/20/20(質量比)で混合した溶剤を用い、その塗布量を400mg/m2とした以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0095】
比較例4
貧溶媒としてイソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチルを60/20/20(質量比)で混合した溶剤を用い、1,3−ジオキソランを4mmの幅で100g/m2塗布した以外は実施例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0096】
比較例5
貧溶媒が塗布されていないフィルムIに、1,3−ジオキソラン/イソプロピルアルコール=50/50(質量比)で混合した混合溶剤を、4mm幅で250mg/m2塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表5に、評価結果を表6に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
実施例11
フィルムAの片面全面に、イソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチル/アセトン/水を35/10/10/10/35(質量比)で混合した貧溶媒を、200mg/m2塗布し、80℃の熱風ドライヤーの炉内を10秒間通過させて乾燥した。次にo−クロロフェノール2gを30℃の水150mlに溶解させた溶液を準備し、貧溶媒が塗布されたフィルムに、o−クロロフェノールの塗布量が150mg/m2となるように前記o−クロロフェノールの水溶液を塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に示した。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度、溶剤接着部の残留溶剤量を測定し、結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0100】
実施例12
o−クロロフェノールをp−クロロフェノールに変え、温水に溶解させずにそのまま塗布した以外は実施例11と同様にして、貧溶媒の塗布と溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0101】
実施例13
o−クロロフェノールをフェノールに変え、温水に溶解させずにそのまま塗布した以外は実施例11と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0102】
実施例14
フィルムAをフィルムBへ変更した以外は実施例13と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0103】
実施例15
フィルムBをフィルムCへ変更し、フェノールの塗布量を350mg/m2にした以外は実施例14と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0104】
実施例16
フィルムCをフィルムDへ変更した以外は実施例15と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が実施例11より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0105】
実施例17
フェノールの塗布量を700mg/m2にし、溶剤接着加工速度を200m/分に変更
した以外は実施例16と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例11より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0106】
実施例18
貧溶媒として、イソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチル/アセトンを49/17/17/17(質量比)で混合したものを350mg/m2塗布し、接着用溶剤としてp−クロロフェノールを140mg/m2塗布した以外は実施例12と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤接着部の剥離強度が実施例11より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0107】
実施例19
貧溶媒として、イソプロピルアルコール/酢酸プロピル/酢酸エチル/アセトン/水を15/5/5/5/70(質量比)で混合したものを用いた以外は実施例16と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。剥離強度が実施例11より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0108】
実施例20
o−クロロフェノール2gを、30℃の水/イソプロピルアルコール=80/20(質量比)150mlに溶解させた溶液を準備し、貧溶媒が塗布されていないフィルムAにo−クロロフェノールの塗布量が150mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0109】
参考例1
接着用溶剤のo−クロロフェノールを1,3−ジオキソランに変え、その塗布量を250mg/m2に変更した以外は実施例11と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。剥離強度が実施例11より若干小さくなったが実用上問題なく、良好なラベルであった。
【0110】
比較例6
フィルムAをフィルムDとした以外は参考例1と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0111】
比較例7
接着用溶剤として1,3−ジオキソランを600mg/m2塗布した以外は比較例6と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0112】
比較例8
接着用溶剤としてフェノールを800mg/m2塗布し、溶剤接着加工速度を100m/分に変更した以外は実施例13と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤接着部の剥離強度は大きかったが、溶剤の突き抜けがあり、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0113】
比較例9
接着用溶剤をフェノールからm−ジクロロベンゼンに変更した以外は実施例16と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0114】
比較例10
接着用溶剤をフェノールからo−ジクロロベンゼンに変更した以外は実施例16と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0115】
比較例11
接着用溶剤をフェノールからシクロヘキサノンに変更した以外は実施例16と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0116】
比較例12
貧溶媒として酢酸エチルのみを800mg/m2塗布し、接着用溶剤としてo−クロロフェノールを30mg/m2塗布した以外は実施例11と同様にしてチューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0117】
比較例13
o−クロロフェノール2gを、30℃の水/イソプロピルアルコール=10/90(質量比)で混合した150mlに溶解させた溶液を準備し、貧溶媒が塗布されていないフィルムAにo−クロロフェノールの塗布量が150mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件を表7に、評価結果を表8に示した。溶剤の突き抜けはなかったが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、薄肉化の要請に対応でき、かつ、溶剤突き抜け等の不具合が起こりにくいので、飲料ボトルのラベルとして有用である。また、結晶性の高いPETボトルリサイクル原料を多用しても溶剤接着部の剥離強度が高いので、この点からも、飲料ボトルのラベルとして有用である。